(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】超音波血流領域表示装置、方法及びプログラム、超音波画像診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2020100284
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】石黒 稔道
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政太朗
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-268734(JP,A)
【文献】特開平03-280940(JP,A)
【文献】特開2012-024577(JP,A)
【文献】特開2019-213859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0112473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対する超音波の送受信によって得た信号をBモード処理することにより、断層像のデータを生成するBモードデータ生成部と、
前記信号をドプラ解析して得た血流情報に基づいて、血流マッピングデータを生成する血流マッピングデータ生成部と、
連続的に色相が変化する表示色と前記信号の信号強度とを対応させたカラーインデックスを参照して前記血流マッピングデータを色情報に変換することにより血流画像のデータを生成するとともに、前記断層像に前記血流画像を重畳した画像表示データを生成する画像処理部と
を備える装置であって、
血流領域と非血流領域との境界付近の前記信号強度を指定する信号強度指定手段と、
指定された前記信号強度に対応する前記カラーインデックス上の前記表示色を、前記カラーインデックス上における周囲の表示色と色相的に連続していない特定の表示色に置換する表示色置換手段と
を備え、前記画像処理部は、置換された前記特定の表示色により前記血流領域が包囲された状態の前記血流画像のデータを生成する
ことを特徴とする超音波血流領域表示装置。
【請求項2】
前記信号強度指定手段によって指定される前記信号強度の値を調整する信号強度調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波血流領域表示装置。
【請求項3】
前記画像表示データは、前記血流画像と、指定された前記信号強度に対応する前記表示色を前記特定の表示色に置換した状態の前記カラーインデックスとを前記断層像に重畳したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波血流領域表示装置。
【請求項4】
前記カラーインデックスにおいて連続的に変化する前記表示色は暖色系の色であり、前記特定の表示色は寒色系の色であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波血流領域表示装置。
【請求項5】
被検体に対する超音波の送受信によって得た信号をBモード処理することにより、断層像のデータを生成するBモードデータ生成ステップと、
前記信号をドプラ解析して得た血流情報に基づいて、血流マッピングデータを生成する血流マッピングデータ生成ステップと、
血流領域と非血流領域との境界付近の信号強度を指定する信号強度指定ステップと、
連続的に色相が変化する表示色と前記信号
の信号強度とを対応させたカラーインデックス上において、指定された前記信号強度に対応する前記表示色を、前記カラーインデックス上における周囲の表示色と色相的に連続していない特定の表示色に置換する表示色置換ステップと、
前記カラーインデックスを参照して前記血流マッピングデータを色情報に変換することにより、置換された前記特定の表示色により前記血流領域が包囲された状態の血流画像のデータを生成するとともに、前記断層像に前記血流画像を重畳した画像表示データを生成する画像処理ステップと
を含む超音波血流領域表示方法。
【請求項6】
プロセッサに、
被検体に対する超音波の送受信によって得た信号をBモード処理することにより、断層像のデータを生成するBモードデータ生成ステップと、
前記信号をドプラ解析して得た血流情報に基づいて、血流マッピングデータを生成する血流マッピングデータ生成ステップと、
血流領域と非血流領域との境界付近の信号強度を指定する信号強度指定ステップと、
連続的に色相が変化する表示色と前記信号
の信号強度とを対応させたカラーインデックス上において、指定された前記信号強度に対応する前記表示色を、前記カラーインデックス上における周囲の表示色と色相的に連続していない特定の表示色に置換する表示色置換ステップと、
前記カラーインデックスを参照して前記血流マッピングデータを色情報に変換することにより、置換された前記特定の表示色により前記血流領域が包囲された状態の血流画像のデータを生成するとともに、前記断層像に前記血流画像を重畳した画像表示データを生成する画像処理ステップと
を実行させるための超音波血流領域表示プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムを格納した記憶手段を備えた超音波画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して血流領域を画像化して表示するための装置、方法及びプログラム、並びに超音波画像診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体内の様子を画像化するための簡便で安全性の高い診断装置として、超音波画像診断装置がよく知られている。超音波画像診断装置では、通常、超音波の送受信によって得た信号のBモード処理によって断層像を生成し、その断層像を表示装置に表示している。またこの種の装置では、超音波の送受信によって得た信号のドプラ解析によって血流画像を生成し、その血流画像を断層像に重畳して表示することが従来提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
