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特許7426151超音波感応性リポソーム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】超音波感応性リポソーム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/127 20060101AFI20240125BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K47/24
A61K47/28
A61K45/00
A61K31/704
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022566148
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2021004131
(87)【国際公開番号】W WO2021221330
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052356
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0042529
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516270991
【氏名又は名称】アイエムジーティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ヒョンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ウ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン リョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ウン ア
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-506432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0127467(US,A1)
【文献】特表2012-529501(JP,A)
【文献】特表2012-529502(JP,A)
【文献】特開2008-100956(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0031869(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72
45/00-47/69
31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)及びlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含むことを特徴とする、超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項2】
前記超音波感応性リポソーム製剤が、コレステロールを追加で含むことを特徴とする、請求項1に記載の超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項3】
前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCが、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)で含まれることを特徴とする、請求項2に記載の超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項4】
前記DSPCが、全体リポソーム製剤に対して0.1~50乾燥重量%、
前記DSPE-mPEG2000が、全体リポソーム製剤に対して3~50乾燥重量%、
前記DOPEが、全体リポソーム製剤に対して1~80乾燥重量%、
前記コレステロールが、全体リポソーム製剤に対して0.05~40乾燥重量%、
前記lyso-PCが、全体リポソーム製剤に対して0.5~10乾燥重量%で含まれることを特徴とする、請求項2に記載の超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項5】
前記超音波感応性リポソーム製剤のリポソーム膜が、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCからなることを特徴とする、請求項2に記載の超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項6】
前記超音波感応性リポソーム製剤が、薬物が封入されていることを特徴とする、請求項1に記載の超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項7】
前記薬物が、抗癌剤であることを特徴とする、請求項6に記載の超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項8】
前記超音波感応性リポソーム製剤が、安定性が確保されていることを特徴とする、請求項1に記載の超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項9】
前記安定性が、血中安定性であることを特徴とする、請求項8に記載の超音波感応性リポソーム製剤。
【請求項10】
前記超音波感応性リポソーム製剤が、下記特徴のうち1つ以上を有することを特徴とする、請求項1に記載の超音波感応性リポソーム製剤:
i.100-200nmの粒度;及び
ii.50-100%の薬物封入率。
【請求項11】
請求項1に記載の超音波感応性リポソーム製剤を含むことを特徴とする、癌の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項12】
前記組成物が、超音波処理と順次的に又は同時に投与されることを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記癌が、乳癌、大腸癌、肺癌、小細胞肺癌、胃癌、肝臓癌、血液癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、結腸癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頸部癌、膣癌、陰門癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状線癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、CNS腫瘍、1次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫及び脳下垂体腺腫からなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
薬物が封入されたリポソームを有効成分として含む薬物送達用組成物であって、
前記リポソームが、DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)及びlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含むことを特徴とする、薬物送達用組成物。
【請求項15】
前記リポソームは、コレステロールを追加で含むことを特徴とする、請求項14に記載の薬物送達用組成物。
【請求項16】
前記薬物が、抗癌剤であることを特徴とする、請求項14に記載の薬物送達用組成物。
【請求項17】
前記抗癌剤が、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、グリベック、5-フルオロウラシル(5-FU)、タモキシフェン、カルボプラチン、トポテカン、ベロテカン、イマチニブ、イリノテカン、フロクスウリジン、ビノレルビン、ゲムシタビン、ロイプロリド、フルタミド、ゾレドロネート、メトトレキサート、カンプトテシン、ビンクリスチン、ヒドロキシウレア、ストレプトゾシン、ロイコボリン、オキサリプラチン、バルルビシン、レチノイン酸、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、ビンブラスチン、マイトマイシン、プレドニゾロン、アフィニトール及びミトキサントロンからなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項16に記載の薬物送達用組成物。
【請求項18】
前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCは、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)で含まれることを特徴とする、請求項15に記載の薬物送達用組成物。
【請求項19】
下記製法1~3からなる群より選択される1つの製法を含むことを特徴とする、請求項1に記載の超音波感応性リポソームの製造方法:
<製法1>
(a)DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)及びlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を第1有機溶媒に溶解する工程;
(b)前記有機溶媒を蒸発させてリポソーム膜を製造する工程;
(c)前記リポソーム膜を硫酸アンモニウム水溶液に水和させて撹拌する工程;及び
(d)押出機を通じて押し出す工程。
<製法2>
(a)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCをエタノールに溶解する工程;
(b)前記(a)工程で製造されたエタノール溶液を硫酸アンモニウム水溶液に水和させて撹拌する工程;及び
(c)押出機を通じて押し出す工程。
<製法3>
(a)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCを第1有機溶媒に溶解する工程;
(b)前記(a)工程で製造された第1有機溶媒溶液及び硫酸アンモニウム水溶液をマイクロ流体システム(microfluidics)のチャンネルを用いて流速を変化させて混合する工程;及び
(c)有機溶媒を除去する工程。
【請求項20】
前記(a)工程で、コレステロールを追加で含んで溶解することを特徴とする、請求項19に記載の超音波感応性リポソームの製造方法。
【請求項21】
前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCが、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)で溶解されることを特徴とする、請求項20に記載の超音波感応性リポソームの製造方法。
【請求項22】
前記第1有機溶媒が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール及びエーテルからなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項19に記載の超音波感応性リポソームの製造方法。
【請求項23】
薬物が封入されたリポソームの薬物送達体の製造のための使用であって、
