(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】臭気物質吸着剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20240125BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240125BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61L9/01 K
A61L9/014
B01J20/22 A
(21)【出願番号】P 2019199823
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018209128
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 透
(72)【発明者】
【氏名】阿部 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鳥巣 修一
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-080328(JP,A)
【文献】特開2008-200646(JP,A)
【文献】特開2000-300652(JP,A)
【文献】特開2008-178788(JP,A)
【文献】特開平08-280781(JP,A)
【文献】特開2010-058075(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199756(WO,A1)
【文献】特開昭58-124518(JP,A)
【文献】特開昭63-194715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/01
A61L 9/014
B01J 20/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドラジン化合物と、溶媒とを含有し、
前記溶媒が、少なくとも沸点が200℃以上の有機溶媒
(ただし、ポリエチレングリコールを除く)を含有する、
臭気物質吸着剤。
【請求項2】
前記有機溶媒が
、多価アルコール、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル及びポリプロピレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項3】
前記有機溶媒がグリセリン及び/又はジグリセリンである、請求項1又は2に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項4】
製造過程の全工程が130℃未満で行われる工業製品に用いられる、請求項2又は3に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項5】
前記溶媒の総量を100質量%として、前記有機溶媒の含有量が5質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項6】
ヒドラジン化合物と、溶媒とを含有し、
前記溶媒が、少なくとも沸点が200℃以上の有機溶媒を含有し、且つ、前記有機溶媒が、グリセリン、ジグリセリン及び非プロトン性有機溶媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、
臭気物質吸着剤。
【請求項7】
製造過程の少なくとも1つの工程が130℃以上で行われる工業製品に用いられる、請求項6に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項8】
前記溶媒の総量を100質量%として、前記有機溶媒の含有量が40質量%以上である、請求項6又は7に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項9】
前記ヒドラジン化合物が、プロピオン酸ヒドラジド、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、ベンズヒドラジド、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、2.6-ナフトエ酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロ三酢酸トリヒドラジド、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド、ターシャリーブチルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、ブチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、フェニルヒドラジン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノウラゾール、及びアミノグアニジンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項10】
さらに、無機多孔質材料を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項11】
前記無機多孔質材料が、ケイ素を含む化合物、活性炭、アルミナ、セラミック及び炭酸カルシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項12】
前記臭気物質がアルデヒド化合物、ケトン化合物及びカルボン酸化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~11のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を含む、工業製品。
【請求項14】
請求項1~5及び9~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を含む、製造過程の全工程が130℃未満で行われる、工業製品。
【請求項15】
請求項6~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を含む、製造過程の少なくとも1つの工程が130℃以上で行われる、工業製品。
【請求項16】
臭気物質と、請求項1~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤とを接触させる工程を備える、臭気物質の吸着方法。
【請求項17】
臭気物質と、請求項1~5及び9~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を備え製造過程の全工程が130℃未満で行われる工業製品とを接触させる工程を備える、臭気物質の吸着方法。
【請求項18】
臭気物質と、請求項6~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を備え製造過程の少なくとも1つの工程が130℃以上で行われる工業製品とを接触させる工程を備える、臭気物質の吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気物質吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者による消臭に対するニーズが高まっている。なかでも、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド化合物は、シックハウス症候群の原因物質とされており、一般的な吸着剤(例えば、汎用タイプの活性炭)に吸着させることが困難な物質であることから、特に消臭に対する要望が高い物質である。このような臭気物質の吸着剤としては、例えば、ヒドラジン化合物が知られている。
