(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】造水システム
(51)【国際特許分類】
B63J 1/00 20060101AFI20240125BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
B63J1/00
C02F1/04 A
(21)【出願番号】P 2019223055
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 夏海
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-198178(JP,A)
【文献】特開2004-306807(JP,A)
【文献】特開昭49-90276(JP,A)
【文献】特開平9-52083(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108975438(CN,A)
【文献】特開2013-180625(JP,A)
【文献】特開平9-52082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0017583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63J 1/00
C02F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶で海水から蒸留水を製造する造水システムであって、
前記海水を蒸発させる蒸発部と、
前記蒸発部で発生した蒸気を凝縮させて蒸留水を生成する復水部と、
前記海水を流通させて前記復水部を通過させた後で、前記蒸発部へ前記海水を供給する流路と、
液化ガス燃料を加熱することで温度が低下した熱媒体を用いて復水部での前記蒸気の冷却を行う冷却部と、を備え、
前記流路において、前記復水部よりも上流側の前記海水を用いて、前記復水部と前記蒸発部との間を流れる前記海水を加熱する加熱部を更に備える、造水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶で海水から蒸留水を製造する造水システムとして、特許文献1に記載されたものが知られている。この造水システムは、海水を蒸発させる蒸発部と、蒸発部で発生した蒸気を凝縮させて蒸留水を生成する復水部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、海水から製造される蒸留水は、船舶において飲料水、生活用水、ボイラ給水など、様々な用途に使用される。船舶での清水の使用量が造水システムの製造性能を上回る場合、船外から清水の供給を受ける必要がある。しかしながら、造水効率を向上させようとして、従来の造水システムの機構に大幅な機器の変更が加わるとなると、かえってコストが上昇してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、従来の造水システムの機構を大幅に変更することなく、蒸留水の製造効率を向上できる造水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の造水システムは、船舶で海水から蒸留水を製造する造水システムであって、海水を蒸発させる蒸発部と、蒸発部で発生した蒸気を凝縮させて蒸留水を生成する復水部と、海水を流通させて復水部を通過させた後で、蒸発部へ海水を供給する流路と、液化ガス燃料を加熱することで温度が低下した熱媒体を用いて復水部での蒸気の冷却を行う冷却部と、を備える。
【0007】
本発明の造水システムは、海水を蒸発させる蒸発部と、蒸発部で発生した蒸気を凝縮させて蒸留水を生成する復水部と、海水を流通させて復水部を通過させた後で、蒸発部へ海水を供給する流路と、を備える。このような構成により、海水は、蒸発部へ供給される前段階で、流路を介して復水部を通過することで、蒸発部で生成された蒸気を冷却する。これにより、復水部で冷却された蒸気は、凝縮することによって蒸留水として回収される。ここで、環境保護の観点から、例えば、SOX、NOX、CO2排出量削減のために、船舶の燃料として液化ガス燃料が用いられる場合がある。当該液化ガス燃料を用いる場合、熱媒体を用いて液化ガス燃料を加熱する。液化ガス燃料を加熱した後の熱媒体は、温度が低下して低温となる。従って、造水システムは、液化ガス燃料を加熱することで温度が低下した熱媒体の冷却力を有効活用するために、当該熱媒体を用いて復水部での蒸気の冷却を行う冷却部を備える。これにより、冷却部は、復水部において蒸気を凝縮させ易くなる。以上により、造水システムは、従来の造水システムの機構を大幅に変更することなく、蒸留水の製造効率を向上できる。
【0008】
