(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ガス分配ユニット及び給湯器
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
F23K5/00 301B
(21)【出願番号】P 2020091625
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】太田 剛
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197273(JP,A)
【文献】特開2019-002594(JP,A)
【文献】特開2021-148341(JP,A)
【文献】特開2008-051396(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110425538(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F23D 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバーナを収容する燃焼装置に組み付けられ、前記バーナへ燃料ガスを分配して供給するガス分配ユニットであって、
ケーシングと、
前記ケーシングに形成されるガス導入口と、
前記ケーシング内に形成され、前記ガス導入口と連通して左右方向に延びる主流路と、
前記ケーシング内に形成され、前記主流路から分岐して上方へ延びる複数の分岐流路と、
各前記分岐流路の上流端部で前記ケーシングにそれぞれ設けられて各前記上流端部を開閉可能な複数の電磁弁と、
各前記分岐流路の下流端部で前記ケーシングにそれぞれ設けられ、所定数の前記バーナに燃料ガスを供給する複数のノズルと、を含み、
各前記分岐流路の上流端部を形成する前記ケーシングには、前記主流路内へ下向きに突出する突出部がそれぞれ形成されて、各前記突出部の下面に、前記上流端部を前記主流路と連通させる連通口がそれぞれ形成されている
と共に、
前記主流路の上流側に位置する1又は複数の前記突出部での前記連通口は、前記主流路の下流側に向けて開口していることを特徴とするガス分配ユニット。
【請求項2】
前記上流側に位置する前記突出部は、正面視半円状に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のガス分配ユニット。
【請求項3】
前記上流側に位置する前記突出部の前記主流路内への突出量は、前記主流路の上下幅の半分以上であることを特徴とする請求項
1又は2に記載のガス分配ユニット。
【請求項4】
複数のバーナを収容する燃焼装置に、請求項1乃至
3の何れかに記載のガス分配ユニットを組み付けてなる給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器において、複数のバーナに燃料ガスを分配供給するために設けられるガス分配ユニットと、そのガス分配ユニットを備えた給湯器とに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、筐体内に、バーナを備えた燃焼装置と熱交換器とを備え、燃料ガスと燃焼用空気との混合気に点火して燃焼するバーナの燃焼排気により、熱交換器を通過する水を加熱して出湯させる。
バーナは、厚み方向に複数配列されて、上流側には、ガス分配ユニットが設けられている。このガス分配ユニットは、特許文献1,2に開示されるように、上流側から燃料ガスが供給される主流路と、主流路から分岐する複数の分岐流路とを有し、各分岐流路の下流端部に、複数のガスノズルが各バーナに対応して設けられている。各分岐流路の上流端部は、電磁弁によって開閉可能となっており、電磁弁の制御で燃料ガスが供給される分岐流路を選択することで、燃焼するバーナの数を調整可能となっている。
このようなガス分配ユニットの本体は、小型軽量で製造コストも低減できるダイカストによって一体成型される。特に主流路は、筐体内での省スペースも考慮して左右方向に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-197273号公報
