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特許7426221樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造及び連結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造及び連結方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/16 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B29C65/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019225028
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021094697
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】西山 高広
(72)【発明者】
【氏名】大澤 彩香
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0140668(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0028592(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0249213(US,A1)
【文献】特開2007-312942(JP,A)
【文献】特開平06-091765(JP,A)
【文献】特開2015-202685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 - 65/82
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造であって、
前記樹脂ジョイントは、
レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形された外筒と、
前記外筒の内周面に対向して配置され、前記外筒の前記内周面との間に軸方向一方に開口を有する環状空間を形成する内筒と、
を備え、
前記外筒の前記内周面又は前記内筒の外周面には、径方向に突出し且つ周方向に延びる環状突起が形成され、
前記樹脂チューブの軸方向端部は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形され、
前記樹脂チューブの前記軸方向端部は、前記環状空間に挿入され、前記環状突起に倣って径方向に変形し、径方向に変形した領域に前記外筒の前記内周面に当接する面を有し、
前記外筒の前記内周面と前記樹脂チューブにおける前記外筒の前記内周面に当接する面とが、溶着されており、
前記環状突起は、軸方向断面形状が湾曲凸状であると共に周方向全周に形成されており、
前記外筒の前記内周面の内径と前記内筒に形成された前記環状突起の最大高さの位置の外径との差、または、前記外筒に形成された前記環状突起の最大高さの位置の内径と前記内筒の前記外周面の外径との差は、前記樹脂チューブの無負荷状態における厚みである基準厚みよりも小さく、
前記樹脂チューブにおける前記内筒に形成された前記環状突起と前記外筒とによって径方向に挟まれた部分と、前記外筒と、が互いに溶着しているか、
または前記樹脂チューブにおける前記外筒に形成された前記環状突起と前記内筒とによって径方向に挟まれた部分と、前記外筒と、が互いに溶着しており
前記環状突起は、軸方向の異なる位置に複数形成されており、
前記樹脂チューブと前記外筒との溶着部は、軸方向の異なる位置に複数形成されており、
軸方向における、互いに隣り合う前記溶着部同士の間には、前記外筒の前記内周面と前記樹脂チューブの外周面との間に隙間が形成されている、
樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項2】
前記内筒の前記外周面には、径方向外方に突出し且つ周方向に延びる前記環状突起が形成され、
前記外筒の前記内周面の軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されている、請求項1に記載の樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項3】
前記外筒の前記内周面には、径方向内方に突出し且つ周方向に延びる前記環状突起が形成され、
前記内筒の前記外周面の軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されている、請求項1に記載の樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項4】
前記外筒及び前記内筒は、同種の材料により成形され、且つ、一体的に形成された1部材を構成する、請求項1-3の何れか1項に記載の樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項5】
前記外筒と前記内筒とは、異なる材料によりそれぞれ成形されている、請求項1-3の何れか1項に記載の樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項6】
前記樹脂ジョイントは、
前記外筒を含む外筒部材と、
前記内筒を含み、前記外筒部材に接合される内筒部材と、
を備え、
前記外筒部材は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形され、
前記内筒部材は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形され、
前記環状空間の軸方向底部において、前記内筒部材は、前記外筒部材に当接した状態で配置され、
前記外筒部材と前記内筒部材との当接面が、溶着されている、請求項に記載の樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項7】
前記外筒部材と前記内筒部材と前記樹脂チューブとが相互に当接する領域が、溶着されている、請求項に記載の樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項8】
前記樹脂チューブは、複数層構造を有し、複数層のうち少なくとも1層が、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている、請求項1-7の何れか1項に記載の樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項9】
前記樹脂チューブ及び前記樹脂ジョイントの連結構造は、自動車の燃料供給ラインに適用される、請求項に記載の樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造。
【請求項10】
樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結方法であって、
