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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】弁装置の弁体作動機構
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/24 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
F16T1/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021027331
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128877
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】水口 卓
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-030792(JP,A)
【文献】特公昭48-004331(JP,B1)
【文献】特公昭48-027648(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、
前記弁体に一体形成されたシャフト部材と、
液体の液位を検知するフロートと、
一端が前記フロートに連結されて、前記フロートで検知された液位に基づいて前記弁体を作動させる作動部材と、
前記作動部材の他端に連結されて、前記シャフト部材に駆動力を付与する動力伝達部材と、を備え、
前記作動部材は、互いに回動自在に連結された複数のリンク部材と単一のばね部材とを有し、
前記シャフト部材に駆動力が作用されることで前記弁体が開弁方向に押圧されて弁シートから離間し、駆動力が解除されることで前記弁体が閉弁方向に移動して前記弁シートに着座する弁装置の弁体作動機構であって、
前記動力伝達部材に、駆動力が解除された際に前記シャフト部材に係合して前記弁体を閉弁方向に移動させて前記弁シートに着座させる閉弁構造が形成されている弁装置の弁体作動機構。
【請求項2】
請求項1に記載の弁体作動機構において、前記シャフト部材は、一端部に前記弁体が設けられ、他端部に鍔状に延びるフランジ部が設けられ、
前記閉弁構造に、前記フランジ部に係合して前記弁体を閉弁方向に移動させる係合部が設けられている弁体作動機構。
【請求項3】
請求項2に記載の弁体作動機構において、前記シャフト部材は、さらに、大径部を有し、
前記閉弁構造に、前記大径部に当接して前記弁体を開弁方向に移動させる当接部が設けられている弁体作動機構。
【請求項4】
請求項3に記載の弁体作動機構において、前記動力伝達部材は、前記シャフト部材が挿通される中空孔を有する筒状の取付部と、前記筒状の取付部から前記シャフト部材の軸方向の一端側に突出したリング部とを有し、
前記リング部の中空孔に、前記シャフト部材における前記フランジ部と前記大径部との間の部分が挿通され、
前記リング部の一端面が前記当接部を構成し、前記リング部の他端面が前記係合部を構成する弁体作動機構。
【請求項5】
流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、前記弁体に一体形成されたシャフト部材と、前記シャフト部材に駆動力を付与する動力伝達部材とを備え、前記シャフト部材に駆動力が作用されることで前記弁体が開弁方向に押圧されて弁シートから離間し、駆動力が解除されることで前記弁体が閉弁方向に移動して前記弁シートに着座する弁装置の弁体作動機構であって、
前記動力伝達部材に、駆動力が解除された際に前記シャフト部材に係合して前記弁体を閉弁方向に移動させて前記弁シートに着座させる閉弁構造が形成され、
前記シャフト部材は、一端部に前記弁体が設けられ、他端部に鍔状に延びるフランジ部が設けられ、
前記閉弁構造に、前記フランジ部に係合して前記弁体を閉弁方向に移動させる係合部が設けられ、
前記シャフト部材は、さらに、大径部を有し、
前記閉弁構造に、前記大径部に当接して前記弁体を開弁方向に移動させる当接部が設けられ、
前記動力伝達部材は、前記シャフト部材が挿通される中空孔を有する筒状の取付部と、前記筒状の取付部から前記シャフト部材の軸方向の一端側に突出したリング部とを有し、
