(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】コイン搬送装置およびコイン処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/14 20190101AFI20240125BHJP
G07D 9/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G07D11/14
G07D9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021146205
(22)【出願日】2021-09-08
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116987
【氏名又は名称】旭精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安部 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太哉
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-070272(JP,U)
【文献】特開平06-218134(JP,A)
【文献】特開2006-178850(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128041(JP,U)
【文献】特開平11-016025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-13/00
G07F 19/00
G07G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインを一時的に収納する収納部と、
前記収納部の底面に配置され、前記コインを搬送する搬送ベルトと、
前記収納部の
前記コインの搬送方向の端部であって前記搬送ベルトから離されて配置された分離ローラーと、を有し、前記コインを前記搬送ベルトと前記分離ローラーとの間を通して一枚ずつ次工程に搬送するコイン搬送装置において、
前記収納部は、前記搬送ベルトの
両側に少なくとも配置された立壁部と、
前記立壁部の上端部から
斜め上方に前記収納部の開口が広がる方向に延設され、前記立壁部に対して傾斜して配置された傾斜壁部と、を有し、
前記コインの搬送方向に交差する方向に配置された前記傾斜壁部には基底側が前記傾斜壁部に対して略垂直に立設された凸部が備わり、
前記搬送ベルトの両側に配置された前記立壁部同士は、前記立壁部の前記分離ローラーに対向する側に配置された湾曲部によって接続されており、
前記搬送ベルトの上に起立し前記立壁部
の上端の縁にもたれて前記凸部に
周面が掛かる状態
の前記コイン
が、前記搬送ベルトに接する周面を前記搬送ベルトの回転に応じて移動させられ、前記搬送ベルト上に引き倒
されて搬送されることを特徴とするコイン搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトを第1の所定時間正転させても前記搬送ベルトの上に前記コインが残る場合、前記搬送ベルトを前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間逆転させ、前記搬送ベルト上の前記コインを前記湾曲部側に集め、該逆転の後に、前記搬送ベルトを前記第1の所定時間よりも短かく前記第2の所定時間以上の時間正転させ、前記搬送ベルト上の前記コインのうち前記立壁部に寄りかかる前記コインを前記凸部に引っ掛けて引き倒すことを特徴とする請求項1に記載のコイン搬送装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記搬送ベルトの長手方向の略中央に対応する位置に配置され、前記収納部は、前記搬送ベルトに対向する側が開口し、前記開口から投入され、前記傾斜壁部に沿って前記搬送ベルト上に落ちる前記コインを前記凸部によって前記分離ローラー側と前記湾曲部側に振り分けて前記搬送ベルトの上に案内することを特徴とする請求項1また請求項2に記載のコイン搬送装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記傾斜壁部からの高さが前記コインの厚みよりも高く、
前記凸部の先端は、湾曲しており、
