(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】カバレージ測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240125BHJP
C21D 7/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
C21D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2019084569
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591017869
【氏名又は名称】東洋精鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 兼久
(72)【発明者】
【氏名】半田 充
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-524579(JP,A)
【文献】特開2009-128260(JP,A)
【文献】特開平06-300739(JP,A)
【文献】特開2011-152603(JP,A)
【文献】特開2020-159098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0182499(US,A1)
【文献】米国特許第03950642(US,A)
【文献】P.O'HARA,A NOTE ON THE USE OF DYESCAN TRACERS AS A QUALITY-CONTROL TOOL FOR COVERAGE DETERMINATION IN CONTROLLED SHOT-PEENING,Journal of Mechanical Working Technology,1984年,Vol.10,pp.187-192
【文献】小野友暉 他,既設鋼橋溶接部を対象としたショットピーニングの品質管理手法の提案,第73回 土木学会年次学術講演会 講演概要集,2018年08月01日,I-144
【文献】DIEPART C.,Controls of the shot peening process in field applications.,Turbomachinery International,1989年11月,Vol.30 No.7,pp.28-31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
B24C 1/00-1/10
C21D 7/06
JSTPlus(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光材が塗布された面をショットピーニング処理した加工面のカバレージを測定する装置であって、
紫外光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源から出射される紫外光によって励起する蛍光を検出して加工面からの
蛍光像を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置で撮影された前記
蛍光像から特定される明度及び彩度の少なくとも一方と色相とからカバレージを算出する演算装置と、
可視光を出射する第2の光源と、
前記第2の光源及び前記撮影装置を収容する本体と、
アタッチメントであって、前記アタッチメントの一端が前記本体の撮影端に着脱可能に連結される一方で、前記アタッチメントの他端が撮影時に前記加工面に当接される、アタッチメントと、を備え
、
前記第1の光源は、前記アタッチメントに備えられており、
前記本体の撮影端に前記アタッチメントの一端が接続されており、かつ、前記アタッチメントの他端が前記加工面に当接する第1状態で、前記撮影装置は、前記第1の光源から出射される紫外光によって励起する蛍光を検出して前記加工面からの蛍光像を撮影可能であり、
前記本体の撮影端に前記アタッチメントの一端が接続されておらず、かつ、前記撮影端が前記加工面に当接する第2状態で、前記撮影装置は、前記第2の光源から出射される可視光による前記加工面からの反射像を撮影可能であり、
前記第2状態のときに前記第2の光源から前記加工面を介して前記撮影装置までの光路長は、前記第1状態のときに前記第1の光源から前記加工面を介して前記撮影装置までの光路長と同一であり、
前記演算装置は、前記第2状態のときに前記撮影装置で撮影された前記可視光による前記加工面からの反射像から特定されるカバレージを算出可能である、カバレージ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ショットピーニング処理された加工面のカバレージを測定する技術に関する。ここで、「カバレージ」とは、ショットピーニング量を定量的に評価するための指標である。典型的には、加工面に投射材が衝突することにより形成される投射痕面積と、加工面の面積との比(すなわち、投射痕面積/加工面面積)で表される。
