(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】血中循環腫瘍細胞を含む試料を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6806 20180101AFI20240125BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240125BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240125BHJP
C12N 5/09 20100101ALI20240125BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20240125BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20240125BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20240125BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240125BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240125BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240125BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12N15/10 100Z
C12N5/09
C12N5/0784
C12N5/0786
A61K35/15
A61K39/00 Z
A61K45/00
A61P35/00
G01N33/50 P
G01N33/50 Z
(21)【出願番号】P 2023515199
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022026036
(87)【国際公開番号】W WO2023277086
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2021108784
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521288356
【氏名又は名称】ノバセラム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】山下 直秀
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0154799(US,A1)
【文献】特表2018-512380(JP,A)
【文献】特表2018-527935(JP,A)
【文献】LI, H. et al.,Detection of circulating tumor cells from cryopreserved human sarcoma peripheral blood mononuclear cells,Cancer Letters,2017年,Vol.403,p.216-223
【文献】ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法説明文書 第1版,東京ミッドタウン先端医療研究所 インフォームドコンセント(説明と同意)基本方針 [オンライン],2021年01月20日,インターネット:<URL:https://saiseiiryo.mhlw.go.jp/published_plan/index/1/3>,[検索日2022.09.13]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 1/00-7/08
C12Q 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに解析するための被験者由来の血中循環腫瘍細胞を含む試料を調製する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、
容器に接着した細胞を除去することにより単球を除去して血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
必要に応じて、該解析に必要な血中循環腫瘍細胞の純度を確認する工程と、
必要に応じて、該血中循環腫瘍細胞に対して、該解析のための前処理を行う工程とを含み、該試料が、該解析を行うことによって該被験者が有するネオアンチゲンを同定するためのものであ
り、該血中循環腫瘍細胞の単離がフローサイトメトリー分析して該血中循環腫瘍細胞を含む画分をソーティングすることを含む、方法。
【請求項2】
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記血中循環腫瘍細胞が約1×10
4
個以上であ
り、該末梢血単核球細胞からの前記単球の除去は、該末梢血単核球細胞をシャーレに播種しシャーレに付着した細胞を除去することによる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記末梢血単核球細胞が約1×10
7
個以上であ
り、該末梢血単核球細胞からの前記単球の除去は、該末梢血単核球細胞をシャーレに播種しシャーレに付着した細胞を除去することによる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記解析が、全エクソーム解析、全ゲノム解析、RNA-Seq、シングルセルRNA-Seq、プロテオーム解析、およびトランスクリプトーム解析を
さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記血中循環腫瘍細胞からDNA、RNA、またはタンパク質を抽出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに被験者由来の血中循環腫瘍細胞を解析することにより、該被験者が有するネオアンチゲンを同定する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮
条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、
容器に接着した細胞を除去することにより単球を除去して血中循環腫瘍細胞を単離する工程
であって、該単離がフローサイトメトリー分析して該血中循環腫瘍細胞を含む画分をソーティングすることを含む、工程と、
該血中循環腫瘍細胞を用いて解析を行う工程と
を含む、方法。
【請求項11】
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、請求項
10または
11に記載の方法。
【請求項13】
前記血中循環腫瘍細胞が約1×10
4
個以上であ
り、該末梢血単核球細胞からの前記単球の除去は、該末梢血単核球細胞をシャーレに播種しシャーレに付着した細胞を除去することによる、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記末梢血単核球細胞が約1×10
7
個以上であ
り、該末梢血単核球細胞からの前記単球の除去は、該末梢血単核球細胞をシャーレに播種しシャーレに付着した細胞を除去することによる、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項16】
該解析が、全エクソーム解析、全ゲノム解析、RNA-Seq、シングルセルRNA-Seq、プロテオーム解析、およびトランスクリプトーム解析を
さらに含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記血中循環腫瘍細胞からDNA、RNA、またはタンパク質を抽出する工程を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項18】
さらに、前記DNAまたはRNAからDNA/RNAシーケンスライブラリを作成する工程と、
前記シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定する工程とを含み、前記血中循環腫瘍細胞の純度が少なくとも約20%である、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記解析が、前記DNAの全エクソーム解析を含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記解析が、さらに、前記血中循環腫瘍細胞のプロテオーム解析を含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、請求項
17に記載の
方法。
【請求項22】
被験者が有するネオアンチゲンおよび単球を用いた樹状細胞療法のための細胞を製造する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、
容器に接着した細胞を除去することにより単球を除去して血中循環腫瘍細胞を単離する工程
であって、該単離がフローサイトメトリー分析して該血中循環腫瘍細胞を含む画分をソーティングすることを含む、工程と、
該血中循環腫瘍細胞からDNAまたはRNAを抽出し、DNA/RNAシーケンスライブラリを作成する工程と、
該シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定する工程と、
該ネオアンチゲンを樹状細胞に導入する工程と
を含む、方法。
【請求項23】
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、請求項
22または
23に記載の方法。
【請求項25】
前記血中循環腫瘍細胞が約1×10
4
個以上であ
り、該末梢血単核球細胞からの前記単球の除去は、該末梢血単核球細胞をシャーレに播種しシャーレに付着した細胞を除去することによる、請求項
22に記載の方法。
【請求項26】
前記末梢血単核球細胞が約1×10
7
個以上であ
り、該末梢血単核球細胞からの前記単球の除去は、該末梢血単核球細胞をシャーレに播種しシャーレに付着した細胞を除去することによる、請求項
22に記載の方法。
【請求項27】
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項28】
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、請求項
22に記載の方法。
【請求項29】
前記樹状細胞は、前記アフェレーシスによって前記被験者から得られたものであるか、または前記単球から誘導されるものである、請求項
22に記載の方法。
【請求項30】
さらに、前記単球を用いて前記樹状細胞を誘導する工程を含む、請求項
22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、増殖をせずに解析するための被験者由来の血中循環腫瘍細胞を含む試料を調製する方法、および増殖をせずに被験者由来の血中循環腫瘍細胞を解析する方法に関する。特に本開示は、被験者が有するネオアンチゲンを同定するための試料を調製する方法、およびその試料から被験者が有するネオアンチゲンを同定する方法、さらに被験者が有するネオアンチゲンを用いた樹状細胞療法のための細胞を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、免疫チェックポイント阻害剤の次世代の免疫療法としてネオアンチゲンを用いたがん免疫療法が注目されている。ネオアンチゲンはネオ抗原または新生抗原とも呼ばれ、がん細胞で起こる遺伝子変異により、新たに出現した変異抗原である。ネオアンチゲンは個々の患者によって異なるため、個別化医療への応用が期待されている。またがん組織内で新たに発生するネオアンチゲンは強力な免疫反応を引き起こすことが知られており、免疫チェックポイント阻害剤などのがん免疫療法と好相性であることも示唆されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らは、ネオアンチゲン同定のための試料として従来必要とされている量の腫瘍組織を用いずに、患者の血液試料からネオアンチゲンを同定する手法を見出した。また本発明者らは、患者の血液試料からネオアンチゲン同定以外の解析に使用し得る試料を調製する手法を見出した。
【0004】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目X1)
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに解析するための被験者由来の血中循環腫瘍細胞を含む試料を調製する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
必要に応じて、該解析に必要な血中循環腫瘍細胞の純度を確認する工程と、
必要に応じて、該血中循環腫瘍細胞に対して、該解析のための前処理を行う工程と
を含む、方法。
(項目X2)
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、上記項目に記載の方法。
(項目X3)
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X4)
前記血中循環腫瘍細胞を単離する工程は、モノクローナル抗体を用いて、またはサイズ分画によって行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X5)
前記血中循環腫瘍細胞が約1×103個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X6)
前記末梢血単核球細胞が約1×104個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X7)
前記モノクローナル抗体が、抗EpCAM抗体、抗Vimentin抗体、抗N-Cadherin抗体、抗CD20抗体、抗E-Cadherin抗体、抗Desmoglein-3抗体、抗Syndecan-1抗体、抗CD99抗体、抗CD81抗体、及びPAX3抗体を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X8)
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X9)
前記解析が、全エクソーム解析、全ゲノム解析、RNA-Seq、シングルセルRNA-Seq、プロテオーム解析、およびトランスクリプトーム解析を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X10)
