(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/08 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H01H85/08
(21)【出願番号】P 2020151005
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000204044
【氏名又は名称】太平洋精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 史幸
(72)【発明者】
【氏名】梁中赫
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 亮平
(72)【発明者】
【氏名】中村 紘志
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0081061(KR,A)
【文献】特開2014-182952(JP,A)
【文献】特開2011-253679(JP,A)
【文献】特開2007-080709(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055676(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0236675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子部と、当該入力端子部から入力された電流が流れるバスバー部と、当該バスバー部に可溶体部を介して接続される端子部とを備えたヒューズであって、
前記可溶体部と前記端子部とを備えた可溶体部ユニットを複数備え、
前記可溶体部ユニットのそれぞれは、前記バスバー部とは別体であって、前記バスバー部に個別に取り付けられており、
前記可溶体部ユニットの前記端子部は、前記ヒューズとは別体の外部の接続端子と連結され、
前記可溶体部ユニットの前記可溶体部は、前記端子部と前記バスバー部とを結ぶ高さ方向に延出しており、
前記可溶体部の一部は、前記高さ方向に縮むように、かつ、前記バスバー部の表面から突出するように、屈曲しており、
前記可溶体部の上端と下端は、前記高さ方向に直交する方向へ互いにずれて配置されている、ことを特徴とするヒューズ。
【請求項2】
前記可溶体部ユニットは、前記可溶体部を収容するハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記バスバー部の表面から突出しており、
前記ハウジングの上面壁には、内部の前記可溶体部を視認可能な視認窓が形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のヒューズ。
【請求項3】
前記視認窓は、前記ハウジングの上面壁から正面壁へ延出していることを特徴とする請求項
2に記載のヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に自動車用電気回路等に用いられるヒューズに関し、特に、複数の端子部を備えたヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒューズは、自動車等に搭載されている電気回路や、電気回路に接続されている各種電装品を保護するために用いられてきた。詳しくは、電気回路中に意図しない過電流が流れた場合に、ヒューズに内蔵された溶断部が過電流による発熱により溶断して、各種電装品に過度な電流が流れないように保護している。
【0003】
そして、このヒューズは用途に応じて様々な種類があり、例えば、特許文献1に記載のヒューズが知られている。特許文献1に示すような従来のヒューズ900は、
図7に示すように、入力端子910と、入力端子910から入力された電流が流れるバスバー部920と、バスバー部920に可溶体部930を介して接続される端子部940とを備えている。そして、ヒューズ900は、複数の可溶体部930と端子部940とを備えており、この端子部940に各種電装品に接続された接続端子等を連結できるようになっている。ところで、バスバー部920と可溶体部930と端子部940は、導電性の一枚の金属板を
