(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】炭素材料の製造方法および炭素材料
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20240125BHJP
【FI】
C01B32/05
(21)【出願番号】P 2019214644
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-08-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名: 第45回炭素材料学会年会 開催日: 平成30年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】金澤 脩平
(72)【発明者】
【氏名】郷田 隼
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-208593(JP,A)
【文献】特開2019-085297(JP,A)
【文献】特開2003-282054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C08F 4/00
B01J 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、常温で固体である強酸の存在下で加熱する、
炭素材料の製造方法。
【請求項2】
前記強酸の分解温度が200℃以上である、請求項1に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項3】
前記強酸が昇華性を有する、請求項2に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項4】
前記強酸が1種以上の溶媒に可溶である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項5】
前記強酸が有機系ルイス酸である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項6】
前記強酸が、構成元素として、ホウ素およびハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料の製造方法および炭素材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、人造黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材料は、それぞれ、その特徴的な物性に起因して、各種分野における新規な機能性材料として期待されている(例えば、非特許文献1-3)。
【0003】
グラフェンは2次元シート状の炭素材料であり、sp2炭素による六員環で敷き詰められた構造をしている。グラファイトは、通常、2次元シート状のグラフェン同士がファンデルワールス力で結合した多数の積層構造をしているものを指すが、1層のものをグラフェンと称する。2層-10層のグラフェンが積層した材料を多層グラフェンと呼び,2層-5層のグラフェンが積層した材料は数層グラフェンと呼ぶ。1層のグラフェンではベーサル面に官能基を導入することでグラフェン自体の特性や形状が大きく変化する。3層以上となると,グラフェンのベーサル面に官能基を導入しても中心部のグラフェンは直接影響を受けにくくなる.そのため,3層以上のグラフェンは基本的には層数が増加し,比表面積が減少する以外には際立った性質の違いは現れにくくなる。
【0004】
グラフェンの存在は古くから知られていたが、グラファイトから1枚のグラフェンを取り出す方法は最近まで確立されていなかった。2004年になって、高配向性の無水グラファイトの表面を粘着テープで剥離し、剥離したものを基板の上に貼り付ける方法によってグラフェンの薄片を取り出せることが見出され、その後、大量生産や低コスト生産を目指して、CVD(化学気相蒸着製膜法)などの気相製膜法によるグラフェンの製造方法や、酸化グラフェン(GO)の還元法によるグラフェン(還元型酸化グラフェン:RGO)の製造方法が検討されている。
【0005】
しかし、CVD(化学気相蒸着製膜法)などの気相製膜法によるグラフェンの製造方法は、膜以外の形状(代表的には、バルク状)として得ることができないという問題、可燃性ガスを使用しなければならないという問題、Cu等の触媒性能を有する金属基板上に製膜させるため、金属が不純物として含有してしまうという問題がある。
【0006】
また、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応が起きる化合物を加熱して炭素材料を製造する方法が開示されている(特許文献1)。この技術では温和な条件で炭素材料が合成できることが示されている。
【0007】
工業的に製造されている炭素材料は、様々な官能基を有している。このため、炭素材料の構造を精密に制御することが難しく、物性にばらつきが生じてしまうという問題がある。また、炭素化が不十分である場合も見受けられる。近年、狙った物性を確実に発現できる炭素材料が求められており、このため、構造が精密に制御された炭素材料の開発が求められている。また、炭素化がより進んだ炭素材料の開発も求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Nature,354,p.56-58(1991)
【文献】Science,306,p.666-669(2004)
【文献】齋藤理一郎著,「グラフェンの最先端技術と広がる応用」,第2章.グラフェンの基礎物性,3.グラフェンの光電子物性
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、構造制御率が高く且つ炭素化が進んだ炭素材料を低温でも簡便に製造する方法を提供することにある。また、構造制御率が高く且つ炭素化が進んだ炭素材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法は、
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、強酸の存在下で加熱する。
【0012】
一つの実施形態においては、上記強酸の分解温度が200℃以上である。
【0013】
一つの実施形態においては、上記強酸が常温で固体である。
【0014】
一つの実施形態においては、上記強酸が昇華性を有する。
【0015】
一つの実施形態においては、上記強酸が1種以上の溶媒に可溶である。
【0016】
一つの実施形態においては、上記強酸が有機系ルイス酸である。
【0017】
一つの実施形態においては、上記強酸が、構成元素として、ホウ素およびハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する。
【0018】
本発明の実施形態による炭素材料は、
XPS分析により検出される総元素から水素を除いた元素の合計に対する酸素の割合が5atm%以上である炭素材料であって、
C1sXPS分析による、C-O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC-O結合とアルコール由来のC-O結合の合計量の割合が、80%以上であり、かつC1sの全結合(C-H、C=C、C=O、C-O結合)の合計量に対する、C=C結合の割合が30%以上である。
【0019】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による炭素材料は、構成元素として、炭素、酸素、水素を含み、且つ、ホウ素、ハロゲン、硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0020】
