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特許7426196弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタ及びマルチプレクサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタ及びマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240125BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20240125BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20240125BHJP
   H03H 9/54 20060101ALI20240125BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20240125BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/64 Z
H03H3/08
H03H9/54 Z
H03H9/17 F
H03H3/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019048977
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020150514
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 諭
(72)【発明者】
【氏名】黒▲柳▼ ▲琢▼真
(72)【発明者】
【氏名】畑山 和重
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-207144(JP,A)
【文献】特開2001-332654(JP,A)
【文献】特開2017-188807(JP,A)
【文献】特開2017-204544(JP,A)
【文献】特開2011-066492(JP,A)
【文献】特開2017-169139(JP,A)
【文献】特開2017-204827(JP,A)
【文献】特開2018-207045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
H03H 3/007-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と前記支持基板上に直接的または間接的に接合された圧電基板とを備える第1基板と、
前記圧電基板を貫通する複数の開口にそれぞれ充填され、第1金属層第2金属層および第3金属層を含む複数の金属層と、
前記圧電基板上に設けられ、前記第3金属層と電気的に接続された弾性波素子と、
前記支持基板を貫通し、前記第1金属層および前記第3金属層それぞれ接続された第1ビア配線および第2ビア配線を含む複数のビア配線と、
前記圧電基板の前記弾性波素子が設けられた面に空隙を介し対向し、前記第1基板上に搭載された第2基板と、
前記第1金属層および前記第2金属層と前記第2基板とをそれぞれ接続する第1バンプおよび第2バンプを含み、前記第1バンプは前記第1ビア配線と平面視において重なり、前記第2バンプは前記複数のビア配線と平面視において重ならない複数のバンプと、
前記支持基板の前記圧電基板と反対側の面に設けられ、前記第2ビア配線が接続され、前記第2金属層と異なる電圧が加わり、平面視において前記第2金属層および前記第3金属層と重なる端子と、
を備える弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第2基板の前記圧電基板の前記弾性波素子が設けられた面と前記空隙を介し対向する面に設けられ、前記複数の金属層の少なくとも1つと電気的に接続された機能素子を備える請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記支持基板の熱伝導率は前記圧電基板の熱伝導率より高い請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記圧電基板はタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である請求項1からのいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
【請求項6】
請求項に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【請求項7】
支持基板と、前記支持基板上に直接的または間接的に接合された圧電基板と、前記圧電基板を貫通する複数の開口にそれぞれ充填され、第1金属層第2金属層および第3金属層を含む複数の金属層と、前記圧電基板上に設けられ、前記第3金属層と電気的に接続された弾性波素子と、前記支持基板を貫通し、前記第1金属層および前記第3金属層にそれぞれ接続された第1ビア配線および第2ビア配線を含む複数のビア配線と、を備える第1基板と、第2基板と、を、互いに空隙を介し対向し、前記第1金属層および前記第2金属層と前記第2基板とをそれぞれ接続する第1バンプおよび第2バンプを含む複数のバンプを用い、前記第1バンプは前記第1ビア配線と平面視において重なり、前記第2バンプは前記複数のビア配線と平面視において重ならないように、実装する工程と、
