(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】アームレスト
(51)【国際特許分類】
A47C 7/54 20060101AFI20240125BHJP
B60N 2/75 20180101ALI20240125BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20240125BHJP
B68G 7/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A47C7/54 B
B60N2/75
A47C31/02 Z
B68G7/06 Z
(21)【出願番号】P 2023166580
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2023-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591283501
【氏名又は名称】備前発条株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】谷口 慶倫
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智也
(72)【発明者】
【氏名】山根 教代
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-24170(JP,A)
【文献】特開2016-37054(JP,A)
【文献】特開2012-148023(JP,A)
【文献】特開2011-42311(JP,A)
【文献】特開2003-205523(JP,A)
【文献】実開平7-9151(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-74
A47C 31/02
B60N 2/00-90
B68G 7/00-12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に対して上下回動可能な状態で取り付けられる回動フレームと、
回動フレームを挿入するためのフレーム挿入口を有する袋状の表皮と、
回動フレームの外面を覆った状態で設けられ、回動フレームとともに前記フレーム挿入口内から表皮内に挿入されるクッション材と
を備えたアームレストであって、
外方に突出する複数枚の凸壁部を有する骨格部材が、回動フレームにおける少なくとも先端側外周部に設けられるとともに、
クッション材が、前記凸壁部を両側から挟持する複数組の挟持壁部を有し、
クッション材の挟持壁部が、骨格部材の凸壁部を挟持することによって、回動フレームに対してクッション材が位置決めされるようにした
ことを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
表皮の変形を抑えるための表皮補強部材が、表皮に対して一体的に取り付けられた請求項1記載のアームレスト。
【請求項3】
クッション材が、複数のピースに分割可能な構造とされ、
前記複数組の挟持壁部のうち、少なくとも一部の挟持壁部が、クッション材における一のピースと他のピースとの分割面によって構成された
請求項1記載のアームレスト。
【請求項4】
回動フレームの下側が、クッション材の存在しないクッション材空乏域とされ、
クッション材とは異なる素材からなる封止部材が、クッション材空乏域に嵌め込まれてクッション材空乏域が封止された
請求項1記載のアームレスト。
【請求項5】
骨格部材が、回動フレームとは別部材とされ、
骨格部材を回動フレームの先端側に装着することによって、骨格部材が回動フレームを先端側に延長する構造とされた
請求項1記載のアームレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に据え付けられるアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の座席に据え付けられるアームレストとしては、例えば、特許文献1の