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による炭素材料は、水およびN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種に可溶である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、構造制御率が高く且つ炭素化が進んだ炭素材料を低温でも簡便に製造する方法を提供することができる。また、構造制御率が高く且つ炭素化が進んだ炭素材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は実施例および比較例で得られた炭素材料のXPS分析により得られた図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
≪≪1.炭素材料の製造方法≫≫
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法は、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、強酸の存在下で加熱する。強酸により、フェノール性ヒドロキシル基が関与する脱水反応が触媒され、余分な副反応を生じずに所望の脱水反応と続く炭素化が進行しやすくなる。
【0024】
加熱の方法としては、管状炉、ボックス炉のような焼成炉、熱媒を利用した加熱反応装置、マイクロ波を利用した加熱反応装置などが使用できる。加熱の条件としては、真空下、常圧下、加圧下などで行うことができる。加熱雰囲気の条件としては、大気下、不活性ガス雰囲気下などで行うことができる。加熱雰囲気の条件としては、好ましくは、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下である。
【0025】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法における上記加熱の温度は、用いる材料や目的とする炭素材料に応じて、任意の適切な加熱温度を採用し得る。このような加熱温度としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは150℃~500℃であり、より好ましくは200℃~400℃であり、さらに好ましくは220℃~350℃であり、特に好ましくは250℃~300℃である。強酸の効果により、強酸なしの場合より低温で炭素化が進行し得る。上記加熱温度は、所望する炭素化度合いに応じて任意に採用することができる。炭素化度合いは後述するXPSより確認できる。
【0026】
加熱の時間としては、製造する炭素材料に求める分子量または溶解性や分散性等により、任意の適切な加熱時間を採用し得る。このような加熱時間としては、例えば、好ましくは1分~48時間であり、より好ましくは15分~24時間であり、さらに好ましくは30分~12時間であり、特に好ましくは1時間~10時間である。
【0027】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法においては、好ましくは、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をバルク状態で加熱する。分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をバルク状態で加熱するとは、例えば、(i)分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物からなる粒子(例えば、粉体)を固体状の強酸の存在下で加熱する、(ii)分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物からなる粒子(例えば、粉体)を固体状の強酸とともに任意の適切な溶媒に溶解した後に乾燥した固形物を加熱する、(iii)分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物からなる粒子(例えば、粉体)を圧縮成形等でペレット状やフィルム状に成形を行った後、その成形体を固体状の強酸の存在下で加熱する、等の行為を包含する。粒子(例えば、粉体)や固形物や成形体を加熱する際、例えば、容器に入れて加熱してもよい。容器としては、任意の適切な容器を採用し得る。このような容器としては、例えば、加熱温度で実質的に変質しない材質からなるものが好ましい。また、粒子(例えば、粉体)や固形物や成形体が接触する表面が、加熱する際に、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物や強酸と化学反応しないような材質であることが好ましい。粒子(例えば、粉体)や固形物や成形体を好ましい条件で焼成することにより、炭素材料を得ることが可能となり、その加熱する工程において、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の融点付近で該化合物が融解して液体状になることがある。このような経過を経る場合も「分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をバルク状態で焼成する」ことに含まれる。一方、本発明の意味する「バルク状態で焼成する」ものではない例としては、例えば、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を溶剤に溶解して任意の基材状に塗布して膜状にして該基材とともに加熱することにより薄膜を形成する方法、化学気相成長法(CVD)法、物理気相成長法(PVD)、薄膜蒸着加熱法、などが挙げられる。薄膜としてはおおむね膜厚が1μm以下の範囲を意味する。
【0028】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法においては、加熱により、代表的には、縮合反応によって、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離し、炭素材料が得られる。この実施形態においては、1つの化合物が2種以上の基を有している場合であってもよいし、2つ以上の化合物のそれぞれの有する基を組み合わせて2種以上の基となる場合であってもよい。分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応を起こし、炭素材料が得られ得る。
【0029】
縮合反応としては、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離することによる縮合反応であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な縮合反応を採用し得る。このような縮合反応とすることにより、比較的低温で反応を行うことが可能となり得る。このような縮合反応としては、例えば、-H基と-OH基とからH2Oが形成されて脱離することによる縮合反応や、-OH基と-OH基とからH2Oが形成されて脱離することによる縮合反応などが挙げられる。特に、脱離した中性成分が該脱離温度(加熱温度)で気体成分であると、形成される炭素材料に取り込まれることなく、気相部にあるため、不純物となりにくい。
【0030】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を加熱することによって炭素材料を形成することにより、自身の脱水反応による反応が起こるため、化学反応の副生成物が炭素材料中に存在してしまって致命的な不純物となることを抑制でき、より高品質な炭素材料を得ることができる。また、このような分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いることにより、可燃性ガスを使用することなく、炭素材料を得ることができる。また、このような分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、高反応性を有し得る。
【0031】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法において、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物と強酸との配合割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物100質量部に対して、強酸を、好ましくは1質量%~1000質量%であり、より好ましくは10質量%~500質量%であり、さらに好ましくは50質量%~400質量%であり、特に好ましくは100質量%~300質量%である。
