(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】草刈装置
(51)【国際特許分類】
A01D 34/835 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A01D34/835
(21)【出願番号】P 2021023580
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】中村 太秋
(72)【発明者】
【氏名】天間 修一
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05375398(US,A)
【文献】米国特許第03543489(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0206402(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0131573(US,A1)
【文献】特開2000-083435(JP,A)
【文献】特開2000-139156(JP,A)
【文献】米国特許第03545184(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1349971(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/835
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体Tに取り付けられる草刈装置であって、
前記草刈装置は、進行方向に延ばした第1フレームと、
前記第1フレームに設けた屈曲軸に連結して、前記第1フレームに対して旋回可能に設けた第2フレームと、
前記屈曲軸付近に設け、前記第1フレームに対する前記第2フレームの旋回を固定する固定部と、
前記第2フレームに設け、前記屈曲軸より進行方向の前方に先端部を突出させるとともに、前記先端部を前記屈曲軸より進行方向に対する幅方向の側方に位置させた検知部材と、
前記第2フレームに設けた支点軸によって旋回可能に設けるとともに対地作業が可能な作業部を有した作業アームと、
を備え、
前記固定部は、前記検知部材に外力が加えられると前記第1フレームに対する前記第2フレームの旋回の固定を解除することが可能な構成である、
ことを特徴とした草刈装置。
【請求項2】
前記検知部材は前記先端部から前記支点軸付近を経由して前記屈曲軸付近まで延長させた周縁部と、
を備えることを特徴とした請求項
1に記載の草刈装置。
【請求項3】
前記作業アームは、前記第2フレームの長手方向を境にした第1作業領域B及び第2作業領域Cに旋回可能である、
ことを特徴とした請求項1
又は2に記載の草刈装置。
【請求項4】
前記作業アームは、前記第2フレームを前記屈曲軸で旋回させた状態で、前記第1作業領域B及び前記第2作業領域Cに旋回可能な構成である、
ことを特徴とした請求項
3に記載の草刈装置。
【請求項5】
前記第1フレームは、前記走行機体Tに装着した取付用フレームに取り付け可能な取付部と、を備え、
前記第2フレームは前記屈曲軸を支点に旋回することによって、前記第2フレーム及び前記検知部材は前記取付部の前方に位置する、
ことを特徴とした請求項1乃至
4のいずれかに記載の草刈装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行機体に装着される草刈装置に関する。特に、障害物の周囲で作業が可能な草刈装置の緩衝機構に関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向に移動可能な作業部を設け、この作業部に障害物等が衝突した場合に、作業部が後方側に押されて旋回する緩衝機構を設けた草刈機が特許文献1によって示されている。この草刈機は、メインカッターを有する走行車本体の側方に、サブカッターを有する移動体を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の草刈機は、作業部であるサブカッターを有する移動体に障害物が当たると、後方側に移動することで緩衝が可能である。しかし、移動体の前方に位置するとともに移動体を支える基部である揺動体に障害物が当たった場合は、基部である揺動体が損傷するという課題を有する。
【0005】
