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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】フィルタ、フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/24 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B01D46/24 Z
B01D46/24 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020559880
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2019045130
(87)【国際公開番号】W WO2020121744
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2018234045
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591059445
【氏名又は名称】ホーコス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392022374
【氏名又は名称】テックプロジェクトサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】福島 大治
(72)【発明者】
【氏名】栗原 秀直
(72)【発明者】
【氏名】七五三 英樹
(72)【発明者】
【氏名】東風平 朝史
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉崇
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-130068(JP,A)
【文献】特開2000-225182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0169450(US,A1)
【文献】特開昭60-153902(JP,A)
【文献】特開2017-154071(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244745(WO,A1)
【文献】米国特許第05277157(US,A)
【文献】特開2016-135461(JP,A)
【文献】特開昭54-103920(JP,A)
【文献】特表2001-511866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
24/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングにフィルタを収容した状態で、前記フィルタ内に液体を注入してフィルタの内面を湿潤させた後、当該フィルタを空間に開放し、この開放状態で使用済のフィルタを新しいフィルタに交換する、ウェット・オープン・チェンジ方式のフィルタ装置に用いられるフィルタであって、
円筒形または角筒形に形成され、内側の一次側空間から外側の二次側空間へ濾過対象の流体が流れる中空のフィルタ本体と、
前記フィルタ本体の上部に取り付けられる蓋体と、を備え、
前記フィルタ本体は、前記ハウジングに収容された状態で、上側に位置する上部開口と下側に位置する下部開口とを有しており、
前記蓋体は、前記フィルタ本体の前記上部開口を覆う天板と、前記フィルタ本体の上部と嵌合する側壁とを有し、
前記側壁の下端が、前記フィルタ本体の上端より下方の位置にある、フィルタにおいて、
前記フィルタ本体の前記上部開口に、前記下部開口を介して前記フィルタ本体の内部に注入された液体との接触が可能な天井部が設けられ、
前記天井部の下面は、その全域が前記側壁の下端位置またはそれより下方の位置にあり、
前記天井部は、前記蓋体の裏側に充填された樹脂からなり、
前記樹脂は、前記フィルタ本体の前記上部開口、および前記蓋体と前記フィルタ本体との間隙にそれぞれ充填されており、
前記フィルタ本体の下端は、前記一次側空間と前記二次側空間とを隔離する樹脂でシールされている、ことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記天井部の下面は平坦面である、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記天井部の下面は、下方へ突出した突出面である、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記天井部の下面は傾斜面である、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記蓋体の側壁は、前記天板の周縁に設けられた外壁であって、前記フィルタ本体の外側に位置する、請求項1ないし請求項のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項6】