前記樹脂ジョイントは、
レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形された外筒と、
前記外筒の内周面に対向して配置され、前記外筒の前記内周面との間に軸方向一方に開口を有する環状空間を形成する内筒と、
を備え、
前記外筒の前記内周面又は前記内筒の外周面には、径方向に突出し且つ周方向に延びる環状突起が形成され、
前記樹脂チューブの軸方向端部は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形され、
前記環状突起は、軸方向断面形状が湾曲凸状であると共に周方向全周に形成されており、
前記外筒の前記内周面の内径と前記内筒に形成された前記環状突起の最大高さの位置の外径との差、または、前記外筒に形成された前記環状突起の最大高さの位置の内径と前記内筒の前記外周面の外径との差は、前記樹脂チューブの無負荷状態における厚みである基準厚みよりも小さく、
前記樹脂チューブの前記軸方向端部を、前記環状空間に挿入させ、前記環状突起によって径方向に変形させ、且つ、径方向に変形した領域に前記外筒の前記内周面に当接する面を有する状態とさせ、
前記当接する面に向かってレーザ光を照射することによって、前記外筒の前記内周面と前記樹脂チューブにおける前記外筒の前記内周面に当接する面とをレーザ溶着させ、
前記樹脂チューブにおける前記内筒に形成された前記環状突起と前記外筒とによって径方向に挟まれた部分と、前記外筒と、を互いにレーザ溶着させるか、
または前記樹脂チューブにおける前記外筒に形成された前記環状突起と前記内筒とによって径方向に挟まれた部分と、前記外筒と、を互いにレーザ溶着させ、
前記樹脂ジョイントにおいて、前記環状突起は、軸方向の異なる位置に複数形成されており、
前記樹脂チューブの前記軸方向端部を、前記環状空間に挿入させることにより、軸方向の異なる位置に、前記樹脂チューブと前記外筒の前記内周面との互いの当接部位を複数形成し、
軸方向における、互いに隣り合う前記当接部位同士の間において、前記外筒の前記内周面と前記樹脂チューブの外周面との間に隙間が形成された状態にて、前記樹脂チューブと前記外筒とを互いにレーザ溶着させる、
樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造及び連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂チューブ(樹脂配管と同じ意味)と樹脂ジョイント(ニップルを含む)とがレーザ溶着されることが記載されている。特許文献1の図1には、樹脂ジョイントの外周面と樹脂チューブの内周面とがレーザ溶着された構成が記載されている。図2には、樹脂ジョイントの内周面と樹脂チューブの外周面とがレーザ溶着された構成が記載されている。図3には、樹脂ジョイントの凹凸状の外周面における凸部分と樹脂チューブの内周面とがレーザ溶着された構成が記載されている。図4には、樹脂ジョイントの凹凸状の内周面における凸面と樹脂チューブの外周面とがレーザ溶着された構成が記載されている。
【0003】
特許文献2にも、樹脂チューブと樹脂製品とがレーザ溶着されることが記載されている。特許文献3には、樹脂チューブの外周面と樹脂製品の内周面とがレーザ溶着又は摩擦溶接されることが記載されている。特許文献4には、樹脂チューブと樹脂製品とがスピン溶着されることが記載されている。特許文献5には、誘導加熱が可能な金属層又は磁性層を有する合成樹脂管と、熱可塑性合成樹脂のジョイントとが、合成樹脂管の誘導発熱層を発熱させることにより、合成樹脂管とジョイントが融着されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-172088号公報
【文献】特開2009-018576号公報
【文献】特表2017-53506号公報
【文献】特開2015-202685号公報
【文献】特開平5-196187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、スピン溶着は、溶着対象の2部材を相対的に回転させる必要がある。樹脂チューブは長さを有するため、スピン溶着に際して樹脂チューブを回転させることは容易ではない。一方、樹脂ジョイントは、一般に、単体としては、スピン溶着に際して回転させることは可能である。しかし、樹脂ジョイントに別の部材に取り付けられている状態においては、スピン溶着に際して、樹脂ジョイントを回転させることは容易ではない。従って、スピン溶着を適用することが容易ではない場合が存在する。
【0006】
一方、レーザ溶着は、スピン溶着のように相対回転を必要としないため、自由度が高い。ここで、レーザ溶着による高い接合強度を確保するためには、レーザを照射する前の状態において接合対象の2部材が当接していることが重要である。そこで、樹脂ジョイントに環状突起を形成することで、樹脂チューブを樹脂ジョイントの環状突起に倣って変形させることで、突起の領域にて2部材が当接した状態とすることができる。
【0007】
ここで、樹脂ジョイントは、樹脂チューブよりも硬質樹脂により成形される。従って、樹脂チューブを樹脂ジョイントに嵌め込む場合において、樹脂ジョイントが変形するのではなく、樹脂チューブが変形する。
【0008】
そして、樹脂ジョイントの内周面に径方向内方に突出する環状突起を形成した場合には、樹脂チューブを樹脂ジョイントの内周面に挿入することで、樹脂チューブが環状突起に倣って径方向内方に変形する。ここで、仮に、ゴムチューブを樹脂ジョイントの内周側に挿入する場合には、ゴムチューブの弾性力によって、ゴムチューブは環状突起に倣って縮径し、さらにゴムチューブのうち環状突起を通過した部位は拡径復帰することができる。
【0009】
しかし、樹脂チューブは、ゴムに比べて硬質である(高い剛性を有する)。そのため、樹脂チューブを樹脂ジョイントの内周面に挿入して、樹脂チューブが環状突起を通過すると、樹脂チューブは、環状突起に倣って周方向全体が均等に縮径するのではなく、周方向の一部が凹状に変形(周方向座屈)するおそれがある。このような状態では、周方向全周に亘って、2部材が当接していないため、レーザ溶着による接合強度を十分に確保できないおそれがある。
【0010】
一方、樹脂チューブを樹脂ジョイントの外周面に嵌装する場合には、樹脂チューブは、拡径変形することで、樹脂ジョイントの外周面に周方向全周に亘って当接する状態にできる。しかし、レーザ溶着を行うためには、溶着部位の外周側の部材が、レーザ光を透過する材料により成形される必要がある。つまり、当該場合には、樹脂チューブがレーザ光を透過する材料により成形されることになる。
【0011】
しかし、樹脂チューブは、種々の機能を求められるため、例えば複数層構造を有することがある。この場合、樹脂チューブがレーザ光を透過する材料に制限されたのでは、所望の機能を有する樹脂チューブに適用することができない場合がある。従って、樹脂チューブの材料は、レーザ光を透過する材料に制限されないようにすることが望まれる。
【0012】
