(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/122 20060101AFI20240125BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20240125BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16K31/122
F16K1/32 A
F16B7/04 301B
(21)【出願番号】P 2022565058
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021031343
(87)【国際公開番号】W WO2022113447
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2020196961
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】八幡 聡太
(72)【発明者】
【氏名】石橋 圭介
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】堀河 裕生
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-121433(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145365(WO,A1)
【文献】特開2017-014928(JP,A)
【文献】実開昭61-029183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/122
F16K 1/32
F16B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路が形成されたバルブボディ内の弁座と当接離間して流体の流通を開閉する弁体を一端部に備る第1ステムを含むバルブユニットと、
前記第1ステムと接続機構によって接続させられる第2ステムを含み、前記バルブユニットに取り付けられる駆動ユニットと、を有するバルブであって、
前記接続機構は、前記第2ステム及び第1ステムのいずれか一方に形成された凹所であって内周面の所定位置に溝が形成された第1凹所と、前記第2ステム及び第1ステムのいずれか他方に形成された第2凹所と、前記第1凹所
及び第2凹所内に収容させられるステムピンと、前
記ステムピンを前記他方側に付勢する付勢部材と、前記第2凹所の側壁を水平に貫通する側壁貫通孔と、当該側壁貫通孔に入るボールとを含み構成され、
前記第2凹所を形成する
前記第2ステム及び第1ステムのいずれかのステム端部を、第1凹所内の所定位置まで挿通すると、前記ステムピンは前記付勢部材によって付勢され第2凹所の所定位置に配置させられ、前記ボールは、前記溝の表面と前記ステムピンの側面とで挟持されて固定され、前記第2ステムと前記第1ステムとが接続固定させられることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記第2凹所とつながり、該第2凹所と直交方向に貫通する貫通孔がさらに形成され、当該貫通孔に挿入される押えピンによって、前記第2ステムと前記第1ステムとの接続が解除されるバルブであって、
前記ステムピンは、前記貫通孔側に細径部を有し、さらに、当該細径部に連なる太径部を有し、前記第2ステムと前記第1ステムとが接続固定された際の前記ボールとの接触面が前記太径部の側面であり、
前記押えピンを前記貫通孔に挿入すると、前記押えピンの側面が前記ステムピンの前記細径部側の端面を前記付勢部材側に押して、前記ボールのステムピンとの接触が前記太径部の側面から離れて、前記第2ステムと前記第1ステムとの接続が解除される請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記溝が環状溝である請求項1または2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記バルブが、ベローズを備えるベローズバルブである請求項1~3のいずれか1項に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブユニットのステム軸と駆動ユニットの駆動軸との接続機構に特徴を有するバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流体を制御するバルブは様々な産業分野で使用されており、これらのバルブは主に流体の通路が形成されて弁体と弁座の当接離間で開閉されるバルブユニットと、弁体の動きを制御する駆動ユニットとから主に構成されている。バルブユニットの弁体はステム軸の先端に取り付けられ、このステム軸は駆動ユニットの駆動軸と種々の接続機構によって連結されている。