したがって、本発明は上記課題に着眼してなされたものであり、障害物の周囲で作業ができる草刈装置であって、障害物との衝突時に作業部の基部及び障害物を損傷させることがない草刈装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、走行機体に取り付けられる草刈装置であって、草刈装置は、進行方向に延ばした第1フレームと、第1フレームに設けた屈曲軸に連結して、第1フレームに対して旋回可能に設けた第2フレームと、屈曲軸付近に設け、第1フレームに対する第2フレームの旋回を固定する固定部と、第2フレームに設け、屈曲軸より進行方向の前方に先端部を突出させるとともに、先端部を屈曲軸より進行方向に対する幅方向の側方に位置させた検知部材と、第2フレームに設けた支点軸によって旋回可能に設けるとともに対地作業が可能な作業部を有した作業アームと、を備える草刈装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、障害物の周囲で作業ができる草刈装置であって、障害物との衝突時に作業部の基部及び障害物を損傷させることがない草刈装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態を示す草刈装置の進行方向前方から見た正面図である。
【
図2】実施形態を示す草刈装置の進行方向左側から見た側面図である。
【
図3】実施形態を示す草刈装置の平面図であり、作業部が第1作業領域に位置している状態を示す。
【
図4】実施形態を示す草刈装置の平面図であり、作業部が第2作業領域に位置している状態を示す。
【
図5】実施形態を示す草刈装置の作業部の作業領域を切り換える様子を示した説明図であり、第1作業領域から第2作業領域に切り換える場合を示す。
【
図6】実施形態を示す草刈装置の固定部を進行方向で断面した側面断面図である。
【
図7】実施形態を示す草刈装置が柱状の障害物に衝突したときを示す説明図であり、(a)は障害物に衝突する瞬間で第2フレームが作業位置の状態であり、(b)は障害物に衝突後に第2フレームが退避位置に旋回している途中の状態であり、(c)は障害物に衝突後に第2フレームが退避位置に旋回しストッパに接触した状態を示す。
【
図8】実施形態を示す草刈装置が壁状の障害物に衝突したときを示す説明図であり、(a)は障害物に衝突する瞬間で第2フレームが作業位置の状態であり、(b)は障害物に衝突後に第2フレームが退避位置に旋回している途中の状態であり、(c)は障害物に衝突後に第2フレームが退避位置に旋回しストッパに接触した状態を示す。
【
図9】実施形態を示す草刈装置を取付フレームに取り付けるとともに、取付フレームを走行機体に装着した状態の一例を示した平面図である。
【
図10】実施形態を示す草刈装置を取付フレームに取り付けるとともに、取付フレームを走行機体に装着した状態の一例を示した背面図である。
【
図11】実施形態を示す草刈装置の固定部の変形例を進行方向で断面した側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。説明においては、
図1に示す誌面左側を進行方向に対する右側、誌面右側を進行方向に対する左側、
図2に示す誌面左側を進行方向前方側、誌面右側を進行方向後方側、
図3及び
図4及び
図5及び
図7及び
図8に示す誌面左側を進行方向に対する前方側、誌面右側を進行方向に対する後方側、誌面上側を進行方向に対する右側、誌面下側を進行方向に対する左側として説明する。また、説明において上方向とは、作業面である地面側から離れる方向を指し、下方向とは地面側に近づく方向を指す。図面の記載において、同一または類似の部分には同一又は類似の符号を付して、その説明を省略することがある。加えて、説明に用いる図面は模式的なものであり、各部の寸法との関係等は現実のものとは異なることがある。また、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
草刈装置1は、単一又は複数の取付用フレームAにより、トラクタ等からなる走行機体Tに取り付けられる。
図9及び
図10は、走行機体Tの後方に取り付けた複数の取付用フレームAで構成されたシリンダ等によって伸縮自在あるいは屈折自在なブーム装置からなる取付用フレームAに、草刈装置1を取り付けた一例を示す。図示した取付用フレームAによって、草刈装置1を走行機体Tに対して、前後左右上下のあらゆる方向に配置が可能である。
【0011】
図1乃至4に示す草刈装置1は、取付用フレームAに取り付けるための取付部10、取付部10に固定し進行方向前方に長手部21を延ばした第1フレーム20、第1フレーム20に連結するととともに第1フレーム対して水平方向に旋回可能な第2フレーム30、第2フレーム30に対し水平方向に旋回可能であるとともに、先端部に作業部51を取り付けた作業アーム50、を備える。作業部51には、水平回転する刈刃511を複数備え、刈刃511を回転駆動することによって草刈作業を行う。第2フレーム30の先端部には検知部材60を備え、検知部材60が地上面に存在する障害物ob1,ob2に接触することで、第2フレーム30を水平方向に旋回させることができる。
