IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東精工株式会社の特許一覧

特許7426179金属部材のハイブリッド接合方法および接合構造
<>
  • 特許-金属部材のハイブリッド接合方法および接合構造 図1
  • 特許-金属部材のハイブリッド接合方法および接合構造 図2
  • 特許-金属部材のハイブリッド接合方法および接合構造 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】金属部材のハイブリッド接合方法および接合構造
(51)【国際特許分類】
   B21K 25/00 20060101AFI20240125BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B21K25/00 Z
B23K20/00 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019158207
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021035692
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】手島 政和
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩二
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-187462(JP,A)
【文献】特開2000-271675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 25/00
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の接合部材の凸部に金属製の被接合部材の凹部を嵌め合わせた状態で両部材を圧縮する方向に加圧することにより、接合部材の凸部の端面外周を外方に扁平させてアンダーカット部を成形し、両部材を一体に接合する機械的接合工程と、
機械的接合工程により接合された両部材を、加熱炉内に投入して所定温度で所定時間加熱することにより、両部材の接合部に拡散層を生成する拡散接合工程と、を順次実行する金属部材のハイブリッド接合方法において、
前記機械的接合工程では、接合部材の凸部の端面上のめっき被膜あるいは酸化膜が裂けるまで、当該凸部の端面外周を外方に扁平させることにより露出した新生面を拡散接合することを特徴とする金属部材のハイブリッド接合方法。
【請求項2】
拡散接合工程は、液相拡散接合であることを特徴とする請求項1に記載された金属部材のハイブリッド接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の接合法で金属部材同士を接合する技術に関し、特に機械的接合と拡散接合とを組み合わせた金属部材のハイブリッド接合方法および接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料でなる接合部材と被接合部材とを接合して複合部材を製造する場合には、当該複合部材の用途によってはその接合個所に高度な密着性が要望されている。例えば、リチウム電池にあっては、電極端子に溶接等によりリード線等を取付けることから、電極端子には導電率の高い銅部材と耐食性の高いアルミ部材とを電気抵抗が高くならないように密着性を高めて接合した複合部材が要望されている。この種の要望に応じた金属部材の接合方法としては、特公昭59-52031号公報(特許文献1)、特公昭64-4581号公報(特許文献2)等に記載の拡散接合方法が最適な方法として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭59-52031号公報
【文献】特公昭64-4581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、拡散接合では接合界面に酸化膜、不純物が付着している場合、これらを除去できないことから、拡散接合ができないという問題があった。また、これら部材の一方に拡散接合の困難な金属のめっき被膜が被覆されている場合も同様に、一般的な一体接合方法では、両部材の接合部にめっき被膜が剥がされずに残ることから、拡散接合ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために発明されたものであり、めっき被膜が施された金属部材を安定して接合可能な金属部材のハイブリッド接合方法および接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、金属製の接合部材の凸部に金属製の被接合部材の凹部を嵌め合わせた状態で両部材を圧縮する方向に加圧することにより、接合部材の凸部の端面外周を外方に扁平させてアンダーカット部を成形し、両部材を一体に接合する機械的接合工程と、機械的接合工程により接合された両部材を、加熱炉内に投入して所定温度で所定時間加熱することにより、両部材の接合部に拡散層を生成する拡散接合工程とを有する金属部材のハイブリッド接合方法によって解決できる。
【0007】
なお、機械的接合工程では、接合部材の凸部の端面上のめっき被膜が裂けるまで、当該凸部の端面外周を外方に扁平させることにより露出した新生面を拡散接合することが好ましい。
【0008】
なお、拡散接合工程は、液相拡散接合であることが好ましい。
【0009】
また、上記課題は、凸部を有する金属製の接合部材と、前記接合部材の凸部を挿入可能な凹部を有する金属製の被接合部材と、前記接合部材の凸部を被接合部材の凹部に挿入した状態で被接合部材を圧縮することにより、接合部材の凸部の端面に塑性加工されるとともに被締結部材の余肉を回り込ませて両部材同士を抜脱不能に接合するアンダーカット部と、前記接合部材の凸部と被接合部材の凹部との接合界面に生成される拡散層とを有する金属部材のハイブリッド接合構造によって解決できる。
【0010】