冷却部は、復水部よりも上流側にて流路の海水を冷却することで、復水部での蒸気の冷却を行ってよい。この場合、復水部よりも上流側の流路に対して冷却部を追加すればよいだけであるため、復水部に対して直接冷却部を設ける場合に比して、冷却のための構造をシンプルにすることができる。
【0009】
造水システムは、流路において、復水部よりも上流側の海水を用いて、復水部と蒸発部との間を流れる海水を加熱する加熱部を更に備えてよい。この場合、加熱部は、復水部を通過した後の海水を、蒸発部へ供給される前段階にて加熱しておくことができる。これにより、蒸発部での蒸発効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の造水システムの機構を大幅に変更することなく、蒸留水の製造効率を向上できる造水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る造水システムが適用される船舶の一例を示す概略側面図である。
【
図2】本実施形態に係る造水システムのシステム構成を示す概略構成図である。
【
図3】液化ガス燃料系と造水装置との関係を詳細に示す概略構成図である。
【
図4】変形例に係る造水システムにおいて、液化ガス燃料系と造水装置との関係を詳細に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の造水システムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」の語は船体の進行方向に対応するものであり、「横」の語は船体の左右(幅)方向に対応するものであり、「上」「下」の語は船体の上下方向に対応するものである。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る造水システム100が適用される船舶の一例を示す概略側面図である。船舶1は、例えばオイルタンカーである。なお、船舶1は、オイルタンカーに限定されないが、以降の図面ではオイルタンカーの構造にてシステムの説明を行うものとする。造水システム100が適用される船舶1は、液化ガス燃料を燃料として用いる船舶である。液化ガス燃料として、例えばLNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)が用いられる。船舶1は、燃料として液化ガス燃料だけを用いてもよく、液化ガス燃料及び液体燃料を両方用いるものであってもよい。
【0014】
船舶1は、
図1に示すように、船体11と、推進器12と、を備えている。船体11は、船首部2と、船尾部3と、機関室4と、ポンプ室5と、貨物室6と、を有している。船首部2は、船体11の前方側に位置している。船尾部3は、船体11の後方側に位置している。船首部2は、例えば満載喫水状態における造波抵抗の低減が図られた形状を有している。推進器12は、船体11を推進させるものであり、例えばスクリューシャフトが用いられている。推進器12は、船尾部3における喫水線(海水SWの水面)よりも下方に設置されている。また、船尾部3における喫水線よりも下方には、推進方向を調整するための舵15が設置されている。
【0015】
機関室4は、船尾部3の船首側に隣り合う位置に設けられている。機関室4は、推進器12に駆動力を付与するためのエンジン16を配置するための区画である。ポンプ室5は、機関室4の船首側に隣り合う位置に設けられている。ポンプ室5は、ポンプ等が配置される区画である。貨物室6は、船首部2とポンプ室5との間に設けられている。貨物室6は、石油系貨物を収容するための区画である。貨物室6は、二重船殻構造を採用することによって、カーゴオイルタンクとバラストタンクとに区画されている。カーゴオイルタンクは、船舶1によって運搬される貨物を積載する。バラストタンクは、カーゴオイルタンクに積載された石油系貨物の重量に応じた量のバラスト水を収容する。
【0016】
船体11の上部には甲板19が設けられている。甲板19上には、液化ガス燃料を貯留する液化ガス燃料タンク21が設けられている。液化ガス燃料タンク21は、エンジン16に液化ガス燃料を供給する。
【0017】
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る造水システム100について説明する。
図2は、本実施形態に係る造水システム100のシステム構成を示す概略構成図である。造水システム100は、船舶1で海水から蒸留水を製造するシステムである。船舶1では、液化ガス燃料を熱媒体で加熱して、エンジン16にて用いている。液化ガス燃料は低温の物質であるため、熱媒体は当該液化ガス燃料を加熱することで低温となる。造水システム100は、このように低温となった熱媒体を用いて造水装置40での製造効率を向上させるシステムである。
【0018】