【背景技術】
【0002】
機械部品(例えば、歯車、ばね等)や鋼構造物(例えば、橋梁等)等の金属の疲労強度を向上するために、金属の表面にショットピーニング処理が施されることがある。ショットピーニング処理では、投射材(例えば、鋼球)を金属の表面に投射し、金属の表面に圧縮残留応力を付与する。金属の表面に圧縮残留応力が付与されることで、金属の疲労強度が向上する。金属の表面に付与される圧縮残留応力は、ショットピーニング量によって変化する。このため、金属の表面に付与される圧縮残留応力を制御するためには、ショットピーニング量を定量的に評価する必要がある。そこで、従来からショットピーニング量を定量的に評価するための指標としてカバレージが用いられている。特許文献1には、カバレージを測定する装置が開示されている。特許文献1の測定装置では、ショットピーニングされた加工面を撮影装置で撮影し、その撮影画像から投射痕面積を算出し、その算出した投射痕面積と撮影装置で撮影される撮影面積からカバレージを算出する。撮影装置の光源としては、可視光を照射するLEDが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、可視光を用いて加工面の反射像を撮影し、撮影画像を二値化して、ショットピーニング処理がされた領域とショットピーニング処理がされていない領域とに区別している。しかしながら、加工面には、例えば、スケールが形成されている場合がある。このような場合、撮影画像の二値化によっては、ショットピーニング処理されている領域とショットピーニング処理されていない領域とを区別し難いことがある。また、測定対象の母材によっても、撮影画像の二値化によってショットピーニング処理された領域とショットピーニング処理されていない領域とに区別し難いことがある。本明細書は、撮影画像の二値化処理のみによってはカバレージ測定が困難な表面性状を有する加工面に対してもカバレージ測定を可能にする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示するカバレージ測定方法は、ショットピーニング処理された加工面のカバレージを測定する方法である。カバレージ測定方法は、ショットピーニング処理前にショットピーニング処理する面に蛍光材を塗布する塗布工程と、光源から出射される紫外光をショットピーニング処理後の加工面に照射して、紫外光により励起する蛍光を検出して加工面からの反射像を撮影する撮影工程と、撮影工程で撮影された反射像の明度及び彩度の少なくとも一方と色相とを特定する特定工程と、特定工程で特定された明度及び彩度の少なくとも一方と色相とからカバレージを算出する算出工程と、を備える。
【0006】
上記のカバレージ測定方法では、ショットピーニング処理する面に蛍光材を塗布し、ショットピーニング処理後に加工面に紫外光を照射して蛍光を検出する。ショットピーニング処理された領域は蛍光が検出されないため、ショットピーニング処理された領域を特定し易い。また、反射像の明度及び彩度の少なくとも一方と色相とに基づいて、カバレージを特定している。例えば、明度のみを指標としてショットピーニング処理の有無を判定すると、加工面にスケールが形成されている場合や蛍光が検出され易い母材である場合等に、ショットピーニング処理された部分と、ショットピーニング処理されていない部分との判別が難しいことがある。ショットピーニング処理の有無を判定する指標として明度及び彩度の少なくとも一方と色相とを用いることによって、蛍光の検出をより確実に判定することができる。このため、測定対象の母材やスケールの有無に関わらず、精度よくカバレージを特定することができる。
【0007】
また、本明細書に開示するカバレージ測定装置は、蛍光材が塗布された面をショットピーニング処理した加工面のカバレージを測定する。カバレージ測定装置は、紫外光を出射する第1の光源と、第1の光源から出射される紫外光によって励起する蛍光を検出して加工面からの反射像を撮影する撮影装置と、撮影装置で撮影された反射像から特定される明度及び彩度の少なくとも一方と色相とからカバレージを算出する演算装置と、を備える。
【0008】
上記のカバレージ測定装置では、蛍光材が塗布された面をショットピーニング処理した加工面に紫外光を照射し、その反射像から特定される明度及び彩度の少なくとも一方と色相とからカバレージを算出する。このため、上記のカバレージ測定方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0009】