前記試料が、前記解析を行うことによって前記被験者が有するネオアンチゲンを同定するためのものである、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X11)
さらに、前記血中循環腫瘍細胞からDNA、RNA、またはタンパク質を抽出する工程を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X12)
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X13)
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに被験者由来の血中循環腫瘍細胞を解析する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
該血中循環腫瘍細胞を用いて解析を行う工程と
を含む、方法。
(項目X14)
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X15)
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X16)
前記血中循環腫瘍細胞を単離する工程は、モノクローナル抗体を用いて、またはサイズ分画によって行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X17)
前記血中循環腫瘍細胞が約1×103個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X18)
前記末梢血単核球細胞が約1×104個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X19)
前記モノクローナル抗体が、抗EpCAM抗体、抗Vimentin抗体、抗N-Cadherin抗体、抗CD20抗体、抗E-Cadherin抗体、抗Desmoglein-3抗体、抗Syndecan-1抗体、抗CD99抗体、抗CD81抗体、及びPAX3抗体を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X20)
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X21)
該解析が、全エクソーム解析、全ゲノム解析、RNA-Seq、シングルセルRNA-Seq、プロテオーム解析、およびトランスクリプトーム解析を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X22)
上記項目のいずれか一項に記載の方法によって前記被験者由来の前記血中循環腫瘍細胞を解析することにより、前記被験者が有するネオアンチゲンを同定する方法。
(項目X23)
さらに、前記血中循環腫瘍細胞からDNA、RNA、またはタンパク質を抽出する工程を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X24)
さらに、前記DNAまたはRNAからDNA/RNAシーケンスライブラリを作成する工程と、
前記シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定する工程と
を含み、前記血中循環腫瘍細胞の純度が少なくとも約20%である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X25)
前記解析が、前記DNAの全エクソーム解析を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X26)
前記解析が、さらに、前記血中循環腫瘍細胞のプロテオーム解析を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X27)
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X28)
被験者が有するネオアンチゲンを用いた樹状細胞療法のための細胞を製造する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
該血中循環腫瘍細胞からDNAまたはRNAを抽出し、DNA/RNAシーケンスライブラリを作成する工程と、
該シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定する工程と、
該ネオアンチゲンを樹状細胞に導入する工程と
を含む、方法。
(項目X29)
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X30)
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X31)
前記血中循環腫瘍細胞を単離する工程は、モノクローナル抗体を用いて、またはサイズ分画によって行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X32)
前記血中循環腫瘍細胞が約1×103個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X33)
前記末梢血単核球細胞が約1×104個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X34)
前記モノクローナル抗体が、抗EpCAM抗体、抗Vimentin抗体、抗N-Cadherin抗体、抗CD20抗体、抗E-Cadherin抗体、抗Desmoglein-3抗体、抗Syndecan-1抗体、抗CD99抗体、抗CD81抗体、及びPAX3抗体を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X35)
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X36)
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X37)
前記樹状細胞は、前記アフェレーシスによって前記被験者から得られたものであるか、または前記単球から誘導されるものである、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目X38)
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに血中循環腫瘍細胞を解析することにより被験者を治療または予防する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
該血中循環腫瘍細胞を用いて解析を行う工程と、
該解析結果に基づいて、該被験者を治療または予防する工程と
を含む、方法。
(項目X39)
該解析が、全エクソーム解析、全ゲノム解析、RNA-Seq、シングルセルRNA-Seq、プロテオーム解析、およびトランスクリプトーム解析を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
【0005】
また本開示は以下も提供する。
(項目1)
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに配列決定することにより、被験者が有するネオアンチゲンを同定するための試料を調製する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
必要に応じて、ネオアンチゲンの同定に必要な血中循環腫瘍細胞の純度を確認する工程と、
該血中循環腫瘍細胞を、ネオアンチゲンを同定するための試料として提供し、及び/または該血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出する工程と
を含む、方法。
(項目2)
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、上記項目に記載の方法。
(項目3)
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
前記血中循環腫瘍細胞を単離する工程は、モノクローナル抗体を用いて、またはサイズ分画によって行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記血中循環腫瘍細胞が約1×103個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記末梢血単核球細胞が約1×104個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記モノクローナル抗体が、抗EpCAM抗体、抗Vimentin抗体、抗N-Cadherin抗体、抗CD20抗体、抗E-Cadherin抗体、抗Desmoglein-3抗体、抗Syndecan-1抗体、抗CD99抗体、抗CD81抗体、及びPAX3抗体を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目A1)
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに配列決定することにより、被験者が有するネオアンチゲンを同定するための試料を調製する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
必要に応じて、ネオアンチゲンの同定に必要な血中循環腫瘍細胞の純度を確認する工程と、
該血中循環腫瘍細胞を、ネオアンチゲンを同定するための試料として提供し、及び/または該血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出する工程と
を含む、方法。
(項目B1)
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに配列決定することにより、被験者が有するネオアンチゲンを同定する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
該血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出し、DNA/RNAシーケンスライブラリを作成する工程と、
該シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定する工程と
を含み、該血中循環腫瘍細胞の純度が少なくとも約20%である、方法。
(項目B2)
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B3)
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B4)
前記血中循環腫瘍細胞を単離する工程は、モノクローナル抗体を用いて、またはサイズ分画によって行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B5)
前記血中循環腫瘍細胞が約1×103個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B6)
前記末梢血単核球細胞が約1×104個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B7)
前記モノクローナル抗体が、抗EpCAM抗体、抗Vimentin抗体、抗N-Cadherin抗体、抗CD20抗体、抗E-Cadherin抗体、抗Desmoglein-3抗体、抗Syndecan-1抗体、抗CD99抗体、抗CD81抗体、及びPAX3抗体を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B8)
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目B9)
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C1)
被験者が有するネオアンチゲンを用いた樹状細胞療法のための細胞を製造する方法であって、
アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、
単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、
該血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出し、DNA/RNAシーケンスライブラリを作成する工程と、
該シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定する工程と、
該ネオアンチゲンを樹状細胞に導入する工程と
を含む、方法。
(項目C2)
前記アフェレーシス条件が、スピルオーバーボリューム及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C3)
前記アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C4)
前記血中循環腫瘍細胞を単離する工程は、モノクローナル抗体を用いて、またはサイズ分画によって行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C5)
前記血中循環腫瘍細胞が約1×103個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C6)
前記末梢血単核球細胞が約1×104個以上である、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C7)
前記モノクローナル抗体が、抗EpCAM抗体、抗Vimentin抗体、抗N-Cadherin抗体、抗CD20抗体、抗E-Cadherin抗体、抗Desmoglein-3抗体、抗Syndecan-1抗体、抗CD99抗体、抗CD81抗体、及びPAX3抗体を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C8)
さらに、前記血中循環腫瘍細胞を凍結する工程を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C9)
前記DNAまたはRNAが、少なくとも約100pg抽出される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目C10)
前記樹状細胞は、前記アフェレーシスによって前記被験者から得られたものであるか、または前記単球から誘導されるものである、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