図12に示されるように、座席に対して上下回動可能な状態で取り付けられる回動フレーム11と、回動フレーム11の外側を覆う袋状の表皮14と、表皮14と回動フレーム11との間に配されるクッション材15とを備えたものが知られている。特許文献1のアームレストにおいて、クッション材15は、発泡樹脂を表皮14の内部に注入して発泡させることで形成される(同文献の段落0021を参照。)。このクッション材15によって、アームレストにクッション性を付与し、アームレストの使用感を良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、クッション材となる発泡樹脂を表皮内に注入して発泡させるアームレストでは、発泡樹脂を注入する又は発泡させる際の温度や、発泡樹脂の配合等を厳密に管理する必要がある。また、発泡樹脂がアームレストの機構部(回動フレームの基端側に設けられた、回動フレームの上下回動を司る部分)に漏れ出ると、アームレストの動作に不具合が生ずるおそれがあるため、発泡樹脂を注入する作業には、細心の注意を払う必要がある。さらに、そのような注意を払っていたとしても、表皮又は回動フレーム等と発泡樹脂との間に接着不良が生じるおそれや、発泡樹脂の充填不良が生じるおそれもある。加えて、これらの不具合の有無を確認するためには、破壊検査を行うことが一般的であり、非経済的である。
【0005】
さらにまた、クッション材となる発泡樹脂を表皮内に注入して発泡させる工程は、専用の設備が必要となるため、限られた企業(化学系メーカー)しか対応することができない。また、表皮は、通常、縫製によって袋状に形成されるところ、この縫製工程も、限られた企業(縫製メーカー)しか対応することができない。さらに、アームレストの回動フレームや機構部は、上記の化学系メーカーや縫製メーカーとは異なる企業(機械メーカー)が対応することが一般的である。
【0006】
このため、上記の化学系メーカーは、上記の縫製メーカーから受け取った表皮と、上記の機械メーカーから受け取った回動フレーム等とを組み合わせた後、表皮内に発泡樹脂を注入する必要がある。したがって、アームレストの製造工程が複雑になる。加えて、表皮や回動フレーム等を輸送する必要が生じ、二酸化炭素の排出量が増大ずるだけでなく、それらを輸送する際には、荷姿を整える等の手間も必要となる。このようなアームレストは、少量生産にも適さない。
【0007】
そして、近年は、使用材料をリサイクルする要求が高まってきているところ、クッション材となる発泡樹脂を表皮内に注入して発泡させたアームレストでは、回動フレームにクッション材が一体化した状態となるため、回動フレームからクッション材を綺麗に分離しにくく、リサイクルが難しいという欠点もある。
【0008】
この点、クッション材を予め所定形状に成形しておき、そのクッション材に回動フレームを嵌め込んだ状態で表皮内に挿入するようにすれば、上記の輸送に関わる問題や、リサイクルの問題を解決することができる。しかし、そのようにして製造されたアームレストでは、クッション材が回動フレームや表皮には一体化されていない。このため、アームレストを使用しているうちに、回動フレームに対してクッション材が捩じれる等、クッション材が位置ズレを生じ、アームレストの使用感が悪くなるおそれがある。この点、回動フレームに対してクッション材を接着剤等で貼り付ければ、クッション材の位置ずれを防ぐことはできるものの、クッション材を回動フレームから分離しにくくなり、リサイクルが難しくなる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、予め所定形状に成形されたクッション材を、回動フレームとともに表皮内に挿入するタイプのアームレストにおいて、クッション材を接着剤等で貼り付けなくても、クッション材が回動フレームに対して位置ズレしにくい状態とでき、使用感を良好に保つことや、使用するクッション材の選択の自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
座席に対して上下回動可能な状態で取り付けられる回動フレームと、
回動フレームを挿入するためのフレーム挿入口を有する袋状の表皮と、
回動フレームの外面を覆った状態で設けられ、回動フレームとともに前記フレーム挿入口内から表皮内に挿入されるクッション材と
を備えたアームレストであって、
外方に突出する複数枚の凸壁部を有する骨格部材が、回動フレームにおける少なくとも先端側外周部に設けられるとともに、
クッション材が、前記凸壁部を両側から挟持する複数組の挟持壁部を有し、
クッション材の挟持壁部が、骨格部材の凸壁部を挟持することによって、回動フレームに対してクッション材が位置決めされるようにした
ことを特徴とするアームレスト
を提供することによって解決される。
【0011】
これにより、クッション材が、骨格部材の凸壁部に係止された状態となり、回動フレームに対して動かないようにすることができる。骨格部材の複数枚の凸壁部は、異なる複数方向に設けることによって、回動フレームに対してクッション材がさらに動きにくくすることができる。凸壁部は、平面状にすることもできるし、曲面状にすることもできる。凸壁部を曲面状とする場合には、通常、クッション材の挟持壁部も、曲面状(凸壁部に倣った曲面状)とされる。
