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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】易開封性包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20240125BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240125BHJP
   B65D 75/62 20060101ALI20240125BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D30/02
B65D75/62 A
B32B27/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019014090
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020121747
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】本郷 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 高博
(72)【発明者】
【氏名】大橋 和彰
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 義之
(72)【発明者】
【氏名】赤羽根 敬弘
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-285559(JP,A)
【文献】特開2018-087028(JP,A)
【文献】特開平11-240543(JP,A)
【文献】特開2017-132517(JP,A)
【文献】特開2017-043406(JP,A)
【文献】特開2009-137610(JP,A)
【文献】特開2006-143223(JP,A)
【文献】特開平04-211937(JP,A)
【文献】特開2018-020844(JP,A)
【文献】特開平03-218830(JP,A)
【文献】特開2014-151945(JP,A)
【文献】特開2019-137456(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0175325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00-33/38
B65D 75/62
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムから成る最外層、切込み加工による切込みが形成されたフィルムから成る中間層、ヒートシール可能な樹脂フィルムから成る最内層を少なくとも備えた多層フィルムから成る易開封性包装袋の製造方法であって、
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがレーザー光照射により非晶化又は低結晶化された易開封性部分を有し、
前記多層フィルムにおける、前記切込み加工による切込み形成位置と前記易開封性部分の形成位置が合致し、
前記レーザー光照射の条件は、出力が10~400W、スポット径が0.14~15mm、走査線間隔が0.05~15mm、照射エネルギー密度が0.5~8J/cmである
ことを特徴とする易開封性包装袋の製造方法。
【請求項2】
前記中間層が、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートの何れかから成る請求項1記載の易開封性包装袋の製造方法。
【請求項3】
前記最内層が、レーザー光照射により非晶化又は低結晶化されたヒートシール性部分を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムから成る請求項1又は2記載の易開封性包装袋の製造方法。
【請求項4】
前記多層フィルムが、更に無機蒸着層又はバリア性コーティング層が形成されたバリア性フィルムから成る他の中間層を有する請求項1~3の何れかに記載の易開封性包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルムから成る包装袋に関するものであり、より詳細には、手で容易に切断して開封することが可能な易開封性包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多層フィルムから成る包装袋において、使用者が内容物を取り出す場合に、鋏等を使わずに手で開封できるようにフィルムに予め厚さ方向の中間部まで切り込むハーフカット加工等の切込み加工を施したものが知られている。
このような切込み加工は、一般に多層フィルムを構成する一つのフィルムに施されているため、包装体の開封に際して、包装体を構成する多層フィルムが一体的に切断されないと、容易に開封できない。
【0003】
このような問題を解決するために、多層フィルムのラミネート強度を向上することにより、手による開封に際して多層フィルムが層間剥離を生じることを防止して、多層フィルムを一体的に切断することが提案されている(特許文献1)。
また下記特許文献2には、少なくとも、最外層の熱可塑性樹脂層と最内層のシーラント層とを有する積層フィルムからなるパウチにおいて、積層フィルムをパウチに製袋した際の開封引き裂き部を、温度が熱可塑性樹脂層のガラス転移点以上で熱圧縮したことを特徴とするパウチが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-54580号公報
