(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ヘルスケア用データ解析システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20240125BHJP
【FI】
G16H10/00
(21)【出願番号】P 2022123236
(22)【出願日】2022-08-02
【審査請求日】2023-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512260473
【氏名又は名称】株式会社ヴェルト
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】野々上 仁
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-219850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析するヘルスケア用データ解析システムであって、
前記ユーザ情報端末装置は、
ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うユーザ側解析処理部と、
前記ユーザ側解析処理部により行われた所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を算出するユーザ側関係性算出部と、
前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを前記サーバ装置にネットワークを介して送信するユーザ側送信部と、
前記サーバ装置からネットワークを介して送信されてきた所定の解析処理に関する変更情報を受信するユーザ側受信部とを備え、
前記サーバ装置は、
各ユーザ情報端末装置からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信するサーバ側受信部と、
前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うサーバ側解析処理部と、
前記サーバ側解析処理部により行われた解析処理の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第1の関係性を算出する第1のサーバ側関係性算出部と、
前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて機械学習を行う学習部と、
前記学習部により行われた機械学習の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第2の関係性を算出する第2のサーバ側関係性算出部と、
前記第1のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第1の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第2の関係性に合致または近似するように、前記第1のサーバ側関係性算出部における所定の解析処理を変更する解析処理変更部と、
前記解析処理変更部により変更された所定の解析処理に関する変更情報を前記ユーザ情報端末装置にネットワークを介して送信するサーバ側送信部とを備え、
前記ユーザ情報端末装置において、
前記ユーザ側解析処理部は、前記ユーザ側受信部により受信された所定の解析処理に関する変更情報に基づいて所定の解析処理の変更を行ったあと、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の所定の解析処理を行い、
前記ユーザ側関係性算出部は、前記ユーザ側解析処理部により行われた変更後の所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を新たに算出することを特徴とするヘルスケア用データ解析システム。
【請求項2】
前記ユーザ側解析処理部および前記
サーバ側解析処理部は、複数の解析処理を行う請求項1に記載のヘルスケア用データ解析システム。
【請求項3】
前記ユーザ側解析処理部および前記
サーバ側解析処理部は、各解析処理に重み付けの数値を設定する請求項2に記載のヘルスケア用データ解析システム。
【請求項4】
前記サーバ装置において、
前記解析処理変更部は、前記第1のサーバ側関係性算出部により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第1の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第2の関係性に合致または近似するように、前記第1のサーバ側関係性算出部における各解析処理の重み付けの数値を変更し、
前記サーバ側送信部は、前記解析処理変更部により変更された各解析処理の重み付けの数値に関する変更情報を前記ユーザ情報端末装置にネットワークを介して送信し、
前記ユーザ情報端末装置において、
前記ユーザ側受信部は、前記サーバ装置からネットワークを介して送信されてきた各解析処理の重み付けの数値に関する変更情報を受信し、
前記ユーザ側解析処理部は、前記ユーザ側受信部により受信された各解析処理の重み付けの数値に関する変更情報に基づいて各解析処理の重み付けの数値の変更を行ったあと、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の各解析処理を行い、
前記ユーザ側関係性算出部は、前記ユーザ側解析処理部により行われた変更後の各解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を新たに算出する請求項3に記載のヘルスケア用データ解析システム。
【請求項5】
前記ユーザ側関係性算出部、第1のサーバ側関係性算出部および第2のサーバ側関係性算出部は、ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性として、一の変数に対する他の変数の関係性のランキングを算出する請求項1から請求項4のいずれかに記載のヘルスケア用データ解析システム。
【請求項6】
複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析する請求項1に記載のヘルスケア用データ解析システムに用いられるユーザ情報端末装置であって、
ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うユーザ側解析処理部と、
前記ユーザ側解析処理部により行われた所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を算出するユーザ側関係性算出部と、
前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを前記サーバ装置にネットワークを介して送信するユーザ側送信部と、
前記サーバ装置からネットワークを介して送信されてきた所定の解析処理に関する変更情報を受信するユーザ側受信部とを備えるユーザ情報端末装置。
【請求項7】
複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析する請求項1に記載のヘルスケア用データ解析システムに用いられるサーバ装置であって、
各ユーザ情報端末からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信するサーバ側受信部と、
前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うサーバ側解析処理部と、
前記サーバ側解析処理部により行われた解析処理の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する第1のサーバ側関係性算出部と、