図7に示すような形状に打ち抜いて一体形成されている。そして、各可溶体部930は仕様に応じて形状等を変えることで、可溶体部930の定格を適宜変更している。ただ、各可溶体部930の形状を定格に応じて変更する場合は、一体形成されている他の可溶体部930やバスバー部920を含めた全体の構成を再設計する必要があり、設計及び製造が面倒で製造期間も長くなるという問題がある。また、定格に応じて多様な形状をした可溶体部930を、他の可溶体部930やバスバー部920と共に、一枚の金属板から打ち抜いて一体形成すると、全体として歩留まりが悪くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明は、容易に製造ができ、歩留まりを向上させたヒューズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明のヒューズは、入力端子部と、当該入力端子部から入力された電流が流れるバスバー部と、当該バスバー部に可溶体部を介して接続される端子部とを備えたヒューズであって、前記可溶体部と前記端子部とを備えた可溶体部ユニットを複数備え、前記可溶体部ユニットのそれぞれは、前記バスバー部とは別体であって、前記バスバー部に個別に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
上記特徴によれば、可溶体部の定格を変更する場合は、定格の異なる可溶体部ユニットを準備してバスバー部に取り付けるだけで、所望のヒューズを容易に、かつ短期間に製造できる。また、ヒューズに求められる多岐に渡る仕様(例えば、端子部の数や大きさの変更、バスバー部の形状の変更など)に対応する場合も、可溶体部ユニットやバスバー部を個別に変更するだけで、容易に、かつ短期間に製造することができる。さらに、形状が変更される可溶体部を備えた可溶体部ユニットを、バスバー部と別体として製造することで、可溶体部ユニットとバスバー部は、それぞれ最適な形状に個別に設計ができ、全体して歩留まりが向上するのである。
【0008】
さらに、本願発明のヒューズは、前記可溶体部ユニットの前記可溶体部は、前記端子部と前記バスバー部とを結ぶ高さ方向に延出しており、前記可溶体部の一部は、前記高さ方向に縮むように、かつ、前記バスバー部の表面から突出するように、屈曲していることを特徴とする。
【0009】
上記特徴によれば、可溶体部は、全体として、高さ方向に縮むように構成されているので、定格が変わっても、高さ方向の大きさが大きくなることを防止できる。さらに、複数のヒューズ700をヒューズボックス等に並べて配置したとしても、可溶体部の一部は、バスバー部の表面から突出するように屈曲しているので、上方向又は斜め上方の視点から、可溶体部を目視にて確認できることから、可溶体部が溶断したか否かの確認が行いやすいのである。
【0010】
さらに、本願発明のヒューズは、前記可溶体部ユニットは、前記可溶体部を収容するハウジングを備え、前記ハウジングは、前記バスバー部の表面から突出しており、前記ハウジングの上面壁には、内部の前記可溶体部を視認可能な視認窓が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記特徴によれば、ハウジングの上面壁の視認窓を介して、上方向から可溶体部が溶断したか否かの確認が行いやすいのである。
【0012】
さらに、本願発明のヒューズは、前記視認窓は、前記ハウジングの上面壁から正面壁へ延出していることを特徴とする。
【0013】
上記特徴によれば、視認窓を介して、上方向及び斜め上方からでも、可溶体部が溶断したか否かの確認が行いやすいのである。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本願発明のヒューズによれば、容易に製造ができ、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は、本願発明のヒューズの可溶体部ユニットの全体斜視図、(b)は可溶体部ユニットの正面図、(c)は可溶体部ユニットの側面図である。
【
図2】(a)は、可溶体部ユニットに取り付けられるハウジングの分解斜視図、(b)はハウジングの側面図、(c)はハウジングの正面図である。
【
図3】(a)は、可溶体部ユニットにハウジングを組み付ける状態を示した全体斜視図、(b)は、可溶体部ユニットにハウジングを組み付けた状態の全体斜視図である。
【
図4】(a)は、可溶体部ユニットにハウジングを組み付けた状態の正面図、(b)は当該状態の側面図、(c)は当該状態の平面図である。
【
図5】(a)は、バスバー部の全体斜視図、(b)はヒューズの全体斜視図である。
【
図6】(a)は、ヒューズの正面図、(b)はヒューズの側面図である。