【0006】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。なお、本開示のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0007】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、以下の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の方法によれば、非侵襲的に患者のネオアンチゲンを同定することができる。本開示の方法は、ネオアンチゲンを用いたがん免疫療法に役立てることができ、個別化医療や、さらには再生医療への展開も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態にかかるネオアンチゲン樹状細胞の作製手順およびそれを用いた樹状細胞療法の流れを示す概要図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態において単離した細胞のフローサイトメトリーによる分析結果を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の他の実施形態にかかるネオアンチゲン樹状細胞の作製手順およびそれを用いた樹状細胞療法の流れを示す概要図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態において単離した細胞のフローサイトメトリーによる分析結果を示す図である。NY肺がん(ステージ4)患者、CTC20-0065 大腸癌(ステージ4)患者、C-0107 卵巣癌(ステージ4)患者の結果を示す。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態において単離した細胞のフローサイトメトリーによる分析結果を示す図である。21-0062乳がん患者(術後)、CTC20-014すい臓がん(ステージ4)患者、C-0082 膵臓癌(ステージ4)患者の結果を示す。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態において単離した細胞のフローサイトメトリーによる分析結果を示す図である。21-0059 十二指腸乳頭部がん(ステージ4)患者、CTC 21-0052肺がん(ステージ4)患者の結果を示す。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態において単離した細胞のフローサイトメトリーによる分析結果を示す図である。CTC20-008肺癌(ステージ4)患者(治療奏功)、21-0060 大腸癌(術後)、21-0063 大腸癌(ステージ4)患者(高齢者)の結果を示す。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態において単離した細胞のフローサイトメトリーによる分析結果を示す図である。CTC20-019膵臓癌(ステージ2B)患者、ID10277 肝臓癌(多発肝がん)患者(治療後CR。その後肝に小さな再発)、T-0014前立腺癌(ステージ4)患者(ホルモン治療が奏功しPSAが216.88から4.91まで著減)の結果を示す。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態において単離した細胞のフローサイトメトリーによる分析結果を示す図である。C-0099(食道癌)(術後)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0011】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0012】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0013】
本明細書において、「ネオアンチゲン」とは、ネオ抗原、新生抗原、腫瘍特異的変異抗原とも呼ばれ、腫瘍細胞内のタンパク質を変化させるDNA突然変異により発生する抗原をいう。ネオアンチゲンは、潜在的に、免疫系により、非自己として認知されうる。
【0014】
本明細書において、「アフェレーシス」とは、一般的には、体外循環によって対象の血液中から1種以上の血液成分(血漿成分、血小板、白血球などの細胞成分)を分離することをいう。体外循環により採血された血液をアフェレーシス血液という。本明細書においては、アフェレーシスによって、対象者の血液を体外循環させて血液成分分離装置に通し、末梢血単核球細胞を採取する。
【0015】
本明細書において、「バフィーコート」とは、全血を遠心分離で沈降させた後の赤血球と血漿の間の白色層をいう。全血は、遠心分離によって、軽比重成分(上清成分)である血漿(乏血小板血漿)と、重比重成分(沈降成分)である赤血球(濃厚赤血球)と、中比重成分であるバフィーコートとに分離される。バフィーコートには、白血球成分と多血小板血漿(血小板含有成分)が含まれる。また「バフィーコートボリューム」とは、採取するバフィーコートの量をいう。
【0016】
本明細書において、「スピルオーバー」とは、アフェレーシスにおいてバフィーコートが十分に濃縮された場合に、バフィーコートを採取するために、返血と採取の切り替えを行うことをいう。スピルオーバーによって余分な血小板およびリンパ球が除去され得る。また「スピルオーバーボリューム」とは、バフィーコートを採取段階に送り込む量をいう。
【0017】
本明細書において「血中循環腫瘍細胞濃縮条件」とは、アフェレーシス条件について言及するとき、アフェレーシスを行う特定の条件であって、その結果得られる区分に血中循環腫瘍細胞が濃縮される条件をいう。代表的には、血中循環腫瘍細胞濃縮条件は、スピルオーバーボリューム、バフィーコートボリューム、またはその組み合わせなどを挙げることができ、これらの値を特定の条件にすることで達成することができる。血中循環腫瘍細胞濃縮条件を達成するために、スピルオーバーボリュームは約5~約15mlであり得、好ましくは、約7~14ml、さらに好ましくは約9~約12mlであることが有利であり得る。また血中循環腫瘍細胞濃縮条件を達成するためには、バフィーコートボリュームは、約5~約15mlであり得、好ましくは約6~約12ml、さらに好ましくは、約7~約10mlであり得る。血中循環腫瘍細胞濃縮条件を達成するために、好ましくは、スピルオーバーボリュームおよびバフィーコートボリュームを上記好ましい条件の組み合わせにすることがさらに有利であり得る。
【0018】
本明細書において、「末梢血単核球細胞」とは、PBMCとも呼ばれ、円形核を有する任意の末梢血細胞を指す。正常な末梢血単核球細胞は、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)および単球からなる。本開示において、末梢血単核球細胞成分にCTCが実質的に含まれることが初めて見いだされた。
【0019】
本明細書において、「単球」とは、白血球の一種で、最も大きなタイプの白血球である。マクロファージや、樹状細胞に分化することができる細胞をいう。単球は、脊椎動物の自然免疫の一部としても、また適応免疫の過程にも影響をもつ。ヒトの血液には少なくとも3種類の単球が存在するといわれている。
【0020】
本明細書において、「血中循環腫瘍細胞」とは、CTCとも呼ばれ、原発腫瘍(原発巣)または転移腫瘍(転移巣)から血管内またはリンパ管内へと浸透した腫瘍細胞のうち、血液中を循環する循環腫瘍細胞をいう。CTCは、例えば、がん患者の末梢血流を循環する腫瘍細胞として存在する。CTCは、癌の検出及び進行において予測的及び予後的な機能をもつと考えられる血液ベースのマーカーである。多くの種類の癌が、CTCを生じさせることが知られている。CTCは、有核、CD45陰性、及びサイトケラチン陽性の細胞であり、腫瘍マーカー、肉腫マーカー、骨肉腫マーカーの少なくとも1つが発現されている。全血からのCTCの単離は、CTCが非常に少ないため、技術的に困難である。
【0021】
本明細書において、「樹状細胞」とは、DCとも呼ばれ、ヒトにおいて細胞性免疫応答の開始および制御のため強力な抗原提示細胞をいう。樹状細胞は、T細胞の応答性特異的クローンとの相互作用時にその潜在的特性のどちらのセットを発現するかに依存して、免疫賦活性または免疫抑制性のいずれになる場合もあることから、T細胞媒介性免疫反応における非常に重要な中心的役割を果たすと考えられている。一般論として、未成熟樹状細胞は成熟樹状細胞よりも「免疫寛容原性」であり、一方、成熟樹状細胞はそれらの前駆体よりも「免疫原性」であると考えられている。樹状細胞は、単球およびCD34陽性細胞(骨髄細胞)からex vivoで生成される。
【0022】
本明細書において、「腫瘍」または「癌」は、特に限定されるものではないが、例えば、乳癌、消化器/胃腸癌、肛門癌、虫垂癌、肝外胆管癌、消化管カルチノイド腫瘍、結腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、胃腸間質腫瘍(gist)、島細胞腫、成人原発性肝癌、小児肝癌、膵臓癌、直腸癌、小腸癌及び胃癌;内分泌及び神経内分泌癌、例えば膵臓腺癌、副腎皮質癌、膵臓神経内分泌腫瘍、メルケル細胞癌、非小細胞肺神経内分泌腫瘍、小細胞肺神経内分泌腫瘍、副甲状腺癌、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍及び甲状腺癌;眼球癌、例えば眼内黒色腫及び網膜芽腫;泌尿生殖器癌、例えば膀胱癌、腎臓(腎細胞)癌、陰茎癌、前立腺癌、移行細胞腎盂及び尿管癌、睾丸癌、尿道癌及びウィルムス腫瘍;胚細胞癌、例えば小児中枢神経系癌、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍;婦人科癌、例えば子宮頸癌、子宮内膜癌、妊娠性絨毛腫瘍、上皮性卵巣癌、卵巣胚細胞腫瘍、子宮肉腫、膣癌及び外陰癌;頭部及び頸部癌、例えば下咽頭癌、喉頭癌、唇及び口腔癌、原発不明の転移性頸部扁平上皮癌、口腔癌、鼻咽腔癌、口腔咽頭癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、咽頭癌、唾液腺癌及び咽喉癌;白血病、例えば成人急性リンパ性白血病、小児性急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、小児性急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病及び有毛細胞白血病;多発性骨髄腫、例えば悪性プラズマ細胞;リンパ腫、例えばAIDS-関連リンパ腫、皮膚t-細胞リンパ腫、成人ホジキンリンパ腫、小児性ホジキンリンパ腫、妊娠中のホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、成人非ホジキンリンパ腫、小児性非ホジキンリンパ腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、セザリー症候群及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症;筋骨格癌、例えばユーイング肉腫、骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫、小児性横紋筋肉腫及び軟組織肉腫;神経癌、例えば成人脳腫瘍、小児性脳腫瘍、星細胞腫、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形/横紋筋様腫瘍、中枢神経系胚芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、神経芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;呼吸器/胸部癌、例えば非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫、胸腺腫及び胸腺癌;並びに皮膚癌、例えばカポジ肉腫、黒色腫及び扁平細胞癌、原発不明癌を示す。
【0023】
本明細書において、「同定する」または「同定」は、ネオアンチゲンの存在を可視化することを示す。
【0024】
本明細書において、「単離する」または「単離」は、対象の試料中に存在する他の細胞種からCTCなどの目的の細胞を物理的に分離することをいう。
【0025】
本明細書において、「全エクソーム解析」とは、全ゲノムのうち、エキソン配列のみを網羅的に解析する手法をいい、単に「エクソーム解析」ともいう。具体的には、ゲノムからエキソン領域を濃縮し、次世代シーケンサー(NGS)などにより塩基配列を決定し、得られたリード配列を参照配列にマッピングした後、SNVを検出し、アノテーションの付与を行うことによってエキソン配列を解析することができる。「エクソーム解析」という場合には、DNAの特定領域のみを調べるターゲットシーケンスによって一部のエクソームのみを解析する場合が含まれる。
【0026】
本明細書において、「全ゲノム解析」とは、生体のゲノムを構成する全てのDNAの塩基配列を解析する手法であり、得られた塩基の配列情報から変異の検出を行う。具体的には抽出したDNAを断片化してライブラリを作製し、次世代シーケンサーを用いて塩基配列の決定(シーケンシング)を行う。その後バイオインフォマティックス解析により変異を検出する。本明細書で「ゲノム」という場合は、狭義のゲノム(生物が正常な生命活動を営むために必要な、最小限の遺伝子群を含む染色体の一組)のみならず、染色体を構成しないような遺伝情報をコードするものも含まれる。
【0027】
本明細書において、「RNA-Seq」とは、RNAシーケンスまたはRNAシーケンシングをいい、細胞中のmRNAやmiRNAの配列を解読して、発現量の定量、新規転写配列の発見などを行う手法である。次世代シーケンサーを用いて取得したリード情報を解析することによって行われる。またシングルセルRNA-Seqとは、シングルセルから得られたRNAを用いてRNAシーケンスを行う手法である。
【0028】
本明細書において、「プロテオーム解析」とは、遺伝子情報と細胞内で複雑に相互作用している多様なタンパク質との関係を明らかにする解析のことをいい、タンパク質の構造および機能を対象とした大規模な解析手法であって、タンパク質を網羅的に解析することができる。プロテオームとは、特定の細胞、器官および臓器の中で生産されているタンパク質全体のことであり、例えば、タンパク質を分離する技術である二次元電気泳動法は、分解能が高く、一度で数千種類のタンパク質を検出できるため、タンパク質等の生体サンプルの分離方法として使用することができる。
【0029】