前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて機械学習を行う学習部と、
前記学習部により行われた機械学習の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する第2のサーバ側関係性算出部と、
前記第1のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性に合致または近似するように、前記第1のサーバ側関係性算出部における所定の解析処理を変更する解析処理変更部と、
前記解析処理変更部により変更された所定の解析処理に関する変更情報を前記ユーザ情報端末装置にネットワークを介して送信するサーバ側送信部とを備えるサーバ装置。
【請求項8】
複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析する請求項1に記載のヘルスケア用データ解析システムに用いられるコンピュータプログラムであって、
前記ユーザ情報端末装置を、
ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得するデータ取得部、
前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うユーザ側解析処理部、
前記ユーザ側解析処理部により行われた所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を算出するユーザ側関係性算出部、
前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを前記サーバ装置にネットワークを介して送信するユーザ側送信部、
前記サーバ装置からネットワークを介して送信されてきた所定の解析処理に関する変更情報を受信するユーザ側受信部として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析する請求項1に記載のヘルスケア用データ解析システムに用いられるコンピュータプログラムであって、
前記サーバ装置を、
各ユーザ情報端末からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信するサーバ側受信部、
前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うサーバ側解析処理部、
前記サーバ側解析処理部により行われた解析処理の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する第1のサーバ側関係性算出部、
前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて機械学習を行う学習部、
前記学習部により行われた機械学習の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する第2のサーバ側関係性算出部、
前記第1のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性に合致または近似するように、前記第1のサーバ側関係性算出部における所定の解析処理を変更する解析処理変更部、
前記解析処理変更部により変更された所定の解析処理に関する変更情報を前記ユーザ情報端末装置にネットワークを介して送信するサーバ側送信部として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析するヘルスケア用データ解析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パンデミック対策のための体調管理ニーズや健康ブームと相まって、人の体内の状態変化を収集して視覚化することにより、自分自身の体内の状態変化を意識しながら健康や美容の維持に役立てることが注目されている。
【0003】
特に最近では、人の身体に身に着ける眼鏡型、腕時計型、リストバンド型などの様々なウェアラブルデバイスが登場しており、日常生活においてそれらを着用しているだけで、デバイスが搭載しているセンサにより人の体内の状態変化を収集して、その状態変化をデバイス自身またはスマートフォンを通じて視覚化するアプリケーションも提供されている。
【0004】
ところが、このようにウェアラブルデバイスと連携し、スマートフォン上で健康情報や美容情報の管理ができるようになったが、スマートフォン上でデータ管理できるのは歩数のみの情報であったり、心拍数のみの情報であったり、あるいは血圧のみの情報であったりと、単体の情報ばかりであり、複合的に管理することが少なかった。
【0005】
そこで、複数のウェアラブルデバイスから取得できる身体の活動情報を一元管理する仕組みとして、Android端末には「Google Fit(登録商標)」、iOS端末には「ヘルスケア」という健康管理の仕組みが用意されている。
【0006】
例えば、「Google Fit」は、Google社が提供するフィットネスデータに関する情報をデバイスやアプリケーション利用者をまたいで、まとめて保存・参照することができる。また、「Google Fit」単体でもAndroid端末の位置情報や各種センサを用いて、アクティビティ情報、位置情報データ、身体測定値、栄養情報、睡眠情報を記録することができる。一方、「ヘルスケア」は、端末の位置情報や各種センサからアクティビティ情報、バイタル情報、身体測定値、リプロダクティブヘルス情報、検査結果、栄養情報、マインドフルネス、睡眠情報などを記録でき、サードパーティのアプリから「ヘルスケア」に記録されている情報の読み出しや保存が可能である。
【0007】
さらに、本出願人は、個人であるユーザのヘルスケアに関する複数の変数(属性)の時系列データに基づいて、人にとって有意な変数(属性)の関係性を推定するシステムを提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】バイオフィードバック研究・2017年・44巻・第2号「ウェアラブルデバイスを活用したシステムについての現状と問題点、今後の展望について」
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述の各システムは、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを扱う関係上、ローカルなユーザ情報端末装置において解析処理が実行されることが多いが、それだと解析処理の結果を迅速に出力することはできるものの、最初に設定されたクローズな解析処理を長期間に亘って使用し続けることになるため、解析処理の結果の精度に欠けるという問題があった。もとより、クラウド上のサーバ装置においてAI(人工知能: Artificial Intelligence)などにより最新の解析処理を実行して、その解析処理の結果をユーザの情報端末装置に返すことも考えられるが、それだと解析処理の結果の迅速性に欠けるという問題があった。このように解析処理の結果の精度または迅速性のいずれかが欠けるため、上述の各システムが数多く提供されているものの、それらが普及するに至っていないのが現状である。