前記リポソームが、DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)及びlyso-PC(lysophosphatidylcholine)を含むことを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波感応性リポソーム及びその製造方法などに関する。
【0002】
本出願は、2020年4月29日に出願された大韓民国特許出願第10-2020-0052356号及び2021年4月1日に出願された大韓民国特許出願第10-2021-0042529号に基づく優先権の利益を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
癌は、人類が解決しなければならない難病のうち1つであって、全世界的にこれを治癒するための開発に莫大な資本が投資されているのが実情であり、大韓民国の場合、疾病の死亡原因のうち第1位の疾病として年間約10万人以上が診断され、約6万人以上が死亡している。
【0004】
現在、臨床学的に使用している癌治療方法は、化学療法、放射線、標的治療及び手術により病巣を切除する方法などがあり、現在まで用いられるいる抗癌治療のための化学療法剤の代表的な例は、ドキソルビシン(Doxorubicin)又はアドリアマイシン(Adriamycin)、シスプラチン(Cisplatin)、タキソール(Taxol)、5-フルオロウラシルなどがあり、癌治療のための化学治療法として幅広く用いられている。しかし、前記方法は限界があり、完治する場合よりは患者に対するひどい副作用及び苦痛を伴うため、副作用を最小化し得る癌治療技術の開発が重要となっているのが実情である。
【0005】
一方、リポソームは、リン脂質及びこれらの誘導体からなる小胞(vesicle)である。リン脂質及びこれらの誘導体が水に分散するとき、自発的に小胞を形成し、内部に水相からなった核を含む脂質二重層による特性を有する。多様なリポソームは、医学、薬剤学及び生化学分野において薬物、酵素、遺伝子配列のような治療剤のための担体として用いられてきた。
【0006】
したがって、本発明者らは、リポソーム技術に超音波技術を融合して新しい癌治療方法を開発した。これは、癌の診断及び治療などのような癌関連研究、開発分野において現在までよく知られているものがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、優れた薬物放出率を有するとともに安定性に優れた超音波感応性リポソームを開発した。
【0008】
より具体的に、超音波技術を融合して薬物含有リポソームに超音波を処理したとき、超音波を処理しない場合に比べて薬物放出率及び抗腫瘍効果に優れるだけでなく、血中安定性に優れることを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0009】
ここで、本発明の目的は、DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)及びlyso-PCを含む、超音波感応性リポソーム製剤を提供することである。
【0010】
また他の目的は、DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール及びlyso-PCを含む、超音波感応性リポソーム製剤を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記超音波感応性リポソーム製剤を含む癌予防又は治療用薬学的組成物を提供することである。
【0012】
本発明のまた他の目的は、薬物が封入された超音波感応性リポソームを有効成分として含む薬物送達用組成物であって、前記リポソームは、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PC;又はDSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCを含む、薬物送達用組成物を提供することである。
【0013】
本発明のまた他の目的は、前記超音波感応性リポソームの製造方法を提供することである。
【0014】
しかし、本発明が達成しようとする技術的課題は、上記で言及した課題に制限されず、言及しなかったまた他の課題は、以下の記載から本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような目的を達成するために、本発明は、DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)及びlyso-PC;又は、
DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)、コレステロール及びlyso-PCを含む、超音波感応性リポソーム製剤を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記超音波感応性リポソーム製剤を含む癌予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、薬物が封入された超音波感応性リポソームを有効成分として含む薬物送達用組成物であって、前記リポソームは、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PC;又はDSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCを含む、薬物送達用組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、下記製法1~3からなる群より選択される1つの製法を含む、前記超音波感応性リポソームの製造方法を提供する。
【0019】
<製法1>
(a)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCを第1有機溶媒に溶解する工程;
(b)前記有機溶媒を蒸発させてリポソーム膜を製造する工程;
(c)前記リポソーム膜を水溶液に水和させて撹拌する工程;及び
(d)押出機を通じて押し出す工程。
【0020】
<製法2>
【0021】
(a)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCをエタノールに溶解する工程;
(b)前記(a)工程で製造されたエタノール溶液を水溶液に水和させて撹拌する工程;及び
(c)押出機を通じて押し出す工程。
【0022】
<製法3>
【0023】
(a)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCを第1有機溶媒に溶解する工程;
(b)前記(a)工程で製造された第1有機溶媒溶液及び水溶液をマイクロ流体システム(microfluidics)のチャンネルを用いて流速を変化させて混合する工程;及び
(c)有機溶媒を除去する工程。
【0024】
また、本発明は、前記超音波感応性リポソーム製剤の有効量を個体に投与する工程;及び超音波を処理する工程を含む癌治療方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、前記超音波感応性リポソーム製剤の癌治療用途を提供する。
【0026】
また、本発明は、前記超音波感応性リポソーム製法の癌治療薬剤を生産するための用途を提供する。
【0027】
また、本発明は、薬物が封入されたリポソームの有効量を個体に投与する工程を含む薬物送達方法であって、前記リポソームは、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCを含む、方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、薬物が封入されたリポソームの薬物送達用途であって、前記リポソームは、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCを含む、用途を提供する。
【0029】
また、本発明は、薬物が封入されたリポソームの薬物送達体の製造のための用途であって、前記リポソームは、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCを含む、用途を提供する。
【0030】
本発明の一具現例で、前記DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCは、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0031】
本発明のまた他の具現例で、
前記DSPCは、全体リポソーム製剤に対して0.1~50乾燥重量%、
前記DSPE-mPEG2000は、全体リポソーム製剤に対して3~50乾燥重量%、
前記DOPEは、全体リポソーム製剤に対して1~80乾燥重量%、
前記コレステロールは、全体リポソーム製剤に対して0.05~40乾燥重量%、
前記lyso-PCは、全体リポソーム製剤に対して0.5~10乾燥重量%で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0032】
本発明のまた他の具現例で、前記超音波感応性リポソーム製剤のリポソーム膜は、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCからなるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0033】
本発明のまた他の具現例で、前記超音波感応性リポソーム製剤は、薬物が封入されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0034】
本発明のまた他の具現例で、前記薬物は、抗癌剤であってもよく、例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、グリベック、5-フルオロウラシル(5-FU)、タモキシフェン、カルボプラチン、トポテカン、ベロテカン、イマチニブ、イリノテカン、フロクスウリジン、ビノレルビン、ゲムシタビン、ロイプロリド、フルタミド、ゾレドロネート、メトトレキサート、カンプトテシン、ビンクリスチン、ヒドロキシウレア、ストレプトゾシン、バルルビシン、レチノイン酸、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、ビンブラスチン、マイトマイシン、プレドニゾロン、アフィニトール及びミトキサントロンからなる群より選択される1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明のまた他の具現例で、前記超音波感応性リポソーム製剤は、安定性が確保されたものであってもよく、前記安定性は、血中安定性を含むが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明のまた他の具現例で、前記超音波感応性リポソーム製剤は、下記特徴のうち1つ以上を有するものであってもよいが、これに制限されるものではない:
i.100-200nmの粒度;及び
ii.50-100%の薬物封入率。
【0037】
