(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】コイン搬送装置、コインホッパー
(51)【国際特許分類】
G07D 11/14 20190101AFI20240125BHJP
G07D 1/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G07D11/14
G07D1/00 A
(21)【出願番号】P 2021146206
(22)【出願日】2021-09-08
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116987
【氏名又は名称】旭精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】榎本 稔
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008117(JP,A)
【文献】特開2014-203313(JP,A)
【文献】特開2013-152628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16
G07D 9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインを格納する格納容器と、
前記格納容器よりも上方に配置された排出口に前記コインを搬送する搬送部と、
前記コインを保持する保持部を備えるディスクと、を有し
前記ディスクは、前記格納容器に格納されている前記コインを一枚ずつ前記保持部に保持させて前記搬送部に受け渡し、
前記搬送部は、
前記コインを押動する押動体が回転軸を挟んで対向する位置に配置された複数の回転体を有し、隣り合う前記回転体が斜め上方に互い違いに下方から上方に配置されており、
隣り合う前記回転体の互いの回転方向が逆方向になるように連動して回転し、前記回転体の回転に伴い前記押動体が前記コインを下方から上方に押し上げ、前記コインを次段の前記回転体に受け渡すことで、前記コインを下方から上方に搬送するコインホッパーにおいて、
前記押動体は、前記コインと接するピンと、前記ピンを支持する支持突起を有し、
前記回転体は、前記ピンと嵌合するピン孔を有し、
前記支持突起は、前記回転体の前記コインを支持する支持面の縁に前記支持面から突出して配置されており、前記回転体の回転方向の前後に前記
ピンの周面に対応する形状の凹部が備えられており、前記凹部
に対応して前記ピン孔が配置されており、
前記ピン孔に嵌合した前記ピンは、前記
ピンの周面の一部が前記凹部に接し、前記
支持突起に支えられることを特徴とするコインホッパー。
【請求項2】
前記ピンは、
前記コインに接する大径部と、前記ピン孔と嵌合する小径部と、を有し、
前記凹部は前記大径部の周面に対応する形状であり、前記ピン孔は前記凹部の壁面から離れて配置されており、
前記ピンは、前記大径部の周面の一部が前記凹部に接し、前記大径部と前記小径部との段差部が前記支持面に接し、前記小径部が前記ピン孔に回動自在に嵌合することを特徴とする請求項1に記載のコインホッパー。
【請求項3】
前記ピンは、前記小径部の先端に向かい縮径する傾斜部と、前記小径部の周面にリング状に窪む係止凹部とを有し、
前記ピン孔の内周には、前記係止凹部に対応する位置に係止凸部が備わり、
前記係止凸部が前記係止凹部に掛かることで、前記ピンは前記ピン孔に回動自在に係止されることを特徴とする請求項2に記載のコインホッパー。
【請求項4】
前記搬送部は、時計回りに回転する前記回転体と、反時計回りに回転する前記回転体とが交互に配置されており、
前記ピン孔は、前記支持突起の前記回転方向の前後にそれぞれ配置され、前記回転体の前記回転方向に応じて、少なくとも前記支持突起の前記回転方向の前後の何れかの前記ピン孔に前記ピンが配置されていることを特徴とする
請求項1から請求項3
の何れか1項に記載のコインホッパー。
【請求項5】
前記支持突起の前記回転方向の前後に配置されている前記ピン孔の夫々に前記ピンが嵌合されていることを特徴とする請求項4に記載のコインホッパー。
【請求項6】