前記リング部の中空孔に、前記シャフト部材における前記フランジ部と前記大径部との間の部分が挿通され、
前記リング部の一端面が前記当接部を構成し、前記リング部の他端面が前記係合部を構成し、
前記リング部に、前記中空孔に連通する切欠が形成されている弁体作動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気のような流体の通路に設けられる機械式の弁装置における弁体の作動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器内に貯留された液体を、蒸気もしくは圧縮空気を駆動流体として用いて加圧し、容器外に液体を排出する液体の圧送装置がある(例えば、特許文献1)。特許文献1のような圧送装置は、ポンピングトラップと呼ばれ、電気が不要の機械式のポンプである。ポンピングトラップは、電気が不要であるので、例えば、電源供給が困難な区域に適用できる利点がある。
【0003】
特許文献1のような圧送装置における駆動流体Fの流れを図8(A)で説明する。容器内の液体の液位WLが上がると、二点鎖線で示すように、駆動弁(吸入弁)100が上昇して開くとともに、排出弁(排気弁)102が上昇して閉まり、駆動流体Fが導入され、液体が圧送される。液体の液位が下がると、実線で示すように、駆動弁100が閉まるとともに、排出弁102が開き、駆動流体Fが排出される(図8(A))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-029187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、駆動弁100を閉弁させるのに作用する力は、駆動流体Fの圧力と駆動弁100の弁体101の自重のみであった。そのため、長期間の使用により弁シート104にスケール等のごみが詰まると、弁体と一体形成されたシャフト106にごみが引っ掛かり、摺動不良を起こしたり、シャフト106が傾いたりすることがある。このようなシャフト106の摺動不良や傾きが発生すると、図8(B)に示すように、弁座部材108に設けられたシャフト保持部110のシャフト孔112にシャフト106が引っ掛かり、駆動弁100が閉弁できなくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、弁体の閉動作を確実に行うことができる弁装置の弁体作動機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の弁装置の弁体作動機構は、流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、前記弁体に一体形成されたシャフト部材と、前記シャフト部材に駆動力を付与する動力伝達部材とを備え、前記シャフト部材に駆動力が作用されることで前記弁体が開弁方向に押圧されて前記弁シートから離間し、駆動力が解除されることで前記弁体が閉弁方向に移動して前記弁シートに着座する弁装置の弁体作動機構であって、前記動力伝達部材に、駆動力が解除された際に前記シャフト部材に係合して前記弁体を閉弁方向に移動させて前記弁シートに着座させる閉弁構造が形成されている。
【0008】
この構成によれば、閉弁構造により弁体の閉弁作動を確実に行うことができる。したがって、長期間の使用により弁シートにスケール等のごみが詰まった場合でも、弁体と一体形成されたシャフト部材の摺動不良や傾きが抑制される。その結果、弁体が閉弁できなくなる不具合を回避できる。また、弁体、シャフト部材、動力伝達部材等を交換することで、既存の弁装置にも適用できる。
【0009】
本発明において、前記シャフト部材は、一端部に前記弁体が設けられ、他端部に鍔状に延びるフランジ部が設けられ、前記閉弁構造に、前記フランジ部に係合して前記弁体を閉弁方向に移動させる係合部が設けられていてもよい。
【0010】
この場合、前記シャフト部材は、さらに、大径部を有し、前記閉弁構造に、前記大径部に当接して前記弁体を開弁方向に移動させる当接部が設けられていてもよい。この構成によれば、簡単な構成で、弁体の閉弁作動を確実に行うことができる。
【0011】
