(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】水素製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/00 20060101AFI20240125BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20240125BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240125BHJP
C01B 3/48 20060101ALN20240125BHJP
H01M 8/0606 20160101ALN20240125BHJP
【FI】
C01B3/00 Z
C01B3/38
C01B3/56 Z
C01B3/48
H01M8/0606
(21)【出願番号】P 2019226795
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 晃平
(72)【発明者】
【氏名】櫛 拓人
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 広基
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-179487(JP,A)
【文献】特開2012-111981(JP,A)
【文献】特開平08-155242(JP,A)
【文献】特開2013-040648(JP,A)
【文献】特表2008-525301(JP,A)
【文献】特開2020-008039(JP,A)
【文献】特公昭50-002878(JP,B1)
【文献】特開2014-014797(JP,A)
【文献】特開2001-214753(JP,A)
【文献】安全弁,ウィキペディア (Wayback Machine),[online],2019年03月31日,[令和5年8月17日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20190331095408/https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%85%A8%E5%BC%81>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 6/34
H01M 8/04 - 8/0668
F17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素を改質して水素を主成分とした改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器によって生成された改質ガスを圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機によって圧縮された改質ガスから水素ガスを精製する水素精製器と、
前記水素精製器によって精製されて供給対象設備へ向かう水素ガスが流れる水素供給管と、
前記水素供給管に配置され、前記水素精製器側の水素ガスの圧力が予め決められた設定圧力以上で、前記供給対象設備側への水素ガスの流れを許容する許容部材と、
前記水素供給管に配置される逆止弁と、
前記水素供給管において前記逆止弁に対して上流側の部分から分岐しているベント管と、
前記ベント管の途中に配置され、前記水素供給管の水素ガスの圧力が、前記設定圧力より大きい過大圧力以上となると前記ベント管の下流側への水素ガスの流れを許容する他の許容部材と、
を備える水素製造装置。
【請求項2】
前記水素供給管において前記許容部材に対して下流側に配置され、前記水素精製器によって精製された水素ガスを一旦貯留する水素ホルダを備える
請求項1に記載の水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の水素製造装置では、原料炭化水素を水蒸気改質装置によって改質された改質ガスが、PSA(Pressure Swing Adsorption)装置(水素精製器)へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、水素製造装置の水素精製器で精製された水素ガスは、水素ガスの圧力に関わらず水素供給管を流れて工場等の供給対象設備へ供給される。ここで、例えば、供給対象設備で消費する水素ガスの量が変化すると、水素供給管の水素ガスの圧力が変動することがある。この水素ガスの圧力変動によって、水素精製器側の水素ガスの圧力が変動してしまうことがある。
【0005】
本発明の課題は、水素ガスの圧力に関わらず水素ガスが水素供給管を流れる場合と比して、水素供給管の水素ガスの圧力変動に起因して、水素精製器側の水素ガスの圧力が低下するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る水素製造装置は、炭化水素を改質して水素を主成分とした改質ガスを生成する改質器と、前記改質器によって生成された改質ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された改質ガスから水素ガスを精製する水素精製器と、前記水素精製器によって精製されて供給対象設備へ向かう水素ガスが流れる水素供給管と、前記水素供給管に配置され、前記水素精製器側の水素ガスの圧力が予め決められた設定圧力以上で、前記供給対象設備側への水素ガスの流れを許容する許容部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によると、圧縮手段が、改質ガスを圧縮し、水素精製器は、圧縮された改質カスから水素ガスを精製する。さらに、水素精製器によって精製されて供給対象設備へ向かう水素ガスが流れる水素供給管に配置された許容部材は、水素精製器側の水素ガスの圧力が設定圧力以上で、供給対象設備側への水素ガスの流れを許容する。