前記蓋体の側壁は、前記天板の周縁近傍に設けられた内壁であって、前記フィルタ本体の内側に位置する、請求項1ないし請求項のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項7】
前記蓋体の側壁は、前記天板の周縁に設けられて前記フィルタ本体の外側に位置する外壁と、前記天板の周縁近傍に設けられて前記フィルタ本体の内側に位置する内壁とからなる、請求項1ないし請求項のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項8】
前記内壁の下端は、前記外壁の下端よりも下方の位置にあり、
前記天井部の下面は、前記内壁の下端と同じ位置にある、請求項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記フィルタ本体の下部に取り付けられるフランジと、
前記フランジの下面に装着されるシール部材と、をさらに備え、
前記シール部材は、Oリング、Xリング、またはリップシールからなる、請求項1ないし請求項のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項10】
前記フィルタ本体は、内筒と、外筒と、これらの間に収納された濾材とを有し、
前記シール部材は、前記内筒と前記外筒との間の領域の中央よりも内筒寄りの位置に設けられている、請求項に記載のフィルタ。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のフィルタと、
前記フィルタを収容するハウジングと、を備え
記ハウジングは、
前記フィルタが設置される基台と、
前記基台に着脱可能に取り付けられ、前記フィルタを覆うカバーと、
から構成されることを特徴とするフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の粉塵を捕集するフィルタ、およびそれを用いたフィルタ装置に関し、特に、フィルタ交換時の粉塵によるばく露を防止するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタ装置は一般に、ハウジングと、このハウジングに収容されたフィルタと、濾過対象の流体をハウジング内へ導入する導入部と、フィルタで濾過された流体を排出する排出部とを備えている。導入部から導入された流体に含まれている粉塵は、フィルタの濾材で捕集され、粉塵が除去された流体は、清浄流体となって排出部から排出される。後掲の特許文献1、2には、中空で円筒形のフィルタの例が示されている。
【0003】
フィルタは、粉塵の捕集を繰り返すに従って目詰まりを生じるため、一定期間使用した時点で交換が必要となる。フィルタの交換にあたっては、使用済のフィルタに付着した粉塵の飛散によって作業者がばく露することがないように、細心の注意を払う必要がある。従来から行われているバグイン・バグアウト(BIBO)方式のフィルタ交換方法の場合、ビニール袋を介してフィルタの交換を行うことで、使用済のフィルタが開放空間に露出しないようにして、粉塵の飛散によるばく露を防止している。
【0004】
しかしながら、バグイン・バグアウト方式では、ビニール袋越しにフィルタの取り出しや挿入を行うため、作業性が悪いだけでなく、作業ミスにより使用済のフィルタが露出して、作業者がばく露を受けるおそれがある。そこで、フィルタを湿潤させてから交換するウェットダウン処理が従来から提案されている(たとえば特許文献3)。これは、フィルタ装置の内部へ洗浄水を放水して、収容されているフィルタを湿潤させた後、使用済のフィルタを取り出して新しいものに交換する方法である。これによると、取り出したフィルタに付着している粉塵が湿潤状態にあるため、粉塵の飛散によるばく露を抑制することができる。
【0005】
しかるに、フィルタ装置の内部へ洗浄水を放水しても、収容されているフィルタの粉塵付着面の全領域に洗浄水が万遍なく行き渡る保証はなく、また、装置内部に収容されたフィルタの湿潤状態を目視で確認することも簡単ではないことから、粉塵付着面の全域を均一に湿潤させることは困難である。このため、湿潤されていない箇所に残留している粉塵が、フィルタの取り出し時に飛散して、ばく露をひき起こすおそれがある。
【0006】