【文献】特許第5921584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のガス分配ユニットでは、主流路を左右方向に形成することで、主流路の長さが短くなり、燃料ガスの供給圧力を十分に緩和できなくなる。このため、主流路へのガス導入口に近い分岐流路に多くの燃料ガスが集中して供給されたり、逆にガス導入口に近い分岐流路を通り越してガス導入口から遠い分岐流路に燃料ガスが集中して供給されたりしてしまう。よって、使用する各バーナへ燃料ガスを均一に供給することができない場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、各バーナへ燃料ガスを均一に供給できるガス分配ユニット及び給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち、第1の発明は、複数のバーナを収容する燃焼装置に組み付けられ、バーナへ燃料ガスを分配して供給するガス分配ユニットであって、
ケーシングと、
ケーシングに形成されるガス導入口と、
ケーシング内に形成され、ガス導入口と連通して左右方向に延びる主流路と、
ケーシング内に形成され、主流路から分岐して上方へ延びる複数の分岐流路と、
各分岐流路の上流端部でケーシングにそれぞれ設けられて各上流端部を開閉可能な複数の電磁弁と、
各分岐流路の下流端部でケーシングにそれぞれ設けられ、所定数のバーナに燃料ガスを供給する複数のノズルと、を含み、
各分岐流路の上流端部を形成するケーシングには、主流路内へ下向きに突出する突出部がそれぞれ形成されて、各突出部の下面に、上流端部を主流路と連通させる連通口がそれぞれ形成されていると共に、
主流路の上流側に位置する1又は複数の突出部での連通口は、主流路の下流側に向けて開口していることを特徴とする。
第1の発明の別の態様は、上記構成において、上流側に位置する突出部は、正面視半円状に形成されていることを特徴とする。
第1の発明の別の態様は、上記構成において、上流側に位置する突出部の主流路内への突出量は、主流路の上下幅の半分以上であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明のうち、第2の発明は、給湯器であって、複数のバーナを収容する燃焼装置に、第1の発明の何れかに記載のガス分配ユニットを組み付けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガス導入口から主流路に入った直後の燃料ガスが勢いよく上流側の分岐流路内に供給されることを防止できる。よって、下流側の分岐流路に適切な量で燃料ガスを供給することができ、各バーナへ燃料ガスを均一に供給可能となる。また、突出部を主流路内に突出させているので、連通口の向きの設定が容易に行える。
また、主流路の上流側に位置する突出部での連通口は、主流路の下流側に向けて開口しているので、主流路から当該突出部へ流れる燃料ガスをより効果的に減勢させることができる。
本発明の別の態様によれば、上記効果に加えて、上流側に位置する突出部は、正面視半円状に形成されているので、燃料ガスの流れの抵抗が過度に高くなることを防止でき、円滑な流れを確保可能となる。
本発明の別の態様によれば、上記効果に加えて、突出部の主流路内への突出量は、主流路の上下幅の半分以上となっているので、ガス導入口付近の燃料ガスの流れを適切に減勢させることができる。このため、燃料ガスの回り込みを促進して上流側の分岐流路へ適切な量の燃料ガスが供給可能となると共に、下流側の分岐流路にも一定量以上の燃料ガスが供給可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】フロントカバーを外した状態の給湯器の斜視図である。
【
図2】フロントカバーを外した状態の給湯器の正面図である。
【
図3】ガス分配ユニット及びガス比例弁ユニットの一部を示す正面図である。
【
図4】ガス分配ユニット及びガス比例弁ユニットの一部を示す側面図である。
【
図5】ガス分配ユニットの前方から見た分解斜視図である。
【
図6】ガス分配ユニットの後方から見た分解斜視図である。
【
図10】本体における第4弁室部分の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(給湯器の説明)
図1,2は、給湯器の一例を示す説明図で、
図1は前面のフロントカバーを外した状態の斜視を示し、
図2は正面を示している。
