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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】光透過性表示パネル
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/04 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G09F13/04 J
G09F13/04 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017094743
(22)【出願日】2017-05-11
(65)【公開番号】P2018189915
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-04-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】村田 嘉平
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊貴
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】松田 直也
【審判官】古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-18747(JP,A)
【文献】特開2010-120487(JP,A)
【文献】特開2015-66792(JP,A)
【文献】特開2001-347539(JP,A)
【文献】特開2004-84272(JP,A)
【文献】特開2014-86344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/04 - 13/10
B32B 7/023
B60Q 3/14
B60Q 3/60 - 3/68
B60R 13/00 - 13/10
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部分を有する表示パネルであって、
この表示部分では、パネル表面から表面意匠付与層、光拡散層、裏面光源をこの順に設けてあり、
該表面意匠付与層が、基材層と、絵柄層と、最外層となる表面保護層を少なくとも有し、
該基材層が着色したポリオレフィン系樹脂からなり、該表面保護層が透明なポリオレフィン系樹脂からなり、
該表面意匠付与層と該光拡散層を合わせた全光線透過率が3%~50%であることを特徴とする光透過性表示パネル。
【請求項2】
前記光透過性表示パネルにおいて、表示部分と表示部分周囲の意匠が、連続あるいは同一の意匠であることを特徴とする請求項1に記載の光透過性表示パネル。
【請求項3】
前記表面保護層の外層側の面に、エンボスによる凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光透過性表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光透過性表示パネルに関するものである。とくに光の透過によって室内の装飾、あるいは情報の媒体として利用可能な光透過性表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅や建物の内部において、その内装の大部分を占める壁や天井を室内の装飾、あるいは情報の媒体として利用する方法として、プロジェクターなどによって、光を投射してパターンや情報を表示することが可能である。
【0003】
前述のように、プロジェクターを用いた室内の装飾、あるいは情報表示は、一般に行なわれている方法である。しかしながら、プロジェクターを用いる方法においては、パターンあるいは情報を表示しようとする壁面、天井、スクリーン、あるいは裏面に光を投射する位置にプロジェクターを設置する必要があって、プロジェクター、あるいはスクリーンが邪魔になる場合が見られる。
【0004】
またプロジェクターそのものを小さくした場合においても、機器そのものはなくならず、光を投射するための距離は常に必要であって、空間利用の効率を犠牲にすることに変わりはなかった。
【0005】
また、プロジェクターによる室内の装飾、あるいは情報、パターンは投影される壁面が白色に近ければ、目視においてはっきりと表示されるが、濃色の壁面である場合には、目視において見えにくいといった欠点も知られている。
【0006】
あるいは、プロジェクターによる情報、パターンは、室内においても照明や外光の影響を受け、とくに室内が明るすぎる環境である場合には、目視において見えにくい欠点がある。
【0007】
別の方法として、液晶ディスプレイに代表される画像表示用のモニターを設置した場合には、前述の問題点は大きく軽減されるが、壁面、天井、建具の一部を覆い隠すことになるために空間の一体感に乏しい欠点があり、わざわざモニターという表示装置を設置して表示するという不自然な感覚が払拭しきれない。
【0008】