本明細書において、「トランスクリプトーム解析」とは、特定の細胞生物学的な状況下において、1個あるいは増殖した、同様の分化状態にある生物の細胞中に存在する、全てのmRNA(または、一次転写産物、トランスクリプト)を解析するものである。mRNAは、その細胞が発生の過程で受けた細胞外からの影響の積み重ねによって色々と変化するため、現在の細胞の性質を詳細に解析することが可能となる。具体的には、マイクロアレイ等を用いて解析が行われる。例えば、比較対象となる細胞と比較して、血中循環腫瘍細胞に、がん細胞の無限増殖能、侵潤、転移、耐性、再発などに関与するmRNAや、変異したがん遺伝子に対応するmRNAや、変異したがん抑制遺伝子に対応するmRNA、がん関連遺伝子に対するmRNAが多く存在する場合には、その血中循環腫瘍細胞の性質の特定が可能となる。
【0030】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0031】
核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに配列決定することにより、被験者が有するネオアンチゲンを同定するための試料を調製する方法であって、アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、必要に応じて、ネオアンチゲンの同定に必要な血中循環腫瘍細胞の純度を確認する工程と、該血中循環腫瘍細胞を、ネオアンチゲンを同定するための試料として提供し、及び/または該血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出する工程とを含む、方法が提供される。本開示の方法においては、核酸増幅や培養増殖を行わないため、核酸増幅による増幅エラーや培養増殖における変異導入が生じることがなく、被験者由来の試料における悪性腫瘍の多様性をそのまま反映させることができる点で有利である。
【0032】
本開示の他の一局面において、核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに配列決定することにより、被験者が有するネオアンチゲンを同定するための試料を調製する方法であって、アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程と、単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、必要に応じて、ネオアンチゲンの同定に必要な血中循環腫瘍細胞の純度を確認する工程と、該血中循環腫瘍細胞を、ネオアンチゲンを同定するための試料として提供し、及び/または該血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出する工程とを含む、方法が提供される。
【0033】
また他の局面において、核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに配列決定することにより、被験者が有するネオアンチゲンを同定する方法であって、アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、該血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出し、DNA/RNAシーケンスライブラリを作成する工程と、該シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定する工程とを含み、該血中循環腫瘍細胞の純度が少なくとも約20%である、方法が提供される。
【0034】
ネオアンチゲン同定のためには、通常、生検により、または手術過程に際して、約30mgの腫瘍組織が必要とされる。しかし、患者に対する生検や外科的手術は負担が大きく、ネオアンチゲンの同定のためだけの生検や手術は一般に現実的ではない。そのため、本開示の一実施形態においては、より少ない腫瘍組織、好ましくはアフェレーシスを用いて被験者から採取された末梢血単核球細胞を用いてネオアンチゲンを同定するための試料を調製することができる。一実施形態において、アフェレーシスの条件はスピルオーバーボリューム、及び/またはバフィーコートボリュームを血中循環腫瘍細胞濃縮条件にすることを含むことができる。一実施形態において、アフェレーシス条件は、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームを含むことができる。また一実施形態において、スピルオーバーボリュームおよびバフィーコートボリューム以外のアフェレーシス条件は、血中循環腫瘍細胞濃縮条件となるような条件であればどのような設定であってもよく、装置のデフォルト条件を用いることができる。
【0035】
また一実施形態において、アフェレーシスは、例えば遠心型血液成分分離装置(コムテック)を用いて行うことができ、血液を血小板、リンパ球、白血球、血漿等の血液成分に分離したり、血漿交換を行うことができる。一実施形態において、このような装置を用いて、末梢血単核球細胞を採取することができる。遠心型血液成分分離装置(コムテック)では、患者/供血者から連続的に全血を採血し、抗凝固処理及び除泡を行った後、遠心力を用いて主要な血液成分に分離する。分離の程度は、インターフェイスの位置、血流と遠心の速度によって決まる。また、その血液成分は、遠心器内で、サイズ、比重によって外側から赤血球-顆粒球-(単球、リンパ球、幹細胞)-血小板の順に分離され、最も内側に血漿が分離される。分離チャンバーには、種々の血液成分のための出口があり、採取を目的とする血液成分以外の成分は、ドリップチャンバー内で再び混合され、患者/供血者に返血される機構になっている。
【0036】
この装置の分離チャンバーの血液細胞の位置を決めるために、チャンバーに光の通過する一列の穴が付いており、その穴の列によりインターフェイスの境界(外側の細胞分画と
内側の血漿分画との境界)が光学的センサーにより自動的に検出される。
【0037】
遠心器の下部に光源があり、このランプから一列の穴に向かって投光され、この穴を通過する光をインターフェイスレシーバー(光学センサー)が不透明な細胞と透明な血漿との間の境界(インターフェイス)の位置を検出する。血漿の存在する部分は、光が通過するので、その穴がカウントされ、血球細胞の存在は、光が通過しないので穴がカウントされない。カウントされる穴の数によって、血液の分離程度が確認できる。即ち、チャンバー内の血液細胞の位置(いくつの穴が細胞によって光が遮られるか)を前もって装置で設定しておけば、実際の分離インターフェイスの位置と比較して、もし穴の数が少なければチャンバー内に血漿が蓄積され、インターフェイスを押し下げることができるように血漿ポンプが停止する。
【0038】
一実施形態において、蓄積した目的の血液成分は、スピルオーバーと呼ばれる、インターフェイスの位置を上昇する工程を経て、血漿の出口ポートを経由して、採取ポンプにより貯留バッグに集積する。
【0039】
遠心型血液成分分離装置(コムテック)の仕様を以下に示す。
1.遠心器
インナーローター回転速度:300~2200rpm
アウターローター回転速度:150~1100rpm
最高回転速度:2200rpm
2.ポンプ
形式:ラインローラーポンプ
速度範囲:0.3~21rpm(採取ポンプ、血漿ポンプ、全血ポンプ、
ACDポンプ/循環ポンプ)
1~28rpm(ACDポンプ)
流速範囲 採血:12.4~120mL/分
血漿:5.12~80mL/分
採取:1.78~80mL/分
抗凝固剤:1.78~17.5mL/分
3.プログラムの種類
Plt-5d:両針法による5日間までの保存のための血小板の採取
Plt-5d-SN:単針法による5日間までの保存のための血小板の採取
PBSC Lymphocyte:末梢血幹細胞やリンパ球の分離
RV-PBSC:少量に濃縮された末梢血幹細胞の採取
BMSC:骨髄からの幹細胞の分離
Granulocyte:顆粒球の採取
MNC:単核球の採取
除去:血漿又は血漿とリンパ球の治療的除去
TPE:治療的血漿交換
吸着:治療的血漿分離
RBC:治療的赤血球交換及び除去
【0040】
上記のような遠心型血液成分分離装置を用いて末梢血単核球細胞を採取する場合、患者の性別、身長、体重、ヘマトクリット値、白血球数などのデータを設定することができる。性別、身長、体重で患者の循環血液量を把握し、そのデータを基に適切な採血流量を設定する。また、ヘマトクリット値を設定することで、血漿ポンプの値を定めることができる。白血球数によって、どのくらい血液を処理すれば適切なバフィーコートが形成され、効率的に採取を行えるかを目的とした数値を計算することができる。また一実施形態において、血液採取の途中で効率的に細胞を回収するための数値「スピルオーバーボリューム」と、どのくらいの量の血液を採取するかを定める「バフィーコートボリューム」を設定することもできる。
【0041】
以下にコムテックを用いた場合の血液成分分離の工程を説明する。
まず装置の電源を入れ、専用ディスポーザブル血液回路(アフェレーシスセット)を装着する。分離チャンバーをチャンバーホルダーに装着した後、プライミングを実施する。一実施形態において、血液成分の分離は以下のようにして行うことができる。
(1)生食ラインを完全に脱気し、ディスプレイに従って分離前の準備を行う。
(2)(Continue)キーを押して、採血針を供血者に穿刺し、供血前サンプルを採取する。返血針を穿刺する。
(3)患者情報を入力する
(4)(Start)キーを押して分離を開始する。分離及び採血は自動的に行われ、目標設定値に達すると自動的に終了する。
【0042】
一実施形態において、コムテックを用いた場合、血液成分を分離した後、以下のようにして返血を行うこともできる。
(1)(Continue)キーを押して、生食ラインのクランプを開放し、供血者から採血ラインを外して返血前の準備を行う。(単針法の場合は採血ラインを外さない。)
(2)(Start)キーを押し、返血を開始する。返血は自動的に行われ、終了する。(3)返血終了後、(Stop)キーを押す。
【0043】
一実施形態において、スピルオーバーは、適宜条件を設定することができる。スピルオーバーボリュームは細胞の採取効率に大きく影響するため、効率的に細胞を回収することができるよう調節される。例えば、被験者の血液の状態によって変動させることができ、被験者におけるしびれの有無、体調などによって調整させることができる。一実施形態において、スピルオーバーボリュームは血中循環腫瘍細胞濃縮条件を達成するための値とすることができ、例えば、スピルオーバーボリュームは約5~約15ml、好ましくは約7~14ml、さらに好ましくは約9~約12mlとすることができる。
【0044】
一実施形態において、バフィーコートボリュームは、目的の細胞を採取することができるように適宜その量を設定することができる。一実施形態において、バフィーコートボリュームは血中循環腫瘍細胞濃縮条件を達成するための値とすることができ、例えば、バフィーコートボリュームは、約5~約15ml、好ましくは約6~約12ml、さらに好ましくは、約7~約10mlとすることができる。
【0045】
一実施形態において、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を達成するために、スピルオーバーボリュームおよびバフィーコートボリュームは、上記条件を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
一実施形態において、遠心型血液成分分離装置は、上記特定の装置に限られるものではなく、末梢血単核球細胞を採取することができるものであればよい。そのような遠心型血液成分分離装置としては、コムテック以外に、スペクトラ オプティア(テルモ社)などを用いることができる。
【0047】
以下にスペクトラ オプティアを用いた場合の血液成分分離の工程を説明する。
まず装置の電源を入れ、装置に血液回路を装着させ、回路のテストおよびプライミングを行う。その後、画面の指示に従って患者/ドナーを接続し、採血ラインと返血ラインのクランプを開き、血液成分の分離を行う。
【0048】
一実施形態において、血液成分の分離中は画面に情報が表示されるため、常に患者/ドナーの状態をモニターし、また採取ポート、RBCインターフェース、採取ラインの濃度の監視を行うことができる。アラームが表示されたとき、または処理中に条件等を変更したい場合は画面の指示に従って調整し、運転を再開することができる。
【0049】
一実施形態において、スペクトラ オプティアを用いる場合には、以下のような成分分離工程を連続的に進めることができる。
(1)回路に付属の採血ラインに導入された患者/ドナーの全血は採血ポンプの働きにより、遠心分離器に装着された回路内のチャネル部に導入される。
(2)血液が凝固しないように一定比率で抗凝固剤が使用される。抗凝固された血液が、患者/ドナーへ返血される。
(3)遠心分離器の回転とともに回転してチャネル内の血液が成分毎に分離される。
(4)遠心分離を経た各成分は、血漿、血小板、赤血球の3ラインのチューブに分かれて遠心分離器より流出し、ポンプ動作により回路内のカセット部に入る。その後、バルブ動作により分岐部を経て、採取バッグ、又はカセット部に構成される返血リザーバーのいずれかに導入される。
(5)返血リザーバーに導かれた血液は返血ポンプの働きにより、返血ラインを経て患者/ドナーに返血される。尚、Exchangeセットにおいては、置換液が置換液/採取ポンプで、置換液ラインを通じてカセット内のリザーバーに導入され、患者に供給される。
【0050】
一実施形態において、上記各工程は安全装置で示した各安全機能によりモニターされることができ、安全機能に係る事態が発生した場合にその状況によって各機能が働くよう設計することができる。また各操作はタッチスクリーン式モニターで行うことができ、運転に必要な患者/ドナー情報や運転プログラムはこのスクリーンを通じて自動制御コンピューターに入力することができる。またイーサネットポートより外部の情報機器と通信を行うことができるが、患者/ドナー環境下でイーサーネットに電気機器を接続しない。
【0051】
本開示の一実施形態において、アフェレーシスによって単離した末梢血単核球細胞の個数は、単球や血中循環腫瘍細胞を単離するのに十分な量であればよく、例えば、少なくとも約10個以上、約1×102個以上、約1×103個以上、約1×104個以上、約1×105個以上、約1×106個以上、約1×107個以上、または約1×108個以上とすることができる。
【0052】
一実施形態において、アフェレーシスに供する試料はネオアンチゲンを同定するために適した任意の試料であってもよく、例えば全血、骨髄、胸膜液、腹水、中心脊髄液、尿、唾液及び気管支洗浄液を含むことができる。一実施形態において、試料は血液であり、例えば全血又はその任意の画分若しくは成分である。本開示での使用に適した血液試料は、血液細胞又はその成分を含有することが知られる、例えば動脈、静脈、抹消組織、臍帯等の任意の供給源から抽出したものであり得る。例えば、アフェレーシスに供する試料は、周知かつ慣用の臨床的方法(例えば全血を吸引及び処理する手順)を用いて取得及び処理される。一つの態様において、例示的な方法は、癌患者からの末梢血の吸引であり得る。