【0012】
取付部10は、取付用フレームAの先端部に嵌合させることで取付用フレームAに対し一体的に固定が可能であるとともに、この固定を解除すれば取付用フレームAとの固定が解除可能である。すなわち、草刈装置1は取付用フレームAに対して着脱自在である。実施形態では、取付部10の上部に取付用フレームAを固定する。
【0013】
取付部10の進行方向左側である一端部には、第1フレーム20の後端部を固定する。第1フレーム20は長尺の部材であり、長尺方向の長手部21を前方に突出させるように配置する。なお、実施形態での第1フレーム20は角柱状部材あるいは角パイプ状部材を用いている。第1フレーム20の前端部には側面視で板をC字状に形成したホルダ部22を設ける。
【0014】
ホルダ部22には、鉛直方向の軸である屈曲軸40をホルダ部22に貫通させて支持させる。この屈曲軸40に第2フレーム30の後端部を水平方向に旋回可能に連結する。第2フレーム30は長尺の部材であり、長尺方向を前方に突出させるように配置する。実施形態での第2フレーム30は角柱状部材あるいは角パイプ状部材を用いている。また、平面視における第2フレーム30は、長尺方向を第1フレーム20の長尺部21と平行に配置した作業位置と、長尺方向を第1フレーム20の長尺部21と傾斜させるように水平方向に旋回させた退避位置とに旋回が可能である。退避位置は、作業位置から取付部10側に水平旋回させて傾斜させた位置が相当し、
図7に示す(b)と(c)、
図8に示す(b)を(c)が相当する。
【0015】
図7の(c)及び
図8の(c)に示すように、退避位置側に旋回した第2フレーム30は、取付部10の前部から前方に突出させたストッパ11に第2フレーム30の側面が接触することで、取付部10に第2フレーム30が直接接触しないように規制されている。
【0016】
屈曲軸40の近傍に、第2フレーム30を水平方向への旋回を固定することができる固定部41を設ける。固定部41は、C字状に形成したホルダ部22の下部の板を側方に突出させた板411と、第2フレーム30の後端部から側方に突出させた板412と、固定部材42を備える。
図6は進行方向で断面した固定部41の拡大側面図である。板411,412はそれぞれ孔413,414を設け、この孔413,414は、第1フレーム20及び第2フレーム30の長尺方向が互いに平面視で一直線上に並んだ時に一致する。一致した孔413,414には固定部材42を嵌入させる。実施形態の場合の固定部材42は、
図6に示すように、ボルト421及びナット422からなる。ボルト421及びナット422は、板411,412同士の摩擦が出ない程度に締め込む。
【0017】
固定部材42は、第2フレーム30が屈曲軸40周りに作業位置から退避位置側への旋回を規制し、第2フレーム30を作業位置で固定する。また、第2フレーム30が旋回しようとする力が過大となった場合に、孔413,414が一致状態からずれた時に発生する固定部材42への剪断力で固定部材42を破断させ、第2フレーム30の旋回に対する固定を解除する。すなわち、固定部材42は第2フレーム30の安全装置として機能し、固定の解除後の第2フレーム30は自由に旋回可能である。第2フレーム30が作業位置から退避位置側に旋回可能となるための、固定部材42の解除強度あるいは解除タイミングは、固定部材42の破断強度によって決められる。固定部材42の破断強度は、ボルト421及びナット422の素材強度、形状等によって自由に設定できる。
【0018】
第2フレーム30の前端部には、支点軸31を設ける。支点軸31は鉛直方向の軸であり、第2フレーム30から下方に向けて突出させている。支点軸31の下部には、作業アーム50を設ける。作業アーム50は一端側を支点軸に貫通させて設け、作業アーム50は支点軸31を中心に水平方向に旋回することが可能である。
【0019】
支点軸31で旋回する半径方向に離れる方向の作業アーム50の他端側には、作業部51を設ける。作業部51は、地面上に生えている草を刈る作業が可能な作業部分である。作業部51は、刈刃511、モータ512、カバー部材513を備える。作業アーム50の他端側に設けたモータ512を設け、この下方に配置した刈刃511を回転駆動させる。刈刃511は、複数個設けているとともに、モータ512を軸にして水平方向に回転自在で、モータ511の回転動力を受領して回転する。刈刃511の上方及び作業アーム50の下方には、カバー部材513を設ける。カバー部材513は、平面視において、滴状の板状部材であり、滴状の突起部を支点軸側に向けて配置する。カバー部材513は刈刃によって飛散する刈草の飛散を防止する。実施形態の場合、平面視において、作業アーム50の他端部は支点軸31より後方に位置させるとともに、刈刃511の回転駆動軸となるモータ512は屈曲軸40の側方且つやや後方に位置させるように設けている。