本発明のまた他の具現例で、前記超音波感応性リポソーム製剤又はこれを含む薬学的組成物は、超音波処理と順次的に又は同時に投与され得るが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明のまた他の具現例で、前記癌は、乳癌、大腸癌、肺癌、小細胞肺癌、胃癌、肝臓癌、血液癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、結腸癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頸部癌、膣癌、陰門癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状線癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、CNS腫瘍、1次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫及び脳下垂体腺腫からなる群より選択される1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明のまた他の具現例で、前記(a)工程でコレステロールを追加で含んで溶解するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明のまた他の具現例で、前記有機溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール及びエーテルからなる群より選択される1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【発明の効果】
【0041】
本発明による超音波感応性リポソームは、封入効率が高く、薬物安定性及びリポソームの製剤安定性に優れ、既存の常用薬物に比べて超音波処理により薬物放出率増加効果に優れるだけでなく、癌細胞の死滅効果及び癌細胞の浸透効果があることを確認した。したがって、本発明による超音波感応性リポソームは、封入された薬物の伝達効率を増加させて超音波処理と併用することによって、癌細胞をターゲットとして改善された薬物送達効果を通じて癌治療及び薬物送達体分野においてさまざまな機能を示すことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明の一具現例であって、1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-ホスホコリン(1-stearoyl-2-hydroxy-sn-glycero-3-phosphocholine、MSPC)の割合別での、リポソームの超音波感応によるドキソルビシン放出率を示した図である。
図2図2は、本発明の一具現例であって、コレステロールの割合変化によるリポソームの超音波感応によるドキソルビシン放出率を示した図である。
図3図3は、本発明の一具現例であって、DOPC及びDOPEがそれぞれ含有された各リポソームの超音波感応によるドキソルビシン放出率を示した図である。
図4図4は、本発明の一具現例によるDSPCの割合による各リポソームの超音波感応によるドキソルビシン放出率を示した図である。
図5図5は、本発明の一具現例によるリポソームの血清(75% serum)内の安定性の評価のための前処理過程を示した図である。
図6図6は、本発明の一具現例による血清(75% serum)内の安定性評価試験でMSPC割合によるドキソルビシンの放出率を分析したものであって、MSPC割合によるドキソルビシンの平均放出率を示した図である。
図7図7は、本発明の一具現例による超音波の有無及び時間によるドキソルビシン放出率の比較評価(左)、及び粒度変化推移分析(右)結果を示した図である。
図8図8は、本発明の一具現例による多様な種類のlyso-PC(14:0、16:0、17:0、17:1、18:0、18:1)を含む超音波感応型リポソームの薬物放出率を示した図である。
図9図9は、本発明の一具現例による超音波感応リポソームと対照群Caelyxの超音波照射有無による癌細胞死滅効果を示した図である。
図10図10は、本発明の一具現例による超音波感応リポソームと対照群Caelyxの超音波感応によるドキソルビシンの細胞浸透効果を示した図である。
図11図11は、本発明の一具現例による血中pK評価試験においてMSPC割合によるドキソルビシンの血漿内濃度を確認したものであって、時間によるMSPC割合によるドキソルビシンの血漿内濃度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<発明を実施するための最良の形態>
本発明は、DSPC(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine)、DSPE-mPEG2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)及びlyso-PCを含む、超音波感応性リポソーム製剤を提供する。
【0044】
本発明の前記製剤は、コレステロールを追加で含むことができる。
【0045】
本発明で用いられる用語「DSPC」は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)の略語であって、ホスファチジルコリンの頭部基に付着された2個のパルミチン酸で構成されたリン脂質である。
【0046】
本発明で用いられる用語「DSPE-mPEG2000」は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-メトキシ-ポリ(エチレングリコール-2000(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanol amine with conjugated methoxyl poly(ethylene glycol2000))の略語であって、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-PE(DSPE)のPEG化された誘導体である。
【0047】
本発明で用いられる用語「DOPE」は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)の略語であって、治療剤に対する伝達ビヒクルとして用いられるDOTAPと異種リポソームを形成することが知られている。
【0048】
本発明で用いられる用語「コレステロール(cholesterol)」は、ステロイド化合物のうち1つを言う。前記コレステロールは、コレステロールの誘導体を含む。コレステロールの誘導体は、例えば、シトステロ-ル、エルゴステロール、スチグマステロール、4,22-スチグマスタジエン-3-オン、スチグマステロールアセテート、ラノステロ-ル、シクロアルテノール又はこれらの組み合わせであってもよい。コレステロールは、脂質二重層に位置し、その量を調節することによって透過度を低めるか高めることができ、リポソーム製剤内の割合に関係なく用いることができる。
【0049】
本発明で用いられる用語「lyso-PC」は、リゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine)の略語であって、頭部の基がコリンからなるホスホコリンに由来するアシル鎖が1つからなった脂質の代表語として多様な種類のlyso-PCが存在する。
【0050】
本発明で、前記lyso-PCは、下記化学式1で表示されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0051】
【化1】
(前記化学式1で、R1及び/又はR2は、C~C26のアシル基、C~C26のアルキル基、C~C26のアルケニル基、C~C26のアルキニル基、置換又は非置換のC~C26のシクロアルキル、置換又は非置換のC~C26のアリール基、置換又は非置換のC~C26のアリールアルキル基又はHである。)
【0052】
本発明で、前記アシル基は、芳香族カルボン酸残基、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0053】
本発明で、前記化学式1で表示されるlyso-PCは、より具体的に、下記化学式2又は化学式3で表示されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0054】
本発明で、前記lyso-PCは、下記化学式2又は3で表示される1-LPC(lysophosphatidylcholine)又は2-LPCであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0055】
【化2】
【0056】
【化3】
【0057】
(前記化学式2又は3で、前記Rは、C~C26のアルキル基、C~C26のアルケニル基、C~C26のアルキニル基、置換又は非置換のC~C26のシクロアルキル、置換又は非置換のC~C26のアリール基、置換又は非置換のC~C26のアリールアルキル基又はHである。)
【0058】
本発明で、前記lyso-PCは、lyso-PC(6:0)、lyso-PC (7:0)、lyso-PC(8:0)、lyso-PC(9:0)、lyso-PC(10:0)、lyso-PC(11:0)、lyso-PC(12:0)、lyso-PC(13:0)、lyso-PC(14:0)、lyso-PC(15:0)、lyso-PC(16:0)、2-lyso-PC(16:0)、lyso-PC(17:0)、lyso-PC(17:1)、lyso-PC(18:0)、lyso-PC(18:1)、lyso-PC(18:2)、2-lyso-PC(18:0)、2-lyso-PC (18:1)、lyso-PC(19:0)、lyso-PC(20:1)、lyso-PC(20:4)、lyso-PC(22:0)、lyso-PC(22:5)、lyso-PC(24:0)、lyso-PC(26:0)及びlyso-PC(20:5)からなる群より選択される1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
本発明で、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCは、1~50:1~10:5~80:0.1~20のモル比(mole%)で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0060】
本発明の他の具現例で、
前記DSPCは、全体リポソーム製剤に対して0.1~50乾燥重量%、
前記DSPE-mPEG2000は、全体リポソーム製剤に対して3~50乾燥重量%、
前記DOPEは、全体リポソーム製剤に対して1~80乾燥重量%、
前記lyso-PCは、全体リポソーム製剤に対して0.5~10乾燥重量%で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0061】
また、本発明で、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCは、1~50:1~10:5~80:0.1~50:0.1~20のモル比(mole%)、1~40:1~9:35~80:0.1~40:1~10のモル比(mole%)、10~40:3~7:40~65:0.1~45:0.1~10のモル比(mole%)、0、1~20:1~8:63~67:0.1~30:3~10のモル比(mole%)、5~15:2~7:64~67:10~30:3~10のモル比(mole%)、5~15:3~6:64~66:15~30:5~10のモル比(mole%)、0.1~20:1~8:53~57:0.1~30:5~10のモル比(mole%)、5~15:2~7:54~57:3~20:5~10のモル比(mole%)又は5~15:3~6:54~56:5~10:5~10のモル比(mole%)で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0062】