【0053】
アフェレーシスによって得られたPBMCは主にTリンパ球と単球とからなる。PBMCからの単球の単離は本分野で公知の任意の技術を用いて行うことができるが、例えば本開示の一実施形態において、PBMCを分離、播種し、血中循環腫瘍細胞やリンパ球が存在する浮遊細胞を含む上清を回収することで単球を単離することができる。
【0054】
本開示の一実施形態において、単球を単離した末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離することができる。PBMCからの血中循環腫瘍細胞の単離は本分野で公知の任意の技術を用いて行うことができるが、例えば本開示の一実施形態において、浮遊細胞を含む上清として採取した分画から、モノクローナル抗体による単離、サイズ分画、または比重による分別などの手法によってCTCを単離することができる。
【0055】
一実施形態において、単球を単離した末梢血単核球細胞からのCTCの単離に用いるモノクローナル抗体は、例えば、抗EpCAM抗体、抗Vimentin抗体、抗N-Cadherin抗体、抗CD20抗体、抗E-Cadherin抗体、抗Desmoglein-3抗体、抗Syndecan-1抗体、抗CD99抗体、抗CD81抗体、及びPAX3抗体を含むことができる。一実施形態において、癌の種類に応じて、適切な抗体を適宜選択することができ、例えば、EpCAM陰性のすい臓癌の場合にはCD45- Vimentin+やCD45- N-Cadherin+によって単離することができる。
【0056】
他の実施形態において、単球を単離した末梢血単核球細胞からのCTCの単離は、セルサーチシステムや金属メッシュなどを用いたサイズ分画によって行うことができ、例えば、CTC回収用フィルターキット(ScreeCell社)や、金属メッシュ(村田製作所)を用いることができる。一実施形態において、CTC回収用フィルターキット(ScreeCell社)を用いた場合には、全血をフィルターに通す過程でCTCをフィルター上に捕集することができる。抗体を使用しないため、EpCAM(上皮細胞接着分子)の発現がほとんどないEMT(上皮間葉転換)化した細胞も捕集できる。他の実施形態において、金属メッシュ(村田製作所)を用いた場合には、適切なメッシュサイズを選択することで、捕捉する細胞と通過させる細胞とを選択することができるため、目的のCTCのサイズに適したメッシュサイズを選択することにより、CTCだけを捕捉することができる。
【0057】
一実施形態において、単球を単離した末梢血単核球細胞からのCTCの単離は、エリュートリエーターなどを用いて比重で分別することもできる。血液成分は密度が異なるため、全血から末梢血単核細胞とCTCを分離するために密度遠心法(例えば、Ficoll-Paque)(CYTIVA, Marlborough, MA, USA)を用いることもできる。他の実施形態において、密度勾配遠心分離システムと単核細胞の枯渇を高める多孔質バリアを結合させたシステムや、勾配遠心法に免疫親和性アプローチを取り入れ、不要なPBMC細胞をサンプル中の赤血球に架橋し、イミュノロゼットを形成することで、CTCの分離効率を大幅に向上させることもできる。
【0058】
一実施形態において、モノクローナル抗体を用いてCTCを単離する場合には、セルソーターを用いてCTCとコントロール細胞(抗体陽性細胞)とをソーティングすることができる。例えば、セルソーター SH800(ソニー)を用いることができ、その操作手順の一例は以下のとおりである。
【0059】
電源ON
・PCモニター、キーボード、マウス
・コンプレッサー
・本体
・PC
*本体のタンクに水が入っているか確認する。
<PC画面>
PW : fcm
デスクトップのソフト起動
↓
チップを登録(100μm)
↓
NEXT→PUSH OPEN
↓
チップのドアオープン、古いチップがあれば捨てる
↓
CHIP INSERTにチップ挿入 (文字が正面になる向き)
↓
NEXT
↓
レーザー設定、フィルター設定
↓
NEXT
↓
このままで少し待つ。セッティングが完了したら、succesfullyになる。→キャリブレーション(5mlチューブにビーズを入れる)
↓
本体にビーズをセットして、Start (standard、□にはチェック入れない)
↓
このままで少し待つ。キャリブレーションが完了したら、succesfullyになる。
↓
OK
↓
テンプレートを開く(CD45, EpCAMのテンプレート)
↓
Create new experiment
↓
少し流す。Sample puressure 5くらいで少し流して止める。
↓
流した画面を確認して、ゲートをかけてどこを採るか設定する。
↓
L,Rそれぞれに、採りたい区画と数を入力
Method:2Way、Mode:Normal
↓
採ってきた細胞を入れるチューブをセットしてドアを閉める(15mlチューブにCML6mlくらい)。
↓
Load Collection
↓
チューブが奥にセットされる。
↓
Experimentのファイル
↓
名前変更する
↓
流すサンプルをセット
↓
Start
↓
安定してきたら、Sort startする。その際に、recordもスタートする
↓
採りたい数まで到達した方はsortが止まる。サンプルが残り少なくなったら止める。
【0060】
本開示の一実施形態において、ソーティングは以下の手順で行うことができる。
凍結細胞を37℃で溶かす
↓
フィルター ファルコン 凝集細胞を除く
↓
3ml PBS Buffer (2mM EDTA,2%FBS)
↓
遠心 1000rpm、2分、4℃
↓
細胞計数→遠心 1000rpm、2分、4℃
↓
抗体による染色
抗体濃度
CD45 PE 5μg/ml
EpCAM 10μg/ml
↓
氷上に30分
↓
2ml PBS Buffer(2mM EDTA,2%FBS)添加
↓
遠心 1000rpm、2分、4℃
↓
1ml PBS Buffer(2mM EDTA,2%FBS)に懸濁
↓
フィルター、Tube
↓
CML 6ml
CML
1% MEM Non-Essential Amino Acis Solution1% HEPES
1% Sodium Pyruvate
50μM 2-mercaptoethanol
1% Penicillin-Streptomycin
10% FCS(FBS)
500ml RPMI 1640 medium
↓
ソーティング(CD45 PE,EpCAM FITC)
↓
遠心 1800rpm、10分、4℃
↓
懸濁 RLT Buffer 350μl
RLT Buffer:
Buffer RLT Plus (QIAGEN) 1ml
β-ME 10μl
【0061】
本開示の一実施形態において、モノクローナル抗体やサイズ分画によって単離したCTCの純度は、ネオアンチゲンの同定に必要な純度、またはDNAまたはRNAを抽出するのに十分な純度であればよく、例えば、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%などとすることができる。
【0062】
本開示の一実施形態において、モノクローナル抗体やサイズ分画によって単離したCTCの個数は、ネオアンチゲンの同定に必要な量、またはDNAまたはRNAを抽出するのに十分な量であればよく、例えば、少なくとも約10個以上、約1×102個以上、約1×103個以上、約1×104個以上、または約1×105個以上とすることができる。
【0063】
本開示の一実施形態において、末梢血単核球細胞から単離した血中循環腫瘍細胞を凍結することができる。この場合、血中循環腫瘍細胞はネオアンチゲンを同定するための試料として提供可能な品質、または血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出可能な品質に影響がない温度や時間で凍結保存することができ、例えば、液体窒素(-196℃)あるいは超低温槽(-80℃)で約1年間以上の凍結保存が可能である。
【0064】
本開示の一実施形態において、末梢血単核球細胞から単離した血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出することができる。抽出されるDNAまたはRNA量は、DNA/RNAシーケンシングに使用できる量であればよく、例えば、少なくとも約100pgのDNA及び/またはRNAを抽出することができる。他の実施形態において、DNA及び/またはRNAの抽出量は、少なくとも約200pg、約500pg、約800pg、約1ng、約10ng、約30ng、約50ng、約80ng、約100ng、約200ngとすることもできる。
【0065】
本開示の一実施形態において、DNAの抽出は例えば以下の手順で行うことができる。
QIamp(登録商標)DNA MiniによるDNA抽出
20μl Proteinase K ←1.5ml マイクロチューブ
↓
PBS200μlで懸濁したサンプルをこのチューブに添加
↓
200μl Buffer ALを添加 ボルテックスで十分に混和
↓
56 ℃ 10分 インキュベート
↓
スピンダウンしてフタの内側についた溶液を回収
↓
100% エタノール200μl添加 ボルテックスで十分に混和
↓
QIamp Mini Spin Columnにサンプルを添加
↓
フタを閉めて遠心 6,000g, 1分
↓
ろ液とコレクションチューブは捨て、新しいコレクションチューブを付ける
↓
500μl Buffer AW1 添加
↓
フタを閉めて遠心 6,000g, 1分
↓
500μl Buffer AW2 添加
↓
フタを閉めて遠心 12,000g、3分
↓
ろ液を捨てて遠心 12,000g、1分
↓
QIamp Mini Spin Columnを新しい1.5ml マイクロチューブに移す
100μl Buffer AEを添加、室温で1分 インキュベート
↓
遠心 6,000g,1分
O.D測定し、抽出したDNAは-80℃ 保存
【0066】
本開示の他の実施形態において、DNAの抽出は例えば以下の手順で行うことができる。
NucleoSpin(登録商標)Blood L(TAKARA)によるDNA抽出
Proteinase K: Proteinase Buffer PBを加えて溶かす(-20℃で保存)
Wash Buffer B5:100%エタノールを加える
↓
サンプル(最大2×107 cells)細胞(ペレット状)を用いる
↓
PBS 2mlで溶かす
↓
150μl Proteinase Kを入れる
↓
2ml BQ1 激しくボルテックス(10秒)
↓
56℃ でインキュベーション15分 ←ヒートブロックはあらかじめ温めておく
↓
2ml 100%エタノールを入れ、混ぜる
↓
DNA結合
NucleoSpin Blood L Column 3mlをサンプルにロード1回目 4,500g遠心,3分,25℃
↓
NucleoSpin Blood L Column 3mlをサンプルにロード2回目 4,500g遠心,5分,25℃
↓
洗浄1回目
2ml BQ2 4,500g遠心, 2分, 25℃
↓
洗浄2回目、Dry membrane
2ml BQ2 4,500g遠心, 10分, 25℃
↓
DNA抽出 新しい15mlチューブ ←Elution Buffer EBを70℃に温めておく
200μl Buffer BE (70℃に予熱したもの) 2分, インキュベーション,室温
4,500g遠心, 2分,25℃
↓
抽出したDNAは-80℃で保存
【0067】
一実施形態において、RNAの抽出は、本分野において公知のキットや手法を用いて行うことができ、例えば、Rneasyミニキット(QIAGEN)を用いることができる。Rneasyミニキット(QIAGEN)を用いる場合には、以下の手順でRNAを抽出することができる。
【0068】
gDNA Eliminator spin columに添加
↓
遠心 10000g、1分、25℃
↓
遠心で落ちた液に70%エタノール350μl添加
↓
その全量をRneasy Min Elute spin columに添加
↓
遠心 10000g、1分、25℃
↓
Buffer RW1 700μl
↓
遠心 10000g、1分、25℃
↓
Buffer RPE 500μl
↓
遠心 10000g、1分、25℃
↓
80%エタノール 500μl
↓
遠心 10000g、2分、25℃
↓
乾燥 フタを開けて遠心 12000g、5分、25℃
↓
Rnase-free water 14μl
↓
遠心 12000g、1分、25℃
↓
定量(NANO DROP ONE, Thermo SCIENTIFIC)
【0069】
他の実施形態において、キアゾールおよびトリゾールを用いてRNAを抽出する場合には、以下の手順を採用することができる。
凍結細胞を溶かす
↓
PBS(2% FBS,2mM EDTA)3mlに懸濁
↓
遠心 1000rpm、2分、4℃
↓
細胞数計測 1.91×106細胞
↓
500μlずつ2本に分ける(15mlチューブ)
↓
遠心 1000rpm、2分、4℃
↓
QIAzol Lysis reagent 700μl
TRIzol Reagent 700μl
それぞれに懸濁する
↓
クロロホルム 140μl
↓
ボルテックス 白くなるまでよく混ぜる
↓
遠心 12000g、15分、4℃
↓
水層だけ取る(300μl)
↓
100% エタノール 取った水層の1.5倍Volume(450μl)
↓
カラムに添加(2回に分けて添加)
↓
遠心 8000g、1分、25℃
↓
Buffer RWT 700μl
↓
遠心 8000g、1分、25℃
↓
Buffer RPE 500μl
↓
遠心 8000g、1分、25℃
↓
80% エタノール500μl
↓
遠心 8000g、2分、25℃
↓
乾燥 12000g、5分、25℃
↓
エリューション Rnase free Buffer 14μl(CTC20-001→20μlでエリューション)
↓
室温で2~3分おく
↓
遠心 12000g、1分、25℃
【0070】
本開示の一局面において、被験者が有するネオアンチゲンを用いた樹状細胞療法のための細胞を製造する方法であって、アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、該血中循環腫瘍細胞からDNA及び/またはRNAを抽出し、DNA/RNAシーケンスライブラリを作成する工程と、該シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定する工程と、該ネオアンチゲンを樹状細胞に導入する工程とを含む、方法が提供される。
【0071】
本開示の一実施形態において、樹状細胞は、アフェレーシスによって被験者から得られたものであってもよく、または被験者から採取された末梢血単核球細胞から単離された単球から誘導されたものを利用することもできる。
【0072】