【0020】
作業アーム50は支点軸31周りに水平回動することで、
図3に示す作業部51を第2フレーム30の長手方向を境に区分けした第1作業領域Bと、
図4に示す第2作業領域Cのそれぞれに位置させることができる。それぞれの領域に位置させた作業部51で草刈作業ができる。実施形態における作業領域は、第2フレーム30の長手方向を境に進行方向左方に位置した領域である第1作業領域Bと、第2フレーム30の長手方向を境に進行方向右方に位置した領域である第2作業領域Cとして区分している。
【0021】
第2フレーム30の前端から下方に向けて垂れ下げた板を、後方側に向けてL字状に曲げられた板部材32を設ける。板部材32の下方に位置する水平面321には、上方に向けて棒状の旋回規制体52を設けている。旋回規制体52は、支点軸31の近傍に位置していて、第2フレーム30に接触することによって、第1作業領域B及び第2作業領域Cのそれぞれの領域で第2フレーム30の旋回角度を規制することができる。また、板部材32の水平面321は支点軸31の下端部を保持している。
【0022】
作業アーム50の上方で支点軸31と同軸周りに旋回可能な切換片55を設ける。切換片55は扇状の板部材であり、扇状の要部分を支点軸31と同軸に配置することによって、作業アーム50とは個別且つ独立して、支点軸31を中心に旋回することができる。切換片55の円周方向の一端部には、円弧状の長孔551を設ける。実施形態の場合、長孔551は、一端部側である第1作業領域B側に設けている。長孔551内には旋回規制体52が通される。長孔551の円弧の中心は扇状の要部分であるとともに、支点軸31と同軸に設けているため、切換片55は長孔551内で旋回自在である。
【0023】
切換片55の他端部には棒状のガイドロッド57が旋回自在に配置されている。ガイドロッド57は、切換片55の他端部に設けたガイドロッド支点部571と、作業アーム50の他端側に設けたガイドロッド保持部572に架け渡すように配置されている。実施形態の場合、ガイドロッド支点部571他端部側である第2作業領域C側に設けている。ガイドロッド保持部572は、ガイドロッド57を軸方向に摺動可能に保持していて、作業アーム50の旋回動作を阻害しない。
【0024】
ガイドロッド57の外周には、作業アーム50を第1作業領域Bまたは第2作業領域Cのいずれか一方側に付勢する付勢体56が配置されている。実施形態の場合、付勢体56は圧縮ばねを用いている。ガイドロッド57は付勢体56がずれないように案内をする役割を持つ。ガイドロッド57のガイドロッド支点部571側には、付勢体規制部573が固着されている。付勢体56は、付勢体規制部573とガイドロッド保持部572の間で伸縮することによって、作業アーム50を付勢する。
【0025】
ここで、切換片55の作用について説明する。切換片55は支点軸31周りに回動することで、付勢体56の付勢方向を転換させ、作業アーム50を第1作業領域Bまたは第2作業領域Cのいずれか一方側に押す。第1作業領域Bまたは第2作業領域Cに位置する作業アーム50は、旋回規制体52に作業アーム50が接触するまで付勢体56に押されて旋回し、接触した位置で旋回が規制される。
【0026】
図3は、第2フレームが作業位置のときであって、作業アーム50及び作業部51が第1作業領域Bに位置している状態を示している。この場合、切換片55のガイドロッド支点部571は、支点軸31より後方且つ第2作業領域C側に位置していて、付勢体56に押されることで、切換片55を平面視で左回転の方向である第2旋回方向Eに旋回させる。切換片55の第2旋回方向Eへの旋回は、長孔551の一端部に旋回規制体52が接触するまで行われ、接触後は旋回が規制される。付勢体56は、旋回が規制された切換片55を第2旋回方向Eに付勢し続けるとともに、ガイドロッド保持部572を押すことによって、作業アーム50を平面視で右回転方向である第1旋回方向Dに、作業アーム50が旋回規制体52に接触するまで。旋回させる。第1作業領域Bにおいて、作業アーム50が旋回規制体52に接触した位置を第1作業領域Bでの復帰位置と呼ぶ。
【0027】
このように、第1作業領域Bに位置した作業部51は、切換片55及び付勢体56によって、第1旋回方向Dに付勢されて、第2フレームから遠ざかるように側方に展開させて第1作業領域Bでの復帰位置に位置させることができる。また、作業部51及び作業アーム50は外力によって後方側に押されると、外力に従って第2旋回方向Eに旋回移動する。この時、ガイドロッド保持部572と付勢体規制部573の距離は縮まり、付勢体56は圧縮される。圧縮した付勢体56は反発力を高めた状態となる。ガイドロッド支点部571は、支点軸31とガイドロッド保持部572を結ぶ線分より第2作業領域C側にあるので、上記外力が取り除かれると、付勢体56によって付勢力を受けた作業アーム50は、第1作業領域Bでの復帰位置に復帰する。