また、本明細書は、蛍光材が塗布された面をショットピーニング処理した加工面のカバレージを算出するためのコンピュータプログラムを開示する。コンピュータプログラムは、コンピュータを、ショットピーニング処理後の加工面に照射された紫外光により励起する蛍光を検出して加工面からの反射像を撮影した撮影データを取得するデータ取得部と、データ取得部で取得された撮影データの明度及び彩度の少なくとも一方と色相とを算出し、算出された明度及び彩度の少なくとも一方と色相とからカバレージを算出する算出部として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に係るカバレージ測定装置の全体の構成を模式的に示す図。
【
図2】実施例に係るカバレージ測定装置の制御系を示すブロック図。
【
図3】撮影部の光学系を示す断面図であり、アタッチメントが装着された状態を示す。
【
図4】撮影部の光学系を示す断面図であり、アタッチメントが装着されていない状態を示す。
【
図5】紫外光を用いてカバレージを測定する手順の一例を示すフローチャート。
【
図6】
図5のカバレージ測定処理の手順の一例を示すフローチャート。
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。
【0012】
(特徴1)本明細書に開示するカバレージ測定装置は、可視光を出射する第2の光源と、第2の光源及び撮影装置を収容する本体と、その一端が本体の撮影端に着脱可能に連結される一方で、その他端が撮影時に加工面に当接されるアタッチメントと、をさらに備えていてもよい。第1の光源は、アタッチメントに備えられていてもよい。本体の撮影端にアタッチメントの一端が接続されており、かつ、アタッチメントの他端が加工面に当接する第1状態で、撮影装置は、第1の光源から出射される紫外光によって励起する蛍光を検出して加工面からの反射像を撮影可能であってもよい。本体の撮影端にアタッチメントの一端が接続されておらず、かつ、撮影端が加工面に当接する第2状態で、撮影装置は、第2の光源から出射される可視光による加工面からの反射像を撮影可能であってもよい。第2状態のときに第2の光源から加工面を介して撮影装置までの光路長は、第1状態のときに第1の光源から加工面を介して撮影装置までの光路長と同一であってもよい。演算装置は、第2状態のときに撮影装置で撮影された可視光による加工面からの反射像から特定されるカバレージを算出可能であってもよい。このような構成によると、可視光を用いて撮影された加工面の撮影画像からカバレージを算出できる。また、可視光による反射像を撮影するときの光路長と、紫外光による反射像を撮影するときの光路長が同一であるため、可視光に基づいて算出されたカバレージと紫外光に基づいて算出されたカバレージとを適切に比較して評価することができる。このため、より精度よくカバレージを評価することができる。
【実施例】
【0013】
以下、実施例に係るカバレージ測定装置10について説明する。カバレージ測定装置10は、オペレータによって測定対象となる加工面60の近傍まで携帯されて使用される。
図1、2に示すように、カバレージ測定装置10は、制御部本体12と撮影部14を備えている。制御部本体12と撮影部14はコード13により接続されている。
【0014】
制御部本体12は、電源スイッチ23や測定開始スイッチ22等のスイッチ類と、表示器20と、カバレージ測定装置10の各部を制御するコンピュータ24を備えている。電源スイッチ23は、カバレージ測定装置10を起動するためのスイッチである。電源スイッチ23が操作されると、制御部本体12内に収容されているバッテリ(図示しない)から制御部本体12の各部や撮影部14へ電源供給が開始される。測定開始スイッチ22は、カバレージの測定を開始するためのスイッチである。なお、測定開始スイッチ22を設ける代わりに表示器20をタッチパネルとし、表示器20内の画面の所定箇所をタッチすることで、カバレージの測定を開始するようにしてもよい。
【0015】
表示器20は、撮影部14で撮影された画像や測定されたカバレージ等を表示する。カバレージ測定装置10によってカバレージが複数回計測されたときは、計測されたカバレージの推移や平均値等も表示器20に表示される。
【0016】
コンピュータ24は、CPU、ROM、RAMを備えている。コンピュータ24は、撮影部14と表示器20と各種スイッチ22、23とメモリ25に接続されている(
図2参照)。コンピュータ24は、撮影部14を制御して加工面60を撮影する処理、撮影した画像に基づいてカバレージを算出する処理、算出したカバレージを表示器20に表示する処理等を行う。コンピュータ24の処理については、後で詳述する。
【0017】
メモリ25は、撮影部14で撮影された画像を記憶する。また、メモリ25は、コンピュータ24においてカバレージを算出する際に用いる色相、明度及び彩度の設定条件を記憶している。色相、明度及び彩度の設定条件については、後に詳述する。