一実施形態において、凍結原料から樹状細胞製造を実施するにあたり、アフェレーシス原料の凍結保存・搬送、原料融解・洗浄・遠心分離、接着処理後の上清、浮遊細胞の除去、
樹状細胞誘導、樹状細胞成熟化・活性化などを行うことにより、樹状細胞療法のための樹状細胞とすることができる。
【0073】
本開示の一実施形態において、アフェレーシスを用いて被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離し、単球除去後のPBMCからCTCを採取し、このCTCを用いて、CTCに発現しているネオアンチゲン蛋白を、CTCのプロテオーム解析により同定することもできる。
【0074】
この場合には、ネオアンチゲン同定のために、CTCと正常細胞からDNAを抽出し、エクソーム解析を行い、その後ソフトウエアでネオアンチゲンを同定することができる。CTCに発現しているネオアンチゲン蛋白についてはCTCのプロテオーム解析によって同定し、DC投与後の末梢血T細胞の解析には、レパトア解析とElispot解析を用いることができる。これにより、CTCを用いて同定したネオアンチゲンのペプチドをDCにパルスし、がん患者の末梢血にネオアンチゲン反応性T細胞を検出できるかどうかを確認する(
図3)。
【0075】
プロテオーム解析については任意の手法によって解析することができ、CTCを用いて解析できるものであれば特に限られないが、例えば以下のような手法で行うことができる。
(1)約1000個から数万個のCTC浮遊液を1000~2000cpmで10~15分遠心し細胞ペレットを作製する。細胞ペレットは-80℃の低温槽あるいは液体窒素容器で保存する。
(2)界面活性剤、凍結融解、浸透圧ショック、のいずれかの方法でCTCのペレットからタンパク質を抽出する。
(3)抽出したタンパク質を、高速液体クロマトグラフ(HPLC)と三連四重極型質量分析計(MS/MS)を組合せた装置(液体クロマトグラフ質量分析計「Liquid Chromatograph-Mass Spectrometry : LC-MS/MS」)で分析する。これによりCTCに発現しているタンパク質を同定する。
【0076】
本開示の一実施形態において、上記のようにして単離したCTCを用いて、エクソーム解析を行うことができる。エクソーム解析については任意の手法によって解析することができ、CTCを用いて解析できるものであれば特に限られないが、例えば以下のような手法で行うことができる。
(1)CTC及びコントロール細胞のtotal DNAからAgilent technologies社のSureSelect All Exonキットを用いて、全エクソームシーケンス解析用ライブラリを作製する。作製されたシーケンスライブラリの品質検査を、Agilent社TapeStationを用いて実施する。
(2)次いでシーケンシングをイルミナ社NovaSeq 6000により行う。
(3)シーケンシングで得られたリードを、GEM(Marco-Sola、et al、2012)を用いてマッピングする。マッピングはSubread(Liao、et al、 2013)、HISAT/HISAT2(Kim、et al、2015)、あるいはKART(Lin and Hsu、2017)でも可能である。次にHTSeqによりマップされたリード数をカウントし、遺伝子発現解析を実施する。マップ結果からThe Genome Analysis Toolkit (GATK)“HaplotypeCaller”(Version:4.0.10.1)を用いてバリアントコールし、vcfファイルを作成する。
【0077】
本開示の一実施形態において、上記のようにして得られたCTCは、ネオアンチゲン同定以外にも、種々の解析に使用することができる。したがって、本開示の他の局面において、核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに解析するための被験者由来の血中循環腫瘍細胞を含む試料を調製する方法であって、アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、必要に応じて、該解析に必要な血中循環腫瘍細胞の純度を確認する工程と、必要に応じて、該血中循環腫瘍細胞に対して、該解析のための前処理を行う工程とを含む、方法が提供される。
【0078】
また本開示の他の局面において、核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに被験者由来の血中循環腫瘍細胞を解析する方法であって、アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、該血中循環腫瘍細胞を用いて解析を行う工程とを含む、方法が提供される。
【0079】
一実施形態において、このような解析は、CTCを用いて行うことができるものであれば特に限られないが、例えば、全エクソーム解析、全ゲノム解析、RNA-Seq、シングルセルRNA-Seq、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析を含むことができる。一実施形態において、本開示の方法によって調製される血中循環腫瘍細胞を含む試料は、上記のような解析を行うことによって、被験者が有するネオアンチゲンを同定するためのものとすることができる。一実施形態において、その他の解析に用いる場合にも、本明細書の他の箇所で説明した特徴を適宜採用することができる。
【0080】
また本開示の一実施形態において、目的の解析に応じて血中循環腫瘍細胞に対して適切な前処理をすることができ、また血中循環腫瘍細胞からDNA、RNA、またはタンパク質を抽出することもできる。このような抽出手段については特に限られるものではなく、目的の解析に使用できるような量や精度で抽出できるものである限り、周知の抽出技術を用いることができる。
【0081】
抽出されるDNAまたはRNA量は、その後の解析に使用できる量であればよく、例えば、少なくとも約100pgのDNA及び/またはRNAを抽出することができる。他の実施形態において、DNA及び/またはRNAの抽出量は、少なくとも約200pg、約500pg、約800pg、約1ng、約10ng、約30ng、約50ng、約80ng、約100ng、約200ngとすることもできる。
【0082】
一実施形態において、このようなDNAまたはRNAを用いてDNA/RNAシーケンスライブラリを作成することができる。例えばネオアンチゲンを同定する場合には、この
シーケンスライブラリの変異情報に基づき、ネオアンチゲンを同定することができる。
【0083】
一実施形態において、上記のとおり、CTCおよび正常細胞由来のDNAを抽出してから、エクソーム解析を行い、またCTCの一部をプロテオーム解析することによりネオアンチゲン蛋白を同定することも可能である。
【0084】
また本開示の他の局面において、核酸増幅及び/または培養による増殖をせずに血中循環腫瘍細胞を解析することにより被験者を治療または予防する方法であって、アフェレーシスを用いて該被験者から採取された末梢血単核球細胞から単球を単離する工程であって、前記アフェレーシスを行うアフェレーシス条件が、血中循環腫瘍細胞濃縮条件を含む、工程と、単球を単離した該末梢血単核球細胞から、血中循環腫瘍細胞を単離する工程と、該血中循環腫瘍細胞を用いて解析を行う工程と、該解析結果に基づいて、該被験者を治療または予防する工程とを含む、方法が提供される。
【0085】
一実施形態において、このような治療または予防する方法においては、本明細書の他の箇所で説明した特徴を適宜採用することができる。
【0086】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0087】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0088】
以下においては、ネオアンチゲン樹状細胞の作製手順について説明する(
図1)。
【0089】
(実施例1:アフェレーシスによる末梢血単核球細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cells)分画の採取)
アフェレーシスのための遠心型血液成分分離装置としては、コムテック(COM.TEC)(登録商標)(フレゼニウスカービ)やスペクトラ オプティア(テルモ)等などがある。
【0090】
右手と左手の肘窩近くの太い静脈(この場所に無い場合は他の場所をさがす)に18Gの針を1本ずつ刺し、片方を採血用、他方を返血用のルートとして確保する。両方のルートを遠心型血液成分分離装置に装着し、被験者(患者)よりPBMCを採取する。遠心型血液成分分離装置のプログラムは「MNC:単核球の採取」を選択する。約1~3時間かけて1×108個~1×109個以上のPBMCを採取する。PBMCには単球、リンパ球、循環癌細胞(CTC)などが含まれ、赤血球、顆粒球、血小板はほとんど含まれない。PBMCは一部の血漿とともに遠心型血液成分分離装置に装着された保存用バッグに保存される。
【0091】
ここでは、アフェレーシス条件が、約9~約12mlのスピルオーバーボリューム、及び/または約7~約10mlのバフィーコートボリュームが好ましいことが示される。本実施例においては、スピルオーバーボリュームを10~11mlで調整し、バフィーコートボリュームを8mlとし、その他の条件は装置における単核球採取用のデフォルト設定で実験を行った。
【0092】
(実施例2:PBMC分画からの樹状細胞の元となる単球の単離)
(1)PBMCの分離と播種
複数の50mlの遠心管にフィコールを20ml入れておく。保存用バッグのPBMCを含む溶液(20~25mL)を遠心管のフィコールに重層する。20℃,500G,30分で遠心し、PBMCが含まれるバフィーコートをピペットで採取して50ml遠心管に入れる。PBSを加えて遠心、上清除去を3から5回繰り返す。最後にAIM培地を入れ40mlにする。PBMCをサスペンドしたAIM培地を少量取り、細胞数を算出し、また血液像検査を行い単球の割合を計測する。これらの数値から得られた単球の総数を求める。
【0093】
最終の単球数が一つのシャーレに1~2×107個/6mlとなるように、PBMCをサスペンドしたAIM培地に必要量のAIM培地を加える。調整したPBMCを含むAIM培地を6mlずつシャーレに播き、30分間インキュベーターに入れる。顕微鏡で底面への細胞の付着を確認してから、上清を除去する。浮遊細胞を含む上清は遠心管に回収しておく。新しいAIM培地を6ml加えた後、インキュベーターに入れ、16~24時間培養する。
【0094】
(2)CTCを含む細胞分画の保存
(1)で得られた浮遊細胞を含む上清にはCTCやリンパ球が存在する。この浮遊液の細胞数や生存率を確認する。浮遊液を遠心管に分注した後、遠心分離して上清を取り除く。1~3×107個の細胞に対し1mlのセルバンカー(登録商標)を加えピペッティングする。細胞懸濁液をクライオチューブに分注し、CTCを単離する施設に輸送するまで-80℃のディープフリーザーで凍結保存する。
【0095】
(3)単球の分化誘導
インキュベーターからシャーレを取り出し、培養上清を用いて培養面を洗浄する。洗浄後、洗浄液を除去し、10mLのAIM培地またはPBSで洗浄し上清を除去する。最終濃度が50ng/mlのIL-4、50ng/mlのGM-CSFを含有するAIM培地をシャーレ1枚につき6~8mLずつ加える。その後インキュベーターに入れ、未熟樹状細胞誘導のため5日間培養する。
【0096】
培養後シャーレをインキュベーターから取り出す。培養上清を除去し、2mlのAIM培地を添加する。シャーレの底面に張り付いている細胞を、セルスクレイパーを用いて剥離し、未熟樹状細胞懸濁液を遠心管に回収する。4℃,500g,5分で遠心した後、上清を除去してAIM培地を加える。複数のシャーレの細胞を一つの遠心管に40ml程度にまとめる。未熟樹状細胞懸濁液の細胞数を計測しておく。
【0097】
未熟樹状細胞懸濁液を遠心して上清を捨て、最終細胞濃度が1~2×107個/6mlになるように、成熟用培地(最終濃度が10μg/mlのピシバニール、50ng/mlのPGE2、20μg/mlのネオアンチゲンペプチドを含むAIM培地)を加える。細胞懸濁液を6~12mlずつシャーレに入れ、インキュベーターで16~48時間培養して成熟樹状細胞に誘導する。
【0098】
(4)成熟樹状細胞の回収と凍結保存
培養上清を用いて成熟樹状細胞のシャーレの培養面をピペッティングする。その後、細胞が含まれた培養液を遠心管に回収する。シャーレに10mlのAIM培地を加え培養面をピペッティングしてAIM培地を遠心管に回収する。これを2回繰り返した後、成熟樹状細胞の懸濁液を4℃,500G,5分遠心して上清を除去する。20mlのAIM培地を加え、セルストレーナーをセットした遠心管に回収する。細胞数を計測した後、この遠心管を4℃,500G,5分で遠心し、上清を除去する。最終細胞濃度が1×107個/mlになるようにセルバンカー溶液にサスペンドし、クライオチューブに分注する。成熟樹状細胞を患者に接種するまで、クライオチューブは-80℃のディープフリーザー、あるいは液体窒素タンクで保存する。
【0099】
(実施例3:CTCの単離)
凍結保存した単球を含まないPBMC(PBMC Mono-)分画を、ドライアイスを入れたシッパーで解析施設に速やかに搬送する。解析施設では凍結状態で搬送されたPBMC Mono-分画を解析するまでディープフリーザーあるいは液体窒素タンクで保存する。
【0100】
解析の際にはまず凍結細胞を37℃で溶かし、フィルターを用いて凝集細胞を除く。残りの単離細胞を3mlのPBS Bufferに浮遊させ、細胞数を計測する。CTC採取用に用いるモノクローナル抗体は、抗EpCAM抗体(上皮系細胞のマーカー)、抗Vimentin抗体、抗N-Cadherin抗体(上皮間葉転換、Mesenchymal Epithelial Transition:EMTのマーカー)、抗CD20抗体(悪性リンパ腫のマーカー)
を含めた、癌腫あるいは肉腫に適切なものを1つ以上選択する。対照のリンパ球についてはCD45抗体を用いる。それぞれの抗体はFITCやPEを含む蛍光物質でラベルしておく。抗体は5~10μg/ml(0.1~100μg)の濃度でCTCに作用させる。その後セルソーター(SONY SH800)を用いてCTCとコントロール細胞(CD45陽性細胞)をソーティングする。
【0101】
ソーティングの例
ソート元細胞数:1×107細胞
PBS Buffer(2mM EDTA,2% FBS)…485μl
CD45 PE(200μg/ml)……………………………10μl
EpCAM FITC (1mg/ml)………………………5μl
500μl
【0102】
採取した細胞を以下の表1および
図2に示す。
【表1】
【0103】
DNA抽出は以下のとおりに行った。
QIamp(登録商標) DNA MiniによるDNA抽出
