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  • 特許-包装材およびそれを用いる包装体 図1
  • 特許-包装材およびそれを用いる包装体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】包装材およびそれを用いる包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20240125BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240125BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20240125BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240125BHJP
   B65D 75/62 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B5/02 C
B32B27/02
B32B27/32 E
B65D75/62 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019216845
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084406
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】眞子 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-171862(JP,A)
【文献】特開2002-234092(JP,A)
【文献】特開2005-047234(JP,A)
【文献】特開2014-205513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 30/00 - 33/38
B65D 65/00 - 79/02
B65D 81/18 - 81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘部がポリオレフィン系重合体で芯部が鞘部のポリオレフィン系重合体の融点よりも高融点の熱可塑性重合体から構成された芯鞘型複合長繊維からなるスパンボンド不織布の片面にポリオレフィン樹脂層が積層されてなり、スパンボンド不織布は熱圧着部を有し、熱圧着部は、芯鞘型複合長繊維の鞘部のポリオレフィン系重合体の溶融または軟化後の再固化によって、繊維形態を維持した芯部同士を互いに接着したものであって、連続する凹状の熱圧着部が、非熱圧着部を囲繞している包装材から得られる包装体において、
前記包装材をポリオレフィン樹脂層側が対向するように重ねて、少なくともスパンボンド不織布の機械方向をヒートシールしてなり、ヒートシールした部分の近傍に、機械方向に切り込まれたノッチを設けた、包装体
【請求項2】
前記芯部の熱可塑性重合体がポリエステル系重合体であり、前記芯部の融点が鞘部を構成するポリオレフィン系重合体の融点より30℃以上高い、請求項1に記載の包装体
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂層の融点が、鞘成分を構成するポリオレフィンの融点とほぼ同じである、請求項1または2に記載の包装体
【請求項4】
スパンボンド不織布の目付が20~40g/mであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の包装体
【請求項5】
芯鞘型複合長繊維の単繊維繊度は1~10デシテックスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の包装体
【請求項6】
非熱圧着部が楕円形であり、楕円形の長軸が互い違いに配置されてなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項7】
スパンボンド不織布の機械方向以外に、横断方向もヒートシールする、請求項6に記載の包装体。
【請求項8】
包装する物品が含まれる請求項6または7に記載の包装体。
【請求項9】
鞘部がポリオレフィン系重合体で芯部が鞘部のポリオレフィン系重合体の融点よりも高融点の熱可塑性重合体から構成された芯鞘型複合長繊維からなるスパンボンド不織布を形成し、
得られたスパンボンド不織布を、凸部が連続して凹部を囲繞してなるエンボスパターンを有するエンボスロールとフラットロールとからなる熱エンボス装置に通してスパンボンド不織布に連続する凹状の熱圧着部が非熱圧着部を囲繞しているパターンを形成し、