【0008】
ここで、例えば、供給対象設備で消費する水素ガスの量が変化することで、水素供給管の水素ガスの圧力が変動してしまうことがある。しかし、水素供給管には、許容部材が配置されている。つまり、水素供給管において許容部材の上流側の部分では、水素ガスの圧力が設定圧力以上となっている。
【0009】
このため、水素ガスの圧力に関わらず水素ガスが水素供給管を流れる場合と比して、水素供給管の水素ガスの圧力変動に起因して、水素精製器側の水素ガスの圧力が低下するのを抑制することである。
【0010】
第2態様に係る水素製造装置は、第1態様に記載の水素製造装置において、前記水素供給管に配置される逆止弁と、前記水素供給管において前記逆止弁に対して上流側の部分から分岐しているベント管と、前記ベント管の途中に配置され、前記水素供給管の水素ガスの圧力が、前記設定圧力より大きい過大圧力以上となると前記ベント管の下流側への水素ガスの流れを許容する他の許容部材と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、逆止弁が、水素ガスの水素精製器側への流れを制限する。さらに、ベント管の途中に配置され他の許容部材が、水素供給配管の水素ガスの圧力が、設定圧力より大きい過大圧力以上となるとベント管の下流側への水素ガスの流れを許容する。
【0012】
ここで、例えば、供給対象設備で消費する水素ガスの量が変化によって、水素供給管の水素ガスの圧力が変動してしまい、水素ガスが逆方向へ流れようとすることがある。しかし、このような場合でも、逆止弁を設けることで、水素ガスの水素精製器側への流れは制限される。また、逆止弁が水素ガスの流れを制限することで、水素供給配管の水素ガスの圧力が過大に高くなることがある。
【0013】
しかし、ベント管の途中には、他の許容部材が配置されている。これにより、他の許容部材が設けられていない場合と比して、水素供給配管の水素ガスが過大圧力以上となるのを抑制することができる。
【0014】
第3態様に係る水素製造装置は、第1又は2態様に記載の水素製造装置において、前記水素供給管において前記許容部材に対して下流側に配置され、前記水素精製器によって精製された水素ガスを一旦貯留する水素ホルダを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、水素供給管において許容部材に対して下流側には、水素精製器によって精製された水素ガスを一旦貯留する水素ホルダが配置されている。このため、水素ホルダが配置されない場合と比して、水素供給管の水素ガスの圧力変動に起因して、水素精製器側の水素ガスの圧力が変化するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水素ガスの圧力に関わらず水素ガスが水素供給管を流れることができる場合と比して、水素供給管の水素ガスの圧力変動に起因して、水素精製器側の水素ガスの圧力が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る水素製造装置を示した概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた検出装置を示した構成図である。
【
図3】(A)(B)本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた水素精製器を示し、吸着脱着工程を示した工程図である。
【
図4】(A)(B)本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた水素精製器を示し、吸着脱着工程を示した工程図である。
【
図5】(A)(B)本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた水素精製器を示し、吸着脱着工程を示した工程図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた水素精製器を示し、吸着脱着工程を示した工程図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた水素精製器の制御部を示した機能ブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた水素精製器の切換制御のタイミングチャートと、各吸着塔の内部圧力変化を示す図である。
【
図9】(A)(B)本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた背圧弁を示した断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る水素製造装置に備えられた製品水素供給管の圧力変動をグラフで示した図面である。
【
図11】本発明の実施形態に対する比較形態に係る水素製造装置を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る水素製造装置の一例を
図1~
図11に従って説明する。
【0019】
(水素製造装置10)
実施形態に係る水素製造装置10は、
図1に示されるように、脱硫器60と、改質器12と、圧縮機14と、水素精製器16と、オフガスタンク18と、昇圧前水分離部30と、昇圧後水分離部32と、燃焼排ガス水分離部34とを備えている。さらに、水素製造装置10は、水素濃度を検出する検出装置52と、逆止弁66と、背圧弁70と、水素ホルダ50とを備えている。