前記支持基板の前記圧電基板と反対側の面に設けられ、前記第2ビア配線が接続され、前記第2金属層と異なる電圧が加わり、平面視において前記第2金属層および前記第3金属層と重なる端子を形成する工程と、
を含む弾性波デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えば支持基板上に接合された圧電基板を有する弾性波デバイスおよびその製造方法、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
上面に弾性波素子が設けられた圧電基板が支持基板に接合された基板上に別の基板を搭載する弾性波デバイスが知られている(例えば特許文献1から4)。これらの弾性波デバイスでは、基板と別の基板とはバンプ等により接続され、弾性波素子は支持基板と圧電基板とを貫通するビア配線を介し外部に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-169139号公報
【文献】特開2017-212628号公報
【文献】特開2018-85490号公報
【文献】特開2018-85705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板および/または別の基板において発生した熱は、バンプおよびビア配線を介し放出される。しかし、ビア配線を設ける位置には制限があるため、効率的に放熱することが難しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、放熱性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持基板と前記支持基板上に直接的または間接的に接合された圧電基板とを備える第1基板と、前記圧電基板を貫通する複数の開口にそれぞれ充填され、第1金属層第2金属層および第3金属層を含む複数の金属層と、前記圧電基板上に設けられ、前記第3金属層と電気的に接続された弾性波素子と、前記支持基板を貫通し、前記第1金属層および前記第3金属層それぞれ接続された第1ビア配線および第2ビア配線を含む複数のビア配線と、前記圧電基板の前記弾性波素子が設けられた面に空隙を介し対向し、前記第1基板上に搭載された第2基板と、前記第1金属層および前記第2金属層と前記第2基板とをそれぞれ接続しする第1バンプおよび第2バンプを含み、前記第1バンプは前記第1ビア配線と平面視において重なり、前記第2バンプは前記複数のビア配線と平面視において重ならない複数のバンプと、前記支持基板の前記圧電基板と反対側の面に設けられ、前記第2ビア配線が接続され、前記第2金属層と異なる電圧が加わり、平面視において前記第2金属層および前記第3金属層と重なる端子と、を備える弾性波デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記第2基板の前記圧電基板の前記弾性波素子が設けられた面と前記空隙を介し対向する面に設けられ、前記複数の金属層の少なくとも1つと電気的に接続された機能素子を備える構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記支持基板の熱伝導率は前記圧電基板の熱伝導率より高い構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記圧電基板はタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である構成とすることができる。
【0013】
本発明は、上記弾性波デバイスを含むフィルタである。
【0014】
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
【0015】
本発明は、支持基板と、前記支持基板上に直接的または間接的に接合された圧電基板と、前記圧電基板を貫通する複数の開口にそれぞれ充填され、第1金属層第2金属層および第3金属層を含む複数の金属層と、前記圧電基板上に設けられ、前記第3金属層と電気的に接続された弾性波素子と、前記支持基板を貫通し、前記第1金属層および前記第3金属層にそれぞれ接続された第1ビア配線および第2ビア配線を含む複数のビア配線と、を備える第1基板と、第2基板と、を、互いに空隙を介し対向し、前記第1金属層および前記第2金属層と前記第2基板とをそれぞれ接続する第1バンプおよび第2バンプを含む複数のバンプを用い、前記第1バンプは前記第1ビア配線と平面視において重なり、前記第2バンプは前記複数のビア配線と平面視において重ならないように、実装する工程と、前記支持基板の前記圧電基板と反対側の面に設けられ、前記第2ビア配線が接続され、前記第2金属層と異なる電圧が加わり、平面視において前記第2金属層および前記第3金属層と重なる端子を形成する工程と、を含む弾性波デバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図2図2(a)は、実施例1における弾性波素子の平面図、図2(b)は弾性波素子の断面図である。
図3図3(a)は、実施例1におけるデュプレクサの回路図、図3(b)は、送信フィルタの回路図である。
図4図4は、実施例1における基板の上面の平面図である。
図5図5は、実施例1における基板の下面を上から透視した平面図である。