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、個人のヘルスケアに関する変数の時系列データを迅速かつ精度良く解析することができ、ひいてはユーザのヘルスケアに関するシステムの普及に寄与することが可能なヘルスケア用データ解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析するヘルスケア用データ解析システムであって、前記ユーザ情報端末装置は、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得するデータ取得部と、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うユーザ側解析処理部と、前記ユーザ側解析処理部により行われた所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を算出するユーザ側関係性算出部と、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを前記サーバ装置にネットワークを介して送信するユーザ側送信部と、前記サーバ装置からネットワークを介して送信されてきた所定の解析処理に関する変更情報を受信するユーザ側受信部とを備え、前記サーバ装置は、各ユーザ情報端末装置からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信するサーバ側受信部と、前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うサーバ側解析処理部と、前記サーバ側解析処理部により行われた解析処理の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第1の関係性を算出する第1のサーバ側関係性算出部と、前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて機械学習を行う学習部と、前記学習部により行われた機械学習の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第2の関係性を算出する第2のサーバ側関係性算出部と、前記第1のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第1の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第2の関係性に合致または近似するように、前記第1のサーバ側関係性算出部における所定の解析処理を変更する解析処理変更部と、前記解析処理変更部により変更された所定の解析処理に関する変更情報を前記ユーザ情報端末装置にネットワークを介して送信するサーバ側送信部とを備え、前記ユーザ情報端末装置において、前記ユーザ側解析処理部は、前記ユーザ側受信部により受信された所定の解析処理に関する変更情報に基づいて所定の解析処理の変更を行ったあと、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の所定の解析処理を行い、前記ユーザ側関係性算出部は、前記ユーザ側解析処理部により行われた変更後の所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を新たに算出することを特徴とする。
【0013】
これによれば、ユーザが所有または使用するユーザ情報端末装置において、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うことにより変数間の関係性を算出するため、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを迅速に解析することができる。また、サーバ装置において、各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを収集し、機械学習を用いて所定の解析処理を変更したあと、ユーザ情報端末装置において、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の解析処理を行うことにより変数間の関係性を新たに算出するため、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを精度良く解析することができる。而して、AI(人工知能)の機械学習の結果に合致または近似する精度の高い解析処理の結果をローカルなユーザ情報端末装置で迅速に算出することができるため、ユーザのヘルスケアに関するシステムの普及に寄与することが可能となる。
【0014】
また、前記ユーザ側解析処理部および前記サーバ側解析処理部は、複数の解析処理を行ってもよい。これによれば、ユーザ情報端末装置において、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて複数の解析処理を行うことにより変数間の関係性を算出するため、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データの解析精度を向上させることができる。
【0015】
また、前記ユーザ側解析処理部および前記サーバ側解析処理部は、各解析処理に重み付けの数値を設定してもよい。これによれば、各解析処理と重み付けの数値を組み合わせることにより、所定の解析処理を簡単かつ確実に設計することができる。
【0016】
また、前記サーバ装置において、前記解析処理変更部は、前記第1のサーバ側関係性算出部により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第1の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第2の関係性に合致または近似するように、前記第1のサーバ側関係性算出部における各解析処理の重み付けの数値を変更し、前記サーバ側送信部は、前記解析処理変更部により変更された各解析処理の重み付けの数値に関する変更情報を前記ユーザ情報端末装置にネットワークを介して送信し、前記ユーザ情報端末装置において、前記ユーザ側受信部は、前記サーバ装置からネットワークを介して送信されてきた各解析処理の重み付けの数値に関する変更情報を受信し、前記ユーザ側解析処理部は、前記ユーザ側受信部により受信された各解析処理の重み付けの数値に関する変更情報に基づいて各解析処理の重み付けの数値の変更を行ったあと、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の各解析処理を行い、前記ユーザ側関係性算出部は、前記ユーザ側解析処理部により行われた変更後の各解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を新たに算出してもよい。これによれば、各解析処理の重み付けの数値を変更するだけで解析処理の結果を修正し得るため、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データの解析精度を簡単かつ確実に向上させることができる。
【0017】
また、前記ユーザ側関係性算出部、第1のサーバ側関係性算出部および第2のサーバ側関係性算出部は、ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性として、一の変数に対する他の変数の関係性のランキングを算出してもよい。これによれば、ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性として、一の変数に対する他の変数の関係性のランキングを算出するため、ユーザは自己のヘルスケアに関する変数間の関係性を容易に把握することができる。
【0018】
また、本発明は、複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析する上記に記載のヘルスケア用データ解析システムに用いられるユーザ情報端末装置であって、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得するデータ取得部と、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うユーザ側解析処理部と、前記ユーザ側解析処理部により行われた所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を算出するユーザ側関係性算出部と、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを前記サーバ装置にネットワークを介して送信するユーザ側送信部と、前記サーバ装置からネットワークを介して送信されてきた所定の解析処理に関する変更情報を受信するユーザ側受信部とを備える。