【
図7】(a)は、従来技術に係るヒューズの全体斜視図、(b)は当該ヒューズの正面図である。
【符号の説明】
【0016】
200 可溶体部
300 端子部
400 可溶体部ユニット
600 バスバー部
610 入力端子部
700 ヒューズ
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下で説明する実施形態におけるヒューズの各部材の形状や材質等は、一例を示すものであって、これらに限定されるものではない。
【0018】
図1には、本願発明のヒューズの可溶体部ユニット400を示す。なお、
図1(a)は可溶体部ユニット400の全体斜視図、
図1(b)は可溶体部ユニット400の正面図、
図1(c)は可溶体部ユニット400の側面図である。
【0019】
図1に示すように、可溶体部ユニット400は、後述するバスバー部に接続固定する連結部100と、可溶体部200と、各種電装品に接続された接続端子等を連結する端子部300とを備える。この連結部100、可溶体部200、及び端子部300は、銅やその合金等の導電性金属からなる、厚さが均一の平坦な板材を、
図1に示すような形状にプレス機等で打ち抜いて、一体形成されている。連結部100は、平坦な板状のバスバー部に溶着等により固定するために、平坦な板状となっている。また、端子部300は、外部の接続端子と連結できるように、平坦な板状となっている。
【0020】
さらに、可溶体部200は、定格に応じた抵抗値を実現するために、その形状が適宜設計されている。具体的には、可溶体部200は、連結部100や端子部300に比べて幅が狭く長尺状に延出した線状体210の長さを、定格に応じて適宜変更している。例えば、可溶体部200の定格が小さくなると、可溶体部200の抵抗値を大きくするために、線状体210の全長を長くするのである。また、線状体210は、連結部100が接続固定されるバスバー部と端子部300とを結ぶ高さ方向Y(又は、連結部100と端子部300とを結ぶ高さ方向Y)に延出している。そして、可溶体部200の全長が長い場合は、線状体210の一部をU字状に曲げたU字状部211を形成するなどして、可溶体部200の高さ方向Yの大きさが大きくなることを防止している。
【0021】
また、
図1(c)に示すように、可溶体部200の線状体210の一部を、高さ方向Yに縮むように、かつ、連結部100が接続固定されるバスバー部の表面(又は、連結部100の表面)から突出するように、屈曲した曲部212を形成している。この曲部212は、高さ方向Yに直交する方向Xに向けて湾曲するように突出した状態となっている。また、曲部212が形成されたことで、従来のように可溶体部200の線状体210が高さ方向Yに直線状に延出している場合と比較して、線状体210が連結部100と接続している上端213と、線状体210が端子部300と接続している下端214との、高さ方向Yにおける互いの距離が近くなっている。さらに、従来のように線状体210が高さ方向Yに直線状に延出している場合は、上端213と下端214は高さ方向Yに直線状に並んでいるが、曲部212が形成されたことで、上端213と下端214は、高さ方向Yに直線状に並ばず、高さ方向Yに直交する方向Xに互いにズレて配置されている。このように、可溶体部200は、全体として、高さ方向Yに縮むように、かつ、連結部100が接続固定されるバスバー部の表面(又は、連結部100の表面)から突出するように、言い換えると、高さ方向Yに直交する方向Xにずらされるように、屈曲した構成となっている。そして、可溶体部200は、全体として、高さ方向Yに縮むように構成されているので、定格が変わって可溶体部200の全長が長くなっても、高さ方向Yの大きさが大きくなることを防止できる。
【0022】
また、曲部212は、連結部100から端子部300へ向けて斜め下方へ傾斜する傾斜部215を備えており、傾斜部215の一部には、錫、銀、鉛、ニッケル、又はこれらの合金等からなる低融点金属(不図示)を溶着させる溶着部216が設けられている。この溶着部216上に溶着された低融点金属は、意図しない過電流が可溶体部200に流れると溶融し、傾斜部215に沿って下方へ移動していく。そして、移動してきた低融点金属が、溶着部216の下側に連続している接続部217と結合して、接続部217の融点が下がり、可溶体部200の接続部217はより迅速かつ効果的に溶断するのである。
【0023】
なお、可溶体部200は、曲部212を一つ備えているが、これに限定されず、曲部212を2つ以上設けて、線状体210の全長を長くしてもよい。また、可溶体部200は、