【0032】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法においては、加熱によって炭素材料を製造した後に、必要に応じて、精製を行ってもよい。この精製は、代表的には、残存した原料(分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物と強酸)や生成した副生物の除去を主たる目的とするものである。精製の方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な精製方法を採用し得る。代表的には、例えば、昇華による精製、溶媒を用いた洗浄による精製などが挙げられる。
【0033】
≪1-1.強酸≫
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法においては、強酸を用いる。これらの中でも、製造される炭素材料中に取り込まれにくいという観点からは、強酸自身が反応せず触媒として効果を発揮しやすい有機系ルイス酸が好ましい。
【0034】
強酸としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な強酸を採用し得る。このような強酸としては、例えば、ブレンステッド酸、有機系ルイス酸、ハロゲン含有無機系ルイス酸などが挙げられる。
【0035】
ブレンステッド酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロ硫酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、ポリ酸などが挙げられる。これらのブレンステッド酸の中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、p-トルエンスルホン酸、ポリ酸である。
【0036】
ポリ酸としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリ酸を採用し得る。このようなポリ酸としては、例えば、イソポリ酸、ヘテロポリ酸が挙げられる。
【0037】
イソポリ酸としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なイソポリ酸を採用し得る。このようなイソポリ酸としては、例えば、モリブテン、バナジウム、タングステン、ニオブ、チタン、タンタル、クロム、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、スズ、チタン、ジルコニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、亜鉛等の無機元素を主体とする無機酸およびそれらの塩が挙げられ、代表的には、モリブデン酸、バナジウム酸、タングステン酸、ニオブ酸、チタン酸、タンタル酸などが挙げられる。
【0038】
ヘテロポリ酸としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なヘテロポリ酸を採用し得る。このようなヘテロポリ酸としては、例えば、イソポリ酸またはその金属塩にヘテロ原子を導入したものが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素、硫黄、リン、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、ケイ素などが挙げられる。ヘテロポリ酸は水和物であってよい。
【0039】
ヘテロポリ酸としては、具体的には、例えば、タングステンを含むイソポリ酸にヘテロ原子を導入してなるタングステン系ヘテロポリ酸や、モリブデンを含むイソポリ酸にヘテロ原子を導入してなるモリブデン系ヘテロポリ酸などが挙げられる。
【0040】
タングステン系ヘテロポリ酸としては、例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、コバルトタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、ホウタングステン酸、リンバナドタングステン酸、リンタングストモリブデン酸などが挙げられる。
【0041】
モリブデン系ヘテロポリ酸としては、例えば、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸などが挙げられる。
【0042】
ブレンステッド酸は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
有機系ルイス酸としては、ルイス酸の中で無機物のみからなるルイス酸を除いたものであり、例えば、トリス(ペンタフルオロ)フェニルボラン(TPB)、トリアルキルボラン、トリアリールボランなどが挙げられる。これらの有機系ルイス酸の中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、トリス(ペンタフルオロ)フェニルボラン(TPB)、トリアルキルボランである。
【0044】
有機系ルイス酸は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0045】
ハロゲン含有無機系ルイス酸としては、有機系ルイス酸以外のルイス酸の中で、ハロゲン原子を有するルイス酸であり、例えば、三ハロゲン化ホウ素、三ハロゲン化アルミニウム、三ハロゲン化鉄などが挙げられる。また、ハロゲン原子としては、代表的には、F、Cl、Br、Iからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、好ましくはF、Cl、Brからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはF、Clからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくはFである。
【0046】
ハロゲン含有無機系ルイス酸は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0047】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸は、本発明の効果をより発現させ得る点で、構成元素として、ホウ素およびハロゲンからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する強酸であることが好ましい。
【0048】
上記ルイス酸の中でも、自身が反応せずに触媒として効果を発揮するものが特に好ましい。
【0049】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸は、その分解温度が、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは200℃~500℃であり、さらに好ましくは220℃~400℃であり、特に好ましくは250℃~300℃である。本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸の分解温度が上記範囲を外れると、加熱工程において十分に強酸としての効果を発揮することができない可能性があり、また、分解により得られた炭素材料中に除去困難な不純物として強酸が残存してしまう可能性がある。言い換えれば、好ましい強酸としては、加熱の温度に耐えることのできる強酸であればよい。
【0050】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な態様のものを採用し得る。このような態様としては、常温において、固体、液体、気体などの態様が挙げられる。これらの中でも、混合時および混合後、また加熱後の炭素材料のハンドリングの点で、本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸は、常温において固体であることが好ましい。常温で固体であれば問題なく、高温時(加熱時)には液化しても問題ない。ここで、本明細書において「常温」とは、23℃を意味する。