前記搬送部は、前記コインの搬送方向が湾曲する湾曲部を有し、前記湾曲部では、搬送方向に前後する少なくとも一方側の前記回転体が傾斜して配置され、前記湾曲部に配置された前記回転体の前記押動体は、前記ピンの前記支持面からの突出量が、前記湾曲部以外に配置された前記回転体の前記ピンの前記支持面からの突出量よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のコインホッパー。
【請求項7】
コインを一枚ずつ受け取り、受け取った前記コインを受け取った位置よりも上方に配置された排出口に搬送する搬送部を有し、
前記搬送部は、
前記コインを押動する押動体が回転軸を挟んで対向する位置に配置された複数の回転体を有し、隣り合う前記回転体が斜め上方に互い違いに下方から上方に配置されており、
隣り合う前記回転体の互いの回転方向が逆方向になるように連動して回転し、前記回転体の回転に伴い前記押動体が前記コインを下方から上方に押し上げ、前記コインを次段の前記回転体に受け渡すことで、前記コインを下方から上方に搬送するコイン搬送装置において、
前記押動体は、前記コインと接するピンと、前記ピンを支持する支持突起を有し、
前記回転体は、前記ピンと嵌合するピン孔を有し、
前記支持突起は、前記回転体の前記コインを支持する支持面の縁に前記支持面から突出して配置されており、前記回転体の回転方向の前後に前記
ピンの周面に対応する形状の凹部が備えられており、前記凹部
に対応して前記ピン孔が配置されており、
前記ピン孔に嵌合した前記ピンは、前記
ピンの周面の一部が前記凹部に接し、
前記支持突起に支えられることを特徴とするコイン搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コインを一枚ずつ上方に搬送するコイン搬送装置およびコイン搬送装置を備えたコインホッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
容器に格納されたコインを一枚ずつに分離し、搬送するコインの搬送装置が知られている。例えば、特許第6623372号公報に記載の円盤体搬送装置は、容器に格納されたコインを一枚ずつに分離した後、コインを下方から上方に搬送する搬送装置が備えられている。
【0003】
搬送路には、押動体を備える複数枚の回転体が回転軸の配置位置を左右に変えながら、上下方向に互い違いに列設されている。押動体は、回転中心を挟み回転体の周縁に対向して配置されている。搬送路を形成する側壁によって移動方向を案内されるコインの周面に押動体が当接し、回転体の回転に伴いコインを下方から上方に押動する。上下に互い違いに配置された回転体は、斜め下に配置された回転体からコインを受取り、斜め上に配置された回転体にコインを送り出す。円盤体搬送装置は、列設された回転体を連動させて駆動することで、下方の押動体から上方の押動体にコインを順番に引き渡す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、樹脂製の押動体は、押動体がコインに接触することによって摩耗する問題があった。従来の技術では、コインとの接触する円弧状の押動体の前端部分を金属丸棒にする例と、押動体を板金で覆う例が開示されていた。しかし、従来の技術は、単なる金属丸棒や板金を回転体に強固に固定し、外れないように一体化したものであった。そのため、従来の技術では、右回り用と左回り用の2種類の回転体が必要であった。また、湾曲した搬送路の搬送面から浮き上がるコインに対応するため、湾曲部で使用される回転体の押動体は、平らな搬送路に配置された回転体の押動体よりも突出量が大きいものが必要であった。回転体は、搬送路の位置に応じて複数種類の回転体が必要となり、部品点数が増える問題や、異なる回転体を選択的に配置するので組み立て時に誤配置が生じる問題があった。また、押動体の前端部分を金属丸棒にする例や、押動体を板金で覆う例の開示があったが、具体的な機構の記載は無かった。