【0012】
本発明のアームレストにおいては、表皮の変形を抑えるための表皮補強部材を、表皮に対して一体的に取り付けることも好ましい。表皮は、通常、布地や皮革地(本革だけでなく合成皮革の生地を含む。)等の生地によって形成されるところ、このような生地は、可撓性を有している。このため、表皮内にクッション材を挿入しただけであると、表皮とクッション材とが相対的に動いてしまい、アームレストの形態が崩れる等して、アームレストの使用感が悪くなるおそれがある。この点、上記の表皮補強部材を表皮に取り付けることによって、表皮の断面形状の変形を規制し、表皮とクッション材とが相対的に動きにくくすることができる。
【0013】
本発明のアームレストにおいては、クッション材を、複数のピースに分割可能な構造とし、その分割面を前記挟持壁部とすることも好ましい。骨格部材の凸壁部を様々な方向に設けると、クッション材を複雑な形態とする必要が生ずるところ、上記のように、クッション材を複数のピースで構成することによって、そのような複雑な形態のクッション材を実現しやすくなる。また、クッション材の分割面を挟持壁部として利用することによって、クッション材に設ける切込み(一対の挟持壁部を構成する切込み)を設ける数を減らすこともできる。さらに、骨格部材に対してクッション材を取り付けやすくすることもできる。
【0014】
本発明のアームレストにおいては、回動フレームの下側を、クッション材の存在しないクッション材空乏域とし、クッション材とは異なる素材からなる封止部材を、クッション材空乏域に嵌め込んでクッション材空乏域を封止することが好ましい。これにより、アームレストの使用感に大きな影響を及ぼす部分(回動フレームの上側等)には、高品質な素材(純正材)で形成されたクッション材を配する一方、アームレストの使用感に大きな影響を及ぼさない部分(回動フレームの下側)には、廃材や再生材等で形成された封止部材を配するといったことが可能になる。このため、廃材や再生材を有効活用することができる。
【0015】
本発明のアームレストにおいて、骨格部材は、回動フレームとは別部材とすることが好ましい。これにより、骨格部材をより複雑な形態として、クッション材をより位置決めしやすい形態としやすくなる。また、強度が要求される回動フレームは、高強度な素材(金属等)で形成する一方、それほど強度が要求されない骨格部材は、樹脂(混合樹脂を含む。)や、廃材や、再生材等で形成することもできる。骨格部材を、回動フレームとは別部材にする場合には、回動フレームを短め(本来の長さよりも短め)に形成し、骨格部材を回動フレームの先端側に装着することによって、骨格部材が回動フレームを先端側に延長する構造を採用し、アームレストを軽量化することもできる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によって、予め所定形状に成形されたクッション材を、回動フレームとともに表皮内に挿入するタイプのアームレストにおいて、クッション材を接着剤等で貼り付けなくても、クッション材が回動フレームに対して位置ズレしにくい状態とでき、使用感を良好に保つことや、使用するクッション材の選択の自由度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第一実施形態のアームレストにおいて、回動フレームにクッション材を組み付けている様子を示した斜視図である。
【
図2】第一実施形態のアームレストにおいて、回動フレームに組み付けられたクッション材を表皮内に挿入している様子を示した斜視図である。
【
図3】第一実施形態のアームレストの全体を示した斜視図である。
【
図4】第一実施形態のアームレストにおいて、回動フレームに骨格部材を取り付けている様子を示した斜視図である。
【
図5】第一実施形態のアームレストの全体を示した側面図である。
【
図6】第一実施形態のアームレストを前後方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【
図7】第二実施形態のアームレストの全体を示した側面図である。
【
図8】第二実施形態のアームレストを、
図7におけるY
3-Y
3面で切断した状態を示した断面図である。
【
図9】第三実施形態のアームレストの全体を示した側面図である。
【
図10】第三実施形態のアームレストを、
図9におけるY
4-Y