そして、このようなドプラ法による血流イメージングによれば、対象となる部位や対象となる組織の血流分布を把握することができ、ひいては対象部位や対象組織の活性や退行状態を把握することが可能となる。そのため、この手法は受傷部位や悪性新生物の状態観察や治癒の経過観察のみならず、卵胞や黄体などの組織周辺の観察(例えば妊娠検査)にも有効と考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、対象部位や対象組織の周辺の新生血管は、微小血管の集まり(血管網)であるため、太い血管に比べてそもそも血流量が少ない。ゆえに血流検出が難しく、血流分布を血流面積等によって定量的に評価することが困難であった。
【0006】
なお、血流面積を求めたい場合、作業者は、表示装置の画面上の血管画像を目視確認し、自らが血流領域であると認識した範囲を手動でトレースすることにより血流領域を指定する作業を通常行っている。ところが、太い血管を指定する作業はさほど困難ではないが、細かい血管を含む血管網を指定する作業は極めて困難かつ煩雑なものとなる。
【0007】
つまり、血管画像を目視しても、血流がある部分とない部分との境界がどこにあるか解かり辛く、血管網を指定するのに適切な信号強度の閾値をどのレベルに設定すべきか自ら判断することが難しい。それゆえ、血管網全てをトレースして正確に指定することは殆ど不可能に近く、このことが微小血管の血流分布の定量的な評価を困難なものとしている一因となっていた。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、血管網の血流領域であると作業者自らが認識した範囲を比較的簡単に指定することができ、血流分布の定量的な評価を行いやすくすることができる装置、方法及びプログラム、並びに超音波画像診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被検体に対する超音波の送受信によって得た信号をBモード処理することにより、断層像のデータを生成するBモードデータ生成部と、前記信号をドプラ解析して得た血流情報を、連続的に色相が変化する表示色と前記信号の信号強度とを対応させたカラーインデックスに基づいて色情報に変換することにより、血流画像のデータを生成する血流マッピングデータ生成部と、前記断層像に前記血流画像を重畳した画像表示データを生成する画像処理部とを備える装置であって、血流領域と非血流領域との境界付近の前記信号強度を指定する信号強度指定手段と、指定された前記信号強度に対応する前記カラーインデックス上の前記表示色を、前記カラーインデックス上における周囲の表示色と色相的に連続していない特定の表示色に置換する表示色置換手段とを備え、前記血流マッピングデータ生成部は、置換された前記特定の表示色により前記血流領域が包囲された状態の前記血流画像のデータを生成することを特徴とする超音波血流領域表示装置をその要旨とする。
【0010】
従って、請求項1に記載の発明によると、血流領域と非血流領域との境界付近の信号強度に対応する箇所が、カラーインデックス上における周囲の表示色と色相的に連続していない特定の表示色に置換される。そのため、血流画像において血流領域が視覚的にわかりやすい色の輪郭で包囲された態様で表示される。ゆえに、血流領域と非血流領域との境界が解かりやすくなり、血管網を指定するのに適切な信号強度の閾値をどのレベルに設定すべきか容易に判断することが可能となる。よって、血管網の血流領域であると作業者自らが認識した範囲を比較的簡単に指定することができ、血流分布の定量的な評価を行いやすくすることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記信号強度指定手段によって指定される前記信号強度の値を調整する信号強度調整手段をさらに備えることをその要旨とする。
【0012】
従って、請求項2に記載の発明によると、指定される信号強度の値を調整することができるため、閾値レベルをより適切に設定することが可能となり、ひいては血管網の血流領域をより簡単にかつ正確に指定することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記画像表示データは、前記血流画像と、指定された前記信号強度に対応する前記表示色を前記特定の表示色に置換した状態の前記カラーインデックスの画像とを前記断層像に重畳したものであることをその要旨とする。
【0014】