前記コインが2枚重なった状態で前記凸部に当接した場合、下側の前記コインである前記傾斜壁部側の前記コインは、前記凸部によって移動が制限され、下側の前記コインの上に重なる上側の前記コインは、前記凸部の先端の湾曲した面に沿って移動し、前記コインの重なりを解消することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のコイン搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載のコイン搬送装置と、
コイン搬送装置によって一枚ずつ搬送された前記コインの金種を識別する識別部と、
前記識別部によって識別された前記コインを金種毎に格納する格納部と、を有することを特徴とするコイン処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト上のコインを一枚ずつ分離して搬送するコイン搬送装置およびコイン搬送装置を備えたコイン処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投入口から投入された複数枚のコインを、一枚ずつに分離する分離部を備えた硬貨分離搬送装置が知られている。例えば、硬貨分離搬送装置は、自動釣銭機などのコイン処理装置に用いられている。投入口から投入されたコインは、搬送ベルト上に載置される。搬送ベルトを駆動することで、コインは分離部に搬送される。分離部では、コインは一枚ずつに分離される。コインは、一枚ずつに分離された後に、識別部で金種が識別される。金種を識別されたコインは、金種毎に格納部に格納される。コイン処理装置は、格納部から一枚ずつコインを排出できる。格納または排出されるコインの金種と枚数は、コイン処理装置によって制御できる。また、コイン処理装置は、投入口に投入されたコインの金種と枚数とから、コインの投入金額を演算し、取得することができる。
【0003】
この様な、硬貨分離搬送装置は、一度に多枚数のコインが投入される場合があり、コインは、側面で立ち、搬送ベルトの移動に伴いその場で回転してしまい、分離部に送ることができない問題があった。
【0004】
例えば、特開2003-132394号公報に記載の硬貨分離搬送装置では、この様な問題に対して、搬送ベルトの側部に沿って立設する側壁ガイド板に、起立した硬貨を転倒させる硬貨転倒手段を設けた装置が開示されている。硬貨転倒手段は、側壁に設けられた半球状や四角錐の突起である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の技術では、突起はコインとの当接面が傾斜しているため、コインが突起に乗り上がりやすかった。コインは、突起に乗り上がった後に、方向を変えるだけで、転倒せずに転がり続ける場合があった。特に、複数枚のコインが重なって起立している場合は、コインを倒せないことがあった。また、搬送路の全幅に亘りコインが重なっている場合は、コインを倒せないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコイン搬送装置は、コインを一時的に収納する収納部と、前記収納部の底面に配置され、前記コインを搬送する搬送ベルトと、前記収納部の前記コインの搬送方向の端部であって前記搬送ベルトから離されて配置された分離ローラーと、を有し、前記コインを前記搬送ベルトと前記分離ローラーとの間を通して一枚ずつ次工程に搬送するコイン搬送装置において、前記収納部は、前記搬送ベルトの両側に少なくとも配置された立壁部と、前記立壁部の上端部から斜め上方に前記収納部の開口が広がる方向に延設され、前記立壁部に対して傾斜して配置された傾斜壁部と、を有し、前記コインの搬送方向に交差する方向に配置された前記傾斜壁部には基底側が前記傾斜壁部に対して略垂直に立設された凸部が備わり、前記搬送ベルトの両側に配置された前記立壁部同士は、前記立壁部の前記分離ローラーに対向する側に配置された湾曲部によって接続されており、前記搬送ベルトの上に起立し前記立壁部の上端の縁にもたれて前記凸部に周面が掛かる状態の前記コインが、前記搬送ベルトに接する周面を前記搬送ベルトの回転に応じて移動させられ、前記搬送ベルト上に引き倒されて搬送されることを特徴とする。
【0008】