【文献】特開2016-88611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多層フィルムを構成するフィルムに2軸延伸フィルムが含まれている場合には、2軸延伸フィルムの配向に起因して、切込み加工が施されたフィルムの引裂き方向と一致する方向に切断されないおそれがある。その結果、2軸延伸フィルムが切込み加工が施されたフィルムとデラミしてしまい、切込み加工による切込み部に沿って包装体を一体的に切断することができず、満足する易開封性を得ることができないという問題がある。
【0006】
従って本発明の目的は、中間層に切込み加工が施された多層フィルムから成る包装袋において、鋏などの道具を用いることなく、包装袋を構成する多層フィルムを一体的に切断することが可能な易開封性に優れた包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムから成る最外層、切込み加工による切込みが形成されたフィルムから成る中間層、ヒートシール可能な樹脂フィルムから成る最内層を少なくとも備えた多層フィルムから成る易開封性包装袋の製造方法であって、前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがレーザー光照射により非晶化又は低結晶化された易開封性部分を有し、前記多層フィルムにおける、前記切込み加工による切込み形成位置と前記易開封性部分の形成位置が合致し、前記レーザー光照射の条件は、出力が10~400W、スポット径が0.14~15mm、走査線間隔が0.05~15mm、照射エネルギー密度が0.5~8J/cmであることを特徴とする易開封性包装袋の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の易開封性包装袋の製造方法においては、
1.前記中間層が、ナイロン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートの何れかから成ること、
2.前記最内層が、レーザー光照射により非晶化又は低結晶化されたヒートシール性部分を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムから成ること、
3.前記多層フィルムが、更に無機蒸着層又はバリア性コーティング層が形成されたバリア性フィルムから成る他の中間層を有すること
好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の易開封性包装袋によれば、最外層に2軸延伸されたポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ということがある)から成るフィルムを用いた場合にも、この2軸延伸PETフィルムに非晶化又は低結晶化された易開封性部分を形成しておくことにより、2軸延伸PETフィルムの配向方向にかかわらず、引裂くことが可能になる。そのため、切込み加工が施された中間層の切込み線の方向と合わせることもでき、これにより包装袋を構成する多層フィルムを容易且つ一体的に引裂くことが可能になる。
また最外層に2軸延伸PETフィルムを使用していることから、優れた耐熱性及び機械的強度を有していると共に、多層フィルムを構成する各層をすべてポリエステルから形成することによって、更に優れた耐熱性、水分バリア性をも具備することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の易開封性包装袋の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の易開封性包装袋を構成する多層フィルムの一例を示す図である。
図3】本発明の易開封性包装袋を構成する多層フィルムの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(包装袋)
本発明の易開封性包装袋は、2軸延伸PETフィルムから成る最外層、切込み加工による切込みが形成されたフィルムから成る中間層、及びヒートシール可能な樹脂フィルムから成る最内層、を少なくとも備えた多層フィルムから成っており、前記2軸延伸PETフィルムにレーザー光照射により非晶化又は低結晶化された易開封性部分が形成されていることが重要な特徴である。
切込み加工が施された中間層は、形成された切込みに沿って引裂くことができるが、前述したとおり、2軸延伸PETから成る最外層は、2軸延伸に伴う配向が存在するため、その引裂き方向は必ずしも中間層の意図された引裂き方向と一致しない。そのため、最外層と中間層で異なる方向に引裂かれてしまうおそれがある。
本発明においては、2軸延伸PETフィルムから成る最外層の一部にレーザー光を照射することにより非晶化又は低結晶化させて脆化させることにより、易開封性部分を形成する。この易開封性部分を中間層を切込み加工により形成される切込み部の位置に合致するように規定することにより、中間層の切込み部に沿った引裂きと同時に、易開封性部分も引裂かれ、包装体を構成する多層フィルム全体が一体的に切断される。
【0012】
図1は、本発明の易開封性包装袋の一例を示す図であり、この包装袋1は、表面多層フィルム2a及び裏面多層フィルム2b、並びに表面多層フィルム2aと裏面多層フィルム2bの間に2つ折りにして位置する底フィルム3から成るスタンディングパウチであり、表面多層フィルム2a及び裏面多層フィルム2b並びに底フィルム3の周縁がヒートシール部4により接合されている。
パウチ上部に形成される引裂き部は、表面多層フィルム2a及び裏面多層フィルム2bの中間層に形成される切込み加工による切込み部6及び最外層にレーザー照射により形成される易開封性部分7から成り、易開封性部分7は、切込み部6と重なるように形成されており、切込み部6の破断と同時に切込み線に沿って破断される。また切込み部6につながるパウチの縦方向ヒートシール部4の両端部には引裂きの手掛かりとなる切欠き5,5が形成されている。