そのため、好適な機構の押動体を備えた回転体が望まれ、また、耐久性が高く、組み立て性の良いコインの搬送装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコインホッパーは、コインを格納する格納容器と、前記格納容器よりも上方に配置された排出口に前記コインを搬送する搬送部と、前記コインを保持する保持部を備えるディスクと、を有し前記ディスクは、前記格納容器に格納されている前記コインを一枚ずつ前記保持部に保持させて前記搬送部に受け渡し、前記搬送部は、前記コインを押動する押動体が回転軸を挟んで対向する位置に配置された複数の回転体を有し、隣り合う前記回転体が斜め上方に互い違いに下方から上方に配置されており、隣り合う前記回転体の互いの回転方向が逆方向になるように連動して回転し、前記回転体の回転に伴い前記押動体が前記コインを下方から上方に押し上げ、前記コインを次段の前記回転体に受け渡すことで、前記コインを下方から上方に搬送するコインホッパーにおいて、前記押動体は、前記コインと接するピンと、前記ピンを支持する支持突起を有し、前記回転体は、前記ピンと嵌合するピン孔を有し、前記支持突起は、前記回転体の前記コインを支持する支持面の縁に前記支持面から突出して配置されており、前記回転体の回転方向の前後に前記ピンの周面に対応する形状の凹部が備えられており、前記凹部に対応して前記ピン孔が配置されており、前記ピン孔に嵌合した前記ピンは、前記ピンの周面の一部が前記凹部に接し、前記支持突起に支えられることを特徴とする。
【0007】
本発明のコイン搬送装置は、コインを一枚ずつ受け取り、受け取った前記コインを受け取った位置よりも上方に配置された排出口に搬送する搬送部を有し、前記搬送部は、前記コインを押動する押動体が回転軸を挟んで対向する位置に配置された複数の回転体を有し、隣り合う前記回転体が斜め上方に互い違いに下方から上方に配置されており、隣り合う前記回転体の互いの回転方向が逆方向になるように連動して回転し、前記回転体の回転に伴い前記押動体が前記コインを下方から上方に押し上げ、前記コインを次段の前記回転体に受け渡すことで、前記コインを下方から上方に搬送するコイン搬送装置において、前記押動体は、前記コインと接するピンと、前記ピンを支持する支持突起を有し、前記回転体は、前記ピンと嵌合するピン孔を有し、前記支持突起は、前記回転体の前記コインを支持する支持面の縁に前記支持面から突出して配置されており、前記回転体の回転方向の前後に前記ピンの周面に対応する形状の凹部が備えられており、前記凹部に対応して前記ピン孔が配置されており、前記ピン孔に嵌合した前記ピンは、前記ピンの周面の一部が前記凹部に接し、前記支持突起に支えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コインを押動する押動体の耐久性を向上させるとともに、組み立て性の良い回転体を備えたコイン搬送装置、コインホッパーを提供できる。本発明のコイン搬送装置、コインホッパーよれば、下方で受け渡されたコインを上方の排出口に好適に搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】
図3は、コインの搬送の例を説明する第1の図である。
【
図4】
図4は、コインの搬送の例を説明する第2の図である。
【
図5】
図5は、コインの搬送の例を説明する第3の図である。
【
図6】
図6は、コインの搬送の例を説明する第4の図である。
【
図7】
図7は、コイン搬送の駆動部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1から
図11の図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。コイン搬送装置の例を説明するため、コイン搬送装置付きのコインホッパーを例に説明する。またコインは硬貨の他に、メダル、トークンなどの円盤体を含む。また、円盤体は、正面視において円形のものの他に8角形や12角形などの多角形であっても良い。
【0011】
図1は、コインホッパーの斜視図である。コインホッパー1は、格納容器6に格納された複数のコイン10を一枚ずつに分離する分離部2、分離部2によって一枚ずつに分離されたコイン10を、分離部2より上方に配置された排出口13に搬送する搬送部3を備える。搬送部3はコイン搬送装置である。
【0012】