本発明のコイン処理装置は、上述のコイン搬送装置と、コイン搬送装置によって一枚ずつ搬送された前記コインの金種を識別する識別部と、前記識別部によって識別された前記コインを金種毎に格納する格納部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、起立して搬送されるコインの起立状態を解消し、コインを一枚ずつ次工程に搬送できる。また、複数枚のコインが重なって起立している場合であっても好適にコインの起立状態を解消し、コインを一枚ずつ次工程に搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、コイン処理装置の外観の斜視図である。
【
図5】
図5は、コインの搬送動作の第1の例を説明する図である。
【
図6】
図6は、コインの搬送動作の第1の例を別の角度から説明する図である。
【
図7】
図7は、コインの搬送動作の第2の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図7を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、コイン処理装置の外観の斜視図である。コイン処理装置1は、略直方体状の外装ケースに覆われている。コイン処理装置1には、コインを投入する投入口2、払出されるコインを受けるトレー3が備えられている。
【0013】
コインを投入する投入口2の開口が、外装ケースの上面の手前側に配置されている。払出されるコインを受けるトレー3が、外装ケースのフロント面に配置されている。コイン処理装置1の内側と外側とを貫通する出金口4が、外装ケースのフロント面のトレー3に対応する位置の奥側に設けられている。出金口4を介して払出されるコインを、トレー3が受け止める。
【0014】
例えば、コイン処理装置1は、自動釣銭機、自動両替機等のコインを入出金する装置である。投入口2にコインが投入される。不図示の制御部は、投入されたコインの金種及び枚数を取得し、投入された金額を把握する。また、不図示の制御部によって、コインの払出しの要否が判断される。コインの払出しがされる場合、不図示の制御部は、払出すコインの金種、枚数を演算し、コイン処理装置1の内部に金種毎に配置されているコインホッパーを制御してコインを排出する。排出されたコインは、トレー3に送られる。
【0015】
コイン処理装置1の投入口2には、複数の金種のコインが混ぜられた状態で投入される。コイン処理装置1は、投入されたコインを搬送部によって搬送し、分離部によって一枚ずつに分け、一枚ずつに分けられたコインの金種を識別部によって識別する。コイン処理装置1は、識別部によって識別されたコインを金種毎に格納部に格納する。また、コイン処理装置1は、金種毎に格納されているコインを、格納部から払出す。投入されたコインは、格納部に格納され、再利用される。
【0016】
コイン処理装置1は、投入されたコインを1枚ずつに分離し、1枚ずつ区分して次工程に送り出す分離部、コインの金種を識別する識別部、コインを金種毎に分けて格納及び払出を行う格納払出部を備える。
【0017】
次に、コイン搬送装置について説明する。分離部は、投入口2に投入された複数枚のコインを、1枚ずつに分離し、次工程に搬送するコイン搬送装置である。
図2は、分離部の構成を説明する図である。
【0018】
投入口2から投入された複数枚のコイン10は、底面が搬送ベルト6であり、底面の周囲を壁部5と分離ローラー9とによって囲われた、上方が開口した収納部に入る。搬送ベルト6は、分離ローラー9側が高くなるように傾斜して配置されている。搬送ベルト6は、駆動ローラー7と従動ローラー8に掛け回されている。搬送ベルト6は、駆動ローラー7の回転に連動する。分離ローラー9は、駆動ローラー7の上方に、搬送ベルト6から離間して配置されている。第1センサー11、第2センサー12、第3センサー13は、搬送ベルト6上のコインの有無を検出するセンサーである。複数のセンサーを用いることで、搬送ベルト6上のコインを満遍なく検出することができる。
【0019】
搬送ベルト6と分離ローラー9は互いに逆方向に回転する。例えば、
図2に記載した矢印のように、搬送ベルト6が右方向に回転をする場合、分離ローラー9は左方向に回転する。
【0020】