本発明は、樹脂チューブがレーザ光を透過する材料に制限されることなく、樹脂チューブと樹脂ジョイントとのレーザ溶着領域を確実に当接した状態とすることができる樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造及び連結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1.樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造)
連結構造を構成する樹脂ジョイントは、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形された外筒と、前記外筒の内周面に対向して配置され、前記外筒の前記内周面との間に軸方向一方に開口を有する環状空間を形成する内筒とを備える。前記外筒の前記内周面又は前記内筒の外周面には、径方向に突出し且つ周方向に延びる環状突起が形成される。
【0014】
連結構造を構成する樹脂チューブの軸方向端部は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形される。前記樹脂チューブの前記軸方向端部は、前記環状空間に挿入され、前記環状突起に倣って径方向に変形し、径方向に変形した領域に前記外筒の前記内周面に当接する面を有し、前記外筒の前記内周面と前記樹脂チューブにおける前記外筒の前記内周面に当接する面とが、溶着されている。前記環状突起は、軸方向断面形状が湾曲凸状であると共に周方向全周に形成されている。前記外筒の前記内周面の内径と前記内筒に形成された前記環状突起の最大高さの位置の外径との差、または、前記外筒に形成された前記環状突起の最大高さの位置の内径と前記内筒の前記外周面の外径との差は、前記樹脂チューブの無負荷状態における厚みである基準厚みよりも小さい。前記樹脂チューブにおける前記内筒に形成された前記環状突起と前記外筒とによって径方向に挟まれた部分と、前記外筒と、が互いに溶着しているか、または前記樹脂チューブにおける前記外筒に形成された前記環状突起と前記内筒とによって径方向に挟まれた部分と、前記外筒と、が互いに溶着しており、前記環状突起は、軸方向の異なる位置に複数形成されており、前記樹脂チューブと前記外筒との溶着部は、軸方向の異なる位置に複数形成されており、軸方向における、互いに隣り合う前記溶着部同士の間には、前記外筒の前記内周面と前記樹脂チューブの外周面との間に隙間が形成されている
【0015】
樹脂チューブの軸方向端部は、樹脂ジョイントの環状空間に挿入されている。環状空間を形成する外筒又は内筒には、環状突起が形成されている。樹脂チューブの軸方向端部が環状空間に挿入された状態において、環状突起に倣って径方向に変形している。ここで、外筒の内周面に環状突起が形成されている場合には、環状突起の対向面である内筒の外周面が、樹脂チューブの周方向一部による凹状の変形(周方向座屈)を規制する支持面として作用する。内筒の外周面に環状突起が形成されている場合には、環状突起の対向面である外筒の内周面が、樹脂チューブの周方向一部による凹状の変形(周方向座屈)を規制する支持面として作用する。
【0016】
従って、樹脂チューブにおいて環状突起によって径方向に変形した領域は、樹脂ジョイントにおける環状突起とその対向面とによって全周に亘って径方向に圧縮された状態となる。その結果、樹脂チューブにおいて径方向に変形した領域には、外筒の内周面に全周に亘って当接する面を有する。特に、樹脂チューブは、樹脂ジョイントにおける環状突起とその対向面とによって、径方向に圧縮された状態になるため、樹脂チューブは、確実に、全周に亘って外筒の内周面に当接する。そして、外筒の内周面と樹脂チューブにおける外筒の内周面に当接する面とが、溶着されている。従って、溶着による接合強度を十分に確保することができる。
【0017】
また、樹脂ジョイントの外筒が、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されており、樹脂チューブは、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。従って、樹脂チューブは、レーザ光を透過する材料に制限されることがないため、種々の機能を有するものとすることができる。
【0018】
(2.樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結方法)
樹脂ジョイントは、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形された外筒と、前記外筒の内周面に対向して配置され、前記外筒の前記内周面との間に軸方向一方に開口を有する環状空間を形成する内筒とを備える。前記外筒の前記内周面又は前記内筒の外周面には、径方向に突出し且つ周方向に延びる環状突起が形成される。樹脂チューブの軸方向端部は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形される。前記環状突起は、軸方向断面形状が湾曲凸状であると共に周方向全周に形成されている。前記外筒の前記内周面の内径と前記内筒に形成された前記環状突起の最大高さの位置の外径との差、または、前記外筒に形成された前記環状突起の最大高さの位置の内径と前記内筒の前記外周面の外径との差は、前記樹脂チューブの無負荷状態における厚みである基準厚みよりも小さい。
【0019】
連結方法は、前記樹脂チューブの前記軸方向端部を、前記環状空間に挿入させ、前記環状突起によって径方向に変形させ、且つ、径方向に変形した領域に前記外筒の前記内周面に当接する面を有する状態とさせる。さらに、連結方法は、前記当接する面に向かってレーザ光を照射することによって、前記外筒の前記内周面と前記樹脂チューブにおける前記外筒の前記内周面に当接する面とをレーザ溶着させる。連結方法は、前記樹脂チューブにおける前記内筒に形成された前記環状突起と前記外筒とによって径方向に挟まれた部分と、前記外筒と、を互いにレーザ溶着させるか、または前記樹脂チューブにおける前記外筒に形成された前記環状突起と前記内筒とによって径方向に挟まれた部分と、前記外筒と、を互いにレーザ溶着させる。前記樹脂ジョイントにおいて、前記環状突起は、軸方向の異なる位置に複数形成されており、前記樹脂チューブの前記軸方向端部を、前記環状空間に挿入させることにより、軸方向の異なる位置に、前記樹脂チューブと前記外筒の前記内周面との互いの当接部位を複数形成し、軸方向における、互いに隣り合う前記当接部位同士の間において、前記外筒の前記内周面と前記樹脂チューブの外周面との間に隙間が形成された状態にて、前記樹脂チューブと前記外筒とを互いにレーザ溶着させる。
【0020】
当該連結方法によって、上記連結構造と同様に、レーザ溶着による接合強度を十分に確保することができる。また、樹脂チューブは、レーザ光を透過する材料に制限されることがないため、種々の機能を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第一例の連結構造を示す図であって、上半分が軸方向断面図を示し、下半分が外側から見た図を示す。