フレーム4には、分離部2と搬送部3が固定されている。また、フレーム4は、コインホッパー1を自立させる脚部としても機能する。分離部2は、複数のコイン10を格納する格納容器6を備える。分離部2は、複数の分離体9が配置されたディスク5を備える。ディスク5の回転点中心には撹拌棒8が備えられている。撹拌棒8は、ディスク5の回転に伴い回転し、格納容器6に格納されているコイン10を撹拌する。
【0013】
ディスク5の分離体9の間は、コイン10を保持する底面が平坦な保持部7が備わる。分離体9は、保持部7の平坦な底面から突出している。ディスク5の回転によって、格納容器6に格納されているコイン10は、分離体9に引っ掛かり、保持部7に保持される。分離体9の平坦な面からの突出量は、コイン10の厚みより小さく、コイン10を1枚しか掛けられない。1つの保持部7には、一枚のコイン10が保持される。
【0014】
搬送部3は、分離部2から水平方向に対して垂直に配置された通路ベース11、通路ベース11に対向して配置された通路プレート12によってコイン10の通路が形成されている。排出口13の近傍にコイン10の有無を検出する検出器14が配置されている。検出器14は排出されるコイン10を検出するセンサーである。検出器14は、不図示の制御回路に接続され、制御回路によって排出されるコイン10の枚数のカウントや金種が識別される。
【0015】
コインホッパー1は、格納容器6に格納されたコイン10を、一枚ずつ排出口13から排出し、排出されるコイン10を検出することができる。
【0016】
分離部2と搬送部3の接続部分では、コインの搬送路が湾曲している。水平方向に対して垂直に配置された搬送部3のコインの搬送路と、傾斜して配置された分離部2のディスク5とを、湾曲した搬送路によって接続している。
【0017】
次に
図2を用いてコインホッパー1について説明する。
図2は、コインホッパーの正面図である。
【0018】
ディスク5の回転に応じて、格納容器6に格納されているコイン10は、隣り合う分離体9の間に一枚ずつ入り、搬送される。ディスク5の下方側に配置されている格納容器6からコイン10を拾い上げ、上方側に配置されている搬送部3にコイン10を受け渡す。
【0019】
ディスク5の上方側には、コイン10の進路を搬送部3の入り口方向に変更するための案内体15が配置されている。コイン10は、案内体15に当接後、分離体9に押されて、ディスク5の外周方向に案内体15に沿って移動する。ディスク5の回転が進むにつれて、案内体15と分離体9の間隔が狭まり、コイン10は、導入回転体20の方向に押される。分離部2によって一枚ずつに分離されたコイン10は、搬送部3の最初の回転体である導入回転体20に案内される。
【0020】
導入回転体20は、ディスク5の回転に同期して回転する。導入回転体20には、2本の第1押動体22が備わる。ディスク5は反時計回りに回転し、導入回転体20は時計回りに回転する。コイン10は、時計回りに回転する導入回転体20の第1押動体22に掛かり、運ばれる。コイン10は、導入回転体20の第1押動体22によって押され、通路ベース11と通路プレート12の間に形成される搬送路を搬送される。
【0021】
次に、
図3~
図6を用いて、通路ベース11と通路プレート12の間に形成される搬送路を移動するコイン10の搬送動作について説明する。
図3は、コインの搬送の例を説明する第1の図である。
図4は、コインの搬送の例を説明する第2の図である。
図5は、コインの搬送の例を説明する第3の図である。
図6は、コインの搬送の例を説明する第4の図である。
図3~
図6は、コインホッパー1の通路プレート12を外した状態の正面図である。コイン10の搬送の過程が、
図3、
図4、
図5、
図6の順に示される。
【0022】
破線で示す第1搬送ガイド26と第2搬送ガイド27は、通路ベース11と通路プレート12によって形成されたコイン10の搬送路であり、コイン10の周面を案内する側壁の部分を示している。通路ベース11には、コイン10が移動可能な、窪みが備えられ、この窪みの側壁が第1搬送ガイド26と第2搬送ガイド27である。窪みの底面には、更に、導入回転体20、搬送回転体21が挿入される開口が略円形の窪みが設けられ、導入回転体20、搬送回転体21が回転可能に配置されている。通路ベース11の窪みの底面と、導入回転体20の表面と、搬送回転体21の表面とによって、搬送路の底面が形成され、そこをコイン10が移動する。導入回転体20と搬送回転体21との間には、通路ベース11によって、段差ができないように搬送面が配置されている。