【0020】
この水素製造装置10は、炭化水素原料(原料ガス)から水素を製造するものであり、本実施形態では、炭化水素原料の一例としてメタンを主成分とする都市ガスが用いられる場合について説明する。なお、
図1では、水素製造装置10の構成を概略的に示しており、水素製造装置10は、他の構成を含んでいてもよい。
【0021】
〔脱硫器60〕
脱硫器60は、常温下で原料ガスを吸着剤に流通させることで吸着剤が硫黄化合物を吸着し、硫黄化合物を除去する常温脱硫方式の脱硫器である。脱硫器60は、原料ガスとして都市ガスを供給するための原料供給管P1の途中に配置されている。
【0022】
脱硫器60の出口側に、脱硫処理された都市ガスを送出する、原料供給管P1の下流側の部分が接続されている。原料供給管P1は、
図1に示されるように、原料分岐管P1A、及び原料分岐管P1Bに分岐されている。
【0023】
原料分岐管P1Aは、後述する改質器12の一部(燃焼部28)に接続され、原料分岐管P1Bは、改質器12に接続されている。
【0024】
〔改質器12〕
改質器12は、脱硫処理された都市ガスと改質用の水とを混合しつつ加熱し、混合ガスを発生させる予熱流路22と、水蒸気改質反応によって、混合ガスから水素を主成分とする改質ガスG1を生成する改質触媒層24とを備える。また、改質器12は、改質反応の熱源となる燃焼部28を備える。改質ガスG1には、水素、一酸化炭素、水蒸気、メタンが含まれている。
【0025】
また、改質器12は、改質ガスG1に含まれる一酸化炭素と水蒸気とを反応させて、水素と二酸化炭素とに変換するCO変成触媒層26を備える。CO選択酸化触媒層を経た改質ガスG2では、改質ガスG1に比べ、一酸化炭素が低減される。改質器12としては、筒状の部材を同心円状に配置して構成される多重筒型改質器等を用いることができる。
【0026】
改質器12の予熱流路22には、脱硫器60から都市ガスを供給するための原料分岐管P1B、及び、改質水を供給するための改質水供給管P9が接続されている。予熱流路22には、原料分岐管P1Bから都市ガスが供給され、改質水供給管P9から改質水が供給される。都市ガス及び改質水は、予熱流路22を流れ、燃焼部28からの熱により加熱され、水が気化され、都市ガス及び気相の改質用水(水蒸気)が混合されることにより、混合ガスが生成される。
【0027】
予熱流路22を経た混合ガスは、改質触媒層24へ供給される。改質触媒層24には、都市ガスを水蒸気改質して水素を主成分とする改質ガスG1を生成するための触媒が設けられている。予熱流路22にて生成された混合ガスは、改質触媒層24で燃焼部28からの熱により加熱され、水蒸気改質反応、二酸化炭素改質反応によって、水素を主成分とする改質ガスG1が生成される。
【0028】
改質触媒層24で生成された改質ガスG1は、CO変成触媒層26へ供給される。CO変成触媒層26では、改質ガスG1に含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素と二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が低減される。なお、CO変成触媒層26よりも下流側に、更に一酸化炭素を除去するためのCO選択酸化触媒層を設けてもよい。CO変成触媒層26、またはCO変成触媒層26及びCO選択酸化触媒層を経た改質ガスG2は、改質ガス排出管P3へ送出される。
【0029】
燃焼部28の上端部には、オフガス管P7が接続されており、後述するオフガスがオフガス管P7から燃料として供給される。さらに、この燃焼部28の上端部には、燃焼用空気を供給するための空気供給管P2が接続されている。また、燃焼部28には、原料供給管P1から分岐された原料分岐管P1Aが接続されている。原料分岐管P1Aには、空気供給管P2から分岐された空気分岐管P2Aが接続されている。燃焼部28には、都市ガスに空気が混合された気体が、オフガスとは別に供給される。燃焼用のオフガスと都市ガスとのいずれか一方、または両方が、必要に応じて供給される。
【0030】
燃焼部28からの燃焼排ガスは、改質器12の内部での熱交換のための流路(不図示)へ送出される。熱交換後の燃焼排ガスは、改質器12の外部のガス排出管P10へ排出される。
【0031】
改質器12から改質ガス排出管P3へ送出された改質ガスG2は、
図1に示すように、昇圧前水分離部30、圧縮機14、昇圧後水分離部32、及び水素精製器16をこの順番で流れる。つまり、ガスの流れ方向において、上流側から下流側に、改質器12、昇圧前水分離部30、圧縮機14、昇圧後水分離部32、及び水素精製器16がこの順番で配置されている。
【0032】
〔昇圧前水分離部30〕
昇圧前水分離部30は、上部が気体室30aとされ、下部が液体室30bとされている。気体室30aには、改質ガス排出管P3の下流端が接続されている。また、気体室30aには、連絡流路管P4の上流端が接続されている。液体室30bの底部には、改質ガス水配管P8Aが接続されている。改質ガスG2中の水蒸気は、昇圧前水分離部30の上流側に配置された熱交換器HE1において冷却されることによって凝縮される。凝縮により改質ガスG2から分離された水は、液体室30bに貯留され、改質ガス水配管P8Aへ送出される。
【0033】
〔圧縮機14〕
圧縮機14には、昇圧前水分離部30からの改質ガスG2が流れる連絡流路管P4と、昇圧後水分離部32へ供給される改質ガスG2が流れる連絡流路管P5とが接続されている。圧縮機14は、昇圧前水分離部30から供給された改質ガスG2を圧縮して昇圧し、昇圧後水分離部32へ供給する。