この対策として本発明者らは、先の出願である特願2018-115977号において、ウェット・オープン・チェンジ(以下「WOC」と表記)と称するフィルタ交換方法を提案した。この方法は、ハウジングにフィルタを収容した状態で、水の注入によりフィルタを水没状態にして湿潤(ウェット)させ、その後ハウジングを取り外して、フィルタを空間に開放(オープン)し、この開放状態で使用済のフィルタを新しいフィルタに交換(チェンジ)する、という手順を踏む。このようなWOC方式によれば、フィルタの粉塵付着面の全域が水没状態で漏れなく湿潤されるので、フィルタ交換時に粉塵が飛散することがなく、ばく露を効果的に防止することができる。また、使用済のフィルタを開放空間に露出させた状態で交換するので、交換作業も非常にやり易くなる。
【0007】
図20図21は、上述したWOC方式によるフィルタ交換の具体例を示している。図20(a)は、フィルタ装置の概略構成図である。フィルタ装置100は、ハウジング10と、このハウジング10に収容されたフィルタ1とから構成される。ハウジング10は、濾過対象の流体X(含塵気流)が導入される導入部14と、フィルタ1で濾過された流体Y(清浄気流)が排出される排出部15とを有している。
【0008】
上記フィルタ装置100において、導入部14からフィルタ1の内部の一次側空間Pに流入した含塵気流Xは、矢印のようにフィルタ1を内側から外側へ通過する過程で濾過され、気流中の粉塵がフィルタ1で捕集される。粉塵が除去されて二次側空間Sへ流出した気流は、清浄気流Yとなって排出部15から排出される。
【0009】
図20(b)~図21(h)は、上記フィルタ装置100におけるフィルタ1を交換する手順の概要を示している。フィルタ交換にあたっては、フィルタ装置100の運転を停止した後、導入部14の上流および排出部15の下流に設けられているバルブ(図示省略)を閉じた状態にする。そして、導入部14と連通する注水管(図示省略)を通して、図20(b)のように導入部14からフィルタ1内に液体Wを注水する。注入する液体Wは水であってもよいし、水以外の液体であってもよい。注入された液体Wは、フィルタ1の下部開口を介して、フィルタ1の一次側空間Pに浸入し、注入にしたがって液体Wの液位が上昇してゆく。
【0010】
液体Wがフィルタ1の外面から染み出す程度まで注入されると、図20(c)のように、一次側空間Pが液体Wで満たされる。このとき、フィルタ1の内面すなわち粉塵付着面は、全域が液体Wに浸漬した水没状態となっている。液体Wが充満したことが、たとえば液体注入路に設けた羽根車の回転停止などにより確認されると、液体Wの注入を停止し、続いて図20(d)のように、フィルタ1内の液体Wを導入部14から排水する。排水終了時点では、図21(e)のように、フィルタ1の内面(粉塵付着面)が湿潤面mとなっている。
【0011】
次に、図21(f)のように、ハウジング10を構成するカバー10aと基台10bとを分離して、カバー10aを取り外す。また、フィルタ1を基台10bに固定している固定部材(図示省略)も取り外す。カバー10aの取り外しによって、図21(g)のように、内面が湿潤したフィルタ1が、開放空間に露出した状態となる。この状態で、図21(h)のように、使用済のフィルタ1を取り出し、新しいフィルタ1’を基台10bにセットする。
【0012】
以上のような手順を踏むことにより、開放空間で交換作業を行っても、使用済のフィルタ1の粉塵付着面が湿潤しているため、粉塵が飛散するおそれがなく、ばく露を防止して安全を確保することができる。また、バグイン・バグアウト方式のようなビニール袋を使わず、フィルタ1を開放空間に露出させた状態で交換するので、広いスペースを使って交換作業を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2017-154071号公報
【文献】特開2016-135461号公報
【文献】特開2010-51852号公報
【文献】特開2003-33602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したWOC方式のフィルタ装置において、フィルタ1の内部空間(一次側空間P)に液体Wを注入してウェットダウンを行う際に、注入された液体Wが内部空間に完全に充満せず、内部空間の上部に、図22に示すような空気溜りQが生じることが、本発明者らが行った試験により判明した。
【0015】
図22において、フィルタ1は、円筒形のフィルタ本体2と、このフィルタ本体2の上部開口に取り付けられた蓋体3とを備えている。フィルタ本体2は、内筒と外筒とそれらの間に収容された濾材とを備えている(図示省略)。蓋体3は、フィルタ本体2の上部開口を覆う天板31と、この天板31の周縁に環状に設けられた側壁32とを有しており、側壁32はフィルタ本体2の上部外面に嵌合されている。液体Wの注入に伴って、フィルタ本体2の内部空間の空気は、圧縮されつつフィルタ本体2を通って外へ逃げるが、内部空間の上部のdで示した範囲においては、フィルタ本体2の外側が蓋体3の側壁32で覆われているため、空気がフィルタ本体2を通って外へ逃げることができない。その結果、当該範囲で空気溜りQが生じることになる。