【0003】
なかでも、比較的高い消臭性能を有するアジピン酸ジヒドラジドが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヒドラジン化合物としてアジピン酸ジヒドラジドを吸着剤として使用する場面において、消臭性能が発揮されないケースがある。具体的には、アジピン酸ジヒドラジドを水に溶かしてガラス繊維に含浸させ、これを室温下で一定時間放置しただけでも消臭性能が十分に発揮されない現象を確認している。また、製造過程において130℃以上に加熱する工程を備える用途においては、この事象が顕著に見られる。例えば、建材の製造にみられるプラ練り分野においては、成形や塗布剤の乾燥工程において、200℃で10分程度の環境下におかれることもあり、全く消臭性能が発揮されないことも多々起こる。
【0006】
これまで、本現象が起こる原因を正確に把握できておらず、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物を使用できない場面が多く存在していた。
【0007】
本発明者らは、上記問題に対する原因究明に対して鋭意検討を重ねた結果、ヒドラジン化合物が乾燥した際に大幅な活性低下が起こることを発見するに至った。
【0008】
このような乾燥による消臭性能の低下を抑制するため、吸湿剤を併用することも考えられる。しかしながら、このような吸湿剤を使用した場合は、消臭性能をどの程度維持できるかは周囲の湿度に依存し、その最適化には試行錯誤を要し、安定的に高い消臭性能を得にくい。このため、吸湿剤を使用せずに、上記のような乾燥による消臭性能の低下を抑制できる方法が求められる。
【0009】
上記のように、アジピン酸ジヒドラジド水に吸着剤を併用した場合は、消臭性能をどの程度維持できるかは周囲の湿度に依存し、その最適化には試行錯誤を要し、安定的に高い消臭性能を得にくい。このため、本発明は、室温下及び熱履歴後のそれぞれについて、消臭性能を向上させることができる臭気物質吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、溶媒として少なくとも沸点が200℃以上の有機溶媒を使用した吸着剤を使用することによれば、上記課題を解決することができることを見出した。本発明者らは、このような知見に基づき、さらに研究を重ね、本発明を完成した。即ち、本発明は、以下に示す構成を包含する。
項1.ヒドラジン化合物と、溶媒とを含有し、
前記溶媒が、少なくとも沸点が200℃以上の有機溶媒とを含有する、臭気物質吸着剤。
項2.前記有機溶媒がプロトン性有機溶媒である、項1に記載の臭気物質吸着剤。
項3.前記有機溶媒がグリセリン及び/又はジグリセリンである、項1又は2に記載の臭気物質吸着剤。
項4.製造過程の全工程が130℃未満で行われる工業製品に用いられる、項2又は3に記載の臭気物質吸着剤。
項5.前記溶媒の総量を100質量%として、前記有機溶媒の含有量が5質量%以上である、項1~4のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
項6.前記有機溶媒がグリセリン、ジグリセリン及び非プロトン性有機溶媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、項1に記載の臭気物質吸着剤。
項7.製造過程の少なくとも1つの工程が130℃以上で行われる工業製品に用いられる、項6に記載の臭気物質吸着剤。
項8.前記溶媒の総量を100質量%として、前記有機溶媒の含有量が40質量%以上である、項6又は7に記載の臭気物質吸着剤。
項9.前記ヒドラジン化合物が、プロピオン酸ヒドラジド、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、ベンズヒドラジド、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、2.6-ナフトエ酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロ三酢酸トリヒドラジド、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド、ターシャリーブチルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、ブチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、フェニルヒドラジン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノウラゾール、及びアミノグアニジンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1~8のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
項10.さらに、無機多孔質材料を含有する、項1~9のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
項11.前記無機多孔質材料が、ケイ素を含む化合物、活性炭、アルミナ、セラミック及び炭酸カルシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項10に記載の臭気物質吸着剤。
項12.前記臭気物質がアルデヒド化合物、ケトン化合物及びカルボン酸化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1~11のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤。
項13.項1~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を含む、工業製品。
項14.項1~5及び9~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を含む、製造過程の全工程が130℃未満で行われる、工業製品。
項15.項6~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を含む、製造過程の少なくとも1つの工程が130℃以上で行われる、工業製品。
項16.臭気物質と、項1~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤とを接触させる工程を備える、臭気物質の吸着方法。
項17.臭気物質と、項1~5及び9~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を備え製造過程の全工程が130℃未満で行われる工業製品とを接触させる工程を備える、臭気物質の吸着方法。
項18.臭気物質と、項6~12のいずれか1項に記載の臭気物質吸着剤を備え製造過程の少なくとも1つの工程が130℃以上で行われる工業製品とを接触させる工程を備える、臭気物質の吸着方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の臭気物質吸着剤は、室温下及び加熱下のいずれにおいても、臭気物質を十分吸着し、優れた消臭性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0013】