【0051】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸は、製造後に残存した強酸を除去しやすい点で、好ましくは、昇華性を有する強酸である。本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸が昇華性を有することにより、製造後に残存した強酸を昇華によって除去することが可能である。
【0052】
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸は、製造後の残存した強酸を除去しやすい点で、好ましくは、1種以上の溶媒に可溶である強酸である。本発明の実施形態による炭素材料の製造方法に用いる強酸が1種以上の溶媒に可溶であれば、製造後に残存した強酸を、その溶媒を用いた洗浄によって除去することが可能である。このような溶媒としては、強酸の種類や量によって適宜選択し得る。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン溶媒;アセトニトリル、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性有機溶媒;のような有機溶媒や、水やアルカリ性水が挙げられる。強酸の除去という観点からは、極性有機溶媒、水やアルカリ性水が好ましい。上記溶媒は、強酸のみ溶かす溶媒であってもよいし、炭素材料も共に溶解する溶媒であってもよい。
【0053】
≪1-2.分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物≫
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を採用し得る。
【0054】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物において、該フェノール性ヒドロキシル基が結合する芳香環は炭化水素芳香環であることが好ましい。フェノール性ヒドロキシル基が結合する芳香環がヘテロ芳香環であっても本発明の効果を発揮し得るが、環構造がより安定な炭化水素芳香環であるほうが、得られる炭素材料がより安定となり得る。なお、ヘテロ芳香環とは、炭素によって環構造が構成されている炭化水素芳香環とは異なり、炭素と炭素以外の元素によって環構造が構成されている芳香環を意味する。
【0055】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、フェノール性ヒドロキシル基以外の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な置換基を採用し得る。このような置換基としては、本発明の効果をより高める点では、ヒドロキシル基のみであることが好ましい。ヒドロキシル基以外の置換基が存在しても本発明の効果は発揮され得るが、ヒドロキシル基以外の置換基が存在しないほうが、副反応を防ぎやすく、より炭素材料化しやすい。なお、ここにいうフェノール性ヒドロキシル基以外の置換基としての「ヒドロキシル基」は、フェノール性ではないヒドロキシル基を意味する。なお、当然のことであるが、置換基とは、水素基(-H)に代わって置き換えられた基である。
【0056】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を構成する元素としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な元素を採用し得る。このような元素としては、本発明の効果を高める点では、炭素、酸素、水素のみであることが好ましい。炭素、酸素、水素以外の元素が存在しても本発明の効果は発揮され得るが、炭素、酸素、水素以外の元素が存在しないほうが、副反応を防ぎやすく、より炭素材料化しやすい。
【0057】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、本発明の効果をより発揮させ得るため、該化合物の縮合開始温度が200℃~400℃の範囲であることが好ましい、これにより、効果的に炭素材料化することができる。
【0058】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の縮合反応温度は、TG-DTA分析によって決定できる。具体的には、下記の通りである。
(1)分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物として1種の化合物を用いる場合には、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物のTG-DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(2)分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG-DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定する。
(3)ただし、1種の化合物や2種以上の化合物の混合物としての分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物に、例えば、溶媒や水分や水和水等の不純物が含まれている場合は、該不純物の脱離に伴うDTAピーク(不純物ピークと称することもある)が縮合反応温度よりも低温で観測されることがある。このような場合には、上記の不純物ピークは無視して、その分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の縮合反応温度を決定する。通常は、上記の不純物ピークは無視した上で、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の縮合反応温度と決定する。
【0059】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合でも、分子間での縮合開始温度は上述の範囲内であることが好ましい。
【0060】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、一般式(1)~(11)に示す化合物が挙げられる。
【0061】
【0062】
一般式(1)~(11)のそれぞれにおいて、Xは水素原子または水酸基を表し、Xの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基である。
【0063】
ここで、フェノール性ヒドロキシル基とは、芳香環に結合した水酸基を意味する。すなわち、一般式(1)においては、芳香環に結合した6つのXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(2)においては、芳香環に結合した6つのXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(3)においては、芳香環に結合した10個のXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(4)においては、芳香環に結合した11個のXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(5)においては、芳香環に結合した9つのXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(6)においては、芳香環に結合した9つのXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(7)においては、芳香環に結合した10個のXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(8)においては、芳香環に結合した11個のXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(9)においては、芳香環に結合した9つのXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(10)においては、芳香環に結合した9つのXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(11)においては、芳香環に結合した12個のXの中の2つ以上がフェノール性ヒドロキシル基である。