図2】第二例の連結構造を示す図であって、上半分が軸方向断面図を示し、下半分が外側から見た図を示す。
図3】第三例の連結構造を示す図であって、上半分が軸方向断面図を示し、下半分が外側から見た図を示す。
図4】第四例の連結構造を示す図であって、上半分が軸方向断面図を示し、下半分が外側から見た図を示す。
図5】第五例の連結構造を示す図であって、上半分が軸方向断面図を示し、下半分が外側から見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1.適用対象)
樹脂チューブと樹脂ジョイントの連結構造の対象は、例えば、自動車用部品、産業機械用部品、医療機器用部品等、種々の流体を流通させる流路に適用される。流通させる流体は、液体であってもよく、気体であってもよい。
【0023】
例えば、自動車用部品の例として、液体燃料や燃料蒸気等を流通させる流路に適用可能である。当該流体が燃料の例としてのガソリンの場合には、連結構造は、給油口から内燃機関までの燃料供給ラインに適用される。例えば、当該連結構造が燃料タンクと内燃機関との間を接続する燃料供給ラインに適用される場合には、樹脂チューブの一端が、燃料タンクに取り付けられたポンプに取り付けられ、樹脂ジョイントが、内燃機関のインジェクタに分配供給するフューエルデリバリパイプに取り付けられ、樹脂チューブの他端が、樹脂ジョイントに連結される。
【0024】
また、燃料供給ラインにおいて、給油口の一部を構成する樹脂ジョイントと、給油口と燃料タンクとを接続する樹脂チューブとを連結する構造に適用することもできる。また、給油口と燃料タンクとを接続する燃料供給ラインの途中において、樹脂チューブと樹脂ジョイントとの連結構造を適用することもできる。
【0025】
当該連結構造は、自動車用部品としては、燃料供給ラインに限られず、冷却液の配管、空調装置の冷媒配管、排気ガス配管等に適用することもできる。当該連結構造は、自動車用部品の他に、産業機械においても、各種流体、例えば、冷却用液体(油、水等)を流通させる流路に適用できる。当該連結構造は、医療機器においても、医療用流体を流通させる流路に適用できる。以下においては、当該連結構造は、自動車における燃料供給ラインを例にあげて説明する。
【0026】
(2.樹脂チューブ10の構成)
樹脂チューブ10について、図1を参照して説明する。樹脂チューブ10は、樹脂、例えば熱可塑性樹脂により成形されている。樹脂チューブ10は、長尺状に形成されたパイプ(配管)である。樹脂チューブ10の少なくとも軸方向端部は、筒状に形成されている。樹脂チューブ10の当該軸方向端部は、例えば、円筒状に形成されている。ただし、樹脂チューブ10の軸方向端部は、円筒状に限られず、非円筒状、例えば、楕円筒、角筒状に形成されるようにしてもよい。
【0027】
つまり、樹脂チューブ10の軸方向端部は、軸直角断面において、円、楕円、多角形等の内周面及び外周面を有する。また、樹脂チューブ10の軸方向端部における外周面及び内周面は、軸方向断面において、軸方向に平行な直線状に形成されるとよい。従って、樹脂チューブ10の厚みは、軸方向において一定となる。ただし、外周面及び内周面の少なくとも一方は、軸方向断面において、僅かであればテーパ状に形成されるようにしてもよい。
【0028】
樹脂チューブ10の軸方向端部は、樹脂ジョイント20よりも変形しやすい材料及び形状に形成されている。つまり、樹脂チューブ10の軸方向端部は、樹脂ジョイント20に対して低剛性に成形されている。
【0029】
また、樹脂チューブ10は、例えば、押出成形によって成形される。なお、樹脂チューブ10は、押出成形に限られず、ブロー成形等、種々の成形方法により成形することが可能である。樹脂チューブ10が押出成形により成形される場合には、樹脂チューブ10は、長手方向の全長に亘って同種の層構造により成形される。
【0030】
樹脂チューブ10は、自動車の燃料供給ラインに適用する場合には、液体燃料を流通可能な材料により成形されている。例えば、樹脂チューブ10は、複数層構造を有する。樹脂チューブ10は、種々の機能を発揮させるために、適宜異なる材料を各層に適用する。
【0031】
例えば、樹脂チューブ10は、内層、中間層、外層を含む3層以上の構造を有する。内層は、液体燃料(ガソリン)に触れる面であるため、耐ガソリン性を有する樹脂材料を適用する。例えば、内層は、高密度ポリエチレン(HDPE)を主体とする材料を適用する。ただし、内層は、上記性能を有する材料であれば、他の材料を用いることもできる。
【0032】
中間層は、内層の外周側に配置される。中間層は、例えば、耐燃料透過性を有する材料を適用する。例えば、中間層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)及びポリアミド(PA)系の何れかを主体とする材料を適用する。ただし、中間層は、上記性能を有する材料であれば、他の材料を用いることもできる。
【0033】
外層は、中間層の外周側に配置される。外層は、例えば、耐衝撃性、耐候性、耐薬品性を有する材料を適用する。例えば、外層は、高密度ポリエチレン(HDPE)及びポリアミド(PA)系の何れかを主体とする材料を適用する。ただし、外層は、上記性能を有する材料であれば、他の材料を用いることもできる。
【0034】
そして、樹脂チューブ10は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。例えば、樹脂チューブ10が、上記のように複数層構造を有する場合には、複数層のうち少なくとも1層が、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。もちろん、複数層の全ての樹脂材料が、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されるようにしてもよい。
【0035】
一般に、レーザ光を吸収する材料とレーザ光を透過する材料とを比較すると、レーザ光を吸収する材料の方が、種類が多い。従って、樹脂チューブ10の各層の機能を発揮する樹脂材料としてレーザ光を吸収可能な樹脂材料の中から選定することは、実質的に制限にならない。つまり、樹脂材料の選定自由度は、非常に高い。
【0036】
ここで、樹脂チューブ10が複数層構造を有する場合には、樹脂チューブ10の最外層がレーザ光を吸収可能な樹脂材料とするとよい。ただし、最外層の厚みが薄い場合には、最外層がレーザ光を透過可能であるとしても、最外層よりも内層側の層が、レーザ光を吸収可能な樹脂材料とすればよい。なお、後述するレーザ光の照射によって最外層よりも内層側の層により発生した熱が、最外層の表面に伝達される程度に、最外層の厚みが形成されていればよい。
【0037】
なお、樹脂チューブ10は、自動車の燃料供給ラインに適用される場合には複数層構造を有することが求められるが、自動車の燃料供給ライン以外であっても、要求される機能によって複数層構造を有することが求められる場合がある。当該用途においては、樹脂チューブ10は、樹脂材料の種類は異なるとしても、実質的に上記と同様に複数層構造により構成される。
【0038】
(3.第一例)