4面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のアームレストについて、図面を用いて具体的に説明する。以下においては、3つの実施形態(第一実施形態から第三実施形態まで)を例に挙げて、本発明のアームレストを説明する。しかし、これらの実施形態は、あくまで好適な実施形態であり、本発明のアームレストの技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明のアームレストには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0019】
1.第一実施形態のアームレスト
まず、第一実施形態のアームレストについて説明する。
図1は、第一実施形態のアームレストにおいて、回動フレーム10にクッション材30を組み付けている様子を示した斜視図である。
図2は、第一実施形態のアームレストにおいて、回動フレーム10に組み付けたクッション材30を表皮20内に挿入している様子を示した斜視図である。
図3は、第一実施形態のアームレストの全体を示した斜視図である。
図4は、第一実施形態のアームレストにおいて、回動フレーム10に骨格部材40を取り付けている様子を示した斜視図である。
図5は、第一実施形態のアームレストの全体を示した側面図である。
図6は、第一実施形態のアームレストを前後方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図6(a)には、
図5におけるY
1-Y
1面で切断した断面を示し、
図6(b)には、同図におけるY
2-Y
2面で切断した断面を示している。
【0020】
第一実施形態のアームレストは、
図1及び
図2に示すように、回動フレーム10(
図1)と、表皮20(
図2)と、クッション材30(
図1)と、骨格部材40(
図1)とを備えている。
【0021】
回動フレーム10は、座席に対して上下回動可能な状態で取り付けられる。この回動フレーム10の基端側には、機構部50が設けられている。この機構部50によって、アームレストは、その基端側の回動中心線L(
図5)を中心として上下回動可能になる。回動フレーム10は、金属をプレス加工したり、折り曲げ加工したり、溶接したりすること等によって製造される。回動フレーム10は、アームレストの基端側から先端側に向かう略全長にわたって設けてもよいが、第一実施形態のアームレストにおいては、
図4に示すように、回動フレーム10を短め(アームレストの略全長にわたる本来の長さよりも短め)に形成しており、回動フレーム10の先端側に装着した骨格部材40によって、回動フレーム10を先端側に延長する構造を採用している。アームレストの全長は、仕様によって様々であるところ、同構造を採用することによって、アームレストの全長が変わっても容易に対応することが可能となっている。
【0022】
骨格部材40は、回動フレーム10の先端側外周部に設けられる。この骨格部材40には、外方に突出する複数枚の凸壁部αが設けられている。第一実施形態のアームレストにおいては、骨格部材40の左側面及び右側面に、水平方向に突出する凸壁部αを4枚ずつ設け、骨格部材40の上面に、上方向に突出する凸壁部αを4枚設け、骨格部材40の下面に、下方向に突出する凸壁部αを2枚設けている。これらの凸壁部αは、いずれも平面状としているが、曲面状とすることもできる。また、水平方向や上下方向以外の傾斜方向に突出する凸壁部αを設けることもできる。
【0023】
第一実施形態のアームレストにおいては、
図4に示すように、骨格部材40を回動フレーム10とは別部材としており、骨格部材40の内側に回動フレーム10の先端側を挿入することで、回動フレーム10に対して骨格部材40を装着するようにしている。第一実施形態のアームレストにおいて、骨格部材40は、回動フレーム10に対してだけでなく、クッション材30からも分離した状態となっているが、この骨格部材40は、クッション材30と一体に形成することもできる。例えば、クッション材30の内部(
図6の空間γ)に樹脂等をインサート成形することによって、骨格部材40を設けることもできる。この場合、回動フレーム10は、クッション材30内の骨格部材40に対して挿入するようになる。
【0024】
後述するように、骨格部材40は、クッション材30を位置決めする機能を発揮するところ、骨格部材40を回動フレーム10とは別部材としたことによって、骨格部材40をより複雑な形態(クッション材30をより位置決めしやすい形態)とすることが可能となっている。また、骨格部材40は、回動フレーム10ほどの強度は要求されないため、回動フレーム10を高強度な素材(金属等)で形成しながらも、骨格部材40を樹脂(混合樹脂を含む。)や、廃材や、再生材等で形成することもできる。回動フレーム40の先端部分を骨格部材40で形成することによって、アームレストを軽量化することもできる。
