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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】流量センサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/12 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01P5/12 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020113910
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012232
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】下平 正浩
(72)【発明者】
【氏名】三浦 克哉
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-210666(JP,A)
【文献】特開昭61-133866(JP,A)
【文献】特開平10-281839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0045751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0137765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 5/00-5/26
G01F 1/68- 1/699
G01P13/00-13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状の基体と、
前記基体の表面全体に形成された、温度変化により電気抵抗値が変化する感温膜パターンと、を具備し、
前記感温膜パターンの両端部には、第1配線部と第2配線部が夫々接続されており、前記第1配線部は、前記基体に形成された貫通孔を通って、前記第2配線部と同方向に引き出されており、
前記第1配線部は、前記感温膜パターンの端部と、前記貫通孔の一方の開口を埋める電極を介して接続固定されている、ことを特徴とする流量センサ素子。
【請求項2】
前記感温膜パターンは、前記基体の表面に形成された感温膜がトリミングされて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流量センサ素子。
【請求項3】
前記感温膜パターンは、スパイラルパターンで形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流量センサ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、風速を計測可能な流量センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱した流量検知用抵抗素子を流体に曝し、その際の放熱作用に基づいて流体の流量を検出する熱式の流量センサ素子が知られている。例えば、特許文献1、2には、断面円形状の筐体の表面に、外気と熱伝導により熱交換することで外気から熱的影響を受ける複数の感温素子を分散して貼り付け、筐体の周囲に流れる風の向き及び速さを計測する風状態計測装置が開示されている。特許文献1、2では、感温素子を加熱するために筐体内部にヒータを具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-8370号公報
【文献】特開2020-3354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の構成では、多数の感温素子を筐体の表面に配置する必要があり、感温素子の配置により、センサ感度が、風の吹く方向によって、ばらつきやすい。
【0005】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、無指向性のセンサ感度に優れた流量センサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における流量センサ素子は、球状の基体と、前記基体の表面全体に形成された、温度変化により電気抵抗値が変化する感温膜パターンと、を具備し、前記感温膜パターンの両端部には、第1配線部と第2配線部が夫々接続されており、前記第1配線部は、前記基体に形成された貫通孔を通って、前記第2配線部と同方向に引き出されており、前記第1配線部は、前記感温膜パターンの端部と、前記貫通孔の一方の開口を埋める電極を介して接続固定されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の流量センサ素子においては、球状の基体の表面全体にわたって、感温膜パターンを配置でき、これにより、流体方向にかかわらず一定のセンサ感度を得ることができ、流量の検出精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態における流量センサ素子の側面図である。