また、本発明で、前記DSPCは、全体リポソーム製剤に対して1~50モル比(mole%)、5~50モル比(mole%)、5~40モル比(mole%)、5~35モル比(mole%)、5~30モル比(mole%)、5~25モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、5~15モル比(mole%)、7~12モル比(mole%)、25~35モル比(mole%)、27~32モル比(mole%)又は35~45モル比(mole%)で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0063】
また、本発明で、前記DSPE-mPEG2000は、全体リポソーム製剤に対して1~10モル比(mole%)、2~9モル比(mole%)、3~8モル比(mole%)、3~7モル比(mole%)又は4~6モル比(mole%)で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0064】
また、本発明で、前記DOPEは、全体リポソーム製剤に対して5~80モル比(mole%)、5~70モル比(mole%)、10~70モル比(mole%)、20~70モル比(mole%)、30~70モル比(mole%)、40~70モル比(mole%)又は40~65モル比(mole%)で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0065】
また、本発明で、前記コレステロールは、全体リポソーム製剤に対して0.1~50モル比(mole%)、0.1~45モル比(mole%)、1~45モル比(mole%)、5~45モル比(mole%)、5~40モル比(mole%)、5~35モル比(mole%)、5~30モル比(mole%)、5~25モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、5~15モル比(mole%)、10~40モル比(mole%)、10~30モル比(mole%)、10~25モル比(mole%)、10~20モル比(mole%)、20~40モル比(mole%)、30~40モル比(mole%)、5~10モル比(mole%)又は40~50モル比(mole%)で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0066】
また、本発明で、前記lyso-PCは、全体リポソーム製剤に対して0.1~20モル比(mole%)、0.1~15モル比(mole%)、0.1~10モル比(mole%)、1~20モル比(mole%)、3~20モル比(mole%)、3~15モル比(mole%)、3~10モル比(mole%)、3~7モル比(mole%)、5~20モル比(mole%)、5~15モル比(mole%)、5~10モル比(mole%)、7~20モル比(mole%)、7~15モル比(mole%)、7~12モル比(mole%)、8~12モル比(mole%)、9~11モル比(mole%)、4~6モル比(mole%)又は6~8モル比(mole%)、で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0067】
また、本発明で、
前記DSPCは、全体リポソーム製剤に対して0.1~50乾燥重量%、
前記DSPE-mPEG2000は、全体リポソーム製剤に対して3~50乾燥重量%、
前記DOPEは、全体リポソーム製剤に対して1~80乾燥重量%、
前記コレステロールは、全体リポソーム製剤に対して0.05~40乾燥重量%、
前記lyso-PCは、全体リポソーム製剤に対して0.5~10乾燥重量%で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0068】
本発明で、前記DSPCは、全体リポソーム製剤に対して0.1~50 乾燥重量%、0.1~45乾燥重量%、0.1~40乾燥重量%、1~40乾燥重量%、1~30乾燥重量%、1~20乾燥重量%、1~15乾燥重量%、1~13乾燥重量%、3~20乾燥重量%、5~20乾燥重量%、7~20乾燥重量%、5~15乾燥重量%、7~13乾燥重量%又は9~11乾燥重量%で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0069】
本発明で、前記DSPE-mPEG2000は、全体リポソーム製剤に対して3~50乾燥重量%、5~40乾燥重量%、10~30乾燥重量%、10~25乾燥重量%、10~20乾燥重量%、15~30乾燥重量%、15~25乾燥重量%、15~20乾燥重量%、16~19乾燥重量%又は17~19乾燥重量%で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0070】
本発明で、前記コレステロールは、全体リポソーム製剤に対して0.05~40乾燥重量%、1~40乾燥重量%、1~30乾燥重量%、1~20乾燥重量%、1~15乾燥重量%、1~13乾燥重量%、1~10乾燥重量%、3~20乾燥重量%、3~15乾燥重量%、3~13乾燥重量%、3~10乾燥重量%、5~20乾燥重量%、5~15乾燥重量%、5~13乾燥重量%、5~10乾燥重量%、6~8乾燥重量%、10~40乾燥重量%、10~35乾燥重量%、10~30乾燥重量%、10~25乾燥重量%、10~20乾燥重量%、15~40乾燥重量%、15~30乾燥重量%、15~25乾燥重量%、15~22乾燥重量%又は20~30乾燥重量%で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0071】
本発明で、前記DOPEは、全体リポソーム製剤に対して1~80乾燥重量%、5~80乾燥重量%、10~80乾燥重量%、15~80乾燥重量%、20~80乾燥重量%、25~80乾燥重量%、30~80乾燥重量%、30~75乾燥重量%、30~70乾燥重量%、30~65乾燥重量%、30~60乾燥重量%、30~55乾燥重量%、30~50乾燥重量%、40~80乾燥重量%、40~70乾燥重量%、50~80乾燥重量%、50~70乾燥重量%、55~65乾燥重量%、60~65乾燥重量%、60~63乾燥重量%又は60~62乾燥重量%で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0072】
本発明で、前記lyso-PCは、全体リポソーム製剤に対して0.5~10乾燥重量%、0.5~8乾燥重量%、0.5~7乾燥重量%、0.5~6乾燥重量%、0.5~5乾燥重量%、0.5~4乾燥重量%、1~8乾燥重量%、1~7乾燥重量%、1~6乾燥重量%、1~4乾燥重量%、2~8乾燥重量%、2~7.5乾燥重量%、2~6乾燥重量%、2~5乾燥重量%、2~4乾燥重量%、2.5~7.5乾燥重量%、2.5~7乾燥重量%、2.5~6.5乾燥重量%、3~8乾燥重量%、3~7乾燥重量%、3~6乾燥重量%、3~5乾燥重量%、3~4乾燥重量%、5~10乾燥重量%、5~9乾燥重量%、5~8乾燥重量%、5~7乾燥重量%、5~6乾燥重量%又は5~5.5乾燥重量%で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0073】
本発明で、超音波感応性リポソーム製剤のリポソーム膜は、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCからなるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0074】
前記本発明のリポソームは、リン脂質を含む両親媒性化合物により形成される。このような両親媒性化合物は、典型的に水性媒質と本質的に水不溶性である有機溶媒の間の界面に配列されて乳化された溶媒微細滴を安定化する。前記両親媒性化合物は、水性媒質と反応し得る親水性極の頭部(例えば、極性又はイオン性基)及び、例えば、有機溶媒と反応し得る疎水性の有機尾部(例えば、炭化水素鎖)を有した分子を有した化合物を含む。両親媒性化合物は、非混和性である二つの液体(例えば、水とオイル)の混合物、液体と気体の混合物(例えば、水中の気体マイクロバブル)又は液体と不溶性粒子の混合物(例えば、水中の金属ナノ粒子)のように他の方法では通常的に混ざらない物質の混合物を安定化させ得る化合物である。
【0075】
本発明で用いられる用語「超音波(ultrasound)」は、一般的にヒトの耳が聞くことができる音波の周波数である16Hz~20kHzの周波数を超過する音波を意味し、高強度の集中超音波は、連続的であり、高強度である超音波エネルギーを焦点に提供する集束型超音波を導入してエネルギーと振動数によって瞬間熱効果(65-100℃)、空洞化(cavitation)効果、機械的効果及び音響化学的(sonochemical)効果を出すことができる。超音波は、人体組織を通過するとき有害ではないが、焦点を形成する高強度の超音波は、組織の種類に関係なく凝固壊死及び熱焼灼効果を起こすことができるほどの十分なエネルギーを発生する。
【0076】
本発明において、前記超音波は、可聴周波数の範囲である16Hz~20kHzより周波数が大きい音波を言う。超音波は、高強度集中超音波(high intensity focused ultrasound:HIFU)、高強度非集中超音波又はこのふたつの組み合わせであってもよいが、これに制限されるものではない。HIFUは、高強度の超音波エネルギーを1ヶ所に集めて集中させた焦点を作る超音波を言う。どのような映像を見ながら高強度集中超音波治療をするかによって、超音波誘導高強度集中超音波(Ultrasound-guided HIFU)と磁気共鳴画像誘導高強度集中超音波(MRI-guided HIFU)がある。超音波の周波数は、例えば、20kHz~3.0MHz、40kHz~2.0MHz、60kHz~2.0MHz、80kHz~2.0MHz、100kHz~2.0MHz、150kHz~2.0MHz、200kHz~2.0MHz、250kHz~2.0MHz、300kHz~2.0MHz、350kHz~2.0MHz、400kHz~2.0MHz、450kHz~2.0MHz、500kHz~2.0MHz、550kHz~2.0MHz、600kHz~2.0MHz、650kHz~2.0MHz、700kHz~2.0MHz、750kHz~2.0MHz、800kHz~2.0MHz、850kHz~2.0MHz、900kHz~2.0MHz、950kHz~2.0MHz、600kHz~1.5MHz、650kHz~1.5MHz、700kHz~1.5MHz、750kHz~1.5MHz、800kHz~1.5MHz、850kHz~1.5MHz、900kHz~1.5MHz、950kHz~1.5MHz、1MHz~1.5MHz、600kHz~1.3MHz、650kHz~1.3MHz、700kHz~1.3MHz、750kHz~1.3MHz、800kHz~1.3MHz、850kHz~1.3MHz、900kHz~1.3MHz、950kHz~1.3MHz、600kHz~1.1MHz、650kHz~1.1MHz、700kHz~1.1MHz、750kHz~1.1MHz、800kHz~1.1MHz、850kHz~1.1MHz、900kHz~1.1MHz、950kHz~1.1MHzであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0077】
前記リポソームは、超音波感応性リポソームである。超音波感応性リポソームとは、超音波に露出する場合、リポソームの透過性が増加することを意味する。それによって、リポソームが超音波に露出する場合、リポソームに含まれた薬物が放出され得る。