この場合、前記動力伝達部材は、前記シャフト部材が挿通される中空孔を有する筒状の取付部と、前記取付部から前記シャフト部材の軸方向の一端側に突出したリング部とを有し、前記リング部の中空孔に、前記シャフト部材における前記フランジ部と前記大径部との間の部分が挿通され、前記リング部の一端面が前記当接部を構成し、前記リング部の他端面が前記係合部を構成してもよい。これらの構成によれば、簡単な構成で、弁体の閉弁作動を確実に行うことができる。
【0012】
この場合、前記リング部に、前記中空孔に連通する切欠が形成されていてもよい。この構成によれば、シャフト部材の組付けが容易になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弁装置の弁体作動機構によれば、閉弁構造により弁体の閉弁作動を確実に行うことができるので、長期間の使用により弁シートにスケール等のごみが詰まった場合でも、弁体と一体形成されたシャフト部材の摺動不良や傾きが抑制され、弁体が閉弁できなくなる不具合を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る弁体作動機構を備えた弁装置を搭載した液体の圧送装置を示す概略構成図である。
図2】同圧送装置の図1とは異なる状態を示す概略構成図である。
図3】同圧送装置を示す縦断面図である。
図4】同圧送装置の駆動弁を示す縦断面図である。
図5】同駆動弁の弁体、シャフト部材および動力伝達部材を示す斜視図である。
図6】同駆動弁の弁体およびシャフト部材を示す斜視図である。
図7】(A)~(D)は、同弁装置の動作を説明する要部の縦断面図である。
図8】(A)は従来の弁装置の正常状態を示す縦断面図で、(B)は異常状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1および図2は本発明の第1実施形態に係る弁体作動機構を備えた弁装置が搭載された液体の圧送装置を示す概略構成図である。同圧送装置1は、容器2内に貯留された液体Wを、容器2内に導入された駆動流体Fにより加圧して容器2外に排出する。図1は液体Wが流入している状態を示し、図2は液体Wが排出されている状態を示す。本実施形態の液体Wは、水、詳細には、蒸気配管、蒸気機器などからの復水である。また、本実施形態の駆動流体Fは蒸気である。
【0016】
容器2に、液体Wが流入する液体流入口4と、液体Wが流出する液体流出口6が設けられている。液体流入口4に液体流入通路8が接続され、液体流出口6に液体流出通路10が接続されている。液体流入口4と液体流入通路8との間に流入側逆止弁12が接続され、液体流出口6と液体流出通路10との間に流出側逆止弁14が接続されている。
【0017】
容器2の頂部に、容器2内に駆動流体Fを流入させる駆動流体流入口16と、容器2内の駆動流体Fを容器2外に排出する駆動流体流出口18とが設けられている。駆動流体流入口16に駆動流体流入通路17が接続され、駆動流体流出口18に駆動流体流出通路19が接続されている。圧送装置1は、駆動流体流入口16を開閉する弁装置の一種である駆動弁(吸入弁)20と、駆動流体流出口18を開閉する排出弁(排気弁)22とを有している。
【0018】
容器2の内部に、容器2内に貯留された液体Wの液位WLを検知するフロート24が収納されている。駆動弁20および排出弁22は、作動部材26を介してフロート24に連結されている。作動部材26は、公知の構造であり、互いに回動自在に連結された複数のリンク部材26aと単一のばね部材26bとからなる。作動部材26は、フロート24で検知された液位WLに基づいて駆動弁20および排出弁22を作動させる。
【0019】
図1に示す液位WLが低いとき、液体Wに浮いたフロート24も低い位置にある。このとき、作動部材26の作動により、駆動弁20が閉状態となり、排出弁22は開状態となる。つまり、容器2内への駆動流体Fの流入が阻止され、容器2の内部空間が大気に開放される。液位WLが低い状態では、容器2の内部の圧力が低いので、液体流入通路8の液体Wが、流入側逆止弁12を開いて液体流入口4から容器2内に流入する。一方、容器2の内部の圧力が低いことから、流出側逆止弁14は閉止状態である。
【0020】