【0003】
特許文献1に記載のバルブは、
図6に示す通り、通路108、109が形成された弁箱101に弁座110が形成され、弁座110と当接離間する弁体105は、下弁棒104の下端に取り付けられている。下弁棒104は、ベローズ127内に配置されている。
【0004】
回転操作ハンドル118に取り付けられた上弁棒103が下方に向かって突出し、弁棒昇降用ねじ117a、117bによって、回転操作ハンドル118の回転運動が上弁棒103の上下運動に変換されている。上弁棒103の下端下面には下弁棒嵌入凹所121が、下弁棒104の上端部には環状溝104aが形成され、環状溝104aに嵌まり込むように平行ピン122が水平方向(
図6の表面から裏面に向かう方向)に打ち込まれて、上弁棒103と下弁棒104とは連結させられている。
【0005】
特許文献2に記載のバルブは、
図7に示す通り、第1の流路202b、第2の流路202cが形成されたバルブボディ202にバルブシート203が取り付けられ、バルブシート203と当接離間するダイヤフラム204を変形させるダイヤフラム押え206は、ステム221の下端に取り付けられている。
【0006】
駆動ユニット201Bは、供給流体DGが供給口232から取り入れられて、シリンダ243に送り込まれ、ピストン部材241を上下動させ、ピストンロッド224を上下動させている。ピストンロッド224の下端部に形成された雄ねじ260と、ステム221の上端部に形成された雌ねじ250が螺合することによって、ピストンロッド224とステム221とは連結させられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭62-34275号公報
【文献】特開2020-51447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のバルブで用いられる平行ピンによる連結では、上弁棒と下弁棒の連結を細い平行ピンに担わせているため、バルブの小型化や大きな負荷をかけなければならない場合、平行ピンの折損の可能性が出てくる。特許文献2のバルブで用いられるねじによる連結では、螺合方式のため、ねじを形成するための肉厚を考慮に入れなければならない。そうすると、必然的に雄ねじのねじ径を小さくする必要があり、平行ピンタイプの場合と同様にバルブの小型化や大きな負荷をかけなければならない場合、折損の可能性が出てくる。さらに、ねじタイプの場合はねじの緩みの問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、バルブの小型化に対しても対応することができ、連結部の折損の可能性が低い接続構造を備えたバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(1)は、流体通路が形成されたバルブボディ内の弁座と当接離間して流体の流通を開閉する弁体を下端部に備える第1ステムを含むバルブユニットと、前記第1ステムと接続機構によって接続させられる第2ステムを含み、前記バルブユニットに取り付けられる駆動ユニットと、を有するバルブであって、前記接続機構は、前記第2ステム及び第1ステムのいずれか一方に形成された凹所であって内周面の所定位置に溝が形成された第1凹所と、前記第2ステム及び第1ステムのいずれか他方に形成された第2凹所と、前記第1凹所及び第2凹所内に収容させられるステムピンと、前記第1凹所に収納されステムピンを前記他方側に付勢する付勢部材と、前記第2凹所の側壁を水平に貫通する側壁貫通孔と、当該側壁貫通孔に入るボールとを含み構成され、前記第2ステムを前記第1ステムに対して所定位置まで押し当てると、前記ボールは前記溝に嵌入し、前記ステムピンは前記付勢部材によって付勢されて所定位置に配置させられ、前記ボールは、前記溝の表面と前記ステムピンの側面とで挟持されて固定され、前記第2ステムと前記第1ステムとが接続固定させられることを特徴とするバルブである。
【0011】
本発明(1)のバルブは、接続機構の主たる要素として、ステムピンとボールを用いており、連結部にかかる負荷は主にボールにかかる圧縮荷重となっている。ボールの圧縮応力に対する耐性は非常に高いので、このような接続機構を備えるバルブは、小型化や高負荷要求に対しても十分に対応することができる。また、連結が第2ステムと第1ステムを嵌め合わせるだけのワンタッチでできるので、組み立てが非常に容易になる。さらに、ねじタイプの場合は、締め付けのための工具係止部(二面幅等)が必要であるが、本発明のバルブ(1)ではそのような加工が必要とはならずコストダウンを図ることができる。
【0012】