従って、請求項3に記載の発明によると、血流画像に加えて上記カラーインデックスの画像が断層像に重畳して表示される。その結果、置換された特定の表示色がカラーインデックスにおけるどの位置にあるのか(即ち指定された閾値レベルがどの程度であるのか)が、感覚的に解かりやすくなる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記カラーインデックスにおいて連続的に変化する前記表示色は暖色系の色であり、前記特定の表示色は寒色系の色であることをその要旨とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、被検体に対する超音波の送受信によって得た信号をBモード処理することにより、断層像のデータを生成するBモードデータ生成ステップと、前記信号をドプラ解析して得た血流情報に基づいて、血流マッピングデータを生成する血流マッピングデータ生成ステップと、血流領域と非血流領域との境界付近の信号強度を指定する信号強度指定ステップと、連続的に色相が変化する表示色と前記信号の前記信号強度とを対応させたカラーインデックス上において、指定された前記信号強度に対応する前記表示色を、前記カラーインデックス上における周囲の表示色と色相的に連続していない特定の表示色に置換する表示色置換ステップと、前記カラーインデックスを参照して前記血流マッピングデータを色情報に変換することにより、置換された前記特定の表示色により前記血流領域が包囲された状態の血流画像のデータを生成するとともに、前記断層像に前記血流画像を重畳した画像表示データを生成する画像処理ステップとを含む超音波血流領域表示方法をその要旨とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、プロセッサに、被検体に対する超音波の送受信によって得た信号をBモード処理することにより、断層像のデータを生成するBモードデータ生成ステップと、前記信号をドプラ解析して得た血流情報を、連続的に色相が変化する表示色と前記信号の信号強度とを対応させたカラーインデックスに基づいて色情報に変換することにより、血流画像のデータを生成する血流マッピングデータ生成ステップと、前記断層像に前記血流画像を重畳した画像表示データを生成する画像処理ステップと、血流領域と非血流領域との境界付近の前記信号強度が指定されたときに、その指定された前記信号強度に対応する前記カラーインデックス上の前記表示色を、前記カラーインデックス上における周囲の表示色と色相的に連続していない特定の表示色に置換する表示色置換ステップとを実行させるための超音波血流領域表示プログラムをその要旨とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のプログラムを格納した記憶手段を備えた超音波画像診断装置をその要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
以上詳述したように、請求項1~7に記載の発明によると、血管網の血流領域であると作業者自らが認識した範囲を比較的簡単に指定することができ、血流分布の定量的な評価を行いやすくすることができる装置、方法及びプログラム、並びに超音波画像診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を具体化した一実施形態の超音波画像診断装置を示す正面図。
【
図3】表示画面上に表示されたカラーインデックスの画像(表示色置換前)を拡大して示した図。
【
図4】同装置のフィルタリング部において血流量と重み係数との関係を示すグラフ。
【
図5】同装置における一連の処理を説明するためのフローチャート。
【
図6】同装置における血流面積算出処理を説明するためのフローチャート。
【
図7】表示画面上に表示されたカラーインデックスの画像(表示色置換後)を拡大して示した図。
【
図8】置換された特定の表示色により血流領域が包囲された状態の血流画像を表示する表示画面を示す図。
【
図9】置換された特定の表示色により血流領域が包囲された状態の血流画像を表示する表示画面を示す図。
【
図10】置換された特定の表示色により血流領域が包囲された状態の血流画像を表示する表示画面を示す図。
【
図11】置換された特定の表示色により血流領域が包囲された状態の血流画像を表示する表示画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の超音波血流領域表示装置を、血流領域表示及び血流面積算出機能を備えた超音波画像診断装置に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態の超音波画像診断装置11を示す正面図であり、
図2は、その超音波画像診断装置11の電気的構成を示すブロック図である。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、この超音波画像診断装置11は、装置本体12と、その装置本体12に接続される超音波プローブ13とを備えている。超音波プローブ13は、信号ケーブル14と、信号ケーブル14の先端に接続されるプローブヘッド15と、信号ケーブル14の基端に設けられるプローブ側コネクタ16とを備えている。装置本体12には本体側コネクタ17が設けられ、その本体側コネクタ17には超音波プローブ13のプローブ側コネクタ16が着脱可能に接続されている。
【0023】
図2に示されるように、超音波プローブ13のプローブヘッド15は、扇状に配置された複数の超音波振動子を有している。超音波プローブ13の使用時には、プローブヘッド15を被検体19である生体組織に対して接触させ、この状態で超音波を送受信する。なお、超音波プローブ13の形式は特に限定されないが、本実施形態のものはコンベックス式電子走査を行うためのコンベックスプローブであり、例えば5MHzの超音波を扇状に発信する。
【0024】
装置本体12は、コントローラ21、パルス発生回路22、送信回路23、受信回路24、信号処理部25、メモリ26、記憶装置27、表示装置28、入力装置29等を備えている。
【0025】