【0016】
このような空気溜りQが生じると、蓋体3の天板31の裏側に付着している粉塵Zを、液体Wにより湿潤させることができないので、フィルタ交換を行う際に、取り出したフィルタ1から乾燥した粉塵Zが飛散し、作業者がばく露を受けるおそれがある。尤も、蓋体3の側壁32をなくせば、空気溜りQは生じないが、側壁32がないと蓋体3をフィルタ本体2に強固に取り付けることができず、蓋体3とフィルタ本体2との間のシール性能も損なわれることから、側壁32の省略は事実上不可能である。
【0017】
なお、前掲の特許文献4には、フィルタ内部の上部空間に空気溜りが生じないようにするため、フィルタの上部開口を覆う蓋体の一部にスリットを設けることが記載されている。しかるに、この構造は、本文献のようにフィルタの外部から内部へ流体が流れるフィルタ装置には有用であるが、フィルタの内部がスリットを介して外部と連通するため、図20(a)で示したような、フィルタの内部から外部へ流体が流れるフィルタ装置には適用できない。
【0018】
本発明は、上述したような、WOC方式に特有の問題点を解決するもので、ウェットダウン時に、フィルタの内部空間に空気溜りが生じないようにして、付着した粉塵の湿潤漏れをなくすことで、より万全なばく露対策を可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るフィルタは、ウェット・オープン・チェンジ方式のフィルタ装置に用いられるフィルタであって、円筒形または角筒形に形成され、内側の一次側空間から外側の二次側空間へ濾過対象の流体が流れる中空のフィルタ本体と、このフィルタ本体の上部に取り付けられる蓋体とを備えている。フィルタ本体は、ハウジングに収容された状態で、上側に位置する上部開口と下側に位置する下部開口とを有している。蓋体は、フィルタ本体の上部開口を覆う天板と、フィルタ本体の上部と嵌合する側壁とを有する。側壁の下端は、フィルタ本体の上端より下方の位置にある。フィルタ本体の上部開口には、下部開口を介してフィルタ本体の内部に注入された液体との接触が可能な天井部が設けられ、この天井部の下面は、その全域が側壁の下端の位置またはそれより下方の位置にある。天井部は、蓋体の裏側に充填された樹脂からなり、この樹脂は、フィルタ本体の上部開口、および蓋体とフィルタ本体との間隙にそれぞれ充填されている。そして、フィルタ本体の下端は、一次側空間と二次側空間とを隔離する樹脂でシールされている。
【0020】
また、本発明に係るフィルタ装置は、上述したフィルタと、このフィルタを収容するハウジングとを備えている。ハウジングは、フィルタが設置される基台と、基台に着脱可能に取り付けられフィルタを覆うカバーとから構成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィルタ本体の内部空間の上部に天井部が存在し、この天井部の下面の全域が、蓋体の側壁の下端と同じ位置かそれより下方の位置にあるので、液体の注入に伴って内部空間の空気を、側壁により阻害されることなく、フィルタ本体を通して残らず逃がすことができる。その結果、内部空間の上部に空気溜りが生じなくなり、注入された液体は、確実に天井部の下面と接触する。これにより、フィルタ本体の内面および天井部の下面に付着している粉塵が漏れなく湿潤されるので、フィルタの交換時に、未湿潤の粉塵が飛散してばく露が発生するのを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明のフィルタの概略構成を示す断面図である。
図2図2は、フィルタの内部空間が液体で満水となった状態を示す部分断面図である。
図3図3は、フィルタを収容したフィルタ装置の概略構成を示す断面図である。
図4図4は、フィルタ本体下部のシール構造を示す要部拡大断面図である。
図5図5は、天井部の下面に生じる窪みを示す断面図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図9図9は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図10図10は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図11図11は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図12図12は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図13図13は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図14図14は、本発明の他の実施形態を示す部分断面図である。