図2に示すように、造水システム100は、造水装置40と、液化ガス燃料系50と、熱交換部60(冷却部)と、熱交換部70(加熱部)と、を備える。また、造水システム100は、海水ラインL1(流路)と、海水排出ラインL2と、蒸留水供給ラインL3と、ディーゼルエンジン冷却水ラインL4と、熱媒体ラインL5と、を備える。
【0019】
造水装置40は、海水を用いて蒸留水を製造する装置である。造水装置40の配置は特に限定されないが、例えば、機関室4に配置されてよい(
図1参照)。造水装置40は、蒸発部41と、復水部42と、を備える。蒸発部41は、当該海水SWを真空下で加熱することにより、蒸発させる。蒸発部41で生成された蒸気SMは、造水装置40内を上昇し、復水部42へ向かう。貯留部43は、海水排出ラインL2が接続される。海水排出ラインL2は、一部の水分が蒸気SMとして蒸発することによって塩分が高濃度となった濃縮海水CSWを貯留部43にて貯留し、船外へ排出するラインである。
【0020】
復水部42は、蒸発部41で発生した蒸気SMを凝縮させて蒸留水PWを生成する部分である。復水部42は、蒸発部41の上方に設けられる。復水部42は、蒸発部41から上昇してきた蒸気SMを受容する空間を有している。当該空間内の蒸気SMは、冷却されることによって凝縮され、蒸留水PWとなる。復水部42は、生成された蒸留水PWを貯めておく貯留部44を有する。貯留部44には、蒸留水供給ラインL3が接続される。蒸留水供給ラインL3は、造水装置40の外部の船内の各所にまで引き延ばされ、ポンプ48で圧送することで、各所へ蒸留水を供給するラインである。蒸留水供給ラインL3から供給される蒸留水は、飲料水、生活用水、ボイラ給水、雑用水、その他各目的で使用される。なお、蒸留水が飲料水として用いられる場合、ミネラル添加などによる殺菌が行われる。
【0021】
海水ラインL1は、海水SWを流通させて復水部42を通過させた後で、蒸発部41へ海水SWを供給するラインである。海水ラインL1は、海からポンプ46で組み上げた海水を流通させる。海水ラインL1は、外部から造水装置40内の復水部42へ挿入される。海水ラインL1は、復水部42の空間内をはい回された後、造水装置40の外部へ引き出される。また、海水ラインL1は、造水装置40の外部を通過して蒸発部41内に挿入される。海水ラインL1は、貯留部43より上方まで延びる。
【0022】
なお、海水ラインL1のうち、造水装置40の復水部42よりも上流側の部分、すなわち造水装置40に挿入される前段階の部分は、第1の部分L1aと称される。また、海水ラインL1のうち、復水部42内にはい回された部分は、第2の部分L1bと称される。また、海水ラインL1のうち、復水部42と蒸発部41との間の部分、すなわち造水装置40の復水部42から外部に引き出されて、再び造水装置40の蒸発部41へ挿入される前段階の部分は、第3の部分L1cと称される。また、海水ラインL1のうち、蒸発部41内にはい回された部分は、第4の部分L1dと称される。
【0023】
海水ラインL1の第2の部分L1bの周囲には、高温の蒸気SMが存在している。一方、第2の部分L1b内には、海水が流通している。従って、蒸気SMは、第2の部分L1bによって冷却される。
【0024】
なお、海水ラインL1の第4の部分には、海水SWとディーゼルエンジン冷却水ラインL4のディーゼルエンジン冷却水CWとの間で熱交換を行う熱交換部47が設けられる。ディーゼルエンジン冷却水ラインL4は、発電機を構成するディーゼルエンジン80(
図1参照)を冷却するために用いられる水である。熱交換部47には、ディーゼルエンジン80を冷却した後で、高温状態となったディーゼルエンジン冷却水CWが供給される。従って、第4の部分L1d内を流通する海水SWは、熱交換部47にて、ディーゼルエンジン冷却水CWの熱によって加熱される。従って、海水ラインL1は、熱交換部47で加熱されて高温となった海水SWを蒸発部41の貯留部43に供給することができる。なお、貯留部43には、ヒーターなどの加熱器が設けられてよい。
【0025】
熱交換部60は、海水ラインL1の第1の部分L1aを流通する海水と、液化ガス燃料系50から延びる熱媒体ラインL5を流れる熱媒体HMとの間で、熱交換を行う部分である。熱媒体ラインL5は超低温の液化ガス燃料を加熱することで温度が低下した熱媒体HMを流通させるラインである。従って、熱交換部60は、復水部42よりも上流側にて海水ラインL1の海水SWを冷却することで、復水部42での蒸気SMの冷却を行う。これにより、熱交換部60は、液化ガス燃料を加熱することで温度が低下した熱媒体HMを用いて復水部42での蒸気SMの冷却を行う冷却部として機能する。なお、液化ガス燃料系50の構成については後述する。
【0026】