給湯器1は、四角箱状の筐体2内に、燃焼装置3と、その上側の熱交換器4とを設置している。燃焼装置3の前面には、燃焼装置3内の図示しないバーナユニットに燃料ガスを分配供給するためのガス分配ユニット5が組み付けられる。燃焼装置3の下面には、燃焼用空気を供給する給気ファン6が組み付けられる。熱交換器4は、バーナユニットの燃焼排気から顕熱を回収する下側の一次熱交換器4Aと、潜熱を回収する上側の二次熱交換器4Bとを備える。燃焼装置3と一次、二次熱交換器4A,4Bとの内部は、それぞれ風呂側と給湯側とに仕切られている。二次熱交換器4Bを通過した燃焼排気は、二次熱交換器4Bの前面に設けた排気口7から外部へ排出可能となっている。
【0010】
一次熱交換器4Aにおいて、給湯側一次熱交換器の伝熱管は、入側端部が給湯側二次熱交換器の吸熱管の出側端部に接続され、伝熱管の出側端部が出湯管8に接続される。二次熱交換器4Bにおいて、給湯側二次熱交換器の吸熱管の入側端部は、給水管9に接続される。一次熱交換器4Aにおいて、風呂側一次熱交換器の伝熱管は、入側端部が風呂側二次熱交換器の吸熱管の出側端部に接続され、伝熱管の出側端部が往き管10に接続される。二次熱交換器4Bにおいて、風呂側二次熱交換器の吸熱管の入側端部は、戻り管11に接続される。
筐体2の下面には、外部のガス管が接続されるガス入口12と、水道管が接続される水入口13と、給湯栓への外部配管が接続される湯出口14と、外部の浴槽へ接続される往き口15及び戻り口16とが設けられている。ガス入口12は、筐体2内で、比例弁18及びその上流側の元電磁弁19を備えたガス比例弁ユニット17を介してガス分配ユニット5に接続される。水入口13は、給水管9に接続され、湯出口14は、出湯管8に接続される。往き口15は往き管10に接続され、戻り口16は戻り管11に接続される。ガス比例弁ユニット17の前方には、制御回路基板を備えたコントローラ(図示略)が配置される。
【0011】
(ガス分配ユニットの説明)
ガス分配ユニット5は、バーナユニットを収容する燃焼装置3のインナーケース20の前面下部の開口を塞ぐ格好でインナーケース20の前面に組み付けられている。このガス分配ユニット5は、
図3~6に示すように、後側の本体26と、前側の蓋体27とで形成される左右横長の扁平状のケーシング25を有し、本体26と蓋体27との間には、シール体28が介在されている。本体26の背面右下側には、筒状のガス導入口29が後ろ向きに突設されて、このガス導入口29に、ガス比例弁ユニット17の上端に設けたガス出口部21が後方から連結される。
バーナユニットは、左右方向に扁平な濃淡バーナを左右方向に複数配列してなり、ガス分配ユニット5内には、ケーシング25の下部で左右方向に延び、ガス比例弁ユニット17から供給される燃料ガスを導入する主流路30と、主流路30から上方へ分岐して燃料ガスを所定数の濃淡バーナ(第1~第4バーナ群)ごとに分配する4つの第1~第4分岐流路31A~31Dとが形成されている。ここでは右端の第1分岐流路31Aが風呂用、左側3つの第2~第4分岐流路31B~31Dが給湯用となっている。ガス導入口29は、主流路30の右端に形成されている。
【0012】
本体26は、アルミダイカスト製のプレート状で、内側領域の上側で第1~第4分岐流路31A~31Dにそれぞれ対応する位置には、
図7,8にも示すように、左右方向に延びる上下一対の溝状の第1~第4ノズル部32A~32Dが設けられている。第1~第4ノズル部32A~32Dには、第1~第4バーナ群を構成する各濃淡バーナの淡ガス供給孔と濃ガス供給孔とに合わせて上下一組となり、後方側へ先細り状に突出形成されるノズル33,33が、左右方向へ複数並設されている。ノズル33,33の組数は、第2ノズル部32Bが最も多く、次いで第1、第4ノズル部32A,32Dとなり、第3ノズル部32Cが最も少なくなっている。
【0013】
また、第1~第4ノズル部32A~32Dの下方で第1~第4分岐流路31A~31Dにそれぞれ対応する位置には、上下方向に延びる第1~第4縦溝部34A~34Dが設けられている。第1~第4縦溝部34A~34Dの下方には、
図9にも示すように、後方へ開口する有底筒状の第1~第4弁室35A~35Dがそれぞれ形成されている。第1~第4弁室35A~35Dには、後方から電磁弁36,36・・が、前方へ突出付勢される弁体37を前向きとした姿勢でそれぞれ組み付けられている。第1~第4弁室35A~35Dの前方で本体26には、第1~第4弁室35A~35Dと連通する第1~第4ガス入口38A~38Dがそれぞれ形成されている。この第1~第4ガス入口38A~38Dの背面には、電磁弁36の弁体37によって後方から閉塞される弁座39が形成されている。第1~第4ガス入口38A~38Dは、第2ガス入口38Bが最も大径で、次いで第1、第4ガス入口38A,38Dとなり、第3ガス入口38Cが最も小径となっている。