(3-1.第一例の樹脂ジョイント20の構成)
上述した樹脂チューブ10の軸方向端部に連結される第一例の樹脂ジョイント20の構成について、図1を参照して説明する。樹脂ジョイント20は、樹脂チューブ10と他の部材とを連結するジョイント機能を有すればよい。ただし、樹脂ジョイント20は、他の部材に対して別体で形成される場合に限られず、他の部材の一部として機能する場合を含む。つまり、樹脂ジョイント20は、樹脂チューブ10との接続部位として機能する部材であればよい。
【0039】
樹脂ジョイント20は、例えば、自動車の燃料供給ラインにおいて、インジェクタに分配供給するフューエルデリバリパイプに取り付けられている接続部位として適用される。また、樹脂ジョイント20は、給油口の一部として適用してもよい。また、樹脂ジョイント20は、燃料供給ラインにおいて、給油口と燃料タンクとを接続する流路の途中、燃料タンクと内燃機関とを接続する流路の途中等に適用することもできる。
【0040】
樹脂ジョイント20は、樹脂チューブ10との間で、流体を流通させる機能を有する。そして、樹脂ジョイント20は、樹脂チューブ10に接続される部位において、外筒21及び内筒22を備える。樹脂ジョイント20は、外筒21及び内筒22の他に、樹脂チューブ10との間で流体を流通させる相手部材に接続されている。
【0041】
外筒21及び内筒22は、樹脂、例えば、熱可塑性樹脂により成形されている。なお、樹脂ジョイント20において、外筒21及び内筒22以外の部位は、外筒21及び内筒22と同種の樹脂材料により成形してもよいし、異種の樹脂材料により成形してもよいし、樹脂以外の材料により成形してもよい。また、外筒21及び内筒22は、樹脂チューブ10の軸方向端部に比べて高い剛性を有する。つまり、外筒21及び内筒22は、樹脂チューブ10の軸方向端部よりも変形しにくい。外筒21及び内筒22は、樹脂チューブ10の樹脂材料に対して硬質な樹脂材料が用いられるとよい。
【0042】
外筒21と内筒22は、径方向に対向して配置されており、外筒21の内周面と内筒22の外周面との間に、軸方向一方に開口を有する環状空間30を形成する。当該環状空間30に、樹脂チューブ10の軸方向端部が挿入される。
【0043】
以下、外筒21及び内筒22について詳細に説明する。本例においては、外筒21と内筒22とは、同種の樹脂材料により成形されており、一体的に形成された1つの部材を構成する。例えば、外筒21と内筒22とは、射出成形等により同時に成形される。
【0044】
外筒21は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。外筒21の内周面は、樹脂チューブ10の外周面とほぼ同様の形状に形成されている。従って、樹脂チューブ10の外周面の軸直角断面が円である場合には、外筒21の内周面の軸直角断面は、円に形成されている。また、外筒21の内周面の軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されている。ただし、外筒21の内周面において、環状空間30の開口側の端は、面取りが形成されている。つまり、外筒21の内周面において面取り以外の部位は、軸方向断面において、軸方向に平行な直線状に形成されている。また、外筒21の内周面の内径は、樹脂チューブ10が挿入可能となるように、樹脂チューブ10の外周面の外径と同一又は僅かに大きく形成されている。
【0045】
外筒21の外周面は、任意の形状とすることができる。外筒21の厚みは、全周に亘って同一としてもよいし、周方向において部位に応じて異ならせてもよい。また、外筒21の厚みは、軸方向において、同一としてもよいし、異なるようにしてもよい。例えば、外筒21の内周面が円筒状である場合に、外筒21の外周面も円筒状とする。この場合、外筒21は、周方向において全周厚みが同一となる、軸方向において厚みが同一となる。
【0046】
内筒22は、本例においては外筒21と同種の樹脂材料により成形されているため、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。内筒22は、外筒21の内周面に対向して配置されており、外筒21の内周面との間に軸方向一方に開口を有する環状空間30を形成する。
【0047】
内筒22は、内筒本体22aと、1又は複数の環状突起22bとを備える。内筒本体22aの外周面は、樹脂チューブ10の内周面とほぼ同様の形状に形成されている。従って、樹脂チューブ10の内周面の軸直角断面が円である場合には、内筒本体22aの外周面の軸直角断面は、円に形成されている。また、内筒本体22aの外周面の軸方向断面形状は、軸方向に平行な直線状に形成されている。ただし、内筒本体22aの外周面において、環状空間30の開口側の端は、面取りが形成されている。つまり、内筒本体22aの外周面において面取り以外の部位は、軸方向断面において、軸方向に平行な直線状に形成されている。
【0048】
内筒本体22aの外周面の外径は、樹脂チューブ10の内周面の内径と同一としてもよいし、僅かに小さくしてもよいし、僅かに大きくしてもよい。内筒本体22aの外周面の外径が樹脂チューブ10の内周面の内径と同一又は小さい場合には、樹脂チューブ10が環状空間30に挿入される際に、内筒本体22aは、樹脂チューブ10を変形させることはない。内筒本体22aの外周面の外径が樹脂チューブ10の内周面の内径より大きい場合には、樹脂チューブ10が環状空間30に挿入されることで、内筒本体22aは樹脂チューブ10を拡径変形させることになる。
【0049】
また、内筒本体22aの外周面の外径と外筒21の内周面の内径との差は、樹脂チューブ10の厚みと同一又は僅かに大きく形成されている。つまり、内筒本体22aの外周面と外筒21の内周面との対向空間には、樹脂チューブ10との間に径方向隙間を有した状態で樹脂チューブ10が挿入可能となる。
【0050】
環状突起22bは、内筒本体22aの外周面に形成されており、内筒本体22aよりも径方向外方に突出する。環状突起22bは、内筒本体22aの周方向全周に延びるように形成されている。環状突起22bの軸方向断面形状は、湾曲凸状、例えば円弧凸状に形成されている。環状突起22bの軸方向断面形状は、周方向全周に亘って、同一に形成されている。また、環状突起22bの径方向高さは、周方向全周に亘って、同一に形成されている。
【0051】
ここで、環状突起22bは、外筒21の内周面のうち軸方向断面形状が直線状の領域に対して径方向に対向する位置に形成されている。環状突起22bの最大高さの位置の外径と外筒21の内周面の内径との差は、樹脂チューブ10の厚みよりも小さく形成されている。つまり、環状突起22bが形成されている領域においては、樹脂チューブ10は厚み方向に圧縮変形された状態となる。
【0052】
本例においては、環状突起22bは、軸方向の異なる位置に複数形成されている。特に、環状突起22bは、2個形成されている場合を例示する。なお、環状突起22bは、軸方向の1箇所のみに1つ形成されるようにしてもよい。
【0053】
(3-2.第一例の連結構造及び連結方法)
次に、上述した樹脂チューブ10と樹脂ジョイント20との連結構造及び連結方法について図1を参照して説明する。