液体Wが容器2内に流入すると、液位WLが上昇し、これに伴い、フロート24も上昇する。液位WLが規定値を超えると、図2に示すように、作動部材26の作動により、駆動弁20が開状態となり、排出弁22は閉状態となる。つまり、容器2内へ駆動流体Fが流入し、容器内2の駆動流体Fの外部への排出が阻止される。これにより、容器2の内部の圧力が高くなるので、容器内2の液体Wが、流出側逆止弁14を開いて液体流出口6から液体流出通路10を通って容器2外に排出される。一方、容器2の内部の圧力が高いので、流入側逆止弁12は閉止状態となる。
【0021】
液体Wが容器2外に排出されると、液位WLが下降する。これに伴い、フロート24も下降し、図1の状態に戻る。以降、図1の状態と図2の状態が繰り返され、液体Wが圧送される。
【0022】
つぎに、図3~6を用いて、駆動弁20の詳細を説明する。排出弁22(図1)の構造は、図8(A),(B)に示した公知のものと同じであるから、説明を省略する。図3に示すように、容器2に、作動部材26がボルトBにより着脱自在に取り付けられている。作動部材26は、容器2の内側に配置され、その一端にフロート24が取り付けられている。つまり、フロート24は、作動部材26を介して容器2に支持されている。一方、作動部材26の他端に、動力伝達部材28が連結されている。動力伝達部材28は、駆動弁20の後述するシャフト部材32およびこれに一体形成された弁体36に駆動力を付与する。
【0023】
図4に示すように、動力伝達部材28は、筒状の取付部30を有し、シャフト部材32が取付部30から上方に突出している。取付部30の中空部30aに雌ねじ30bが形成されており、作動部材26の他端が雌ねじ30bに螺合されている。雌ねじ30bは、取付部30の中空部30aの下半部に形成されている。本実施形態では、取付部30は、円形の中空孔(中空部)30aが形成された多角柱形状である。動力伝達部材28の詳細は後述する。
【0024】
シャフト部材32は、円柱形の軸体で、図6に示すように、一端部(上端部)に弁体36が一体形成され、他端部(下端部)が図4の取付部30の中空孔30aに軸方向に移動自在に挿通されている。図6のシャフト部材32の他端部に、鍔状に延びる円板形状のフランジ部32aが設けられている。フランジ部32aの外径は、取付部30の中空孔30aの内径よりも小さく設定されている。
【0025】
シャフト部材32は、さらに、フランジ部32aから一端側(上方)に離間した位置に円柱状の大径部32bを有している。本実施形態では、フランジ部32aと大径部32bは同径に構成されている。ただし、フランジ部32aと大径部32bの外径は異なっていてもよい。
【0026】
シャフト部材32は、さらに、フランジ部32aと大径部32bとの間の第1の軸部分32cと、大径部32bと弁体36との間の第2の軸部分32dとを有している。第1の軸部分32cが最も小径で、フランジ部32aと大径部32bが最も大径で、第2の軸部分32dがその中間の外径に形成されている。フランジ部32a、第1の軸部分32c、大径部32b、第2の軸部分32dおよび弁体36は、例えば、鍛造により不可分一体に形成されている。
【0027】
駆動弁20は、容器2に取り付けられた弁座部材34と、弁座部材34に着座する前記弁体36とを有している。本実施形態の弁座部材34は、筒状であり、上方から弁座取付部38と、吐出部40と、シリンダ部42とを有している。本実施形態では、弁座取付部38、吐出部40およびシリンダ部42は、不可分一体に形成されている。
【0028】
図4の弁座取付部38は、円筒形状であり、外周に雄ねじ38aが形成されている。図7(A)に示す容器2に形成された雌ねじ35に雄ねじ38aが螺合されることで、駆動弁20が容器2に着脱自在に取り付けられている。弁座部材34の中空部34aが、駆動流体流入口16を介して駆動流体流入通路17に連通している。つまり、駆動流体流入通路17が、駆動弁20の流入路を構成する。
【0029】
図4に示す弁座取付部38の上面34bが、弁体36が着座する弁シートを構成している。弁体36は、中空部34aの外径よりも大径で、上半部の円錐台と下半部の半球体が一体化された形状である。シャフト部材32の第2の軸部分32dは、中空部34aの外径よりも小径で、中空部34aに軸方向に移動自在に挿通されている。図5の弁体36が着座している状態(閉状態)では、駆動流体Fの中空部34aへの流入が阻止されている。一方、図4の弁体36が弁座から離間している状態(開状態)では、駆動流体Fが中空部34aへ流入する。このように、弁体36は、駆動流体流入口16を開閉する。