【0078】
前記リポソームは、安定性(stability)が確保されたものであってもよい。前記安定性とは、超音波に露出しない状態では血中リポソーム内に封入された薬物が放出されないことを意味する。具体的な実施例によると、常温(20~25℃)で60分間ボルテックス条件下で20分ごとに60分間リポソーム内に封入された薬物の放出率を測定すると、最大30%以下の薬物放出率を示す。
【0079】
前記リポソームの粒度は、例えば、直径50nm~500nm、50nm~400nm、50nm~300nm、50nm~200nm、60nm~200nm、70nm~200nm、80nm~200nm、90nm~200nm、100nm~200nm、110nm~190nm、120nm~180nm、130nm~170nm、140nm~170nm、140nm~160nm又は約150nmであってもよい。具体的な実施例によると、100nm~200nmであってもよい。ここで、粒度測定方法は、本明細書の実施例1に記載した方法によるが、これに制限されず、当業界で公知の他の方法によって測定することができ、同等のレベルの値に変換され得る。
【0080】
また、本発明は、前記超音波感応性リポソーム製剤を含む、癌予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0081】
また、本発明は、薬物が封入された超音波感応性リポソームを有効成分として含む薬物送達用組成物であって、前記リポソームは、DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PC;又はDSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE、コレステロール及びlyso-PCを含む、薬物送達用組成物を提供する。
【0082】
本発明で用いられる用語「薬物」は、目的とした生物学的活性を有した任意の化合物を指称する。目的とした生物学的活性は、ヒト又は他の動物において疾患の診断、治癒、緩和、治療又は予防に有用な活性を含む。
【0083】
本発明で、前記薬物は、抗癌剤であってもよく、例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、グリベック、5-フルオロウラシル(5-FU)、タモキシフェン、カルボプラチン、トポテカン、ベロテカン、イマチニブ、イリノテカン、フロクスウリジン、ビノレルビン、ゲムシタビン、ロイプロリド、フルタミド、ゾレドロネート、メトトレキサート、カンプトテシン、ビンクリスチン、ヒドロキシウレア、ストレプトゾシン、バルルビシン、レチノイン酸、メクロレタミン、クロラムブシル、ブスルファン、ドキシフルリジン、ビンブラスチン、マイトマイシン、プレドニゾロン、アフィニトール及びミトキサントロンからなる群より選択される1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0084】
本発明において、薬物と超音波感応性リポソームとの混合割合は、好ましくは、1:2~1:20質量比(w/w%)であってもよく、より好ましくは、1:2~1:20、1:2~1:18、1:2~1:16、1:2~1:14、1:2~1:12、1:2~1:10.5、1:2.5~1:10.5、1:2.5~1:5、1:2~1:4、1:2.5~1:4.5、1:2.5~1:4、1:2.5~1:3、1:5~1:10.5、1:5.5~1:10.5、1:6~1:10.5、1:6.5~1:10.5、1:7~1:10.5、1:7~1:10、1:7~1:9又は約1:8質量比(w/w%)であってもよいが、薬物が効率的にリポソームに封入され得る割合であれば、これに制限されない。
【0085】
本発明において、用語「封入率」は、積載率と混用され得る。本発明において、前記薬物が封入された超音波感応性リポソームは、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、65%~100%、70%~100%、75%~100%、76%~100%、77%~100%、80%~100%、85%~100%、87%~100%、88%~100%、90%~100%又は95%~100%の抗癌剤封入率を有するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0086】
前記封入率は、添加した薬物の量に対する積載率を意味することができるが、これに制限されるものではない。ここで、薬物封入率の測定方法は、本明細書の実施例1に記載した方法によるが、これに制限されず、当業界で公知の他の方法によって測定することができ、同等のレベルの値に変換され得る。
【0087】
本発明において、前記薬物が封入された超音波感応性リポソームは、10%~100%、50%~100%、60%~100%、65%~100%、70%~100%又は75%~100%の薬物放出率を有するものであってもよいが、これに制限されるものではない。前記薬物放出率は、添加した薬物の量に対する放出率を意味することができるが、これに制限されるものではない。ここで、放出率の測定方法は、本明細書の実施例2に記載した方法によるが、これに制限されず、当業界で公知の他の方法によって測定することができ、同等のレベルの値に変換され得る。
【0088】
本発明において、前記薬物が封入された超音波感応性リポソームは、血中内で、超音波未処理状態で0.1%~100%、0.1%~80%、0.1%~60%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%又は30%以下の薬物放出率を有するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0089】
本発明で、前記超音波感応性リポソーム製剤又はこれを含む薬学的組成物は、超音波処理と順次的に又は同時に投与され得るが、これに制限されるものではない。
【0090】
本発明で用いられる用語「癌」は、細胞が正常的な成長限界を無視して分裂及び成長する進行的(aggressive)特性、周囲組織に浸透する浸潤的(invasive)特性及び体内の他の部位に広がる転移的(metastatic)特性を有する細胞による疾病を総称する意味である。
【0091】
本発明において、前記癌は、当業界で悪性腫瘍として知られているものであれば、その種類が特に制限されず、例えば、乳癌、大腸癌、肺癌、小細胞肺癌、胃癌、肝臓癌、血液癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部癌、頸部癌、皮膚黒色腫、眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、結腸癌、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頸部癌、膣癌、陰門癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、甲状腺癌、副甲状線癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性又は急性白血病、リンパ球リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫、CNS腫瘍、1次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫及び脳下垂体腺腫からなる群より選択されるものであってもよい。
【0092】
本発明において「予防」とは、本発明による組成物の投与により癌を抑制したり発病を遅延させる全ての行為を意味する。
【0093】
本発明において「治療」とは、本発明による組成物の投与により癌の症状が好転したり有利に変更される全ての行為を意味する。
【0094】
本発明で用語「薬学的組成物」は、癌の予防又は治療を目的として製造されたものを意味し、それぞれ通常の方法によって多様な形態に剤型化して用いられ得る。例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップなどの経口型製剤として剤型化でき、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤又はパップ剤などの皮膚外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態で剤型化して用いることができる。
【0095】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常的に用いる適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。このとき、組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)又はラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような滑剤も使われる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、流動パラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用され得る。坐剤の基材としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴ-ル、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用され得る。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与するか非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は局所に適用)することができ、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者によって適切に選択され得る。
【0097】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他医学分野でよく知られた要素によって決定され得る。本発明による薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次的又は同時に投与することができ、単一又は多重投与することができる。前記要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定され得る。投与は、一日一回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。
【0098】
本発明の癌予防又は治療用薬学的組成物において、前記組成物に含まれるリポソームと併用して使用され得、前記組成物には、超音波感応性リポソームの外にも抗癌剤、映像造影剤、抗生剤、抗炎症剤、タンパク質、サイトカイン、ペプチド及び抗体からなる群より選択される1つ以上がさらに含まれ得る。
【0099】
本発明において「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0100】
本発明において「個体」とは、疾病の治療を必要として本発明の組成物が投与され得る対象を意味し、より具体的には、ヒト又は非ヒトである霊長類、マウス、イヌ、ネコ、ウマ及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0101】