【0034】
圧縮機14よりも上流側、昇圧前水分離部30よりも下流側には、バッファタンク35が設けられている。バッファタンク35は、昇圧前水分離部30から供給される改質ガスG2を蓄積する。バッファタンク35で一旦貯留された改質ガスG2が、圧縮機14へ供給される。
【0035】
〔昇圧後水分離部32〕
昇圧後水分離部32は、上部が気体室32aとされ、下部が液体室32bとされている。気体室32aには、連絡流路管P5の下流端が接続されている。また、気体室32aには、連絡流路管P6の上流端が接続されている。液体室32bの底部には、改質ガス水配管P8Bが接続されている。改質ガスG2中の水蒸気は、昇圧後水分離部32の上流側に配置された熱交換器HE2において冷却されることによって凝縮される。凝縮により改質ガスG2から分離された水は、液体室32bに貯留され、改質ガス水配管P8Bへ送出される。
【0036】
昇圧後水分離部32よりも下流側、水素精製器16よりも上流側には、バッファタンク36が設けられている。バッファタンク36は、昇圧後水分離部32から供給される改質ガスG2を蓄積する。バッファタンク36で一旦貯留された改質ガスG2は、水素精製器16へ供給される。
【0037】
〔水素精製器16〕
水素精製器16には、昇圧後水分離部32から送出された改質ガスG2が流れる連絡流路管P6の下流端が接続されている。水素精製器16には、PSA(Pressure Swing Adsorption)装置が使用される。この水素精製器16により改質ガスG2が水素ガス(製品水素ガス)と水素以外の不純物を含むオフガスとに分離される。水素精製器16には、製品水素配管P11が接続されており、精製された製品水素ガスは製品水素配管P11へ送出される。オフガスは、後述するオフガス管P7へ送出される。なお、水素精製器16の詳細については、後述する。
【0038】
製品水素配管P11は、水素ガスを供給する供給対象設備へ向かう製品水素供給管P11Aと、水素濃度測定器としての検出装置52へ向かう製品水素分析用配管P11Bとに分かれる。製品水素配管P11及び製品水素供給管P11Aは、水素供給管の一例である。
【0039】
製品水素供給管P11Aの途中には、逆止弁66、背圧弁70、及び水素ホルダ50が、ガスの流れ方向において、上流側から下流側にこの順番で設けられている。さらに、製品水素供給管P11Aにおいて、逆止弁66の上流側の部分から分岐するベント管P11Cが設けられている。ベント管P11Cの途中には、製品水素供給管P11Aを流れる製品水素ガスの圧力が予め決められた過大圧力以上になると開放されるリリーフ弁68が設けられている。さらに、製品水素分析用配管P11Bの途中には、流量調整バルブ48が設けられている。この流量調整バルブ48により、検出装置52へ供給される製品水素ガスの流量が調整される。
【0040】
なお、逆止弁66、ベント管P11C、リリーフ弁68、背圧弁70、及び水素ホルダ50については、詳細を後述する。
【0041】
〔検出装置52〕
検出装置52は、燃料電池セルの電解質層を利用した検出装置であって、
図2に示されるように、筐体52aと、筐体52aの内部の空間を仕切ると共に不純物によって被毒して抵抗値が変化する電解質層52bとを備えている。さらに、検出装置52は、電解質層52bの一方側に配置された電極52cと、電解質層52bの他方側に配置された電極52dとを備えている。
【0042】
また、検出装置52は、筐体52aの内部で、電極52cが配置された供給室52eと、筐体52aの内部で、電極52dが配置された排気室52fとを備えている。さらに、検出装置52は、電極52cと電極52dとの間を流れる電流の電流値を計測する電流計52gと、電極52cと電極52dとの間に印加される電圧の電圧値を計測する電圧計52hとを備えている。
【0043】
また、検出装置52は、電極52cと電極52dとの間を流れる電流を定電流制御した場合に、電極52cと電極52dとの間に印加される電圧の電圧値の変化から不純物の濃度を検出する濃度検出部52nを備えている。
【0044】
さらに、供給室52eを形成する壁部には、製品水素分析用配管P11Bの下流端が接続されている第一供給口52jが形成されている。また、排気室52fを形成する壁部には、水素ガスを外部へ放出する放出管P14の上流端が接続されている放出部52mが形成されている。
【0045】
この構成において、
図1に示す流量調整バルブ48を制御することで製品水素分析用配管P11Bに形成された流路を開放し、水素精製器16によって精製された製品水素ガスが、検出装置52へ供給される。
【0046】
この状態で、
図2に示す電極52cと電極52dとの間に電圧を印加して直流電流を流すと、供給室52eに供給された水素が、水素電解反応によって水素イオンとなって電解質層52bを通って排気室52f側へ移動する。また、排気室52fでは、水素イオンが水素生成反応によって水素となる。水素以外の不純物は電解質層52bを通って排気室52f側へ移動しないため、電解質層52bは、水素以外の不純物によって被毒する。この被毒により、電解質層52bの抵抗値が上昇する。排気室52fで生じた水素は、放出管P14へ送出されて外部へ放出される。
【0047】
そして、電流一定の定電流制御を行い、製品水素ガスを供給室52eへ供給し、供給した製品水素ガスに不純物が含まれていない場合には、電圧計52hによって計測される電圧値は、一定となる。これに対して、供給した製品水素ガスに不純物が含まれている場合には、電解質層52bが被毒して電解質層52bの抵抗値が上昇する。これにより、電圧計52hによって計測される電圧値が高くなる。濃度検出部52nは、この電圧値の変化から不純物の濃度を検出する。換言すれば、濃度検出部52nは、この電圧値の変化から水素濃度を検出する。
