IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーエスジー・インテリアズ・エルエルシーの特許一覧

特許7426175疎水剤で表面処理されたウールおよびそれから作製された音響パネル
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】疎水剤で表面処理されたウールおよびそれから作製された音響パネル
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20240125BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20240125BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
C04B38/00 303A
D06M15/643
D06M101:00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019562550
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034131
(87)【国際公開番号】W WO2018217893
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】15/606,333
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512127109
【氏名又は名称】ユーエスジー・インテリアズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェンチー・ルアン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】チン・ユー
(72)【発明者】
【氏名】スコット・エイ・ボーゲン
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・フィギ
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-097249(JP,A)
【文献】実開昭59-094520(JP,U)
【文献】特表2012-528948(JP,A)
【文献】特表2014-520218(JP,A)
【文献】特表2009-542934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B
C04B
E04C
D06M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維パネルを調製する方法であって、
ミネラルウールの表面に付着した撥水剤のコーティングを含む撥水表面処理されたミネラルウールを提供するために、撥水剤でミネラルウールを表面処理することと、
スラリーを提供するために、前記撥水表面処理されたミネラルウールを水と混和することと、
繊維パネルを提供するために、前記スラリーを脱水および乾燥することと、を含み、
前記撥水剤が、ポリジメチルシロキサンである、方法。
【請求項2】
撥水剤で処理された表面を有するミネラルウールを調製する方法であって、
撥水剤で処理された表面を有するミネラルウールを提供するために撥水剤エマルションをミネラルウールと接触させることと、前記撥水剤で処理された表面を有するミネラルウールが前記ミネラルウールの表面に付着した撥水剤のコーティングを含むことと、
前記ミネラルウールを乾燥させることと、を含み、
前記撥水剤が、ポリジメチルシロキサンである、方法。
【請求項3】
撥水剤で前処理された表面を有する、撥水表面処理されたミネラルウールを含み、前記撥水表面処理されたミネラルウールは前記ミネラルウールの表面に付着した撥水剤のコーティングを含み、
前記撥水剤が、ポリジメチルシロキサンである、繊維パネル。
【請求項4】
前記ミネラルウールを表面処理することが、前記表面処理されたミネラルウールの重量に基づいて、0.01重量%~0.20重量%の範囲の量の前記撥水剤を提供することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記接触させることが、撥水剤エマルション溶液をキューポラ収集チャンバに噴霧することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記パネルが、デンプンをさらに含む、請求項3に記載の繊維パネル。
【請求項7】