特許文献1には、情報を表示するスクリーンの裏面から光を投射して、表面から視認することのできる、リア型プロジェクター用スクリーンが提案されているが、この場合においても前述のように、光を投射するための距離が必要であって、空間利用の効率を犠牲にするものであった。さらには、スクリーンが周囲から独立して設置されているために不自然な感覚が払拭しきれない。
【0009】
特許文献2には、スクリーンの前面から、プロジェクターからの光を投射し反射させて情報を表示する、反射型映写スクリーンの提案がなされているが、この場合においても前述のように光を投射するための距離が必要であって、プロジェクターが邪魔になる恐れがあるとともに、空間利用の効率を犠牲にするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平6-165095号公報
【文献】特開平6-123920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、室内環境において壁面、天井、建具との一体感を損ねることなく、また空間利用において効率よく、絵柄や情報、パターンの表示を可能にするとともに、より優れた視認性を有する光透過性表示パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、表示部分を有する表示パネルであって、
この表示部分では、パネル表面から表面意匠付与層、光拡散層、裏面光源をこの順に設けてあり、
該表面意匠付与層が、基材層と、最外層となる表面保護層を少なくとも有し、
該基材層が着色したポリオレフィン系樹脂からなり、該表面保護層が透明なポリオレフィン系樹脂からなり、
該表面意匠付与層と該光拡散層を合わせた全光線透過率が3%~50%であることを特徴とする光透過性表示パネルである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記光透過性表示パネルにおいて、表示部分と表示部分周囲の意匠が、連続あるいは同一の意匠であることを特徴とする請求項1に記載の光透過性表示パネルである。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記表面保護層の外層側の面に、エンボスによる凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光透過性表示パネルである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、室内環境において壁面、天井、建具との一体感を損ねることなく、また空間利用において効率よく、絵柄や情報、パターンの表示を可能にするとともに、より優れた視認性を有する光透過性表示パネルを提供することが可能である。
【0017】
とくに請求項2に記載の発明によれば、室内環境において壁面、天井、建具との一体感においてとくに優れ、また空間利用において効率よく、情報あるいはパターンの表示を可能にするとともに、より優れた視認性を有する光透過性表示パネルを提供することが可能である。
【0018】
とくに請求項3に記載の発明によれば、表示される情報、画像をより容易に得ることができ、室内環境において壁面、天井、建具との一体感を損ねることなく、また空間利用において効率よく、情報あるいはパターンの表示を可能にするとともに、より優れた視認性を有する光透過性表示パネルを提供することが可能である。
【0019】
マスク層の光透過部分による、パターンの表示は、光透過性表示パネルの裏面からの光源によるものであり、発光したパターンとなって、反射光による視認と異なり、周囲の明暗に左右されにくく、視認性に優れたものである。
【0020】
とくに請求項4に記載の発明によれば、室内環境において壁面、天井、建具との一体感を損ねることなく、また空間利用において効率よく、情報やパターンの表示を可能にするとともに、より優れた視認性を有する光透過性表示パネルを提供することが可能である。
【0021】
さらに複数の光源が、遮蔽壁によって独立しているため、表示方法に変化や多様性を与えることができる。また遮蔽壁によってパターンの表示はより輪郭が明瞭に表示できる利
点も有する。さらに、複数の光源によって、マスクを用いることなく、たとえば市松模様などの幾何学的パターンの表示が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係る光透過性表示パネルの一実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
図2図2は、本発明に係る光透過性表示パネルの、図1に示した一実施態様の表示原理を説明するための模式図である。
図3図3は、本発明に係る光透過性表示パネルの、他の実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
図4図4は、本発明に係る光透過性表示パネルの、図3に示した一実施態様の表示原理を説明するための模式図である。
図5図5は、本発明に係る光透過性表示パネルの、マスクを用いない場合の一実施態様の表示原理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