得られたパターンを有するスパンボンド不織布において、前記熱エンボス装置に通したときにフラットロールと接した側の面にポリオレフィン樹脂層を積層して包装材を形成し、
次いで、包装材のポリオレフィン樹脂層側が対向するように重ねて、包装材の機械方向をヒートシールし、ヒートシールした部分の近傍に、機械方向に切り込まれたノッチを設ける、
ことを特徴とする包装体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材、特に引き裂きが容易な包装材およびそれを用いる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材としては、種々の物が用いられているが、包装物品の形状の変化に対応し、かつ中身が透ける用途に不織布が用いられることがある。不織布は、ヒートシールをして密封して物品を包装することができるので、柔らかい物品を封入するのに適している。しかし、不織布は開封する時に、引き裂きにくい欠点がある。また、ヒートシールも不織布が繊維であるので、均一な熱圧着が難しい。
【0003】
特開2016-203594号公報(特許文献1)には、ポリオレフィン系不織布の片面に、ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーを含有する樹脂組成物からなる未延伸層を有する、積層体を延伸した複合シートが開示されている。この複合シートも、不織布を引き裂くことが難しく、開封するのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-203594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、開封時に引き裂きが容易になる包装材およびそれを用いる包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下の態様を提供する:
[1]
鞘部がポリオレフィン系重合体で芯部が鞘部のポリオレフィン系重合体の融点よりも高融点の熱可塑性重合体からから構成された芯鞘型複合長繊維からなるスパンボンド不織布の片面にポリオレフィン樹脂層が積層されてなり、スパンボンド不織布は熱圧着部を有し、熱圧着部は、芯鞘型複合長繊維の鞘部のポリオレフィン系重合体の溶融または軟化後の再固化によって、繊維形態を維持した芯部同士を互いに接着したものであって、連続する凹状の熱圧着部が、非熱圧着部を囲繞している包装材。
[2]
前記芯部の熱可塑性重合体がポリエステル系重合体であり、前記芯部の融点が鞘部を構成するポリオレフィン系重合体の融点より30℃以上高い、[1]に記載の包装材。
[3]
前記ポリオレフィン樹脂層の融点が、鞘成分を構成するポリオレフィンの融点とほぼ同じである、[1]または[2]に記載の包装材。
[4]
スパンボンド不織布の目付が20~40g/mであることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の包装材。
[5]
芯鞘型複合長繊維の単繊維繊度は1~10デシテックスであることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の包装材。
[6]
請求項1記載の包装材をポリオレフィン樹脂層側が対向するように重ねて、少なくともスパンボンド不織布の機械方向をヒートシールしてなる包装体であり、ヒートシールした部分の近傍に、機械方向に切り込まれたノッチを設けた、包装体。
[7]
スパンボンド不織布の機械方向以外に、横断方向もヒートシールする、[6]に記載の包装体。
[8]
包装する物品が含まれる[6]または[7]に記載の包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の包装材は、鞘部がポリオレフィン系重合体で芯部が鞘部のポリオレフィン系重合体の融点よりも高融点の熱可塑性重合体からから構成された芯鞘型複合長繊維からなるスパンボンド不織布の片面にポリオレフィン樹脂層が積層されたものを使用し、しかもスパンボンド不織布は熱圧着部を有し、熱圧着部は、芯鞘型複合長繊維の鞘部のポリオレフィン系重合体の溶融または軟化後の再固化によって、繊維形態を維持した芯部同士を互いに接着したものであって、連続する凹状の熱圧着部が、非熱圧着部を囲繞しているものである。本発明の包装材の端部に、機械方向に切り込みを入れると、その切り込み箇所から、機械方向に容易に引き裂くことができ、不織布を用いる包装材であるにもかかわらず、開封が容易である。また、開封が容易とはいっても、不必要に引き裂かれて梱包物品に傷などをつけることはない。