【0023】
導入回転体20が配置されている部分は、コイン10の搬送路の湾曲した部分である。導入回転体20のコインの載置面は、水平方向に対して傾斜して配置されている。導入回転体20は、傾斜して配置されているディスク5から受け取ったコイン10を、コイン10の載置面が水平方向に対して垂直に配置された最下の搬送回転体21に受け渡す。この部分の搬送路では、搬送されるコイン10の姿勢が、ディスク5の傾斜角度から徐々に鉛直方向に平行になるように変化する。その中間に導入回転体20が配置されている。導入回転体20のコイン10の載置面は湾曲させることができないのでの平坦である。コイン10は、この湾曲した搬送路では、導入回転体20から搬送回転体21に移動するときに、部分的に載置面から浮き上がることがある。
【0024】
コイン10の搬送路の水平方向に対して垂直となる部分は、搬送回転体21および通路ベース11によって、大凡面一に形成され、コイン10の表面または裏面が支持される。また、通路プレート12は、搬送されるコイン10がこぼれ落ちないようにコイン10の搬送路を覆っている。
【0025】
導入回転体20、搬送回転体21は、通路ベース11に回転軸25を軸として回転可能に取り付けられている。ディスク5、導入回転体20、搬送回転体21は、回転が連動する。搬送回転体21は、並行する2本の直線上に、回転軸が交互に配置される。搬送回転体21の右斜め上または左斜め上に次段の搬送回転体21が配置される。搬送回転体21はジグザグに配置され、コイン10を蛇行して搬送する搬送路を形成する。
【0026】
コインホッパー1は、分離部2からコイン10を1枚ずつ搬送部3に渡す。また、搬送部3は、コイン10を一枚ずつ排出口13に搬送し、排出する。
【0027】
保持部7と導入回転体20のコインの載置面は面一に設定されている。分離部2では、コイン10は、隣り合う分離体9の間に1枚ずつ入り、分離体9に押され、案内体15に沿って導入回転体20の方向に搬送方向が変えられ、最終的に導入回転体20に渡される。導入回転体20に渡されたコイン10は1枚ずつ、導入回転体20の第1押動体22に押され、上方に搬送される。
【0028】
導入回転体20は、回転軸25を中心に時計回りに回転する。導入回転体20の外周の縁には、2つの第1押動体22が回転軸25を挟んで配置されている。導入回転体20の直ぐ上方に、2段目の回転体である搬送回転体21が配置されている。2段目の搬送回転体21には、第2押動体23が同様に2つ配置されている。3段目から最終段目までの搬送回転体21のそれぞれには、第3押動体24が同様に2つ配置されている。第2押動体23と第3押動体24の差は、後述するピンの高さである。第2押動体23の方が第3押動体24よりもピンの高さが高い。2段目の搬送回転体21は、導入回転体20とは逆の反時計回りに回転し、3段目の搬送回転体は時計回りに回転する。回転方向が交互に入れ替わる。導入回転体20と2段目の搬送回転体21との間には、通路ベース11によって形成される湾曲した搬送面が配置されている。第1押動体22と第2押動体23の高さをなるべく小さくするため、導入回転体20と搬送回転体21を離し、コイン10の搬送面からの浮き上がり量の軽減が図られている。
【0029】
導入回転体20の第1押動体22が、水平方向に対して垂直の方向の最高地点に達すると、2段目の搬送回転体21の第2押動体23が、コイン10を拾い上げるようにコイン10の左側から押し始める(
図4参照)。導入回転体20は時計回りに、2段目の搬送回転体21は反時計回りに、連動して回転する。
【0030】
2段目の搬送回転体21の第2押動体23は、反時計回りに回転し、コイン10を押し上げる(
図5参照)。
【0031】