図2】本実施の形態における流量センサ素子の断面図である。
図3】本実施の形態における流量センサ素子の斜視図である。
図4】本実施の形態における流量センサ素子の変形例を示す側面図である。
図5】本実施の形態の流量センサ素子の回路図(一例)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
本実施の形態の流量センサ素子1は、熱式の流量センサ素子1であり、電気絶縁性の基体2と、基体2の表面全体に形成された感温膜パターン3と、感温膜パターン3の両端部に夫々、電気的に接続された第1配線部4及び第2配線部5と、を具備して構成される。
【0011】
図1図3に示すように、基体2は、球状である。基体2は、電気的に絶縁物であれば特に材質を問うものではない。一例を示すと、基体2は、例えば、ガラスで形成される。また、基体2の直径を限定するものでなく、使用用途により種々調整することができる。一例を示すと、基体2の直径は4mm程度とすることができる。
【0012】
図1図3に示すように、基体2の表面全体に、感温膜パターン3が形成されている。なお、感温膜パターン3は、基体2の表面に、単一パターンで形成されていることが好ましい。感温膜パターン3は、例えば、基体2の表面に形成された感温膜がトリミングされて形成されたものであることが、基体2の表面全体に均一膜を形成することができ好ましい。トリミング処理には、レーザ処理やエッチング処理などを挙げることができる。なお、感温膜パターン3を、フォトリソグラフィ技術にて形成することにより、製造コストを抑えることが可能になる。ここで、「表面全体」とは、トリミングライン6を除く領域を指す。
【0013】
感温膜パターン3の材質を限定するものではないが、白金(Pt)膜であることが好ましい。白金膜を使用することで、経時劣化を少なくすることができる。これにより、白金からなる耐久性に優れた感温膜パターン3を、基体2の表面全体に形成することができる。
【0014】
また、本実施の形態では、感温膜パターン3のパターン形状を限定するものではないが、図1図3に示すように、感温膜パターン3を、スパイラル(螺旋)パターンで形成することが好ましい。これにより、流量センサ素子1に対して、どの方向から風が当たっても、センサ感度の均一化を図ることができる。
【0015】
感温膜パターン3は、温度変化により電気抵抗値が変化する。感温膜パターン3は、配線部4、5間の導通により温度が高い状態に保持されており、風が当たると感温膜パターン3の温度が低くなることで、感温膜パターン3の電気抵抗値が変化するよう制御されている。
【0016】
本実施の形態では、感温膜パターン3の始端3aと終端3bは、基体2の両端に位置しており、すなわち、始端3a及び終端3bは、反対方向に設けられている。ここで、便宜上、感温膜パターン3の始端3aは、基体2の図示左側端部2a側に位置し、感温膜パターン3の終端3bは、基体2の図示右側端部2b側に位置するものとする。
【0017】
本実施の形態では、感温膜パターン3の始端3a及び終端3bには、夫々、第1配線部4及び第2配線部5が電気的に接続されている。第1配線部4及び第2配線部5は、リード線であり、電気伝導性であれば材質を限定するものではないが、例えば、銅系やニッケル系の線材が錫メッキにより表面処理された被覆銅線を好ましく使用することができる。
【0018】
図2に示すように、感温膜パターン3の始端3aと第1配線部4との接続部、及び感温膜パターン3の終端3bと第2配線部5の接続部には、夫々、電極7、8が設けられている。限定するものではないが、電極7、8は、例えば、導電性接着剤である。これにより、感温膜パターン3の始端3a及び終端3bと各配線部4、5とを適切に接続固定することができる。
【0019】
図2に示すように、基体2の内部には、左側端部2aから右側端部2bにかけて貫通する貫通孔9が設けられている。貫通孔9には、第1配線部4が通されている。貫通孔9の図示左側の開口は、第1配線部4と感温膜パターン3の始端3aとを接続固定する電極7によって埋められている。
【0020】
また、図2に示すように、貫通孔9の図示右側の開口から、第1配線部4が、第2配線部5と同方向(図示右方向)に延出している。第2配線部5と感温膜パターン3の終端3bとを接続固定する電極8は、第1配線部4の、貫通孔9からの延出に邪魔にならない位置に形成されている。
【0021】
図1図2に示す実施の形態では、第1配線部4及び第2配線部5を同一方向に引き出すことができる。このとき、図2に示すように、基体2に貫通孔9を設け、第1配線部4を、貫通孔9内に通すことで、第1配線部4及び第2配線部5と同一方向に引き出すことができる。
【0022】
限定されるものではないが、図2に示すように、本実施の形態における感温膜パターン3が施された基体2の表面には、電気絶縁性の保護膜10が形成されていることが好ましい。例えば、保護膜10を、塗装やスパッタ等で形成することができる。また、保護膜10は、電気絶縁性の材質であれば特に材質を限定するものではないが、一例を示すと、例えば、エポキシ系樹脂を挙げることができる。なお、図1図3には保護膜を図示していない。
【0023】