また、本発明は、下記製法1~3からなる群より選択される1つの製法を含む、前記超音波感応性リポソームの製造方法を提供する。
【0102】
<製法1>
(a)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCを第1有機溶媒に溶解する工程;
(b)前記有機溶媒を蒸発させてリポソーム膜を製造する工程;
(c)前記リポソーム膜を水溶液に水和させて撹拌する工程;及び
(d)押出機を通じて押し出す工程。
【0103】
<製法2>
(a)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCをエタノールに溶解する工程;
(b)前記(a)工程で製造されたエタノール溶液を水溶液に水和させて撹拌する工程;及び
(c)押出機を通じて押し出す工程。
【0104】
<製法3>
(a)DSPC、DSPE-mPEG2000、DOPE及びlyso-PCを第1有機溶媒に溶解する工程;
(b)前記(a)工程で製造された第1有機溶媒溶液及び水溶液をマイクロ流体システム(microfluidics)のチャンネルを用いて流速を変化させて混合する工程;及び
(c)有機溶媒を除去する工程。
【0105】
本発明で、前記製法2は、(b)工程後にエタノールを蒸発させる工程を追加で含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0106】
本発明で、前記水溶液は、硫酸アンモニウム水溶液であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0107】
本発明で、前記有機溶媒の除去は、有機溶媒を蒸発させることであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0108】
本発明で、前記マイクロ流体システムは、高圧乳化装置を用いる公知の高圧均質混合方法を用いるものであってもよいが、これに制限されるものではない。マイクロ流体システムに対する内容は、公知文献[Whitesides, G.M.(2006). The origins and the future of microfluidics. Nature, 442(7101), 368-373.]を参照することができる。
【0109】
本発明で、前記第1有機溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール及びエーテルからなる群より選択される1つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0110】
前記本発明の方法によって製造されたリポソーム製剤は、注射剤、経皮、経鼻及び肺への薬物送逹に用いられ得る。このような製剤化に必要な技術及び薬剤学的に適切な担体、添加剤などに関しては、当該製剤学分野において通常の知識を有した者に広く知られており、これと関連してRemington's Pharmaceutical Sciences(19th ed., 1995)を参照することができる。
【0111】
また、前記リポソームの押出のための温度は、常温で各物質の相転移温度範囲まで多様に調節することができ、押出回数は、リポソームのサイズを均一にするために適切な回数で繰り返し行うことができる。
【0112】
また、前記超音波感応性リポソームの製造方法は、マイクロ流体工程を用いて製造され得る。マイクロ流体工程に用いられる有機溶媒は、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、メタノール、エタノール及びエーテルからなる群より選択される1つ以上であってもよい。本発明の一実施例では、1チャンネルにはエタノール、2チャンネルには硫酸アンモニウム水溶液を用いてマイクロ流体工程を通じてリポソームを製造した。
【0113】
また、前記製造方法で有機溶媒に溶け込んでいるリン脂質の濃度は、例えば、1~300、1~200、1~100、1~80、1~70、1~50、1~30、1~20、1~10、1~5、1~3、3~5又は60~70mg/mLであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0114】
また、前記製造方法でマイクロ流体工程の流量は、例えば、1~50、1~40、1~30、1~25、1~20、1~15mL/minであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0115】
本発明の一実施例では、MSPCのモル比条件を異にしてリポソームを製造した後にその物性を比較し、約5モル(mol)比で製造したとき、リポソームの薬物放出率が優れるとともに安定性が最も高いことを確認した(実施例2及び7参照)。
【0116】
本発明の他の実施例では、コレステロールのモル比条件を異にしてリポソームを製造した後にその物性を比較し、コレステロールは、割合に関係なく超音波感応性に対する影響が不備であることを確認した(実施例3参照)。
【0117】
本発明のまた他の実施例では、DOPC又はDOPEを選択的に含むリポソームを製造した後にその物性を比較し、DOPEが超音波感応性リポソームの製造に一層適合するものであることを確認した(実施例4参照)。
【0118】
本発明のまた他の実施例では、DSPCのモル比条件を異にしてリポソームを製造した後にその物性を比較し、DSPCの濃度が増加するほど超音波による薬物放出率が減少することを確認した(実施例5参照)。
【0119】
本発明のまた他の実施例では、超音波の有無及び時間による本発明のリポソームの薬物放出率を確認した結果、超音波を照射しない群に比べて照射した群で著しい薬物放出率の増加を確認し、粒度分布は、同一に維持されることを確認した(実施例8参照)。
【0120】
本発明のまた他の実施例では、超音波の有無による本発明のリポソーム及び市販のリポソーム薬物の癌細胞死滅効果を確認した結果、本発明の超音波感応性リポソームの癌細胞死滅効果が市販されるリポソーム薬物に比べて顕著に優れることを確認した(実施例10参照)。
【0121】
本発明のまた他の実施例では、超音波の有無による本発明のリポソーム及び市販のリポソーム薬物の乳癌細胞浸透効果を確認した結果、本発明の超音波感応性リポソームの癌細胞浸透効果が市販されるリリポソーム薬物に比べて顕著に優れることを確認した(実施例11参照)。
【0122】
本発明で用いられる用語は、本発明での機能を考慮しながらできるだけ現在広く用いられる一般的な用語を選択したが、これは、当分野の技術者の意図又は判例、新しい技術の出現などによって変わることができる。また、特定の場合は出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、該当する発明の説明部分で詳しくその意味を記載する。したがって、本発明で用いられる用語は、単純な用語の名称ではなく、その用語が有する意味と本発明の全般にわたった内容に基づいて定義すべきである。
【0123】
本発明の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」との用語は、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外のことではなく他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。本願の明細書全体で用いられる程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値で又はその数値に近接した意味で用いられ、本発明の理解を助けるために正確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために用いられる。
【0124】
本願の明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載した構成要素からなる群より選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群より選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0125】
<発明の実施のための形態>
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0126】
下記表に記載した物質を実施例で使用した。
【0127】
【表1-A】
【0128】
実施例1:リポソーム製剤の製造
【0129】
まず、DSPC 32.1mg、DSPE-mPEG2000 57.0mg、コレステロール23.5mg、DOPE 196.6mg及びlyso-PC(1-stearoyl-2-hydroxy-sn-glycero-3-phosphocholine、MSPC)10mgのリン脂質をクロロホルム5mLに溶かした。各物質のモル比は、10:5:15:65:5であった。クロロホルムに溶け込んでいるリン脂質溶液を45℃で回転蒸発濃縮機を用いて完全に蒸発させて薄い二重膜リン脂質膜を製造した。その後、リン脂質膜を250mM濃度の硫酸アンモニウム溶液を用いて55℃で撹拌して水和させた。分散されたリポソーム溶液をポリカーボネートメンブレンが装着された押出機(size extruder mini、Avanti)を用いて常温以上の温度で押し出した。前記押出は、リポソームのサイズが約150nmのサイズとなるまで繰り返した。
【0130】
リポソームの粒度分布は、リポソームを10倍希釈してDynamic LightScattering(DLS)分析法でZetasizerナノZS(Zetasizer Nano ZS、Malvern)を用いて測定した。押出により粒度分布が調節されたリポソーム溶液を分子量(MWCO)15,000ダルトンである透析膜に投入し、10%-スクロース、10mM L-ヒスチジン溶液で12時間の間透析した。
【0131】
リポソームにドキソルビシンを封入するために、透析されたリポソーム溶液にドキソルビシンを添加して37℃で2時間の間200-300rpmで撹拌した。リポソームとドキソルビシンは、8:1の重量比で混合した。2時間撹拌した後、封入されないドキソルビシンは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)方法を用いて分離した。封入されたドキソルビシンと封入されないドキソルビシンは、480nm波長の吸光度測定で定量した。
【0132】
実施例2:MSPCの割合別にリポソームの製造及び超音波による薬物放出率の分析
【0133】
リポソームは、実施例1の方法によって同一に製造された。このときのMSPCモル比は、5又は10に調整し、それ以外の成分のモル比は、実施例1と同一に固定した。リポソームの製造時、最終リポソームの濃度が16mg/mLとなるように硫酸アンモニウムを調節して水和させ、その後、製造工程は全部同一に実行した。それぞれのリポソームの粒度分布及びドキソルビシン封入率の分析も実施例1と同一の分析法で行った。
【0134】