【0014】
そして、第1~第4縦溝部34A~34Dの下方で主流路30に対応する位置には、左右方向に延びる凹部40が形成されている。凹部40は、第1~第4縦溝部34A~34Dよりも後方へ深く形成されて、右端にガス導入口29が後方へ突出形成されている。
凹部40の上側の内面は、第1~第4弁室35A~35Dと上下方向でオーバーラップする位置に形成されて、第1~第4弁室35A~35Dの略下半分を、凹部40の上側の内面から下方へ突出している。これにより凹部40の上側の内面には、正面視半円状の第1~第4上側突出部41A~41Dが形成されている。ここで、第1~第4弁室35A~35Dのうち、ガス導入口29に近い上流側(右側)の2つの第1、第2弁室35A,35Bは、第3、第4弁室35C,35Dよりも下方への突出量が大きく、凹部40の上下幅の半分以上突出している。
【0015】
第1~第4上側突出部41A~41Dの下側を形成して凹部40内に突出する円弧状の第1~第4下壁部42A~42Dには、
図7に示すように、第1~第4弁室35A~35Dを凹部40と連通させる第1~第4連通口43A~43Dが形成されている。第1、第2弁室35A,35Bでは、第1、第2連通口43A,43Bは、第1、第2下壁部42A,42Bの左側にそれぞれ形成されて、左右方向の中心を挟んでガス導入口29の反対側(下流側)に向いて開口している。第3、第4連通口43C,43Dは、第3、第4下壁部42C,42Dの左右方向の中央で下向きに開口している。
また、凹部40の下側の内面において、左右方向で第1~第4上側突出部41A~41Dの間に当たる位置には、正面視円弧状で上向きに突出する下側突出部44,44・・が形成されている。
【0016】
これにより、ガス導入口29から導入されて凹部40内を左側へ流れる燃料ガスは、第1、第2弁室35A,35Bの位置では、
図7に点線矢印で示すように、第1、第2上側突出部41A,41Bの第1、第2下壁部42A,42Bの下方を回り込んだ後、上側へUターンして第1、第2連通口43A,43Bからそれぞれ第1、第2弁室35A,35Bに流れることになる。特に第1上側突出部41Aを通過した際は、下側突出部44に当接することで上側へ効果的に案内される。
一方、ガス導入口29から遠い下流側(左側)の2つの第3、第4弁室35C,35Dでは、第1、第2弁室35A,35Bを通過した燃料ガスは、第3、第4上側突出部41C,41Dの真下から上方へ方向転換して第3、第4連通口43C,43Dからそれぞれ第3、第4弁室35C,35Dへ流れることになる。
【0017】
本体26は、筒状となるガス導入口29と第1~第4弁室35A~35Dとが何れも前後方向に形成されているので、前型と後型との前後の割型のみで成型が行える。また、金型では、本体26の直線状且つ互いに平行となる上縁部と下縁部との一方に沿って複数の導入口を、他方に沿って複数の導出口を並設して、導入口から湯(溶融したアルミニウム合金等)を流し込むことができる。
よって、湯の流れる方向が一方向に揃い、キャビティ内の湯回り性を高めて「ス」の発生を抑えることができる。
一方、第1~第4弁室35A~35Dを形成する第1~第4下壁部42A~42Dは、前側から後方へ行くに従って大径となるテーパ状に形成されている。
図10は、例として本体26の第4弁室35Dにおける第4連通口43D部分での縦断面(
図3のC-C線断面に相当する位置)を示すもので、このように第4下壁部42Dをテーパ状にすると、本体26をダイカスト成型する際の前型60と後型61とは、第4連通口43Dの位置では、第4弁室35Dの半径方向で前型60と後型61とを互いに当接させて第4連通口43Dを成型と同時に形成することができる。よって、成型後の切削工程が削減される。
【0018】
シール体28は、ゴム又はコルクで形成され、上側の第1~第4ノズル部32A~32Dを囲む領域と、下側の第1~第4縦溝部34A~34D及び第1~第4ガス入口38A~38Dとを第1~第4分岐流路31A~31Dごとにそれぞれまとめて囲む領域と、凹部40を囲む領域とを除いて本体26の前面に位置決めされる。本体26の前面には、シール体28に形成された透孔45,45・・を貫通してシール体28を位置決めする位置決め突起46,46・・が形成されている。
【0019】