本明細書において、「非加熱下」とは、製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品に使用する場合を意味し、単に「非加熱下」と言うことがある。また、「加熱下」とは、製造過程において少なくとも1つの工程を130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品に使用する場合を意味し、単に「加熱下」と言うことがある。
【0014】
1.臭気物質吸着剤
本発明の臭気物質吸着剤は、ヒドラジン化合物と、溶媒とを含有し、前記溶媒が、少なくとも沸点が200℃以上の有機溶媒とを含有する。
【0015】
(1-1)ヒドラジン化合物
ヒドラジン化合物としては、特に制限はなく、従来から公知の化合物を使用することができ、例えば、酸ヒドラジド化合物、アルキルヒドラジン化合物、その他のヒドラジン化合物等を使用することができる。酸ヒドラジド化合物としては、分子中に1個のヒドラジド基を有する酸モノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有する酸ジヒドラジド化合物、分子中に3個のヒドラジド基を有する酸トリヒドラジド化合物等を使用することができる。なかでも、非加熱下及び加熱下における消臭性能、吸着剤の貯蔵安定性、着色抑制等の観点から、酸ヒドラジド化合物が好ましく、酸ジヒドラジド化合物又は酸トリヒドラジド化合物がより好ましい。なかでも、このようなヒドラジン化合物は汎用化合物が好ましい。これらのヒドラジン化合物は、臭気物質(アルデヒド化合物、ケトン化合物、カルボン酸化合物等)を吸着する作用を有する化合物である。
【0016】
ヒドラジン化合物の分子量は、非加熱下及び加熱下における消臭性能及び消臭速度の観点から、例えば、30以上が好ましく、60以上がより好ましく、90以上がさらに好ましい。また、ヒドラジン化合物の分子量は、非加熱下及び加熱下における消臭性能及び消臭速度の観点から、例えば、300以下が好ましく、280以下がより好ましく、260以下がさらに好ましい。また、ヒドラジン化合物の分子量は、付加的性能として、耐熱性及び貯蔵安定性の観点では、例えば、100以上が好ましく、130以上がより好ましい。また、ヒドラジン化合物の分子量は、付加的性能として、耐熱性及び貯蔵安定性の観点では、例えば、300以下が好ましく、270以下がより好ましい。
【0017】
このようなヒドラジン化合物としては、具体的には、酸ヒドラジド化合物として、プロピオン酸ヒドラジド、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、ベンズヒドラジド、カルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、2.6-ナフトエ酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロ三酢酸トリヒドラジド、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド等が挙げられ、アルキルヒドラジン化合物として、ターシャリーブチルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、ブチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、フェニルヒドラジン等が挙げられ、その他のヒドラジン化合物として、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、4-アミノウラゾール、アミノグアニジン等が挙げられる。なかでも、安全性、非加熱下及び加熱下における消臭性能、非加熱下及び加熱下における消臭速度、着色抑制、耐熱性及び貯蔵安定性のバランスに優れる観点から、酸ヒドラジド化合物が好ましく、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等がより好ましい。これらのヒドラジン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0018】
本発明の臭気物質吸着剤中のヒドラジン化合物の含有量は、特に制限されず、非加熱下及び加熱下における消臭性能、非加熱下及び加熱下における消臭速度、着色抑制、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として、例えば、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、3.0質量%以上がさらに好ましく、また、例えば、90.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下がさらに好ましい。また、本発明の臭気物質吸着剤が無機多孔質材料を含む場合も、臭気物質吸着剤中のヒドラジン化合物の至適含有量は同様である。なお、後述のように、本発明の臭気物質吸着剤においては、合成樹脂としてエマルションを採用することもできるが、上記した総量は、当該エマルション中に含まれる溶媒を考慮しないで算出した含有量である。
【0019】
(1-2)溶媒
本発明の臭気物質吸着剤は、前述の通り、ヒドラジン化合物と、溶媒とを含有し、前記溶媒が、少なくとも沸点が200℃以上の有機溶媒とを含有している。つまり、ヒドラジン化合物の乾燥失活を抑制し、非加熱下及び加熱下における消臭性能及び消臭速度を向上させる観点から、ヒドラジン化合物を少なくとも沸点が200℃以上の有機溶媒を含む溶媒に溶解又は分散させて溶液又は懸濁液とし、これを臭気物質吸着剤として使用することが好ましい。
【0020】
このような沸点が200℃以上の有機溶媒としては、非加熱下及び加熱下における乾燥失活による消臭性能及び消臭速度の低下をより抑制する観点から、その沸点は200℃以上、好ましくは240℃以上、より好ましくは280℃以上である。なお、沸点が200℃以上の有機溶媒として非プロトン性有機溶媒を使用する場合は、その沸点は250℃以上が好ましく、280℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましい。また、有機溶媒の沸点の上限値は特に制限はないが、通常600℃である。
【0021】