搬送ベルト6上に表面が接して横たわるコイン20と、コイン20上に重なったコイン19が、搬送ベルト6によって搬送される場合を説明する。搬送ベルト6と分離ローラー9との間隔は、1枚のコインの厚みよりも広く、2枚のコインの厚みよりも狭く構成されている。搬送ベルト6を矢印の方向に回転させた場合、コイン10は、分離ローラー9の方向に搬送される。搬送ベルト6に横たわるコイン20は、搬送ベルト6と分離ローラー9との間を通り抜けて次工程に搬送される。このときコイン19は、分離ローラー9によって搬送ベルト6の回転方向とは逆方向に力が加えられ、コイン20から離される。2枚重なったコインは、同時に搬送ベルト6と分離ローラー9との間に入り込むことが阻止される。コインは一枚ずつ搬送ベルト6と分離ローラー9との間を通り、次工程に搬送される。
【0021】
制御手段18は、不図示のCPU、メモリーを含み、メモリーに記憶されたプログラムに従って動作し、装置の制御を行う。
【0022】
センサー駆動手段16は、制御手段18によって制御され、接続されている第1センサー11、第2センサー12、第3センサー13から検出結果を取得し、制御手段18に出力する。制御手段18は取得したセンサーの検出結果に基づいて各種制御を行う。
【0023】
モーター14は、制御手段18の制御によって動作する。モーター14は、複数の歯車を含む伝達手段15を介して駆動ローラー7と分離ローラー9に接続されている。制御手段18の制御によって、モーター14を正転あるいは逆転させることができる。すなわち搬送ベルト6を右方向にも左方向にも駆動させることができる。
【0024】
タイマー17は、制御手段18の制御によって動作する。例えば、モーター14やセンサー駆動手段16の駆動時間等の時間を計測する。タイマー17は、制御手段18の制御によって時間を計測できる。
【0025】
次に、壁部5の構成について説明する。
図3は、コインの収納部の斜視図である。
図4は、コインの収納部の上面図である。
【0026】
コインの収納部は、上方と下方が開口された壁部5によって周囲を囲まれている。コインの搬送方向側には、分離ローラー9が配置されている。壁部5の下方の開口を塞ぐように搬送ベルト6が配置されている。搬送ベルト6と分離ローラー9との間は、離間しており、コインの通り道であるコイン通路37が形成されている。
【0027】
壁部5は、搬送ベルト6に対して略垂直の立壁部30を備える。また壁部5は、立壁部30の上部の縁を基底として、コインの収納部の開口が広がるように斜め上方に傾斜して配置された傾斜壁部31を備える。また壁部5は、傾斜壁部31と開口部との間に配置された外壁部32を備えている。外壁部32は水平方向に対して略垂直の方向に配置されている。
【0028】
立壁部30には搬送ベルト6に沿って複数の貫通孔が設けられている。この貫通孔は、第1センサー11、第2センサー12、第3センサー13の検出窓となっている。分離ローラー9の長手方向の外方の外壁部32には、落下壁36が設けられている。落下壁36は、コイン10がその位置に留まらず、搬送ベルト6方向に落ちるように案内する突起である。収納部のコインの搬送方向にはコインが集まり易いが、コインが搬送ベルト6の上に乗り上げ留まることを防止するために、落下壁36が設けられている。
【0029】
搬送ベルト6の両サイドの外方の傾斜壁部31には、凸部33が設けられている。凸部33は、基底側が傾斜壁部31から垂直に立設する第1立設部34と第2立設部35を両側に配置した突起である。第1立設部34、第2立設部35の先端は湾曲している。凸部33は立壁部30から外壁部32に亘り形成されている。上面視で、凸部33は、立壁部30側が外壁部32側に比べ、分離ローラー9から遠くなるように斜めに配置されている。凸部33の先端は、重なったコインの上側のコインが乗り上げやすいように湾曲している。凸部33は、上面視で搬送ベルト6の移動方向に対して交差する方向に斜めに配置されている。また、凸部33は、頂点側が湾曲しているので、コインが2枚重なったときの上側のコインが凸部33の上に乗り上げやすい。第1立設部34、第2立設部35は、コインを引っ掛けやすいように平坦に構成されている。
【0030】
外壁部32は、上面視で略矩形に形成され、分離ローラー側の第1外壁41とそれに対向する側の第2外壁43が短く、搬送ベルト6の両側に配置される第3外壁42と第4側壁44が長く形成されている。コイン10をなるべく多く収納するために、底面の搬送ベルト6側よりもコインの収納部の開口側が広い。
【0031】