コイン10は、下から順番に搬送回転体21によって押し上げられながら、搬送される。そして、コイン10は、最終段の搬送回転体21に受け渡された後は、第3押動体24によって押され、搬送路に沿って移動し、排出口13から排出される。最終段の搬送回転体21から排出口13までは、下方に傾斜し、コイン10は重力によって転がり落ちる(
図6参照)。検出器14は、搬送路を通り過ぎるコイン10の有無を検出する。
【0032】
次に、搬送路における回転体の駆動について説明する。
図7は、コイン搬送の駆動部を説明する図である。
【0033】
ディスク5、導入回転体20、搬送回転体21は、モータ30によって駆動される。ディスク5、導入回転体20、搬送回転体21、モータ30は、歯車によって連結されている。
【0034】
モータ30には、減速ユニット31が接続されている。減速ユニット31は、モータ30の回転数を所定の回転数に減速してディスク5の回転軸32に接続されている。例えば、減速ユニット31によって、ディスク5の回転数を毎分100回転にする。ディスク5の回転軸32には、ディスク5及び撹拌棒8が接続されている。ディスク5には、第1歯車33が備えられている。
【0035】
第1連結軸43には、第2歯車34、第3歯車35が固定されている。第2歯車34と第3歯車35は連動する。第2歯車34と第1歯車33は噛み合っている。第3歯車35は、第2歯車34、第1連結軸43を介して第1歯車33に連動する。
【0036】
第2連結軸44には、第4歯車36、第5歯車37が固定されている。第4歯車36と第5歯車37は連動する。第4歯車36と第3歯車35は噛み合っている。第5歯車37は、第4歯車36、第2連結軸44を介して第3歯車35に連動する。
【0037】
導入回転体20は、コイン10を載置する面の逆側に第1傘歯車39が備えられ、更に第1傘歯車39には第1平歯車38が備えられている。導入回転体20は、第1押動体22と第1傘歯車39と第1平歯車38を備えた回転体である。第5歯車37と第1平歯車38は噛み合っている。導入回転体20は、第5歯車37の回転に連動する。第1傘歯車39と第1平歯車38は一体であっても良い。
【0038】
導入回転体20の次段の搬送回転体21には、周面に搬送歯車42が備えられ、コイン10を載置する面の逆側に第2傘歯車41が固定され、更に第2傘歯車41には第2平歯車40が固定されている。導入回転体20の次段の搬送回転体21は、第2傘歯車41と第2平歯車40と共に第3連結軸45に回転自在に支持されている。
【0039】
導入回転体20の次段の搬送回転体21は、搬送歯車42と第2押動体23とを備え、第2傘歯車41と第2平歯車40が固定された回転体である。第1傘歯車39と第2傘歯車41は噛み合っている。導入回転体20の次段の搬送回転体21は、導入回転体20の回転に連動する。第2傘歯車41と第2平歯車40は一体であっても良い、また、減速比を1対1にして、第1傘歯車39と第1平歯車38と形状を同じにして使用することもできる。また、導入回転体20と搬送回転体21は、離間して配置されている。2つの回転体間の距離と、第1傘歯車39と第2傘歯車41の円錐角とに応じて第1押動体22と第2押動体23の高さが決まる。搬送路の湾曲の角度を変えた場合に、第1傘歯車39と第2傘歯車41の円錐角と後述するピン53の高さを変えることで容易に変更に対応できる。
【0040】
3段目の搬送回転体21には、第3押動体24と、周面に搬送歯車42が備えられている。2段目の搬送回転体21の搬送歯車42と、3段目の搬送回転体21の搬送歯車42は噛み合っている。3段目の搬送回転体21は、2段目の搬送回転体21の回転に連動する。4段目以降の搬送回転体21も同様に搬送歯車42を備え、前段と次段の搬送歯車42同士が噛み合い、連動する。また、導入回転体20から最終段の搬送回転体21は回転方向が交互に逆になる。モータ30は、ディスク5、導入回転体20、搬送回転体21を駆動する。第1歯車33から第2傘歯車41までの各歯車が好適に設定されているのでディスク5、導入回転体20、搬送回転体21が同期して回転する。
【0041】