超音波によりドキソルビシンがリポソームから放出される程度を測定するために、ドキソルビシンが封入されたそれぞれのリポソームを超音波装置(UP200s、Hielscher)チャンバに入れ、29kHz、92W/cmで1分間印加した。超音波感応によるドキソルビシン放出率の分析は、ドキソルビシンを基準として0.1mg/mLのドキソルビシンが積載されたリポソームを用いて行った。放出されたドキソルビシンとドキソルビシンが放出されたリポソームは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)方法を用いて分離した。ドキソルビシンの定量分析は、480nmの吸光度を測定することによって分析した。表1及び図1は、それぞれのリポソームに対する組成及び粒度分布、ドキソルビシン封入率そして超音波によるドキソルビシン放出率を示したものである。
【0135】
【表1】
【0136】
表1及び図1に示したように、超音波感応によるドキソルビシン放出率は、lyso-PCが減少するにしたがって増加した。このような結果から、MSPCが構造的にリポソームの超音波耐性を増加させて薬物放出を阻害する要素として作用したことが分かった。そこで、本発明者らは、MSPCのモル比を5として、以下実施例を実行した。
【0137】
実施例3:コレステロール割合別超音波感応によるドキソルビシン放出率の分析
【0138】
リポソームの超音波感応によるドキソルビシン放出率に及ぼすコレステロールの影響を分析するために、コレステロールのモル比を変化してリポソームを製造した。実施例1と同様に、DSPC、DSPE-mPEG2000、コレステロール、DOPE及びMSPCのモル比である10:5:15:65:5を基準とするが、コレステロールの質量だけ変化させてリポソームを製造した。製造されたリポソームの濃度は、全て16mg/mLで同一に合わせ、硫酸アンモニウム(250mM)を用いて水和させた。リポソームの製造方法及び粒度分布、ドキソルビシン封入率、超音波感応によるドキソルビシン放出率に対する分析方法は、実施例1と同一の過程で行った。
【0139】
表2及び図2は、超音波感応によるドキソルビシン放出率に対してコレステロールが及ぼす影響を分析した結果を示したものである。
【0140】
【表2】
【0141】
表2及び図2に示したように、0から40までコレステロールの割合を変化させた結果、前記リポソーム組成でのコレステロールの割合は、超音波感応性に対する影響が不備であることを確認し、コレステロールの割合と関係なく60%以上のドキソルビシン放出率を示した。
【0142】
実施例4.DOPCとDOPEの超音波感応によるドキソルビシン放出率の比較
【0143】
DSPC、DSPE-mPEG2000、コレステロール、MSPCのモル比は、それぞれ10、5、15、5で固定し、DOPC又はDOPEが65%モル比で含有されたリポソームを実施例1と同一の方法で製造した。製造されたリポソームの濃度が16mg/mLとなるように硫酸アンモニウム(250mM)を用いて水和させた。粒度分布及びドキソルビシン封入率、超音波感応によるドキソルビシン放出率に対する分析方法も実施例1の方法と同一に実行した。
【0144】
表3及び図3は、DOPCとDOPEが含有された各リポソームに対する粒度分布、薬物積載率、超音波感応によるドキソルビシン放出率を示したものである。
【0145】
【表3】
【0146】
表3及び図3に示したように、DOPCとDOPEが含有された各リポソームで粒度分布及びドキソルビシンの封入率は、大きい差を示さなかった。しかし、超音波媒介ドキソルビシン放出率において、DOPEが含有されたリポソームは、60%以上の放出率を示したが、DOPCが含有されたリポソームは、約20%で超音波による感応が不備であった。これにより、本発明のリポソームの成分としてDOPCよりDOPEが適合することを確認した。
【0147】
実施例5:DSPCのモル比によるリポソームの超音波感応によるドキソルビシン放出の分析
【0148】
DSPCの割合を除いた、DSPE-mPEG2000、コレステロール、DOPE、MSPCのモル比は、それぞれ5、15、65、5%で固定し、実施例1で製造したDSPC 10%を基準として2、4倍増加させてリポソームを製造して超音波感応によるドキソルビシン放出率を比較分析した。
【0149】
製造されたリポソームの濃度が16mg/mLとなるように硫酸アンモニウム(250mM)を用いて水和させた。リポソームの製造方法及び分析方法、超音波感応による薬物放出率の分析は、実施例1及び2で明示した方法と同一に行った。
【0150】
表4及び図4は、DSPCの割合による各リポソームの粒度分布、ドキソルビシン封入率、超音波感応による各リポソームでのドキソルビシン放出率を示したものである。
【0151】
【表4】
【0152】
表4及び図4に示したように、DSPCの割合変化に関係なく粒度分布及びドキソルビシン封入率は大きい変化がなく、約100~200nmの粒度分布を示し、約75~85%のドキソルビシン封入率を示した。
【0153】
一方、超音波感応によりドキソルビシンが放出される推移をDSPCの添加量と比較した結果、DSPCが増加するほど超音波によりドキソルビシンの放出量が減少することが示された。
【0154】
したがって、DSPCのモル比が少ないほど超音波感応性リポソームの製造に適合することを確認した。
【0155】
実施例6:リポソーム組成のモル比変化によるドキソルビシン放出量の分析実験
【0156】
リポソームを構成している組成別に超音波感応によるドキソルビシン放出量を分析するために、表5にある組成比を用いてリポソームを製造した。リポソームの製造方法は、実施例1と同一であり、リポソームの濃度は、16mg/mLで硫酸アンモニウム(250mM)を用いて調節した。その後、ドキソルビシンの封入方法及び封入率、超音波感応によるドキソルビシンの放出実験も実施例1と同一に行って分析した。
【0157】
【表5】
【0158】
表5に示したように、DOPEが増加する場合、超音波感応性によるドキソルビシン放出量が増加する傾向を示し、コレステロール、MSPCの場合、リポソームの安定性を向上させてドキソルビシンの流出を阻害していることを確認した。
【0159】
実施例7:MSPCの割合によるリポソームの安定性の評価
【0160】
MSPCを含むか否か及び含まれるモル比によってリポソームの安定性に及ぼす効果を評価した。安定性評価に用いられたリポソームの組成は、表6に記載した通りである。リポソームの製造は、実施例1と同一のプロセスで行い、リポソーム溶液中のドキソルビシンの目標濃度は、溶液1.0mL当たり0.40mgであった。
【0161】
【表6】
【0162】
リポソームの安定性を評価するために、製造されたリポソームをFBS(FetalBovine Serum)と1対3の体積比で混合した後に撹拌した。
【0163】
リポソームの安定性を評価するための条件は、次の通りである:上で製造した混合液を常温(20~25℃)で60分間ボルテックスした。このとき、毎20分ごとに溶液を採取した後、固相抽出法(Waters Oasis HLB 3CC)を用いてリポソームから放出されたドキソルビシンの量を測定した。前処理方法は、図5に示した通りである。溶出溶液を収集した後、表7の液体クロマトグラフ分析条件によって分析して放出されたドキソルビシンの量を分析した。
【0164】
【表7】
【0165】
図6に示したように、リポソーム組成のうちMSPCのモル比が増加するほどリポソームの安定性が増加して封入されたドキソルビシンの放出が抑制されたところ、最大30%以下でドキソルビシンが放出されることを確認することができた。また、MSPC 5mol%以上でリポソームが非常に安定したことを確認した。
【0166】
したがって、MSPCを含有したとき、安定性に優れたリポソームを製造することができることを確認し、5mol%で最も安定したリポソームが生成されたことを確認した。
【0167】
実施例8:超音波感応性リポソームの時間によるドキソルビシン放出実験
【0168】
実施例1で製造したリポソームを用いて時間によるドキソルビシンの放出率を分析した。これに加えて、超音波放出により薬物が放出される推移を比較評価するために、超音波を照射した実験群(US+)と照射しない実験群(US-)をそれぞれ1時間間隔で採取した後、放出されたドキソルビシン及びリポソーム内のドキソルビシンを定量分析した。放出試験は、37℃、150rpmの条件で行った。超音波の放出は、各時点での試料の採取後に29kHzの周波数及び92W/cmの強さで放出試験溶液に1分間追加で照射し、毎1時間ごとに試料採取及び超音波の照射を繰り返した。放出されたドキソルビシン及びリポソームは、実施例2と同一にサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法を用いて分離した。封入されたドキソルビシンと封入されていないドキソルビシンは、480nm波長の吸光度測定で定量した。
【0169】
表8は、本実施例で用いたリポソームの組成及び粒度分布、封入率を示したものである。また、表9及び図7は、超音波感応リポソームに対する時間によるドキソルビシンの放出率及び超音波の照射によるドキソルビシンの放出率の比較評価推移を示したものである。
【0170】
【表8】
【0171】
【表9】
【0172】
表9及び図7に示したように、超音波感応性リポソームの薬物放出推移は、超音波を照射しない実験群に比べ、超音波を毎1時間ごとにそれぞれ1分ずつ照射した結果、約20%の放出率の向上を示した一方、超音波を印加しない実験群に対しては、初期に約15%のドキソルビシン放出率を示した後、追加的にドキソルビシンが放出される様相は示さなかった。超音波感応性リポソームは、超音波放出によって3時間の間(1時間ごとに1分ずつ照射、総3回)約75%の薬物放出挙動を示し、6時間の間(1時間ごとに1分ずつ照射、総6回)約80%のドキソルビシン放出率を示した。また、超音波放出以前及び以後の粒度分布に対して分析した結果、粒度分布は同一に維持されることを確認しており、超音波の影響による粒子の粉砕は発生しないことを確認した。
【0173】
実施例9:lyso PCの種類別超音波感応性リポソームの製造及び超音波感応性結果の分析
【0174】
lyso-PCの種類による物性及び超音波感応性変化について分析するために、lyso-PCの種類別に超音波感応性リポソームをそれぞれ製造した。
【0175】
lyso-PCは、疎水鎖の種類によって5種を選別してテストした。選別されたlyso-PCの種類及び構成割合は下表10の通りである。
【0176】
【表10】
【0177】
Lyso-PCのアシル鎖の種類による超音波感応性リポソームの製造のために、前記表10に明示された容量の脂質を秤量した後、256mg/mLの濃度のエタノールを用いて60℃で溶解させた。その後、250mM硫酸アンモニウム溶液に添加して60℃で1時間の間撹拌してリポソームを製造した。このときの脂質濃度は、32mg/mLであった。リポソームのサイズを減少させるために高温押出機を用いて押し出した。押出機のポリカーボネートフィルターを0.8μmポアから0.4、0.2μmポアサイズに段階別に減少させてサイズを減少させ、リポソームの大きさが100~200nmとなるまで繰り返し行った。硫酸アンモニウムと、10%スクロースと10mMヒスチジン混合液をリポソーム溶液の溶媒としてPD-10カラムを用いて交換した。
【0178】
その後、ドキソルビシンを積載するためにドキソルビシンとリポソームを1:18質量比で混合した後、37℃で1時間の間撹拌した。積載しなかったドキソルビシンは、PD-10カラムを用いて分離した。製造されたそれぞれの超音波感応性リポソームのサイズ分布及びドキソルビシンの定量分析は、実施例1、2で明示した方法と同一に行った。
【0179】
【表11】
【0180】
表1に示したように、Lyso-PCの種類によるドキソルビシン放出率は、55-65%と類似した傾向を示す。したがって、Lyso-PCの尾部部分の変化は、超音波感応性によるドキソルビシン放出率に影響を及ぼさないと判断された。