【0054】
樹脂チューブ10の軸方向端部を樹脂ジョイント20に形成される環状空間30に挿入する。ここで、環状空間30の開口付近には、環状突起22bが形成されていないため、最初に、外筒21と内筒本体22aとにより形成される径方向隙間に、樹脂チューブ10が挿入される(初期挿入工程)。ここで、樹脂ジョイント20の外筒21の内周面の内径と内筒本体22aの外周面の外径との差は、樹脂チューブ10の厚みと同一又は僅かに大きい。従って、樹脂チューブ10は、径方向に圧縮されることなく、環状空間30の開口付近に挿入される。
【0055】
続いて、樹脂チューブ10がさらに奥側へ挿入されると、樹脂チューブ10が1又は複数の環状突起22bを通過する(環状突起通過工程)。そして、樹脂チューブ10の軸方向の先端が、環状空間30の底面に到達する。
【0056】
ここで、環状突起22bが形成されている軸方向領域において、樹脂チューブ10の対象領域11は、環状突起22bに倣って径方向に変形する。環状突起22bの最大高さの位置の外径と外筒21の内周面の内径との差は、樹脂チューブ10の基準厚み(無負荷厚み)よりも小さく形成されている。そのため、環状突起22bが形成されている軸方向領域において、樹脂チューブ10の対象領域11は、厚み方向に圧縮変形された状態となる。
【0057】
また、外筒21の内周面のうち環状突起22bに対向する領域は、樹脂チューブ10が環状突起22bを通過する際に、樹脂チューブ10の周方向一部による凹状の変形(周方向座屈)を規制する支持面として作用する。従って、樹脂チューブ10において環状突起22bによって径方向に変形した対象領域11は、樹脂ジョイント20における環状突起22bとその対向面である外筒21の内周面とによって全周に亘って径方向に圧縮された状態となる。
【0058】
その結果、樹脂チューブ10において径方向に変形した対象領域11は、外筒21の内周面に全周に亘って当接する面を有する。特に、樹脂チューブ10の対象領域11は、環状突起22bとその対向面である外筒21の内周面とによって、径方向に圧縮された状態になるため、樹脂チューブ10の対象領域11は、確実に、全周に亘って外筒21の内周面に当接する。
【0059】
続いて、環状突起22bの軸方向領域において、外筒21の内周面と樹脂チューブ10の対象領域11の外周面とが当接する面に、全周に亘って、外筒21の外周面からレーザ光を照射する(レーザ光照射工程)。外筒21は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。一方、樹脂チューブ10は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。
【0060】
従って、照射されたレーザ光は、外筒21を透過して、樹脂チューブ10にて吸収される。そのため、レーザ光が吸収された部位にて発熱する。レーザ光が吸収された部位は、外筒21の内周面と樹脂チューブ10の対象領域11の外周面とがしっかりと当接している。従って、レーザ光の照射によって、環状突起22bの軸方向領域において、外筒21の内周面と樹脂チューブ10の対象領域11の外周面との当接部位40がレーザ溶着される。このようにして、樹脂チューブ10と樹脂ジョイント20との連結構造が完成する。
【0061】
以上より、環状突起22bによって外筒21の内周面と樹脂チューブ10の対象領域11の外周面とが全周に亘って圧縮した状態で当接しており、この当接部位40が全周に亘ってレーザ溶着されている。従って、樹脂チューブ10と樹脂ジョイント20との連結構造において、レーザ溶着による接合強度を十分に確保することができる。
【0062】
また、樹脂ジョイント20の外筒21は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されており、樹脂チューブ10は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。従って、樹脂チューブ10は、レーザ光を透過する材料に制限されることがないため、種々の機能を有するものとすることができる。
【0063】
また、本例においては、内筒22に環状突起22bが形成されている。つまり、樹脂チューブ10の内周面と環状突起22bとの当接部位における面圧は、非常に高い。従って、樹脂チューブ10及び樹脂ジョイント20を流通させる流体が、環状空間30に進入してきたときに、面圧の高い当該部位が、高いシール機能を有する。
【0064】
(4.第二例の連結構造及び連結方法)
第二例の樹脂ジョイント50の構成について図2を参照して説明する。なお、第二例において、第一例と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
樹脂ジョイント50は、外筒部材51及び内筒部材52を備える。本例における外筒部材51及び内筒部材52は、別体の部材で異なる材料によりそれぞれ成形され、且つ、接合されている。ここで、本例における樹脂ジョイント50の全体形状は、第一例の樹脂ジョイント20の全体形状と同一である。従って、樹脂チューブ10と樹脂ジョイント50との連結構造としては、同一構造を有することになる。以下、樹脂ジョイント50を構成する外筒部材51及び内筒部材52について説明する。
【0066】
外筒部材51は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。外筒部材51は、外筒51aを含んで構成される。本例においては、外筒部材51は、外筒51aのみにより構成される。なお、本例における外筒51aは、第一例の外筒21と同一の構成を有する。
【0067】
内筒部材52は、外筒部材51とは別部材として成形されており、外筒部材51とは異なる樹脂材料により成形されている。例えば、内筒部材52は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されてもよいし、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されてもよいし、レーザ光を一部透過可能な樹脂材料(例えば半透明の樹脂材料)により成形されてもよい。内筒部材52は、内筒52aと内筒基部52bとを備える。内筒52aは、第一例の内筒22と同一の構成を有する。なお、内筒52aは、環状空間30における内側の部分を構成する。
【0068】
内筒基部52bは、内筒52aの軸方向基端(図2の左端)に一体的に構成されている。内筒基部52bは、環状空間30の軸方向底部を構成する。内筒基部52bは、内筒52aよりも厚みが厚く形成されている。内筒基部52bの軸方向に法線を有する面(軸方向端面)には、外筒部材51の軸方向の基端面が当接し且つ接合している。内筒基部52bと外筒部材51とは、スピン溶着、レーザ溶着、接着剤等、種々の手段により接合される。
【0069】
樹脂ジョイント50が形成された後においては、第一例の連結方法と同様の方法によって、樹脂チューブ10と樹脂ジョイント50とを連結する。このようにして、樹脂チューブ10と樹脂ジョイント50との連結構造が完成する。