立壁部30は、分離ローラー9に対向する側が湾曲しており、湾曲部40を形成している。立壁部30は、分離ローラー9側が湾曲部40側よりも、搬送ベルト6からの高さが高く形成されている。上面視で、立壁部30は、湾曲部40側から分離ローラー9側に向かい幅が漸次広がる形状となっている。立壁部30は、搬送ベルト6の両側に配置され、搬送ベルト6上のコインを分離ローラー9に向かうように案内する。また、立壁部30は、搬送ベルト6に対して略垂直に配置されている。
【0032】
凸部33の傾斜壁部31からの高さは、使用されるコインの1枚の厚みの30%よりも高いことが好ましい。また、高さの半分以上は、傾斜壁部31から略垂直に立設していることが好ましい。例えば、略垂直には、90度プラスマイナス10%の角度の範囲が含まれる。凸部33の高さが、低すぎると、乗り越えてしまう可能性がある。また好ましくは、凸部33の高さが、使用されるコインの1枚の厚みの50%~120%の厚みである。この範囲ならば、1枚のコインが、搬送ベルト6の移動に伴い好適に凸部33に引っ掛かる。また、凸部33の厚みが、使用されるコインの1枚の厚みの150%を超えると、搬送ベルト6の移動に伴い、2枚同時に凸部33に引っ掛かる可能性が高くなる。2枚のコインが重なったまま倒され搬送される場合が生じる。最終的には、分離ローラー9によって1枚ずつに分離できるが、1枚ずつ倒して搬送する方が効率的なので好ましい。
【0033】
第1立設部34と第2立設部35は、傾斜壁部31から略垂直に立設しているが、傾斜壁部31に対する角度は90±10度の角度が好ましい。傾斜が緩いと、凸部33をコインが乗り越え易くなり、傾斜がきついとコインが2枚重なった場合、上側のコインが引っかかり易くなるからである。第1立設部34または第2立設部35は、立壁部30の上端の縁にもたれ掛かりながら搬送されるコインを一枚だけ引っかかり易くする。
【0034】
立壁部30は、分離ローラー9に近づくに従い、搬送ベルト6からの高さが高くなる。湾曲部40側から分離ローラー9側にコインが立壁部30の縁にもたれながら搬送されるときに、コインのなるべく高い位置が凸部33に掛かることが好ましい。コインが倒れるときに、なるべく弾まないように引き倒すためである。そのため、立壁部30は分離ローラー9側に向かい高くするようにしている。また、立壁部30が分離ローラー9に向かって徐々に高くなり、徐々に広がるので、浅くもたれ掛かったコインは、凸部33に掛かる前に搬送ベルトの上に倒れる。
【0035】
コインの収納部には略垂直の壁と傾斜した壁が周囲に配置されているので、投入されたコインは、底部中央の搬送ベルト6の上に案内される。また、傾斜壁部31に配置された凸部33は、コインを引き倒す以外にも、上方から投入されたコインが落ちてきた場合、分離ローラー9側と湾曲部40側に分けてコインを案内する。投入されたコインは、一箇所に集中して堆積せずに、分散して堆積し易くなる。凸部33は、搬送ベルト6の長手方向の略中央に配置されることが好ましい。
【0036】
次に、コインを搬送する場合の動作を説明する。
図5は、コインの搬送動作の第1の例を説明する図である。
図6は、コインの搬送動作の第1の例を別の角度から説明する図である。説明のため、1枚のコインを用いて説明する。
【0037】
搬送ベルト6の上にコインが起立した場合、搬送ベルト6の移動に連動してコインが回転し、搬送ベルト6と分離ローラー9の間に入らないことがある。この様な場合、コインを搬送ベルト6の上に倒す必要がある。起立したコイン50を、凸部33によって、搬送ベルト6の上に引き倒すように案内する。搬送ベルト6を正転、逆転させることで、コイン50を立壁部30の上端の縁にもたれ掛かるようにする。コイン50は、上方を凸部33によって移動が妨げられ、搬送ベルト6によって、下方が引かれる。コイン50は、搬送ベルト6によって引かれながら、搬送ベルト6の上に倒れる。この様な動作によって、起立したコイン50が転倒する。また、コイン50が立壁部30に平行に起立した場合であっても、立壁部30は上面視で分離ローラー9側に向かい幅が広がっているので、搬送ベルト6を正転、逆転させることでコイン50が立壁部30の上端の縁にもたれ掛かるように倒れる。
【0038】
コイン50が、凸部33より湾曲部40側にある場合の例を説明する。コイン50が立壁部30の上端の縁にもたれ掛かかった状態で、搬送ベルト6を正転させる。矢印54方向に搬送ベルト6が移動する。
【0039】