図15図15は、本発明とは別の解決手段を採用した参考例を示す断面図である。
図16図16は、本発明とは別の解決手段を採用した参考例を示す断面図である。
図17図17は、本発明とは別の解決手段を採用した参考例を示す断面図である。
図18図18は、本発明とは別の解決手段を採用した参考例を示す断面図である。
図19図19は、本発明とは別の解決手段を採用した参考例を示す断面図である。
図20図20は、WOC方式によるフィルタ交換方法の手順を説明する図である。
図21図21は、WOC方式によるフィルタ交換方法の手順を説明する図である(図20の続き)。
図22図22は、フィルタ本体の内部空間に空気溜りが生じた状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一の符号を付してある。
【0024】
図1は、本発明に係るフィルタの一例を示している。フィルタ1は、中空のフィルタ本体2と、フィルタ本体2の上部に取り付けられる蓋体3と、フィルタ本体2の下部に取り付けられるフランジ4と、本発明の特徴である天井部5とを備えている。本例では、フィルタ1は、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を構成している。
【0025】
フィルタ本体2は、円筒形に形成されており、上側に上部開口21を有しているとともに、下側に下部開口22を有している。図4に示すように、フィルタ本体2は、内筒27と、外筒28と、これらの間に収納された濾材26とを備えている。内筒27および外筒28は、流体が通過する多数の孔が形成された円筒状の金属板からなる。濾材26は、たとえばプリーツ状の濾材や、粒状の濾材からなる。
【0026】
蓋体3は、金属または樹脂からなり、フィルタ本体2の上部開口21を覆う円形の天板31と、この天板31の周縁に設けられた環状の側壁32とを有している。側壁32は、フィルタ本体2の上部と嵌合して、フィルタ本体2の外側に位置する外壁である。側壁32の下端32aは、フィルタ本体2の上端2aより下方の位置にある。
【0027】
フランジ4は、金属または樹脂からなり、環状の底壁41と、この底壁41に設けられた環状の側壁42、43と、側壁43で囲まれた開口44とを有している。底壁41は、図3に示すように、ハウジング10の基台10bの上に載置される。側壁42は、フィルタ本体2の下部と嵌合して、フィルタ本体2の外側に位置する外壁である。側壁43は、フィルタ本体2の下部と嵌合して、フィルタ本体2の内側に位置する内壁である。開口44は、円形に形成されていて、フィルタ本体2の内部空間と連通している。フランジ4とフィルタ本体2との間隙には、一次側空間Pと二次側空間Sとを隔離する樹脂6が充填されており、この樹脂6によってフランジ4とフィルタ本体2がシールされる。
【0028】
天井部5は、蓋体3の裏側に充填された樹脂からなる。製造工程では、蓋体3を図1と上下逆にして下側に置き、その上からフィルタ本体2を蓋体3に嵌合させた状態で、蓋体3を受皿として、樹脂を側壁32の下端32aの位置まで充填する。この樹脂は、フィルタ本体2の上部開口21に充填されるとともに、蓋体3とフィルタ本体2との間隙にも充填される。これにより、フィルタ本体2と蓋体3が樹脂によりシールされる。このようにして形成された天井部5の下面5aは、蓋体3の天板31と平行な平坦面となっていて、その全域が蓋体3の側壁32の下端32aと同じ位置Aにある。他の例として、下面5aは、その全域が側壁32の下端位置Aより所定距離だけ下方に位置していてもよい
【0029】
図2は、図1のフィルタ1の内部空間(一次側空間)に、ウェットダウン用の液体W(たとえば水)を注入して、内部空間を満水にした状態を示している。図からわかるように、従来は空気溜りQ(図22)が生じていた内部空間の上部領域(dの範囲)には、樹脂からなる天井部5が存在し、しかも天井部5の下面5aの位置が、蓋体3の側壁32の下端位置Aに一致している。このため、液体Wの注入に伴って、内部空間の空気を、側壁32により阻害されることなく、フィルタ本体2を通して残らず逃がすことができる。その結果、内部空間の上部に空気溜りが生じなくなり、注入された液体Wは、確実に天井部5の下面5aと接触する。これにより、フィルタ本体2の内面および天井部5の下面5aに付着している粉塵が漏れなく湿潤されるので、フィルタ1の交換時に、未湿潤の粉塵が飛散してばく露が発生するのを阻止することができる。
【0030】
従来のバグイン・バグアウト方式によるフィルタ交換の場合は、ビニール袋を使ってフィルタの出し入れを行うので、フィルタの一部に未湿潤の部分があっても、それほど大きな問題にはならなかった。しかるに、前述のWOC方式によるフィルタ交換の場合は、フィルタが完全に露出した状態で交換を行うため、フィルタの一部にでも未湿潤の部分があると、ばく露に直結する事態となる。それゆえに、本発明は、特にWOC方式を前提としたフィルタ装置において絶大な効果を発揮すると言える。