【0019】
また、本発明は、複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析する上記に記載のヘルスケア用データ解析システムに用いられるサーバ装置であって、各ユーザ情報端末からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信するサーバ側受信部と、前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うサーバ側解析処理部と、前記サーバ側解析処理部により行われた解析処理の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する第1のサーバ側関係性算出部と、前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて機械学習を行う学習部と、前記学習部により行われた機械学習の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する第2のサーバ側関係性算出部と、前記第1のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性に合致または近似するように、前記第1のサーバ側関係性算出部における所定の解析処理を変更する解析処理変更部と、前記解析処理変更部により変更された所定の解析処理に関する変更情報を前記ユーザ情報端末装置にネットワークを介して送信するサーバ側送信部とを備える。
【0020】
また、本発明は、複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析する上記に記載のヘルスケア用データ解析システムに用いられるコンピュータプログラムであって、前記ユーザ情報端末装置を、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得するデータ取得部、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うユーザ側解析処理部、前記ユーザ側解析処理部により行われた所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を算出するユーザ側関係性算出部、前記データ取得部により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを前記サーバ装置にネットワークを介して送信するユーザ側送信部、前記サーバ装置からネットワークを介して送信されてきた所定の解析処理に関する変更情報を受信するユーザ側受信部として機能させることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、複数のユーザ情報端末装置とサーバ装置がネットワークを介して接続され、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを解析する上記に記載のヘルスケア用データ解析システムに用いられるコンピュータプログラムであって、前記サーバ装置を、各ユーザ情報端末からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信するサーバ側受信部、前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うサーバ側解析処理部、前記サーバ側解析処理部により行われた解析処理の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する第1のサーバ側関係性算出部、前記サーバ側受信部により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて機械学習を行う学習部、前記学習部により行われた機械学習の結果に基づいて、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する第2のサーバ側関係性算出部、前記第1のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部により算出されたユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性に合致または近似するように、前記第1のサーバ側関係性算出部における所定の解析処理を変更する解析処理変更部、前記解析処理変更部により変更された所定の解析処理に関する変更情報を前記ユーザ情報端末装置にネットワークを介して送信するサーバ側送信部として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ユーザが所有または使用するユーザ情報端末装置において、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うことにより変数間の関係性を算出するため、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを迅速に解析することができる。また、サーバ装置において、各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを収集し、機械学習を用いて所定の解析処理を変更したあと、ユーザ情報端末装置において、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の解析処理を行うことにより変数間の関係性を新たに算出するため、ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを精度良く解析することができる。而して、AI(人工知能)の機械学習の結果に合致または近似する精度の高い解析処理の結果をローカルなユーザ情報端末装置で迅速に算出することができるため、ユーザのヘルスケアに関するシステムの普及に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係るヘルスケア用データ解析システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1のユーザ側情報端末およびサーバ装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1のヘルスケア用データ解析システムの概要を示す図である。
【
図4】
図1のヘルスケア用データ解析のシステムの動作を示すフローチャートである。
【
図5】ユーザ側情報端末装置に表示される画面の一例を示す図である。
【
図6】ユーザ側情報端末装置に表示される画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係るヘルスケア用データ解析システム(以下、本システムという)の実施形態について
図1~
図5を参照しつつ説明する。
【0025】
本システムは、
図1に示すように、スマートフォン、タブレット端末あるいはウェアラブル端末などの複数のユーザ情報端末装置1と、各ユーザ情報端末装置1からデータを収集するサーバ装置2とを備え、各ユーザ情報端末装置1とサーバ装置2がインターネット等のネットワークを介して通信可能な状態で接続されている。
【0026】
[ユーザ情報端末装置1の構成]
前記ユーザ情報端末装置1は、ネットワークに接続可能なスマートフォン、タブレット端末あるいはウェアラブルなどのデバイスであって、所有者または使用者であるユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データ(例えば、
図3のライフログデータ(100))の解析処理を行うことにより、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する。