【0024】
図1は、本発明に係る光透過性表示パネルの、一実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【0025】
本発明による光透過性表示パネル(10)は、パネル表面から表面意匠付与層(1)、光拡散層(2)、裏面光源(3)をこの順に設けてある。表面意匠付与層(1)は、たとえば、基材層(4)に絵柄層(5)を設け、表面保護層(6)を最外層に設けて、構成することができる。
【0026】
また、本発明による光透過性表示パネル(10)は光源(3)を、パネル裏面側に有し、光源(3)からの光が、光拡散層(2)および表面意匠付与層(1)を透過する事によって、表面意匠付与層(1)に設けられた表面意匠のみならず、パネル裏面からの光によって、マスク層(7)に設けられた情報やパターンなどを、あわせて表示することが可能になり、光透過性表示パネル(10)として機能するものである。
【0027】
我々は、本発明による光透過性表示パネル(10)を検討する過程において、表面意匠付与層(1)と光拡散層(2)とを合わせた全光線透過率が、3%~50%であることがより最適に光透過性パネル(10)として機能することを見出した。
【0028】
本発明による光透過性表示パネル(10)は、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)は反射光によって可視であり、その一方でマスク層(7)に設けられたパターンは、裏面側の光源による透過光によって、光透過性表示パネル(10)表面において絵柄層(5)とともに明るく浮かび上がって可視である。
【0029】
すなわち、表面意匠付与層(1)と光拡散層(2)とを合わせた全光線透過率が、3%~50%の範囲であれば、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(7)の絵柄のみならず、パネル裏面からの光によってマスク層(7)に設けられた情報やパターンを明瞭に表示することができ、容易に判読可能とすることができることを見出したものである。
【0030】
また、本発明による光透過性表示パネル(10)は室内側に光を投光するための、たとえばプロジェクターのような器具などを設置する必要がない特徴を有する。これによって
空間の利用効率の向上が可能である。
【0031】
さらに、表面意匠付与層(1)に設けられた表面意匠に加えて、光透過性表示パネル(10)裏面側からの光によってマスク層(7)に設けられた情報やパターンを、明るく浮かびあがらせて表示させることが可能である。
【0032】
したがって、表面意匠によっては室内装飾や表示パネルの周囲とも調和して、より自然で、かつ表示機器の存在を感じさせることのより少ない、表示を可能にする光透過性表示パネル(10)とすることができる。
【0033】
あるいは、プロジェクターによる情報、パターンの表示の場合には、室内においても照明や外光の影響を受け、たとえば室内が明るすぎる場合や、部分的に外部から光が差し込むような環境においては、目視において見えにくくなり、視認性において問題が生じるおそれがある。
【0034】
しかし、本発明による光透過性表示パネル(10)においては、裏面の光源からの光は反射光を目で捉える視認とは異なり、表示パネル自身が発光するタイプであるため、表面意匠付与層(1)に設けられた表面意匠が濃い色である場合や、たとえば木目などの絵柄が濃色である場合においても、視認性に優れる利点を有する。
【0035】
また、本発明による光透過性表示パネル(10)において、表示部分と表示部分の周囲の意匠とを連続、あるいは同一の意匠とすることができる。これによって表示部分と非表示部分である表示部分周囲との境界が感じられなくなり、室内環境において壁面、天井、建具とも調和して、その一体感においてとくに優れた光透過性表示パネル(10)とすることができる。
【0036】
このように本発明による光透過性表示パネル(10)は光源(3)をOFFとした場合には、光透過性表示パネル(10)の外側からは、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄のみが可視となり、裏面側からの光によって表示しようとする情報や絵柄、パターンの表示装置としては、なにも表示されていない状態となる。
【0037】
すなわち、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄は、光透過性表示パネル(10)において常に表示されており、視認可能である。裏面側の光源をOFFの状態であれば、光透過性表示パネル(10)の外部の反射光によって、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄のみが視認可能である。
【0038】
これに対し、光透過性表示パネル(10)は、裏面側の光源をONの状態にすることによって、光源に対向する部分の表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄が、より明るく浮かび上がって表示される。
【0039】