図1に示すような構成に限定されず、可溶体部200の一部が高さ方向Yに延出し、さらに、高さ方向Yに縮むように、かつ、連結部100が接続固定されるバスバー部の表面(又は、連結部100の表面)から突出するように、屈曲した構成を備えていれば、その他の任意の構成であってもよい。また、可溶体部200は、幅が狭くなった線状体210が電気回路等に意図しない過電流が流れた際に、発熱して溶断して過電流を遮断するものであるが、これに限定されず、電気回路等に意図しない過電流が流れた際に、発熱して溶断して過電流を遮断できるのであれば、可溶体部200の一部に小穴を設けて幅が狭くなった部分を溶断するなど、任意の構成を採用することができる。
【0024】
次に、可溶体部ユニット400に取り付けられるハウジング500について説明する。このハウジング500は、可溶体部ユニット400の可溶体部200が外部環境に晒されないように、可溶体部200を収容して保護するものである。なお、
図2(a)はハウジング500の分解斜視図、
図2(b)はハウジング500の側面図、
図2(c)はハウジング500の正面図である。
【0025】
ハウジング500は、絶縁性の合成樹脂等から構成されており、一対の背面側分割体510と正面側分割体520を備えている。背面側分割体510は、略直方体形状をしており、可溶体部ユニット400の連結部100を配置可能な上端部511と、可溶体部ユニット400の可溶体部200を覆う凹部512と、可溶体部ユニット400の端子部300を配置可能な下端部513とを備えている。また、正面側分割体520は、上面壁521と、両側の側面壁522と、正面壁523と、下面壁524を備えた、内部が中空の略直方体形状をしている。そして、上面壁521側には、可溶体部ユニット400の連結部100を挿通可能な上端孔526と、正面壁523の内側には、可溶体部ユニット400の可溶体部200を収容する収容空間527と、下面壁524側には、可溶体部ユニット400の端子部300を挿通可能な下端孔528を備えている。
【0026】
さらに、正面側分割体520には、透明又は半透明の合成樹脂等から構成される視認窓530が形成されている。この視認窓530は、上面壁521に形成された上端窓531と正面壁523に形成された正面窓532を備える。なお、視認窓530は、透明又は半透明の合成樹脂から構成されているが、ハウジング500内部に収容された可溶体部200を視認できるのであれば、任意の素材から構成されてもよい。また、視認窓530は、上端窓531と正面窓532を備えているが、これに限定されず、正面窓532を無くして上端窓531のみを備えてもよい。
【0027】
では次に、可溶体部ユニット400にハウジング500を組み付ける様子について、
図3及び
図4を参照して説明する。なお、
図3(a)は、可溶体部ユニット400にハウジング500を組み付ける状態を示した全体斜視図、
図3(b)は、可溶体部ユニット400にハウジング500を組み付けた状態の全体斜視図、
図4(a)は、可溶体部ユニット400にハウジング500を組み付けた状態の正面図、
図4(b)は当該状態の側面図、
図4(c)は当該状態の平面図である。
【0028】
図3に示すように、可溶体部ユニット400の背面側からハウジング500の背面側分割体510を宛がい、可溶体部ユニット400の正面側からハウジング500の正面側分割体520を宛がい、可溶体部ユニット400の背面側と正面側から挟み込むようにハウジング500を取り付ける。具体的には、可溶体部ユニット400の連結部100を背面側分割体510の上端部511に宛がい、正面側分割体520の上端孔526で挟み込むように取り付けることで、連結部100がハウジング500の上端側から突出した状態で組付けられる。また、可溶体部ユニット400の可溶体部200の背面側を背面側分割体510の凹部512で覆い、可溶体部200の正面側を正面側分割体520の収容空間527で覆うように取り付けることで、可溶体部200がハウジング500内に収容された状態で組付けられる。さらに、可溶体部ユニット400の端子部300を背面側分割体510の下端部513に宛がい、正面側分割体520の下端孔528で挟み込むように取り付けることで、端子部300がハウジング500の下端側から突出した状態で組付けられる。
【0029】
そして、