【0030】
吐出部40は、弁座取付部38から下方に連接され、弁座取付部38よりも大径の円筒形状である。吐出部40の周壁に、径方向に開口した複数の導出口40aが形成されている。導出口40aは、弁座部材34の内部と容器2(図3)の内部空間とを連通させている。つまり、導出口40aが、駆動弁20の流出路を構成する。導出口40aは、例えば、周方向に離間して6つ設けられる。ただし、導出口40aの数はこれに限定されない。
【0031】
吐出部40の底壁40bに、シャフト部材32が挿通される挿通孔40cが形成されている。吐出部40の挿通孔40cに、シャフト部材32の大径部32bが軸方向に移動自在に挿通される。大径部32bの外径は、吐出部40の挿通孔40cの内径よりも若干小さく設定されている。この大径部32bと吐出部40の挿通孔40cにより、シャフト部材32の径方向への移動および軸心に対する傾きが抑制されている。つまり、大径部32bと吐出部40の挿通孔40cにより、シャフト保持部が構成されている。
【0032】
シリンダ部42は、吐出部40から下方に連接されて吐出部40よりも径方向外方に突出している。本実施形態のシリンダ部42は、吐出部40よりも大径の六角形のナット状である。ここで、「シリンダ部42が吐出部40よりも大径」とは、シリンダ部42の外周面の外接円が吐出部40よりも大径であることをいう。
【0033】
シリンダ部42の中空孔42aに、動力伝達部材28が上下方向に移動自在に収納されている。つまり、動力伝達部材28の外径は、シリンダ部42の中空孔42aの内径よりも若干小さく設定されている。
【0034】
図5に示すように、動力伝達部材28は、さらに、取付部30からシャフト部材32の軸方向の一端側(図5の上側)に離間した半環状のリング部50を有している。リング部50の外形は、取付部30と同径の多角形である。取付部30とリング部50は、取付部30から上方に突出した連結部52により連結されている。取付部30、リング部50および連結部52は、例えば、鍛造により不可分一体に形成されている。
【0035】
連結部52は、取付部30の上面の半分(図5の右上半部)の領域から上方に延びている。つまり、取付部30の上面の残り半分(図5の左下半部)とリング部50との間には空間SPが形成されている。
【0036】
リング部50の中空孔50aに、シャフト部材32の第1の軸部分32cが軸方向に移動自在に挿通されている。つまり、シャフト部材32の第1の軸部分32cの外径は、リング部50の中空孔50aの内径よりも小さく設定されている。また、シャフト部材32の大径部32bの外径およびフランジ部32aの外径は、リング部50の中空孔50aの内径よりも大きく設定されている。
【0037】
したがって、動力伝達部材28が上方に移動すると、リング部50の上面50bが大径部32bに当接する。一方、動力伝達部材28が下方に移動すると、リング部50の下面50cがフランジ部32aに当接(係合)する。換言すれば、リング部50の上面50bが、シャフト部材32の大径部32bに当接して弁体36を開弁方向に移動させる当接部54を構成する。一方、リング部50の下面50cが、シャフト部材32のフランジ部32aに係合して弁体32を閉弁方向に移動させる係合部56を構成する。
【0038】
つまり、動力伝達部材28のリング部50およびシャフト部材32の大径部32bが、シャフト部材32に駆動力が作用されることで弁体36を開弁方向に押圧して弁シート34bから離間させ、駆動力が解除されることで弁体36を閉弁方向に移動させて弁シート34bに着座させる弁体作動機構VMを構成する。、
【0039】
従来の弁体作動機構VMでは、駆動力が解除されると、弁体36は自重で閉弁方向に移動して弁シート34bに着座する。本実施形態の弁体作動機構VMでは、駆動力が解除された際にシャフト部材32に係合して弁体36を閉弁方向(下方)に移動させて弁シート34bに着座させる閉弁構造CMが設けられている。詳細には、動力伝達部材28のリング部50およびシャフト部材32のフランジ部32aが、閉弁構造CMを構成している。
【0040】
