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特許7426067インク供給ロールの洗浄方法とそれに使用するクリーニングシート
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  • 特許-インク供給ロールの洗浄方法とそれに使用するクリーニングシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】インク供給ロールの洗浄方法とそれに使用するクリーニングシート
(51)【国際特許分類】
   B41F 35/04 20060101AFI20240125BHJP
   B41M 1/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B41F35/04
B41M1/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019195483
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021066162
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593008427
【氏名又は名称】日本電子精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【弁理士】
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】丸野 正徳
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-212187(JP,A)
【文献】特開平06-040141(JP,A)
【文献】特開2001-080056(JP,A)
【文献】特開2002-178485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/00 - 35/06
B41F 5/00 - 13/70
B41M 1/00 - 3/18
B41M 7/00 - 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが転写される対象物(18)を保持するロール(20)と、
記ロール(20)にパターン化されたインクを供給するユニット(22)
有する印刷機(51)であり、
前記ユニット(22)は、
前記インクを供給するインクタンク(21)と、
前記インクタンク(21)から前記インクを受け取るインク供給ロール(16)と、
フレキソ版(100)を表面に有し前記インク供給ロール(16)から前記インクを受け取り、前記ロール(20)へ前記インクを転写するロール(19)と、である印刷機(51)において、
前記ロール(19)にクリーニングシート(50)をセットし、前記ロール(19)を回転することで、前記インク供給ロール(16)を洗浄するインク供給ロールの洗浄方法であり、
前記クリーニングシート(50)は、前記インク供給ロール(16)より、表面粗さが小さく、
前記クリーニングシート(50)は、その硬度により、前記インクを固め、
前記クリーニングシート(50)は、インク塊を吸着除去するのでなく、前記インク塊を押したり、引いたりして、インク供給ロール(16)から除外するインク供給ロールの洗浄方法。
【請求項2】
インクが転写される対象物(18)を保持するステージ(17)と、
前記インクを供給するインクタンク(21)と、
前記インクタンク(21)から前記インクを受け取るインク供給ロール(16)と、
フレキソ版(100)を表面に有し前記インク供給ロール(16)から前記インクを受け取り、前記ステージ(17)へ前記インクを転写するロール(19)と、である印刷機(52)において、
前記ロール(19)にクリーニングシート(50)をセットし、前記ロール(19)を回転することで、前記インク供給ロール(16)を洗浄するインク供給ロールの洗浄方法であり、
前記クリーニングシート(50)は、前記インク供給ロール(16)より、表面粗さが小さく、
前記クリーニングシート(50)は、その硬度により、前記インクを固め、
前記クリーニングシート(50)は、前記インク塊を吸着除去するのでなく、前記インク塊を押したり、引いたりして、インク供給ロール(16)から除外するインク供給ロールの洗浄方法。
【請求項3】
洗浄液を使用しない請求項1又は2に記載のインク供給ロールの洗浄方法。
【請求項4】
前記ロール(19)に前記クリーニングシート(50)をセットした状態の外径と、