【0008】
本発明の包装材は、ポリオレフィン樹脂層側が対向するように重ねて、その中に包装される物品を挿入して、開口部を全てヒートシールすると物品を封入することができる。ヒートシールはスパンボンド不織布の機械方向(MD方向)とこれに直角な横断方向(CD方向)とに行われ、包装体の端部に、MD方向に切り込まれたノッチを設けると、ノッチを起点に程よい力で切り裂くことができる。尚、本発明では、包装材はスパンボンド不織布とポリオレフィン樹脂層とが積層したものを言い、その包装材を用いて物品を包装し、その開口端部をヒートシールし、かつMD方向に切り込まれたノッチを設けたものを包装体と言う。
【0009】
何故引き裂き性が良くなったかはわかっていないが、不織布にポリオレフィン樹脂層を積層された時に、不織布を構成する芯鞘型複合長繊維の鞘成分がポリオレフィン系重合体で構成されているので、積層時にポリオレフィンが溶融一体化されるが、芯鞘型複合長繊維の芯部分が繊維状のまま残り、繊維が機械方向に配向しているので、その方向には引き裂きが容易になったと考えられる。また、本発明の包装材は、スパンボンド不織布であり、その一部を熱圧着して、芯鞘型複合長繊維の鞘部のポリオレフィン系重合体が溶融または軟化し、芯部は繊維形態を維持しているので、繊維が機械方向に配向しているので、引き裂きがより容易になったものと考えられる。しかし、この理論だけでは、なぜMD方向のノッチを入れた時に、そのノッチを起点にちょうど良い力でMD方向に引き裂くことができることの説明が十分ではない。従って、この理論に限定されるものではなく、他の理論も考慮する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の包装材に用いるスパンボンド不織布の非熱圧着部と熱圧着部を模式的に示した図である。
図2図2は、本発明の包装材に用いるスパンボンド不織布の非熱圧着部と熱圧着部の別の態様の模式的に示した図である。
図3図3は、本発明の包装材を袋状にした状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の包装材は、鞘部がポリオレフィン系重合体で、芯部が鞘部のポリオレフィン系重合体の融点よりも高融点の熱可塑性重合体で構成された芯鞘型複合長繊維からなるスパンボンド不織布にポリオレフィン樹脂層を積層したものである。
【0012】
鞘部のポリオレフィン系重合体と、芯部の高融点の熱可塑性重合体との組み合わせとしては、ポリオレフィン系重合体(鞘)/ポリエステル系重合体(芯)、ポリオレフィン系重合体(鞘)/ポリアミド系重合体(芯)、ポリエチレン系重合体(鞘)/ポリプロピレン系重合体(芯)が挙げられる。芯部としてポリエステル系重合体を選択すると、機械的強度が高いものとなる。また、ポリエチレン系重合体(鞘)/ポリプロピレン系重合体の組み合わせは、互いに相溶性が高いため、取り扱い性が良好であり好ましい。本発明においては、ポリオレフィン系重合体(鞘)/ポリエステル系重合体(芯)で構成された芯鞘型複合長繊維を好ましく用いることができる。
【0013】
以下に、ポリオレフィン系重合体(鞘)/ポリエステル系重合体(芯)で構成された芯鞘型複合長繊維からなるスパンボンド不織布から説明する。
【0014】
<スパンボンド不織布>
芯部を構成するポリエステル系重合体としては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリン-2,6ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類と、アルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等のジオール化合物とから合成されるホモポリエステルないしは共重合ポリエステルがあり、上記ポリエステルにパラオキシ安息香酸、5-ソジュームスルフオイソフタール酸、ポリアルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビスフエノールAなどが添加あるいは共重合されていてもよい。
【0015】
鞘部を構成するポリオレフィン系重合体としては、炭素原子数が2~16の脂肪族α-モノオレフイン、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、1-オクタデセンのホモポリオレフィン又は共重合ポリオレフィンなどがある。脂肪族α-モノオレフインは、他のオレフィンおよび、または少量(重合体重量の約10重量%まで)の他のエチレン系不飽和モノマー、たとえばブタジエン、イソプレン、ペンタジエン-1,3、スチレン、α-メチルスチレンの如き類似のエチレン系不飽和モノマーと共重合されていてもよい。特にポリエチレンの場合は、重合体重量の約10重量%までのプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1または類似の高級α-オレフィンと共重合させたものが好ましい。