【0048】
〔燃焼排ガス水分離部34〕
燃焼排ガス水分離部34は、
図1に示されるように、上部が気体室34aとされ、下部が液体室34bとされている。気体室34aには、ガス排出管P10の下流端が接続されている。また、気体室34aには、外部排出管P12が接続されている。液体室34bの底部には、燃焼排ガス水配管P8Cが接続されている。
【0049】
燃焼排ガスは、燃焼部28からガス排出管P10へ送出される。燃焼排ガス中の水蒸気は、燃焼排ガス水分離部34の上流側に配置された熱交換器HE3において冷却されることによって凝縮される。凝縮により燃焼排ガスから分離された水は、液体室34bに貯留され、燃焼排ガス水配管P8Cへ送出される。水が分離された後の燃焼排ガスは、外部排出管P12から外部へ排出される。
【0050】
水素製造装置10の底部には、水タンク40が配置されている。水タンク40には、水流入口40aが形成されており、改質ガス水配管P8A、P8B、及び燃焼排ガス水配管P8Cは、合流後に水流入口40aに接続されている。合流後の配管を水流入管P8と称する。水流入管P8の内径は、燃焼排ガス水配管P8Cの内径よりも大径とされている。
【0051】
水タンク40は、昇圧前水分離部30、昇圧後水分離部32、及び燃焼排ガス水分離部34において貯留可能な水の総量よりも大容量とされており、昇圧前水分離部30、昇圧後水分離部32、及び燃焼排ガス水分離部34よりも鉛直方向の下側に配置されている。ここで、「水タンク40が昇圧前水分離部30、昇圧後水分離部32、及び燃焼排ガス水分離部34よりも鉛直方向下側に配置されている」とは、液体室30bの底部、液体室32bの底部、及び液体室34bの底部が、水タンク40の水流入口40aよりも鉛直方向の上側に配置されていることを意味する。
【0052】
水タンク40には、改質水供給管P9の上流端が接続されている。改質水供給管P9には、溶存イオン成分を除去するための水処理器(イオン交換樹脂)42が設けられている。また、改質水供給管P9には、ポンプ44が設けられており、ポンプ44の駆動により、水タンク40に貯留された水が水処理器42を経て改質器12へ供給される。改質水供給管P9の水処理器42よりも下流側、ポンプ44よりも上流側には、純水供給管P13が接続されている。純水供給管P13からは改質器12へ、改質水供給管P9を経て、必要に応じ純水が供給される。
【0053】
(全体構成の作用)
次に、水素製造装置10の作用について説明する。
【0054】
水素製造運転時には、
図1に示す原料供給管P1から脱硫器60へ都市ガスが供給される。脱硫器60では、都市ガスから硫黄化合物が除去される。脱硫器60からは、脱硫処理された都市ガスが、原料供給管P1へ送出される。
【0055】
脱硫処理された都市ガスが、原料供給管P1を流れて原料分岐管P1Bから改質器12へ供給される。さらに、改質水が、改質水供給管P9から改質器12へ供給される。予熱流路22で都市ガスと改質水とが混合されつつ加熱され、混合ガスとなって改質触媒層24へ供給される。
【0056】
改質触媒層24では、燃焼部28からの燃焼排ガスにより混合ガスが加熱されて水蒸気改質され、水素を主成分とする改質ガスG1が生成される。改質ガスG1は、CO変成触媒層26へ供給され、改質ガスG1に含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素と二酸化炭素に変換され、改質ガスG1に含まれている一酸化炭素が低減される。CO変成触媒層26を通過した改質ガスG2は、改質ガス排出管P3へ送出される。
【0057】
改質ガスG2は、改質ガス排出管P3に設けられた熱交換器HE1を経て、昇圧前水分離部30の気体室30aへ供給される。気体室30aへ供給された改質ガスG2に含まれる水は、熱交換器HE1での冷却により凝縮されて液体室30bへ貯留され、改質ガス水配管P8Aを経て水タンク40へ供給される。水が分離された改質ガスG2が、気体室30aから連絡流路管P4を流れてバッファタンク35へ供給される。バッファタンク35では、改質器12からの改質ガスG2を一時貯留して圧力変動を緩和し、改質ガスG2を圧縮機14へ供給する。圧縮機14では、改質ガスG2が圧縮される。
【0058】
圧縮された改質ガスG2は、連絡流路管P5を流れ熱交換器HE2を経て昇圧後水分離部32の気体室32aへ供給される。気体室32aへ供給された改質ガスG2に含まれる水蒸気は、熱交換器HE2での冷却により凝縮されて液体室32bへ貯留され、改質ガス水配管P8Bを経て水タンク40へ供給される。水が分離された改質ガスG2が、気体室32aから連絡流路管P6を流れ、バッファタンク36で一旦貯留された後に水素精製器16へ供給される。
【0059】
水素精製器16では、改質ガスG2が水素ガス(製品水素ガス)と、不純物を含むオフガスとに分離され、製品水素ガスは製品水素配管P11へ送出される。送出された製品水素ガスは、製品水素供給管P11Aと製品水素分析用配管P11Bとに分流される。製品水素供給管P11Aを流れる製品水素ガスは、逆止弁66、背圧弁70を流れて水素ホルダ50に一旦貯留されてから供給対象設備へ供給される。また、製品水素分析用配管P11Bへ分岐された製品水素ガスは、検出装置52へ供給される。さらに、検出装置52によって分析された製品水素ガスは、放出管P14へ送出されて外部へ放出される。
【0060】