【0028】
切換片55及び付勢体56は、
図5に示すように、作業アーム50及び作業部51の展開位置を第1作業領域Bから第2作業領域Cに切り換えることができる。切り換える場合は、例えば作業者が押す等の外力を
図5の(a)の状態の作業アーム50あるいは作業部51に、第2旋回方向Eに向かって与え続ける。作業アーム50を第2旋回方向Eに旋回させ続けると、やがて、作業アーム50及び作業部51は第2作業領域C側に位置する。さらに旋回させ続けると、支点軸31と、ガイドロッド支点部571と、ガイドロッド保持部572が、平面視で一直線上に配置されることとなる。旋回させ続けると、
図5の(b)に示すようにガイドロッド支点部571が、支点軸31とガイドロッド保持部572が結ぶ仮想線分より第1作業領域B側に位置するので、切換片55は付勢体56によって第1旋回方向Dに旋回する。切換片55は、長孔551の他端部に旋回規制体52が接触するまで旋回し、その後、旋回規制体52によって第1旋回方向Dへの旋回が規制される。すると、作業アーム50及び作業部51は
図5(c)に示すように、第2作業領域Cに位置するとともに、付勢体56によって、第2旋回方向Eに向かって付勢される。付勢体56は、旋回が規制された切換片55を第1旋回方向Dに付勢し続けるとともに、作業アーム50を平面視で左回転方向である第2旋回方向Eに、作業アーム50が旋回規制体52に接触するまで旋回させる。この位置を第2作業領域Cでの復帰位置と呼ぶ。
【0029】
第2作業領域Cに位置した作業部51は、切換片55及び付勢体56によって、第2旋回方向Eに付勢されて、第2フレームから遠ざかるように展開させて第2作業領域Cでの復帰位置に位置させることができる。また、作業部51及び作業アーム50は外力によって後方側に押されると、外力に従って第1旋回方向Dに旋回移動するが、この外力が取り除かれると、第2作業領域Cでの復帰位置に復帰する。第2作業領域Cに位置した作業部51を第1作業領域Bに移動させるには、上記した手順と類似しているので、この説明は省略する。
【0030】
切換片55を用いることによって、1つの作業部51を第1作業領域B又は第2作業領域Cのいずれか一方に展開させるとともに、それぞれの展開位置に応じた復帰位置に向くように、付勢体56の付勢力の方向を変えることができる。
【0031】
第2フレーム30の下方には、検知部材60が固着されていて、詳細には、側面視L字状の板部材32の水平面321の下面に固定され、後端部は作業アーム50の下方に位置するように設ける。検知部材60は、平面視において、く字状あるいはL字状に設けた板部材である。平面視における検知部材60の一端側の先端部61は、取付部10の前方に位置するように第2フレーム30の側方である第2作業領域C側に突出させ、且つ、第2フレーム30の前端より前方側に突出するように設けている。すなわち、平面視において、検知部材60の先端部61は、屈曲軸40の進行方向幅方向に対する側方側に位置させているとともに取付部10の前方に位置している。
【0032】
検知部材60先端部61から続く前方側の周縁は、平面視において、後方に向かうにつれて第1作業領域B側に向かうように傾斜している。そして、検知部材60の平面視における中間部は、第1作業領域B側に突出させるように設ける。検知部材60の先端部61及び先端部61から続く前方側の周縁部62に、
図7に示すような草刈装置1の全幅より小さな障害物ob1が衝突することによって、障害物ob1を草刈装置1に対して相対的に後方側に案内するとともに、第2フレーム30を屈曲軸周りに旋回させることができる。
【0033】
検知部材60の周縁部62は、中間部で第2フレーム側に湾曲させ、後端部を屈曲軸近傍の第1作業領域Bに位置させるように設ける。このようにすることで、草刈装置1の前進と共に前方から相対的に移動してくる障害物ob1を後方側に案内するとともに、障害物ob1が支点軸31及び屈曲軸40へ接触することを防ぐ。すなわち、周縁部62によって、作業アーム50の支点軸31周りの旋回、及び、第2フレーム30の屈曲軸周りの旋回を阻害しない。
【0034】
検知部材60の先端部61から続く周縁部62には、棒材からなるガイド部材63を取り付けている。ガイド部材63によって、障害物ob1等が周縁部62に直接接触するよりも、滑らかに障害物ob1等を相対的な後方側に向かうように案内することができる。実施形態の場合、検知部材60の周縁部62は、ガイド部材63を含めて、周縁部62と呼称する。
【0035】