【0031】
図3は、図1のフィルタ1を備えたフィルタ装置の一例を示している。フィルタ装置100は、フィルタ1と、このフィルタを収容するハウジング10とを備えている。フィルタ1がハウジング10に収容された状態で、フィルタ本体2の上部開口21は上側に位置し、フィルタ本体2の下部開口22は下側に位置している。なお、ハウジング10に収容されるフィルタ1は、図1に示したものに限らず、後述する各種のフィルタであってもよい。
【0032】
ハウジング10は、フィルタ1を覆うカバー10aと、フィルタ1が設置される基台10bとから構成される。フィルタ1は、図示しないボルトなどの固定部材によって、基台10bに着脱可能に固定されている。カバー10aは、連結具8によって、基台10bに着脱可能に取り付けられている。基台10bには、含塵気流が導入される導入部14が設けられており、カバー10aには、フィルタ1で濾過された清浄気流が排出される排出部15が設けられている。
【0033】
図3のフィルタ装置100における気流の流れは、図20(a)に示した気流の流れと同じであり、フィルタ本体2の内側(一次側空間P)から外側(二次側空間S)へ気流が流れる。すなわち、導入部14からフィルタ1の一次側空間Pに流入した含塵気流は、フィルタ1を内側から外側へ通過する過程で濾過され、清浄気流となって排出部15から排出される。気流中の粉塵は、フィルタ本体2で捕集されるが、フィルタ本体2の内面や、天井部5の下面5aにも粉塵が付着する。しかるに、ウェットダウン処理時に一次側空間Pに液体を注入すると、図2で説明したように、液体Wが空間内に完全に充満するので、フィルタ本体2の内面や天井部5の下面5aに付着した粉塵は、漏れなく湿潤状態となる。
【0034】
ところで、フィルタ装置にあっては、粉塵の捕集効率が性能評価の重要なファクターとなる。フィルタ単体の捕集効率はフィルタのメーカーによって保証されるが、フィルタを組み込んだ最終製品としてのフィルタ装置においても、総合的に同じ捕集性能が保証される必要がある。このため、製薬業界などで使用されるフィルタ装置では、捕集性能が基準値を満たしているかどうかを確認するための完全性試験が不可欠となる。たとえば、HEPAフィルタの場合は、完全性試験において99.97%の捕集効率(もしくはフィルタ性能に従った捕集効率)が要求される。そして、この捕集効率の確保には、フィルタの一次側と二次側とを隔離するシール部材のシール性能が大きく影響する。
【0035】
従来、上記のようなシール部材として、フィルタの下面とハウジングのフィルタ設置面との間に、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのスポンジパッキンを介在させていた。しかしながら、スポンジパッキンは、初期のシール性能は優れているが、経年劣化によりパッキンが潰れて形状の復元性が低下し、繰り返し脱着した場合にシール性能を保証するのが難しくなるという懸念がある。
【0036】
そこで、図3のフィルタ装置100では、フィルタ1のフランジ4の底壁41と基台10bとの間に、Oリングからなるシール部材7を設けている。Oリングは、スポンジパッキンに比べて、経年劣化による形状復元性の低下が少なく、シール性能を長期に維持できることから、誰が扱っても同等のシール性能が得られる利点を有する。他の例として、Oリングに代えて、Xリングやリップシールなどをシール部材7として用いてもよい。
【0037】
シール部材7は、基台10b側に設けてもよいが、本実施形態では、フランジ4の底壁41の下面に形成された環状溝41a(図4)に装着されている。すなわち、シール部材7は、フィルタ1の一構成部品となっている。なお、シール部材7が装着される環状溝が形成された別部材を用意し、これをフランジ4に取り付けてもよい。
【0038】
図4に示すように、本実施形態においては、環状のシール部材7が、フィルタ本体2の内筒27と外筒28との間の領域Uの中央よりも、内筒27寄りの位置に設けられている。したがって、フィルタ1を上方からボルトや押さえ板などで締め付けて基台10bに固定する際に、締付力が内筒27を介してシール部材7に伝わり易くなる。このため、シール部材7は内筒27からの押圧力を受けて、フランジ4と基台10bとの間に強く圧着されるので、十分なシール性能を確保することができる。しかも、シール部材7は、内筒27寄りの位置に設けられるため、環径の短い小型のシール部材を用いることができる。なお、図4では、シール部材7は内筒27の真下に配置されているが、これは一例であって、シール部材7は内筒27近傍の任意の位置に配置すればよい。