コントローラ21は、周知の中央処理装置(CPU)を含んで構成されており、メモリ26を利用して所定の制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。なお、この制御プログラムのなかには、血流面積を算出するためのプログラム等が含まれる。
【0026】
表示装置28は、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ、投影式ディスプレイなどのカラーディスプレイであり、生体組織の断層像や血流画像を表示したり、各種設定の入力画面を表示したりするために用いられる。
【0027】
入力装置29は、例えばキーボード、スイッチ類、各種のポインティング・デバイスなどによって構成されており、作業者からの指示の入力やパラメータの入力に用いられる。なお、ポインティング・デバイスの例としては、タッチパッド、タッチパネル、マウス、ペンタブレット、トラックボール、ジョイスティックなどを挙げることができる。
【0028】
記憶装置27は、例えば磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置などであり、制御プログラム及び各種のデータを記憶している。コントローラ21は、入力装置29による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置27からメモリ26へ転送し、それを逐次実行する。なお、コントローラ21が実行するプログラムは、フレキシブルディスク等の磁気ディスク、CD、DVD、BD等の光ディスク、USBメモリ、フラッシュメモリ、SDカード等の半導体メモリなどの記憶媒体に記憶されたプログラムでもよいほか、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよい。このようなプログラムは、実行される前に記憶装置27にインストールされる。
【0029】
パルス発生回路22は、コントローラ21からの制御信号に応答して動作し、所定周期のパルス信号を生成して出力する。
【0030】
送信回路23は、超音波プローブ13における超音波振動子の素子数に対応した複数の遅延回路(図示略)を含んでいる。この送信回路23は、パルス発生回路22から出力されるパルス信号に基づき、各超音波振動子に応じて遅延させた駆動パルスを出力する。各駆動パルスの遅延時間は、超音波プローブ13から出力される超音波が所定の照射点で焦点を結ぶように設定されている。
【0031】
受信回路24は、図示しない信号増幅回路、遅延回路、整相加算回路を含んで構成されている。この受信回路24では、超音波プローブ13における各超音波振動子が受信した各反射波信号(エコー信号)が増幅されるとともに、受信指向性を考慮した遅延時間が各反射波信号に付加された後、整相加算される。この加算によって、各超音波振動子の受信信号の位相差が調整される。
【0032】
本実施形態の信号処理部25は、位相合成部31、Bモードデータ生成部32、血流マッピングデータ生成部33、画像処理部34等を備えている。
【0033】
位相合成部31は、増幅された各反射波信号を入力し、受信指向性を考慮した遅延時間を各反射波信号に付加した後に整相加算する。この加算によって、各超音波振動子が受信した反射波信号の位相差が調整される。
【0034】
Bモードデータ生成部32は、図示しない対数変換回路、包絡線検波回路、A/D変換回路などから構成されている。Bモードデータ生成部32は、位相差が調整された前記反射波信号に基づいて信号強度を輝度に変換する処理(即ちBモード処理)を行い、断層像を得るためのBモードデータを生成する。対数変換回路は反射波信号を対数変換し、包絡線検波回路は対数変換回路の出力信号の包絡線を検波する。また、A/D変換回路は、包絡線検波回路から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0035】
画像処理部34は、Bモードデータ生成部32から出力される信号に基づいて所定の画像処理を行い、断層像(Bモード画像)の画像データを生成する。具体的には、画像処理部34は、反射波信号の振幅(信号強度)に応じた輝度の画像表示データを生成する。画像処理部34で生成された画像表示データは逐次メモリ26に記憶される。そして、そのメモリ26に記憶された1フレーム分の画像表示データに基づいて、生体組織の断層像が白黒の濃淡で表示装置28の表示画面に表示される。つまり、本実施形態において表示される超音波像は、単色画像(モノトーン画像)である。
【0036】
血流マッピングデータ生成部33はドプラ解析部41を有している。このドプラ解析部41は、位相差が調整された前記反射波信号に基づいて高速フーリエ変換等の信号処理による周波数解析(ドプラ解析)を行うことで、血流情報(ここではドプラ成分の信号量(信号のパワー)についての情報)を得る。このような血流情報に基づいて、血流マッピングデータ生成部33は血流画像を得るための血流マッピングデータを生成する。なお、一般的にドプラ成分の信号量は血管内の反射源である血球量に比例するので、ドプラ成分の信号量が大きいということは血流量が多いことを意味する。
【0037】