【0016】
なお、ポリエステル系重合体およびポリオレフィン系重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などの任意の添加物が添加されていてもよい。
【0017】
芯部と鞘部の組合せとしては、上記の重合体から、融点差が30℃以上、好ましくは50℃以上あるものを選択する。すなわち、芯部を構成するポリエステル系重合体の融点よりも鞘部を構成するポリオレフィン系重合体の融点が30℃以上、好ましくは50℃以上低いものを選択する。不織布を構成する長繊維同士は、熱圧着部を有することにより一体化して不織布として形態を保持している。熱圧着部は、熱エンボス加工により形成されるものであるが、熱圧着部においては、鞘部は溶融または軟化して、その後再固化することにより接着に寄与するが、芯部は熱の影響を受けて溶融するのではなく繊維形態を維持する。このように熱圧着部において、鞘部は溶融または軟化し、一方、芯部は繊維形態を維持させるために、両者の融点に30℃以上、より好ましくは50℃以上の差を設けることにより、熱エンボス加工の際に、芯部を熱の影響を受けさせずに、かつ鞘部を確実に溶融または軟化させて熱圧着部での熱接着固定をすることができる。
【0018】
芯鞘型複合長繊維における芯鞘複合比率(質量比)は、芯部/鞘部=80/20~50/50がよい。鞘部よりも芯部の比率を同等以上にすることにより、機械的物性に優れ、実用的な強度が維持できる。なお、芯部の比率が80質量%を超えると、接着成分となる鞘部の比率が小さくなるため、熱圧着部での接着強力が低下する傾向となり、さらにはMD方向への容易な引裂性に寄与しにくい傾向となるため、芯部の比率の上限は80質量%がよい。
【0019】
芯鞘型複合長繊維の単繊維繊度は1~10デシテックスが好ましく、かつ、不織布の目付は20~40g/mが好ましい。単繊維繊度が1デシテックス以上とすることにより、不織布の強度を維持することができ、包装される物品を保護する役割を良好に担うことができる。一方、10デシテックス以下にすることにより、不織布の目付斑が生じにくく、均一な強度を維持しうる。目付を20g/m以上とすることにより、実用的な強度を確保することができ、一方、40g/m以下とすることにより、やや透け感を有するものとすることができるため、包装される物品に印字がなされている場合等において、外から視認でき、物品についての確認作業等を行うことが可能となる。
【0020】
不織布は、スパンボンド不織布であり、スパンボンド法により製造されるものである。例えば、空気圧を利用して長繊維束を引き取りながら延伸し,コロナ放電等の方法で静電気的に開繊し、移動する捕集面上に堆積することでウェブ化したのち、繊維同士を一体化させて不織布を得る。スパンボンド不織布は、不織布内の多くの繊維(芯鞘型複合長繊維)が機械方向(MD方向)に主として配向しているので、MD方向に引き裂かれやすい。本発明においては、スパンボンド不織布がMD方向に引裂かれやすい傾向にあることを利用し、かつ、堆積することでウェブ化した不織ウェブを熱エンボス装置に通して、熱エンボス加工を施して不織布とするが、特定の熱圧着部を形成させることにより引裂かれやすいものとなると考える。
【0021】
不織布は、熱エンボスロールを用いた熱エンボス加工が施されて熱圧着部が形成されているが、該熱圧着部は、連続する熱圧着部が非熱圧着部を囲繞するように熱圧着部が形成されているのが好ましい。図1には、非熱圧着部が楕円形状を有するものが、連続する熱圧着部に囲繞されているものが例示されているが、この形状に限定されない。例えば、図2に示すように、非熱圧着部が正方形を有し、それが井桁状の熱圧着部で囲繞されているようなものでもよい。熱圧着部は、芯鞘型複合長繊維の鞘部のポリオレフィン系重合体が溶融または軟化した後に再固化し、熱の影響を受けずに繊維形態を維持した芯部同士を互いに接着した状態となっており、非熱圧着部は、芯部および鞘部ともに熱の影響をほぼ受けることなく芯鞘型複合長繊維の形態を維持した状態である。熱圧着部が連続していることは、得られる不織布の形態安定性も向上し、非熱圧着部が連続した熱圧着部で囲繞されるようにすると形態安定性が良好でかつ引き裂きが容易な不織布を得ることができる。
【0022】