以上のような条件を満たす沸点が200℃以上の有機溶媒としては、例えば、プロトン性有機溶媒として、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン等の多価アルコール;トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(ダワノールTPnB)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル等が挙げられ、非プロトン性有機溶媒として、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸エステル;フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル;トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)、リン酸トリブチル、γ-ブチロラクトン等のその他のエステル;メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、イソプロピルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン等の芳香族炭化水素;N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらのなかでも、非加熱下における消臭性能及び消臭速度や、上記したヒドラジン化合物の溶解性等の観点からは、プロトン性有機溶媒が好ましく、グリセリン及びジグリセリンが特に好ましい。また、加熱下における消臭性能及び消臭速度や、上記したヒドラジン化合物の溶解性等の観点からは、グリセリン、ジグリセリンや非プロトン性有機溶媒が好ましく、グリセリン及びジグリセリンが特に好ましい。これらの沸点が200℃以上の有機溶媒は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0022】
本発明においては、溶媒を全て上記の沸点が200℃以上の有機溶媒とすることもできるし、上記の沸点が200℃以上の有機溶媒と、水等の水性溶媒や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等の沸点が200℃未満の有機溶媒等との混合溶媒とすることもできる。なかでも、非加熱下における消臭性能及び消臭速度の観点からは、溶媒の総量を100質量%として、沸点が200℃以上の有機溶媒の含有量は5質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。また、加熱下における消臭性能及び消臭速度の観点からは、溶媒の総量を100質量%として、有機溶媒の含有量は40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。なお、水性溶媒は乾燥による消臭性能及び消臭速度低下の懸念のため少ないほうが好ましく、沸点が200℃未満の有機溶媒は乾燥による消臭性能及び消臭速度低下を抑制する効果が十分とは言えないことから、沸点が200℃以上の有機溶媒の含有量は上限値でもある100質量%とすることもできる。なお、非加熱下における消臭性能及び消臭速度の観点からは沸点が200℃以上の有機溶媒としてプロトン性有機溶媒を使用する場合はその含有量は多すぎないほうが好ましい。一方、加熱下における消臭性能及び消臭速度の観点からは沸点が200℃以上の有機溶媒としてプロトン性有機溶媒を使用する場合はその含有量は多いほうが好ましく、100質量%が最も好ましい。なお、後述のように、本発明の臭気物質吸着剤においては、合成樹脂としてエマルションを採用することもできるが、上記した溶媒の総量及び水性溶媒の含有量は、当該エマルション中に含まれる溶媒を考慮しないで算出した含有量である。
【0023】
また、本発明において、溶媒の含有量は、特に制限されず、非加熱下及び加熱下における消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、臭気物質吸着剤の総量を100質量%として、例えば、30.0質量%以上が好ましく、50.0質量%以上がより好ましく、70.0質量%以上がさらに好ましく、また、例えば、99.9質量%以下が好ましく、99.0質量%以下がより好ましく、98.0質量%以下がさらに好ましい。また、本発明の臭気物質吸着剤が無機多孔質材料を含む場合も、臭気物質吸着剤中の溶媒の含有量は同様である。なお、後述のように、本発明の臭気物質吸着剤においては、合成樹脂としてエマルションを採用することもできるが、上記した溶媒の含有量は、当該エマルション中に含まれる溶媒を考慮しないで算出した含有量である。
【0024】
(1-3)無機多孔質材料
本発明の臭気物質吸着剤は、無機多孔質材料を含ませることもできる。無機多孔質材料自身は臭気物質を全く吸着しない(消臭性能がほとんどない)が、ヒドラジン化合物と併用することで、無機多孔質材料を使用しない場合と比較すると非加熱下及び加熱下における消臭性能及び消臭速度を維持しつつも当該ヒドラジン化合物の使用量を減らすことも可能である。このため、より少ない量のヒドラジン化合物で優れた消臭性能を得ることも可能である。
【0025】
このような無機多孔質材料としては、特に制限はなく、ケイ素を含む化合物(シリカ、活性白土、ゼオライト、クレー、タルク等)の他、活性炭、アルミナ、セラミック、炭酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、ヒドラジン化合物の使用量を少なくしても消臭性能及び消臭速度を維持しやすい観点から、ケイ素を含む化合物が好ましく、シリカがより好ましい。これらの無機多孔質材料は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0026】
このような無機多孔質材料としてシリカを使用する場合、その種類については特に制限はなく、湿式法シリカ(沈降法シリカ、ゲル法シリカ等)、乾式法シリカ、溶融シリカ等のいずれも採用できる。
【0027】
なお、無機多孔質材料としてケイ素を含む化合物を採用する場合、表面に置換又は非置換アミノ基を有することも可能である。このような材料は、置換又は非置換アミノ基を有するシランカップリング剤により化学修飾することで得ることができる。化学修飾の方法は常法にしたがい行うことができる。この際使用できる置換又は非置換アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、メタクリル基を有するシランカップリング剤、ビニル基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、グリシジル基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、これらのシランカップリング剤が有する置換又は非置換アミノ基を修飾したケイ素を含む化合物(特にシリカ)を採用することも可能である。
【0028】
無機多孔質材料を使用する場合、本発明の臭気物質吸着剤中の無機多孔質材料の含有量は、特に制限されず、非加熱下及び加熱下における消臭性能及び消臭速度をより向上させる観点から、臭気物質吸着剤の総量を100質量%として、例えば、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましく、また、例えば、99.9質量%以下が好ましく、95.0質量%以下がより好ましく、90.0質量%以下がさらに好ましい。なお、後述のように、本発明の臭気物質吸着剤においては、合成樹脂としてエマルションを採用することもできるが、上記した総量は、当該エマルション中に含まれる溶媒を考慮しないで算出した含有量である。
【0029】
(1-4)臭気物質吸着剤
本発明の臭気物質吸着剤は、前述の通り、固形分としては、ヒドラジン化合物単独の形態の他、ヒドラジン化合物に無機多孔質材料を含む形態がある。何れの形態においても、上記した、少なくとも沸点が200℃以上の有機溶媒を含む溶媒に溶解又は分散させて溶液又は懸濁液とし、これを臭気物質吸着剤として使用することが好ましい。これにより、乾燥による消臭性能及び消臭速度の低下を特に抑制することができる。
【0030】