蓋体27は、正面視が本体26と略同じ形状でプレス成形された金属板となっている。蓋体27の外周には、本体26の外周を覆う周縁部50が形成されており、周縁部50及び第1~第4分岐流路31A~31Dの間となる部分が前方から本体26にシール体28を貫通してネジ55,55・・(
図3)によってネジ止めされる。
図7に二点鎖線で示すように、蓋体27の前面には、第1ノズル部32Aと第1縦溝部34Aと第1ガス入口38Aとに跨がって前方から重なり、前方へ膨らむ第1縦膨出部51Aが形成されている。これにより第1分岐流路31Aが形成される。同様に、蓋体27の前面には、第2ノズル部32Bと第2縦溝部34Bと第2ガス入口38Bとに跨がって前方から重なり、前方へ膨らむ第2縦膨出部51Bが形成されて、第2分岐流路31Bが形成される。同様に、蓋体27の前面には、第3ノズル部32Cと第3縦溝部34Cと第3ガス入口38Cとに跨がって前方から重なり、前方へ膨らむ第3縦膨出部51Cが形成されて、第3分岐流路31Cが形成される。同様に、蓋体27の前面には、第4ノズル部32Dと第4縦溝部34Dと第4ガス入口38Dとに跨がって前方から重なり、前方へ膨らむ第4縦膨出部51Dが形成されて、第4分岐流路31Dが形成される。
【0020】
蓋体27において、第1~第4縦膨出部51A~51Dの下方には、左右方向に延びる下膨出部52が形成されている。この下膨出部52は、
図7に二点鎖線で示すように、本体26の凹部40と略同じ左右幅と略半分の上下幅とを有し、凹部40の下半分側で前方から重なるもので、この下膨出部52と凹部40とにより、主流路30が形成されることになる。
また、下膨出部52の下側の内面で、下側突出部44,44・・の前方に当たる位置には、
図11に示すように、下膨出部52の内部上側へ正面視半円状に突出する案内部53,53・・が形成されている。この案内部53と下側突出部44とにより、蓋体27の周縁部50をネジ止めするネジ止め部54が形成される。すなわち、案内部53の下側で蓋体27に形成した透孔を貫通させたネジ55を、下側突出部44の中心に設けたネジ孔にねじ込むことで、周縁部50がネジ止めされることになる。
【0021】
このガス分配ユニット5は、第1~第4弁室35A~35Dに電磁弁36,36・・を組み付けた本体26の前面に、前述のように位置決め突起46を利用してシール体28をセットする。この状態で蓋体27を前方から被せて、蓋体27及びシール体28を貫通させたネジ55,55・・を本体26に設けた各ネジ孔にねじ込むと、ガス分配ユニット5の組み立てが完了する。
こうして組み立てたガス分配ユニット5の本体26を、インナーケース20の前面下部に前方からネジ止めすると共に、本体26のガス導入口29にガス比例弁ユニット17のガス出口部21を後方からネジ止めすれば、燃焼装置3へのガス分配ユニット5の組み付けは完了する。
【0022】
(給湯器の動作の説明)
以上の如く構成された給湯器1においては、湯出口14の配管に接続される給湯栓を開栓して器具内に通水させると、これを検知したコントローラがガス比例弁ユニット17の元電磁弁19を開くと共に、比例弁18を点火時の所定開度に制御する。また、コントローラは、風呂側の使用であれば、対応する第1分岐流路31Aの第1弁室35Aの電磁弁36を開弁動作させる。また、コントローラは、給湯側の使用であれば、対応する第2~第4分岐流路31B~31Dにおける第2~第4弁室35B~35Dの電磁弁36を開弁動作させる。同時にコントローラは、給気ファン6を作動させて燃焼用空気を供給させる。よって、ガス比例弁ユニット17を介して燃料ガスがガス分配ユニット5へ供給される。
そして、コントローラによりインナーケース20内に設けた放電電極が連続放電すると、各濃淡バーナの炎孔部から噴出する混合気が燃焼する。バーナユニットの燃焼排気は、一次熱交換器4Aの伝熱管と二次熱交換器4Bの吸熱管とを通過する水と熱交換され、設定温度の湯となって出湯管8から出湯される。コントローラは、必要な燃焼量に合わせて比例弁18の開度を調整し、ガス比例弁ユニット17からの燃料ガスの供給量を調整すると共に、給気ファン6の回転数を連続的に変化させて、所定の空燃比を維持する。また、コントローラは、給湯側の使用の際、必要な燃焼量に合わせてガス分配ユニット5の第2~第4分岐流路31B~31Dにおける第2~第4弁室35B~35Dの電磁弁36を開閉制御することで、第2~第4バーナ群を選択して燃焼本数を段階的に制御する。
【0023】