【0027】
具体的には、前記ユーザ情報端末装置1は、
図2に示すように、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得するデータ取得部11と、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを記憶するデータ記憶部12と、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データの加工処理を行うユーザ側データ加工処理部13と、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに対して所定の解析処理を行うユーザ側解析処理部14と、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の関係性を算出するユーザ側関係性算出部15と、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の関係性を出力する出力部16と、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データをサーバ装置2にネットワークを介して送信するユーザ側送信部17と、サーバ装置2からネットワークを介して送信されてきた所定の解析処理に関する変更情報を受信するユーザ側受信部18とを備える。
【0028】
前記データ取得部11は、端末外部または端末内部からユーザ(個人)の身体、健康、活動または環境などのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得するものであり、ウェアラブルデバイス等のIoTデバイスで計測した変数の時系列データ、外部Webサービスから変数の時系列データ、情報端末装置のアプリケーションで計測または入力した変数の時系列データを取得する。
【0029】
これらユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データとしては、気候時系列(気温、気圧、天候、月齢など)、環境条件時系列(場所、室温、湿度、音楽など)、場所カテゴリカル(移動、オフィス、家、趣味など)、習慣カテゴリカル(食事、運動、衛生、飲酒など)、習慣時系列(歩数、カロリー、デスクワーク、睡眠など)、バイタルデータ時系列(心拍数、血圧、体温、体重など)、体調カテゴリカル(良い、まあまあ、疲れた、悪いなど)に属する各変数の時系列データが挙げられる。このうち、場所カテゴリカル、習慣カテゴリカル、習慣時系列、バイタルデータ時系列、体調カテゴリカルに関する変数の時系列データは、IoTデバイスから取得される場合が多い。また、気候時系列、環境条件時系列の変数に関する時系列データは、外部Webサービスから取得される場合が多い。また、バイタルデータ時系列に関する変数の時系列データは、ユーザ情報端末装置1から取得される場合もある。
【0030】
また、前記データ取得部11は、ユーザ情報端末装置1にインストールされたヘルスキット、カレンダ、外部天候データ、睡眠アプリ、ライフログアプリなどのアプリケーションにおいて、データ自動入力プラグインにより変数の時系列データを自動的に取得したり、手入力により体調、運動、衛生、食事、場所、独自設定、メモなどに関する変数の時系列データを取得したりする。例えば、手入力により変数の時系列データを取得する例として、自分で1ルーチンの単位を設定して、0.5ルーチン、1.5ルーチンなどの単位で入力したり、ランチ、清掃、手洗いのように習慣の時間を入力したり、あるいは1日の体調(体調が悪い箇所がある場合には、その症状)を入力したりする。
【0031】
なお、本実施形態では、データ取得部11により取得される具体的なユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データとして、下記のものが挙げられる。但し、これらの各変数の時系列データの取得は一例であって、その他にも様々な種類の変数の時系列データを取得してもよい。
【0032】
・asleep:睡眠時間
・temperature_min:当日の最低気温
・Efficiency :睡眠効率(睡眠時間/就寝~起床の時間)
・wakingBPM_diff:起床時の心拍数(Beats per minute)の日ごとの変化量(差分)
・quality :睡眠の質
・dayBPM:日中の心拍数(Beats per minute)
・wakingBPM:起床時の心拍数(Beats per minute)
・pressure_noon_diff:気圧の日ごとの変化量(差分)
・hrv:心拍間隔の変動
・deep:深い睡眠の時間
・asleep_diff:睡眠時間の日ごとの変化量(差分)
【0033】
前記ユーザ側データ加工処理部13は、後述するユーザ側解析処理部14による所定の解析処理のため、データ記憶部12に記憶されている当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに対して所定の加工処理を行うものである。例えば、ユーザ側データ加工処理部13は、データ記憶部12に記憶されている当該ユーザのヘルスケアに関する時間単位や日単位の時系列データについて、jsonデータをcsvデータに変換する処理を行ったあと、データ加工に適した形式(例えば、DataFrame、array、listなど)で読み込みを行う。なお。日付形式が異なる場合には、この時点で時系列データの読み込みに必要な加工処理を行う。また、ユーザ側データ加工処理部13は、データ記憶部12に記憶されている個人のヘルスケアに関する時系列データのうち、解析処理の主対象となるヘルスケアに関する変数に影響を与える可能性のある変数の時系列データのみをフィルタリングする。また、ユーザ側データ加工処理部13は、後述のユーザ側解析処理部14において時間相関やDTW(Dynamic Time Warping:動的時間伸縮法)の解析処理を行う場合、線形補間、0補間、0補間&EMAなどの欠損補間処理を行う。
【0034】
前記ユーザ側解析処理部14は、ユーザ側データ加工処理部13により加工処理された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行う。この解析処理としては、例えば、時間相関やDTW(Dynamic Time Warping:動的時間伸縮法)などの公知のアルゴリズムにより、各変数の時系列データの類似度や相関に関する解析処理を行う。
【0035】
また、前記ユーザ側解析処理部14は、複数の解析処理を行うものとなされており、各解析処理に重み付けの数値が設定されている。例えば、ユーザ側解析処理部14は、
図3の(101)に示すように、3つの解析処理A、B、Cを行うものとなされており、解析処理Aの重み付けの初期設定値は0.33、解析処理Bの重み付けの初期設定値は0.33、解析処理Cの重み付けの初期設定値は0.33にそれぞれ設定されており、初期の段階では解析処理A、B、Cの重み付けの数値がマニュアルで均等に設定されている。
【0036】
また、前記ユーザ側解析処理部14は、後述のユーザ側受信部18により受信された所定の解析処理に関する変更情報に基づいて所定の解析処理の変更を行ったあと、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の所定の解析処理を行う。例えば、ユーザ側解析処理部14は、
図3の(103)に示すように、ユーザ側受信部18により受信された各解析処理A、B、Cの重み付けの数値に関する変更情報に基づいて、各解析処理A、B、Cの重み付けの数値(解析処理Aの重み付けの数値:0.33→0.4、解析処理Bの重み付けの数値:0.33→0.35、解析処理Cの重み付けの数値:0.33→0.25)を定期的あるいは順次変更する。
【0037】