また、上記した各成分と合成樹脂とを混合して使用することも可能である。合成樹脂としては、例えば、ポリアクリル系樹脂(アクリル樹脂、メタクリル樹脂等)、ポリ酢酸ビニル系樹脂(酢酸ビニル樹脂等)、ポリ塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル樹脂等)、ポリオレフィン系樹脂(オレフィン樹脂等)、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA樹脂)、ポリウレタン系樹脂(ウレタン樹脂等)、ポリスチレン系樹脂(スチロール樹脂等)、ポリエポキシ系樹脂(エポキシ樹脂等)、シリコーン系樹脂(シリコーン樹脂等)、アルキド系樹脂(アルキド樹脂等)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂等)、ナイロン樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエステル等;ポリエステル系繊維を除く)、ポリアミド系樹脂(アラミド樹脂等)、PET系樹脂(ポリエチレンテレフタラート等)、エーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂等)、ポリアミン系樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂等)、フェノール樹脂等が挙げられる。上記した樹脂を1つ又は複数含む共重合体樹脂も採用することができる。また、上記した樹脂からなるエマルションを採用することもできる。これらの樹脂は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なかでも、ポリアクリル系樹脂(アクリル樹脂、メタクリル樹脂等)が好ましい。
【0031】
本発明の臭気物質吸着剤中に樹脂が含まれる場合、当該樹脂の含有量は、特に制限はなく、非加熱下及び加熱下における消臭性能及び消臭速度の観点から、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上がより好ましい。また、当該樹脂の含有量は、経済性、作業性等の観点から、95.0質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましく、85.0質量%以下がさらに好ましい。なお、樹脂としてエマルションを採用する場合、上記した含有量は、固形分の含有量を意味する。
【0032】
本発明の臭気物質吸着剤において、合成樹脂としてエマルションを採用する場合、ヒドラジン化合物の含有量は、特に制限されず、非加熱下及び加熱下における消臭性能、非加熱下及び加熱下における消臭速度、着色抑制、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、本発明の臭気物質吸着剤を100質量%として、例えば、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、また、例えば、90.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以下がより好ましく、20.0質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
本発明の臭気物質吸着剤において、合成樹脂としてエマルションを採用する場合、溶媒の含有量は、特に制限されず、非加熱下及び加熱下における消臭性能、非加熱下及び加熱下における消臭速度、着色抑制、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、本発明の臭気物質吸着剤を100質量%として、例えば、30.0質量%以上が好ましく、50.0質量%以上がより好ましく、70.0質量%以上がさらに好ましく、また、例えば、99.99質量%以下が好ましく、99.95質量%以下がより好ましく、99.0質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
発明の臭気物質吸着剤において、合成樹脂としてエマルションを採用する場合、無機多孔質材料の含有量は、特に制限されず、非加熱下及び加熱下における消臭性能、非加熱下及び加熱下における消臭速度、着色抑制、耐熱性及び貯蔵安定性をより向上させる観点から、本発明の臭気物質吸着剤を100質量%として、例えば、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、また、例えば、99.0質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましく、80.0質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
また、樹脂以外の建材等加工品用無機材料を使用することも可能である。このような建材等加工品用無機材料としては、例えば、セメント、アスファルト、コンクリート、漆喰、モルタル、珪藻土、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、カオリナイト、セラミック等が挙げられる。
【0036】
本発明の臭気物質吸着剤中に建材等加工品用無機材料が含まれる場合、当該建材等加工品用無機材料の含有量は、特に制限はなく、非加熱下及び加熱下における消臭性能及び消臭速度の観点から、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上がより好ましい。また、当該建材等加工品用無機材料の含有量は、経済性、作業性等の観点から、95.0質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましく、85.0質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
本発明の臭気物質吸着剤には、その目的、用途等に応じて、公知の添加剤、例えば、不揮発性の酸、キレート剤の他、酸化防止剤、光安定剤等の、広く一般に製剤化に用いられる各種の第三成分を配合することができる。
【0038】
好ましい不揮発性の酸は、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ホウ酸等が挙げられ、これらの塩も採用できる。これらの不揮発性の酸は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。このような不揮発性の酸を配合することにより、吸着剤の貯蔵安定性をより一層向上させることができる。
【0039】
不揮発性の酸を用いる場合、その含有量は、特に制限されず、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として1~10質量%が好ましい。
【0040】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、シュウ酸、クエン酸等が挙げられ、これらの塩も採用できる。これらのキレート剤は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。このようなキレート剤を配合することにより、吸着剤の貯蔵安定性を一段と向上させることができる。
【0041】
キレート剤を用いる場合、その含有量は、特に制限されず、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として1~10質量%が好ましい。