図1に示す例においては、光拡散層(2)と光源(3)の間にマスク層(7)を設ける場合であって、前述のように表面意匠付与層(1)に設けられた表面意匠に加えて、光透過性表示パネル(10)裏面側からの光によってマスク層(7)に設けられた情報やパターンを、明るく浮かびあがらせて表示させることが可能である。マスク層(7)は、光遮断部(8)および光透過部(9)からなる、情報あるいはパターンを有する。
【0040】
すなわち、光源(3)からの光は、マスク層(7)、光拡散層(2)および表面意匠付与層(1)を透過して光透過性表示パネル(10)の表面に達する。
【0041】
マスク層(7)は光遮断部(8)および光透過部(9)からなるパターンを有しており
、その光透過部(9)を透過した光が、光拡散層(2)および光透過性表示パネル(10)の表面において、マスク層(7)の情報やパターンが、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄とともに明るく浮かび上がって表示される。
【0042】
すなわち、光源(3)をONとした場合に、光が光拡散層(2)および表面意匠付与層(1)を透過して、光透過性表示パネル(10)の表面に、マスク層(7)に設けられた情報やパターンを、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄を有して明るく表示させることができる。
【0043】
反対にマスク層(7)を設けない場合には、光源(3)をONとした場合でもマスク層(7)による情報やパターンは表示されず、光源(3)からの光が光拡散層(2)、および表面意匠付与層(1)を透過した部分のみが、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄を明るく表示される。
【0044】
したがって、絵柄の一部を明るく表示する必要がない場合、あるいはマスク層(7)に設けられた情報やパターンを表示する必要がない場合には、光源をOFFとしておくことによって、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄のみの表示とすることができる。
【0045】
たとえば室内のインテリアなどにおいて、全体として調和の取れた、壁紙の抽象絵柄や、家具や建具の木目柄などの絵柄とすることができる。
【0046】
図2は、本発明に係る光透過性表示パネルの、図1に示した一実施態様の表示原理を説明するための模式図である。
【0047】
前述のように、図2において向かって左側の図に示すように、光源(3)がOFFである場合には、光透過性表示パネル(10)の外側からは、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄のみがパネル外側からの反射光によってのみ可視となり、表示装置としてはマスク層(7)に設けられた情報やパターンは表示されない状態となる。
【0048】
すなわち、光透過性表示パネル(10)の外側からは、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄のみが可視となり、表示装置としては、マスク層(7)に設けられた情報やパターンはなにも表示されていない状態となる。
【0049】
また、図2において向かって右側の図に示すように、光源(3)をONとした場合には、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄が、パネル外側からの反射光によって可視であることのほかに、光源(3)からの光が、マスク層(7)の光透過部(9)を透過して、さらに光拡散層(2)および表面意匠付与層(1)を透過して、光透過性表示パネル(10)の表面に、マスク層(7)に設けられた情報やパターンを、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄に加えて、明るく浮かびあがらせて表示させることができる。
【0050】
光拡散層(2)が介在することによって、パネル裏面側の光源(3)からの光が散乱光となることによって、パネル表面において、マスク層(7)に設けられた情報やパターンをより均一かつ明瞭に浮かび上がらせることが可能になる。
【0051】
マスク層(7)に設けられた情報やパターンを、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄に加えて、明るく浮かびあがらせて表示させた状態から、電源をOFFにすることによって、光透過性表示パネル(10)の外側からは、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄のみが、パネル外側からの反射光によって可視となる。すなわち電源OFFによって、再びマスク層(7)に設けられた情報やパターンは、光透過性表示パネル
(10)表面にはなにも表示されていない状態となる。
【0052】
図3は、本発明に係る光透過性表示パネルの、他の実施態様を説明するための、部分断面模式図である。
【0053】