草刈装置1が支柱等の作業部に対して比較的小さな障害物ob1に衝突した場合の動作を、
図7を用いて説明をする。
図7において作業部51は、第1作業領域Bに位置しているものとして説明する。草刈装置1は、回転する刈刃511を作業面に対向させながら前進することによって、作業面上の草を刈る作業を行う。作業面上には岩、支柱、壁面等の容易に移動させることができない、且つ、草刈装置1の全幅より小さな障害物ob1が存在することがある。
【0036】
第2フレーム30及び取付部10の前方に、障害物ob1が存在する場合、まず初めに、検知部材60の前縁部である周縁部62に接触する。
図7(a)は、周縁部62の内、先端部61に障害物ob1が衝突したものとして示している。先端部61は取付部10の前方側に配置されているので、障害物ob1が取付部10に到達することがない。また、検知部材60は第2フレーム30の前方に突出しているので、障害物ob1が第2フレーム30及び作業部51に直接衝突しない。
【0037】
検知部材60に接触した障害物ob1は、草刈装置1の前進に伴い、さらに相対的な後方側に移動しようとする。すると、障害物ob1が接触したことによって、進行方向後方側に外力を受けた先端部61は、第2フレーム30より側方の第2作業領域Cに位置しているので、第2フレーム30を、屈曲軸40を中心として第2作業領域C側に旋回させる力を発生させる。すなわち、第2フレーム30を作業位置から退避位置側に旋回させる力を発生させる。障害物ob1との接触によって、第2フレーム30を退避位置側に旋回させる力の発生は、
図7の(a)に示した検知部材60の先端部61以外に衝突してもよい。例えば、平面視で第2フレーム30の長手方向の前方に位置する検知部材60の周縁部62に接触してもよい。この場合、検知部材60の前縁である周縁部62は、平面視において、後方に向かうにつれて第1作業領域B側に向かうように傾斜しているので、検知部材60に対して後方に向けて衝突したことによって発生した外力の分力が、第2フレーム30を屈曲軸40中心に、退避位置側に旋回させる力となる。
【0038】
第2フレーム30は退避位置側に旋回させる力を受けると、第2フレーム30が旋回しようとする。作業位置において、第2フレーム30に設けた固定部41の孔414は、平面視で、第1フレーム20側に設けた固定部41の孔413に対して一致状態からずれようとする。孔413,414に嵌入された固定部材42を剪断させる剪断力を発生させる。剪断力が固定部材42の破断強度より小さければ、孔413,414同士の位置ずれに対して固定部材42が障害となり、孔413,414同士の位置ずれが起きない。したがって、第2フレーム30は、第1フレームに対して屈曲軸40周りに旋回しない。これに対して、剪断力が固定部材42の破断強度より大きければ、この剪断力によって固定部材42を剪断によって破断させる。孔413,414は位置を固定する固定部材42の破断によって固定が解除されるので、第2フレーム30は第1フレーム20に対して、自由に屈曲軸40周りに旋回可能な状態となる。
【0039】
固定部材42の破断後、草刈装置1がさらに前進を進めると、第2フレーム30は
図7の(a)から
図7の(b)のように変化する。
図7の(b)に示す第2フレーム30は退避位置側に旋回させる力を受けているので、退避位置側にさらに旋回をする。草刈装置1の前進及び第2フレーム30の旋回に伴い、障害物ob1は検知部材60あるいはガイド部材63の前方の周縁部30を摺動しながら、相対的に検知部材60の先端部61から中間部を経由し後端部側に移動する。
【0040】
草刈装置1がさらに前進を進めると、障害物ob1の押圧によって第2フレーム30の旋回が進んで、
図7の(b)から
図7の(c)に示すように変化する。第2フレーム30の退避位置側への旋回は、
図7の(c)に示すように、ストッパ11によって規制されているため、規制部分であるストッパ11より取付部10側へ旋回はしない。作業部51は、第2フレーム30がストッパ11に接触している状態において、検知部材60より前方に突出する場合がある。しかし、作業部51は支点軸31に対して旋回自在に設けているため、障害物ob1が周縁部30に沿って後端部に相対移動して作業部51のカバー部材513に接触した際に、障害物ob1に押されて作業部51を後方側に旋回させることができる。
図7の(c)に示す作業部51は、旋回することによって、第2フレーム30に対して、第1作業領域Bから第2作業領域C側に移動している。
【0041】
草刈装置1を左右方向に移動させるとともに前進することで障害物ob1を通過後、あるいは障害物ob1を草刈装置1の周囲から取り除いた後、再び第2フレーム30を作業位置まで戻して固定部材42で固定すると、作業位置での固定ができる。草刈装置1は再度、作業を続行させることができる。