このとき、ガス分配ユニット5において、ガス導入口29から導入された燃料ガスは、主流路30内を左側へ流れ、風呂使用の場合は第1連通口43Aから第1弁室35Aに入り、第1ガス入口38Aから第1分岐流路31Aに流れて第1バーナ群に供給されることになる。詳しく説明すると、燃料ガスは、主流路30を流れる際、
図7に点線で示すように、上側内面から下向きに突出する第1上側突出部41Aに衝突してその下側に回り込むため、流れに抵抗が与えられて勢いが弱められる。但し、第1上側突出部41Aは正面視半円状であるため、下方へスムーズにガイドされて抵抗が過大になることはない。また、第1上側突出部41Aと第2上側突出部41Bとの間で凹部40の下側の内面には、上向きに突出する下側突出部44が設けられており、また、同じ位置で蓋体27の下膨出部52にも、案内部53が設けられているため、燃料ガスは、
図7及び
図12に点線矢印で示すように、第1連通口43A側へ案内される。よって、主流路30の上流側でも燃料ガスの流れを減勢して第1連通口43Aへの流れを促進させることができる。但し、ここでは第1連通口43Aが下流側に向いているため、燃料ガスが上側へUターンする格好となり、適切な量を第1弁室35Aに供給可能となる。これは、給湯側で第2分岐流路31Bを使用する際も同じである。
【0024】
同時に主流路30の下流側の第3、第4分岐流路31C,31Dを使用する際、第1、第2上側突出部41A,41Bを通過した燃料ガスは、
図7及び
図11に点線矢印で示すように、第3、第4上側突出部41C,41Dの真下から上方へ方向転換して、第3、第4連通口43C,43Dからそれぞれ第3、第4弁室35C,35Dへ流れることになる。
こうして主流路30の上流側から燃料ガスが供給される第1、第2分岐流路31A,31Bであっても、2つの第1、第2上側突出部41A,41Bが配置されているため、第1、第2連通口43A,43Bへの燃料ガスの回り込みを促進して適切な量を供給できる。
逆に、主流路30の下流側から燃料ガスが供給される第3、第4分岐流路31C,31Dであっても、適切な量を供給できることになる。
【0025】
(第1~第4上側突出部及び第1~第4連通口に係る発明の効果)
上記形態のガス分配ユニット5及び給湯器1では、ケーシング25と、ケーシング25に形成されるガス導入口29と、ケーシング25内に形成され、ガス導入口29と連通して左右方向に延びる主流路30と、ケーシング25内に形成され、主流路30から分岐して上方へ延びる第1~第4分岐流路31A~31Dと、第1~第4分岐流路31A~31Dの上流端部でケーシング25にそれぞれ設けられて各上流端部を開閉可能な複数の電磁弁36と、第1~第4分岐流路31A~31Dの下流端部でケーシング25にそれぞれ設けられ、第1~第4バーナ群(所定数のバーナ)に燃料ガスを供給する複数のノズル33と、を含み、第1~第4分岐流路31A~31Dの上流端部を形成するケーシング25には、主流路30内へ下向きに突出する第1~第4上側突出部41A~41D(突出部)がそれぞれ形成されて、第1~第4上側突出部41A~41Dの下面に、第1~第4分岐流路31A~31Dの上流端部を主流路30と連通させる第1~第4連通口43A~43Dがそれぞれ形成されている。
【0026】
この構成により、ガス導入口29から主流路30に入った直後の燃料ガスが勢いよく上流側の第1、第2分岐流路31A,31B内に供給されることを防止できる。よって、下流側の第3、第4分岐流路31C,31Dに適切な量で燃料ガスを供給することができ、各バーナ群へ燃料ガスを均一に供給可能となる。また、第1~第4上側突出部41A~41Dを主流路30内に突出させているので、第1~第4連通口43A~43Dの向きの設定が容易に行える。
【0027】
特にここでは、主流路30の上流側に位置する第1、第2上側突出部41A,41Bでの第1、第2連通口43A,43Bは、主流路30の下流側に向けて開口している。
よって、主流路30から第1、第2上側突出部41A,41Bへ流れる燃料ガスをより効果的に減勢させることができる。
また、上流側に位置する第1、第2上側突出部41A,41Bは、正面視半円状に形成されている。
よって、燃料ガスの流れの抵抗が過度に高くなることを防止でき、円滑な流れを確保可能となる。
さらに、第1、第2上側突出部41A,41Bの主流路30内への突出量は、主流路30の上下幅の半分以上となっている。
よって、ガス導入口29付近の燃料ガスの流れを適切に減勢させることができる。このため、燃料ガスの回り込みを促進して上流側の第1、第2分岐流路31A,31Bへ適切な量の燃料ガスが供給可能となると共に、下流側の第3、第4分岐流路31C,31Dにも一定量以上の燃料ガスが供給可能となる。