改質ガスG2から分離された水素以外の不純物を含むオフガスは、オフガス管P7を流れてオフガスタンク18へ一時貯留される。オフガスタンク18からは、オフガスが送出され、オフガスは、オフガス管P7を経て、燃料として改質器12の燃焼部28へ供給される。
【0061】
改質器12の燃焼部28では、オフガスが燃焼され、燃焼排ガスがガス排出管P10を介して燃焼排ガス水分離部34の気体室34aへ供給される。気体室34aへ供給された燃焼排ガスに含まれる水蒸気は、熱交換器HE3での冷却により凝縮されて液体室34bへ貯留され、燃焼排ガス水配管P8Cを経て水タンク40へ供給される。水が分離された燃焼排ガスは、外部排出管P12を経て外部へ排出される。
【0062】
水タンク40に貯留された水は、ポンプ44の駆動によって水処理器42を経て改質器12へ供給される。純水供給管P13からは改質器12へ、改質水供給管P9を経て、必要に応じ純水が供給される。
【0063】
(要部)
次に、水素精製器16、水素ホルダ50、逆止弁66、ベント管P11C、リリーフ弁68、及び背圧弁70について説明する。
【0064】
〔水素精製器16〕
水素精製器16の内部構造について
図3(A)を用いて説明する。
【0065】
図3(A)に示すように、水素精製器16は、改質ガスG2の不純物を吸着させる吸着剤がそれぞれ配置された第1吸着塔102と、第2吸着塔104とを有する。第1吸着塔102、第2吸着塔104に充填されている吸着剤は、例えば、ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル等である。
【0066】
水素精製器16において、第1吸着塔102と第2吸着塔104の改質ガス供給側には、連絡流路管P6の端部から分岐された改質ガス供給分岐流路110a、110bと、改質ガス供給分岐流路110a、110aにそれぞれ接続される共通流路112a、112bと、が配置されている。
【0067】
すなわち、第1吸着塔102には、連絡流路管P6、改質ガス供給分岐流路110a、共通流路112aを介して改質ガスG2が供給可能に構成されている。同様に、第2吸着塔104には、連絡流路管P6、改質ガス供給分岐流路110b、共通流路112bを介して改質ガスG2が供給可能に構成されている。
【0068】
また、改質ガス供給分岐流路110a、110bには、それぞれ電磁開閉弁114a、114bが配置されており、電磁開閉弁114a、114bの開閉によって第1吸着塔102、第2吸着塔104と連絡流路管P6とが連通又は遮断される構成である。
【0069】
水素精製器16において、第1吸着塔102と第2吸着塔104のオフガス排出側には、オフガス管P7の端部で分岐されたオフガス排出分岐流路118a、118bと、オフガス排出分岐流路118a、118bがそれぞれ接続される共通流路112a、112bと、が設けられている。
【0070】
すなわち、第1吸着塔102から排出されたオフガスは、共通流路112a、オフガス排出分岐流路118aを介してオフガス管P7に送出可能に構成されている。同様に、第2吸着塔104から排出されたオフガスは、共通流路112b、オフガス排出分岐流路118bを介してオフガス管P7に送出可能に構成されている。
【0071】
なお、オフガス排出分岐流路118a、118bには、それぞれ電磁開閉弁120a、120bが配置されており、電磁開閉弁120a、120bの開閉によって第1吸着塔102、第2吸着塔104とオフガス管P7とが連通又は遮断される構成である。
【0072】
さらに、共通流路112aと共通流路112bは、連絡流路122で接続されている。したがって、第1吸着塔102と第2吸着塔104は、共通流路112a、連絡流路122、共通流路112bを介して連通されている。
【0073】
なお、連絡流路122上には、一対の電磁開閉弁124a、124bが配置されており、一対の電磁開閉弁124a、124bの開閉によって第1吸着塔102と第2吸着塔104とが連通又は遮断される構成である。
【0074】
第1吸着塔102、第2吸着塔104の製品水素ガスの送出側には、製品水素配管P11の端部が接続される製品水素ガス送出分岐流路128a、128bと、製品水素ガス送出分岐流路128aと第1吸着塔102とを連通させる共通流路130aと、製品水素ガス送出分岐流路128bと第2吸着塔104とを連通させる共通流路130bと、が設けられている。
【0075】
なお、製品水素ガス送出分岐流路128a、128b上には、それぞれ電磁開閉弁132a、132bが配置されており、電磁開閉弁132a、132bを開閉することにより、第1吸着塔102、第2吸着塔104と製品水素配管P11とが連通又は遮断される構成である。
【0076】
また、共通流路130a、130b間には、両者を接続する連絡流路134が設けられている。連絡流路134の略中央には、局部的に縮径されたオリフィス136が設けられている。また、連絡流路134においてオリフィス136の両側には、それぞれ電磁開閉弁138a、138bが配置されている。
【0077】
したがって、電磁開閉弁138a、138bを開閉することにより、第1吸着塔102と第2吸着塔104とが共通流路130a、連絡流路134(オリフィス136)、共通流路130bを介して連通又は遮断される構成である。
【0078】
また、連絡流路134において電磁開閉弁138aよりも共通流路130a側と電磁開閉弁138bよりも共通流路130b側とを連通させた連絡流路140が設けられており、連絡流路140上にも一対の電磁開閉弁142a、142bが配置されている。
【0079】
したがって、電磁開閉弁142a、142bを開閉することにより、第1吸着塔102と第2吸着塔104とが連絡流路140を介して(オリフィス136を介さずに)連通又は遮断される構成である。