【0013】
(多層フィルム)
本発明の包装袋に用いる多層フィルムは、図2に示すように、少なくとも2軸延伸PETフィルムから成る最外層10、中間層11及びヒートシール性を有する最内層12から成り、最外層10にはレーザー照射により非晶化又は低結晶化された易開封性部分7が形成され、中間層11には切込み加工による切込み部6が形成されている。また図2に示す具体例では、最内層をポリエステルから形成し、レーザー照射により非晶化又は低結晶化させてヒートシール部4が形成されている。
また図3に示す具体例においては、図2に示す多層フィルムにおいて、最外層10を構成する2軸延伸PETフィルムの内面側に、蒸着層又はバリア性コーティング層から成るバリア層13が形成されており、バリア性が向上された包装袋を提供することが可能になる。
【0014】
[最外層]
本発明に用いる多層フィルムの最外層は、2軸延伸PETフィルムから成る。
PETフィルムを構成するポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分の80モル%以上、特に90モル%以上がテレフタル酸成分から成り、且つアルコール成分の80%以上、特に90モル%以上がエチレングリコール成分から成るポリエステルである。
テレフタル酸成分以外の残余のカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、p-β-オキシエトキシ安息香酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。
一方、エチレングリコール以外のアルコール成分としては、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-へキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン等のアルコール成分を挙げることができる。
【0015】
最外層には、滑剤、アンチブロッキング剤、充填剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤等、従来公知の樹脂用配合剤を公知の処方で配合することができる。
ポリエチレンテレフタレートは、フィルム形成可能な分子量を有するべきであり、溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度が0.5dL/g以上、特に0.55~0.70dL/gの範囲にあることが機械的強度の観点から好ましい。
PETフィルムは2軸延伸されていることが重要であり、これにより耐熱性、機械的強度が顕著に向上する。延伸倍率は、これに限定されないが、面積延伸倍率が3~6倍の範囲にあるものを好適に使用することができる。
2軸延伸PETフィルムの厚みは、包装袋の機械的強度等の観点から、5~50μm、特に10~30μmの範囲にあることが好適である。
【0016】
[中間層]
本発明に用いる多層フィルムにおいて、中間層は切込み加工を施すことができる限り、包装袋の製造に用いられていた従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができるが、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」ということがある)、エチレンテレフタレート・ブチレンテレフタレート共重合体、PET及びPBTのブレンド物等のポリエステル、或いはナイロンから成ることが好ましく、中でもPBT、PBTとPETのブレンド物を好適に用いることができる。すなわち、PBT及びナイロンは耐衝撃性に優れることから、包装袋の落下衝撃による破袋等を有効に防止することができるが、ナイロンはレトルト殺菌等の高湿度条件下での水分バリア性に劣るため、レトルト殺菌に付される用途においてはPBT、或いはPBTとPETのブレンド物を好適に使用できる。
【0017】
PETについては最外層で上述したものを使用することができ、PBTは、ジカルボン酸成分の80モル%以上、特に90モル%以上がテレフタル酸から成り、且つアルコール成分の80モル%以上、特に90モル%以上が1,4-ブタンジオールから成るポリエステルであり、残余の共重合成分としては、PETについて例示したものを使用できる。
またPETとPBTのブレンド物を用いる場合には、ブレンド比(質量比)が10:90~90:10の範囲にあることが好適である。
中間層にも、必要により上述した従来公知の樹脂用配合剤を公知の処方で配合することができる。
PBTは、フィルム形成可能な分子量を有するべきであり、溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度が0.5dL/g以上、特に0.55~0.70dL/gの範囲にあることが機械的強度の観点から好ましい。
中間層を構成するフィルムの厚みは、耐衝撃性や切込み加工等の観点から、5~50μm、特に10~30μmの範囲にあることが好適である。
【0018】
[最内層]
本発明に用いる多層フィルムにおいて、最内層はヒートシール可能な樹脂フィルムから成り、ヒートシール性樹脂として従来公知のポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の他、レーザー照射により非晶化又は低結晶化させたヒートシール性部分を形成することを条件として、最外層に上述したPETを使用することができる。中でも、耐熱性の観点からは、ポリプロピレン、PETを好適に使用することができ、特に2軸延伸PETフィルムを用いることにより、内容物に対するバリア性も向上することができる。