【0028】
なお、第1~第4上側突出部及び第1~第4連通口に係る発明において、各上側突出部の主流路内への突出量は上記形態に限らない。例えば第1上側突出部のみを主流路の上下幅の半分以上とし、他の上側突出部を当該上下幅の半分未満としても差し支えない。正面視形状も半円状に限らず、半長円形や半楕円形、半六角形等も採用できる。
第1~第4連通口の大きさや向き等も上記形態に限定しない。第1、第2連通口も第3、第4連通口のように下向きに形成してもよい。
【0029】
(下膨出部に設けた案内部に係る発明の効果)
上記形態のガス分配ユニット5及び給湯器1では、ダイカスト成型される本体26と、本体26の前面に固定され、プレス成型される蓋体27とを含むケーシング25と、本体26に形成されるガス導入口29と、本体26に設けた凹部40と蓋体27に設けた下膨出部52とによって形成され、ガス導入口29と連通して左右方向に延びる主流路30と、本体26に設けた第1~第4縦溝部34A~34Dと蓋体27に設けた第1~第4縦膨出部51A~51Dとによって形成され、主流路30から分岐して上方へ延びる第1~第4分岐流路31A~31Dと、第1~第4分岐流路31A~31Dの上流端部で本体26にそれぞれ設けられて上流端部を開閉可能な電磁弁36をそれぞれ収容し、電磁弁36の上流側で主流路30と連通する第1~第4連通口43A~43Dを備えた第1~第4弁室35A~35Dと、第1~第4分岐流路31A~31Dの下流端部で本体26にそれぞれ設けられ、第1~第4バーナ群に燃料ガスを供給する複数のノズル33と、を含み、下膨出部52には、凹部40側へ突出して下膨出部52内を流れる燃料ガスを凹部40側に案内する案内部53が形成されている。
この構成により、蓋体27の下膨出部52内の燃料ガスを奥側の凹部40に向けて流すことができる。よって、燃料ガスが上流側の第1~第3分岐流路31A~31Cを素通りすることを防止でき、各バーナ群へ燃料ガスを均一に供給可能となる。
【0030】
特にここでは、案内部53を、正面視で、左右方向で隣接する第1~第3連通口43A~43C間に位置するように配置している。
よって、燃料ガスを第1~第3連通口43A~43Cへ効果的に導くことができる。
また、第1~第4弁室35A~35Dの下部は、凹部40の上側内面から凹部40の上半分の領域に突出して正面視半円状の第1~第4上側突出部41A~41Dをそれぞれ形成して、第1~第4上側突出部41A~41Dの下面(周面)に第1~第4連通口43A~43Dが形成される一方、下膨出部52は、凹部40の下半分の領域の前方に位置している。
よって、第1~第3上側突出部41A~41Cによって減勢されて凹部40の下側へ誘導された燃料ガスを、下膨出部52によって効率よく第1~第3連通口43A~43Cに向けて案内可能となる。
【0031】
一方、案内部53は、凹部40側への突出面が平面状に形成されて、蓋体27を本体26にネジ止めするネジ止め部54となっている。
よって、案内部53がネジ止めに利用される合理的な構成となり、蓋体27の形状が簡略化する。
また、凹部40の下側内面には、凹部40の下半分の領域に突出して案内部53の突出面と前後方向に重なる下側突出部44が形成され、下側突出部44の前面が平面状に形成されて案内部53を本体26にネジ止めするネジ55が螺合される。
よって、下側突出部44によっても燃料ガスを効果的に第1~第3連通口43A~43Cへ誘導できると共に、下側突出部44をネジ止めに利用した合理的な構成となる。
【0032】
なお、下膨出部に設けた案内部に係る発明において、案内部の形状や数は上記形態に限らない。例えばネジ止めに利用しないのであれば、突出面を平面状とせず、下流側へ行くに従って凹部側へ突出する傾斜面や傾斜曲面としてもよい。案内部を下膨出部の下側でなく上側に設けることもできるし、連通口間に配置しなくてもよい。
【0033】
(ガス導入口を弁室と同じ方向へ突出形成した発明に係る効果)