【0080】
また、水素精製器16を制御する制御部170は、
図7に示されるように、CPU(CenTral Processing UniT:プロセッサ)172、ROM(Read Only Memory)174、RAM(Random Access Memory)176、ストレージ178、及びインタフェース180を含んで構成されている。また、各構成は、バス182を介して相互に通信可能に接続されている。
【0081】
-定格運転-
この構成において、水素精製器16の定格運転を実行する場合には、定格運転制御プログラムをストレージ178から読み出し、実行することにより、電磁開閉弁114a~142bの開閉制御を行うものである。そして、第1吸着塔102では、吸着作業工程として、昇圧工程、水素送出工程、及び均等工程がこの順番で実行され、第2吸着塔104では、脱着作業工程として、パージ工程、排気停止工程、及び均等工程がこの順番で実行される。第1吸着塔102と第2吸着塔104とを切換ながら、この制御が繰り返される。
【0082】
なお、水素製造装置10の改質器20及び圧縮機14は連続的に運転され、改質器20で製造され、圧縮機14で圧縮された改質ガスG2が連続的に水素精製器16に供給されている。
【0083】
第1吸着塔102で吸着作業工程が、第2吸着塔104で脱着作業工程が開始される状態から説明する。なお、各電磁開閉弁の開閉は、制御部170(
図7参照)からの制御信号によって制御されている。
【0084】
図3(B)、
図8に示されるように、先ず、時刻T0において、電磁開閉弁114aが開弁され、連絡流路管P6から第1吸着塔102に改質ガスG2が供給される。この際、第1吸着塔102の下流側に位置する電磁開閉弁132a、138a、142aは全て閉弁している。この結果、第1吸着塔102内の圧力が上昇する(昇圧工程)。
【0085】
また、時刻T0において、電磁開閉弁120bが開弁され、第2吸着塔104がオフガス管P7に連通される。これにより、第2吸着塔104からオフガス管P7にオフガスが排出される。
【0086】
なお、
図3(B)において、水素精製器16の各流路のうち太線で記載されている部分が、ガスが流れている部分である。また、
図3(B)において、電磁開閉弁114a~142bを黒塗りで示した場合が閉弁状態を表し、電磁開閉弁114a~142bを白抜きで示した場合が開弁状態を表す。以下、他の図でも同様である。
【0087】
次に、
図4(A)、
図8に示されるように、第1吸着塔102内の圧力が十分に上昇し、吸着剤が不純物を十分に吸着して所定の純度の水素ガスが送出可能となった時刻T1で電磁開閉弁132aが開弁される。これにより、第1吸着塔102と製品水素配管P11とが連通される(水素送出工程)。
【0088】
さらに、
図4(B)、
図8に示されるように、時刻T1から所定時間経過後の時刻T2で、電磁開閉弁138a、138bを開放する。これにより、第1吸着塔102と第2吸着塔104とが、オリフィス136を介して連通する。これにより、第1吸着塔102から第2吸着塔104に精製された製品水素ガスが供給され、第2吸着塔104内の吸着剤に付着した不純物が水素ガスで除去され、オフガスとしてオフガス管P7に排出される(パージ工程)。
【0089】
また、
図5(A)、
図8に示されるように、時刻T2から所定時間経過後の時刻T3で、電磁開閉弁120bが閉弁される。すなわち、第2吸着塔104とオフガス管P7との連通が遮断される。これにより、第2吸着塔104では、オリフィス136から製品水素ガスが供給される一方、オフガスの排出が停止されるため、内部の圧力が上昇する(排気停止工程)。
【0090】
さらに、
図5(B)、
図8に示されるように、時刻T3から所定時間経過後の時刻T4で電磁開閉弁114a、132a、138a、138bが閉弁される。これにより、第1吸着塔102が連絡流路管P6と遮断されると共に、オリフィス136と遮断される。
【0091】
これにより、第1吸着塔102に改質ガスG2が供給されなくなると共に、第1吸着塔102から製品水素配管P11に精製された製品水素ガスが送出されることも停止される。
【0092】
また、第1吸着塔102と第2吸着塔104とのオリフィス136介しての連通も遮断される。このタイミングで電磁開閉弁124a、124bと電磁開閉弁142a、142bが開弁される。これにより、第1吸着塔102の上流側と第2吸着塔104の上流側、第1吸着塔102の下流側と第2吸着塔104の下流側が連通される。
【0093】
このように、第1吸着塔102と第2吸着塔104がオリフィス136を介さずに上流側と下流側で連通されることにより、圧力が均等化される(均圧工程)。
【0094】
さらに、
図6、
図8に示されるように、時刻T4から所定時間経過後の時刻T5で、電磁開閉弁124a、124bと電磁開閉弁142a、142bが閉弁され、第1吸着塔102と第2吸着塔104との連通が遮断される。
【0095】
同時に、電磁開閉弁114bが開弁され、第2吸着塔104と連絡流路管P6とが連通され、連絡流路管P6から第2吸着塔104に改質ガスG2が供給される。
【0096】
また、電磁開閉弁120aが開弁され、第1吸着塔102とオフガス管P7とが連通され、第1吸着塔102からオフガス管P7にオフガスが排出される。
【0097】
以下、時刻T0から時刻T5までのタイミングと同様に、時刻T5から時刻T10までのタイミングで電磁開閉弁の開閉制御が行われることにより、第1吸着塔102で脱着作業工程が行われ、第2吸着塔104で吸着作業工程が行われる。これは、吸着塔を入れ替えただけで動作は同様であるので詳細な説明を省略する。