【0181】
実施例10:超音波感応リポソームの癌細胞死滅効果の比較分析
【0182】
超音波感応リポソームの超音波の照射有無による細胞死滅効果を比較分析するために、実施例1の超音波感応リポソームを用いて癌細胞死滅効果を超音波の有無によって比較評価した。癌細胞は、三重陰性乳癌細胞株であるMDA-MB-231細胞株を用いた。MDA-MB-231細胞株は、96ウェルプレートの各ウェルに10000個の細胞を分注した後、一晩培養した。細胞培養液は、Dulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM)に10%-ウシ胎仔血清(FBS)と1%抗生剤が含有された培養液を用いて細胞を培養した。細胞が一晩培養されたウェルから培養液を除去し、FBSがないDMEMを満たして1時間の間培養した後、超音波感応リポソームを添加して3時間の間培養した。超音波の照射有無による癌細胞死滅を比較分析するために、超音波を照射した超音波感応リポソーム(Sono liposome(US+))と超音波を照射しない超音波感応リポソーム(Sono liposome(US-))を指定されたウェルでそれぞれ処理した。ドキソルビシンは、それぞれ2、4、6、8、10μg/mLの濃度で各ウェルで処理した。対照群として常用化されたドキソルビシンリポソーム薬剤であるCaelyx(登録商標)(リポソーマルドキソルビシン塩酸塩)を用い、超音波感応性リポソームと同一の方法で処理した。それぞれのリポソームを処理した後、3時間の間培養した後に各ウェルにある処理試料を除去した後、PBSで3回洗浄した。その後、再び10%FBS、1%抗生剤が含有されたDMEMを添加して細胞を培養した。72時間細胞を培養した後、各ウェルにある培養液を除去し、2mg/mL濃度のMTT試薬を20μL添加して3時間の間培養した。生成されたホルマザンにDMSOを各ウェルに200μL添加した後、540nmの波長でELIZA leaderを用いて吸光を測定することによって癌細胞死滅効果を比較分析した。
【0183】
その結果、図9に示したように、超音波を照射しない実験群の場合、超音波感応リポソーム及びCaelyx(登録商標)いずれも癌細胞に対する死滅効果が認められなかった。ドキソルビシンのみ細胞内に浸透して癌細胞死滅効果を示した。
【0184】
一方、超音波を照射した実験群の場合、Caelyx(登録商標)は、超音波を照射しない実験群と類似した癌細胞死滅効果を示した一方、本発明の超音波感応リポソームは、封入されたドキソルビシンが放出されることによって癌細胞死滅効果が増加する結果を示したので、超音波による薬物放出が効果的に誘導されることを立証した。したがって、本発明のリポソームが既存の常用されているリポソーム薬剤に比べて超音波に対する敏感性に優れることを確認した。
【0185】
実施例11:超音波感応リポソームの細胞浸透効果の分析
【0186】
超音波感応リポソームの細胞浸透効果を分析するために、実施例1の超音波感応リポソームを用いて細胞浸透効果をCaelyx(登録商標)と比較分析した。8ウェル細胞培養チャンバに30000個のMDA-MB-231細胞株を分注した後、一晩培養した。実施例9の細胞培養液を用いた。一晩培養した後、満たされている細胞培養液を除去した後、FBSが含有されない培養液で1時間の間培養した。その後、各ウェルに超音波感応性リポソームとCaelyx(登録商標)を超音波の照射有無によって添加した。それぞれのリポソームを処理した後、3時間後に処理されたリポソームを全て除去し、PBSで3回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒドで3分間固定した。その後、0.01mg/mLのDAPI溶液を用いて細胞核を染色した後、マウンティング溶液を添加してカバーグラスを覆った。蛍光映像のために、DAPIは408nmの波長で、ドキソルビシンは488nmの波長のレーザーを用い、共焦点蛍光顕微鏡で蛍光映像を撮影した。青色映像は、DAPIで染色された部分として細胞核を示し、赤色映像は、ドキソルビシンの蛍光を示す。
【0187】
その結果、図10に示したように、超音波を照射しないリポソーム及びCaelyx(登録商標)は全て細胞に浸透しなかった。しかし、超音波を照射した実験群に対しては超音波感応リポソームでドキソルビシンが細胞内に浸透することによって超音波感応性に優れた結果を示し、3時間内に細胞内に浸透することを確認した。
【0188】
実施例12:マイクロ流体工程を用いた超音波感応リポソームの製造評価及び超音波感応実験
【0189】
超音波感応性リポソームをマイクロ流体工程(microfluidics)を用いて製造するために、DSPC、DSPE-mPEG2000、コレステロール、DOPE及びMSPCがそれぞれ10、5、15、65、5のモル比で構成されたリン脂質構成物をエタノールに溶解した。完全に溶解するために、75℃オーブンに10分間保管して透明な溶液で溶解した。溶液の濃度は、実験群によってそれぞれ2、4、8、16、64mg/mLで準備した。
【0190】
マイクロ流体工程は、2チャンネルで構成されており、1個のチャンネルはエタノールに溶け込んでいるリン脂質が投与される経路であり、残りのチャンネルは、250mMの硫酸アンモニウムが投与される経路である。
【0191】
それぞれの投与割合は表12に記載したように実験が進行され、総流速は、実験群によって3、12、21mL/minで調節して行った。チャンネルを通じて排出されたリポソーム溶液は、15000Daの分子量(MWCO)の浸透膜を通じて24時間の間透析され、溶液は、10%スクロースと10mM L-ヒスチジンが含有された溶液で透析した。透析工程以後に、粒度分析方法は実施例1に明示した方法と同一に行った。表12は、リポソームのリン脂質構成モル比及び実験条件に対して記載している。
【0192】
【表12】
【0193】
表12に示したようにリポソームの粒度分布は、大部分100~200nmの粒度分布を示した。サイズを調節する要素は、エタノールに溶け込んでいるリン脂質の濃度、総流速とエタノール及び硫酸アンモニウムの体積比であることを確認した。体積比に差があるほど粒度分布が小さい傾向を示し、総流速が速いほど、そしてリン脂質の濃度が低いほど粒度分布が小さくなる様相を示した。
【0194】
実施例13:エタノール添加法によるリポソームの製造
【0195】
超音波感応性リポソームを製造するために、表13のような脂質組成を用いてエタノール添加法で製造した。表13のモル比で秤量したそれぞれの脂質混合物を256mg/mLの濃度でエタノールに70℃で溶解させた。完全に透明な溶液に溶解された脂質溶液を250mMの硫酸アンモニウム水溶液に混合し、このときの脂質濃度は32mg/mLであり、混合時の温度は60℃を維持させながら1時間の間攪拌を行った。混合された脂質溶液は、高温押出機(LIPEX、Evonik)を通じて均質化した。高温押出機を用いるとき、内部にポリカーボネートフィルターを0.8μmポアから0.4、0.2μmポアサイズに段階別に減少させて製造した。製造されたリポソームのサイズが100~200nmになるまで繰り返し的に行った。
【0196】
製造されたリポソーム溶液を10%スクロースと10mMヒスチジンの混合液に交換してsize exclusive chromatography(SEC)法又はFPLCを用いたサイズ押出クロマトグラフィー法を行った。SECは、high prep26/10columnを用いて流速10mL/minで行った。
【0197】
その後、ドキソルビシンの積載のために、ドキソルビシン及び表13の組成によるリポソームを1:8質量割合で混合して37℃で1時間の間撹拌した。その後、積載されなかったドキソルビシンは、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて分離した。
【0198】
実施例14:エタノール添加法で製造されたリポソームの超音波感応性の試験
【0199】
エタノール添加法で製造されたドキソルビシンが積載されたリポソームを高強度集束超音波を用いて超音波感応性試験を行った。製造されたリポソームの組成は、表13の通りである。超音波感応の試験のための超音波装備は、実施例2での方法と同一に行った。ドキソルビシンの超音波感応性の試験のために放出される超音波条件は、29kHzの周波数を用い、超音波強さは、92W/cmを用いて60秒間放出した。放出されたドキソルビシンは、SEC法を用いて精製し、475nmの波長での吸光を用いて放出されたドキソルビシンを定量した。
【0200】
【表13】
【0201】
実施例15:MSPCの割合による薬物動態学(pK)試験
【0202】
実施例7で使用された超音波感応性リポソームのうち、MSPCモル比1、5、7%が含有されたリポソームを選別してSprague-Dawleyラットを用いてpK試験を進行した。pK試験に用いられた超音波感応性リポソームの組成は、表14の通りである。
【0203】
【表14】
【0204】
Sprague-Dawleyラットに各リポソームを2mg/kgの用量で静脈投与した後に経静脈を通じて採血を行った。投与後、30分、1、4、12、24、48時間の時点で採血をし、採取された血液の凝固を防止するために抗凝固剤であるヘパリンナトリウムを用いた。その後、12,000rpmで2分間遠心分離を通じて血漿を分離した。LC-MS/MSを用いてドキソルビシンの定量分析を行い、MSPCの割合によるpK変化を評価した。
【0205】
MSPCの割合によるpKの結果は、表15及び図11に示した。その結果、MSPCの割合が高いほど体内に存在する超音波感応性リポソームの容量が増加することを確認した。MSPCの含有量が1%である場合、48時間後にドキソルビシンの濃度が5.1±1.5ng/mLで検出され、5%である場合と7%である場合には、それぞれ34.4±10.3、35.6±17.9の濃度でドキソルビシンが検出された。
【0206】
また、体内半減期は、MSPCの含有量が1、5、7%である場合、それぞれ4.0±0.1、6.4±0.9、5.7±0.7時間を示した。この結果は、MSPCの割合が高いほど体内安定性が向上して血中で長い間維持されることを示し、超音波感応性リポソームの血中安定性を高めることを裏付ける結果である。
【0207】
【表15】
【0208】
前述した本発明の説明は例示のためのものに過ぎず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本明細書に記載された技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更が可能である。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明による超音波感応性リポソームは、封入効率が高く、超音波感応性及びリポソームの安定性に優れ、既存の常用薬物に比べて超音波処理により薬物放出率の増加効果に優れるだけでなく、癌細胞死滅効果及び癌細胞浸透効果を示すことを確認した。したがって、本発明による超音波感応性リポソームは、封入された薬物の伝達効率を増加させ、超音波処理と併用することによって、癌細胞をターゲットとして改善した薬物送達効果を通じて癌治療及び薬物送達体分野においてさまざまな機能を示すことが期待されるところ、産業上利用可能性がある。
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