【0039】
ところで、図1に示した実施形態において、天井部5を形成するにあたって樹脂を充填した場合、天井部5の下面5aが完全な平坦面にならず、図5に示したように、樹脂の収縮などによる大小の窪みR1、R2が生じることがある。これらの窪みR1、R2は、側壁32の下端位置Aより上にあるため、ウェットダウン時に液体Wを注入した際に、窪みR1、R2が空気溜りとなって、液体Wが窪みR1、R2の内部に届かないおそれがある。このため、窪みR1、R2内に粉塵が付着していると、当該粉塵が液体Wによって湿潤されず、フィルタ交換時にばく露が発生する懸念が残る。
【0040】
そこで、この対策として、たとえば、図6および図7に示すような実施形態が考えられる。図6では、天井部5の下面5bが円錐形、角錐形、または屋根形に形成されている。図7では、天井部5の下面5cがドーム形または鞍形に形成されている。これらの実施形態では、天井部5の下面5b、5cが、下方へ突出した突出面となっていて、各突出面は、側壁32の下端位置Aより下方に位置している。また、天井部5は、樹脂成型により形成されている。
【0041】
また、他の例として、図8に示すような実施形態も考えられる。図8では、天井部5の下面5dが傾斜面に形成されており、この傾斜面は、側壁32の下端位置Aより下方に位置している。また、天井部5は、樹脂成型により形成されている。
【0042】
さらに他の例として、図9に示すような実施形態も考えられる。図9では、天井部5の下面5eが非対称の円錐形、角錐形、または屋根形の突出面に形成されており、この突出面は、側壁32の下端位置Aより下方に位置している。また、天井部5は、樹脂成型により形成されている。なお、下面5eは、非対称のドーム形または鞍形の突出面であってもよい。
【0043】
このように、天井部5の下面5b~5eを、側壁32の下端位置Aより下方へ位置させることで、下面5b~5eに図5のような窪みR1、R2が存在したとしても、これらの窪みに空気溜りは発生せず、注入された液体は必ず窪みの内部に届くので、天井部5の下面5b~5eは、その全域が液体Wと接触する。したがって、下面5b~5eに付着している粉塵を漏れなく湿潤させることができ、ばく露のおそれを払拭することができる。
【0044】
図10は、蓋体3の他の実施形態を示している。前述の図1においては、蓋体3の側壁32が、天板31の周縁に設けられた外壁であって、フィルタ本体2の外側に位置している。これに対し、図10の実施形態では、蓋体3の側壁33が、天板31の周縁近傍に設けられた内壁であって、フィルタ本体2の内側に位置している。ここでは、天井部5の下面5aは、側壁33の下端33aの位置Bと同じ位置にあるが、この下端位置Bより所定距離だけ下方の位置にあってもよい。また、天井部5に図6図9の実施形態を採用してもよい。
【0045】
図11は、蓋体3のさらに他の実施形態を示している。図11の実施形態では、蓋体3の側壁が、図1の外壁32と図10の内壁33とからなる。内壁33の下端33aは、外壁32の下端32aよりも下方の位置にある。天井部5の下面5aは、内壁33の下端33aと同じ位置Bにある。この場合も、下面5aは、内壁33の下端位置Bより所定距離だけ下方の位置にあってもよい。また、天井部5に図6図9の実施形態を採用してもよい。
【0046】
図12は、天井部5の他の実施形態を示している。図12では、天井部5は、あらかじめ樹脂成型された成型品からなり、蓋体3に後付けで取り付けられている。取付方法としては、たとえば、天井部5を内壁33の内側に嵌合して、接着剤などにより天板31に固定する方法が考えられる。外壁32と内壁33とは同じ長さとなっているが、両者の長さは異なっていてもよい。天井部5の下面5fは、外壁32の下端32aの位置Aより下方にある。また、ここでは、天井部5の下面5fが、図6の下面5bと同じ形状となっているが、下面5fの形状は、図7図9の各下面5c~5eと同じ形状であってもよい。
【0047】
図13は、天井部5のさらに他の実施形態を示している。図13では、天井部5と蓋体30(天板31および側壁32)とが、樹脂成型により一体に形成されている。この場合、天井部5と蓋体30とをあらかじめ単一の成型品として製造し、この成型品をフィルタ本体2に固定部材や樹脂などで固定してもよいし、あるいは、フィルタ本体2に直接、天井部5と蓋体30とを樹脂成型してもよい。天井部5の下面5gは、外壁32の下端32aの位置Aより下方にある。ここでも、天井部5の下面5gが、図6の下面5bと同じ形状となっているが、下面5gの形状は、図7図9の各下面5c~5eと同じ形状であってもよい。
【0048】