画像処理部34は、血流マッピングデータ生成部33から出力される信号に基づいて所定の画像処理を行い、血流画像の画像データを生成する。より具体的に説明すると、画像処理部34は、メモリ26に記憶されているカラーインデックス61を参照して、血流マッピングデータを色情報に変換する処理を行う。カラーインデックス61は連続的に色相が変化する表示色62からなる。この表示色62はドプラ成分の信号量(信号強度)と対応する関係にある。従って画像処理部34は、関心領域48(ROI)の領域内における各ピクセルを、ピクセル毎にドプラ成分の信号量に応じた表示色に変換する処理を行い、血流画像の画像データとする。そして画像処理部34は、Bモードデータに基づいて生成した断層像に、血流画像を重畳した画像表示データを生成するようになっている。断層像に血流画像を重畳した上記の画像表示データも、逐次メモリ26に記憶される。そして、そのメモリ26に記憶された1フレーム分の画像表示データに基づき、血流量に応じて色相が異なるカラーの血流画像を白黒の断層像上に重畳した態様の表示画像が、表示装置28の表示画面に表示される。このとき、カラーインデックス61の画像についても同様に断層像上に重畳され、表示装置28の表示画面に表示される。
【0038】
図3には、表示画面上に表示されたカラーインデックス61の画像が示されている。本実施形態のカラーインデックス61の画像では、血流量の少ないほうから順に色相が、黒色、暗赤色、赤色、赤橙色、橙色、黄橙色、黄色と変化するように規定されている。従って、例えば血流量が少ないときの血流画像が暗赤色から赤色、中程度のときの血流画像が赤橙色から橙色、多いときの血流画像が黄橙色から黄色で表示されるようになっている。なお、本実施形態の表示装置28は、断層像に血流画像を重畳した表示画像と、血流画像を重畳していない断層像のみの表示画像とが選択的に表示できるように構成されている。
【0039】
次に、本実施形態の超音波画像診断装置11における血流領域表示及び血流面積算出のための構成について説明する。
【0040】
この超音波画像診断装置11の血流マッピングデータ生成部33は、上記のドプラ解析部41に加え、その後段にフィルタリング部42及び血流判定部43を有している。フィルタリング部42は、血流が増大方向に変化するときに重み係数を大きくし、血流が減少方向に変化するときに重み係数を小さくするように切り替えてフィルタリングを行うようになっている。
【0041】
これを具体的に説明すると、このフィルタリング部42は、ドプラ解析部41からのドプラ信号を、あらかじめ設定された所定の重み係数(α;0よりも大きく1よりも小さい数)で処理するためのデジタルフィルタである。入力されたドプラ信号のデジタルデータは、乗算器において、あらかじめ設定された所定の重み係数αでフィルタリング処理された後(ここではαを乗算した後)、加算器に出力される。遅延素子には時間的に1つ前にフィルタリング処理されたドプラ信号のデジタルデータが保持されており、このように遅延バッファされたデータは加算器に対してフィードバックされる。そして加算器では、最新のドプラ信号のデジタルデータと、その直前のドプラ信号(フィルタリング処理後のもの)のデジタルデータとが所定の割合で加算される。そして、これによる加算結果、つまりフィルタリング処理されたドプラ信号は、画像処理部34及び血流判定部43に出力されるようになっている。
【0042】
ここで、最新のドプラ信号のデジタルデータを「Input(n)」と表し、その直前のドプラ信号(フィルタリング処理後のもの)のデジタルデータを「Output(n-1)」と表すものとする。そして、最新のドプラ信号のデジタルデータに重み係数αを乗算したものが「α・Input(n)」であり、その直前のドプラ信号のデジタルデータに1-αを乗算したものが「(1-α)・Output(n-1)」であるため、その加算結果であるフィルタリング処理後のドプラ信号のデジタルデータを「Output(n)」は、次式1のようになる。
【0043】
Output(n) = α・Input(n) + (1-α)・Output(n-1) ・・・(1)
【0044】
ところで本実施形態では重み係数αは常に一定というわけではなく、血流が増大方向に変化するときに大きい値α1となり、血流が減少方向に変化するときに小さい値α2となるように、係数制御部が重み係数αを切り替える。なお、これら大小2つの重み係数の間には、1>α1>α2>0という関係が成り立っている。なお、
図4にはこのことを説明するためのグラフを示す。同グラフにおいて曲線C1は、血流量と重み係数との関係を示すものである。
【0045】
ここで、最新のドプラ信号のデジタルデータ「Input(n)」の絶対値からその直前のドプラ信号のデジタルデータ「Output(n-1)」の絶対値を減算した値を考える。この減算値がδa以上であるとき(δaはあらかじめ定めた血流量の閾値)、つまり血流量が増大する方向に変化するときには、上記式1における重み係数として、1に近い値の重み係数α1が適用される。従ってこの場合におけるフィルタリング処理後のドプラ信号のデジタルデータ「Output(n)」では、次式2のように、血流量が多いほうのデータである最新のドプラ信号のデジタルデータ「Input(n)」の寄与率が大きくなる。
【0046】
Output(n) = α1・Input(n) + (1-α1)・Output(n-1) ・・・(2)
【0047】
一方、上記の減算値がδa未満であるとき、つまり血流量が減少する方向に変化するときには、上記式1における重み係数として、0に近い値の重み係数α2が適用される。従ってこの場合におけるフィルタリング処理後のドプラ信号のデジタルデータ「Output(n)」では、次式3のように、血流量が多いほうのデータである直前のドプラ信号のデジタルデータ「Output(n-1)」の寄与率が大きくなる。
【0048】
Output(n) = α2・Input(n) + (1-α2)・Output(n-1) ・・・(3)
【0049】
血流判定部43は、フィルタリング後に関心領域(ROI)48内に血流があるか否かにつき、所定の閾値δbを用いて判定を行う。この判定を行うにあたり、信号強度指定手段及び表示色置換手段としてのコントローラ21により、前もって閾値δbが決定される。