湾曲したコイン10の搬送路に対応するために、導入回転体20と2段目の搬送回転体21とは、コイン10の載置面の延長線が交差する。コイン10は、この区間で載置面から部分的に浮き上がる。そのため、第1押動体22と第2押動体23の載置面からの突出量が、第3押動体24より大きい。第1押動体22と第2押動体23は、コイン10が浮き上がっても、コイン10の周面と好適に接し、押動することができるように設定されている。ディスク5と導入回転体20のコイン10の載置面は、略面一に設定されている。2段目の搬送回転体21と3段目以降の搬送回転体21は、第2押動体23と第3押動体24の高さが異なる。2段目の搬送回転体21には、押動体の高さ以外の部分については同形状である。
【0042】
次に搬送回転体21について
図8から
図11を用いて説明する。
【0043】
外観について
図8と
図9を用いて説明する。
図8は、回転体の斜視図である。
図9は、回転体の正面図である。
図9の二点鎖線A-Aで切断した場合の断面図を
図10、
図11を用いて説明する。
図10は、回転体の第1の断面図である。
図11は、回転体の第2の断面図である。
図10は、ピン53が嵌められる前の図であり、
図11はピン53が嵌められた状態の図である。
【0044】
搬送回転体21は、中央に軸孔51が配置されている。搬送回転体21は、軸孔51に回転軸が挿入され固定される。軸孔51に固定された回転軸が回転中心となる。搬送回転体21の周面には、搬送歯車42が備えられている。搬送回転体21の一方側の面は、コイン10を載置する載置面50が配置されている。搬送回転体21は、回転中心を挟んで対向する縁に、載置面50から突出するように支持突起52の対が配置されている。ピン53を嵌めるための第1ピン孔54と第2ピン孔55は、支持突起52の搬送回転体21の回転方向の前後に備えられている。第1ピン孔54と第2ピン孔55は、支持突起52から離間している。ピン53と支持突起52によってコイン10を押動する押動体が形成される。1対のピン53は、搬送回転体21の回転中心を挟んで対向している。また、1対の第2ピン孔55も同様に、搬送回転体21の回転中心を挟んで対向している。搬送回転体21の載置面50は、搬送するコイン10を支持する平坦な支持面である。
【0045】
ピン53は、第1ピン孔54か第2ピン孔55の何れか一方か、または両方に挿入される。ピン53を第1ピン孔54に嵌合した場合は、反時計回りの位置の搬送回転体21に適用できる。ピン53を第2ピン孔55に嵌合した場合は、時計回りの位置の搬送回転体21に適用できる。ピン53を両方に嵌合した場合は、両方の回転方向の搬送回転体21に適用でき、選択的に配置せずに搬送部3を組み立てることができる。すなわち、搬送回転体21は、2つの支持突起52と、夫々の支持突起52の両端外側に第1ピン孔54と第2ピン孔55が備わり、第1ピン孔54と第2ピン孔55の全てにピン53を嵌めることができる。搬送回転体21に4つのピン53を装着することで、回転方向に定めのない搬送回転体21を形成できる。
【0046】
ピン53は、コイン10と接する側面を形成する大径部58、第1ピン孔54または第2ピン孔55と嵌合する小径部59を備える。小径部59の先端側には、第1ピン孔54または第2ピン孔55に挿入し易いように先端方向が縮径された先端傾斜部61が備わる。また、ピン53は、係止凹部60がリング状に備わる。第1ピン孔54と第2ピン孔55は貫通孔である。第1ピン孔54または第2ピン孔55には、ピン53の係止凹部60に対応する位置に係止凸部62がリング状に備わる。ピン53は、第1ピン孔54または第2ピン孔55に挿入され、係止凸部62と係止凹部60が掛かり、係止される位置まで圧入される。第1ピン孔54または第2ピン孔55は貫通孔なので、反対側からピン53の先端を押すことで、ピン53を第1ピン孔54または第2ピン孔55から外すことも可能である。
【0047】
ピン53は、第1ピン孔54に挿入された場合、係止凹部60に係止凸部62が嵌まり、挿抜し難くなる。また、ピン53は、第1ピン孔54との摩擦による抵抗はあるが、第1ピン孔54の中で回動自在に支持されている。ピン53は、コイン10との接触時に、予期せぬ力が加わった場合に、回動することで、力を分散させることができ、破損を防止できる。また、係止凹部60に係止凸部62が掛かるので、ピン53は回動しても、抜けることは無い。