【0042】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、具体的には、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等が挙げられる。また、アミン系酸化防止剤としては、具体的には、アルキルジフェニルアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0043】
酸化防止剤を用いる場合、その含有量は、特に制限されず、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として1~10質量%が好ましい。
【0044】
光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。これらの光安定剤は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0045】
光安定剤を用いる場合、その含有量は、特に制限されないが、本発明の臭気物質吸着剤の総量を100質量%として1~10質量%が好ましい。
【0046】
これら第三成分は、単独で使用することもできるが、目的に合わせて併用することも可能である。
【0047】
このような本発明の臭気物質吸着剤は、製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品に使用する用途と製造過程において少なくとも1つの工程を130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品に使用する用途のいずれにも用いられるものである。
【0048】
具体的には、製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品に使用する用途の場合、製造過程の全工程において、品温及び雰囲気温度(ドライヤーの温度等)のいずれも130℃未満であることが好ましい。この際の温度は、本発明の臭気物質吸着剤の消臭性能及び消臭速度の観点から、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、本発明の臭気物質吸着剤を製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品に使用する用途における温度の下限値は特に制限はないが、例えば0℃とすることができる。特に、室温が経済的である。
【0049】
また、製造過程において少なくとも1つの工程を130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品に使用する用途の場合、製造過程の少なくとも1つの工程において、品温が130℃以上に達する場合(全工程で品温が130℃以上に達する場合も含む)と、雰囲気温度(ドライヤーの温度等)が130℃以上である場合(全工程で雰囲気温度が130℃以上である場合も含む)の双方を含み得る。また、本発明の臭気物質吸着剤を製造過程において少なくとも1つの工程を130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品に使用する用途における温度の上限値は特に制限はないが、ヒドラジン化合物や使用する有機溶媒の沸点を超えない温度や本発明の臭気物質吸着剤が用いられる用途(建材等)の品質を損ねない温度以下とすることが好ましい。このような観点から、加熱温度の上限値は通常1000℃である。なお、本発明の臭気物質吸着剤中に含まれているヒドラジン化合物の融点以上に加熱する用途に採用することで、特に消臭性能を向上させることも可能である。
【0050】
これらのなかでも、沸点が200℃以上の有機溶媒としてプロトン性有機溶媒を使用する場合は、製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品に使用する用途に使用することが好ましい。ただし、プロトン性有機溶媒のなかでもグリセリン及びジグリセリンを採用する場合は、製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品に使用する用途及び製造過程において少なくとも1つの工程を130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品に使用する用途の双方に好適に使用し得る。また、沸点が200℃以上の有機溶媒として非プロトン性有機溶媒を使用する場合は、製造過程において少なくとも1つの工程を130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品に使用する用途に使用することが好ましい。
【0051】
このような製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品に使用する用途としては、例えば、塗料、接着剤、インキ、シーリング剤、紙製品、バインダー、樹脂エマルション、パルプ、木質材料、木質製品、プラスチック製品、フィルム、繊維製品、フィルター等が挙げられる。
【0052】
また、製造過程において少なくとも1つの工程を130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品に使用する用途としては、例えば、建材(壁紙、床材、天井材、手すり等)、加熱用プラスチック、繊維製品(練込み型)、フィルター等が挙げられる。
【0053】
(1-5)臭気物質
上記した本発明の臭気物質吸着剤は、非加熱下又は加熱下において、臭気物質(特にアルデヒド化合物、ケトン化合物及びカルボン酸化合物)を効率よく、すばやく吸着することができる。なお、本発明の臭気物質吸着剤は、1種又は2種以上を組合せた上記臭気物質に対して有効である。
【0054】
本発明の臭気物質吸着剤で吸着する対象としての臭気物質としては、特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノネナール、デカナール、3-メチル-ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2,4-ヘプタジエナール等のアルデヒド系臭気物質(アルデヒド化合物);アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジアセチル等のケトン系臭気物質(ケトン化合物);ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、3-メチルブタン酸、4-メチルオクタン酸の有機酸系臭気物質(カルボン酸化合物)等が挙げられ、なかでも、本発明の臭気物質吸着剤は、アルデヒド化合物、特にホルムアルデヒド及び/又はアセトアルデヒドの吸着に有効である。
【0055】
2.臭気物質吸着剤を含む工業製品
本発明の臭気物質吸着剤は、工業製品に含んで(配合して)使用することができる。当該工業製品は、本発明を包含する(本発明の工業製品)。
【0056】
前記工業製品とは、従来より広く知られている工業製品及び工業原料を指す。具体的には、建材(壁紙、床材、天井材、手すり等)、加熱用プラスチック、フィルター、塗料、接着剤、インキ、シーリング剤、紙製品、バインダー、樹脂エマルション、パルプ、木質材料、木質製品、プラスチック製品、フィルム、繊維製品等が挙げられる。
【0057】
本発明の工業製品中、本発明の臭気物質吸着剤の含有量は、特に限定されず、工業製品及びその使用用途によって適宜設定することができる。
【0058】
3.臭気物質吸着剤を使用した臭気物質の吸着方法