【0025】
クッション材30は、アームレストにクッション性を付与するためのものであり、回動フレーム10及び骨格部材40の外面を覆った状態で設けられる。このため、クッション材30の内部には、
図6に示すように、回動フレーム10等を収容する空間γが設けられている。クッション材30は、発泡樹脂材(ウレタンフォーム等)によって、予め所定形状に成形される。クッション材30は、廃材や再生材等によって形成することもできる。
【0026】
クッション材30には、上記の空間γ(
図6)から外方に延びる状態で、複数組の挟持壁部βが形成されている。この挟持壁部βは、骨格部材40の凸壁部αを両側から挟持するための部分である。挟持壁部βの配置や向きは、凸壁部αの配置や向きに一致される。これにより、凸壁部αにクッション材30が係止されて、回動フレーム10に対してクッション材30が位置決めされた状態とすることができる。このため、アームレストの使用感を良好に保つことができる。また、回動フレーム10に対してクッション材30を接着等する必要がなくなるので、クッション材30等のリサイクルも容易となる。
【0027】
クッション材30は、全体を1つの部材で構成してもよいが、第一実施形態のアームレストにおいては、
図1に示すように、クッション材30を、複数のピースに分割可能な構造としている。具体的には、クッション材30を、回動フレーム10の上側を覆う上側クッション材31と、回動フレーム10の下側を覆う下側クッション材32とに分割可能な構造としている。これにより、骨格部材40の凸壁部αを様々な方向に設け、骨格部材40を複雑な形態としても、クッション材30も、その骨格部材40に対応した複雑な形態としやすくなる。また、クッション材30の分割面を、挟持壁部βとして利用することが可能になる。
【0028】
第一実施形態のアームレストにおいては、
図6に示すように、複数組の挟持壁部βのうち、水平方向の凸壁部αを挟持する挟持壁部βが、クッション材30の分割面となっている。これに対して、上向きの凸壁部αや下向きの凸壁部αを挟持する挟持壁部βは、クッション材30に設けた切込みの内壁面となっている。
【0029】
クッション材30を分割可能な構造とする場合において、クッション材30の分割態様は、上述したもの(上下に分割する態様)に限定されない。クッション材30は、左右に分割することもできる。また、クッション材30は、3つ以上のピースに分割することもできる。
【0030】
表皮20は、
図3に示すように、アームレストの外面を覆うための袋状の部材であり、その基端側には、フレーム挿入口21が設けられている。この表皮20は、布地や皮革地(本革だけでなく合成皮革の生地を含む。)等の生地を縫製することによって製造される。表皮20は、端切れ材等で形成することもできる。既に述べたように、クッション材30は、予め所定形状に形成されており、回動フレーム10に対して組み付けるものとなっているところ、
図2に示すように、クッション材30を組み付けた回動フレーム10を、フレーム挿入口21を通じて表皮20内に挿入する。これにより、
図3に示すアームレストが完成する。なお、表皮20が伸縮性の高い生地で形成されている場合には、円形状のフレーム挿入口21からだけでも、表皮20内に回動フレーム10を挿入することができる。しかし、表皮20が伸縮性の低い生地で形成されている場合には、フレーム挿入口21に回動フレーム10が入らない。このため、
図2に示すように、フレーム挿入口21に、スリット状の切込みを設け、フレーム挿入口21を拡大できるようにするとよい。
【0031】
以上のように、第一実施形態のアームレストは、予め所定形状に成形されたクッション材30を、回動フレーム10とともに表皮20内に挿入するものでありながら、クッション材30が回動フレーム10に対して位置ズレしにくいものとなっている。このため、アームレストの使用感を良好に保つことができる。また、クッション材30を表皮20内で発泡させる必要がないため、アームレストの使用感に大きな影響を及ぼす上側クッション材31を、高品質な素材(純正材)で形成する一方、アームレストの使用感に大きな影響を及ぼさない下側クッション材32を、廃材や再生材を使用する等、クッション材に用いる素材の選択自由度が高いものとなっている。
【0032】
2.第二実施形態のアームレスト