熱圧着部の形状は適宜設計すればよく、円形、楕円形、三角や四角等の多角形等さまざまな形状が挙げられる。また、個々の熱圧着部の面積は0.2~2mm程度、非熱圧着部の密度は15~70個/cm程度がよい。エンボスロールが有する凸部の形状は、不織布に形成される熱圧着部の形状となり、エンボスロールが有する凹部の形状は、不織布に形成される非熱圧着部の形状となる。エンボスロールの全表面に対して凸部が占める面積の比率(凸部の面積率)は、得られる不織布に形成される熱圧着部と非熱圧着部(繊維が単に堆積してなる領域)とのバランスを考慮して、25~50%がよい。25%以上とすることにより、連続する熱圧着部の領域を一定以上形成させ、引裂き易くできると考える。また、上限は50%とすることにより、得られる不織布において熱圧着部以外の領域(繊維が堆積してなる領域)も確保することにより、不織布に柔軟性と実用的な機械的強力を具備させることができる。
【0023】
熱エンボス加工に用いるエンボス装置は、上記した凹凸の彫刻パターンを有するエンボスロールとフラットロールとからなる装置を用いるとよい。
【0024】
熱エンボス加工を施した不織布には、本発明の目的を阻害しない範囲で、帯電防止剤など任意の剤が塗布等により付着していてもよい。
【0025】
<ポリオレフィン樹脂層>
スパンボンド不織布の片面にはポリオレフィン樹脂層が積層されている。スパンボンド不織布を構成する繊維の鞘成分がポリオレフィン系重合体であるので、積層する樹脂層は、これに相溶性が高いポリオレフィンとする。
【0026】
ポリオレフィン樹脂層は、基本的に、芯鞘型複合長繊維の鞘成分と同じポリオレフィンと同じ種類のものが用いられるので、ここでもう一度記載はしない。使用するポリオレフィンは、芯鞘型複合長繊維の鞘成分との相溶性の関係から、同種のものが用いられるのが好ましいが、異なるポリオレフィンを使用してもよい。
【0027】
<積層方法>
スパンボンド不織布とポリオレフィン樹脂層とは、別々に作成して(例えば、ポリオレフィン樹脂層として、ポリオレフィンフィルムを準備して)、スパンボンド不織布の片面を、鞘部のみ溶融する温度、即ち芯部の融点より低く鞘部の融点より高い温度に加熱し、両者を圧着することによって積層することができるが、ポリオレフィン樹脂を溶融状態で溶融ダイから搬送されているスパンボンド不織布上に押出して、それを冷却ロール間で圧着して接合一体化する方法が、スパンボンド不織布内にポリオレフィン樹脂がより浸透して一体化するので、好ましい。ポリオレフィン樹脂層を溶融状態で積層することから、スパンボンド不織布の鞘部のポリオレフィンもまた軟化しやすく、ポリオレフィン樹脂層とスパンボンド不織布とが、より強固に密着して一体化し、引裂き性が容易で良好となる。なお、ポリオレフィン樹脂層は、スパンボンド不織布が熱圧着部を形成する際の熱エンボス加工において、フラットロールと接する側が、ポリオレフィン樹脂層と対面する側となるように接合一体化するのが好ましい。特に、上記した溶融押出によりポリオレフィン樹脂層を形成させる場合には、スパンボンド不織布にポリオレフィン樹脂が入り込みやすく、より良好に一体化するとともに、均一な層を形成させることができるためである。
【0028】
<包装材>
上述のように、本発明の包装材は、芯部がポリエステル系重合体で鞘部がポリオレフィン系重合体で構成された芯鞘型複合長繊維からなるスパンボンド不織布にポリオレフィン樹脂層を積層したものであり、スパンボンド不織布は特定形状の熱圧着部(即ち、熱圧着部が非熱圧着部を囲繞した形状)を有している。
【0029】
本発明の包装材を図3に基づいて説明する。本発明の包装材は、種々の物品(図示していない。)、即ち包装される物品(以下、「包装物品」と呼ぶ。)を包装するために用いる。本発明の包装材1は、不織布層2とその片面に積層したポリオレフィン樹脂層3からなっている。包装材1は、ポリオレフィン樹脂層3同士が対向するように重ね合わせて、必要な個所をヒートシールして、ヒートシール部4が接着されて袋状または筒状にし、その開口部5から包装物品をその内部に挿入して、その後開口部5をヒートシールすることにより、物品を包装することができる。図3では、本発明の包装材1を折り曲げて、ポリオレフィン樹脂層3同士が対向するように重ね合わせ、更にヒートシールによりヒートシール部4を、折り重ねた包装材1の端部に形成し、開口部5を有する袋状にし、この開口部5から包装物品を挿入した後、開口部5付近のヒートシール予定部6をヒートシールして、包装物品を包装する。ポリオレフィン樹脂層側同士を対向させて反対側(不織布側)から熱を加えてヒートシールするのは、少なくともヒートシール箇所において、ポリオレフィン樹脂層を構成するポリオレフィンの全てを融着させて強固なシール性を発揮するからである。また、スパンボンド不織布側は強度が高いため、スパンボンド不織布側を外側とすることにより、内部の包装物品を保護する役割を良好に担うことができるためである。なお、ヒートシール箇所においては、スパンボンド不織布を構成する鞘部も溶融または軟化し、接着に寄与する。