【0018】
図3及び
図4を参照して、撮影部14について説明する。
図3に示すように、撮影部14は、本体30と、本体30に着脱可能なアタッチメント40を備えている。本体30は、可視光を照射する可視光光源32と、画像を撮影するカメラ34と、ハーフミラー36と、可視光光源32とカメラ34とハーフミラー36を収容するケーシング39を備えている。カメラ34は、コンピュータ24によってオン/オフ制御される。カメラ34で撮影された画像データは、コンピュータ24に入力され、メモリ25に記憶される。アタッチメント40は、紫外光を照射する紫外光光源42と、紫外光光源42が装着された基板43と、樹脂カバー44と、アタッチメント40を支持する支持部材45と、紫外光光源42と基板43と樹脂カバー44を収容するケーシング49を備えている。測定対象となる加工面60は、可視光光源32から照射される可視光又は紫外光光源42から照射される紫外光を用いて撮影される。
【0019】
ここで、測定対象となる加工面60を、可視光光源32から照射される可視光を用いて撮影する際に用いる可視光光学系38について説明する。
図4に示すように、可視光を用いて加工面60を撮影する際には、本体30からアタッチメント40を取り外し、本体30のアタッチメント40が装着可能な端部37を加工面60に当接した状態で撮影する。
【0020】
可視光光学系38は、第1光軸38aと、第1光軸38aと直交する第2光軸38bを有している。第1光軸38a上にはカメラ34が配置され、第2光軸38b上には可視光光源32が配置されている。ハーフミラー36は、第1光軸38aと第2光軸38bが交差する位置に配置されている。このため、可視光光源32から照射された可視光は、ハーフミラー36で反射されて加工面60に照射されるようになっている。ハーフミラー36で反射されて加工面60に照射される可視光光源32からの光の光軸は、カメラ34の光軸(すなわち、第1光軸38a)と同軸となっている。すなわち、可視光光学系38は同軸落射照明系となっている。また、可視光光学系38は、図示しない物体側テレセントリックレンズを備えている。このため、加工面60に照射される光の主光線は第1光軸38aと平行となる。すなわち、可視光光学系38は物体側テレセントリック光学系とされている。
【0021】
また、
図1及び
図4に示すように、可視光光源32とカメラ34と可視光光学系38はケーシング39内に収容されている。ケーシング39は、例えば、直径がφ12mmの細い管状に形成されている。可視光を用いたカバレージ測定時(画像撮影時)には、ケーシング39の先端が加工面60(測定対象となる面)に突き当てられる(
図4に示す状態)。これによって、可視光光源32からの可視光が垂直に加工面60に照射されるようになっている。また、ケーシング39の先端を加工面60に突き当てて画像を撮影することで、カメラ34で撮影される範囲が所定の領域に制限される。このため、カメラ34で撮影される撮影面積が略一定となる。ここで、ケーシング39が細い管状であるため、カメラ34で撮影される面積も狭くなる。その結果、カメラ34で鮮明な画像を撮影することができ、その後の解析を適切に行うことができる。
【0022】
次いで、測定対象となる加工面60を、紫外光光源42から照射される紫外光を用いて撮影する際に用いる紫外光光学系48について説明する。
図3に示すように、紫外光を用いて加工面60を撮影する際には、本体30にアタッチメント40を装着し、アタッチメント40の本体30と接続する端部46と反対側の端部47を加工面60に当接した状態で撮影する。
【0023】
紫外光光学系48は、アタッチメント40内の第3光軸48aと、本体30内の第1光軸38aを有している。第3光軸48aは、第1光軸38aと同軸となっている。このため、紫外光光学系48の光軸(すなわち、第3光軸48aと第1光軸38a)は、撮影部14内で(すなわち、アタッチメント40と本体30の内部で)直線状となっている。
【0024】
紫外光光源42は、アタッチメント40の先端(すなわち、端部47側)に配置される。詳細には、アタッチメント40内の端部47近傍に、基板43が第3光軸48aと直交するように配置されている。基板43の中心には、貫通孔50が形成されている。本実施例では、貫通孔50の直径はφ5mmとなっている。紫外光光源42は、基板43の端部47側の表面に設置されている。紫外光光源42は、第3光軸48aに沿って見たときに、貫通孔50と一致しない位置に配置される。本実施例では、基板43の表面に2つの紫外光光源42が設置されているが、基板43の端部47側の表面に設置される紫外光光源42の数は特に限定されない。なお、本実施例では、2つの紫外光光源42は、第3光軸48aに対して対称で、かつ、第3光軸48aからの距離が同一となる位置に配置されている。