【0050】
メモリ26内には信号強度の指定及び表示色の置換を行うための制御プログラム等が記憶されており、コントローラ21はこれらの制御プログラムに従って所定の処理を実行する。信号強度指定手段としてのコントローラ21は、作業者により入力装置29を介して指示があった場合に、血流領域R1と非血流領域R2との境界付近の信号強度を指定する。さらに表示色置換手段としてのコントローラ21は、指定された信号強度に対応するカラーインデックス61上の表示色62を、カラーインデックス61上における周囲の表示色62と色相的に連続していない特定の表示色63に置換する。例えば本実施形態では、カラーインデックス61において連続的に変化する表示色62が暖色系の色であるため、特定の表示色63として寒色系の色(ここでは青色)を採用している。このような表示色62の置換が行われた場合、血流マッピングデータ生成部33は、置換された特定の表示色63により血流領域R1が包囲された状態の血流画像のデータを生成する(
図1参照)。それゆえ本実施形態では、青色の輪郭L1により血流領域R1が包囲された状態の血流画像が表示装置28の表示画面に表示される。作業者はこの表示画面を目視して適宜信号強度の値を調整し、自らが血管網M1の血流領域R1であると認識した範囲を指定し、これに基づいて閾値δbが決定される。
【0051】
血流判定部43では、上記のように決定された閾値δbを用いてフィルタリング処理後のドプラ信号「Input(n)」の絶対値との大小が比較される。フィルタリング処理後のドプラ信号「Input(n)」の絶対値がδb以上の場合、血流判定部43は「血流あり」と判定し、出力信号Output(n)として「1」を画像処理部34及びピクセル数カウント部44に出力する。一方、上記絶対値がδb未満の場合、血流判定部43は「血流なし」と判定し、出力信号Output(n)として「0」を画像処理部34及びピクセル数カウント部44に出力する。
【0052】
また、本実施形態の信号処理部25は、さらにピクセル数カウント部44及び血流面積算出部45を備えている。ピクセル数カウント部44は、関心領域48内に血流があると判定された場合、関心領域48内における血流を示すピクセル数をカウントする。具体的に説明すると、ピクセル数カウント部44では、血流判定部43から「1」の出力信号Output(n)を入力した場合に、その数を積算することにより、上記ピクセル数の総数を求める。
【0053】
血流面積算出部45は、関心領域48内のピクセル総数に対する血流を示すピクセル数の比率と、関心領域48の面積とを乗算することにより、血流面積を算出して定量化する。この血流面積算出データは、逐次メモリ26に記憶されるとともに、必要に応じて例えば表示装置28の表示画面に血流面積値として数字で表示される。なお本実施形態では、表示画面における右側下部に血流面積値表示領域51が設けられており、そこに血流面積値が例えば「〇〇〇mm2」と表示されるようになっている。
【0054】
次に、本実施形態の超音波画像診断装置11における診断処理を
図5、
図6のフローチャートを用いて説明する。
図5の処理は、作業者(例えば獣医師)が被検体19に超音波プローブ13を接触させ、入力装置29に設けられている開始スイッチを操作したときに開始される。ここでは、超音波画像診断装置11を家畜の妊娠検査用に使用することから、家畜における卵胞や黄体などといった部位を含む生体組織が被検体19となる。ちなみに、妊娠の初期において卵胞や黄体などが発達を開始する際には、その部位の周囲に微小血管からなる血管網M1が生じる。このため、当該部位の周辺の血流面積が所定値よりも大きくなっていれば、その家畜が妊娠していると判定することが可能である。
【0055】
まず、コントローラ21は、超音波診断に関する情報として、家畜の識別番号、年齢、診断日時などの管理情報、画像表示の表示方向や表示レンジなどの設定情報等の入力を促すメッセージを表示装置28の入力画面に表示する。ここで、作業者により入力装置29のキーボードやトラックボール等が操作されて、各種情報が入力される(ステップS100)。コントローラ21は、その情報を取り込みメモリ26に一旦記憶する。
【0056】
各種情報の入力が完了した後、コントローラ21は、パルス発生回路22を動作させ、超音波プローブ13による超音波の送受信を開始させる(ステップS110)。具体的には、コントローラ21から出力される制御信号に応答してパルス発生回路22が動作し、所定周期のパルス信号が送信回路23に供給される。そして、送信回路23では、パルス信号に基づいて各超音波振動子に対応した遅延時間を有する駆動パルスが生成され、かつ超音波プローブ13に供給される。これにより、超音波プローブ13の各超音波振動子が振動して超音波が生体組織に向けて照射される。生体組織内を伝搬する超音波の一部は、音響インピーダンスの異なる組織境界面などで反射して超音波プローブ13で受信される。このとき、超音波プローブ13の各超音波振動子によって反射波が電気信号(反射波信号)に変換される。そして、その反射波信号は、受信回路24で増幅等された後、信号処理部25に出力される。
【0057】
続くステップS120では、コントローラ21は受信回路24からの信号を信号処理部25の位相合成部31に入力する。位相合成部31を経て位相差調整された反射波信号は、Bモードデータ生成部32にてBモード処理される。その後、画像処理部34では、Bモードデータ生成部32から出力される信号に基づいて、断層画像の画像データを生成するための画像処理が行われる。そして、コントローラ21は、断層画像の画像データをメモリ26に一旦記憶させる。