前記ミネラルウールを表面処理することは、撥水剤エマルションを前記ミネラルウールと接触させることと、前記ミネラルウールを乾燥させることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記撥水表面処理されたミネラルウールは、水と混和されてスラリーを形成する前に乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記撥水表面処理されたミネラルウールは、乾燥された後に、水、充填剤、および結合剤と混和されて、スラリーを形成する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させることは、前記ミネラルウールを冷却することと、前記ミネラルウールを前記撥水剤でコーティングすることと、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記ミネラルウールは、前記表面処理されたミネラルウールの総重量に基づいて、0.01重量%~0.20重量%の撥水剤で表面コーティングされる、請求項3に記載の繊維パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、疎水剤で表面処理されたウールに関する。より具体的には、本開示は、疎水剤でウールを表面処理する方法、表面処理されたウールを含む音響パネルを形成する方法、および表面処理されたウールを含む音響パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
音響パネル(またはタイル)は、部屋、廊下、会議場などの屋内空間における音を吸収することおよび/または音の透過を低減することによって音響を改善することを意図する、特別に設計されたシステムである。様々なタイプの音響パネルがあるが、通常の多くの音響パネルは、例えば、米国特許第1,769,519号に開示のように、一般に、ミネラルウール繊維、充填剤、着色剤、および結合剤で構成されている。これらの材料は、他の様々なものに加えて、望ましい音響特性ならびに色および外観などの他の特性を有する音響パネルを提供するために使用することができる。
【0003】
従来の天井タイルおよびの音響パネル用のベースマットなどの繊維パネルは、典型的には、湿式形成プロセスを使用して作製される。ミネラルウール、充填剤、着色剤、および結合剤などの繊維パネルを構成するであろう構成要素を水中で混合して分散液を形成し、次いで長網抄紙機などの可動式支持ワイヤースクリーン上に流して未処理ボードを形成する。次いで、未処理ボードを脱水し、加熱した対流式オーブンで乾燥させて、音響パネルの軽量ベースマットを形成する。加熱した対流式乾燥オーブンでの乾燥は、典型的には、製造を制限するステップであり、同様に最もコストのかかる製造ステップである。
【0004】
音響タイルの音響性能は、ノイズ低減係数(NRC)および天井減衰クラス(CAC)値によって特徴付けられる。NRCは吸音の尺度であり、ASTM C423に従って決定することができる。NRC値は、典型的な人間の話し声の範囲を網羅する、250HZ、500HZ、1000HZ、および2000HZの周波数での特定の表面の4種の吸音係数の平均である。NRCは、パネルが吸収する、到達した音の割合を示す、0~1.00の間の数によって表される。0.60のNRC値を有する音響パネルは、パネルに当たる音のうちの60%を吸収し、音のうちの40%を偏向させる。別の試験方法は、ASTM C384に記載のインピーダンス管を使用する、推定NRC(「eNRC」)である。音の透過性を低減する能力は、ASTM E1414に記載の天井減衰クラス(「CAC」)の値によって測定される。CAC値は、デシベル(「dB」)で測定され、音が材料を透過するときの音の低減量を表す。例えば、40のCACを有する音響パネルは、透過音を40デシベル低減する。同様に、音透過の低減は、ASTM E413およびE90に記載の音透過クラス(「STC」)によっても測定することができる。例えば、40のSTC値を有するパネルは、透過音を40デシベル低減する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、繊維パネルを調製する方法であって、撥水剤でミネラルウールを表面処理して撥水表面処理されたミネラルウールを提供することと、撥水表面処理されたミネラルウールを水と混和してスラリーを提供することと、スラリーを脱水および乾燥して繊維パネルを提供することと、を含む、方法を提供する。
【0006】
本開示の別の態様は、撥水剤で処理された表面を有するミネラルウールを調製する方法であって、撥水剤エマルションをミネラルウールと接触させることと、ミネラルウールを乾燥させることと、を含む、方法を提供する。
【0007】
本開示の別の態様は、撥水剤で前処理された表面を有するミネラルウールを含む、撥水表面処理された繊維パネルを提供する。
【0008】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明を検討することで当業者に明らかとなるであろう。本方法および組成物は、様々な形態での実施形態が可能であるが、本開示が、例示であり、本開示を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図しないとの理解のもとに、以下の説明には、特定の実施形態を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、繊維パネルを調製する方法であって、撥水剤でミネラルウールを表面処理して撥水表面処理されたミネラルウールを提供することと、撥水表面処理されたミネラルウールを水と混和してスラリーを提供することと、スラリーを脱水および乾燥して繊維パネルを提供することと、を含む、方法を提供する。実施形態では、ミネラルウールを表面処理することは、ミネラルウールの重量に基づいて、約0.01重量%~約0.20重量%の範囲の量の撥水剤を提供することを含む。実施形態では、ミネラルウールを表面処理することは、撥水剤エマルションをミネラルウールと接触させることと、ミネラルウールを乾燥させることと、を含む。実施形態では、撥水剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリメチル水素シロキサン、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