【0048】
支持突起52には、ピン53の大径部58の周面に対応した円弧状の凹部が備わる。ピン53は、支持突起53の円弧状の凹部によって大径部58の側面が支持される。ピン53は、支持突起52の円弧状の凹部によって、大径部58の周面の1/4から1/2の面積が支持されることが好ましい。ピン53の回転方向にかかる力を支持突起52によって受けることができる。また、ピン53を支持する面を円弧状にすることで、ピン53からの力を広い面積で受けることができる。第1ピン孔54と第2ピン孔55は、歯車歯57の根本部分に配置されることが好ましい。歯車歯57の根本は肉厚であり、孔を形成することが可能であるが、歯車歯57間では、孔を形成することができない。また、歯車歯57に同期した位置にピン53を配置することで、同形状の他の搬送回転体21と連動させて動作させることが容易にできる。支持突起52によってピン53が支えられるので、小径部59が、第1ピン孔54あるいは第2ピン孔55の中で、壁面を押して、第1ピン孔54あるいは第2ピン孔55を拡大させることを防止できる。また、第1ピン孔54または第2ピン孔55の開口は、支持突起52から離間しており、この離間した部分と大径部58と小径部59の段差部が接し、密着することで、ピン53のぐらつきを防止している。ピン53の周面の面積の1/2から3/4が、第1ピン孔54または第2ピン孔55の内周と支持突起52に接することが好ましい。ピン53の表面の多くの部分が支えられることで、ピン53は、コイン10との接触による衝撃を緩和し、ぐらつきなどの不具合の防止ができる。
【0049】
切り欠き56は、対の一方の側の第1ピン孔54と第2ピン孔55の隣に設けられた裏面側まで至る溝である。切り欠き56は、一方側の押動体の近傍に設けられ、組立製造時の搬送回転体21のかみ合わせの目印にできる。また、搬送歯車42を切り欠き56に嵌めることができるので、搬送回転体21をコイン10の載置面側から組むことができる。
【0050】
搬送部3の2段目の搬送回転体21は、突出量の大きい第2押動体23を備え、3段目以降の搬送回転体21の第3押動体24は、第2押動体23より突出量が小さい。2段目の搬送回転体21には、大径部58の長いピン53を用い、3段目以降の搬送回転体21には、大径部58の短いピン53を用いることができる。大径部58の長さ違いのピン53によって、他の部品を兼用して第2押動体23を備える搬送回転体21と第3押動体24を備える搬送回転体21を作ることができる。また、第2押動体23用の大径部58が長いピン53は、導入回転体20に適用することもできる。
【0051】
第1ピン孔54、第2ピン孔55の開口部周辺に大径部58が入る、例えば0.5mm程度の微少深さの凹部を設けてもよい。大径部58と小径部59の段差部のエッジをこの凹部に入れることで、エッジ部分がコイン10に接触しないので、コイン10を傷付けることを防止できる。また、小径部59に係止凹部60に並行にリング状の微少な凹凸を設け、回動できるが、抜け難くすることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 コインホッパー
2 分離部
3 搬送部
4 フレーム
5 ディスク
6 格納容器
7 保持部
8 撹拌棒
9 分離体
10コイン
11 通路ベース
12 通路プレート
13 排出口
14 検出器
15 案内体
16 コイン経路
20 導入回転体
21 搬送回転体
22 第1押動体
23 第2押動体
24 第3押動体
25 回転軸
26 第1搬送ガイド
27 第2搬送ガイド
30 モータ
31 減速ユニット
32 回転軸
33 第1歯車
34 第2歯車
35 第3歯車
36 第4歯車
37 第5歯車
38 第1平歯車
39 第1傘歯車
40 第2平歯車
41 第2傘歯車
42 搬送歯車
43 第1連結軸
44 第2連結軸
45 第3連結軸
50 載置面
51 軸孔
52 支持突起
53 ピン
54 第1ピン孔
55 第2ピン孔
56 切り欠き
57 歯車歯
58 大径部
59 小径部
60 係止凹部
61 先端傾斜部
62 係止凸部