【0042】
作業面に存在する移動できない物体は障害物ob1とは限らず、
図8に示すような草刈装置1の全幅より広い壁状の障害物ob2が存在することもある。
図8を用いて、草刈装置1を使用した作業に基いて、壁状の障害物ob2に衝突した場合の説明をする。
【0043】
第2フレーム30及び取付部10の前方に、障害物ob2が存在する場合、
図8の(a)のように、まず初めに検知部材60の周縁部62の先端部61に接触する。先端部61は取付部10の前方側に配置されているので、障害物ob2が取付部10に到達することがない。また、検知部材60は第2フレーム30の前方に突出しているので、障害物ob2が第2フレーム30及び作業部51に直接衝突しない。
【0044】
検知部材60に接触した障害物ob2は、草刈装置1の前進に伴い、第2作業領域Cに位置している先端部61を草刈装置1の後方側に押す。第2フレーム30は屈曲軸40を中心として、第2作業領域C側に旋回させる力を発生させる。すなわち、第2フレーム30を作業位置から退避位置側に旋回させる力を発生させる。
【0045】
第2フレーム30は退避位置側に旋回させる力を受けると、第2フレーム30が旋回しようとする。固定部41の孔414は、孔413に対して一致状態からずれようとすることで、固定部材42に対して剪断させる剪断力を発生させる。さらに第2フレーム30を退避位置側に旋回させる力が増すことで剪断力も増し、やがて、固定部材42が剪断され破断に至る。孔413,414は位置を固定する固定部材42の破断によって固定が解除されるので、第2フレーム30は第1フレーム20に対して、屈曲軸40周りに自由に旋回可能な状態となる。
【0046】
固定部材42の破断後、草刈装置1がさらに前進を進めると、第2フレーム30は
図8の(a)から
図8の(b)のように変化する。
図8の(b)に示す第2フレーム30は、退避位置側に旋回させる力を受けているので、退避位置側にさらに旋回をする。第2フレーム30の屈曲軸40周りの旋回に伴い、作業部51は屈曲軸40に対して前方側に移動する。しかし、作業部51は支点軸31に対して旋回自在に設けているため、障害物ob2が作業部51のカバー部材513に接触した際に、障害物ob2に押されて作業部51を後方側に旋回させる。
【0047】
さらに、
図8の(b)の状態から草刈装置1の前進を続けると、
図8の(c)に示すように変化する。第2フレーム30の退避位置側への旋回は、ストッパ11によって規制されて止まる。ストッパ11により、第2フレーム30は取付部10に接触しない。第2フレーム30と一体となって旋回する検知部材60は、障害物ob2との接触位置を先端部から中間部へと遷移させる。第2フレーム30の旋回がストッパ11によって規制されても、障害物ob2は、第1フレーム20及び、取付部10と接触することがない。
【0048】
図8の(c)に示す作業部51は、第2フレーム30の旋回に伴って前方側に移動しようとするものの、支点軸によって旋回自在な状態であるので、草刈装置1の後方側に旋回する。作業部51は第2フレーム30に対して、第1作業領域Bから第2作業領域C側に移動する。草刈装置1が壁状の障害物ob2と衝突し、第2フレーム30の退避位置側へ規制位置まで旋回すると、草刈装置1の前方側の前端は、検知部材60及びカバー部材513となっている。
【0049】
以上のように構成した草刈装置1は以下の効果を奏する。障害物ob1,ob2が草刈装置1の前方側から衝突しようとしても、検知部材60によって固定部分である取付部10には直接衝突することがない。検知部材60が作業部51に先駆けて障害物ob1,ob2に衝突することによって、衝突した力である外力を第2フレーム30が旋回する力に変えるとともに第2フレーム30を旋回させる。これにより、作業部51を支えるフレームである第1フレーム20及び第2フレーム30の破損を防止できる。第2フレーム30は、検知部材60を介して第2フレーム30に退避位置に旋回することができるので、障害物ob1,ob2が直接的に第2フレーム30に接触することをせずに、衝撃を緩和させることができる。検知部材60の先端部61を平面視において、屈曲軸40に対して側方側にオフセットさせているので、先端部61で障害物と接触した力を、第2フレームを退避位置側に旋回させる力にできる。検知部材60の前方側の周縁部62は、平面視において、前方から後方にかけて傾斜しているので、先端部61以外の周縁部62に障害物が衝突しても、衝突した外力を第2フレーム30が退避位置側に旋回する力にできる。
【0050】