図6図6(a)から図6(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
図7図7(a)から図7(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
図8図8は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図9図9は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図である。図1に示すように、基板10は支持基板10aと圧電基板10bとを有する。支持基板10aは例えばサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、水晶基板またはシリコン基板である。圧電基板10bは、例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。圧電基板10bは支持基板10aの上面に接合されている。支持基板10aの線膨張係数は圧電基板10bより小さい。圧電基板10bと支持基板10aとの間に酸化シリコンまたは窒化アルミニウム等の絶縁体層を設けてもよい。このように、圧電基板10bは支持基板10aに直接的に接合されていてもよいし、間接的に接合されていてもよい。
【0020】
基板10の上面に弾性波素子12および配線14が設けられている。基板10の下面に端子18が設けられている。端子18は、弾性波素子12および22を外部と接続するためのフットパッドである。圧電基板10bを貫通する金属層17a、17bおよび17cが設けられている。支持基板10aを貫通するビア配線16aおよび16bが設けられている。ビア配線16aおよび16bはそれぞれ金属層17aおよび17bに接続されている。金属層17cにはビア配線16aおよび16bは接続されていない。ビア配線16aおよび16bと金属層17aおよび17bとは端子18と配線14とを電気的に接続する。
【0021】
基板10の外縁において圧電基板10bが除去されている。弾性波素子12を囲むように支持基板10a上に環状金属層32が設けられている。配線14、ビア配線16a、16b、金属層17aから17c、端子18および環状金属層32は、例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。環状金属層32上に環状金属層34が設けられている。環状金属層34は例えばニッケル層である。
【0022】
環状金属層32上に環状金属層34が設けられている。基板10上に基板20が搭載されている。基板20の下面に弾性波素子22および配線24が設けられている。基板20は、例えばシリコン基板、ガラス基板、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板または水晶基板等の絶縁基板または半導体基板である。配線24は例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。
【0023】
基板20はバンプ28aおよび28cを介し基板10にフリップチップ実装(フェースダウン実装)されている。バンプ28aおよび28cは、例えば金バンプ、半田バンプまたは銅バンプである。バンプ28aおよび28cは、配線14および24と接合する。バンプ28aは平面視においてビア配線16aおよび金属層17aと重なっている。バンプ28cは平面視において金属層17cと重なり、ビア配線16aおよび16bと重なっていない。バンプ28aおよび28cは、金属層17bおよびビア配線16bと重なっていない。
【0024】
基板10上に基板20を囲むように封止部30が設けられている。封止部30は、例えば半田等の金属層または樹脂等の絶縁層である。封止部30は、環状金属層34に接合されている。基板20の上面および封止部30の上面に平板状のリッド36が設けられている。リッド36は例えばコバール板等の金属板または絶縁板である。リッド36および封止部30を覆うように保護膜38が設けられている。保護膜38はニッケル膜等の金属膜または絶縁膜である。
【0025】
弾性波素子12は空隙26を介し基板20に対向している。弾性波素子22は空隙26を介し圧電基板10bに対向している。弾性波素子12および22は、封止部30、基板10、基板20およびリッド36により封止される。バンプ28aおよび28cは空隙26に囲まれている。端子18はビア配線16a、金属層17aおよび配線14を介し弾性波素子12と電気的に接続され、さらに、バンプ28aおよび配線24を介し弾性波素子22に電気的に接続されている。
【0026】
支持基板10aの厚さは例えば50μmから200μmである。圧電基板10bの厚さは例えば0.5μmから20μmであり、例えば弾性波の波長以下である。金属層17a、17b、17cおよび環状金属層32の厚さは圧電基板10bの厚さと略等しい。金属層17a、17bおよび17cの幅は例えば50μmから90μmであり、互いに略等しい。ビア配線16aおよび16bの幅は例えば30μmから50μmであり、互いに略等しい。バンプ28aおよび28cの厚さは例えば10μmから20μmであり、互いに略等しい。バンプ28aおよび28cの幅は例えば50μmから80μmであり、互いに略等しい。基板20の厚さは例えば50μmから200μmである。
【0027】