【0030】
ヒートシールは通常、包装材の機械方向(MD方向)とそれに直角な横断方向(CD方向)に行われる。図3では、MD方向7とCD方向8が矢印で記載されていて、MD方向7が、繊維が主として配向している方向であるので、引き裂き、即ち開封が容易である。図3では、包装物品を開口部5から挿入して周囲がヒートシールされると、包装体になるが、ヒートシール予定部6の端部のヒートシール部ではない端部の物品側にMD方向に切り込まれたノッチ9を設けることにより、そのノッチ9を手指で容易に引き裂くことによって開封することができる。本発明の包装材は、ヒートシール端部の物品側に形成されたノッチが起点となって、容易に引き裂きが可能となる利点を有する。ノッチ9の大きさは、特に限定的ではないが、人の指で切り裂きやすい5mm~20mmの深さの切り込みを形成するのが好ましい。MD方向に切り込まれたノッチ9の形状は、単なる切り込みでもよく、図3のように切り欠きの形状としてもよい。ノッチは図3では一カ所だけ形成されているが、複数個所に形成しても問題がない。
【0031】
<包装体>
本発明では、ヒートシールをして、ノッチを形成したものを包装体と呼ぶ。従って、包装体は、包装物品が内部に存在していて、ヒートシールにより開口部をヒートシールしたものであり、ヒートシールの引き裂きが予定される個所の端部には、MD方向に切り込まれたノッチを有しているものである。包装体は、ノッチを起点に容易に引き裂くことができる。しかし、包装体は、内部に包装されている物品を十分に保護できる性能を有している。即ち、包装体は、簡単には破れたりしない強靭性を有していて、しかも不織布は弾力性があるので、弱い衝撃などからも物品を保護することができる。また、包装体は、不織布であるので、物品を明確に確認することはできないが、多少透けているので内部の物品を確認することができるので、配送や運搬時に物品の間違いが生じない。
【0032】
[実施例]
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
<スパンボンド不織布>
芯部に配するポリエステル系重合体として、ポリエチレンテレフタレート(融点258℃、固有粘度0.70)を準備した。鞘部に配するポリエチレンとして、高密度ポリエチレン(融点128℃、メルトインデックス値25g/10分)を準備した。鞘/芯=35/65(質量比)となるように個別に計量した後、個別のエクトル-ダー型押出機を用いて溶融し、芯鞘型複合断面となるように溶融紡糸した。その紡糸糸条を冷却した後、エアーサッカーにより高速で引き取り、公知の開繊器にて開繊させ、移動する捕集面上に捕集・堆積させて連続繊維からなる不織ウェブとした。得られた芯鞘型複合連続繊維の単繊維繊度は、3dtexであった。さらに、この不織ウェブを、エンボスロールとフラットロールとからなる熱エンボス装置に通して熱圧着部を形成した。エンボスロールの彫刻パターンが、凸部が連続して凹部を囲繞してなり、個々の凹部が楕円形であり、楕円形の長軸が、互い違いに配置されてなる彫刻パターン(図1に示すごときパターン)を繰り返しパターンとするものであり、個々の凹部の面積が1.14mm、凹部の密度が64個/cm、エンボスロールの全表面に対して凸部が占める面積の比率(凸部の面積率)が37%のエンボスロールを用い、熱エンボス加工温度:123℃、線圧:200Nとして熱エンボス加工を施して目付30g/mの熱圧着部を有するスパンボンド不織布を得た。なお、スパンボンド不織布であることから、その製造方法に由来して、不織布を構成する長繊維は、主としてMD方向に配列しているものであった。
【0034】
<ラミネート加工>
押出ラミネート装置を用いて、ラミネート用の低密度ポリエチレンを押出機に投入し、210℃に加熱して溶融させ、ダイから溶融状態のポリエチレンシートを、厚み10μmとなるように押し出すとともに、ダイの直下約50cmの箇所で、上記で得られたスパンボンド不織布を積層すると同時に、一対の冷却ロール間に導入し、冷却ロール間で積層シートを圧接し、接合一体化させて、本発明の包装材を得た。なお、ポリエチレンシートは、スパンボンド不織布が熱圧着部を形成する際の熱エンボス加工において、フラットロールと接する側が、ポリエチレンシートと対面する側となるように接合一体化した。包装材のスパンボンド不織布において、エンボスロールと接する側が、表面に露出するため、摩耗性が良好となる。
【0035】
<包装材>