【0064】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の中でも、-OH基と-OH基とからH2Oが形成されて脱離することによる縮合反応および/または-H基と-OH基とからH2Oが形成されて脱離することによる縮合反応が起こりやすいと推察され、反応が進行しやすいと推察される点で、好ましくは、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシトリフェニレンであり、より好ましくは、フロログルシノールである。
【0065】
≪≪2.炭素材料≫≫
本発明の実施形態による炭素材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法によって製造し得る。このような製造方法としては、例えば、本発明の実施形態による炭素材料の製造方法が挙げられる。
【0066】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、バルク状態で存在し得る。一般には、バルク状態の物質が備える性質が、その物質の固有の性質である。すなわち、バルク状態の物質は、その物質のもつ基本的な性質、例えば、沸点、融点、粘度、密度などの値を決定できる。ある物質の物性といえば、バルク部分が持つ性質を指す。バルク状態の例としては、粒子、ペレット、フィルム等である。粒子の存在状態としては、例えば、粉体が挙げられる。フィルムとしては、自立したフィルムであることが好ましい。
【0067】
本発明の実施形態による炭素材料は、代表的には、縮合反応によって、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離して得られる炭素材料である。この実施形態においては、1つの化合物が2種以上の基を有している場合であってもよいし、2つ以上の化合物のそれぞれの有する基を組み合わせて2種以上の基となる場合であってもよい。分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応を起こし、本発明の実施形態による炭素材料となり得る。
【0068】
縮合反応としては、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離することによる縮合反応であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な縮合反応を採用し得る。このような縮合反応とすることにより、比較的低温で反応を行うことが可能となり得る。このような縮合反応としては、-OH基と-OH基とからH2Oが形成されて脱離することによる縮合反応や-H基と-OH基とからH2Oが形成されて脱離することによる縮合反応が挙げられる。特に、脱離した中性成分が該脱離温度(加熱温度)で気体成分であると、形成される炭素材料に取り込まれることなく、気相部にあるため、不純物となりにくい。
【0069】
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を焼成することによって炭素材料を形成することにより、自身の脱水反応による反応が起こるため、化学反応の副生成物が炭素材料中に存在してしまって致命的な不純物となることを抑制でき、より高品質な炭素材料を得ることができる。また、このような分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いることにより、可燃性ガスを使用することなく、炭素材料を得ることができる。また、このような分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、高反応性を有し得る。
【0070】
本発明の実施形態による炭素材料は、XPS分析により検出される総元素から水素を除いた元素の合計に対する酸素の割合が5atm%以上であり、より好ましくは6atm%~40atm%であり、さらに好ましくは7atm%~35atm%であり、特に好ましくは8atm%~30atm%であり、最も好ましくは10atm%~25atm%である。本発明の実施形態による炭素材料が、XPS分析により検出される総元素から水素を除いた元素の合計に対する酸素の割合を上記範囲内で含むことにより、溶媒や樹脂、無機フィラ―等の他材料との親和性を高められ得る。
【0071】
本発明の実施形態による炭素材料は、C1sXPS分析により容易に炭素成分の存在が確認できる。また、炭素材料は、好ましくは、その構造内にベンゼン環由来のハニカム構造(グラフェン構造)を有する。グラフェン構造は、ラマン分光分析によってその有無の確認ができる(非特許文献3)。
【0072】
本発明の実施形態による炭素材料は、C1sXPS分析による、C-O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC-O結合とアルコール由来のC-O結合の合計量の割合、言い換えると、全炭素酸素結合、すなわち、C-O結合(アルコール由来のC-O結合、エーテル由来のC-O結合、エポキシ由来のC-O結合等含む)とC=O結合(カルボニル由来のC=O結合、カルボキシル由来のC=O結合、エステル由来のC=O結合、ラクトン由来のC=O結合等含む)の合計量に対する、エーテル由来のC-O結合(すなわち、C-O-C結合)とアルコール由来のC-O結合(すなわち、C-OH結合)の合計量の割合が、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。本発明の実施形態による炭素材料において、C1sXPS分析による、C-O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC-O結合とアルコール由来のC-O結合の合計量の割合が、上記範囲内にあれば、本発明の実施形態による炭素材料は、炭素材料部分の構造制御率を高め得るとともに、構造がより精密に制御され得る。なお、構造制御率とは、全結合数に対して、所望とする反応に由来する結合の割合を示す。本発明の実施形態による炭素材料においては、全結合数がC-O結合とC=O結合の合計量に対応し、所望とする反応に由来する結合が、エーテル由来のC-O結合とアルコール由来のC-O結合の合計量に対応する。構造制御率が高いということは、言い換えると、所望とする反応に由来する結合が多く、所望としない反応に由来する結合が少ないということである。本発明の実施形態による炭素材料では、所望としない反応に由来する結合が分解反応に由来するC=O結合であり、構造制御率が高いほど分解反応が抑制されており、構造がより精密に制御されていると言える。
【0073】
本発明の実施形態による炭素材料は、C1sXPS分析による、C1sの全結合(C-H、C=C、C=O、C-O結合)の合計量に対する、C=C結合の割合(炭素化度合い)が30%以上であり、より好ましくは35%以上である。上記割合の上限は、好ましくは70%以下である。本発明の実施形態による炭素材料において、C1sXPS分析による、C1sの全結合(C-H、C=C、C=O、C-O結合)の合計量に対する、C=C結合の割合(炭素化度合い)が上記割合にあることで、本発明の炭素材料がより十分炭素化しているといえる。