図2(a)は、実施例1における弾性波素子12の平面図、図2(b)は弾性波素子22の断面図である。図2(a)に示すように、弾性波素子12は弾性表面波共振器である。基板10の圧電基板10b上にIDT(Interdigital Transducer)40と反射器42が形成されている。IDT40は、互いに対向する1対の櫛型電極40aを有する。櫛型電極40aは、複数の電極指40bと複数の電極指40bを接続するバスバー40cとを有する。反射器42は、IDT40の両側に設けられている。IDT40が圧電基板10bに弾性表面波を励振する。弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの一方の櫛型電極40aの電極指40bのピッチにほぼ等しい。すなわち、弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの電極指40bのピッチの2倍にほぼ等しい。IDT40および反射器42は例えばアルミニウム膜または銅膜により形成される。圧電基板10b上にIDT40および反射器42を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。
【0028】
図2(b)に示すように、弾性波素子22は圧電薄膜共振器である。基板20上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極44および上部電極48が設けられている。下部電極44と基板20との間に空隙45が形成されている。圧電膜46の少なくとも一部を挟み下部電極44と上部電極48とが対向する領域が共振領域47である。共振領域47において、下部電極44および上部電極48は圧電膜46内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。基板20は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板またはシリコン基板である。下部電極44および上部電極48は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜46は例えば窒化アルミニウム膜である。空隙45の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。
【0029】
弾性波素子12および22は、弾性波を励振する電極を含む。このため、弾性波を制限しないように、弾性波素子12および22は空隙26に覆われている。
【0030】
図3(a)は、実施例1におけるデュプレクサの回路図、図3(b)は、送信フィルタの回路図である。図3(a)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ50が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ52が接続されている。送信フィルタ50は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ52は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。
【0031】
図3(b)に示すように、送信端子Tx(入力端子)と共通端子Ant(出力端子)との間に、1または複数の直列共振器S1からS4が直列に接続されている。共通端子Antと送信端子Txとの間に、1または複数の並列共振器P1からP5が並列に接続されている。並列共振器P1からP5の一端はグランド端子Tgに接続されている。
【0032】
図4は、実施例1における基板10の上面の平面図である。図4に示すように、基板10の上面に弾性波素子12および配線14が設けられている。複数の弾性波素子12は、直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP5を含む。配線14はパッドPa、Pt、Pr、PgtおよびPgrを含む。パッド上にバンプ28aおよび28cが設けられ、パッド下にビア配線16aおよび16bが設けられている。パッドPtとPaとの間に配線14を介し直列に直列共振器S1からS4が接続され、配線14を介し並列に並列共振器P1からP5が接続されている。並列共振器P1からP5の一端は配線14を介しパッドPgtに接続されている。パッドPrおよびPgrはバンプ28aおよび28cを介し基板20に接続されている。バンプ28aとビア配線16aとは重なっている。バンプ28cはビア配線16aおよび16bと重なっていない。ビア配線16bはバンプ28aおよび28cと重なっていない。
【0033】
図5は、実施例1における基板10の下面を上から透視した平面図である。図5に示すように、基板10の下面に端子18が設けられている。端子18は、共通端子Ant、送信端子Tx、受信端子Rxおよびグランド端子Tgを含む。共通端子Antおよび受信端子Rxは、ビア配線16aを介しそれぞれパッドPaおよびPrに電気的に接続されている。送信端子Txはビア配線16bを介しパッドPtに電気的に接続されている。グランド端子Tgはビア配線16aおよび16bを介しパッドPgtおよびPgrに電気的に接続されている。
【0034】
図4および図5のように、領域54では、バンプ28cとビア配線16aおよび16bは重なっていない。ビア配線16bとバンプ28aおよび28cとは重なっていない。バンプ28cとビア配線16bは同じ送信端子Txと重なるが、バンプ28cとビア配線16bとには異なる電圧が印加される。このため、図1の領域56にビア配線を設けると、バンプ28cとビア配線16bとが短絡してしまう。そこで、バンプ28cに重なるビア配線16aおよび16bを設けていない。バンプ28c以外のバンプ28aはビア配線16aと重なっている。