本明細書で使用するとき、「撥水剤」とは、ミネラルウールに疎水性表面を提供し、水性または極性溶媒によるミネラルウールの濡れを阻害する薬剤を指す。
【0011】
本明細書で使用するとき、「撥水表面処理されたミネラルウール」とは、ミネラルウールがミネラルウールの表面に付着した撥水剤のコーティングを含むように、撥水剤で事前に処理されたミネラルウールを指す。撥水表面処理されたミネラルウールは、部分的、非連続的な撥水剤のコーティング、または実質的に連続的な撥水剤のコーティングを含み得る。
【0012】
本開示は、撥水剤で処理された表面を有するミネラルウールを調製する方法であって、撥水剤エマルションをミネラルウールと接触させることと、ミネラルウールを乾燥させることと、を含む、方法をさらに提供する。実施形態では、撥水剤は、処理されたミネラルウールの重量に基づいて、約0.01重量%~約0.20重量%の範囲の量でミネラルウールの表面に提供される。いくつかの実施形態では、接触させることは、撥水剤エマルションをキューポラ収集チャンバに噴霧することを含む。実施形態では、接触させることは、ミネラルウールを冷却することと、ミネラルウールを撥水剤でコーティングすることと、を含む。いくつかの実施形態では、撥水剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリメチル水素シロキサン、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
本開示は、撥水剤で前処理された表面を有する撥水表面処理されたミネラルウールを含む、繊維パネルをさらに提供する。実施形態では、繊維パネルは、デンプンをさらに含む。実施形態では、ミネラルウールは、処理されたミネラルウールの総重量に基づいて、約0.01重量%~約0.20重量%の撥水剤で表面コーティングされる。実施形態では、パネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、約50lbs/千平方フィート(MSF)の保水性の減少を特徴とする。任意選択的に、パネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、約100lbs/MSFの保水性の減少を特徴とする。
【0014】
本明細書で使用するとき、「同等の繊維パネル」は、典型的には、「ミネラルウールが撥水剤で表面処理されていない」、という修飾語を含む。本明細書で使用するとき、「同等の繊維パネル」とは、繊維パネルの組成が、第1の繊維パネルと比較される第2の繊維パネルと同じであり、かつ/あるいは繊維パネルを調製するプロセスが、示された変更条件を除いて、第2の繊維パネルと同じであることを意味する。
【0015】
実施形態では、撥水剤は、ポリジメチルシロキサン、ポリメチル水素シロキサン、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、パネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、少なくとも約0.05のeNRC値の増加を有する。実施形態では、パネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルのウール繊維の水膨張性と比較して、約40%~約50%の水膨張性の増加を有するウール繊維を含むことを特徴とする。
【0016】
本明細書に開示の撥水性表面処理されたミネラルウールおよび表面処理されたミネラルウールを含む繊維パネルは、減少した密度および対応する改善された音響特性を有する繊維パネルを提供することと、改善された水膨張特性を有する繊維パネルを提供することと、改善された保水特性および対応する改善された乾燥時間を有する繊維パネルを提供することと、を含む、1つ以上の利点を有し、かつ/あるいは撥水剤は、産業衛生を提供するが、最終繊維パネルに有用な特性のないポリエチレングリコールなどの鉱物繊維除塵剤を補填することができる。
【0017】
表面処理されたミネラルウールを調製する方法
本開示の撥水表面処理されたミネラルウール、すなわち撥水剤で処理された表面を有するミネラルウールを調製する方法は、一般に、撥水剤エマルションをミネラルウールと接触させることと、ミネラルウールを乾燥させることと、を含む。
【0018】
ミネラルウールは、無機原材料の繊維で構成されている。ミネラルウールは、様々な関連するガラス製品に広く適用される用語である。一般に、ミネラルウールは、非常に細かい、織り交ぜられたミネラル繊維で構成された、外見がルーズウールにやや類似する繊維ガラス様の材料である。主に、カルシウム、およびアルミニウム、クロム、チタン、およびジルコニウムのケイ酸塩で構成されている。典型的には、ミネラルウールは、天然の岩石またはスラグから製造される。スラグは、炉の裏打ち装入物の不純物からの堆積物、燃料からの灰、ならびに炉の洗浄および不純物の除去に使用されるフラックスを含む、一次金属および鋳造産業の廃棄物を指すために広く適用される用語である。一般に、鉱物繊維は、ガラス繊維と類似する外観を有するが、鉄およびカルシウムおよびマグネシウムの高い含有量、ならびに二酸化ケイ素とアルミニウムとの比較的低い割合に起因して、化学的組成がガラス繊維のものとは顕著に異なる。