【0025】
アタッチメント40の紫外光光源42より端部47側には、樹脂カバー44が配置されている。樹脂カバー44は、紫外光光源42から照射される紫外光と後述する蛍光材から生じる蛍光を透過する材料で形成されており、例えば、PET樹脂で形成されている。上述したように、本実施例のカバレージ測定装置10は、オペレータが測定対象となる加工面60の近傍まで携帯して使用される。したがって、カバレージ測定装置10は、屋内だけでなく屋外で使用されることがある。カバレージ測定装置10を屋外で使用する場合には、アタッチメント40の先端を加工面60に当接したときにアタッチメント40内に水等が浸入する虞がある。アタッチメント40の先端に樹脂カバー44を配置することによって、アタッチメント40内に水が浸入することを抑制することができる。これにより、アタッチメント40の先端側に配置される紫外光光源42に水等が接触することを抑制することができる。
【0026】
紫外光光源42から出射した紫外光は、樹脂カバー44を透過して加工面60に照射される。加工面60からの反射光は、基板43に設けられた貫通孔50を通ってケーシング49内に入射する。上述したように、第1光軸38a上にカメラ34が配置されている。このため、加工面60からの反射光は、第3光軸48aに沿ってケーシング49内を通過し、第3光軸48aと同軸の第1光軸38aに沿ってケーシング39内を通過して、カメラ34に入射する。ここで、反射光は直径の小さい貫通孔50を通ってケーシング49内に入射するため、カメラ34で撮影される面積も狭くなる。その結果、カメラ34で鮮明な画像を撮影することができ、その後の解析を適切に行うことができる。
【0027】
また、紫外光光源42をアタッチメント40の先端に配置される基板43の端部47側に設けることによって、紫外光光源42から照射される紫外光がアタッチメント40の内部に向かって照射されることが抑制される。このため、カメラ34に紫外光が入射することを抑制することができ、ノイズを低減することができる。なお、可視光を用いて加工面60のカバレージを測定する際に光路上に樹脂カバー44が配置されていると、樹脂カバー44によって可視光が反射してノイズが生じる。しかしながら、可視光を用いて加工面60のカバレージを測定する際には、アタッチメント40は取り外されるため、光路上に樹脂カバー44は存在しない。アタッチメント40側に樹脂カバー44を配置することによって、可視光による加工面60の撮影時に樹脂カバー44での反射によるノイズを回避できる。
【0028】
さらに、アタッチメント40には、樹脂カバー44より端部47側に支持部材45が配置されている。支持部材45は、環状であり、ケーシング49の端部47側の側面と先端を覆っている。また、支持部材45の端部47側には、貫通孔45aが形成されている。これにより、第3光軸48aに沿ってアタッチメント40を見たときに紫外光光源42と一致する位置に、支持部材45は配置されず、樹脂カバー44が露出する。このため、支持部材45によって、紫外光光源42から加工面60へ照射される紫外光が遮断されることが回避される。また、支持部材45をケーシング49の先端を覆うように設置することによって、撮影部14(すなわち、アタッチメント40)を加工面60に突き当てたときに、加工面60には支持部材45の先端のみが当接し、樹脂カバー44が加工面60に直接接触することを回避することができる。これにより、加工面60との接触によって樹脂カバー44の表面が傷付くことを抑制することができ、撮影画像に樹脂カバー44の表面の傷が写りこむことを抑制できる。
【0029】
また、アタッチメント40の光軸方向の寸法は、可視光光学系38の光路長と紫外光光学系48の光路長が一致する長さになっている。具体的には、可視光光学系38の光路長は、可視光光源32からハーフミラー36までの光路長と、ハーフミラー36から加工面60までの光路長と、加工面60からカメラ34までの光路長の合計である。紫外光光学系48の光路長は、紫外光光源42から加工面60までの光路長と、加工面60からカメラ34までの光路長の合計である。これらの可視光光学系38の光路長と紫外光光学系48の光路長が一致するように、アタッチメント40の光軸方向の寸法が設計されている。可視光光学系38の光路長と紫外光光学系48の光路長を一致させることによって、可視光光源32で撮影するときと紫外光光源42で撮影するときにおいて、カメラ34のピント等を変更することなく同じ撮影条件で撮影することができる。このため、可視光に基づいて算出されたカバレージと紫外光に基づいて算出されたカバレージとを適切に比較して評価することができ、より精度よくカバレージを評価することができる。
【0030】
次に、本実施例のカバレージ測定装置10を用いて、紫外光によりカバレージを測定する手順について説明する。