【0074】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、IR分析において1660cm-1~1800cm-1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない。本発明の実施形態による炭素材料のIR分析において1660cm-1~1800cm-1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない場合、本発明の実施形態による炭素材料は、構造がより精密に制御され得る。
【0075】
本発明の実施形態による炭素材料のIR分析において1660cm-1~1800cm-1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られない場合に該炭素材料の構造がより精密に制御され得るという理由は次のように考えられる。すなわち、代表的には、縮合反応により、反応後の生成物には骨格である芳香族と酸素官能基が残ることになる。このとき、芳香族の構造を保ったまま(言い換えれば、構造が制御された場合)では、エーテル架橋のC-O結合もしくはアルコール由来のC-O結合、さらに酸素官能基も脱離縮合し、骨格の芳香族同士が結合したC-C結合が生成すると考えられる。一方で、望まない分解反応が起こり、骨格の芳香族構造が開裂した場合は、分解反応に由来するC=O結合が生じてしまう。したがって、IR分析において1660cm-1~1800cm-1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られないことは、分解反応が抑制されていることを意味し、このような炭素材料は、構造がより精密に制御された炭素材料であると言える。上記範囲は、特に好ましくは1700cm-1~1800cm-1の範囲である。
【0076】
本発明の実施形態による炭素材料は、不純物となる金属成分(強酸由来ではない)の含有量が合計で、通常、炭素原子100原子%に対し、好ましくは0.1原子%以下であり、より好ましくは0.01原子%以下であり、特に好ましくは実質的にゼロである。これらは、本発明の実施形態による炭素材料を蛍光X線元素分析法(XRF)により分析することによって確認することができる。
【0077】
本発明の実施形態による炭素材料は、その構成元素として、炭素を必須とし、炭素以外の元素を含んでいてもよい。このような炭素以外の元素としては、好ましくは、酸素、水素、ホウ素、窒素、硫黄、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I等)から選ばれる少なくとも1種の元素であり、より好ましくは、酸素、水素、ホウ素、硫黄、ハロゲンから選ばれる少なくとも1種の元素であり、さらに好ましくは、酸素、水素から選ばれる少なくとも1種の元素である。すなわち、本発明の実施形態による炭素材料は、その構成元素として、より好ましくは、炭素、酸素、水素を含む。また、ハロゲンとしては、代表的には、F、Cl、Br、Iからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、好ましくはF、Cl、Brからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはF、Clからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、特に好ましくはFである。
【0078】
本発明の実施形態による炭素材料は、その構成元素として、特に好ましくは、上記のように、炭素、酸素、水素を含み、さらに、且つ、ホウ素、ハロゲン、硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。本発明の実施形態による炭素材料が、このように、炭素、酸素、水素を含み、且つ、ホウ素、ハロゲン、硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことによって、強酸による構造制御の向上および、炭素材料としての不純物の低減を達成できる。
【0079】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、溶媒に可溶である。
【0080】
ここで、炭素材料が溶媒に可溶である場合とは、従来の炭素材料に比べて溶媒への溶解性に優れ、良好な取り扱い性を実現し得る場合である。
【0081】
本発明の実施形態による炭素材料が溶媒に可溶という態様としては、好ましくは、下記の実施態様を採りうる。
(実施態様1)炭素材料の全てが溶媒に溶解する実施態様。すなわち、炭素材料が、溶媒に溶解する成分(成分A)のみからなる実施態様。
(実施態様2)炭素材料の一部が溶媒に溶解する態様。すなわち、炭素材料が、溶媒に溶解する成分(成分A)と溶媒に溶解しない成分(成分B)からなる実施態様。
【0082】
本発明において「溶媒に可溶」とは、任意の溶媒に溶解する成分がある態様を意味し、該溶媒としては、好ましくは、水、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。すなわち、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様が好ましい。より好ましくは、水、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様であり、さらに好ましくは、水、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒に溶解する成分がある態様であり、特に好ましくは、水およびジメチルホルムアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種に溶解する成分がある態様である。
【0083】
本発明の実施形態による炭素材料が溶媒に可溶である一つの実施形態は、例えば、炭素材料が、溶媒に可溶である炭素系化合物を含む実施形態である。
【0084】
溶媒に可溶であるか否かの判定方法としては、例えば、炭素材料を上記溶媒に対して0.001質量%となるように混合したのち、超音波処理を1時間行い、得られた液をPTFE製濾紙(孔径0.45μm)に通したとき、濾紙を通過した液に炭素系化合物が含まれるか否かで判定することができる。濾紙を通過した液に炭素系化合物が含まれる場合、炭素材料が溶媒に可溶である炭素系化合物を含むと判定される。上記PTFE製濾紙としては、例えば、ジーエルサイエンス株式会社製のGLクロマトディスク(型式13P)を用いることができる。
【0085】
本発明の実施形態による炭素材料中の炭素系化合物の含有割合は、好ましくは50質量%~100質量%であり、より好ましくは70質量%~100質量%であり、さらに好ましくは90質量%~100質量%であり、特に好ましくは95質量%~100質量%であり、最も好ましくは実質的に100質量%である。本発明の実施形態による炭素材料中の炭素系化合物の含有割合が上記範囲内にあれば、炭素材料の溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する炭素材料の成分がより多くなったり、炭素材料が溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。
【0086】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm-1~1650cm-1の範囲内)にピークを示す。したがって、炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm-1~1650cm-1の範囲内)にピークを有することは、炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有していることを意味している。Gバンドは、強度が高く、シャープであれば、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。