最内層の厚みは、5~50μm、特に10~30μmの範囲にあることが好適である。
【0019】
[バリア層]
バリア層としては、上述した最外層または中間層をベースフィルムとして用い、このベースフィルム上に以下のバリア層を形成して成る。
バリア層としては、酸化アルミニウム等の金属酸化物蒸着層やケイ素酸化物蒸着層に代表される無機酸化物蒸着層、或いは、ダイヤモンドライクカーボン等の炭化水素系蒸着層に代表される無機蒸着層を有する無機蒸着フィルム、或いは、金属アルコキシドや金属ハロゲン化合物等の加水分解化合物によるメタロキサン結合を有する化合物からなるコーティング剤、或いはポリビニルアルコール系ポリマーやポリカルボン酸系ポリマー等のガスバリア性樹脂からなるコーティング剤を塗布したコーティングバリア層を例示できる。
【0020】
[その他]
本発明に用いる多層フィルムは、2軸延伸PETフィルム(バリア層を形成されているものも含む)から成る最外層、切込み加工が施された中間層、及びヒートシール性を有する樹脂フィルムから成る最内層以外にも、必要により従来公知の他の層を中間層として適宜形成することができる。
例えば、これに限定されないが、酸化性有機成分及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物から成る層や、耐衝撃性層等を形成することができる。
【0021】
[多層フィルムの製造]
本発明に用いる多層フィルムは、上述したとおり、2軸延伸PETフィルムから成る最外層、切込み加工による切込みが形成されたフィルムから成る中間層、及びヒートシール可能な樹脂フィルムから成る最内層、を少なくとも備えており、最外層に赤外線波長を有する炭酸ガスレーザー光照射により非晶化又は低結晶化された易開封性部分が形成されている。
最外層に設けるレーザー光照射による易開封性部分は、中間層に形成する切込み部と同時に破断し得る限り、形成位置や易開封性部分の面積等は適宜変更することができるが、切込み部と合致する位置に形成することが好適である。図1に示したように、切込み部を含むように連続的に形成することもできるし、切込み部を部分的に含むようなスポット状に複数形成されていてもよい。
赤外レーザー光の走査照射条件は、表面の延伸ポリエステルの組成、延伸倍率、厚み等によっても異なるが、特に過度の高出力を避けるという観点から、下記の条件から選択することが好ましい。
出力:10~400W、特に30~400W
スポット径:0.14~15mm
走査線間隔:0.05~15mm
照射エネルギー密度:0.5~8J/cm
【0022】
最外層に非晶化又は低結晶化された易開封性部分を設けるには、2軸延伸により配向結晶化されたPETの表面から厚み方向の途中へのごく限られた部分に、炭酸ガスレーザー等の走査照射を用い、短時間の内に急激に融点以上の温度に加熱され且つ加熱中止と共に結晶化温度よりも低い温度に急速に冷却することにより形成できる。
レーザービームの出力及び走査速度を変えることにより、非晶化又は低結晶化する部分の厚みを制御することができる。また、レーザービームのスポット径やスポット形状を変えることによりその幅等を制御することができる。非晶化又は低結晶化する易開封性部分の厚みは、2軸延伸PETフィルムの厚みの50~100%の範囲にあることが易開封性の観点から好適である。
【0023】
中間層に形成する切込み加工(ハーフカット加工)は、切断刃を用いた加工やレーザー照射による加工等従来公知の方法によって行うことができる。例えば、これに限定されないが、本出願人による特開2018-86695号公報に記載された切込み刃を備えた加工ロールを用いてフィルム表面に切込みを入れる方法等を好適に使用できる。
【0024】
最内層を構成するヒートシール可能な樹脂フィルムとして、2軸延伸PETフィルムのようなそれ自体ヒートシール性のないフィルムを使用する場合には、最外層の易開封性部分の形成と同様に、レーザー光を照射して非晶化又は低結晶化することによりヒートシール性部分を形成する。ヒートシール性部分の大きさは、形成するヒートシール部に応じて任意に変化させ得るが、1~10mm、特に2~6mmの幅であることが好ましい。レーザー光を照射することにより形成されるヒートシール性部分は、ヒートシール幅が上記のように小さい場合にも、シール強度が10N/15mm幅以上の密封信頼性に優れたヒートシールを形成することができる。非晶化又は低結晶化された部分は、ヒートシールすべき部分に一本の線として設けることもできるし、或いは小間隔をおいて複数本の線の組み合わせとして設けることもできる。
【0025】
本発明に用いる多層フィルムにおいては、各層の積層順序、或いはレーザー光照射による易開封性部分及びヒートシール性部分の形成順序は特に限定されない。
例えば、これに限定されないが、最内層及び中間層としていずれもポリエステルフィルムを用いる場合、これらを共押出フィルムとして形成した後、中間層に切込み加工を施す。次いでこの切込み加工が施された共押出フィルムに最外層となる2軸延伸PETフィルム(バリア層が形成されているものも含む)をフィルムラミネートしてもよいし、或いは予め切込み加工を施した中間層を最外層となる2延伸PETフィルム(バリア層が形成されているものも含む)及び最内層となるポリエステルフィルムをサンドイッチラミネーション等により積層することもでき、得られた積層フィルムの最外層及び最内層のそれぞれにレーザー光を照射して、易開封性部分及びヒートシール性部分を形成することにより多層フィルムを作成できる。
また中間層としてナイロンフィルム、最内層としてポリプロピレンを用いる場合には、最外層となる2軸延伸PETフィルム(バリア層が形成されているものも含む)と切込み加工が施されたナイロンフィルムを接着剤を用いてドライラミネートして積層フィルムを作成し、この積層フィルムにポリプロピレンを押出コート或いはフィルムラミネートして多層フィルムを形成し、最外層にレーザー光を照射して易開封性部分を形成することにより多層フィルムを作成できる。