本発明の臭気物質の吸着方法は、臭気物質を、本発明の臭気物質吸着剤と接触させることで、本発明の臭気物質吸着剤に臭気物質を吸着させる。具体的には、臭気物質を、本発明の臭気物質吸着剤を備える工業製品と接触させることである。この際、沸点が200℃以上の有機溶媒としてプロトン性有機溶媒を使用する場合は、製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品に用いることが好ましい。ただし、プロトン性有機溶媒のなかでもグリセリン及びジグリセリンを採用する場合は、製造過程において全工程を130℃未満で行う工業製品及び製造過程において少なくとも1つの工程を130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品の双方に好適に使用し得る。また、沸点が200℃以上の有機溶媒として非プロトン性有機溶媒を使用する場合は、製造過程において少なくとも1つの工程えを130℃以上で行う(全工程を130℃以上で行う場合も含む)工業製品に使用することが好ましい。上記吸着方法によれば、本発明の臭気物質吸着剤が上記した臭気物質を効率よく且つすばやく吸着するので、上記臭気物質を効率的に且つすばやく除去することができる。例えば、本発明の臭気物質吸着剤を備えた壁紙等の建材を室内に施工した場合、室内空気中に含まれる上記臭気物質は、室内空気の自然循環によって前記壁紙等の建材に接触することで、吸着(消臭)される。
【0059】
また、固定床、移動床、流動床等の吸着装置に本発明の臭気物質吸着剤や本発明の臭気物質吸着剤を施した充填剤を充填し、これに上記した臭気物質を含有する気体を通気処理することによっても、上記臭気物質を効率よく且つすばやく、また長時間にわたって吸着除去することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に限定されない。なお、ヒドラジン化合物及び有機溶媒は以下のものを使用した。
アジピン酸ジヒドラジド(ADH):東京化成工業(株)製
プロピレングリコール:富士フイルム和光純薬(株)製(プロトン性有機溶媒;沸点188℃)
ジプロピレングリコール:富士フイルム和光純薬(株)製(プロトン性有機溶媒;沸点232℃)
アジピン酸ジイソノニル:富士フイルム和光純薬(株)製(非プロトン性有機溶媒;沸点250℃)
ポリエチレングリコール200:富士フイルム和光純薬(株)製(プロトン性有機溶媒;沸点250℃)
グリセリン:富士フイルム和光純薬(株)製(プロトン性有機溶媒;沸点290℃)
ジグリセリン:富士フイルム和光純薬(株)製(プロトン性有機溶媒;沸点265~290℃)
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル):富士フイルム和光純薬(株)製(非プロトン性有機溶媒;沸点384℃)
フタル酸ビスイソノニル:富士フイルム和光純薬(株)製(非プロトン性有機溶媒;沸点403℃)。
【0061】
参考例1:水1mL(直後)
アジピン酸ジヒドラジド10mgを水1mLに添加し、超音波バスにて溶解させ、吸着剤(吸着液)とした。
【0062】
得られた吸着剤(吸着液)を、ガラス濾紙(アドバンテック東洋(株)製のGA-200)5cm×5cmに1mL塗布した。塗布直後のサンプルを参考例1の消臭試験用サンプル(室温)とした。
【0063】
参考例2:水1mL(乾燥後)
アジピン酸ジヒドラジド10mgを水1mLに添加し、超音波バスにて溶解させ、吸着剤(吸着液)とした。
【0064】
得られた吸着剤(吸着液)を、ガラス濾紙(アドバンテック東洋(株)製のGA-200)5cm×5cmに1mL塗布した。次に、室温にて3日間風乾させ、比較例2の消臭試験用サンプル(室温)とした。
【0065】
また、得られた消臭試験用サンプル(室温)を、200℃に設定した乾燥機内で10分間加熱し、参考例2の消臭試験用サンプル(200℃)とした。
【0066】
比較例1:プロピレングリコール1mL
水1mLの代わりにプロピレングリコール1mLを使用し、アジピン酸ジヒドラジドをプロピレングリコールに懸濁させたこと以外は比較例2と同様に、比較例1の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0067】
実施例1:ジプロピレングリコール1mL
水1mLの代わりにジプロピレングリコール1mLを使用し、アジピン酸ジヒドラジドをジプロピレングリコールに懸濁させたこと以外は参考例2と同様に、実施例1の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0068】
実施例2:アジピン酸ジイソノニル1mL
水1mLの代わりにアジピン酸ジイソノニル1mLを使用し、アジピン酸ジヒドラジドをアジピン酸ジイソノニルに懸濁させたこと以外は参考例2と同様に、実施例2の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0069】
実施例3:ポリエチレングリコール200 1mL
水1mLの代わりにポリエチレングリコール200 1mLを使用し、アジピン酸ジヒドラジドをポリエチレングリコール200に懸濁させたこと以外は参考例2と同様に、実施例3の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0070】
実施例4:グリセリン1mL
水1mLの代わりにグリセリン1mLを使用したこと以外は参考例2と同様に、実施例4の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0071】
実施例5:フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)1mL
水1mLの代わりにフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)1mLを使用し、アジピン酸ジヒドラジドをフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)に懸濁させたこと以外は参考例2と同様に、実施例5の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0072】
実施例6:フタル酸ビスイソノニル1mL
水1mLの代わりにフタル酸ビスイソノニル1mLを使用し、アジピン酸ジヒドラジドをフタル酸ビスイソノニルに懸濁させたこと以外は参考例2と同様に、実施例6の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0073】
試験例1(アセトアルデヒド吸着性能)
実施例1~6、参考例1~2及び比較例1で得た消臭試験用非加熱サンプル又は消臭試験用加熱サンプル1枚を、1Lのサンプリングバック(スマートバッグPA、ジーエルサイエンス(株)製)に入れ、密封後、ピストンを用いてサンプリングバック内の空気を抜いた。その後、14ppmに調整したアセトアルデヒドガスを1L注入し、2時間後及び24時間後の残存ガス濃度を、検知管((株)ガステック)を用いて測定し、初期濃度に対する残存率を評価した。結果を表1に示す。表1では、比較のため、吸着剤を使用しない「自然減」についても示す。
【0074】
【0075】
参考例3:水1mL(直後)
アジピン酸ジヒドラジド10mgを水1mLに添加し、超音波バスにて溶解させ、吸着剤(吸着液)とした。この吸着剤(吸着液)は、参考例1と同じ組成の吸着剤(吸着液)である。