【0087】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm-1~1400cm-1の範囲内)にピークを示す。グラフェン構造の欠陥に由来する構造を有する炭素材料は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、Dバンド(一般的に1300cm-1~1400cm-1の範囲内)にピークを示す。したがって、炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおけるDバンド(一般的に1300cm-1~1400cm-1の範囲内)にピークを有することは、その炭素材料が官能基を含むことや、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していることを意味している。Dバンドは、強度が低ければ、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。また、Dバンドが確認できるということは、本発明の実施形態による炭素材料が官能基を有することを意味しており、これにより、溶媒に対する溶解性を高め得る。
【0088】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm-1~1650cm-1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm-1~1400cm-1の範囲内)にピークを示す。
【0089】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm-1~2750cm-1の範囲内)にピークを示す。したがって、炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm-1~2750cm-1の範囲内)にピークを有することは、炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有していることを意味している。G′バンドの強度は、グラフェン構造が1層のときに最も強く、グラフェン構造の積層数が増えるにつれて徐々に小さくなる。しかしながら、G′バンドは、グラフェン構造の積層数が増えるにつれて徐々に強度が小さくなっても、ピークは観察することができる。したがって、G′バンドにピークを有することは、炭素材料がグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。G′バンドは、2Dバンドとも呼ばれることがある。
【0090】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm-1~1650cm-1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm-1~1400cm-1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm-1~2750cm-1の範囲内)にピークを示す。
【0091】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、(iv)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm-1~3000cm-1の範囲内)にピークを示す。グラフェン構造の欠陥に由来する構造を有する炭素材料は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、D+D′バンド(一般的に2800cm-1~3000cm-1の範囲内)にピークを示す。したがって、炭素材料が、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm-1~3000cm-1の範囲内)にピークを有することは、その炭素材料が官能基を含むことや、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していることを意味している。D+D′バンドは、強度が低ければ、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。D+D′バンドは、D+Gバンドとも呼ばれることがある。また、D+D′バンドが確認できるということもまた、本発明の実施形態による炭素材料が官能基を有することを意味しており、これにより、溶媒に対する溶解性を高め得る。
【0092】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm-1~1650cm-1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm-1~1400cm-1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてG′バンド(一般的に2650cm-1~2750cm-1の範囲内)にピークを示し、さらに、(iv)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてD+D′バンド(一般的に2800cm-1~3000cm-1の範囲内)にピークを示す。
【0093】
本発明の実施形態による炭素材料は、例えば、(i)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてGバンド(一般的に1550cm-1~1650cm-1の範囲内)にピークを示し、さらに、(ii)ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてDバンド(一般的に1300cm-1~1400cm-1の範囲内)にピークを示す。
【0094】
本発明の実施形態による炭素材料において、官能基を含むことと共に、グラフェン構造の一部に欠陥を有している場合、この欠陥が、炭素材料の溶媒への溶解性の発現に寄与し得る。
【0095】
本発明の実施形態による炭素材料は、上記のように、従来公知の炭素材料とは異なり、グラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有し、炭素材料の溶媒への溶解性がより優れる(例えば、溶媒に溶解する炭素材料の成分がより多くなったり、炭素材料が溶解できる溶媒の種類がより増えたりする)。
【0096】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、XRD分析によって得られるXRDスペクトルチャートにおいて、20°~30°の範囲内にピークを示す。すなわち炭素材料は、グラフェン構造が積層した構造(グラフェン積層構造)を有することも、好ましい実施形態の一つである。積層構造を有することで、炭素材料はより強固になり得るとともに、より安定なものとなり得る。
【0097】
本発明の実施形態による炭素材料のさらに好ましい形態は、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて上述した形態(i)~(iv)のいずれの形態、あるいは組合せた形態;(i)および(ii)、(i)、(ii)および(iii)、(i)、(ii)、(iii)および(iv)を有し、且つ、XRD分析によって得られるXRDスペクトルチャートにおいて、20°~30°の範囲内にピークを示す形態である。
【0098】
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、バルク状態で存在し得る。一般には、バルク状態の物質が備える性質が、その物質の固有の性質である。すなわち、バルク状態の物質は、その物質のもつ基本的な性質、例えば、沸点、融点、粘度、密度などの値を決定できる。ある物質の物性といえば、バルク部分が持つ性質を指す。バルク状態の例としては、粒子、ペレット、フィルム等である。粒子の存在状態としては、例えば、粉体が挙げられる。フィルムとしては、自立したフィルムであることが好ましい。
【0099】