20μl Proteinase Kを1.5mlマイクロチューブに入れる。PBS200μlで懸濁したサンプルをこのチューブに添加する。さらに200μl Buffer ALを添加しボルテックスで十分に混和する。56℃で10分間インキュベートし、その後スピンダウンしてフタの内側についた溶液を回収する。100% エタノールを200μl添加し、ボルテックスで十分に混和する。QIamp Mini Spin Columnにサンプルを添加し、フタを閉めて6,000gで1分間遠心する。ろ液とコレクションチューブは捨て、新しいコレクションチューブをつける。500μl Buffer AW1を添加する。フタを閉めて6,000gで1分間遠心する。500μl Buffer AW2を添加する。フタを閉めて12,000gで3分間遠心する。ろ液を捨てて12,000gで1分間遠心する。QIamp Mini Spin Columnを新しい1.5ml マイクロチューブに移す。100μl Buffer AEを添加して室温で1分間インキュベートする。6,000gで1分間遠心する。O.Dを測定し、抽出したDNAを-80℃で保存する。
【0104】
抽出された4症例のCTCのDNA
DNAの抽出はNucleoSpin(登録商標) Blood L (TAKARA)でも可能である。
【0105】
採取されたそれぞれの細胞群は遠心して上清を除去した後、350μlのRLTバッファー溶液(Buffer RLT Plus (QIAGEN) 1ml、β-ME(会社名カタログ番号)10μl)にサスペンドする。
【0106】
(実施例4:CTCからのRNAの抽出(RNeasy Mini Kit:QIAGEN))
CTCおよびCD45+細胞が入ったRLTバッファー溶液をgDNA Eliminator spin
columnに作用させ、遠心して採取した溶液に350μlの70%エタノールを添加する。その後Rneasy Min Elute spin columnに作用させ、遠心して採取した溶液にバッファーRW1 700μl添加遠心する。その後、バッファーRPE 500μl、80%エタノール 500μl、Rnase-free water 14μlでそれぞれRW1と同様の処理を行い、最終的にRNAを抽出する。RNA量はNANO DROP ONE(Thermo SCIENTIFIC)を用いて測定する。
【0107】
抽出されたRNAの例を以下の表2に示す。
【表2】
【0108】
RNA抽出は上記方法以外に、キアゾール、トリゾールを用いても可能である。またCTCからは下記の方法でDNAも抽出可能である。
【0109】
CTCから抽出したDNAの全エクソーム解析は以下のようにして行った。
サンプル(total DNA)
↓
エクソン領域の濃縮化、シーケンスライブラリ作製(Agilent technologies社SureSelect All Exon、IDT xGen社エクソームキット)
↓
シーケンシング(NovaSeq 6000システム、イルミナ社)
↓
マッピング(GEM、Subread、HISAT / HISAT2、KART)
↓
バリアントコール(GATAC)
↓
結果(vcfファイル作成)
【0110】
CTC及びコントロール細胞のtotal DNAからAgilent technologies社のSureSelect All Exonキットを用いて、全エクソームシーケンス解析用ライブラリを作製する。作製されたシーケンスライブラリの品質検査を、Agilent社TapeStationを用いて実施する。品質検査の結果、シーケンスライブラリが問題なく作製されたことを確認する。
【0111】
次いでシーケンシングをイルミナ社NovaSeq 6000により行う。
【0112】
引き続きマッピング、発現差異解析、バリアントコールを行う。シーケンスで得られたリードを、GEM(Marco-Sola、et al、2012)を用いてマッピングする。マッピングはSubread(Liao、et al、 2013)、HISAT / HISAT2(Kim、et al、2015)、あるいはKART(Lin and Hsu、2017)でも可能である。次にHTSeqによりマップされたリード数をカウントし、遺伝子発現解析を実施する。マップ結果からThe Genome Analysis Toolkit (GATK)“HaplotypeCaller”(Version:4.0.10.1)を用いてバリアントコールし、vcfファイルを作成する。
【0113】
(実施例5:CTCから抽出したRNAのシーケンス)
・RNAのシーケンスの流れ
サンプル(total RNA)
↓
シーケンスライブラリ作製(NEB rRNA depletion and TruSeq Stranded mRNA library)
↓
シーケンシング(HiSeq2500, 50-base paired-end)
↓
リードのフィルタリング、トリミング(moirai)
↓
マッピング(STAR)
↓
マッピング(HTSeq,egdeR)
↓
バリアントコール(GATK HaplotypeCaller)
↓
結果(vcfファイル作成)
【0114】
CTC及びコントロール細胞のtotal RNAからNEB社 rRNA depleion kitを用いてリボゾーマルRNAを除去したのち、イルミナ社TruSeq Stranded mRNA Sample Prep Kitを用いて、RNA-Seqライブラリを作製する。作製
されたシーケンスライブラリの品質検査をAgilent社TapeStationを用いて実施し、qPCRにより定量する。品質検査の結果、シーケンスライブラリが問題なく作製されたことを確認し、5-plex RNA-Seqライブラリを作製する。
【0115】
次いでシーケンシングとベースコーリングを行う。HiSeq2500のRapid Run Modeのフローセルを使用し、index毎にリードを仕分ける。Total yield、Q30ともに問題ないことを確認する。
【0116】
引き続きマッピング、発現差異解析、バリアントコールを行う。シーケンスで得られたリードを、STARを用いたmoiraiパイプライン(Hasegawa A et al, 2014)によりヒト標準配列hg38にマッピングする。次にHTSeqによりマップされたリード数をカウントし、edgeRにより遺伝子発現解析を実施する。マップ結果からThe Genome Analysis Toolkit (GATK) "HaplotypeCaller" (Version:4.0.10.1)を用いてバ
リアントコールし、vcfファイルを作成する。
【0117】
(実施例6:in silicoでのネオアンチゲンの同定)
CTCとコントロール細胞のRNAシーケンスのvcfファイルによりin silicoでネオアンチゲンを同定し、その中からT細胞の反応があると予測されるものを選択する。解析にはNetMHC、MHCflurry、OpenVax、Neoantimonを含むソフトウエアを使用する。選択されたネオアンチゲンのHLAクラスI、及びクラスIIへの結合ペプチド構造を決定し、それぞれのHLAに対する親和性を予測する。HLA分子への親和性が高いペプチドを作製し(コスモバイオ株式会社、タカラバイオ株式会社などのペプチド合成会社に依頼)、IIの(3)の樹状細胞に投与する。投与するペプチドはHLAクラスIペプチド、HLAクラスIペプチド+クラスIIペプチド、あるいはHLAクラスIとクラスIIを含むロングペプチドのいずれでも良い。
【0118】
Neoantimonは東京大学医科学研究所で開発されたオープンプログラムであるが、環境(Mac/Linux)において、がん細胞に特異的なネオアンチゲン同定のためのソフトウエアである。入力ファイルとして、変異解析プログラムにより作られたvcfファイルを用いることが可能であり、一塩基変異(SNV)や挿入欠失(Indel)、構造多型(SV)などから生成され得る変異ペプチド断片とHLAの親和性を網羅的に計算し、抗原掲示能力の高いペプチド(ネオアンチゲン)を抽出することが可能である(https://github.com/hase62/Neoantimon)。
【0119】
以下の表3及び4に大腸癌症例におけるネオアンチゲンの同定結果を示す。
(1)体細胞変異
【表3】
(2)同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号1~22)
【表4】
【0120】
(実施例7:パルス細胞の製造までのフロー)
ネオアンチゲン-DC製造工程フローを以下に示す。
【0121】
(A)ショートペプチドの場合
5.凍結培地調製及び試薬類分注
5.1.凍結培地調製
5.1.1. DCMの総細胞数を基に凍結培地の必要量及び培地、DMSO、アルブミンの各使用量を算定する。
5.1.2. 遠心管に算定量の培地を量り取る。
5.1.3. 量り取った培地に算定量のDMSOを加え、5回以上転倒混和する。
5.1.4. 5.1.3.に算定量のアルブミンを加え、5回以上転倒混和する。
5.1.5. 調製した凍結培地と等量の培地を遠心管に量りとる。
5.1.6. 凍結培地及び培地を使用直前まで4℃設定の保冷庫で保管する。
【0122】
5.2. DMSO分注
DMSOで溶解する抗原を使用する場合のみDMSOの分注を行う。ただし、既にDMSO溶解済みの抗原(分注したもの等)を同時に使用する場合は本操作は不要。
5.2.1. 注射針を装着したシリンジを用いて、DMSOを0.5mL程度サンプルチューブに量り取る。
5.2.2. 使用直前まで室温で保管する。
【0123】
5.3. 生理食塩水及び蒸留水分注
生理食塩水及び蒸留水で溶解する抗原を使用する場合のみ分注を行う。ただし分注品を使用する場合、本操作は不要。
5.3.1. 生理食塩水及び蒸留水溶のボトルの蓋をアルコール綿で清拭し開封する。
5.3.2. 任意の量をサンプルチューブに量り取る。
5.3.2. 使用直前まで4℃設定の保冷庫で保管する。
【0124】
6. 手順
6.1. 成熟樹状細胞回収
6.1.1. DCM終了からの経過時間が12時間以上36時間以内である事を確認する。
6.1.2. インキュベータからシャーレを取り出し、作業エリアに搬入する。
※シャーレの内1枚、又は観察用シャーレを検鏡する。検鏡した観察用シャーレは破棄する。
※シャーレは原則5枚1組として扱い、1組毎に全てのシャーレに対して下記6.1.3.~6.1.8.の操作を行う。
6.1.3. ピペットを用いて、シャーレ内の細胞を培養上清ごと50mL遠心管に回収する。
DCM時に各抗原でパルスを実施した細胞と、実施していない細胞で遠心管を分ける。
(以下作業、各細胞毎に遠心管を分け、混合しないようにする。)
6.1.4. ペットを用いて、5~10mLの培地でシャーレ底面を満遍なく洗浄し、50mL遠心管に回収する。
6.1.5. ピペットを用いて、シャーレに培地を1~2mL分注する。
6.1.6. シャーレ底面に満遍なくセルスクレーパーをかける。
6.1.7. ピペットを用いて、シャーレから細胞懸濁液を50mL遠心管に回収する。
6.1.8. ピペットを用いて、5~10mLの培地でシャーレ底面を満遍なく洗浄し、50mL遠心管に回収する。
6.1.9. 上記6.1.8.の操作を必要回数行う。
6.1.10. 遠心分離する。
設定条件:500G 5min 4℃
6.1.11. 抗原パルスがある場合は手順「6.2.抗原パルス」、抗原パルスがない場合は手
順「6.3.細胞凍結」に進む。
【0125】
6.2. 抗原パルス
DCMでパルスを実施していない細胞のみ行う。
6.2.1. 遠心分離終了後、上清を除去する。
6.2.2. タッピングでペレットを崩す。
6.2.3. ピペットを用いて、5~20mLの培地で遠心管の各細胞を1本の50mL遠心管(以下「遠心管1」)にまとめる。
※遠心機に温度調節機能がない場合、遠心管1は低接着遠心管の使用が推奨される。
6.2.4. 細胞回収後の遠心管を培地で洗いながら遠心管1にまとめ、40mL程度にメスアップする。(細胞懸濁液1)
※細胞数算定のため液量を量る。
6.2.5. 5回以上転倒混和した後、マイクロピペットを用いてマイクロチューブに50μL採取する。
6.2.6. トリパンブルー染色液で2~20倍に希釈し、血球計算盤を用いて生細胞数及び死細胞数をカウントする。
6.2.7. カウント数から総生細胞数を算出する。
6.2.8. 算出した総細胞数を基に、培地及び抗原の各使用量を算定する。
6.2.9. 抗原をパルスする際、2mg/mLとなるよう指定の溶媒で溶解する。
6.2.10. 遠心管に算定量の培地を量り取る。(使用する抗原の種類数、準備する。)
6.2.11. 各量り取った培地から5mL程度採取し、算定量の各抗原を溶解する。
6.2.12. 6.2.11をシリンジフィルターに通して6.2.10.の培地に添加する(「以下ペプチド添加培地」)。
6.2.13. 細胞懸濁液1を、使用抗原の種類数に遠心管に分注し、遠心分離する。
設定条件:500G 5min 4℃
6.2.14. 遠心分離終了後、50mL試験管に上清を回収する。
6.2.15. 回収した上清をサンプルチューブに1mL採取し、工程参考品とする。
(各遠心管から採取し、一つにまとめて良い)
6.2.16. タッピングでペレットを崩し、各ペプチド添加培地を加え懸濁する。
6.2.17. インキュベータに入れ、30~60分静置する。
設定条件:37℃
6.2.18. 遠心分離する。
設定条件:500G 5min 4℃
【0126】
6.3. 細胞凍結
6.3.1. 遠心分離終了後、上清を除去する。
6.3.2. タッピングでペレットを除去する。
6.3.3. ピペットを用いて、各細胞を培地で洗いながらセルストレーナーをセットした50mL遠心管にまとめ、40mL程度にメスアップする(以下「細胞懸濁液2」)。
※細胞数算定のため液量を量る。
6.3.4. 5回以上転倒混和した後、マイクロピペットを用いてマイクロチューブに細胞懸濁液2を50μL採取する。
6.3.5. トリパンブルー染色液で2~20倍に希釈し、血球計算盤を用いて生細胞数及び死細胞数をカウントする。
6.3.6. カウント数から生細胞数を算出する。
6.3.7. 算出した総細胞数を基に、凍結本数及び培地並びに凍結培地使用量を算定する。6.3.8. 凍結保管用チューブを算定本数用意する。
6.3.9. 細胞懸濁液2を遠心分離する。
設定条件:500G 5min 4℃
6.3.10. 遠心分離終了後、50mL遠心管に上清を回収する。
6.3.11. 回収した上清を安全性試験のために分注する。(各遠心管から採取し、一つに
まとめて良い)
6.3.12. タッピングでペレットを崩す。
6.3.13. 培地で細胞を懸濁し、6.3.7.で算定した「培地使用量」に合せる
6.3.14. 一番細胞数が多いワクチンから、フローサイトメトリー解析検体と製品参考品
の検体を採取する。マイクロピペットを用いて、6.3.13.の懸濁液を0.1mLずつ2本