リング部50に、中空孔50aに連通する切欠58が形成されている。切欠58は、リング部50における空間SPの上方の領域に形成されており、その開口はシャフト部材32の第1の軸部分32cの外径よりも大きく形成されている。したがって、シャフト部材32は、第1の軸部分32cが切欠58を通過し、フランジ部32aが空間SPを通過することで、動力伝達部材28に容易に装着可能となっている。本実施形態では、切欠58は、径方向外側に向かって開口が大きくなるように形成されている。
【0041】
つぎに、図7(A)~(D)を用いて、本実施形態の駆動弁20の動作を説明する。図7(A)は図2の状態を示している。つまり、液位が上昇し、作動部材26により動力伝達部材28を介してシャフト部材32に上向きの力F1(駆動力)が作用している。詳細には、動力伝達部材28のリング部50の上面50b(当接部54)がシャフト部材32の大径部32bに当接し、シャフト部材32を上方に移動させて弁体36を弁シート34bから離間させる。同時に排出弁22(図2)が閉止される。これにより、駆動流体Fが、駆動流体流入口16から導出口40aを通って容器2内に流入され、図2に示すように容器2から液体Wが排出される。
【0042】
液体Wが排出されて液位WLが下がると、図7(B)に示すように、作動部材26により動力伝達部材28が押し下げられる。このとき、リング部50の下面50c(係合部56)が、シャフト部材32のフランジ部32aに係合(当接)し、シャフト部材32に下向きの力F2が作用する。これにより、シャフト部材32が押し下げられる。
【0043】
シャフト部材32が押し下げられると、図7(C)に示すように、弁体36が弁シート34bに着座する。同時に排出弁22(図1)が開放される。これにより、駆動流体Fの容器2内への流入が阻止され、容器2内に液体Wが流入する。つまり、図7(C)は図1の状態を示している。
【0044】
液体Wが流入して液位が上がると、図7(D)に示すように、作動部材26により動力伝達部材28が押し上げられる。このとき、リング部50の上面50b(当接部54)が、シャフト部材32の大径部32bに当接し、シャフト部材32に上向きの力F1が作用する。これにより、シャフト部材32が押し上げられ、図7(A)の状態となる。以降、図7(A)~(D)の動作が繰り返される。
【0045】
上記構成によれば、動力伝達部材28のリング部50およびシャフト部材32のフランジ部32aからなる閉弁構造CMにより、弁体36の閉弁作動を確実に行うことができる。したがって、長期間の使用により弁シート34bにスケール等のごみが詰まった場合でも、弁体36と一体形成されたシャフト部材32の摺動不良や傾きが抑制される。その結果、弁体36が閉弁できなくなる不具合を回避できる。また、シャフト部材32(弁体36)と動力伝達部材28と弁座部材34を交換することで、既存の弁装置にも適用できる。
【0046】
シャフト部材32の下端部に設けられたフランジ部32aに、動力伝達部材28のリング部50の下面50c(係合部56)が係合して弁体36を閉弁方向に移動させている。これにより、簡単な構成で、弁体36の閉弁作動を確実に行うことができる。
【0047】
さらに、シャフト部材32の大径部32Bに、動力伝達部材28のリング部50の上面50b(当接部54)が当接して弁体36を開弁方向に移動させている。このように、弁体36の開動作にもリング部50を利用することで、弁体作動機構VMの構造を一層簡単にできる。
【0048】
リング部50に中空孔50aに連通する切欠50cが形成されているので、シャフト部材32の動力伝達部材28に対する組付けが容易になる。
【0049】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、ポンピングトラップによる液体圧送装置の駆動弁について説明したが、本発明の弁体作動機構は、バイメタル式のスチームトラップのような弁装置にも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
17 駆動流体流入通路(流入路)
20 駆動弁(弁装置)
28 動力伝達部材
30 取付部
30a 取付部の中空孔
32 シャフト部材
32a フランジ部
32b 大径部
34b 弁シート
36 弁体
40a 導出口(流出路)
50 リング部
50a リング部の中空孔
54 当接部
56 係合部
58 切欠
CM 閉弁構造
VM 弁体作動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8