前記ユーザ側関係性算出部15は、ユーザ側解析処理部14により行われた解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する。例えば、ユーザ側関係性算出部15は、
図3の(101)に示すように、ユーザ側解析処理部14による変数の時系列データの類似度や相関に関する解析処理の結果に基づいて、一の変数(目的変数)に対する他の変数(説明変数:α、β、γ、θ、…)の関係性のランキング(1=データα、2=データγ、3=データθ、4=データβ、…)を算出する。
【0038】
また、前記ユーザ側関係性算出部15は、ユーザ側解析処理部14において解析処理の変更が行われた場合、ユーザ側解析処理部14により行われた変更後の所定の解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性を新たに算出する。例えば、ユーザ側関係性算出部15は、
図3の(104)に示すように、ユーザ側解析処理部14において各解析処理A、B、Cの重み付けの数値が変更された場合、ユーザ側解析処理部14により行われた重み付けの数値が変更された各解析処理A、B、Cの結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性(1=データα、2=データβ、3=データγ、4=データθ、…)を新たに算出する。
【0039】
前記出力部16は、ユーザ側関係性算出部15により算出された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の関係性を出力する。例えば、前記出力部16は、
図5に示すように、一の変数(目的変数:睡眠効率)に対する他の変数(説明変数:不調症状(体全体 疲労)、体重、イベント(飲酒)、不調症状(頭痛)、天気、気温、イベント(風呂)…)の関係性のランキングを画面に表示する。
【0040】
前記ユーザ側送信部17は、データ記憶部12に記憶されている当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データをサーバ装置2にネットワークを介して送信する。この変数の時系列データは、当該ユーザの個人情報に関わるものであるため、個人が特定されない状態で送信される。
【0041】
前記ユーザ側受信部18は、サーバ装置2からネットワークを介して送信されてきた所定の解析処理に関する変更情報を受信する。本実施形態では、後述するようにサーバ装置2からネットワークを介して送信されてきた各解析処理A、B、Cの重み付けの数値に関する変更情報を受信する。
【0042】
[サーバ装置2の構成]
前記サーバ装置2は、ネットワークに接続されたサーバコンピュータであって、各ユーザ情報端末装置1から各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データ(例えば、
図3のビッグデータ200)を収集して、人工知能による機械学習を行うことにより、ヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する。なお、前記サーバ装置2は、各ユーザごとにヘルスケアに関する変数間の関係性を算出するのではなく、ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の関係性を算出する。
【0043】
具体的には、前記サーバ装置2は、各ユーザ情報端末装置1からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信するサーバ側受信部21と、各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データの加工処理を行う第1のサーバ側データ加工処理部22と、各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行うサーバ側解析処理部23と、所定の解析処理に基づいて各ユーザのヘルスケアに関する変数の第1の関係性を算出する第1のサーバ側関係性算出部24とを備える。
【0044】
また、前記サーバ装置2は、前記サーバ側受信部21により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データの加工処理を行う第2のサーバ側データ加工処理部25と、各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて機械学習を行う学習部26と、機械学習の結果に基づいて各ユーザのヘルスケアに関する変数の第2の関係性を算出する第2のサーバ側関係性算出部27とを備える。
【0045】
さらに、前記サーバ装置2は、第1のサーバ側関係性算出部24における所定の解析処理を変更する解析処理変更部28と、所定の解析処理に関する変更情報をユーザ情報端末装置1にネットワークを介して送信するサーバ側送信部29とを備える。
【0046】
前記サーバ側受信部21は、各ユーザ情報端末からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信する。これら各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データは、各ユーザの個人情報に関わるものであるため、個人が特定されない状態で受信される。
【0047】
前記第1のサーバ側データ加工処理部22は、後述するサーバ側解析処理部23による所定の解析処理のため、サーバ側受信部21により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに対して所定の加工処理を行うものである。この所定の加工処理については、ユーザ情報端末装置1のユーザ側データ加工処理部13による加工処理と概ね同一のため、その説明を省略する。
【0048】
前記サーバ側解析処理部23は、第1のサーバ側データ加工処理部22により加工処理が行われた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行う。この解析処理は、ユーザ情報端末装置1におけるユーザ側解析処理部14と同一の解析処理であって、時間相関やDTW(Dynamic Time Warping:動的時間伸縮法)などの公知のアルゴリズムにより、各変数の時系列データの類似度や相関に関する解析処理を行う。
【0049】
また、前記サーバ側解析処理部23は、ユーザ情報端末装置1におけるユーザ側解析処理部14と同様、複数の解析処理を行うものとなされており、各解析処理に重み付けの数値が設定されている。例えばサーバ側解析処理部23は、
図3の(201)に示すように、3つの解析処理A、B、Cを行うものとなされており、解析処理Aの重み付けの初期設定値は0.33、解析処理Bの重み付けの初期設定値は0.33、解析処理Cの重み付けの初期設定値は0.33にそれぞれ設定されている。
【0050】
また、前記サーバ側解析処理部23は、後述の解析処理変更部28により所定の解析処理が変更された場合、その後は各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の所定の解析処理を行う。例えば、サーバ側解析処理部23は、
図3の(201)に示すように、解析処理変更部28により各解析処理A、B、Cの重み付けの数値(解析処理Aの重み付けの数値:0.33→0.4、解析処理Bの重み付けの数値:0.33→0.35、解析処理Cの重み付けの数値:0.33→0.25)が変更されるため、その後は各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて重み付けの数値が変更された各解析処理A、B、Cを行う。
【0051】
前記第1のサーバ側関係性算出部24は、サーバ側解析処理部23により行われた解析処理の結果に基づいて、各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第1の関係性を算出する。例えば、第1のサーバ側関係性算出部24は、