の凍結保管用チューブに採取し、それぞれに0.4mLの培地、0.5mLの凍結培地を加えて懸濁する。
6.3.15. 6.3.13.の懸濁液に、6.3.7.で算定した「凍結培地使用量」の凍結培地を添加し、緩やかにピペッティングして混和する。
6.3.16. 異物検査を実施する。
6.3.17. 凍結保管用チューブに1mLずつ、全量を分注する。
6.3.18. バイセルに凍結保管用チューブを入れ、-80℃設定のフリーザに静置する。
6.3.19. バイセルを-80℃設定のフリーザに静置後、3時間以上36時間以内に凍結
細胞を-135℃以下設定のフリーザ又は液体窒素保存容器に移動する。
【0127】
(B)ロングペプチドの場合
5.試薬分注
5.1.DMSO分注
必要に応じて、DMSO分注を行う。
5.1.1. 注射針を装着したシリンジを用いてDMSOを適量サンプルチューブに量り取る。
5.1.2. 使用直前まで室温で保管する。
【0128】
5.2.蒸留水または生理食塩水分注
必要に応じて、蒸留水または生理食塩水分注を行う。
5.2.1. 蒸留水または生理食塩水を適量サンプルチューブに量り取る。
5.2.2. 使用直前まで4℃設定の保冷庫で保管する。
【0129】
6. 手順
6.1. 未成熟樹状細胞回収
6.1.1. インキュベータからシャーレを取り出し、作業エリアに搬入する。
※ シャーレの内1枚、又は観察用シャーレを検鏡する。検鏡した観察用シャーレは破棄する。
※ シャーレは原則5枚1組として扱い、1組毎に全てのシャーレに対して下記6.1.2.~6.1.8.の操作を行う。
6.1.2. ピペットを用いて、シャーレ内の細胞を培養上清ごと50mL遠心管に回収する。
6.1.3. ピペットを用いて、5~10mLの培地でシャーレ底面を満遍なく洗浄し、50mL遠心管に回収する。
6.1.4. ピペットを用いて、シャーレに培地を1~2mL分注する。
6.1.5. シャーレ底面に満遍なくセルスクレーパーをかける。
6.1.6. ピペットを用いて、シャーレから細胞懸濁液を50 mL遠心管に回収する。
6.1.7. ピペットを用いて、5~10mLの培地でシャーレ底面を満遍なく洗浄し、50mL遠心管に回収する。
6.1.8. 上記6.1.7.の操作を必要回数行う。
6.1.9. 遠心分離する。
設定条件:500G 5min 4℃
6.1.10. 遠心分離終了後、上清を除去し、タッピングでペレットを崩す。
6.1.11. ピペットを用いて、5~20mLの培地で各遠心管の細胞を1本の50mL遠
心管(以下「遠心管1」)にまとめる。
6.1.12. 細胞回収後の各遠心管を培地で洗いながら遠心管1にまとめ、40mL程度に
メスアップする(以下「細胞懸濁液1」)。
※細胞数算定のため液量を量る。
【0130】
6.2.細胞数計測
6.2.1. 5回以上転倒混和した後、マイクロピペットを用いてマイクロチューブに細胞懸濁液1を50μL採取する。
6.2.2. トリパンブルー染色液で2~20倍に希釈し、血球計算盤を用いて生細胞数及び死細胞数をカウントする。
6.2.3. カウント数から総生細胞数を算出する。
6.2.4. 所定の試薬を使用しない場合は手順「6.3.培地調製(フィルトレーション無)」、使用する場合は手順「6.4.培地調製(フィルトレーション有)」の操作で培地調製を行い、
手順「6.5.細胞播種」の操作を行う。PGE2の場合は未滅菌のPGE2を使用する場合のみフィルトレーションを実施。
【0131】
6.3. 培地調製(フィルトレーション無)
6.3.1. 算出した総生細胞数を基に、シャーレ枚数並びに培地、GM-CSF、IL-4、ピシバニール、PGE2の各使用量を算定する。
6.3.2. 遠心管に算定量の培地を量り取る。
6.3.3. マイクロピペットを用いて、算定量のGM-CSF、IL-4、ピシバニール、PGE2、を添加する(以下「調製培地」)。
【0132】
6.4. 培地調製(フィルトレーション有)
6.4.1. 算出した総生細胞数を基に、シャーレ枚数並びに培地、GM-CSF、IL-4、ピシバニール、PGE2及び抗原の各使用量を算定する。
6.4.2. 抗原Aをパルスする場合、2mg/mLとなるようにDMSOで抗原Aを溶解する。
6.4.3. 抗原Bをパルスする場合、2mg/mlとなるように蒸留水または生理食塩水で抗原Bを溶解する。
6.4.4. 遠心管に培地を量り取る。
※ネオアンチゲンペプチドを2種類以上使用する場合は、医師の指示のもと適宜、別々の遠心管に培地を量り取り、6.4.5.から6.5.7.の操作を遠心管ごとに実施する。
また、ネオアンチゲンペプチドは本工程および次工程で使用する種類を考慮に入れる。
6.4.5. 量り取った培地から5mLを採取し、算定量の抗原A、抗原Bを添加する。
※2種類以上の抗原を使用する場合は、各抗原を別の培地に分注する。
※未滅菌のPGE2を使用する場合は、本工程で添加する。
6.4.6. マイクロピペットを用いて、6.4.4.の培地に算定量のGM-CSF、IL-4、ピシバニール、PGE2を添加する。
6.4.7. 6.4.5.をシリンジフィルターに通して6.4.6.の培地に添加する(以下「調製培地」)。
【0133】
6.5. 細胞播種
6.5.1. シャーレを算定枚数用意する。
6.5.2. 細胞懸濁液を遠心分離する。
設定条件:500G 5min 4℃
※医師の指示のもと適宜、ネオアンチゲンの種類に応じて細胞懸濁液を適当な本数の遠心管に分注する。
6.5.3. 遠心分離終了後、遠心管に上清を回収する。
6.5.4. 回収した上清をサンプルチューブに1mL採取し、工程参考品とする。
6.5.5. タッピングでペレットを崩し、調製培地を加え懸濁する。
6.5.6. ピペットを用いて、シャーレに6mLずつ分注する。
※ 分注の際は十分ピペッティングを行う。
※ 観察用シャーレには2mL分注する。
6.5.7. シャーレをインキュベータに入れ、一晩(12時間以上36時間未満)静置する。
設定条件:37℃ CO2濃度 5.0%
【0134】
以上のようにしてネオアンチゲンペプチドパルス樹状細胞が得られる。
・最終製剤化工程:
・細胞密度の調製(2×107cells/mL)
細胞を培地に懸濁する。
・細胞凍結保存液との混合(1×107cells/mL)
細胞懸濁液(培地)と細胞凍結保存液を1:1で混合する。
使用時に2倍希釈するように調製濃度は濃く(2倍)で作成しておく。
0.1~1×107cells/mLの細胞を0.5~1mL/tubeで凍結保存することも可能。
・クライオチューブ等への充填(1×107cells/1mL/tube)
上記細胞懸濁液をクライオチューブに分注する。
・クライオチューブ(凍結保存細胞)および添付融解剤(生理食塩水)のアンプルへのラベリング
・製剤の保存:凍結保存細胞(≦-80℃)
生理食塩水(室温)
最終製剤(凍結保存細胞+添付融解剤)が得られる。
【0135】
細胞をペレット化し、細胞凍結剤をそのまま添加する方法では以下のようにする。
A:細胞凍結保存液にて細胞を懸濁する(1×107cells/mL)
B:クライオチューブに1mLずつ細胞懸濁液を分注する(1×107cells/1mL/tube)
【0136】
(実施例8:樹状細胞療法)
実施例7で製造したパルス樹状細胞を用いて樹状細胞療法を行う。
1)デキストラン1mLに生理食塩水8mLを加えた溶液(解凍用液)を作製する。
2)液体窒素下で凍結したDC(1×107個/1mL)の入ったクライオバイアルを37℃に加温したヒートブロックを用いて7割程度まで解凍する。
3)解凍用液を遠心管に一部分注し、残りの解凍用液でDCの入ったクライオバイアルを共洗いしながら遠心管に移す(総量10ml)。
4)転倒混和後、カウント用サンプルとして50μL採取し、トリパンブルー染色液で2倍希釈する。血球計算盤を用いて生細胞数及び死細胞数をカウントし、総細胞数、生細胞率を算出する。
5)遠心分離を行う(500g、5min、4℃、アクセル・ブレーキ有)。遠心分離したら、上清除去後、タッピングでペレットを崩す。細胞懸濁液に生理食塩水を加えて約13mLにする。これを2回繰り返す。
6)凍結DCワクチンを生理食塩水0.6~0.8mL程度で再懸濁し、シリンジ(インスリン自己注射用、30G×10mm、0.5mL)に移す。
7)腋窩リンパ節近傍、鼡径リンパ節近傍、あるいは病変が表皮に近い場合はその近傍に、数ヶ所に分けて皮下~皮内投与する。
【0137】
(実施例9:プロテオーム解析)
本実施例では、CTCを採取したのち、CTCに発現しているネオアンチゲン蛋白を、CTCのプロテオーム解析により同定する。プロテオーム解析の手法は以下のとおりである。
(1)約1000個から数万個のCTC浮遊液を1000~2000cpmで10~15分遠心し細胞ペレットを作製する。細胞ペレットは-80℃の低温槽あるいは液体窒素容器で保存する。
(2)界面活性剤、凍結融解、浸透圧ショック、のいずれかの方法でCTCのペレットからタンパク質を抽出する。
(3)抽出したタンパク質を、高速液体クロマトグラフ(HPLC)と三連四重極型質量分析計(MS/MS)を組合せた装置(液体クロマトグラフ質量分析計「Liquid Chromatograph-Mass Spectrometry : LC-MS/MS」)で分析する。これによりCTCに発現しているタンパク質を同定する。
【0138】
(実施例10:種々の癌患者からのCTCの単離)
種々の癌患者由来の末梢血単核球細胞を用いてCTCを単離した。癌患者として、肺癌(ステージ4)、大腸癌(ステージ4)、卵巣癌(ステージ4)、乳癌、膵臓癌(ステージ4)、十二指腸乳頭部癌(ステージ4)、大腸癌(ステージ4)、肝臓癌、多発肝癌、前立腺癌(ステージ4)、食道癌の各患者由来のPBMCを使用した。PBMCの採取、PBMCからの単球の単離、CTCの単離の各手法については、実施例1~3と同様にして行った。
【0139】
結果を
図4~9に示した。
図4~6に示したフローサイトメトリーの分析結果は、CTCが多く取れた症例であり、
図7~9に示したフローサイトメトリーの分析結果は、CTCが少ない症例である。CTCが少ない症例では、治療が奏功している、あるいは手術で癌を完全切除した例となっている。
【0140】
(実施例11:RNAシーケンス、またはエクソーム解析およびプロテオーム解析によるネオアンチゲンの同定)
種々の癌患者から単離したCTCを用いて、RNAシーケンス、またはエクソーム解析によってネオアンチゲンを同定した。結果を以下の表5~13に示した。RNAシーケンスについては実施例5と同様にして行った。表5~8がエクソーム解析によるネオアンチゲン同定の結果である。プロテオーム解析を加えることにより、蛋白として発現しているネオアンチゲンのみを絞り込んで同定することが可能となる。プロテオーム解析のかわりにRNAシーケンスをエクソーム解析に組み合わせることによってもネオアンチゲンの絞り込み同定は可能である。表9~12がRNAシーケンスによるネオアンチゲン同定の結果である。
【0141】
【表5】
同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号23~38)
【0142】
【表6】
同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号39~48)
【0143】
【表7】
同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号49~64)
【0144】
【表8】
同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号65~71)
【0145】
【表9】
同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号72~78)
【0146】
【表10】
同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号79~85)
【0147】
【表11】
同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号86~96)
【0148】
【表12】
同定されたネオアンチゲン(列Neoantigenに記載される配列ついて、上から順に配列番号97~98)
【0149】
(実施例12:CTCを用いた他の解析例~がん以外の疾患)
がん以外の疾患への適用例を説明する。
(1)CTCの遺伝子解析によりドライバー遺伝子を含めた種々の遺伝子変異が明らかになり、分子標的薬の選択が可能となる。
(2)(1)と同様に高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)の検出も可能となり、免疫チェックポイント阻害薬の適応であるかを同定できる。
(3)トランスクリプトーム解析やシングルセルRNA-seqと臨床データを合わせることにより、転移を起こしている(あるいは起こしやすい)症例と起こしていない(あるいは起こしにくい)症例でのCTCの差異を明らかにすることができる。これにより症例の予後予測や転移の生じるメカニズムの解明につながる。
(4)メタボローム解析(メタボローム解析は対象とするサンプルに存在する代謝産物の全ての種類や濃度を網羅的に検出し、その結果を解析することを指し、メタボロミクスとも呼称される)を行うことにより、CTCの代謝特性が明らかなり、(3)の検討がより包括的に可能となる。
【0150】
(実施例13:CTCを用いた他の解析例~健康状態の確認)
健康状態を確認する場合の適用例を説明する。
(1)CTCのエクソーム解析により、悪性腫瘍がレアバリアント変異によるかが検出できる。さらに、血縁者の検査を行うことにより同じ疾患が存在することが明らかになる場合があり、血縁者の早期診断・早期治療が可能となる。
(2)ネオアンチゲン同定の際にはCTCに加え、正常細胞のDNAも抽出できる。この正常DNAの全ゲノム解析あるいはDNAチップ解析により、正常の生殖細胞系列のゲノム配列が決定できる。この配列を元に疾患に関わるレアバリアント変異だけでなくコモンバリアントのリスク計算が可能となる。悪性腫瘍以外の疾患に対する予防医療にも役立つ。
【0151】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許庁に2021年6月30日に出願された特願2021-108784に対して優先権主張をするものであり、その内容はその全体があたかも本願の内容を構成するのと同様に参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本開示の方法によって、非侵襲的に患者のネオアンチゲンを同定することができ、ネオアンチゲンを用いたがん免疫療法の治験に有用である。また再生医療への展開や、細胞治療を中心とした新規医療の開発も期待できる。
【配列表フリーテキスト】
【0153】
配列番号1~22:実施例6で同定したネオアンチゲン
配列番号23~98:実施例11で同定したネオアンチゲン
【配列表】