【0019】
ミネラルウールを調製する従来の技法は、すべて参照により組み込まれる、米国特許第2,020,403号、同第4,720,295号、および同第5,709,728号に記載されている。通常のウール製造は、スラグ、玄武岩、および/または花崗岩などの原材料を、キューポラなどの好適な炉内で、酸素の存在下でコークスと溶解させ、1,400℃~2,000℃の範囲の温度に組成物を加熱することを含む。本明細書に開示の方法は、キューポラタイプの炉に限定されない。電気炉または液中燃焼溶解炉などの他の炉も、同様に機能するであろう。キューポラで使用される材料には、適切な床の換気および燃焼空気流を可能にするような、特定の製品サイズが必要である。電気炉または液中燃焼溶解炉は、砂粒のサイズまでのあらゆるサイズの材料に対応する。典型的なキューポラのサイズは、7.5~10cm(3~4インチ)/10~15cm(4~6インチ)であろう。次いで、溶融物は、連続空気流を介して繊維化スピナーでウールに紡績される。
【0020】
撥水剤エマルションをミネラルウールと接触させることは、特に限定されない。いくつかの実施形態では、例えばキューポラで最初に調製されたミネラルウール繊維は、次いでキューポラから取り出され、冷却され、撥水剤と接触させる。冷却された繊維は、希釈撥水剤エマルションにウールを浸漬し、続いてオーブンで乾燥させて撥水剤の繊維への付着を促進することによって、撥水剤と接触させることができる。撥水剤を繊維に付着させるのに十分な期間の間、ウールを希釈撥水剤に浸漬してもよい。例えば、少なくとも約10分間、ウールを希釈撥水剤エマルションに浸漬してもよい。典型的には、ウールは、焼損を防止するために、乾燥温度が撥水剤の引火温度未満である限り、約100℃以上、約150℃以上、約200℃以上、または約250℃以上の温度で乾燥される。いくつかの実施形態では、溶融物を繊維に紡績した後、ウール繊維を冷却する前に、接触を行う。例えば、撥水剤エマルションは、エマルションを霧化し、ウール繊維をコーティングすることを可能にするスプレーノズルを通じてキューポラ収集チャンバに注出され、それにより同時に繊維をコーティングおよび冷却してもよい。キューポラ収集チャンバに噴霧するための撥水剤エマルション溶液は、約2.5重量%~約20重量%、または約5重量%~10重量%の範囲、例えば約2.5重量%、約5重量%、約7.5重量%、約10重量%、約12.5重量%、約15重量%、約17.5重量%、または約20重量%の撥水剤の濃度を有し得る。一般に、エマルション溶液中の撥水剤の濃度が約2.5%未満である場合、得られるウールの膨張特性は改善されない。さらに、エマルション溶液中の撥水剤の濃度が約20%を超える場合、ウール表面処理の効率は許容できないほど低く、得られる繊維パネルの総炭化水素(THC)排出値は許容できないほど高い。スプレーノズルを通る撥水剤エマルションの流量は、約5gph~約40gph、または約7.5gph~約30gph、または約10gph~約25gphの範囲であり得る。一般に、流量が約5gph~約40gphの範囲外のとき、ウールの表面処理の効率は許容できないほど低い。
【0021】
撥水剤は、表面処理されたウールが水で容易に濡れないように、例えば、繊維パネルを調製するのに使用される水性スラリー中の水と接触すると、より独立し、より良好に分散する繊維を有する繊維パネルを提供する、任意の疎水剤であり得る。好適な撥水剤としては、一般に、加熱時であっても低排出と組み合わせて、乾燥温度(例えば、約150℃以上または250℃以上の温度)での焼損を防止するのに十分高い引火温度を有する疎水性材料が挙げられる。撥水剤の例としては、限定されないが、ポリジメチルシロキサン、ポリメチル水素シロキサン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
撥水剤は、ミネラルウールの重量に基づいて、約0.01重量%~約1.00重量%の範囲で、例えばミネラルウール繊維の重量に基づいて、約0.01重量%~約0.25重量%、または約0.01%~約0.20重量%、または約0.02重量%~約0.1重量%、または約0.03重量%~約0.09重量%、または約0.04重量%~約0.09重量%、または約0.01重量%~約0.80重量%、または約0.01重量%~約0.60重量%、または約0.01重量%~約0.40重量%、または約0.10重量%~約0.50重量%、または約0.3重量%~約0.75重量%、または約0.40重量%~約0.60重量%の範囲で、または約0.50重量%ミネラルウール繊維に添加され得る。繊維に付着した撥水剤の量が増加すると、得られる繊維パネルの密度が減少し、繊維パネルのeNRC値が増加し、より多孔性のマット構造を示し、繊維パネルの保水値が減少し、対流式乾燥機で取り除かれる残留している水が少ないので、処理中のエネルギーの顕著な節約をもたらす。より高いレベルの、例えば、処理されたミネラルウールの重量に基づいて、約0.10重量%~0.45重量%以上の組み込みでは、硬度、MORおよびMOE値などの繊維パネルの物理的特性は、撥水剤で処理されなかったミネラルウールを含む同等の繊維パネルと比較して、悪影響を受け得る。強度の減少は、繊維パネルのデンプンの量を増加することによって補うことができる。したがって、いくつかの実施形態では、繊維パネルは、デンプンをさらに含む。撥水剤の量が減少すると、撥水剤の結果としての総炭化水素(THC)排出量が減少する。したがって、音響特性、強度特性、および環境問題のバランスをとるために、撥水剤は、ミネラルウールの重量に基づいて、約0.01重量%~約1.00重量%、または約0.01重量%~約0.20重量%の範囲の量で添加され得る。繊維上に提供される撥水剤の量は、試料が1000°F(~538℃)のオーブンに1時間曝されるときの質量損失率である、強熱減量(LOI)によって決定することができる。