図3の(202)に示すように、サーバ側解析処理部23による変数の時系列データの類似度や相関に関する解析処理の結果に基づいて、一の変数(目的変数)に対する他の変数(α、β、γ、θ、…)の第1の関係性(ランキング:1=データα、2=データγ、3=データθ、4=データβ、…)を算出する。
【0052】
また、前記第1のサーバ側関係性算出部24は、サーバ側解析処理部23において解析処理の変更が行われた場合、サーバ側解析処理部23により行われた変更後の所定の解析処理の結果に基づいて、各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第1の関係性を新たに算出する。例えば、本実施形態では、第1のサーバ側関係性算出部24は、サーバ側解析処理部23において各解析処理A、B、Cの重み付けの数値が変更された場合、次回の解析処理ではサーバ側解析処理部23による重み付けの数値が変更された各解析処理の結果に基づいて、各ユーザ全体のヘルスケアに関する変数間の第1の関係性(ランキング)を新たに算出する。
【0053】
前記第2のサーバ側データ加工処理部25は、後述の学習部26による機械学習ができるビッグデータとして事前の整理や処理を行う。例えば、第2のサーバ側データ加工処理部25は、各ユーザ側情報端末装置1から受信した複数の変数の時系列データを特性に応じてラグ処理を実施したり(例えば、睡眠データは-1日とするなど)、N日間の期間平均処理を行ったり(例えば、2日間平均、3日間平均など)、ある程度の期間(例えば、30日)のデータを有するユーザ側情報端末に限定したり、所定のアルゴリズム(例えば、階層クラスタリング、相関係数、VIF)により所定の変数を選択したりする。
【0054】
前記学習部26は、第2のサーバ側データ加工処理部25により加工処理が行われた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて、AI(人工知能: Artificial Intelligence)による最適な機械学習を行う。例えば、学習部26は、
図3の(203)に示すように、各ユーザの時系列データ(ビッグデータ)で予測精度の高い機械学習を選択し、目的変数に対してどの説明変数が寄与したかを複数のXAI技術で算出する。
【0055】
なお、学習部26における機械学習としては、例えばFeature Importance(gainおよびsplit)、SHAP、Permutation Importanceが挙げられる。「Feature Importance」は、各特徴量(本発明における変数に相当)のターゲットの分類寄与率を評価する指標であって、ある特徴量で分割することでどれくらいジニ不純度を下げられるのかという基準である。また、「SHAP(SHapley Additive exPlanations)」とは、協力ゲーム理論のシャープレイ値(Shapley Value)を機械学習に応用したオープンソースのライブラリであって、シャープレイ値をそのまま算出するには変数の数が増えると組み合わせが増えて計算量が膨大になってしまうことを解消するため、算出方法を工夫することで現実的な計算時間でシャープレイ値を機械学習で扱えるようにしたものである。さらに、「Permutation Importance」とは、機械学習モデルの特徴の有用性を測る手法の1つであり、よく使われる手法にはFeature Importance(LightGBMならこれ)があり、学習時の決定木のノードにおける分割が特徴量(変数)ごとにどのくらいうまくいっているかを定量化して表す。なお、前記学習部26は、ユーザ側解析処理部14やサーバ側解析処理部23において体調や睡眠時間といった変数の粒度を扱うため、変数(特徴量)を同じ粒度に合わせる処理として合計および平均を用いてもよい。
【0056】
前記第2のサーバ側関係性算出部27は、学習部26により行われた機械学習の結果に基づいて、各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第2の関係性を算出する。例えば、第2のサーバ側関係性算出部27は、
図3の(204)に示すように、学習部26によるFeature Importance(gainおよびsplit)、SHAP、Permutation ImportanceなどのAI技術による変数の時系列データの機械学習の結果に基づいて、一の変数(目的変数)に対する他の変数(説明変数:α、β、γ、θ、…)の第2の関係性(ランキング:1=データα、2=データβ、3=データγ、4=データθ、…)を算出する。
【0057】
前記解析処理変更部28は、第1のサーバ側関係性算出部24により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数の第1の関係性が、前記第2のサーバ側関係性算出部27により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数の第2の関係性に合致または近似するように、第1のサーバ側関係性算出部24における所定の解析処理を変更する。例えば、解析処理変更部28は、
図3の(202)(204)に示すように、第1のサーバ側関係性算出部24により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第1の関係性(ランキング:1=データα、2=データγ、3=データθ、4=データβ、…)が、第2のサーバ側関係性算出部27により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第2の関係性(ランキング:1=データα、2=データβ、3=データγ、4=データθ、…)に合致または近似するように、
図3の(201)に示すように、第1のサーバ側関係性算出部24における各解析処理の重み付けの数値(例えば、解析処理Aの重み付けの数値:0.33→0.4、解析処理Bの重み付けの数値:0.33→0.35、解析処理Cの重み付けの数値:0.33→0.25)を変更する。
【0058】
前記サーバ側送信部29は、解析処理変更部28により変更された所定の解析処理に関する変更情報(例えば、解析処理Aの重み付けの数値:0.33→0.4、解析処理Bの重み付けの数値:0.33→0.35、解析処理Cの重み付けの数値:0.33→0.25)をユーザ情報端末装置1にネットワークを介して送信する。
【0059】
[本システムの動作]
次に本システムの動作について、
図4のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0060】
まず、ユーザ情報端末装置1において、データ取得部11が、ユーザ(個人)の身体、健康、活動または環境などのヘルスケアに関する変数の時系列データを取得する(S11)。
【0061】
そして、データ記憶部12が、データ取得部11により取得された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを記憶する(S12)。
【0062】
そして、ユーザ側データ加工処理部13が、後述するユーザ側解析処理部14による所定の解析処理のため、データ記憶部12に記憶されている当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに対して所定の加工処理を行う(S13)。
【0063】
そして ユーザ側解析処理部14は、ユーザ側データ加工処理部13により加工処理された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行う(S14)。
【0064】
そして、ユーザ側関係性算出部15は、ユーザ側解析処理部14により行われた解析処理の結果に基づいて、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性(ランキング)を算出する(S15)。
【0065】