上記形態のガス分配ユニット5及び給湯器1では、ダイカスト成型される正面視矩形状の本体26と、本体26の前面に固定され、プレス成型される蓋体27とを含むケーシング25と、本体26に形成されるガス導入口29と、本体26に設けた凹部40と蓋体27に設けた下膨出部52とによって形成され、ガス導入口29と連通して左右方向に延びる主流路30と、本体26に設けた第1~第4縦溝部34A~34Dと蓋体27に設けた第1~第4縦膨出部51A~51Dとによって形成され、主流路30から分岐して上方へ延びる第1~第4分岐流路31A~31Dと、第1~第4分岐流路31A~31Dの上流端部で本体26の下部後面にそれぞれ設けられて後ろ向きに開口すると共に、上流端部に設けた弁座39を前後方向で進退動する弁体37によって開閉可能な電磁弁36がそれぞれ後方から収容されて、電磁弁36の上流側に主流路30と連通する第1~第4連通口43A~43Dが設けられた第1~第4弁室35A~35Dと、第1~第4分岐流路31A~31Dの下流端部で本体26にそれぞれ設けられ、第1~第4バーナ群に燃料ガスを供給する複数のノズル33と、を含み、ガス導入口29は、第1~第4弁室35A~35Dの開口方向と同じ後ろ向きに本体26の後面から突出形成されている。
【0034】
この構成により、本体26の上縁部及び下縁部から外側に張り出す部分をなくすことができる。よって、本体26の上縁部と下縁部とを直線的に且つ平行に形成することができ、湯の導入口と導出口との直線的な配列が可能となる。このため、成型時に湯の流れ方向が一方向に揃いやすくなり、金型内部における湯回り性を高めることができ、成型品の仕上がりが良好となる。また、本体26から下方へ突出する部分がなくなるので、本体26の上下幅を短くすることができ、導入口と弁座39との間の間隔が狭くなる。よって、「ス」の発生を防止でき、弁座39を切削する際の欠け等の損傷が生じにくくなって、歩留まりを大幅に向上させることができる。
さらに、ガス導入口29を第1~第4弁室35A~35Dと同じく後方へ向けて突出形成しているので、前後の割り型のみでの成型が可能となり、型費や管理費等のコストアップを抑えることができる。
【0035】
特にここでは、第1~第4弁室35A~35Dの下部は、凹部40の上側内面から凹部40内へそれぞれ正面視半円状に突出している。
よって、第1~第4分岐経路31A~31Dの上流端部に形成される第1~第4連通口43A~43Dを本体26のより下側に寄せて配置することができ、湯の導入口と第1~第4連通口43A~43D周りの各弁座39との距離をさらに短くすることができる。このため、弁座39周りにより高圧の湯を充填でき、「ス」の発生を効果的に抑制可能となり、歩留まりの一層の向上に繋がる。
また、第1~第4弁室35A~35Dの下部の周面は、正面から後方へ行くに従って拡開するテーパ状に形成されて、周面に第1~第4連通口43A~43Dが形成されている。
よって、本体26の前型60の一部と、後型61の一部とを、第1~第4弁室35A~35Dの径方向に重合させて第1~第4連通口43A~43Dを形成可能となる。このため、第1~第4連通口43A~43Dの形成に係る切削工程が削減可能となり、製造コストを低減することができる。
【0036】
なお、ガス導入口を弁室と同じ方向へ突出形成した発明において、ガス導入口の位置は上記形態に限らず、本体の左端とする等、適宜変更可能である。弁室の下部の突出形状も正面視半円状に限らないし、正面から後方へ行くに従って拡開するテーパ状とせず、前後に等径としてもよい。
【0037】
そして、各発明において、分岐流路の数は上記形態に限らず、適宜増減可能である。よって、弁室及び電磁弁の数も分岐流路に合わせて増減すればよい。各分岐流路のノズルの数も上記形態に限定されない。
給湯器自体の構成も上記形態に限らず、二次熱交換器を備えないタイプや風呂側の回路を備えないタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1・・給湯器、2・・筐体、3・・燃焼装置、4・・熱交換器、5・・ガス分配ユニット、8・・出湯管、9・・給水管、12・・ガス入口、13・・水入口、14・・湯出口、17・・ガス供給ユニット、20・・インナーケース、25・・ケーシング、26・・本体、27・・蓋体、28・・シール体、29・・ガス導入口、30・・主流路、31A~31D・・第1~第4分岐流路、32A~32D・・第1~第4ノズル部、33・・ノズル、34A~34D・・第1~第4縦溝部、35A~35D・・第1~第4弁室、36・・電磁弁、38A~38D・・第1~第4ガス入口、40・・凹部、41A~41D・・第1~第4上側突出部、42A~42D・・第1~第4下壁部、43A~43D・・第1~第4連通口、44・・下側突出部、51A~51D・・第1~第4縦膨出部、52・・下膨出部、53・・案内部、54・・ネジ止め部。