前記ロール(19)に前記フレキソ版(100)をセットした状態の外径とは同じである請求項1~3のいずれか1項に記載のインク供給ロールの洗浄方法。
【請求項5】
前記クリーニングシート(50)のShore硬度Aは、20°以上70°以下である請求項1又は2記載のインク供給ロールの洗浄方法
【請求項6】
前記クリーニングシート(50)のShore硬度Aは、35°以上60°以下である請求項1又は2記載のインク供給ロールの洗浄方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項のインク供給ロールの洗浄方法で使用される、フレキソ版(100)が配置されたロール(19)にインクを供給するインク供給ロール(16)の洗浄用クリーニングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給ロールの洗浄方法とそれに使用するクリーニングシートに関する。特に、フレキソ版を使用する印刷装置におけるインク供給ロールの洗浄方法とそれに使用するクリーニングシート関する。
【背景技術】
【0002】
ダンボールなどに印刷する方法として、フレキソ版による印刷技術がある(特許文献1)。フレキソ版では、フレキソ版をローラにセットする。ローラの回転を利用して、フレキソ版の表面にインクを乗せ、ダンボールにインクを転写する。フレキソ版があれば、簡単に印刷ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-268291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置では、フレキソ版にインクを付着させるインク供給ローの洗浄が必要である。ローを取り外して洗浄するには、装置の調整に時間がかかる。
そこで、本願の発明の課題は、分解せずにインク供給ロールを洗浄するインク供給ロールの洗浄方法とそれに使用するクリーニングシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、ロールと、上記ロールにパターン化されたインクを供給するユニットと、上記インクが転写される対象物を保持するステージ又はロールとを有する印刷機であり、上記ユニットは、上記インクを供給するインクタンクと、上記インクタンクから上記インクを受け取るインク供給ロールと、フレキソ版を表面に有し上記インク供給ロールから上記インクを受け取り、上記ロールへ上記インクを転写するロールである印刷機において、上記ロールにクリーニングシートをセットし、上記ロールを回転することで、上記インク供給ロールを洗浄するインク供給ロールの洗浄方法を用いる。
【0006】
また、フレキソ版が配置されたロールにインクを供給するインク供給ロールの洗浄用クリーニングシートであり、上記フレキソ版と同じ厚みのクリーニングシートを用いる。
【発明の効果】
【0007】
本願発明のインク供給ロールの洗浄方法とそれに使用するクリーニングシートでは、短時間で、インク供給ロールを洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)実施の形態1のダンボール印刷用フレキソ版ユニット200の断面図、(b)実施の形態1のダンボール印刷用フレキソ版ユニット200の平面図
図2】実施の形態のダンボール印刷用フレキソ版ユニット200を用いた印刷装置の断面図
図3】実施の形態のフィルム・紙印刷用フレキソ版ユニット200を用いた印刷装置の断面図
図4】(a)実施の形態1のフィルム・紙印刷用フレキソ版100の周辺の拡大断面図、(b)実施の形態1のクリーニングシート50の周辺の拡大断面図、(c)実施の形態のダンボール印刷用クリーニングユニットの断面図
図5】(a)クリーニング前の状態のロールとインク供給ロールと間の断面図、(b)クリーニング後の状態のロールとインク供給ロールとの間の断面図
図6】(a)洗浄前のインク供給ロールの表面写真、(b)実施例1の洗浄後のインク供給ロールの表面写真、(c)実施例2の洗浄後のインク供給ロールの表面写真
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を用いて説明するが、発明は以下には限定されない。
(実施の形態1)
まず、フレキソ印刷の技術を説明する。
【0010】
<フレキソ印刷1>
図1(a)は、実施の形態1のダンボール印刷用フレキソ版ユニット200の断面図である。図1(b)は、ダンボール印刷用フレキソ版ユニット200の平面図である。
ダンボール印刷用フレキソ版100は、その表面に凸部(図では省略)を有する。その凸部は、文字や模様を印刷するためのパターンである凸部である。この凸部の先端にインクを付け、対象物へそのインクを転写することで印刷がされる。