【0035】
[実施例1の製造方法]
図6(a)から図7(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図6(a)に示すように、支持基板10aの上面に圧電基板10bの下面を例えば表面活性化法を用い常温接合する。支持基板10aと圧電基板10bとは数nmのアモルファス層等を介し直接接合されていてもよいし、接着剤等により接合されていてもよい。支持基板10aと圧電基板10bとの間に絶縁層が設けられていてもよい。圧電基板10bに開口19aから19dを例えばエッチング法を用い形成する。
【0036】
図6(b)に示すように、開口19aおよび19b内の支持基板10aの上面に例えばレーザ光を照射しビア15aおよび15bを形成する。開口19cおよび19dにはビアを形成しない。図6(c)に示すように、ビアおよび開口を埋め込むように基板10上に金属層31を例えばめっき法を用い形成する。
【0037】
図7(a)に示すように、圧電基板10bの表面が露出するように金属層31の上面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化する。これにより、金属層17aから17c、環状金属層32およびビア配線16aおよび16bが形成される。図7(b)に示すように、圧電基板10b上に弾性波素子12を形成する。圧電基板10bおよび金属層17aから17c上に配線14を形成する。環状金属層32上に環状金属層34を形成する。
【0038】
図7(c)に示すように、基板10上にバンプ28aおよび28cを介し基板20をフリップチップ実装する。基板10および20を加熱し、基板20に超音波を印加しつつ、基板10と20とを互いに近づく方向に押圧する。これにより、バンプ28aおよび28cと配線14とが接合する。弾性波素子12と22とは空隙26を挟み対向する。
【0039】
その後、基板20を囲むように、例えば錫銀半田からなる封止部30を形成する。封止部30は環状金属層34と接合する。封止部30および基板20上にリッド36を設ける。リッド36は設けられてなくてもよい。支持基板10aの下面をCMP法等を用い研磨する。これにより、ビア配線16aおよび16bが支持基板10aの下面に露出する。ビア配線16aおよび16bに接触する端子18を形成する。基板10を切断する。これにより、弾性波デバイスが個片化される。封止部30およびリッド36を囲む保護膜38を形成する。これにより、図1の弾性波デバイスが製造される。
【0040】
[実施例1の変形例1]
図8は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの断面図である。図8に示すように、実施例1の変形例1の弾性波デバイスでは、バンプ28cが端子18と重なっていない。この場合にバンプ28cに重なるビア配線を設けると、支持基板10aの下面にビア配線が貫通してしまう。そこで、領域56のように金属層17c下にビア配線を設けない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0041】
[比較例1]
図9は、比較例1に係る弾性波デバイスの断面図である。図9に示すように、比較例1の弾性波デバイスでは、破線の領域58のように、金属層17cが設けられていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0042】
比較例1では、ビア配線16a、金属層17aおよびバンプ28aが平面視において重なっているため、弾性波デバイスを小型化できる。しかしながら、バンプ28cのように、バンプ28cとビア配線16aおよび16bとを平面視において重ねることができないことがある。このとき、領域58のように金属層17cを設けていない。圧電基板10bは支持基板10aおよび金属に比べ熱伝導率が低い。例えば、サファイアおよび銅の熱伝導率はそれぞれ42W/m・Kおよび430W/m・Kに対し、タンタル酸リチウムの熱伝導率は約9W/m・Kである。このため、矢印60のようにバンプ28cを介した基板20からの熱は、矢印61の破線のように圧電基板10bにより放熱されない。
【0043】
また、図7(c)のように、配線14にバンプ28aおよび28cを接合するときに、バンプ28a下には金属層17aが存在するのに対し、バンプ28c下は圧電基板10bである。このため、バンプ28aと28cとで配線14への接合状態が異なる。例えば、超音波信号の伝わり方がバンプ28aと28cで異なると、バンプ28aと28cとで配線14との接合状態が異なる。バンプ28aと28cのいずれかと配線14との接続性が低下する。このため、温度サイクル等の試験においてバンプ28aおよび28cの一方が配線14から剥がれる可能性がある。
【0044】