【0023】
ミネラルウールをさらに除塵剤と接触させて、産業衛生を改善することができる。除塵剤は、一般に、最終繊維パネルに有利な特性を提供しない親水剤である。除塵剤は、撥水剤によって部分的に補填または完全に置き換えてもよい。さらに、除塵剤と撥水剤との両方を含む実施形態では、撥水剤エマルションをミネラルウールと接触させる前、同時、または後に、除塵剤をミネラルウールに適用してもよい。除塵剤を撥水剤で補填または置き換えることによって、最終的なパネルに利益をもたらさない薬剤の量を低減して、産業衛生を達成することができる。対照的に、除塵剤と組み合わせて、または除塵剤の代わりに撥水剤を使用すると、有利な密度および/または保水特性を有する最終繊維パネルの調製を可能にする。
【0024】
ミネラルウールを乾燥させる方法は、当技術分野で周知であり、例えば、対流式オーブンでの乾燥を含み得る。
【0025】
繊維パネルの調製方法
撥水剤で表面処理されたミネラルウールを含む繊維パネルは、一般に、撥水剤でミネラルウールを表面処理して撥水表面処理されたミネラルウール提供することと、撥水表面処理されたミネラルウールと水とを混和させてスラリーを提供することと、スラリーを脱水および乾燥して繊維パネルを提供することと、によって調製され得る。
【0026】
撥水表面処理されたミネラルウールは、前述のように調製され得る。一般に、ミネラルウールを撥水剤で表面処理することは、スラリーを調製することとは独立した、スラリーを調製することの前のステップである。したがって、いくつかの実施形態では、表面処理されたミネラルウールを水と混和することによって調製されたスラリーは、追加の撥水剤を実質的に含まない、すなわち前処理されたミネラルウールの添加によって撥水剤が実質的に導入される。本明細書で使用するとき、「撥水剤を実質的に含まない」とは、スラリーを説明するのに使用するとき、スラリーが顕著な量の撥水剤を含有しないことを意味する。したがって、偶発的なまたはバックグラウンド量の撥水剤(例えば、約100ppb未満)がスラリー中に存在し得(例えば、表面処理されたミネラルウールから浸出したもの)、これは本開示の範囲内であり得る。
【0027】
ミネラルウールを水と混和してスラリーを調製することは、当技術分野で周知である。表面処理されたミネラルウールを水と混和することは、スラリーの構成成分が均質に分布している限り、特に限定されない。限定されないが、充填剤、着色剤、および結合剤を含む他の繊維パネル構成要素は、表面処理されたミネラルウールおよび水と混和され得る。他の構成成分が含まれるとき、かかる構成成分は、ミネラルウールと同時に混和されてもよいか、または表面処理されたミネラルウールの添加の前または後に水と混和されてもよい。
【0028】
好適な充填剤としては、限定されないが、発泡パーライト、バーミキュライト、発泡バーミキュライト、粘土、剥離粘土、および軽石を含む、剥離もしくは発泡ガラス由来の軽量無機凝集体を挙げることができ、あるいは鉱物凝集体は、限定されないが、スタッコ(硫酸カルシウム半水和物)、石膏、および石灰岩を含む高密度鉱物凝集体であり得る。
【0029】
結合剤としては、デンプン、ラテックス、および再構成された紙製品のうちの1つ以上を挙げることができる。デンプンと再構成された紙製品との組み合わせが、有用な特性を提供することが見出されているが、もちろん他の結合剤構成成分および/または組み合わせを使用してもよい。デンプンなどの有機結合剤は、多くの場合、得られる繊維パネルの構造的な付着を提供する主な構成成分である。デンプンは、他の理由の中でも比較的安価であるため、好ましい有機結合剤である。典型的なデンプンとしては、限定されないが、非変性コーンスターチを含む非変性デンプンが挙げられる。有機繊維の一例であるセルロース繊維は、最終繊維パネルの構造的な要素として機能する。セルロース繊維は、典型的には再生新聞紙の形態で提供される。新聞紙に加えて、または新聞紙の代替として、残紙(OIN)および古雑誌(OMG)を使用することができる。
【0030】
音響パネルは、例えば、湿式フェルト製造プロセスに従って、本開示のスラリーを使用して調製することができる。このプロセスの1つの様式は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,911,818号に記載されている。一般に、水性スラリーは、長網抄紙機タイプのマット形成機の移動式有孔ワイヤ上に送達される。スラリーは、最初に重力によって脱水され、次いで真空吸引によってさらに脱水される。次いで、加熱したオーブンまたは窯で、得られた脱水スラリーを乾燥させて、残留水分を除去し、乾燥ベースマットを形成する。一般に、乾燥ステップは、ベースマット製造のうちで最も時間とコストがかかるステップである。脱水スラリーは、オーブンまたは窯で乾燥させるのに数時間かかり得るので、製造される繊維パネルの量は、乾燥させることができる数によって制限される。したがって、重力脱水ステップ中に除去することができる水が多いほど、かつ/あるいは元来スラリーに組み込まれている水が少ないほど、脱水スラリーをオーブンで乾燥させるのに必要な時間がより短く、繊維パネルがより安価に製造され、製造される繊維パネルの数を有利に増加させることができる。