ダンボール印刷用フレキソ版100は、基材12の一方面に接着されている。もう一方の面には、固定部11が接着されている。
【0011】
図2に、このダンボール印刷用フレキソ版ユニット200を用いた印刷装置52の断面図を示す。ダンボール印刷用フレキソ版ユニット200は、円筒状のロール19に設置される。ロール19の凹部13に、固定部11がはめ込まれ、フレキソ版ユニット200が固定される。フレキソ版100にインクを供給するインク供給ロール16が、ロール19に隣接される。インク供給ロール16へインクを供給するインクタンク21がある。
【0012】
一方、ロール19の下部には、ステージ17がある。ステージ17には、印刷される対象物18(ダンボール)が保持されている。
ロール19、インク供給ロール16が隣接し回転し、ステージ17が移動する。結果、インクは、フレキソ版100に一旦付着し、その後、対象物18(ダンボール)に付着される。
【0013】
<フレキソ印刷2>
図2は、1色の印刷装置52の場合を示した。図3は、フィルム・紙等の複数の色のインクを用いる場合の印刷装置51の断面図である。
各ロールが回転しながらインクを対象物18へ転写することで印刷がされる。
ール20があり、その周辺に、図2で示した複数のユニット22がある。
ユニット22は、ロール20にパターン化されたインクを供給する。ユニット22は、ロール19とインク供給ロール16とインクタンク21とである。
対象物18(フィルム・紙等)は、リワインダー(ロール)より供給され、ワインダー(ロール)により巻き取られる。
インクを供給するインクタンク21は、液状のインクを保持し、インク供給ロール16の表面にパターンなしでベタ状にインクを供給する。ダイノズルと同様である。
インク供給ロール16は、インクタンク21からインクを受け取る。インクは、パターン化されていない。
【0014】
ロール19は、フレキソ版100を表面に有し、インク供給ロール16からインクを受け取り、ロール20上の対象物18にインクを転写する。フレキソ版100は、パターン化された凸部を有し、その先端でインクを受けとる。インクはパターン状に供給される。
そのパターン化されたインクは、ロール20上の対象物18に転写される。
それぞれのユニット22は、例えば、黄、赤、青、黒色インクを供給するものである。
4色でカラーの印刷をできる。インクタンク21は、それぞれの色のインクである。
【0015】
4色を精度よく合わせる必要があるため、各ロール19の位置精度は重要である。また、そのロール19に、均質にインクを供給するインク供給ロール16も、位置精度が必要である。
そのため、インク供給ロール16の洗浄は、インク供給ロール16を装置から外さずにできるのが好ましい。
インク供給ロール16は、長時間使用すると、インクが固まって、その表面に付着する。この固まりで、フレキソ版100へインクの供給が不均質になる。そのため、定期的に、又は、印刷の不良発生により、インク供給ロール16を洗浄する必要がある。
なお、各ロールは、円柱状である。
【0016】
<クリーニングシート50>
図4(a)~図4(c)とで、クリーニングシート50について説明する。
図4(a)は、フレキソ版100の周辺の拡大断面図である。
図4(b)は、クリーニングシート50の周辺の拡大断面図である。
インク供給ロール16の洗浄は、インク供給ロール16を取り外さない。ロール19から、フレキソ版100を取り外し、クリーニングシート50を、ロール19に取り付ける。ここでは、フィルム・紙等用の図3でのクリーニングを説明するが、図2のダンボール用の図2でも同様に適用される。
【0017】
図4(c)で、クリーニングシート50をロール19に取りつけるためのクリーニングユニット300の断面図を示す。
クリーニングシート50は、ソリッドな熱可塑性エラストマー構成物(SISやSBS)や天然ゴム、NBR(ニトリゴム),発泡ポリウレタン、天然ゴム、CR(クロロプレンゴム)、PVAなどである。
厚みは0.95mm~7.50mm程度である。
クリーニングシート50の硬さはShore硬度A20~70°が好ましい。
フレキソ版100より硬いのが好ましい。
Shore硬度A20°より小さい、または、70°より大きいと、インクを固めにくく、クリーニングが進みにくい。
さらに、クリーニングシート50のShore硬度Aは、35°以上60°以下がよい。
なお、インク供給ロール16は、Steel製である。インク供給ロール16の表面はハードクロム処理もしくはセラミック処理がされている。