図5に示すように、まず、オペレータは、ショットピーニング処理前に、ショットピーニング処理する面に蛍光材を塗布する(S12)。蛍光材に紫外光を照射すると、紫外光によって蛍光材が励起され蛍光を生じる。紫外光を用いてカバレージを測定する際には、カメラ34は紫外光によって生じる蛍光を撮影する。このため、ショットピーニング処理及びカバレージ測定に先立ち、まず、ショットピーニング処理する面に蛍光材を塗布する。その後、オペレータは、蛍光材を塗布した面に対して、ショットピーニング処理を行う(S14)。
【0031】
ショットピーニング処理が終了すると、カバレージ測定装置10を用いてカバレージを測定する(S16)。ステップS16のカバレージを測定する処理については、
図6を参照してさらに詳細に説明する。カバレージを測定する際には、まず、オペレータは、アタッチメント40が装着された状態の撮影部14の先端(すなわち、アタッチメント40の端部47)を加工面60(ショットピーニング処理された面)に突き当てる(
図3に示す状態)。次いで、オペレータは、測定開始スイッチ22をオンする。
【0032】
測定開始スイッチ22がオンされると、
図6に示すように、コンピュータ24は紫外光光源42及びカメラ34を作動させる(S22)。上述したように、撮影部14にはアタッチメント40が装着されている。コンピュータ24は、撮影部14にアタッチメント40が装着されていることを検出し、紫外光光源42とカメラ34を作動させる。これによって、紫外光光源42から照射される紫外光が加工面60に照射される。加工面60に紫外光が照射されると、加工面60に塗布された蛍光材が励起され蛍光を生じる。カメラ34は、この蛍光を加工面60からの反射像として撮影する。カメラ34で撮影された撮影データは、コンピュータ24に入力され、メモリ25に記憶される。
【0033】
次いで、コンピュータ24は、カメラ34で撮影された画像データの色相、彩度及び明度を特定する(S24)。そして、特定した色相、彩度及び明度に基づいてカバレージを算出する(S26)。ショットピーニング処理により投射痕が形成された部分では、微細な凹凸のために照射された光が散乱し、加工面60に塗布された蛍光材から生じる蛍光がカメラ34まで到達し難い。すなわち、画像データから蛍光が検出されない部分は、投射痕が形成された部分と特定できる。一方、投射痕が形成されていない部分では、照射された光の散乱が生じ難いため、加工面60に塗布された蛍光材から生じる蛍光がカメラ34まで到達する。すなわち、撮影データから蛍光が検出される部分は、投射痕が形成されていない部分と特定できる。したがって、紫外光を照射したことによって加工面60に塗布した蛍光材から生じる蛍光を検出可能な色相、彩度及び明度の条件を設定し、投射痕の有無を判定する。
【0034】
投射痕の有無を判定するために用いる色相、彩度及び明度の条件は、ステップS12においてショットピーニング処理前に塗布した蛍光材の種類と、測定対象の母材等の組み合わせに応じて設定する。例えば、蛍光材の種類に応じて、紫外光を照射したときに発する蛍光の波長の範囲が特定される。このため、ステップS12で塗布した蛍光材の種類に合わせて、その蛍光材から生じる波長の蛍光が検出されるように色相を設定する。具体的には、特定の波長のみが検出されるように画像データにフィルタをかけ、画像データから設定した色相のみを検出する。そして、特定の色相(すなわち、波長)のみが検出されたデータについて、明度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。投射痕が形成されていない部分では、加工面60に塗布された蛍光材から生じる波長の蛍光がカメラ34によって撮影される。一方、投射痕が形成された部分では、特定の波長の蛍光はカメラ34によって撮影されない。このため、各画素について、明度が所定の閾値以上である場合には投射痕が形成されていない部分と区分し、明度が所定の閾値未満である場合には投射痕が形成された部分と区分する。
【0035】
また、測定対象の母材によっては、投射痕が形成されていても、設定した色相において明度が高くなることがある。このような場合には、色相と彩度を用いて、投射痕の有無を判定してもよい。すなわち、特定の波長のみが検出されるように画像データにフィルタをかけ、特定の色相(すなわち、波長)のみが検出されたデータについて、彩度が所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい。明度の閾値を設定する場合、明度の値は僅かに変化させただけでも判定結果が大きく異なることがある。一方、彩度の閾値を設定する場合、彩度の値を僅かに変化させたときの判定結果の変化量は、明度の値を僅かに変化させたときより小さい。このため、彩度の閾値のほうが、明度の閾値より細かく設定することができる。