【0070】
本例によれば、外筒部材51と内筒部材52とが、別部材とされ、異なる樹脂材料により成形されている。従って、樹脂ジョイント50の一部である外筒部材51のみがレーザ光を透過可能な樹脂材料により成形すればよい。従って、樹脂ジョイント50の残りの部位である内筒部材52は、レーザ光を透過可能な樹脂材料に制限されることなく、樹脂材料の選定自由度が高くなる。
【0071】
なお、外筒部材51と内筒部材52との接合は、樹脂チューブ10を接合する前に行うことができるため容易である。さらに、外筒部材51と内筒部材52との接合方法にも、何ら制約はない。
【0072】
また、本例においては、内筒部材52が内筒52aに加えて内筒基部52bを有することとした。この他に、外筒部材51が、内筒基部52bに相当する部位として、外筒基部(図示せず)を有するようにしてもよい。この場合、内筒部材52が、内筒52aのみにより構成され、内筒部材52が、外筒部材51の外筒基部に接合されることになる。
【0073】
(5.第三例の連結構造及び連結方法)
第三例の樹脂ジョイント60の構成について図3を参照して説明する。なお、第三例において、第一例及び第二例と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。樹脂ジョイント60は、外筒部材61及び内筒部材62を備える。本例における外筒部材61及び内筒部材62は、別体の部材で異なる材料によりそれぞれ成形され、且つ、接合されている。
【0074】
外筒部材61は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。外筒部材61は、外筒61aと外筒基部61bとを備える。外筒61aは、第一例の外筒21と同一の構成を有する。外筒基部61bは、外筒61aの軸方向基端(図3の左端)に一体的に構成されている。外筒基部61bは、環状空間30の軸方向底部の軸方向領域の一部を構成し、外筒61aの軸方向基端から軸方向に延長した部位である。本例では、外筒基部61bは、外筒61aの軸直角断面形状と同一形状を有している。
【0075】
内筒部材62は、外筒部材61とは別部材として成形されており、外筒部材61とは異なる樹脂材料により成形されている。内筒部材62は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。内筒部材62は、内筒62aと内筒基部62bとを備える。
【0076】
内筒62aは、第一例の内筒22と同一の構成を有する。内筒基部62bは、内筒62aの軸方向基端(図3の左端)に一体的に構成されている。内筒基部62bは、環状空間30の軸方向底部を構成する。特に、本例においては、内筒基部62bの外周面の角には、切欠状の段部が形成されている。そして、環状空間30の軸方向底部において、内筒基部62bは、外筒基部61bに当接した状態で配置されている。
【0077】
詳細には、内筒基部62bの外周面に、外筒基部61bの内周面が当接している。特に、内筒基部62bの段部の外周面に、外筒基部61bの内周面が当接している。さらに、内筒基部62bの段部の軸方向端面に、外筒基部61bの軸方向端面が当接している。従って、外筒部材61が、内筒部材62に対して、軸方向及び径方向に位置決めされる。
【0078】
そして、内筒基部62bと外筒基部61bとの当接面41は、レーザ溶着されている。レーザ溶着は、以下のように行われる。まず、内筒部材62における内筒基部62bの外周面に、外筒部材61の外筒基部61bを嵌合させる。そして、外筒基部61bの内周面と内筒基部62bの外周面とを当接させた状態とする。この状態において、外筒基部61bと内筒基部62bとが当接する面41に、全周に亘って、外筒基部61bの外周面からレーザ光を照射する(第二レーザ光照射工程)。
【0079】
ここで、外筒基部61bは、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。一方、内筒基部62bは、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。従って、照射されたレーザ光は、外筒基部61bを透過して、内筒基部62bに吸収される。そのため、レーザ光が吸収された部位にて発熱する。そして、外筒基部61bと内筒基部62bとの当接面41がレーザ溶着される。このようにして、樹脂ジョイント60が完成する。
【0080】
樹脂ジョイント60が形成された後においては、第一例の連結方法と同様の方法によって、樹脂チューブ10と樹脂ジョイント60とを連結する。このようにして、樹脂チューブ10と樹脂ジョイント60との連結構造が完成する。
【0081】
なお、本例においては、外筒基部61bが外筒61aを軸方向に延長した形状とし、内筒基部62bが内筒62aより厚く形成し、且つ、内筒基部62bが環状空間30の軸方向底部を構成することとした。この他に、内筒基部62bが内筒62aを軸方向に延長した形状とし、外筒基部61bが外筒61aより厚く形成し、且つ、外筒基部61bが環状空間30の軸方向底部を構成するようにしてもよい。
【0082】
また、上記の連結方法の他に、以下のようにすることもできる。樹脂ジョイント60を構成する外筒部材61と内筒部材62とは、樹脂チューブ10の挿入前に予め接合するのではなく、別体の状態のままとする。つまり、別体である外筒部材61と内筒部材62と樹脂チューブ10とを、それぞれ接合されていない状態で、図3に示す状態となるように配置する。その後に、レーザ光を照射することにより、樹脂チューブ10と外筒61aとを溶着し、且つ、外筒基部61bと内筒基部62bとを溶着する。このような連結方法であっても、上記同様に上述した連結構造を形成することができる。
【0083】
(5.第四例の連結構造及び連結方法)
第四例の樹脂ジョイント70の構成について図4を参照して説明する。なお、第四例において、第一例、第二例及び第三例と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。樹脂ジョイント70は、外筒部材71及び内筒部材72を備える。本例における外筒部材71及び内筒部材72は、別体の部材で異なる材料によりそれぞれ成形され、且つ、接合されている。ここで、外筒部材71は、第三例の外筒部材61と同一の構成を有する。
【0084】
内筒部材72は、外筒部材71とは別部材として成形されており、外筒部材71とは異なる樹脂材料により成形されている。内筒部材72は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。内筒部材72は、内筒72aと内筒基部72bとを備える。
【0085】
内筒72aは、第一例の内筒22に対して、さらに、基端環状突起72a1を備える。基端環状突起72a1は、内筒本体22aの外周面のうち環状空間30の軸方向底部側に形成されており、内筒本体22aよりも径方向外方に突出する。基端環状突起72a1は、環状突起22bと実質的に同様の突起である。内筒基部72bは、第三例の内筒基部62bと同一の構成を有する。
【0086】