ラミネート加工前のスパンボンド不織布は、厚み0.16mm、引張強力(MD方向)145N/5cm、引張強力(CD方向)55N/5cm、引裂強さ(MD方向)3.0Nであり、スパンボンド不織布にポリエチレン樹脂層(ポリエチレンシート)が接合一体化してなる包装材は、厚み0.13mm、引張強力(MD方向)167N/5cm、引張強力(CD方向)55N/5cm、引裂強さ(MD方向)2.1Nであり、毛羽立ち性は、試験片5点において、ほとんどの試験片は、試験開始前の状態の表面状態に変化がなく、毛羽の発生はほぼみられなかった。引張強力、引張強さおよび毛羽立ち性は、下記に記載する方法で測定した。
【0036】
また、A4用紙に文字や絵柄を印刷したものに、包装材を重ねて(A4シート側がポリエチレン樹脂層側)、包装材が重なった状態で、印刷内容の把握も容易に可能であった。よって、包装体とした際に、収納物に記載された文字等が、包装体を通して把握しうるものであった。
【0037】
<引張強力(N/5cm幅)>
幅5cm×長さ20cmの試験片を10個準備し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、商品名「UTM-4-1-100」)を用いて、JIS-L-1913に準じて測定した。このときの条件は、つかみ間隔100mm、引張速度200mm/分であった。伸長-荷重曲線を描き、得られた伸長-荷重曲線から、求められる最大荷重時の強さ(N/5cm幅)を測定し、10点の平均値を引張強力とした。
【0038】
<引裂強さ(N)>
JIS L 1913 引裂強さ ペンジュラム法に基づき測定した。なお、測定は、MD方向のみとした。
【0039】
<毛羽立ち性>
JIS L 0849 摩耗試験機II形(学振式)法に準じて、毛羽立ち性を評価した。なお、摩擦用白綿布に替えて、摩擦用は試験片と同じものを用い、試験片同士を摩耗させた。また、往復摩擦回数は50回とし、その時点での試験片(N=5)の表面状態を観察した。
【0040】
<包装体>
得られた包装材を、180cm(MD方向)×90cm(CD方向)の大きさに裁断したもの2枚を、ポリエチレン樹脂層が対面するように重ねあわせ、ヒートシーラーを用いて、包装材の端部から約1cmの箇所に、約5mm幅のヒートシール部を、重ね合わせた3辺に形成し、袋状とした。ヒートシールされていない開口部から、約5kgの運搬物を収納し、さらに開口部を、同様にヒートシールして閉じ、4辺がヒートシールされた包装体とした。
【0041】
運搬物が収納されてなる包装体において、包装体の端部であってヒートシール部の近傍に1箇所、MD方向に切り込まれた切れ目(約8mm)を入れ、ノッチとした。
【0042】
約5Kgの運搬物が収納された包装体を振動させたり、放ったりしたところ、ヒートシール部は破壊されることなく維持され、内容物である運搬物を保護する役割を担っていた。また、切り込みのノッチ箇所をつまみ、MD方向に割いたところ、容易に割くことができ、内容物(運搬物)を取り出せることができた。
【0043】
比較例1
ポリエチレンテレフタレートのみから構成されるスパンボンド不織布(ユニチカ株式会社製 商品名「マリックス 70303WSO」 単繊維繊度3dtex、目付30g/m、散点状に部分熱圧着部が形成されており、圧着部の形状が略四角形、圧着面積率16%)を準備した。
【0044】
上記スパンボンド不織布に、実施例1と同様にしてポリエチレンシートを積層し、積層一体化してなる積層シートを得た。
【0045】
スパンボンド不織布にポリエチレン樹脂層(ポリエチレンシート)が接合一体化した積層シートは、厚み0.15mm、引張強力(MD方向)99N/5cm、引張強力(CD方向)48N/5cm、引裂強さ(MD方向)3.6Nであり、毛羽立ち性は、試験片5点において、ほとんどの試験片は、表面に摩擦による毛羽が発生し、一部には発生した毛羽が絡まって毛玉が生じていた。また、切り込みのノッチ箇所をつまみ、MD方向に割いたところ、容易に割くことができなかった。
【0046】
上記実施例1と比較例1の比較で明らかなように、比較例1では引張強力、毛羽立ち性は実施例の積層シートに劣るものである。また引裂強さは、実施例の値の方が小さく、実施例は内容物を取り出す際に容易に引裂いて取り出しやすいことがわかる。比較例1では、芯鞘型構造を有していない長繊維で不織布を形成しているので、ポリエチレン樹脂層を積層しても、ノッチを起点とする引き裂きやすさが得られていない。
【符号の説明】
【0047】
1…包装材
2…スパンボンド不織布
3…ポリオレフィン樹脂層
4…ヒートシール部
5…開口部
6…ヒートシール予定部
7…機械方向(MD方向)
8…横断方向(CD方向)
9…ノッチ
図1
図2
図3