熱交換部70は、海水ラインL1のうち、第1の部分L1aを流通する海水SWと、第3の部分L1cを流通する海水との間で熱交換を行う部分である。熱交換部70は、第1の部分L1aのうち、熱交換部60よりも上流側に設けられる。すなわち、熱交換部70では、熱交換部60で冷却される前の海水SWが第1の部分L1aを流通し、熱交換部60で冷却された後の海水SWが第3の部分L1cを流通する。従って、熱交換部70は、海水ラインL1において、復水部42よりも上流側の海水SWを用いて、復水部42と蒸発部41との間を流れる海水SWを加熱する加熱部として機能する。
【0027】
ここで、例えば寒冷地のように海水SWの温度が低い場合には、第1の部分L1aを流通する海水SWの温度が、第3の部分L1cの海水SWの温度よりも低くなる場合がある。このような場合、熱交換部70が加熱部として機能しなくなるため、海水SWが熱交換部70をバイパスするような機構を設けてよい。例えば、
図2に示すように、第1の部分L1aに対して、熱交換部70をバイパスするバイパスラインBLを設けてよい。また、バイパスラインBLと第1の部分L1aとの分岐部に、海水SWの流れを切り替える切替弁90を設けてよい。例えば、熱交換部70を加熱部として機能させることが可能な場合、切替弁90は、熱交換部70側に海水SWを流す(流れF1)。一方、熱交換部70を加熱部として機能させることができない場合、切替弁90は、バイパスラインBLに海水SWを流す。なお、
図2に示す例では、第1の部分L1aにおいてバイパスラインBLを設けているが、第3の部分L1cにバイパスラインBLを設けてもよい。
【0028】
次に、
図3を参照して、液化ガス燃料系50について説明する。
図3は、液化ガス燃料系50と造水装置40との関係を詳細に示す概略構成図である。
図3に示すように、液化ガス燃料系50は、液化ガス燃料タンク21と、液化ガス燃料加熱器24と、を備える。また、液化ガス燃料系50は、前述の熱媒体ラインL5と、液化ガス燃料ラインL6と、を備える。
【0029】
液化ガス燃料タンク21は、液化ガス燃料ラインL6を介してエンジン16と接続される。また、液化ガス燃料ラインL6には、液化ガス燃料タンク21とエンジン16との間に、液化ガス燃料加熱器24が設けられる。液化ガス燃料タンク21には、ポンプ31が設けられる。ポンプ31は、液化ガス燃料タンク21内の液化ガス燃料LGを液化ガス燃料ラインL6へ圧送することで、当該液化ガス燃料LGを液化ガス燃料加熱器24に供給する。加熱された燃料は、液化ガス燃料ラインL6を介してエンジン16に供給される。
【0030】
液化ガス燃料加熱器24は、熱媒体HMを用いて液化ガス燃料LGを加熱させる機器である。熱媒体HMとしては、低温の液化ガス燃料タンクと熱交換を行っても凍結しないものが好ましく、例えば、グリコールなどを用いることができる。液化ガス燃料加熱器24は、熱媒体ラインL5のうち、図示されない熱媒体タンクからポンプ32で圧送された熱媒体HMの流れに対して、熱交換部60の手前側に設けられる。液化ガス燃料加熱器24は、熱媒体ラインL5を介して熱媒体HMを通過させ、且つ、液化ガス燃料ラインL6を介して液化ガス燃料LGを通過させることによって、熱媒体HMと液化ガス燃料LGとの間で熱交換を行う。これにより、液化ガス燃料LGは、熱媒体HMからの熱で加熱される。一方、熱媒体HMは、液化ガス燃料LGに熱を奪われることによって冷却される。これにより、熱媒体ラインL5は、液化ガス燃料加熱器24によって冷却された状態の熱媒体HMを熱交換部60に流すことができる。これにより、熱交換部60は、造水装置40の復水部42の上流側にて、海水SWを冷却することができる。液化ガス燃料加熱器24の配置は特に限定されないが、例えば、機関室4に配置される(
図1参照)。
【0031】
次に、
図1を参照して、各流体の温度変化の状況について説明する。ただし、以下の温度は一例に過ぎず、それらの温度に限定されるものではない。まず、ポンプ46でくみ上げられる海水SWは、海域や季節によって変動する。なお、くみ上げられる海水SWの温度に応じて、切替弁90を切り替える。海水ラインL1の第1の部分L1aを流れる海水SWは、熱交換部60にて、熱媒体HMで冷却される。海水ラインL1の第2の部分L1bでは、海水SWは、蒸気SMからの熱を受容することで温度が上がる。海水ラインL1の第3の部分L1cを流通する海水SWの温度が、くみ上げられる海水SWの温度より低い条件下では、切替弁90は、熱交換部70側へ海水SWを流す(流れF1)。これにより、第3の部分L1cを流通する海水SWは、熱交換部70で第1の部分L1aを流通する海水SWにより加熱される。その一方、海水ラインL1の第3の部分L1cを流通する海水SWの温度が、くみ上げられる海水SWの温度より高い条件下では、切替弁90は、バイパスラインBL側へ海水SWを流す(流れF2)。第3の部分L1cから第4の部分L1dへ海水SWが流れ込む。第4の部分L1dを流通する海水SWは、熱交換部47にて、ディーゼルエンジン冷却水CWで加熱された状態で、貯留部43へ供給される。
【0032】
次に、本実施形態に係る造水システム100の作用・効果について説明する。