図1に示すように、基体2の右側端部から同一方向(図示右方向)に延出した第1配線部4と第2配線部5とは、ステー11により一体として固定されている。なお、ステー11は、例えば、接着剤で固定されいる。図1に示すように、第1配線部4及び第2配線部5の右側端部は、ステーから露出しており、図示しない制御装置に電気的に接続されている。なお、ステー11は、図2には図示されていない。
【0024】
図4に示す別の実施の形態では、基体2の左側端部2a側に、感温膜パターン3の始端3aが設けられ、基体2の右側端部2b側に、感温膜パターン3の終端3bが設けられ、第1配線部4及び第2配線部5は、夫々、電極を介して、基体2の両端から離れる方向に延出している。図2に示す実施の形態では、図1に示す実施の形態と異なり、基体2に貫通孔を設ける必要がない。
【0025】
図5は、本実施の形態の流量センサ素子1を含む流量装置の回路図である。図5に示すように、流量センサ素子1と、温度補償用抵抗素子14と、抵抗器26、27とでブリッジ回路28を構成している。図5に示すように、流量センサ素子1と抵抗器26とで第1の直列回路29を構成し、温度補償用抵抗素子14と抵抗器27とで第2の直列回路30を構成している。そして、第1の直列回路29と第2の直列回路30とが、並列に接続されてブリッジ回路28を構成している。
【0026】
図5に示すように、第1の直列回路29の出力部31と、第2の直列回路30の出力部32とが、夫々、差動増幅器(アンプ)33に接続されている。ブリッジ回路28には、差動増幅器33を含めたフィードバック回路34が接続されている。フィードバック回路34には、トランジスタ(図示せず)等が含まれる。
【0027】
抵抗器26、27は、流量センサ素子1、及び温度補償用抵抗素子14よりも抵抗温度係数(TCR)が小さい。流量センサ素子1は、例えば、所定の周囲温度よりも所定値だけ高くなるように制御された加熱状態で、所定の抵抗値Rs1を有し、また、温度補償用抵抗素子14は、例えば、前記の周囲温度にて、所定の抵抗値Rs2を有するように制御されている。なお、抵抗値Rs1は、抵抗値Rs2よりも小さい。限定するものではないが、例えば、抵抗値Rs2は、抵抗値Rs1の数倍~十数倍程度である。流量センサ素子1と第1の直列回路29を構成する抵抗器26は、例えば、流量センサ素子1の抵抗値Rs1と同様の抵抗値R1を有する固定抵抗器である。また、温度補償用抵抗素子14と第2の直列回路30を構成する抵抗器27は、例えば、温度補償用抵抗素子14の抵抗値Rs2と同様の抵抗値R2を有する固定抵抗器である。
【0028】
流量センサ素子1に風が当たると、発熱抵抗である流量センサ素子1の温度は低下し、流量センサ素子1が接続された第1の直列回路29の出力部31の電位が変動する。これにより、差動増幅器33により差動出力が得られる。そして、フィードバック回路34では、差動出力に基づいて、流量センサ素子1に駆動電圧を印加する。流量センサ素子1は、流量センサ素子1の加熱に要する電圧の変化に基づいて風速を換算し出力することができる。風速が変化すると、それに伴い、流量センサ素子1の温度が変化するため、風速を検知することができる。
【0029】
本実施の形態によれば、球状の基体2の表面全体に、感温膜パターン3を形成したことで、どの方向から風が当たっても風の検知が可能であり、無指向性で、且つ均一なセンサ感度を得ることができる。また、本実施の形態では、基体2を球状としたことで、小型化を可能とし、応答性に優れ、また気流を乱しにくい効果もある。
【0030】
感温膜パターン3のパターン形状を限定するものではないが、スパイラルパターンとすることで、球状の基体2の表面全体に、どの方向から風が当たっても、感温膜パターン3には略均等な面積で接触し、より効果的に、センサ感度の均一化を図ることができる。
【0031】
本実施の形態では、流量センサ素子1として風センサ素子を例に挙げたが、液体の流速検知が可能な流量センサ素子であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、無指向性で且つセンサ感度に優れた流量センサ素子を製造することができる。このため、流体の方向が一定でない用途に好ましく適用することができる。本発明では、流量センサ素子を屋外及び屋内問わず使用することができる。本発明の流量センサ素子に、LED等の発光素子を配置して、風を検知した場合に発光するよう構成すれば、イルミネーション用などに適用することができる。また、本発明の流量センサ素子を実験用、分析用などに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 :流量センサ素子
2 :基体
2a :左側端部
2b :右側端部
3 :感温膜パターン
3a :始端
3b :終端
4 :第1配線部
5 :第2配線部
6 :トリミングライン
7、8 :電極
9 :貫通孔
10 :保護膜
11 :ステー
14 :温度補償用抵抗素子
26、27 :抵抗器
28 :ブリッジ回路
29 :第1の直列回路
30 :第2の直列回路
31、32 :出力部
33 :差動増幅器
34 :フィードバック回路
図1
図2
図3
図4
図5