本発明による光透過性表示パネル(10)おいて、図3に示すように、光源を複数設けることができる。ここに示す図3の例において光源は、光源(A),光源(B),光源(C)の三個である。また光源と光源との間には遮蔽壁(11)を設けることができる。
また図3においては、光源(A)および光源(B)がONであって、光源(C)はOFFである。この場合には、エリア(a)およびエリア(b)のみにおいて、マスク層(7)のパターンが、光透過性表示パネル(10)の表面側から可視となる。マスク層(7)の光透過部(8)を透過した光によって、その部分はマスク層(7)によるパターンが絵柄層(5)の絵柄とともに明るく浮かび上がって表示される。
それ以外の部分すなわち光源(C)はOFFであるために、エリア(c)は表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄のみが、光透過性表示パネル(10)外側からの光によって可視である。すなわちマスク層に設けられたパターンを、各光源毎に対応した部分に分割して、表示、あるいは非表示とすることが可能になる。
【0054】
このように複数の光源が、遮蔽壁によって独立しているため、光透過性表示パネル(10)表示方法に変化や多様性を与えることができる。また遮蔽壁によってマスク層(7)のパターンの表示は、表示部の輪郭がより明確に表示できる利点も有する。
【0055】
図4は、本発明に係る光透過性表示パネルの、図3に示した一実施態様の表示原理を説明するための模式図である。
【0056】
図4に示す例においては、光源を複数設けた例であって、ここでは9個の光源を3個づつ3列に設けてあり、各光源と光源の間には遮蔽壁が設けてある。また図4の向かって左側に示す図では、光源(3)はすべてOFFである。
【0057】
したがって光源(3)から表面意匠付与層(1)に到達する光はなく、光透過性表示パネル(10)表面においては表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄のみが、光透過性表示パネル(10)外側の反射光で可視である。
【0058】
これに対し、図4の向かって右側に示す図では、光源9個の内、7個がONとなっており、2個がOFFとなっている状態である。この場合には、9個に分割されたエリアのうち、ONになった光源に対応する部分は、光がマスク層(7)、光拡散層(2)に達し、さらに表面意匠付与層(1)に達する。
【0059】
その結果、マスクによるパターンのうち、光源が光源ONとなっている一部のエリアのみにおいて、マスク層(7)によるパターンが絵柄層(5)の絵柄とともに、明るく浮かび上がって表示される。
【0060】
また、光源OFFになっている部分については、光源からの光が表面意匠付与層(1)に達することはなく、光透過性表示パネル(10)表面においては表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄のみが、光透過性表示パネル(10)外側の反射光で可視である。
【0061】
また、すべての電源をONにした場合には、9個の光源に対応するエリア全体において、マスク層(7)によるパターンが、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄とともに、明るく浮かび上がって表示される。
【0062】
図5は、本発明に係る光透過性表示パネルの、マスクを用いない場合の一実施態様の表示原理を説明するための模式図である。
【0063】
図5に示す例においては、マスクを用いない場合であって、光源(3)は図4に示すものと同様に9個の光源を3個づつ3列に設けてあり、各光源と光源の間には遮蔽壁(11)が設けてある。
【0064】
また図5の向かって左側に示す図では、光源はすべてOFFの状態であって、したがってマスクの有無に係らず、光源(3)から表面意匠付与層(1)に到達する光はなく、光透過性表示パネル(10)表面においては、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄のみが、光透過性表示パネル(10)の外側の反射光で可視である。
【0065】
これに対し、図5の向かって右側に示す図では、光源9個の内、対角線に並んだ5個がON、そのほかの4個がOFFとなっている状態である。この場合には、9個に分割された矩形のエリアの内、ONになった光源に対応する部分は、光が光拡散層(2)に達し、さらに表面意匠付与層(1)に達する。
【0066】
その結果対角線に並んだ5箇所の矩形のエリアのみが絵柄層(5)の絵柄を有して明るく浮かび上がって表示される。すなわち、千鳥格子状に、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄が、裏面からの光源によって明るく浮かび上がったエリアが表現される。
【0067】
そのほかの4箇所の矩形のエリアにおいては、裏面からの光源の影響はなく、表面意匠付与層(1)に設けられた絵柄層(5)の絵柄のみが、光透過性表示パネル(10)の外側の反射光によって可視である。
【0068】