【0031】
脱水スラリーは、任意の好適な温度で乾燥され得る。実施形態では、脱水スラリーは、約300°F(約150℃)~約600°F(約315℃)、約400°F(約205℃)~約600°F(約315℃)、または約450°F(約230℃)~約550°F(約290℃)、例えば、約300°F、約250°F、約400°F、約450°F、約500°F、約550°F、または約600°Fの温度で乾燥され得る。
【0032】
乾燥ベースマットを仕上げることにより、許容可能なサイズ、外観、および音響特性のパネルが得られる。仕上げとしては、表面研削、切断、穿孔、割れ目付け、ロール/スプレーコーティング、縁部切断、および/またはスクリム、スクリーン、もしくはベール上へのパネルの積層加工が挙げられる。
【0033】
繊維パネル
本開示の撥水表面処理されたミネラルウール、すなわち撥水剤で前処理された表面を有するミネラルウールを含む繊維パネルは、本明細書に開示の方法を使用して調製することができる。繊維パネルは、限定されないが、密度(多孔性)、音響特性(NRCおよびCAC値)、物理的特性(硬度、伸び弾性係数(MOE)値、破断係数(MOR)値)、THC排出、繊維パネルの乾燥に必要な時間およびエネルギーに関連する、ウール繊維の水膨張値および保水値を含む、多数の特色を使用して特徴評価することができる。
【0034】
一般的に、ミネラルウール繊維に提供される撥水剤の量が増えると、繊維ボードの密度が減少する。理論に束縛されることを意図するものではないが、表面処理されたミネラルウールとスラリーの水との間の反発力の結果として、ミネラルウール繊維はスラリー中に分散し、それにより表面処理されていない繊維の挙動と比較して、各繊維が他の繊維からさらに離れると考えられる。間隔の増加は脱水スラリー、最終的には乾燥繊維パネルに引き継がれ、それにより、本開示に従った繊維パネルの孔径が、未処理のウールから生じる孔径よりも大きく、それにより本開示に従った繊維パネルの密度は、未処理のウールから調製された同等のボードの密度よりも低いと考えられる。いくつかの実施形態では、ミネラルウールが表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、本開示に従った繊維パネルの密度は維持される。いくつかの実施形態では、ミネラルウールが表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、本開示に従った繊維パネルの密度は減少する。実施形態では、本開示の繊維パネルは、ミネラルウールが表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、立方フィート当たり約0.4~0.6ポンド(pcf)の範囲の密度の減少を特徴とし得る。
【0035】
一般に、繊維パネルの音響特性は、繊維パネルの多孔性および密度によって影響を受ける。例えば、ノイズ低減係数(「NRC」)は、パネルが吸収する、到達した音の割合を示す。0.60のNRC値を有する音響パネルは、パネルに当たる音のうちの60%を吸収し、音のうちの40%を偏向させる。NRCは、推定することができ、方法は、ASTM C384に記載のインピーダンス管を使用する、推定NRC(「eNRC」)である。eNRCは、繊維パネルの多孔性の増加および密度の減少とともに増加する。したがって、高NRCが望まれる場合は、多孔性の低密度ボードを提供してもよい。実施形態では、本開示の繊維パネルは、繊維が表面処理されていない同等の繊維パネルと比較して、少なくとも0.05、例えば約0.05、約0.06、約0.07、または約0.08のeNRC値の増加を特徴とする。いくつかの実施形態では、本開示の繊維パネルは、ミネラルウールが表面処理されなかった同等の繊維パネルのeNRC値に基づいて、約10%~約20%のeNRC値の増加を特徴とする。
【0036】
パネルの強度を特徴評価するのに使用される繊維パネルの物理的特性としては、例えば、硬度値、MOE値、およびMOR値が挙げられる。一般に、繊維パネルの強度は、同じ組成を有するが異なる密度を有する同等の繊維パネルと比較して、密度に逆相関する。密度の損失に起因する強度の損失は、繊維パネル組成物にデンプン(または追加のデンプン)を含めることによって補うことができる。
【0037】
繊維パネルのTHC排出値は、繊維パネルの組成に依存する。本開示の表面処理されたミネラルウールを含む繊維パネルのTHC排出値は、ミネラルウールに適用される撥水剤の量に正比例する。例えば、ミネラルウールの重量に基づいて、約0.25重量%~約1.0重量%の範囲の撥水剤で前処理された表面を有するミネラルウールを含む本開示の繊維パネルでは、ミネラルウールが撥水剤で処理されていない同等の繊維パネルのTHC排出よりも、約5%~約25%高いTHC排出を有し得る。対照的に、ミネラルウールの重量に基づいて、約0.01重量%~約0.09重量%の範囲の撥水剤で前処理された表面を有するミネラルウールを含む本開示の繊維パネルでは、ミネラルウールが撥水剤で処理されていない同等の繊維パネルのTHC排出よりも、約1%~約12%少ないTHC排出を有し得る。