実施例1およびその変形例1によれば、基板10(第1基板)は、支持基板10aと支持基板10a上に直接的または間接的に接合された圧電基板10bとを備える。複数の金属層17aから17cは圧電基板10bを貫通する複数の開口にそれぞれ充填されている。弾性波素子12は、圧電基板10b上に設けられ、複数の金属層17aから17cの少なくとも1つと電気的に接続されている。1または複数のビア配線16aおよび16bは、支持基板10aを貫通する。ビア配線16a(第1ビア配線)は金属層17a(第1金属層)に接続されている。基板20(第2基板)は、圧電基板10bの弾性波素子12が設けられた面に空隙26を介し対向し、基板10上に搭載されている。バンプ28a(第1バンプ)はビア配線16aと平面視において重なる。バンプ28c(第2バンプ)は1または複数のビア配線16aおよび16bと平面視において重ならない。
【0045】
これにより、図1のように、矢印60のようにバンプ28cを介した基板20からの熱は金属層17cを流れる。この熱は矢印62のように金属層17cから支持基板10aに放出される。よって、放熱性を改善できる。
【0046】
また、図7(c)のように、基板10と20とを互いに空隙26を介し対向するように、金属層17aおよび金属層17cと接続する複数のバンプ28aおよび28cを用い実装する。このように、バンプ28aおよび28cの下に金属層17aおよび17cが設けられているため、バンプ28aと28cとで配線14への接合状態を均一にできる。例えば、超音波信号の伝わり方がバンプ28aと28cでほぼ同じであり、バンプ28aと28cとで配線14との接合状態が均一となる。バンプ28aと28cと配線14との接続性が向上する。よって、温度サイクル等の試験においてバンプ28aおよび28cが配線14から剥がれることを抑制できる。
【0047】
弾性波素子22(機能素子)は、基板20の圧電基板10bの弾性波素子12が設けられた面と空隙26を介し対向する面に設けられ、複数の金属層17aから17cの少なくとも1つに電気的に接続されている。これにより、弾性波素子22から発生した熱を効率的に放熱できる。
【0048】
端子18は、支持基板10aの圧電基板10bと反対側の面に設けられ、ビア配線16aおよび16bが接続する。これにより、弾性波素子12および22と外部とを電気的に接続できる。
【0049】
実施例1のように、金属層17cは、送信端子Txと異なる電圧が加わり、平面視において送信端子Txと重なる。このような場合、バンプ28cにビア配線16aおよび16bを重ねることができない。そこで、金属層17cを設けることで、放熱性を高めることができる。また、バンプ28aおよび28cの接続性を高めることができる。
【0050】
実施例1の変形例1のように、金属層17cは、平面視において端子18と重ならない。このような場合、バンプ28cにビア配線16aおよび16bを重ねることができない。そこで、金属層17cを設けることで、放熱性を高めることができる。また、バンプ28aおよび28cの接続性を高めることができる。
【0051】
支持基板10aの熱伝導率は圧電基板10bの熱伝導率より高い。これにより、金属層17cから支持基板10aを介した放熱性を高めることができる。支持基板10aの熱伝導率は圧電基板10bの熱伝導率の2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましい。
【0052】
圧電基板10bがタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板であると、圧電基板10bの熱伝導性が低い。よって、金属層17cを設けることが好ましい。
【0053】
バンプ28cは弾性波素子22に電気的に接続されておらず、弾性波素子22の熱を放出するためのダミーバンプでもよい。
【0054】
実施例1およびその変形例1の弾性波デバイスによりフィルタおよびデュプレクサを実現できる。送信フィルタ50を弾性波素子12で形成し、受信フィルタ52を弾性波素子22で形成することができる。送信フィルタ50を弾性波素子22で形成し、受信フィルタ52を弾性波素子12で形成することもできる。また、弾性波素子12で形成されたフィルタと、弾性波素子22で形成されたフィルタは、いずれも送信信号を通過させるフィルタ(例えばいずれもTDD(Time Division Duplex)方式用のフィルタ)でもよい。この場合、いずれのフィルタも放熱性が求められるため、金属層17cを設けることが好ましい。ラダー型フィルタの直列共振器および並列共振器の個数は適宜設定できる。フィルタは多重モード型フィルタでもよい。
【0055】
実施例1およびその変形例では、弾性波素子22として圧電薄膜共振器の例を説明したが、弾性波素子22は弾性表面波共振器でもよい。基板20の下面に設けられる機能素子として弾性波素子22の例を説明したが、機能素子は、インダクタまたはキャパシタ等の受動素子、トランジスタを含む能動素子、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子でもよい。
【0056】
マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0057】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10a 支持基板
10b 圧電基板
12、22 弾性波素子
14、24 配線
16a、16b ビア配線
17a-17c 金属層
18 端子
20 基板
26 空隙
28a、28c バンプ
30 封止部
32、34 環状金属層
36 リッド
50 送信フィルタ
52 受信フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9