なお、前記拡散層は、アンダーカット部の上面に生成され、当該アンダーカット部の背面には生成されていないことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した本発明によれば、両部材が酸化膜、拡散接合が困難な金属めっき被膜等に覆われていても、これら両部材を機械的接合工程によって押し延ばすことにより、酸化膜、めっき被膜等を破壊、または分離してから拡散接合するので、接合界面に十分な拡散層を生成し、固溶強化された密着性の高い複合部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る金属部材のハイブリッド接合方法を示し図であり、(a)は機械的接合工程図および(b)は拡散接合工程図。
図2】本発明の実施形態に係る金属部材のハイブリッド接合方法の機械的接合工程を工程順に示す説明図。
図3】本発明の実施形態に係る金属部材のハイブリッド接合構造を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明である金属部材のハイブリッド接合方法および接合構造を図面に基づき説明する。第1接合方法は、図1(a)および図2(a),(b),(c)に示す機械的接合工程と、図1(b)に示す拡散接合工程とからなっている。
【0014】
前記機械的接合工程は、軸部1aとつば部1bと凸部1cとを有する銅材料でなる接合部材1と、前記つば部1bに当接しながら凸部1cに嵌合する凹部2aが形成された柱状のアルミ合金材料でなる被接合部材2と、これら両部材を加圧可能に配置された受け型3および押し型4とを有し、押し型4の加圧により被接合部材2を接合部材1に一体に接合させて複合部材CCを成形するように構成されている。
【0015】
前記受け型3は、被接合部材2の一部を案内する拡開穴3aとこれに連通して接合部材1の軸部1aを位置決めする位置決め穴3bとを有している。当該位置決め穴3bには、その同心軸上に延びるノックアウトピン5が突出可能に配置されており、このノックアウトピン5の端面は位置決め穴3bの底部を塞ぐように構成されている。また、このノックアウトピン5は位置決め穴3b内の接合部材1のつば部1bを受け型3の拡開穴3aに位置させるとともに、接合部材1の凸部1cを受け型3から露出させるように構成されている。さらに、このノックアウトピン5は前記押し型4の後退後に位置決め穴3b内に突出する時には位置決め穴3bに位置する接合部材1の軸部1aが一体に接合された被接合部材2とともに受け型3から取出されるように構成されている。
【0016】
前記機械的接合工程は、好ましくは、図2(a)に示すように予備成形穴6aを有する予備成形型6を有している。当該予備成形型6は、接合部材1の凸部1cに嵌合する被接合部材2をなべ頭様成形部2bに予備成形するように構成されている。この予備成形型6の予備成形穴6aは被接合部材2の余肉がその加圧方向と交差する方向に延びるのを可能にしている。また、前記予備成形型6は被接合部材2の予備成形時には、接合部材1の凸部1cに嵌合する被接合部材2の一部を受け型3の拡開穴3aに沿った形状に成形するとともに接合部材1のつば部1bに密着させるように構成されている。
【0017】
前記押し型4は、図2(b),(c)に示すように被接合部材2の予備成形後に、予備成形されたなべ頭様成形部2bを所定厚さの平板様頭部2dに塑性変形させて両部材を一体に接合するように構成されている。また、この押し型4は予備成形型6と同様に、被接合部材2の成形時に硬度の低い被接合部材2を加工硬化させながらその硬度を増してその凹部2aの内壁を介して硬度の高い接合部材1の凸部1cを押圧する構成となっている。
【0018】
なお、接合部材1は銅材料でなっているが、鉄材料等のより硬度の高い金属材料であってもよい。
【0019】
前記拡散接合工程の加熱炉7は、図1(b)に示すように、炉内に投入される複合部材CCを加熱する構造があればよく、これを大気雰囲気で、銅とアルミの共晶点である550℃で2時間以上、好ましくは4時間程度加熱する。これにより、複合部材CCの接合部に共晶反応を生じさせて新生面に拡散層を生成するように構成されている。この加熱炉7に投入される複合部材は加熱されるだけで、拡散接合が可能であるため、当該加熱炉7には多数個の複合部材CCを投入することができる。
【0020】
なお、拡散接合方法としては、上述した液相拡散接合に限定されることなく、固相拡散接合であってもよい。また、接合部材および被接合部材の材質に応じた共晶点および加熱時間で加熱することが好ましい。
【0021】
上記ハイブリッド接合方法により成形されたハイブリッド接合構造CCは、図3に示すように、機械的接合工程において、図3に示すように、接合部材1の凸部1cの端面、すなわち上端面10が加圧方向と交差する方向に延びるように塑性変形しながら、その上端外周が外方に扁平してアンダーカット部1caが形成される。これに伴い、被接合部材2も塑性変形することにより、その余肉がアンダーカット部1caの背面11に回り込み、アンダーカット部1caの全面に渡って被接合部材2が密着するようにして、接合部材1と被接合部材2が機械的に接合されて複合部材CCが生産される。このとき、接合部材1を被覆するめっき被膜については、アンダーカット部1caの上面のめっき被膜は、外方に扁平されるため破壊されて除去される。一方、アンダーカット部1caの背面では、めっき被膜が圧縮されて厚みを増す。
【0022】
その後、拡散接合工程では、機械的接合工程で成形された複合部材CCが加熱工程の加熱炉7に投入され、所定の温度で加熱される。このとき、接合部材1のアンダーカット部1caの上端面10は、めっき被膜が除去されており、接合部材1と被接合部材2とは密着していて、両部材の接合部に空気層がなく、また当該接合部に大気が回り込むこともない。そのため、当該接合部を構成する両部材に生成された新生面を新たな酸化膜が覆うようなことがなく、両部材の密着性は非常に高くなっており、当該新生面には示すように十分な厚さの拡散層が生成される。これにより、固溶強化されて密着性の高い接合部で接合される複合部材CCを製造することができる。
【0023】
一方、接合部材1と被接合部材2との接合界面は、アンダーカット部1caの上面10を除いて、機械的接合工程の過程でめっき被膜が圧縮されて厚みを増しているので、これが障壁となり共晶反応が生じない。拡散層は、耐久性に劣るため、接合界面が外部環境と接している部分Pに拡散層が生成されないことは、品質の向上につながる。
【0024】
本発明の各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0025】
CC…複合部材
1 接合部材
1a 軸部
1b つば部
1c 凸部
1ca アンダーカット部
2 被接合部材、
2a 凹部
3 受け型
4 押し型
図1
図2
図3