図4に示すように、可溶体部ユニット400にハウジング500を取り付けた状態では、ハウジング500内に可溶体部200が収容されており、視認窓530の上端窓531から、ハウジング500内部の可溶体部200を視認することができる。また、視認窓530の正面窓532からも、ハウジング500内部の可溶体部200を視認することができる。そして、上端窓531と正面窓532は連続しているので、ハウジング500の上面壁521と正面壁523とが交わる方向からの視点、すなわち、斜め上方の角度から視点(
図4(b)の矢印E参照)からも、ハウジング500内部の可溶体部200を、視認窓530を介して視認することができる。
【0030】
また、視認窓530の上端窓531と正面窓532は、可溶体部200の傾斜部215の正面側に相対するように配置されている。そのため、傾斜部215に位置する溶着部216と接続部217は、上端窓531又は正面窓532から目視しやすく、溶着部216上の低融点金属の溶融状態や、接続部217の溶断状態を確認しやすいのである。
【0031】
では次に、
図5及び
図6を参照して、可溶体部ユニット400をバスバー部600に取り付けたヒューズ700について説明する。なお、
図5(a)はバスバー部600の全体斜視図、
図5(b)はヒューズ700の全体斜視図、
図6(a)はヒューズ700の正面図、
図6(b)はヒューズ700の側面図である。
【0032】
図5(a)に示すように、バスバー部600は、バッテリー等の電源側に接続される入力端子部610と、可溶体部ユニット400が取り付けられる、長尺の薄板状のバスバー本体620とを備える。このバスバー部600の入力端子部610とバスバー本体620は、銅やその合金等の導電性金属からなる、厚さが均一の平坦な板材を、
図1に示すような形状にプレス機等で打ち抜いた後、入力端子部610を屈曲させて、一体形成されている。
【0033】
そして、
図5(b)及び
図6に示すように、複数の可溶体部ユニット400をバスバー部600のバスバー本体620に個別に取り付ける。具体的には、各可溶体部ユニット400の連結部100をバスバー本体620の所定の取り付け位置に宛がい、平坦なバスバー本体620の表面と連結部100との接触面をはんだで代表される溶着等の工法により固定して、各可溶体部ユニット400をバスバー本体620に固定する。各可溶体部ユニット400は、互いに所定間隔をあけてバスバー本体620の下方側に並べて固定されている。そのため、可溶体部ユニット400とバスバー部600とを備えたヒューズ700は、バスバー部600の下側に複数の端子部300を備えた、多連型ヒューズの形態となっている。そして、ヒューズ700を車載のヒューズボックス等に実装すると、バッテリー等の電源等に接続された入力端子部610から入力された電流がバスバー本体620を流れ、下流の各可溶体部ユニット400へ分岐していく。さらに、各可溶体部ユニット400の端子部300に接続された各種電装品に電流を流している。仮に、電気回路等に意図しない過電流が流れた際は、対応する可溶体部ユニット400の可溶体部200が溶断して電気回路を遮断することで、各種電装品及び電気回路を保護しているのである。
【0034】
なお、
図6に示すように、可溶体部ユニット400をバスバー部600に取り付けると、可溶体部ユニット400のハウジング500は、バスバー部600から突出した状態となる。そして、ハウジング500の上面壁521は、ヒューズ700の厚み方向でもある方向Xに沿ってバスバー部600から突出しており、ハウジング500の正面壁523は、ヒューズ700の高さ方向でもある方向Yに沿って延出した状態となる。
【0035】
このように、本願発明のヒューズ700によれば、端子部300と可溶体部200とを備えた可溶体部ユニット400が、バスバー部600とは別体として製造されており、各可溶体部ユニット400を個別にバスバー部600に取り付けている。そのため、可溶体部200の形状を定格に応じて変更する場合は、可溶体部200の形状を変更した可溶体部ユニット400を別途用意して、バスバー部600に付け替えて固定するだけでよく、他の可溶体部ユニット400やバスバー部600の変更の必要はない。つまり、本願発明は、従来のように、可溶体部200と端子部300とバスバー部600を一枚の金属板から一体形成していないので、可溶体部200の形状を定格に応じて変更したとしても、その設計変更の影響は、当該可溶体部200を備えた可溶体部ユニット400までに留まり、その他の可溶体部ユニット400やバスバー部600に影響を与えないのである。