【0026】
尚、各層の積層に使用し得る接着剤としては、ドライラミネーションでは、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系の接着剤を使用することができ、ホットメルトラミネーションでは、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などのホットメルト接着剤を使用することができるが、特に、接着剤中の溶剤による内容物のフレーバーへの影響を低減するため、無溶剤型のウレタン系接着剤を使用することが望ましい。
【0027】
(包装袋の製造)
本発明の易開封性包装袋は、上述した多層フィルムを用いる以外は、従来公知の包装袋と同様に製造することができ、上述した多層フィルムの最内層同士を対向させ、ヒートシール性部分が合致するように重ね合わせ、それ自体公知のヒートシール機構、例えばホットプレート、インパルスシール、誘導加熱シール、超音波シール、高周波誘導加熱シール等を用いてヒートシールを行うことにより作成できる。
包装袋の形状は、例えば、三方シールや四方シールの平袋、スタンディングパウチ、ガゼット袋、ピロー袋等、従来公知のすべての形状とすることができる。
また、電子レンジ加熱用の包装袋とする場合には、電子レンジ加熱中に自動開口する蒸気抜き機構を備えることが望ましい。
【実施例
【0028】
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[多層フィルムの製造]
第一積層工程において、中間層となる厚さ15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムと、最内層となる厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、ポリウレタン系接着剤を使用してドライラミネーションにより積層フィルムを作製した。
切込み加工工程において、第一積層工程で作製した積層フィルムの2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム側からロータリーカッターを使用してハーフカットである切込みを形成した。
第二積層工程において、切込みを形成した積層フィルムの2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム面に、ポリウレタン系接着剤を使用して、最外層となる厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネーションにより積層し、多層フィルムを作製した。
次に、ポリウレタン系接着剤を硬化させるために、作製した多層フィルムを35℃の恒温室に5日間保管して硬化処理を行った。
【0029】
[レーザー照射工程]
多層フィルムの切込み(ハーフカット)の長手方向に沿って、切込み形成位置と合致する位置に、最外層となる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム面に、炭酸ガスレーザー発振装置(波長10.6μm)を用いて、出力35W、照射面上にスポット径は5mm、走査速度は540mm/秒、にてレーザービームを照射し、易開封性部分を形成した。
また、最内層となる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム面には、包装袋とするときヒートシール部となる位置に、炭酸ガスレーザー発振装置(波長10.6μm)を用いて、出力35W、照射面上にスポット径は2.7mm、走査速度は540mm/秒、走査線間隔は1100μmにてレーザービームを照射した。
【0030】
(比較例1)
実施例1で記載した多層フィルムの製造方法と同様の多層フィルムを作製した。レーザー照射工程で、最内層となる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム面に、包装袋とするときヒートシール部となる位置に、炭酸ガスレーザー発振装置(波長10.6μm)を用いて、出力35W、照射面上にスポット径は2.7mm、走査速度は540mm/秒、走査線間隔は1100μmにてレーザービームを照射した。なお、最外層となる2軸延伸ポリエチレンテレフタレート面にはレーザービームは照射せず易開封性部分は形成しなかった。
【0031】
実施例1、比較例1で作製した多層フィルムから、最内層をヒートシールすることにより、高さ170mm、幅130mmの平パウチを作製した。
この平パウチに、内容物として水を180ml入れ、パウチの上方をヒートシールにより密封した後、127℃30分でレトルト殺菌して包装食品を作製した。
【0032】
レトルト殺菌した包装食品を常温にて手で引き裂き開封を行った。
その結果、実施例1は、最後まで、切込み(ハーフカット)に沿って引き裂き開封を行うことができた。
一方、比較例1は、引き裂き開封がヒートシール部分を越えて、約20mm内容物収納領域に入った段階で最外層フィルムと中間層フィルムとの間でデラミが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明よれば、優れた易開封性を有する包装袋を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 パウチ、2a 表面多層フィルム、2b 裏面多層フィルム、3 底フィルム、4 ヒートシール部、5 切欠き、6 切込み部、7 易開封性部分、10 最外層、11 中間層、12 最内層、13 バリア層。
図1
図2
図3