【0036】
色相、彩度及び明度の条件については、蛍光材及び測定対象の母材等の組み合わせに応じて予め設定しておいてもよい。例えば、オペレータは、予め測定対象と同様の母材で形成した試験片に蛍光材を塗布して、所望の投射面積比率となるようにショットピーニング処理を行う。ショットピーニング処理された試験片の色相、彩度及び明度を測定して、投射痕の有無が明確に区別できるように色相、彩度及び明度の条件を設定することができる。設定した色相、彩度及び明度の条件は、メモリ25に記憶させる。ステップS26のカバレージの算出の際には、メモリ25に記憶された色相、彩度及び明度の条件を読み出して用いることができる。
【0037】
各画素について投射痕の有無が区分されると、コンピュータ24は、カバレージを算出する。具体的には、投射痕が形成されたと区分された画素の合計(投射痕面積)と、撮影データ中の全画素(すなわち、投射痕が形成されたと区分された画素と投射痕が形成されていないと区分された画素の合計、加工面面積)に基づいてカバレージを算出する。なお、投射痕面積と加工面面積からカバレージを算出する方法としては、公知の方法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。ステップS26でカバレージが算出されると、コンピュータ24は、表示器20に算出したカバレージを表示する(S28)。
【0038】
また、ステップS22でメモリ25に記憶された画像データを用いて、再度カバレージを算出することができる。このときに、色相、彩度及び明度の条件について異なる設定条件を用いてカバレージを算出してもよい。具体的には、コンピュータ24は、ステップS18でメモリ25に記憶された画像データを読み出す。次いで、コンピュータ24は、異なる設定条件の色相を検出するように、画像データにフィルタをかける。これによって、異なる波長の蛍光が検出される。そして、異なる色相において明度及び彩度がそれぞれ閾値以上であるか否かを判定し、各画素の投射痕の有無を区分する。その後、カバレージを算出する。このように、同一の画像データを用いて複数の異なる条件でカバレージを算出し、それらを比較して評価することによって、より正確にカバレージを評価することができる。
【0039】
また、本実施例のカバレージ測定装置10を用いて、可視光を用いてカバレージを測定することができる。可視光を用いてカバレージを測定する際には、アタッチメント40を取り外した状態の撮影部14の先端(すなわち、本体30の端部37)を、ショットピーニング処理された加工面60に突き立てて加工面60を撮影する(
図4に示す状態)。この場合には、可視光を用いて加工面60を撮影するため、上記のステップS12の蛍光材の塗布は実施しなくてよい。次いで、オペレータは測定開始スイッチ22をオンする。すると、コンピュータ24は可視光光源32及びカメラ34を作動させる。詳細には、コンピュータ24は、撮影部14にアタッチメント40が装着されていないことを検出し、可視光光源32とカメラ34を作動させる。これによって、可視光光源32から照射される光が加工面60に照射され、加工面60からの反射像がカメラ34で撮像される。カメラ34で撮像された撮像データはコンピュータ24に入力される。次いで、コンピュータ24は、カメラ34で撮影された画像データの明度を特定し、特定した明度に基づいてカバレージを算出する。なお、可視光を用いて撮影された画像データの明度に基づいてカバレージを算出する方法は、従来公知の方法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。上述したように、本実施例のカバレージ測定装置10では、可視光光学系38の光路長と紫外光光学系48の光路長が同一になっている。このため、可視光を用いて撮影された画像データから算出されたカバレージと、紫外光を用いて撮影された画像データから算出されたカバレージを比較して評価することができる。このように、同一の加工面60に対して、複数の異なる条件で算出されたカバレージを評価することによって、より正確にカバレージを評価することができる。
【0040】
実施例で説明したカバレージ測定装置10に関する留意点を述べる。実施例の紫外光光源42は、「第1の光源」の一例であり、可視光光源32は、「第2の光源」の一例であり、カメラ34は、「撮影装置」の一例である。
【0041】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
10:カバレージ測定装置
12:制御部本体
14:撮影部
20:表示器
24:コンピュータ
25:メモリ
30:撮影部の本体
32:可視光光源
34:カメラ
36:ハーフミラー
39:ケーシング
40:アタッチメント
42:紫外光光源
44:樹脂カバー
45:支持部材
49:ケーシング
60:加工面