そして、出力部16は、ユーザ側関係性算出部15により算出された当該ユーザのヘルスケアに関する変数の関係性(ランキング)を出力する(S16)。
【0066】
また、ユーザ側送信部17は、データ記憶部12に記憶されている当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データをサーバ装置2にネットワークを介して送信する(S17)。
【0067】
次に、サーバ装置2において、サーバ側受信部21は、ユーザ情報端末装置1からネットワークを介して送信されてきた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを受信する(S21)。
【0068】
そして、第1のサーバ側データ加工処理部22は、後述するサーバ側解析処理部23による所定の解析処理のため、サーバ側受信部21により受信された各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに対して所定の加工処理を行う(S22)。
【0069】
そして、サーバ側解析処理部23は、第1のサーバ側データ加工処理部22により加工処理が行われた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて所定の解析処理を行う(S23)。
【0070】
そして、第1のサーバ側関係性算出部24は、サーバ側解析処理部23により行われた解析処理の結果に基づいて、各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第1の関係性(ランキング)を算出する(S24)。
【0071】
一方、同じくサーバ装置2において、第2のサーバ側データ加工処理部25は、後述の学習部26による機械学習ができるビッグデータとして事前の整理や処理を行う(S25)。
【0072】
そして、学習部26は、第2のサーバ側データ加工処理部25により加工処理が行われた各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて、AI(人工知能)により最適な機械学習を行う(S26)。
【0073】
そして、第2のサーバ側関係性算出部27は、学習部26により行われた機械学習の結果に基づいて、各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第2の関係性(ランキング)を算出する(S27)。
【0074】
そして、解析処理変更部28は、第1のサーバ側関係性算出部24により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第1の関係性(ランキング)が、前記第2のサーバ側関係性算出部27により算出された各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第2の関係性(ランキング)に合致または近似するように、第1のサーバ側関係性算出部24における各解析処理A、B、Cの重み付けの数値を変更する(S28)。
【0075】
そして、サーバ側送信部29は、解析処理変更部28により変更された所定の解析処理に関する変更情報(例えば、解析処理Aの重み付けの数値は0.33→0.4、解析処理Bの重み付けの数値は0.33→0.35、解析処理Cの重み付けの数値は0.33→0.25)をユーザ情報端末装置1にネットワークを介して送信する(S29)。
【0076】
次に、ユーザ情報端末装置1において、ユーザ側受信部18は、サーバ装置2からネットワークを介して送信されてきた各解析処理A、B、Cの重み付けの数値に関する変更情報を受信する(S18)。
【0077】
そして、ユーザ側解析処理部14は、後述のユーザ側受信部18により受信された各解析処理A、B、Cの重み付けの数値に関する変更情報に基づいて各解析処理A、B、Cの重み付けの数値の変更を行う(S19)。
【0078】
その後、ユーザ情報端末装置1において、S11~16の処理を行うによって、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の各解析処理A、B、Cを行って、当該ユーザのヘルスケアに関する変数間の関係性(ランキング)を新たに算出して出力する。
【0079】
なお、本実施形態では、ユーザ側解析処理部14およびサーバ側解析処理部23は、各解析処理に重み付けの数値を設定するものとしたが、重み付けの数値を設定しないものとしてもよい。また、ユーザ側解析処理部14およびサーバ側解析処理部23は、複数の解析処理を行うものとしたが、一つの解析処理を行うものとしてもよい。また、なお、ユーザ側解析処理部14およびサーバ側解析処理部23は、上述の時間相関やDTWのアルゴリズムに限定されるものではなく、その他のアルゴリズムの解析処理を行ってもよいが、解析処理の迅速性の観点からAIによる機械学習のような大規模な解析処理は含まれない。
【0080】
また、ユーザ側解析処理部14およびサーバ側解析処理部23は、所定の解析処理の一つとして、本出願人が先に提案している特開2022-013409号の「関係性推定システム」を用いてもよい。この関係性推定システムを具体的に説明すると、関係性推定システムにおいて、情報端末装置は、端末外部のIoTデバイス、外部Webサービス及び端末のアプリケーションから、複数の種類の属性(変数)の時系列データを取得し、各属性(変数)の時系列データ間の類似度を計算し、この類似度を各ノード間のリンクの重みとして各ノードをリンクで接続した無向性関係性グラフを生成し、ノード間毎にリンクの重みが大きい経路を算出して、この複数の経路に基づき総合的なリンクの重みが大きいノード間を抽出する。そして、各属性(変数)の時系列データ間の相関を計算し、当該各属性(変数)間に応じた関係性グラフの各ノード間の因果関係を算定し、各ノード間の因果関係に基づいて、有向性の関係性グラフにアップデートし、抽出されたノード間に対応する属性(変数)間の関係性を推定する。
【0081】
また、ユーザ情報端末装置1の出力部16は、
図5に示すように、目的変数に対する複数の他の説明変数をランキングの形式で出力するものとしたが、出力の形式は限定されうものではなく、例えば、
図6に示すように、目的変数に対する一つの説明変数をグラフなどの詳細情報により出力するなどしてもよい。
【0082】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…ユーザ情報端末装置
11…データ取得部
12…データ記憶部
13…ユーザ側データ加工処理部
14…ユーザ側解析処理部
15…ユーザ側関係性算出部
16…出力部
17…ユーザ側送信部
18…ユーザ側受信部
2…サーバ装置
21…サーバ側受信部
22…第1のサーバ側データ加工処理部
23…サーバ側解析処理部
24…第1のサーバ側関係性算出部
25…第2のサーバ側データ加工処理部
26…学習部
27…第2のサーバ側関係性算出部
28…解析処理変更部
29…サーバ側送信部
【要約】
【課題】本発明は、個人のヘルスケアに関する変数の時系列データを迅速かつ精度良く解析することができるヘルスケア用データ解析システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
サーバ装置2において、各ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データを収集したあと、所定の解析処理による各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第1の関係性が、機械学習による各ユーザのヘルスケアに関する変数間の第2の関係性に合致または近似するように所定の解析処理を変更する。また、ユーザ情報端末装置1において、サーバ装置2における所定の解析処理の変更情報に基づいて所定の解析処理を変更し、当該ユーザのヘルスケアに関する変数の時系列データに基づいて変更後の解析処理を行うことにより変数間の関係性を新たに算出する。
【選択図】
図2