【0033】
本実施形態に係る造水システム100は、海水SWを蒸発させる蒸発部41と、蒸発部41で発生した蒸気SMを凝縮させて蒸留水PWを生成する復水部42と、海水SWを流通させて復水部42を通過させた後で、蒸発部41へ海水SWを供給する海水ラインL1と、を備える。このような構成により、海水SWは、蒸発部41へ供給される前段階で、海水ラインL1を介して復水部42を通過することで、蒸発部41で生成された蒸気SMを冷却する。これにより、復水部42で冷却された蒸気SMは、凝縮することによって蒸留水PWとして回収される。ここで、環境保護の観点から、SOX、NOX、CO2排出量削減のために船舶1の燃料として液化ガス燃料LGが用いられる場合がある。当該液化ガス燃料LGを用いる場合、熱媒体HMを用いて液化ガス燃料LGを加熱する必要がある。液化ガス燃料LGを加熱した後の熱媒体HMは、温度が低下して低温となる。従って、造水システム100は、液化ガス燃料LGを加熱することで温度が低下した熱媒体HMの冷却力を有効活用するために、当該熱媒体HMを用いて復水部42での蒸気SMの冷却を行う熱交換部60を備える。これにより、熱交換部60は、復水部42において蒸気SMを凝縮させ易くなる。また、上述のような効果は、従来の造水システム(造水システム100から熱交換部60,70を省略したシステム)に対して、熱交換部60を設けて、当該熱交換部60に熱媒体HMを引き込む程度の変更を加えるだけで得られる。以上により、造水システム100は、従来の造水システムの機構を大幅に変更することなく、蒸留水の製造効率を向上できる。
【0034】
熱交換部60は、復水部42よりも上流側にて海水ラインL1の海水SWを冷却することで、復水部42での蒸気SMの冷却を行う。例えば、
図4のように、熱交換部60で冷却された冷却媒体CMを復水部42へ供給する場合、海水ラインL1とは別に、新たな冷却媒体ラインL7を別途設ける必要がある。これに対し、本実施形態では、復水部42よりも上流側の海水ラインL1に対して熱交換部60を追加すればよいだけであるため、復水部42に対して直接、冷却媒体ラインL7のような冷却部を設ける場合に比して、冷却のための構造をシンプルにすることができる。
【0035】
造水システム100は、海水ラインL1において、復水部42よりも上流側の海水SWを用いて、復水部42と蒸発部41との間を流れる海水SWを加熱する熱交換部70を更に備える。この場合、熱交換部70は、復水部42を通過した後の海水SWを、蒸発部41へ供給される前段階にて加熱しておくことができる。これにより、蒸発部41での蒸発効率を向上することができる。
【0036】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、変形例に係る造水システムとして、
図4に示すように、熱交換部60で冷却された冷却媒体CMを復水部42へ供給する構造が採用されてもよい。この場合、海水ラインL1とは別に、冷却媒体ラインL7が、造水装置40の復水部42に対して設けられる。冷却媒体ラインL7は、熱交換部60を通過すると共に、復水部42の内部の空間にはい回される。これにより、熱媒体HMで冷却された冷却媒体CMは、復水部42の空間内の蒸気SMを、海水ラインL1の海水SWと共に冷却する。この場合、熱交換部60に加えて、冷却媒体ラインL7も、液化ガス燃料LGを加熱することで温度が低下した熱媒体HMを用いて復水部42での蒸気SMの冷却を行う冷却部として機能する。
【0038】
上述の冷却媒体CMとして、例えば、水が採用されてよい。ただし、冷却媒体CMは特に限定されず、あらゆる媒体を用いてもよい。なお、冷却媒体CMとして水以外の媒体を採用する場合、冷却媒体ラインL7が破損しても、冷却媒体CMが海水や蒸留水PWと混ざらないようにする保護機構を設けることが好ましい。
【0039】
また、熱交換部60を用いることなく、熱媒体ラインL5が、直接、復水部42に挿入されてはい回されてもよい。この場合、熱媒体ラインL5が、液化ガス燃料LGを加熱することで温度が低下した熱媒体HMを用いて復水部42での蒸気SMの冷却を行う冷却部として機能する。なお、熱媒体ラインL5が破損しても、熱媒体HMが海水や蒸留水PWと混ざらないようにする保護機構を設けることが好ましい。
【0040】
造水システム100の各構成要素の船舶1における配置は、
図1に示す配置に限定されない。例えば、液化ガス燃料タンク21の甲板19における位置が変更されてもよく、船体11内に配置されてもよい。また、液化ガス燃料加熱器24は、甲板19上に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…船舶、41…蒸発部、42…復水部、60…熱交換部(冷却部)、70…熱交換部(加熱部)、100…造水システム、L1…海水ライン(流路、冷却部)、L7…冷却媒体ライン(冷却部)。