本発明(2)は、前記第2凹所とつながり、水平に貫通する貫通孔が前記第2ステムまたは第1ステムにさらに形成され、当該貫通孔に挿入される押えピンによって、前記第2ステムと前記第1ステムとの接続が解除されるバルブであって、前記ステムピンは、前記貫通孔側に細径部を有し、さらに、当該細径部に連なる太径部を有し、前記第2ステムと前記第1ステムとが接続固定された際の前記ボールとの接触面が前記太径部の側面であり、前記押えピンを前記貫通孔に挿入すると、前記押えピンの側面が前記ステムピンの前記細径部側の端面を前記付勢部材側に押して、前記ボールのステムピンとの接触が前記太径部の側面から離れて、前記第2ステムと前記第1ステムとの接続が解除される本発明(1)のバルブである。
【0013】
本発明(2)は、押えピンを貫通孔に挿入し第2ステムと第1ステムを離れる方向に力を加えるだけで連結を解くことができるので、従前のピンタイプやねじタイプの接続機構と比べて、メンテナンス時の省力化を図ることができる。平行ピンタイプやねじタイプの場合は、傷みのため平行ピンやステムの交換が必要となる場合があるのに対し、本発明(2)では、ステムピンやボールの交換が必ずしも必要ではないためメンテナンスコストが下がるので、定期メンテナンスをローコストで確実に行うことができる。
【0014】
本発明(3)は、前記溝が環状溝である本発明(1)または(2)のバルブである。
【0015】
本発明(3)によると、溝が環状溝であり旋盤加工で容易に形成できるので、製造コストダウンを図ることができる。
【0016】
本発明(4)は、前記バルブが、ベローズを備えるベローズバルブである本発明(1)~(3)のいずれかのバルブである。
【0017】
ベローズバルブのメンテナンスで弁体の点検・交換する場合、まず第1ステムと第2ステムの連結を解除した後にベローズを取り外さなければならない。これは非常に手間がかかる作業である。本発明(4)のベローズバルブの場合、第1ステムと第2ステムの連結をワンタッチで解除できるので、メンテナンス作業が大変なベローズバルブの場合でも作業の軽減を図ることができる
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バルブの小型化や大きな負荷をかけなければならない場合でも連結部の折損の可能性が低く、組み立ても容易なバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るバルブの一部縦断面図である。
【
図2】第1ステムと第2ステムを組み立てる前の状態を示す図である。
【
図3】第1ステムと第2ステムを組み立てる途中段階の状態を示す図である。
【
図4】第1ステムと第2ステムの組み立てが完了した状態を示す図である。
【
図5】第1ステムと第2ステムの連結を解除する際の状態を示す図である。
【
図6】平行ピンによって第1ステムと第2ステムとが連結される特許文献1に記載の従来のバルブを示す図である。
【
図7】ねじによって第1ステムと第2ステムとが連結される特許文献2に記載の従来のバルブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
【0022】
図1に示すバルブ1は、バルブユニット2と駆動ユニット3を有している。バルブユニット2は、流体入口通路11、流体出口通路12、弁座13が内部に形成されたバルブボディ10と、バルブボディ10の上部に形成されたボンネット18内部に、先端に弁体14が取り付けられた第1ステム15と、第1ステム15を気密に密封するベローズ20を有している。
【0023】
駆動ユニット3は、ねじ接合させられた下側ケーシング40と上側ケーシング41のケーシングによる空間内部に配置されたピストン部材43、44と、圧縮コイルばね45と、圧縮コイルばね受け部材47と、シリンダヘッド48と、第2ステム30を備えている。下側ケーシング40には、駆動流体を導入する駆動流体供給口42があけられている。圧縮コイルばね45は、圧縮コイルばね受け部材47と上側ケーシング41の天井部46との間で挟持させられている。
【0024】
バルブユニット2と駆動ユニット3とは、中間接続筒49とロックナット19によって連結している。
【0025】
第2ステム30に形成された凹所である第1凹所31の内周面に溝32が形成されている。第1ステム15の上端部には第2凹所16が形成されている。第1凹所31及び第2凹所16により形成される空間にはステムピン33が配置されている。第1凹所31に収納されステムピン33を第1ステム15側に付勢する付勢部材34が配置され、第2凹所16の側壁を水平に貫通する側壁貫通孔21が形成され、側壁貫通孔21に入るボール50が配備されている。側壁貫通孔21の数は特に限定はないが、本実施例では3本あけられている。ボール50は、耐摩耗性の高い鋼球が好ましい。第2凹所16とつながり、水平に貫通する貫通孔17が第1ステムに形成されている。この貫通孔17は、第2ステム30と第1ステム15の連結を解除する場合に用いるが、組み立てる場合にも用いることができる。