このように構成される樹脂ジョイント70と樹脂チューブ10との連結方法について説明する。まず、樹脂ジョイント70を構成する内筒部材72における内筒基部72bの外周面に、外筒部材71の外筒基部61bを嵌合させる。このとき、内筒基部72bと外筒基部61bとは接合されていない状態である。
【0087】
続いて、樹脂チューブ10を、外筒61aと内筒72aとにより形成される環状空間30に、樹脂チューブ10の軸方向端部を挿入する。樹脂チューブ10が環状突起22bを通過し、さらに樹脂チューブ10の最先端12が基端環状突起72a1に到達する。そうすると、樹脂チューブ10の最先端12は、基端環状突起72a1に倣って径方向に変形する。樹脂チューブ10における環状突起22bの領域と同様に、樹脂チューブ10の最先端12は、基端環状突起72a1と外筒61aとにより厚み方向に圧縮変形された状態となる。
【0088】
この状態において、領域42において、樹脂チューブ10の最先端12の外周面が、外筒61aの内周面に当接し、樹脂チューブ10の最先端12の軸方向端面が、内筒基部72bの軸方向端面に当接する。さらに、領域42においては、外筒基部61bの内周面と内筒基部72bの外周面とが当接する。
【0089】
続いて、領域42に、レーザ光を照射する(第三レーザ光照射工程)。外筒部材71は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。一方、樹脂チューブ10及び内筒基部62bは、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。従って、照射されたレーザ光は、外筒部材71を透過して、樹脂チューブ10の最先端12及び内筒基部62bに吸収される。そして、外筒部材71と内筒部材72と樹脂チューブ10とが相互に当接する領域42が、レーザ溶着されている。つまり、当該領域42において、樹脂チューブ10の最先端12、内筒基部62b、及び、外筒部材71が、相互にレーザ溶着される。
【0090】
また、第一例と同様に、樹脂チューブ10の対象領域11と外筒61aの内周面との当接部位40がレーザ溶着される。なお、当接部位40のレーザ溶着と、領域42のレーザ溶着とは、どちらを先に行ってもよい。
【0091】
(7.第五例)
(7-1.第五例の樹脂ジョイント80の構成)
第五例の樹脂ジョイント80の構成について図5を参照して説明する。なお、第五例において、第一例と同一構成については、同一符号を付して説明を省略する。樹脂ジョイント80は、外筒81と内筒82とを備える。外筒81と内筒82は、第一例と同様に、同種の樹脂材料により成形されており、一体的に形成された1つの部材を構成する場合を例にあげる。ただし、第二例乃至第四例のように、外筒81と内筒82とを別部材とすることもできる。
【0092】
ここで、上記の例では、環状突起22bが、内筒22,52a,62a,72aに形成されている場合とした。本例では、環状突起81bが、外筒81に形成されている場合である。
【0093】
外筒81は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。外筒81は、外筒本体81aと、1又は複数の環状突起81bとを備える。外筒本体81aの内周面は、樹脂チューブ10の外周面とほぼ同様の形状に形成されている。環状突起81bは、外筒本体81aの内周面に形成されており、外筒本体81aよりも径方向内方に突出する。環状突起81bは、外筒本体81aの周方向全周に延びるように形成されている。なお、環状突起81bの詳細は、実質的に、第一例における環状突起22bと同様である。内筒82は、第一例の内筒本体22aに相当する部分により形成されている。
【0094】
(7-2.第五例の連結構造及び連結方法)
次に、上述した樹脂チューブ10と樹脂ジョイント80との連結構造及び連結方法について図5を参照して説明する。
【0095】
樹脂チューブ10の軸方向端部を樹脂ジョイント80に形成される環状空間30に挿入する(初期挿入工程)。そして、樹脂チューブ10を奥側まで挿入すると、樹脂チューブ10が1又は複数の環状突起81bを通過する(環状突起通過工程)。そして、樹脂チューブ10の軸方向の先端が、環状空間30の底面に到達する。
【0096】
ここで、環状突起81bが形成されている軸方向領域において、樹脂チューブ10の対象領域11は、環状突起81bに倣って径方向に変形する。環状突起81bの最大高さの位置の外径と内筒82の外周面の内径との差は、樹脂チューブ10の基準厚み(無負荷厚み)よりも小さく形成されている。そのため、環状突起81bが形成されている軸方向領域において、樹脂チューブ10の対象領域11は、厚み方向に圧縮変形された状態となる。
【0097】
また、内筒82の外周面のうち環状突起81bに対向する領域は、樹脂チューブ10が環状突起81bを通過する際に、樹脂チューブ10の周方向一部による凹状の変形(周方向座屈)を規制する支持面として作用する。従って、樹脂チューブ10において環状突起81bによって径方向に変形した対象領域11は、樹脂ジョイント20における環状突起81bとその対向面である内筒82の外周面とによって全周に亘って径方向に圧縮された状態となる。
【0098】
その結果、樹脂チューブ10において径方向に変形した対象領域11は、外筒81の内周面のうち環状突起81bに全周に亘って当接する面を有する。特に、樹脂チューブ10の対象領域11は、環状突起81bとその対向面である内筒82の外周面とによって、径方向に圧縮された状態になるため、樹脂チューブ10の対象領域11は、確実に、全周に亘って外筒81の環状突起81bの内周面に当接する。
【0099】
続いて、環状突起81bの軸方向領域において、外筒81の環状突起81bの内周面と樹脂チューブ10の対象領域11の外周面とが当接する面に、全周に亘って、外筒81の外周面からレーザ光を照射する(レーザ光照射工程)。外筒81は、レーザ光を透過可能な樹脂材料により成形されている。一方、樹脂チューブ10は、レーザ光を吸収可能な樹脂材料により成形されている。
【0100】
従って、照射されたレーザ光は、外筒81を透過して、樹脂チューブ10にて吸収される。そのため、レーザ光が吸収された部位にて発熱する。レーザ光が吸収された部位は、外筒81の環状突起81bの内周面と樹脂チューブ10の対象領域11の外周面とがしっかりと当接している。従って、レーザ光の照射によって、環状突起81bの軸方向領域において、外筒81の環状突起81bの内周面と樹脂チューブ10の対象領域11の外周面との当接部位43がレーザ溶着される。このようにして、樹脂チューブ10と樹脂ジョイント80との連結構造が完成する。
【符号の説明】
【0101】
10:樹脂チューブ、20,50,60,70,80:樹脂ジョイント、21,51a,61a,81:外筒、22,52a,62a,72a,82:内筒、22a:内筒本体、22b:環状突起、30:環状空間、51,61,71:外筒部材、52,62,72:内筒部材、52b,62b,72b:内筒基部、61b:外筒基部、72a1:基端環状突起、81a:外筒本体、81b:環状突起
図1
図2
図3
図4
図5