そのため、定格を変更する場合は、定格の異なる可溶体部ユニット400を準備してバスバー部600に取り付けるだけで、所望のヒューズ700を容易に、かつ短期間に製造できる。また、ヒューズ700に求められる多岐に渡る仕様(例えば、端子部300の数や大きさの変更、バスバー部600の形状の変更など)に対応する場合でも、可溶体部ユニット400やバスバー部600を、仕様に応じて個別に付け替えて変更するだけでよく、所望のヒューズ700を容易に、かつ短期間に製造できる。さらに、形状が変更される可溶体部200を備えた可溶体部ユニット400を、バスバー部600と別体として製造することで、可溶体部ユニット400とバスバー部600は、それぞれ最適な形状に個別に設計ができ、全体して歩留まりが向上するのである。
【0036】
また、端子部300と可溶体部200とを備えた可溶体部ユニット400が、バスバー部600とは別体として製造されているので、可溶体部200を構成する部分には、溶断性能を確保するために抵抗値が比較的高い金属材料を利用し、電流を各可溶体部ユニット400に分配する役割のバスバー部600は、効率的に電流を流すために抵抗値が比較的低い金属材料を利用できる。
【0037】
また、各可溶体部ユニット400を、他の可溶体部ユニット400及びバスバー部600と別体として構成したことで、
図1に示すような、可溶体部ユニット400の可溶体部200の細かい加工が容易に行える。具体的には、
図1及び
図6に示すように、可溶体部200の定格が変更になった場合は、可溶体部200の一部を、高さ方向Yに縮むように、かつ、バスバー本体620の表面(又は、連結部100の表面)から突出するように、屈曲した曲部212を形成するという細かい加工が、各可溶体部ユニット400ごとに容易に行える。これにより、可溶体部200は、全体として、高さ方向Yに縮むように構成されているので、定格が変わっても、高さ方向Yの大きさが大きくなることを防止できる。特に、曲部212の屈曲の程度を調節することで、高さ方向Yの大きさを調節できることから、定格が異なる各可溶体部ユニット400の高さを揃えることもできる。
【0038】
さらに、可溶体部200の一部を、ヒューズ700の高さ方向Yに縮むように、かつ、バスバー部600の表面(又は、連結部100の表面)から突出するように構成したことで、可溶体部200が溶断したか否かの確認が行いやすくなる。
図7に示すように、従来のヒューズ900の可溶体部930は、ヒューズ900の高さ方向に直線状に延出しているため、上方向からでは、バスバー部920によって可溶体部930が隠れてしまい、可溶体部930を目視にて確認することは難しかった。さらに、複数のヒューズ900をヒューズボックス等に並べて配置した場合は、可溶体部930が他の隣接するヒューズ900によって遮られて、上方向又は斜め上方から可溶体部930を確認することは難しかった。しかしながら、本願発明によれば、
図4に示すように、可溶体部200の一部を、高さ方向Yに縮むように、かつ、バスバー部600の表面(又は、連結部100の表面)から突出するように構成したことで、複数のヒューズ700をヒューズボックス等に並べて配置したとしても、上方向又は斜め上方の視点から(矢印E参照)、可溶体部200を目視にて確認できることから、可溶体部200が溶断したか否かの確認が行いやすいのである。
【0039】
また、可溶体部ユニット400が可溶体部200を保護するハウジング500を備える場合であっても、ハウジング500は、バスバー部600のバスバー本体620の平坦な表面から突出しており、そのハウジング500の上面壁521は、内部の可溶体部200を視認可能な視認窓530(上端窓531)を備えているので、上方向から可溶体部200が溶断したか否かの確認が行いやすいのである。さらに、視認窓530(正面窓532)は、ハウジング500の正面壁523へ延出しているので、上方向及び斜め上方からでも、可溶体部200が溶断したか否かの確認が行いやすいのである。なお、各可溶体部ユニット400は、視認窓530が形成されたハウジング500を備えているが、これに限定されず、例えば、ヒューズ700が、
図7に示す従来のヒューズ900と同様に、バスバー部600及び各可溶体部ユニット400を覆うハウジングを備えており、そのハウジングが各可溶体部ユニット400の可溶体部200に対応する位置に視認窓530を備えていてもよい。
【0040】
なお、本願発明のヒューズは、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。