【0038】
繊維パネルの保水値は、スラリーを脱水した後に保持される水の量に関連する。保水値が高いほど、繊維パネルを形成するために乾燥中に除去するべき水が多い。理論に束縛されることを意図するものではないが、撥水剤で処理されたミネラルウールは、撥水剤で処理されていないミネラルウールと比較して、減少した濡れ性を有するので、表面処理されたミネラルウールの繊維と水との間の接着力が減少し、繊維は脱水プロセス中により少ない水分を保持する。撥水剤で前処理された表面を有するミネラルウールを含む繊維パネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、少なくとも約25lbs/MSF、少なくとも約50lbs/MSF、少なくとも約75lbs/MSF、または少なくとも約100lbs/MSFの保水値を特徴とし得る。実施形態では、本開示のパネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、約50lbs/MSFの保水性の減少を特徴とする。任意選択的に、本開示のパネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、約100lbs/MSFの保水性の減少を特徴とする。
【0039】
本開示の繊維パネルは、パネルに含まれるウール繊維の水膨張値もまた特徴とし得る。一般に、水膨張値が高いほど、ミネラルウール繊維がスラリー中により分散し、得られる繊維パネルの密度が低い。本開示の繊維パネルは、水膨張性において、ミネラルウールが撥水剤で処理されなかった同等の繊維パネルに提供されるウール繊維と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%のウール繊維の水膨張性の増加を特徴とし得る。
【0040】
水膨張値の決定
水膨張値は、一般に、次のように決定される。ウール50グラムを水950グラムと混合し、混合物を10分間攪拌する。得られたスラリーを直ちに1000mlのメスシリンダーに注ぎ、10分間沈降させる。10分の沈降期間の後、ウールスラリーの体積読み取り値(ml)は、膨張値を表す。
【0041】
ENRC値の決定
eNRC値は、インピーダンス管試験方法によって決定される推定ノイズ低減係数である。要するに、ASTM E1050-98に詳述されている音響材料のインピーダンスおよび吸収性の標準的な試験方法は、チューブ、2つのマイク、およびデジタル周波数分析システムを使用する。結果には、250Hz、500Hz、1000Hz、および2000Hzのスペクトル結果が含まれ、4種の周波数の算術平均値が、音響材料のeNRCを示す。
【0042】
保水値の決定
保水値は、ボード製品の1000平方フィートの表面積当たりの、オーブン乾燥前の湿ったボード(すなわち脱水スラリー)中に保持されている水の総重量である。保水値は、湿ったボードの総重量/1000平方フィートの表面積から、乾燥ボードの重量/1000平方フィートの表面積を引いて決定される。
【0043】
MOR値および硬度値の決定
MORおよび硬度値は、Instron機械または同等物を使用するASTM C367に従って決定される。要するに、試験試料片は、幅約3インチ、長さ約10インチである。支持面のスパンは、約8インチである。破損が発生するまで、約1.97インチ/分のクロスヘッド速度で試料片の中心に負荷を適用した。破断係数は、次の等式に従って計算され、
MOR=3PL/(2bd
式中、Pがlbfでの最大負荷であり、Lがインチでのスパンの長さであり、bがインチでの試料片の幅であり、dがインチでの試料片の厚さである。
【0044】
本開示に従ったパネルおよび方法は、以下の実施例の観点からより良好に理解され得、以下の実施例は、単に本開示のパネルおよび方法を例示することを意図し、決して本開示の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0045】
実施例1
ポリジメチルシロキサンエマルションの希釈溶液にウールを浸漬することによって、ミネラルウールを、線状ポリジメチルシロキサンで表面処理した。具体的には、0.625グラムおよび2.50グラムの線状ポリジメチルシロキサンエマルションを各々2000グラムの水および250グラムのウールと混合して、約0.031重量%および約0.125重量%の濃度の線状ポリジメチルシロキサンを有するエマルション溶液を提供した。未処理のミネラルウールを、エマルション溶液に10分間完全に浸漬した。処理されたミネラルウールを、240°F(~116℃)のオーブンで約4時間乾燥させた。処理されたウールを試験して、強熱減量(LOI)を決定し、ウール表面に付着した撥水剤の量を決定した。処理されたウールは、ウール表面に付着した約0.13重量%および0.45重量%の量の撥水剤を有した。
【0046】