【0058】
続くステップS130では、コントローラ21は、位相合成部31を経て位相差調整された反射波信号をドプラ解析部41に入力し、そこでドプラ処理を行わせることによりドプラ成分の信号量についての情報を取得する。さらにコントローラ21は、ドプラ解析部41からのドプラ信号をフィルタリング部42に入力して上記のフィルタリング処理を行わせた後、当該信号を画像処理部34に入力して血流画像の画像データを生成させる。画像処理部34では、Bモードデータに基づいて生成した断層像に、血流画像を重畳した画像表示データが生成される。そして、コントローラ21はこの画像表示データをメモリ26に一旦記憶させる。
【0059】
続くステップS140では、コントローラ21は、画像表示データをメモリ26から読み出して表示装置28に転送し、断層像に血流画像を重畳した画像を表示装置28に表示させる。
【0060】
例えば、入力装置29を介して作業者が血流面積の算出を要求する旨の指示をした場合、コントローラ21には所定の制御信号が入力される。するとコントローラ21は、この制御信号の入力の有無に基づいて、血流面積を算出するか否かの判定を行う。上記制御信号の入力なし(ステップS150:NO)と判定した場合、コントローラ21はそれ以降の処理を実行せずに終了する。上記制御信号の入力あり(ステップS150:YES)と判定した場合、コントローラ21はステップS160の血流面積算出処理に移行する。
【0061】
図6には、血流面積の算出に関するサブルーチンの処理が示されている。コントローラ21は、まず、血流領域R1と非血流領域R2との境界付近の信号強度を指定する(ステップS161)。次いで表示色置換手段としてのコントローラ21は、指定された信号強度に対応するカラーインデックス61上の表示色62を、カラーインデックス61上における周囲の表示色62と色相的に連続していない特定の表示色63(ここでは青色)に置換する(ステップS162)。その結果、
図7に示されるように、表示色置換後のカラーインデックス61の画像を断層像に重畳した状態の画像が表示画面上に表示される。なお、
図7に示された表示色置換後のカラーインデックス61の画像では、赤色の表示色62と赤橙色の表示色62との間に、特定の表示色63である青色の表示色が帯状に配置されている。そしてこの場合、青色をなす一重の輪郭L1により血流領域R1が包囲された状態の血流画像が表示装置28の表示画面に表示される(
図8参照)。
【0062】
上述したように、カラーインデックス61の表示色62は、ドプラ成分の信号強度と対応する関係にある。ドプラ信号の信号強度のレベルを「0~99」の100段階に分けた場合、
図8の表示画面では、カラーインデックス61の画像における「1~4」のレベルに対応する範囲が特定の表示色63に置換されている。なお、信号強度のレベルを極めて低く設定した
図8においては、表示画像において青色の輪郭L1で包囲された領域は比較的多くなっている。また、青色の輪郭L1自体の幅は比較的広くなっている。
【0063】
ここで作業者が当該表示画面を目視して、信号強度の値を調整する必要がないと判断した場合(ステップS163:NO)、作業者は入力装置29を介してその旨を入力する。すると、コントローラ21はステップS165に移行し、その信号強度の値を血流判定のための血流量の閾値δbとして決定する。また、信号強度の値を調整する必要があると判断した場合(ステップS163:YES)、作業者は入力装置29を操作して信号強度の値を段階的あるいは無段階的に調整し、それに基づいてコントローラ21は信号強度の値を変更する(ステップS164)。例えば、
図9の表示画面ではカラーインデックス61の画像における「8~11」のレベルに対応する範囲、
図10の表示画面では当該画像における「14~17」のレベルに対応する範囲、
図11の表示画面では当該画像における「57~60」のレベルに対応する範囲が、それぞれ特定の表示色63に置換されている。そしてこれらの表示画像を
図8の表示画像と比較すると、青色の輪郭L1で包囲された領域は
図8ほど多くはなく、
図9、
図10、
図11になるほど少なくなっていることがわかる。また、青色の輪郭L1自体の幅は
図8ほど広くはなく、
図9、
図10、
図11になるほど狭くなっていることがわかる。そして、このような調整を行った作業者は、これら表示画像を目視して、自らが血管網M1の血流領域R1であると認識した範囲を指定し、そのときの信号強度の値を血流判定のための閾値δbとして決定する(ステップS165)。
【0064】
上記のようにして閾値δbが決定された後、コントローラ21は、フィルタリング処理後のドプラ信号をピクセル数カウント部44に入力し、関心領域48内における血流を示すピクセル数をカウントする(ステップS167)。さらにコントローラ21は、そのカウント結果を血流面積算出部45に入力して血流面積を算出し、得られた血流面積算出データをメモリ26に一旦記憶させる(ステップS168)。そしてコントローラ21は、この血流面積算出データをメモリ26から読み出して表示装置28に転送し、表示装置28に血流面積値として表示させた後(ステップS170)、一連の処理を終了する。
【0065】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0066】