本発明による表面意匠付与層(1)には、たとえばプラスチックフィルムを基材として、印刷などの手法によって絵柄を設けたものを用いることができる。例えば図1に示す例において、表面意匠付与層(1)は、基材層(4)、絵柄層(5)、および表面保護層(6)からなる。
【0069】
表面意匠付与層(1)には、たとえば木目柄を表現しようとする場合には、基材層(4)として、特段の制限を設けるものではないが、たとえば着色したポリオレフィン系樹脂からなる長尺のフィルムを用いることができる。
【0070】
また絵柄層(5)の形成には、既存の印刷手法を用いて行なうことができる、たとえばグラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などが使用でき、適宜選択することができる。
【0071】
表面意匠付与層(1)の絵柄層(5)を形成するための印刷に用いるインクは、特段の制約を加えるものではなく、基材層(4)あるいは後述の表面保護層(6)との密着性、また表面意匠付与層(1)と光拡散層(2)とを合わせた全光線透過率などを考慮して、適宜選択することができる。
【0072】
本発明による光透過性表示パネル(10)を、室内用に内装材や家具や建具の表面材として用いる場合には、傷や磨耗のおそれをより少なくするために、表面保護層(6)を設けることがより好ましい。
【0073】
表面保護層(6)には、たとえば透明なポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
表面保護層(6)の積層に際しては、たとえばポリオレフィン系樹脂からなるプラスチックフィルムを用いることもできる。
【0074】
あるいは、基材層(4)および絵柄層(5)上に、溶融したポリオレフィン系樹脂を押出機によって製膜して積層するのでも良い。表面保護層(6)には、絵柄に加えて、効果的な意匠表現として、エンボスによる凹凸などの表面加工を施しても良い。エンボスによる凹凸のパターンは、たとえば幾何学模様のほか、梨地や木目の導管を表現するものであっても良い。
【0075】
基材層(4)あるいは表面保護層(6)に熱可塑性樹脂を用いる場合には、塩化ビニル樹脂などを使うことも可能であるが、廃棄や焼却の可能性を考慮すれば、ポリオレフィン系樹脂を用いる場合にはより環境適合的である。
【0076】
このように本発明によれば、室内環境において壁面、天井、建具との一体感を損ねることなく、また空間利用において効率よく、絵柄や情報、パターンの表示を可能にするとともに、より優れた視認性を有する光透過性表示パネルを提供することが可能である。
【実施例
【0077】
以下本発明を、実施例によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
【0078】
<実施例1>
評価用サンプルに用いた光透過性表示パネルの材料構成は以下のとおりである。
なお、ここでの説明は、図2、および図2中に用いた符号を用いて説明する。
表面意匠付与層(1):プラスチックフィルムを基材とした印刷絵柄を有する化粧シート。印刷絵柄は木目柄とした。
光拡散層(2):アクリル樹脂シート(住友化学株式会社製、スミベックス032)厚さ2mm。
マスク層(7):黒色の画用紙にアルファベットの形に切り抜いて開口部を設けたもの。光源(3):蛍光灯(40W)
光源(3)を点灯し、アルファベットの形状を表示させた。
【0079】
<比較例1>
表面意匠付与層:プラスチックフィルムを基材とした印刷絵柄(木目柄)を有する化粧シート。これは実施例1と同様の化粧シートである。
このシートを木質系基材に貼りあわせて室内ドアにしたものである。
この室内ドアの表面に、プロジェクターXPE460(Crenova社製)を用いて、実施例1と同じ大きさのアルファベットを投影した。
【0080】
[評価項目]
評価は、屋内環境において、空間利用を効率よく、表示されたアルファベットの判読が可能かを評価した。
【0081】
(評価結果1)
実施例1においては、光透過性表示パネル表面にアルファベットが表示され、マスク層(7)によるパターンが絵柄層(5)の絵柄を有して明るく浮かび上がって表示され判読が可能であった。
またこの表示によって表示部分と周囲の一体感が損なわれることはなく、邪魔になる機器も不要であった。
【0082】
(評価結果2)
比較例1においては、表示されたアルファベットは、木目模様にまぎれて、判読が困難な状態であった。
また、プロジェクターが室内に設置されるため、邪魔になるという問題が発生した。
【0083】
このように本発明によれば、室内環境において壁面、天井、建具との一体感を損ねることなく、また空間利用において効率よく、絵柄や情報、パターンの表示を可能にするとともに、より優れた視認性を有する光透過性表示パネルを提供することが可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0084】
1・・・表面意匠付与層
2・・・光拡散層
3・・・光源
4・・・基材層
5・・・絵柄層
6・・・表面保護層
7・・・マスク層
8・・・光遮断部
9・・・光透過部
10・・・光透過性表示パネル
11・・・遮蔽壁
a・・・エリア
b・・・エリア
c・・・エリア
図1
図2
図3
図4
図5