本発明の実施形態による炭素材料は、代表的には、加熱によって原料の一部が分解等したものであるため、本発明の実施形態による炭素材料そのものの構造は複雑であり、一般式(構造)で表すことが到底できないのが現状であり、このような炭素材料を扱う当業者の技術常識といえる。したがって、本発明の実施形態による炭素材料は、その構造によって直接に特定することが不可能である。よって、本発明の実施形態による炭素材料に関し、出願時において、構造によって直接特定することが不可能又は非現実的である事情が存在する。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。また、本明細書において、「重量」は「質量」と読み替えても良い。
【0101】
<ラマン分光分析>
ラマン分光分析は以下の装置、条件により行った。
測定装置:顕微ラマン(日本分光NRS-3100)
測定条件:532nmレーザー使用、対物レンズ20倍、CCD取り込み時間1秒、積算64回(分解能=4cm-1)
なおラマン分析においてG’バンド、D+D’バンドは重なって現れることがあり、D+D’バンドが特にショルダーを持つブロードなピークとして分析されることがある。この場合はショルダーピークの変曲点をG’バンドのピークとみなす。
【0102】
<XPS分析>
XPS分析は、光電子分光装置(JPS-9030、日本電子製)を用いて、以下の条件により行った。
ソース:Mg
測定範囲:C1s:300~278eV
積算回数:10回
条件:サーベイスキャンにより水素以外の構成元素および構成比を算出した。
官能基解析条件:C1s軌道に由来するピークを官能基ごとに、下記に記載のエネルギーでピーク分離し、各面積から割合を算出した。官能基の種類は(1)C=OおよびCOO@288.3eV、(2)C=Oおよびエポキシ基@286.2eV、(3)C-OHおよびC-O-C@285.6eV、(4)C=C@284.3eV、(5)C-H@283.8eV。なおC1sXPSに係る部分の%は原子%を意味する。
構造制御率は下記の式により算出した。
構造制御率(%)=[(C-OHおよびC-O-C)の割合/{(C-OHおよびC-O-C)の割合+(C=Oおよびエポキシ基)の割合+(C=OおよびCOO)の割合}]×100
【0103】
<TG-DTA分析>
TG-DTA分析は、以下の装置、条件により行った。
測定装置:示唆熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)
分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の縮合反応温度は、下記のように行った。
(1)分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物として1種の化合物を用いる場合には、分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物のTG-DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を化合物(A)の縮合反応温度(T℃)と決定した。
(2)分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物として2種以上の化合物の混合物を用いる場合には、該混合物のTG-DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を分子内に2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(2種以上の化合物の混合物)の縮合反応温度(T℃)と決定した。
【0104】
<IR分析>
FT-IR分析は以下の装置、条件により行った。
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光製FT/IR-4200)
測定条件:拡散反射(DRIFT)法、MCT検出器、分解能4cm-1、積算回数128回
サンプル条件:試料とKBrを重量比=1:50で混合したものを使用した。
【0105】
〔実施例1〕
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合開始温度:230℃)とTPB(トリスペンタフルオロフェニルボラン、日本触媒製、分解温度:270℃、23℃で固体)を質量比2:1で配合し、300℃で1時間、加熱焼成して炭素化した。
得られた炭素材料(1)について元素分析(XPS分析)を行った結果、構成元素として、炭素、酸素、水素、ホウ素を含むこと、水素を除いた元素中、酸素を22.8atm%含むことがわかった。
得られた炭素材料(1)についてC1sXPS分析を行うと、C-O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC-O結合とアルコール由来のC-O結合の合計量の割合が、90.6%であった。またC1sの全結合(C-H、C=C、C=O、C-O結合)の合計量に対する、C=C結合の割合は38.4%であった。
得られた炭素材料(1)について、IR分析において1660cm-1~1800cm-1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られず、分解反応が抑制されていることが分かった。
また、ラマン分光分析からも、Gバンド、Dバンドが確認できた。これらのことから、元素分析の結果と合わせて考察すると、得られた炭素材料(1)は炭素化が十分に達成できていることがわかった。
得られた炭素材料(1)を超純水で超音波洗浄して遠心分離する操作を3回繰り返したものを200℃で1時間真空乾燥した。F1sXPSスペクトルの測定において、精製前後でのF構成比を比較すると、0.01%以下(検出限界以下)まで減少していた。このことから、上記洗浄・真空乾燥がTPBの除去に有効であることがわかった。
また、得られた炭素材料(1)は、DMFに可溶であった。
XPS分析の結果を表1に示した。
【0106】
〔実施例2〕
TPBをリンモリブデン酸(富士フイルム和光純薬製)に変えた以外は実施例1と同様に行い、炭素材料(2)を合成した。
得られた炭素材料(2)についてC1sXPS分析を行うと、構成元素として、炭素、酸素、水素、リン、モリブデンを含むこと、水素を除いた元素中、酸素を25atm%含むことがわかった。またC-O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC-O結合とアルコール由来のC-O結合の合計量の割合が、73.7%であった。またC1sの全結合(C-H、C=C、C=O、C-O結合)の合計量に対する、C=C結合の割合は62.0%であった。
さらにIR分析において1660cm-1~1800cm-1の間にC=O伸縮振動に起因するピークが見られず、分解反応が抑制されていることが分かった。
ただしリンモリブデン酸は昇華性が無いことや、自身が炭素材料と反応してしまうことから除去することが困難であった。
XPS分析の結果を表1に示した。
【0107】
〔比較例1〕
TPBを用いないこと以外は実施例1と同様に行い、炭素材料(C1)を合成した。得られた炭素材料(C1)についてC1sXPS分析を行うと、構成元素として、炭素、酸素、水素を含むこと、水素を除いた元素中、酸素を23.8atm%含むことがわかった。またC-O結合とC=O結合の合計量に対する、エーテル由来のC-O結合とアルコール由来のC-O結合の合計量の割合が、96.0%であったが、C1sの全結合(C-H、C=C、C=O、C-O結合)の合計量に対する、C=C結合の割合は20.5%であり、炭素化度合いが低かった。
以上のことから強酸を用いることで、高い炭素化度合いと高い構造制御率を発現できることが分かった。また、昇華性や溶解性をもつ強酸を用いることで、精製も容易であることが分かった。
XPS分析の結果を表1に示した。
【0108】
【0109】
表1より、実施例では比較例に比べ、C=C(%)が高く、C-H(%)が低いことから、炭素化が進んでおり、C=O、エポキシ基の合計の割合も低く抑えられており、構造制御率の値も高い値を示していることから、構造制御された炭素材料が低温で得られていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の炭素材料は、各種分野における新規な機能性材料として利用可能である。