図14は、天井部5のさらに他の実施形態を示している。図14では、蓋体3の天板31の一部が、天井部5を兼用している。蓋体3は、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。天井部5の下面5hは、図6の下面5bと同様の、円錐形、角錐形、または屋根形の突出面であり、側壁32の下端32aの位置Aより下方に位置している。下面5hの形状は、図7図9の各下面5c~5eと同じ形状であってもよい。
【0049】
フィルタ1の内部空間に空気溜りが生じないようにする手段としては、以上述べた本発明による実施形態以外にも、いくつかの手段が考えられる。それらを、参考例として図15図19に掲げている。
【0050】
図15では、フィルタ本体2の上部に、図1の上部開口21や蓋体3が設けられず、図1の下部開口22を残して、フィルタ本体2が有底の筒状に一体的に形成されている。これによると、ウェットダウン時の注水の際に、内部空間の空気をフィルタ本体2の上面を通して逃がすことができるため、内部空間に空気溜りが生じるのを回避することができる。
【0051】
図16では、フィルタ本体2の上部に、図1の蓋体3に代えて、開口9aを有するフランジ9が設けられている。そして、このフランジ9の上に、濾材のみからなるフィルタ板50が、スタッドボルト51、ナット52、押え板53などにより取り付けられている。フランジ9の開口9aは、フィルタ板50で覆われている。このような構造によっても、ウェットダウン時の注水の際に、フィルタ本体2の内部空間の空気を、開口9aおよびフィルタ板50を通して逃がすことができるため、内部空間に空気溜りが生じるのを回避することができる。
【0052】
図17は、図16の変形例であって、別のフランジ54を追加し、このフランジ54に、フィルタ板50をボルト55、ナット56、押え板57などにより取り付けたものである。
【0053】
図18では、蓋体3の天板31が、上方へ突出する円錐状に形成されており、その頂点位置に設けられた孔31gに、シリンジフィルタ(通称:コマフィルタ)60が装着されている。このような構造によっても、ウェットダウン時の注水の際に、フィルタ本体2の内部空間の空気を、シリンジフィルタ60を通して逃がすことができるため、内部空間に空気溜りが生じるのを回避することができる。
【0054】
図19では、(a)に示すように、蓋体3の天板31の一部に、空気抜き用の孔31hが設けられている。詳しくは(b)に示すように、孔31hは、内筒27と外筒28との間における、プリーツ状濾材26の二次側空間2s(外側)に対応する位置に設けられている。この孔31hは、複数箇所に設けてもよい。プリーツ状濾材26の一次側空間2p(内側)は、粉塵で汚れているが、濾過された気流が流れる二次側空間2sは粉塵で汚れていないので、ここに空気抜き用の孔31hを設けても汚染の心配はない。このような構造によっても、ウェットダウン時の注水の際に、フィルタ本体2の内部空間の空気を、孔31hを通して逃がすことができるため、内部空間に空気溜りが生じるのを回避することができる。
【0055】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、種々の実施形態を採用することができる。たとえば、前記の実施形態では、円筒形のフィルタ本体2を例に挙げたが、フィルタ本体2は角筒形であってもよい。また、前記の実施形態では、フィルタ1としてHEPAフィルタを例に挙げたが、これより更に高性能のULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)や、その他の一般のフィルタに対しても、本発明は適用が可能である。また、前記の実施形態では、濾過対象の流体として気流(気体)を例に挙げたが、本発明は液体や蒸気などを濾過する装置に対しても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、高薬理活性物質を取り扱う医薬品工場や農薬工場のような、ばく露対策に万全を期す必要がある場所において利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 フィルタ
2 フィルタ本体
2a フィルタ本体の上端
3 蓋体
4 フランジ
5 天井部
5a~5h 天井部の下面
7 シール部材
10 ハウジング
10a カバー
10b 基台
21 上部開口
26 濾材
27 内筒
28 外筒
31 天板
32 側壁(外壁)
33 側壁(内壁)
32a、33a 側壁の下端
100 フィルタ装置
U 内筒と外筒との間の領域
W 液体
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
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図12
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