(1)本実施形態の超音波画像診断装置11では、血流領域R1と非血流領域R2との境界付近の信号強度に対応する箇所が、カラーインデックス61上における周囲の表示色62と色相的に連続していない特定の表示色63に置換される。そのため、血流画像において血流領域R1が視覚的にわかりやすい色の輪郭L1で包囲された態様で表示される。ゆえに、血流領域R1と非血流領域R2との境界が解かりやすくなり、血管網M1を指定するのに適切な信号強度の閾値δbをどのレベルに設定すべきか容易に判断することが可能となる。よって、血管網M1の血流領域R1であると作業者自らが認識した範囲を比較的簡単に指定することができ、血流分布の定量的な評価を行いやすくすることができる。また、本実施形態によると、作業者自らが血流領域であると認識した範囲を手動でトレースする煩雑な作業を行う必要がないため、微小血管の集まりである血管網M1を指定する煩雑さが解消される。
【0067】
(2)本実施形態の超音波画像診断装置11では、コントローラ21が信号強度調整手段として機能することから、指定される信号強度の値を適宜調整することができる。よって、閾値δbのレベルをより適切に設定することが可能となり、ひいては血管網M1の血流領域をより簡単にかつ正確に指定することができる。
【0068】
(3)本実施形態の超音波画像診断装置11では、血流画像に加えてカラーインデックス61の画像が断層像に重畳して表示される。その結果、置換された特定の表示色63がカラーインデックスの画像61におけるどの位置にあるのか(即ち指定された閾値δbのレベルがどの程度であるのか)が、感覚的に解かりやすくなる。
【0069】
(4)本実施形態の超音波画像診断装置11では、血流マッピングデータ生成部33のフィルタリング部42によって血流情報をフィルタリングする際に、入力データの重み係数が切り換えられる。即ち、血流が増大方向に変化するときには、重み係数を大きくするように(即ちα2→α1に)切り替えることで、入力データの寄与率が大きくなり、血流を素早く検出することが可能となる。また、血流が減少方向に変化するときには、重み係数を小さくするように(即ちα1→α2に)切り替えることで、入力データの寄与率が小さくなり、血流検出状態を暫くのあいだ維持することが可能となる。つまり、本実施形態によると上記のような血流情報の平滑化がなされる結果、微小血管を視覚的に捉えやすくなり、血流が少ない微小血管についての血流検出が行いやすくなる。そしてこのような血流検出に基づいて、関心領域48内に血流があるか否かの閾値判定、血流を示すピクセル数のカウント、及びそのカウント数から血流面積の算出を行うことにより、血管網M1の血流分布を簡単にかつ定量的に評価することができる。そして本実施形態の装置11を家畜の妊娠検査に用いた場合には、家畜が妊娠しているか否かを比較的早期の段階で簡単にかつ正確に判断することが可能となる。
【0070】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、カラーインデックス61における特定の表示色63を青色としたが、これに限定されることはなく、例えば緑色、水色、藍色などのような青色以外の寒色系の色としても勿論よい。この場合、置換された特定の表示色63が、その周囲に隣接する表示色62の色相と大きく異なったものとなる。ゆえに、上記実施形態のときと同様に、特定の表示色63からなる輪郭L1が目視により把握しやすくなるという利点がある。
【0072】
・上記実施形態では、カラーインデックス61において連続的に変化する表示色62を暖色系の色とし、特定の表示色63を寒色系の色としたが、これに限定されない。即ち、カラーインデックス61において連続的に変化する表示色62を寒色系の色とし、特定の表示色63を、赤色、橙色、黄色等のような暖色系の色としてもよい。
【0073】
・上記実施形態では、ドプラ信号の信号強度のレベル調整を行った場合でも、カラーインデックス61の画像における特定の表示色63の幅は一定であったが、この幅が変更できるように構成してもよい。具体的には、当該レベルが例えば「8~11」、「7~12」、「6~13」というように変更できるように構成してもよい。
【0074】
・上記実施形態では
図4のグラフに示すように、2段階の重み係数α1、α2を設定してフィルタリング処理を行うようにしたが、例えば3段階以上の重み係数を設定してフィルタリング処理を行ってもよい。あるいは、血流量の増加に応じて無段階的に増加するような重み定数を設定し、これに基づいてフィルタリング処理を行うようにしてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、ウシ、ウマ、ブタ等の家畜を被検体19としたが、家畜以外の動物であってもよく、人間であってもよい。また、上記実施形態の超音波画像診断装置11は、妊娠検査以外の用途、例えば受傷部位や悪性新生物の状態観察や治癒の経過観察などの用途に用いられても勿論構わない。
【0076】
・本実施形態では、血流面積の算出結果を表示装置28の表示画面に数値をもって直接的に表示したが、必ずしも数値でなくてもよく、例えば、血流面積の大小の程度を示す文字やアイコンなどによって間接的に表示するようにしてもよい。あるいは、血流面積を直接的または間接的に表示する態様に代えて、「妊娠している」、「妊娠していない」等の文字で表示する態様としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
11…超音波血流領域表示装置としての超音波画像診断装置
19…被検体
21…信号強度指定手段、表示色置換手段、信号強度調整手段としてのコントローラ
27…記憶手段としての記憶装置
32…Bモードデータ生成部
33…血流マッピングデータ生成部
34…画像処理部
61…カラーインデックス
62…表示色
63…特定の表示色
R1…血流領域
R2…非血流領域
M1…血管網