続いて、第二実施形態のアームレストについて説明する。第二実施形態のアームレストについては、主に、第一実施形態のアームレストと異なる構成に絞って説明する。第二実施形態のアームレストで特に言及しない構成については、第一実施形態のアームレストと同様の構成を採用することができる。
図7は、第二実施形態のアームレストの全体を示した側面図である。
図8は、第二実施形態のアームレストを、
図7におけるY
3-Y
3面で切断した状態を示した断面図である。
【0033】
第二実施形態のアームレストでは、
図8に示すように、回動フレーム10の下側に、クッション材30の存在しないクッション材空乏域δを設けており、このクッション材空乏域δに、クッション材30とは異なる素材からなる封止部材60を嵌め込んでいる。封止部材60は、
図7に示すように、アームレストの基端側から先端側に至る略全区間に沿って配している。これにより、アームレストの使用感に大きな影響を及ぼす部分(回動フレーム10の上側等)を、高品質な素材(純正材)で形成されたクッション材30を配する一方、アームレストの使用感に大きな影響を及ぼさない部分(回動フレーム10の下側)には、廃材(ウレタンチップ等)や再生材等で形成された封止部材60を配するといったことが可能になる。
【0034】
3.第三実施形態のアームレスト
最後に、第三実施形態のアームレストについて説明する。第三実施形態のアームレストについては、主に、第二実施形態のアームレストと異なる構成に絞って説明する。第三実施形態のアームレストで特に言及しない構成については、第二実施形態のアームレストや、第一実施形態のアームレストと同様の構成を採用することができる。
図9は、第三実施形態のアームレストの全体を示した側面図である。
図10は、第三実施形態のアームレストを、
図9におけるY
4-Y
4面で切断した状態を示した断面図である。
【0035】
第三実施形態のアームレストでは、
図9及び
図10に示すように、表皮20に表皮補強部材70を一体的に取り付けている。表皮補強部材70は、表皮20よりも剛性のある部材(プラスチック材)によって形成される。この表皮補強部材70を一体的に設けるによって、表皮20の断面形状の変形を規制し、クッション材30が表皮20に対して動きにくくすることができる。このため、アームレストの形態を崩れにくくし、アームレストの使用感を良好に保つことができる。
【0036】
上記のように、表皮補強部材70は、表皮20の変形を規制するものであるため、前後方向(アームレストの基端と先端とを結ぶ方向)と左右方向(アームレストの横幅方向)とにある程度広がりを有する形態とされる。また、表皮補強部材70は、表皮20よりも硬いため、表皮20における、使用者の身体が当たりやすい箇所(表皮20の上面や側面)に表皮補強部材70を設けると、アームレストの使用感が悪くなるおそれがある。したがって、表皮補強部材70は、表皮20における、使用者の身体が当たりにくい箇所(表皮20の下面)に設けられる。第三実施形態のアームレストにおいては、表皮補強部材70を帯板状としており、その表皮補強部材70を、アームレストの下側(表皮20の下面に沿った箇所)における、前後方向略中間部から先端部に至る部分に配している。
【0037】
4.その他
上述したアームレストは、各種の座席に設けることができるが、特に、自動車等の車両の座席に据え付けるものとして好適である。
【符号の説明】
【0038】
10 回動フレーム
20 表皮
21 フレーム挿入口
30 クッション材
31 上側クッション材
32 下側クッション材
40 骨格部材
50 機構部
60 封止部材
70 表皮補強部材
α 凸壁部
β 挟持壁部
γ クッション材の内部空間
δ クッション材空乏域
【要約】 (修正有)
【課題】クッション材を、回動フレームとともに表皮内に挿入するタイプのアームレストにおいて、接着剤等で貼り付けなくても、クッション材が回動フレームに対して位置ズレしにくい状態とでき、使用感を良好に保つことや、使用するクッション材の選択の自由度を高めることができるようにする。
【解決手段】車両の座席に対して上下回動可能な状態で取り付けられる回動フレーム10と、フレーム挿入口を有する袋状の表皮と、回動フレームとともにフレーム挿入口内から表皮内に挿入されるクッション材30とを備えたアームレストにおいて、外方に突出する複数枚の凸壁部αを有する骨格部材40を、回動フレームにおける少なくとも先端側外周部に設けるとともに、クッション材に、凸壁部αを両側から挟持する複数組の挟持壁部βを設け、クッション材の挟持壁部βで骨格部材の凸壁部αを挟持することによって、回動フレームに対してクッション材が位置決めされる。
【選択図】
図1