処理されたミネラルウールを使用して、繊維パネルを調製した。具体的には、ミネラルウールをパーライト、デンプン、新聞紙、および水と混和して、均質なスラリーを形成した。Tappiフォーマーを使用して、スラリーを脱水した。得られた脱水スラリーを、500°F(260℃)のオーブンで1時間、および300°F(149℃)オーブンで3時間乾燥させて、繊維パネルを形成した(処理されたパネル#1)。ミネラルウールが線状ポリジメチルシロキサンで表面処理されなかったことを除いて、処理されたパネル#1と同じ条件下で処理されたパネル#1と同じ組成を有する対照繊維パネル(対照パネル#1)を調製した。ボード密度、eNRC、硬度、MORおよびMOE、保水値、ならびにTHC排出について、繊維パネルを試験した。
【0047】
表面処理されたミネラルウールを使用して調製した繊維パネル(処理されたパネル#1)の平均密度は、対照パネル#1の密度よりも約0.4および0.6pcf低く、より多孔性のマット構造を示した。処理されたパネル#1のeNRCは、対照パネル#1のeNRCと比較して、約0.08の対応する改善を示した。しかしながら、処理されたパネル#1の物理的特性(硬度、MOE、およびMOR)は、密度の減少による悪影響を受けた。処理されたパネル中のデンプンレベルを調節することによって、密度減少の悪影響を補うであろうことが予想される。処理されたパネル#1の保水値は、対照パネル#1と比較して、約3.9%および約5.8%有利に低減した。具体的には、対照パネル#1は、約1816lbs/MSFの保水値を有した一方で、処理されたパネル#1は、約1717および1748lbs/MSFの保水値を有した。処理されたパネル#1のTHC排出は、対照パネル#1のTHC排出よりも約5~25%高かった。
【0048】
したがって、実施例1は、本開示に従って調製された表面処理されたミネラルウールを含む、本開示に従った繊維パネルの形成の成功を実証している。本開示に従った繊維パネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、改善された音響特性(eNRC)および保水特性を有した。
【0049】
実施例2
ミネラルウールが、ミネラルウールの総重量に基づいて、前処理後に0.04または0.09重量%を含むように、線状ポリジメチルシロキサンで前処理された表面を有するミネラルウールを調製した。具体的には、ポリジメチルシロキサンエマルションを、水で7.5重量%および10重量%のポリジメチルシロキサンまで希釈し、1時間当たり25ガロンの流量でスプレーノズルを通じてキューポラ収集チャンバに注入した。ポリジメチルシロキサンエマルション溶液を霧化および蒸発させて、繊維化ウールを冷却し、その表面をコーティングした。処理されたミネラルウールを使用して、繊維パネルを調製した。具体的には、ミネラルウールをパーライト、デンプン、新聞紙、および水と混和して、均質なスラリーを形成した。長網抄紙機を使用して、スラリーを脱水した。得られた脱水スラリーを、500°F(260℃)のオーブンで1時間、および300°F(149℃)オーブンで3時間乾燥させて、繊維パネルを形成した(処理されたパネル#2)。ミネラルウールが線状ポリジメチルシロキサンで表面処理されなかったことを除いて、処理されたパネル#2と同じ条件下で処理された、パネル#2と同じ組成を有する対照繊維パネル(対照パネル#2)を調製した。ボード密度、eNRC、硬度、MORおよびMOE、保水値、ならびにTHC排出について、繊維パネルを試験した。
【0050】
表面処理されたミネラルウールを使用して調製した繊維パネル(処理されたパネル#2)の平均密度は、対照パネル#2の密度と同等であった。処理されたパネル#2のeNRCは、同様の密度に起因して予想されるように、対照パネル#2のeNRCと一致した。処理されたパネル#2の物理的特性(硬度、MOE、およびMOR)もまた、対照パネル#2と一致し、実施例1の処理されたパネル#1の物理的特性が、撥水剤の存在によってではなく、密度減少によって影響を受けたことを示している。処理されたパネル#2の保水値は、対照パネル#2と比較して、約10.5%および約11.5%有利に低減した。具体的には、対照パネル#2は、約1944lbs/MSFの保水値を有した一方で、処理されたパネル#2は、約1717および1745lbs/MSFの保水値を有した。処理されたパネル#2のTHC排出は、対照パネル#2のTHC排出よりも約1%および約11%低かった。処理されたパネル#2の処理されたウールの水膨張性は、対照パネル#2の水膨張性よりも顕著な改善を示した。具体的には、処理された繊維パネルは、対照パネルの650mlと比較して、約920mlおよび950mlの水膨張性を有するウール繊維を有した。
【0051】
したがって、実施例2は、本開示に従って調製された表面処理されたミネラルウールを含む、本開示に従った繊維パネルの形成の成功を実証している。本開示に従った繊維パネルは、ミネラルウールが撥水剤で表面処理されなかった同等の繊維パネルと比較して、水膨張特性、保水特性、およびTHC排出が改善された。
【0052】
本開示の範囲内の変更は当業者には明らかであり得るので、前述の説明は、理解を明確にするためにのみ提示され、この説明を不必要な制限として理解するべきではない。
【0053】
本明細書に引用されているすべての特許、刊行物、および参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と組み込まれた特許、刊行物、および参考文献との間に矛盾がある場合、本開示が優先されるべきである。