図4(a)のロール19にフレキソ版100をセットした時の外径aと、図4(b)のロール19にクリーニングシート50をセットした時の外径bとは、ほぼ同じあることが好ましい。
つまり、フレキソ版100とクリーニングシート50との厚みは、ほぼ同じが好ましい。ほぼ同じ厚みとは、1方が他方の90%~110%の範囲であることであることが好ましい。
【0018】
<クリーニングプロセス>
(1)印刷装置51で、フレキソ版100があれば、取り外す。フレキソ版100が取り付けられていない場合は、以下(2)へ進む。
(2)ロール19にクリーニングユニット300を取り付ける。
クリーニングユニット300は、1回だけでなく複数回使用できる。そのため、保管されていたクリーニングユニット300を使用できる。なお、印刷装置のタイプによれば、クリーニングユニット300でなく、クリーニングシート50を直接、または、間接的に、ロール19へ張り付ける。
なお、ロール19とインク供給ロール16との位置関係は、変更しない。
(3)ロール19、インク供給ロール16を回転させる。この時、インクタンク21からインクは供給せず、アルカリ性界面活性剤などを供給する。
アルカリ性にする事により洗浄性が著しく向上する。強アルカリにすれば、インキの溶解性が向上するが、劇物扱いで保管上の問題があり、さらに、作業危険性の問題もある。
そのため、弱アルカリ性界面活性剤する。ただし、クリーニングユニット300とともに、弱アルカリ性界面活性剤を用いることで、十分にクリーニングできる。
回転を1回転でなく、複数回転させる。図5(a)と図5(b)とで、クリーニングの状態を説明する。
回転速度は、フレキソ印刷時と同等又は、それ以下である。
ロール19とインク供給ロール16とは滑らずに回転させる。
ール20は、クリーニング時に回転させてもさせなくても、クリーニングは可能である。
図5(a)は、クリーニング前の状態で、インク供給ロール16にインク塊14が付着されている。ロール19にクリーニングシート50、又は、クリーニングユニット300をセットする。その後、ロール19、インク供給ロール16を回転させる。回転数が増えるにしたがい、インク塊14が、インク供給ロール16から除外される。
クリーニングシート50は、インク塊14を吸着除去するのでなく、インク塊14を押したり、引いたりして、インク供給ロール16から除外する。そのため、クリーニングシート50は、ある程度の硬さと、低い粘着性とが必要である。
【0019】
<実施例>
図4(b)で、クリーニングシート50を使用してインクの詰まりを除去した。
クリーニングシート50は、フレキソ版100と同じ厚み、同じ大きさのものを使用した。30分間、ロール19とインク供給ロール16を回転させた。回転速度は、フレキソ版印刷時と同じにした。
実施例1,2、比較例として表1の条件で実施した。
実施例2、比較例では、洗浄液を使用した。洗浄液は、PH値9.5~9.8の界面活性剤を使用した。クリーニングシート50、または、ロール19とインク供給ロール16間に洗浄液を塗布しなから回転させた。
クリーニングシート50の硬さは、フレキソ版100より硬い、Shore硬度A30のものを使用した。
なお、洗浄液は、弱アルカリ性の界面活性剤ならよい。
【表1】
図6(a)に、洗浄前のインク供給ロール16の表面を示す。図6(b)に、実施例1の洗浄後のインク供給ロール16の表面を示す。図6(c)に、実施例2の洗浄後のインク供給ロール16の表面を示す。黒い四角部分が小さくなるほど洗浄できている。
CAPATCH試験をした。CAPATCH試験は、表面の容積を測定する。オランダのSTEINHART社製キャパッチを使用した。値が大きいほどインクが除去されていることを示す。
実施例1のクリーニングシート50だけでも、インクが除去されている。さらに、実施例2のように、クリーニングシート50と洗浄液とを使用するとより洗浄された。
(なお書き)
印刷装置52でも、印刷装置51と同様に、上記クリーニング方法が使用できる。
上記の実施の形態は組み合わせすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本願発明のロール洗浄方法とそのシートは、フレキソ印刷だけでなく、凹版印刷など印刷機一般で利用できる。
【符号の説明】
【0021】
11 固定部
12 基材
13 凹部
14 インク塊
16 インク供給ロール
17 ステージ
18 対象物
19 ロール
20 ール
21 インクタンク
22 ユニット
50 クリーニングシート
51 印刷装置
52 印刷装置
100 フレキソ版
200 フレキソ版ユニット
300 クリーニングユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6