【0026】
図2~
図3を用いて、本発明の接続機構によって如何にして第2ステム30と第1ステム15を組み立てるか説明する。
【0027】
図2は、第1ステム15と第2ステム30とを組み立てる前の状態を示している。第1ステム15には、第2凹所16が形成され、第2凹所16の底部につながる貫通孔17が水平にあけられている。第1ステム15の上部には第2凹所16につながって側壁貫通孔21があけられており、側壁貫通孔21にはボール50が配置されている。側壁貫通孔21があいている側壁の厚みは、ボール50の直径よりも若干小さくなるように設計されている。
【0028】
ステムピン33は、上からポスト部33d、鍔部33c、太径部33a、細径部33bからなり、細径部33bの下端面は、細径部の端面33fとなっている。貫通孔17には、押えピン60が挿入され、細径部の端面33fと接触している。
【0029】
第2ステム30には第1凹所31が形成され、内面に開口部と平行(水平に)溝(環状溝)32が形成されている。環状溝32の表面32aは、溝の底面と傾斜した両側面とからなっている。第1凹所31の上部にステムピン33を下方に押圧するための付勢部材(ばね)34が配置される(
図2において、ばね34はステムピン33のポスト部33dに嵌装されている)。
図2に示される接続機構によって接続される第2ステム30と第1ステム15とはおおむね同軸になるように手で配置される。組立装置を用いても勿論良い。
【0030】
図3は、第2ステム30と第1ステム15とを嵌め合わせている状態を示している。この状態では、まだボール50が環状溝32に嵌入しておらず連結はまだ完了していない。ばね34の下端は、鍔部33cの上面に当接して縮められる。側壁貫通孔21が、第1凹所31に侵入した段階で押えピン60を抜く。押えピン60を抜いてもボール50の一部が第2凹所16に存在し、ステムピン33は動かない。
【0031】
図4は、第2ステム30と第1ステム15との連結が完了している状態を示している。
図3の状態から、さらに第2ステム30と第1ステム15とを近づけ、ボール50が環状溝32に一部嵌入し、ボール50の右側は、太径部33aの表面(ステムピンの側面33e)に接触または近接する。その結果、ボール50は太径部33aの表面と溝の表面32aに挟まれて、ボール50が環状溝32から抜け出ることができなくなり、第2ステム30と第1ステム15とは、連結される。ステムピン33は、ばね34で常に下方に押圧されているので、動くことはない。
【0032】
図5は、連結が完了した第1ステム15と第2ステム30との連結を解除する方法を示している。貫通孔17に押えピン60を挿入し、細径部の端面33fと押えピン60の側面を接触させ、ステムピン33を上方に押し上げると、ボール50の右側側面は太径部33aから離れて、細径部33bが近づく。ボール50と細径部33bとの間に隙間ができるので、第1ステム15と第2ステム30とを引き離すように引っ張るとボール50が矢印方向に動き、第1ステム15と第2ステム30との連結が解除される。押えピン60の先端部はC面かテーパー形状に尖らせておくとこの作業を容易に行うことができる。
【0033】
本国際出願は、2020年11月27日に出願した日本国特許出願2020-196961号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2020-196961号の全内容を本国際出願に援用する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明バルブは、第1ステムと第2ステムの連結が容易となり、バルブの小型化を可能とする。さらに組み立てや連結解除が容易となりコストダウンに貢献できる。
【符号の説明】
【0035】
1 :バルブ
2 :バルブユニット
3 :駆動ユニット
10:バルブボディ
11:流体入口通路
12:流体出口通路
13:弁座
14:弁体
15:第1ステム
16:第2凹所
17:貫通孔
18:ボンネット
19:ロックナット
20:ベローズ
21:側壁貫通孔
30:第2ステム
31:第1凹所
32:溝(環状溝)
32a:溝の底面
33:ステムピン
33a:太径部
33b:細径部
33d:ポスト部
33c:鍔部
33e:ステムピンの側面
33f:細径部の端面
34:付勢部材(ばね)
40:下側ケーシング
41:上側ケーシング
42:駆動流体供給口
43、44:ピストン部材
45:圧縮コイルばね
46:天井部
47:圧縮コイルばね受け部材
48:シリンダヘッド
49:中間接続筒
50:ボール
60:押えピン