搬送ベルト6を移動させると、コイン50の周面が、凸部33の第1立設部34に掛かる。コイン50は、凸部33によって移動の方向が制限される。コイン50は、搬送ベルト6の移動に伴い徐々に倒れ、搬送ベルト6との接点が、立壁部30から離れる方向に移動する。さらに、搬送ベルト6の移動に伴い、コイン50は斜めになり、傾斜壁部31にもたれか掛かる。さらに、搬送ベルト6の移動に伴い、コイン50が、壁部5から離れ、表面又は裏面が搬送ベルト6と接する。コイン50は、搬送ベルト6の移動量に応じて、コインの第1位置51、コインの第2位置52、コインの第3位置53の順で移動する。コイン50は、搬送に伴って凸部33に引っ掛かり、引きずり倒されるので、コイン50が凸部33にぶつかって転がって移動することがない。立壁部30は、分離ローラー9の方向に向かい搬送ベルト6からの高さが高くなり、立壁部30の端部の縁に寄りかかったコインを凸部33に掛けやすくしている。
【0040】
図7は、コインの搬送動作の第2の例を説明する図である。搬送ベルト6の上にコインが起立して重なった場合の例を説明する。
【0041】
搬送ベルト6を矢印57で示される逆転方向に移動させることで、破線で示された起立して重なる複数のコイン10が湾曲部40の方向に実線で示されたコイン10のように移動する。破線で示されたコイン10は、複数のコインが起立した状態を示している。コイン10は立壁部30に沿って移動しようとする。例えば、端のコイン10は、矢印56で示す方向に中央に向かい移動するが、中央部には既に他のコインがあるため、中央に進めず、立壁部30側に倒れ、もたれ掛かる。搬送ベルト6を逆転させることで、コイン10の起立状態を解消できる。立壁部30は、湾曲部40の高さが低く形成されているの、コイン10が倒れ、もたれ掛かり易い。搬送ベルト6を正転させれば、上述のようにコイン10を搬送ベルト6上に横置きできる。また、衝突や振動等でコイン10が倒れる場合もある。
【0042】
コイン10を湾曲部40の中央に集めることができるので、搬送ベルト6の幅方向に複数枚のコインが重なって起立した状態であっても、コインが起立して重なり合うことを解除できる。湾曲部40の形状によって、両端のコインが湾曲部40の中央に進むことが妨げられ、中央のコインだけが湾曲部40の中央に進むので、両側のコインは、壁部5にもたれるように倒れ、両側から重なりが崩れる。
【0043】
また、コインを湾曲部40側に集めた後、搬送ベルト6を正転させる。複数枚が重なった状態で立壁部30にもたれ掛かっている場合は、一番下側のコインが、凸部33によって進路を変え、搬送ベルト6の上に倒れる。他のコインは、凸部33を乗り越え、分離ローラー9側に移動する。凸部33を乗り越えたコインは、倒れるコインや、立壁部30の上端の縁にもたれた状態で搬送される。
【0044】
次に、制御について説明する。制御手段18は、搬送ベルト6を第1の所定時間正転させても、コインが搬送ベルト6上から無くならない場合は、起立解消処理を行う。起立解消処理は、搬送ベルト6を第1の所定時間よりも短時間の第2の所定時間逆転させ、その後、搬送ベルト6を第1の所定時間よりも短時間の第3の所定時間正転させる。第2の所定時間は搬送ベルト6が少なくとも半回転する時間である。分離ローラー9側にあるコインを湾曲部40側に移動させるためである。また、第3の所定時間は、搬送ベルト6が少なくとも半回転する時間である。第3の所定時間は、第2の所定時間以上にすることが好ましい。コインを凸部33に引っ掛けて引き倒すので、湾曲部40方向にコインを送る時間よりも少し多めの時間を必要とする。湾曲部40側にあるコインを分離ローラー9側に移動させるためである。また、起立解消処理が終了したら第1の所定時間正転させる。この動作を所定回数行う。所定回数以内で搬送ベルト6上からコインが無くならない場合は、第2の所定時間と第3の所定時間の時間を変えて、再度起立解消処理を行う。搬送ベルト6上のコインの有無は、第1センサー11、第2センサー12、第3センサー13によって検出できる。第2の所定時間と第3の所定時間の時間を最初に設定された時間より長くする。この様な起立解消処理を繰り返し行うことで、重なった状態の複数枚のコインは、最終的には、搬送ベルト6上に横たわり、一枚ずつ次工程に搬送される。
【符号の説明】
【0045】
1 コイン処理装置1
2 投入口
3 トレー
4 出金口
5 壁部
6 搬送ベルト
7 駆動ローラー
8 従動ローラー
9 分離ローラー
10 コイン
11 第1センサー
12 第2センサー
13 第3センサー
30 立壁部
31 傾斜壁部
32 外壁部
33 凸部
40 湾曲部