【0076】
得られた吸着剤(吸着液)を、ガラス濾紙(アドバンテック東洋(株)製のGA-200)5cm×5cmに1mL塗布した。塗布直後のサンプルを参考例3の消臭試験用サンプル(室温)とした。このサンプルは、参考例1と同じ消臭試験用サンプル(室温)である。
【0077】
参考例4:水1mL(乾燥後)
アジピン酸ジヒドラジド10mgを水1mLに添加し、超音波バスにて溶解させ、吸着剤(吸着液)とした。この吸着剤(吸着液)は、参考例2と同じ組成の吸着剤(吸着液)である。
【0078】
得られた吸着剤(吸着液)を、ガラス濾紙(アドバンテック東洋(株)製のGA-200)5cm×5cmに1mL塗布した。次に、室温にて5日間風乾させ、参考例4の消臭試験用サンプル(室温)とした。
【0079】
また、得られた吸着剤(吸着液)を、ガラス濾紙(アドバンテック東洋(株)製のGA-200)に1mL塗布した。次に、40℃に設定した乾燥機内で5日間加熱し、参考例4の消臭試験用サンプル(40℃)とした。
【0080】
また、得られた消臭試験用サンプル(室温)を、200℃に設定した乾燥機内で10分間加熱し、参考例4の消臭試験用サンプル(200℃)とした。
【0081】
実施例7:グリセリン1mL
水1mLの代わりにグリセリン1mLを使用したこと以外は参考例4と同様に、実施例7の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。この吸着剤(吸着液)は、実施例4と同じ組成の吸着剤(吸着液)である。
【0082】
実施例8:グリセリン0.75mL
水1mLの代わりにグリセリン0.75mLを使用したこと以外は参考例4と同様に、実施例8の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0083】
実施例9:グリセリン0.50mL
水1mLの代わりにグリセリン0.50mLを使用したこと以外は参考例4と同様に、実施例9の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0084】
実施例10:グリセリン0.25mL
水1mLの代わりにグリセリン0.25mLを使用したこと以外は参考例4と同様に、実施例10の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0085】
実施例11:グリセリン0.75mL水0.25mL
水1mLの代わりにグリセリン0.75mL及び水0.25mLを使用したこと以外は参考例4と同様に、実施例11の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0086】
実施例12:グリセリン0.50mL水0.50mL
水1mLの代わりにグリセリン0.50mL及び水0.50mLを使用したこと以外は参考例4と同様に、実施例12の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0087】
実施例13:グリセリン0.25mL水0.75mL
水1mLの代わりにグリセリン0.25mL及び水0.75mLを使用したこと以外は参考例4と同様に、実施例13の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0088】
実施例14:ジグリセリン1mL
水1mLの代わりにジグリセリン1mLを使用したこと以外は参考例4と同様に、実施例14の吸着剤(吸着液)、消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。
【0089】
試験例2(アセトアルデヒド吸着性能)
上記試験例1と同様に、消臭試験を行った。具体的には、実施例7~14及び参考例3~4で得た消臭試験用サンプル(室温)、消臭試験用サンプル(40℃)又は消臭試験用サンプル(200℃)1枚を、1Lのサンプリングバック(スマートバッグPA、ジーエルサイエンス(株)製)に入れ、密封後、ピストンを用いてサンプリングバック内の空気を抜いた。その後、14ppmに調整したアセトアルデヒドガスを1L注入し、2時間後及び24時間後の残存ガス濃度を、検知管((株)ガステック)を用いて測定し、初期濃度に対する残存率を評価した。結果を表2に示す。表2では、比較のため、吸着剤を使用しない「自然減」についても示す。
【0090】
【0091】
比較例2:グリセリンのみ
98質量部のアクリルエマルション(アイカ工業(株)製のウルトラゾールC-63; 固形分10質量%となるよう調整)に対し、グリセリンを2質量部添加し、超音波バスにて溶解させ、比較例2の吸着剤(吸着液)とした。
【0092】
得られた吸着剤(吸着液)を、20cm×21cm発泡塩化ビニル(アクリサンデー(株)製のE-7001白)にバーコーターを用いてウェット10μmの厚みに塗布し、室温で一晩風乾させ、その後、200℃に設定した乾燥機内で10分間加熱することで、発泡塩化ビニル上に臭気物質吸着剤を形成し、消臭試験用サンプル(200℃)とした。
【0093】
参考例5:有機溶媒なし
グリセリン2質量部の代わりに、アジピン酸ジヒドラジド0.2質量部、ドデカン二酸ジヒドラジド0.2質量部及びシリカ(ミズカソーブC-6; ゲル法シリカ)1.6質量部を添加したこと以外は比較例2と同様に、参考例5の吸着剤(吸着液)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。つまり、参考例5の吸着剤(吸着液)及び消臭試験用サンプル(200℃)においては、ヒドラジン化合物、有機溶媒及び無機多孔質材料の総量を100質量%とすると、アジピン酸ジヒドラジド10質量%、ドデカン二酸ジヒドラジド10質量%及びシリカ80質量%である。
【0094】
実施例15:グリセリン
グリセリン2質量部の代わりに、アジピン酸ジヒドラジド0.2質量部、ドデカン二酸ジヒドラジド0.2質量部、グリセリン0.2質量部及びシリカ(ミズカソーブC-6; ゲル法シリカ)1.4質量部を添加したこと以外は比較例2と同様に、実施例15の吸着剤(吸着液)及び消臭試験用サンプル(200℃)を得た。つまり、実施例15の吸着剤(吸着液)及び消臭試験用サンプル(200℃)においては、ヒドラジン化合物、有機溶媒及び無機多孔質材料の総量を100質量%とすると、アジピン酸ジヒドラジド10質量%、ドデカン二酸ジヒドラジド10質量%、グリセリン10質量%及びシリカ70質量%である。
【0095】
試験例3(アセトアルデヒド吸着性能)
消臭試験用サンプル1枚を、3Lのサンプリングバック(スマートバッグPA、ジーエルサイエンス(株)製)に入れ、密封後、ピストンを用いてサンプリングバック内の空気を抜いた。その後、14ppmに調整したアセトアルデヒドガスを3L注入し、10分後、1時間後、2時間後、4時間後及び24時間後の残存ガス濃度を、検知管((株)ガステック)を用いて評価した。結果を表3に示す。なお、この試験例3では、試験例1及び2と比較すると、消臭試験用サンプルにおける臭気物質吸着剤の含有量を少なく調整している。
【0096】
【0097】
以上のとおり、溶媒として、水を単独で使用した場合には、基材へ塗布直後の消臭性能は一定程度優れているものの、その後一定期間乾燥させた場合にはその消臭性能及び消臭速度は著しく低下した。一方、溶媒として沸点が200℃以上の有機溶媒を用いた場合、一定期間乾燥させた場合でも、極端な消臭性能の低下が見られなくなった。上記の効果は、特定の有機溶媒単独の場合のみならず、水との混合溶媒とした場合も確認することができた。