固定部材42によって、作業位置に固定し続けるとともに、定められた旋回力が発生すると作業位置での固定を解除し、第2フレーム30を旋回自由な状態にさせることができる。したがって、固定部材42は第2フレーム30を作業位置から退避位置に不用意に旋回させることがない。また、固定部材42での固定が解除された第2フレーム30は、抵抗なく退避位置に旋回することができるので、障害物ob1,ob2と草刈装置1と互いに押し付けることによる、それぞれが損傷することを防ぐことができる。
【0051】
作業部51は支点軸31周りに水平旋回が自在となるように設けているので、第2フレーム30を旋回動作によって前方に突出したとしても、作業位置から後方側である退避位置に旋回動作することによって、作業部51及び障害物ob1,ob2の破損を防止できる。また、第2フレーム30が作業位置において、作業部51のみに障害物ob1,ob2が衝突しても、作業部51が水平旋回して後方に退避することで、障害物ob1,ob2との押圧状態を回避し、互いの損傷を防ぐことができる。また、第1フレーム20及び第2フレーム30に過度の衝撃を加えることがない。
【0052】
作業部51は支点軸31によって、第2フレーム30の旋回位置によらず旋回自在であるので、障害物ob1,ob2に押されて、第1作業領域Bから第2作業領域C側に旋回することで、障害物ob1,ob2との押圧状態を回避し、互いの損傷を防ぐことができる。ストッパによって第2フレーム30の旋回が規制された状態でも、検知部材60が平面視で取付部10の前方側を覆うので、取付部10を障害物ob1,ob2から保護することができる。第2フレーム30及び作業部51は旋回可能な状態であるので、障害物ob1,ob2に衝突した場合に、第2フレーム30及び作業部51のそれぞれが旋回動作をすることによって、衝撃を緩和させることができる。
【0053】
以上の構成としたので、障害物ob1,ob2の周囲で作業ができる草刈装置1は、第2フレーム30及び作業アーム50が旋回することによって、作業部51の旋回基部となる第1フレーム20及び第2フレーム30が障害物ob1,ob2に衝突して破損することを防ぐことができる。さらに、第2フレーム30及び作業アーム50が旋回することで、障害物ob1,ob2自体の衝突による損傷を防ぐことができる。
【0054】
上記した固定部41の変形例として、
図11に示すように、ボルト421及びナット422を用いない固定部材42aを有した固定部41aとすることもできる。固定部41aは、第1フレーム20のホルダ部22の下部の板を側方に突出させた板411aと、第2フレーム30の後端部から側方に突出させた板412aと、固定部材42aを備える。板411aには貫通孔413aを設け、板412aの上方に位置する板412aには上方に窪んだ孔414aを設ける。変形例における孔414aは円錐状の孔である。貫通孔413aには筒部材423aが嵌め入れられていて、内部にボール422aが入れられている。ボール422aはバネである弾性体421aによって、孔414aに向かうように押されている。
【0055】
孔414aに嵌まり込んだボール422aによって、第2フレーム30側に固定された板412aは第1フレーム20側に固定された板411aに対して固定される。結果、第2フレーム30は第1フレーム20に対する旋回が固定される。
【0056】
第2フレーム30が屈曲軸40周りに作業位置から退避位置側へ旋回しようとする力が過大となった場合、孔414aの窪みがボール422aを弾性体421a側に押し退けることによって、板411aに対して板412aが移動可能になる。結果、第2フレーム30は第1フレーム20に対しての固定が解除され、旋回動作が可能となる。第2フレーム30が作業位置から退避位置側に旋回可能となる固定部材42aの解除強度あるいは解除タイミングは、固定部41aが有する孔414aの形状やボールの寸法、弾性体421aの強度等を調整することで、自由に設定できる。
【0057】
図11に示す変形例の固定部41aを使用した場合、ボルト421及びナット422を使用した場合に比べ、第2フレーム30が作業位置から退避位置に旋回した後に、再度ボルト421及びナット422等を設置させる必要がないので、容易に作業位置に復帰させることができる。
【0058】
本発明は、上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示に基づく実施形態、実施例及び運用技術の改変は、特許請求の範囲に記載された範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 草刈装置
10 取付部
11 ストッパ
20 第1フレーム
30 第2フレーム
31 支点軸
40 屈曲軸
41 固定部
42 固定部材
41a 固定部
42a 固定部材
50 作業アーム
51 作業部
52 旋回規制体
55 切換片
56 付勢体
60 検知部材
ob1 障害物
ob2 障害物
A 取付用フレーム
T 走行機体