【0098】
この後は、第1吸着塔102と第2吸着塔104を切換ながら、この制御が繰り返される。
【0099】
〔水素ホルダ50〕
水素ホルダ50は、
図1に示されるように、製品水素供給管P11Aの途中に配置されている。水素ホルダ50には、水素ホルダ50内の圧力を検出する図示せぬ圧力検出部材が設けられている。ここで、製品水素供給管P11Aの下流端は、工場等の供給対象設備に到達した部分である。
【0100】
この構成において、製品水素供給管P11Aを流れる製品水素ガスは、水素ホルダ50に一旦貯留され、予め決められた範囲の圧力で、水素ホルダ50から工場等の供給対象設備へ供給される。
【0101】
〔逆止弁66、ベント管P11C、リリーフ弁68〕
逆止弁66は、逆止弁66に対して下流側から上流側へ製品水素ガスが流れないように製品水素供給管P11Aに配置されている。このように、逆止弁66は、製品水素ガスの水素精製器16側への流れを制限するようになっている。
【0102】
さらに、製品水素供給管P11Aにおいて逆止弁66の上流側の部分から、ベント管P11Cが分岐して設けられている。ベント管P11Cの端部は開放されており、ベント管P11Cの途中には、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力が想定外の圧力(以下「過大圧力」)以上になると開放されるリリーフ弁68が設けられている。リリーフ弁68は、他の許容部材の一例である。
【0103】
この構成において、例えば、供給対象設備で消費する製品水素ガスの量が変化によって、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力が変動してしまい、製品水素ガスが逆方向へ流れようとすることがある。しかし、このような場合でも、逆止弁66を設けることで、製品水素ガスの水素精製器16側への流れは制限される。また、逆止弁66が製品水素ガスの流れを制限することで、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力が過大に高くなることがある。
【0104】
しかし、ベント管P11Cの途中には、リリーフ弁68が配置されている。これにより、他の許容部材が設けられていない場合と比して、水素供給配管の水素ガスが過大圧力以上となると、リリーフ弁68が開放され、製品水素ガスは、ベント管P11Cを通って外部へ放出される。
【0105】
〔背圧弁70〕
背圧弁70は、製品水素供給管P11Aにおいて水素ホルダ50に対して上流側で、かつ、逆止弁66に対して下流側に配置されている。背圧弁70とは、吸込側(一次側)の圧力が予め決められた圧力(以下「設定圧力」)以上で、吐出側(二次側)に水素ガスを流す弁である。ここで、設定圧力は、前述した過大圧力に対して低い圧力である。背圧弁70は、許容部材の一例である。
【0106】
背圧弁70は、
図9(A)に示されるように、吸込側の流路74及び吐出側の流路76が内部に形成される筐体72と、ダイヤフラム80と、圧縮コイルスプリング84(以下「スプリング84」)と、椀部材88とを備えている。なお、
図9(A)、
図9(B)の矢印UPは、鉛直方向の上方を示す。
【0107】
吸込側の流路74の下流端、及び吐出側の流路76の上流端は、上方へ屈曲している。そして、背圧弁70によって、吸込側から吐出側への製品水素ガスの流れが制限されている状態で、流路74の下流端、及び流路76の上流端は、ダイヤフラム80に接触して、流路74の下流端の開口、及び流路76の上流端の開口は、閉塞されている。
【0108】
さらに、ダイヤフラム80を挟んで流路74、76の反対側には、上方が開口した椀状の椀部材88が配置されている。さらに、椀部材88を挟んでダイヤフラム80の反対側には、上下方向に延びた圧縮状態のスプリング84が配置されている。
【0109】
この構成において、吸込側の圧力が設定圧力以上で、
図9(B)に示されるように、流路74からの圧力が、ダイヤフラム80、及び椀部材88を介してスプリング84に作用し、スプリング84が圧縮する。これにより、ダイヤフラム80が変形し、ダイヤフラム80と、流路74の下流端の開口、及び流路76の上流端の開口とが、上下方向で離間する。そして、ダイヤフラム80が変形することで流路78が形成され、製品水素ガスは、この流路78によって吸込側から吐出側へ流れる。このように、吸込側から吐出側への製品水素ガスの流れは許容される。
【0110】
(要部構成の作用)
次に、要部構成の作用について、比較形態に係る水素製造装置510と比較しつつ説明する。水素製造装置510は、
図11に示されるように、逆止弁、ベント管、リリーフ弁、背圧弁、及び水素ホルダを備えていない。つまり、製品水素ガスの圧力に関わらず製品水素ガスが製品水素供給管P11Aを流れるようになっている。これ以外については、水素製造装置10と同様の構成とされている。
【0111】
図1、
図11に示す水素製造装置10、510の圧縮機14では、改質ガスG2が圧縮される。圧縮された改質ガスG2は、連絡流路管P5を流れ、熱交換器HE2を経て昇圧後水分離部32の気体室32aへ供給される。気体室32aへ供給された改質ガスG2は、連絡流路管P6を流れ、バッファタンク36で一旦貯留された後に水素精製器16へ供給される。
【0112】
図3(A)に示す水素精製器16の第1吸着塔102では、吸着作業工程として、昇圧工程、水素送出工程、及び均等工程がこの順番で実行され、第2吸着塔104では、脱着作業工程として、パージ工程、排気停止工程、及び均等工程がこの順番で実行される。そして、第1吸着塔102と第2吸着塔104とを切換ながら、この制御が繰り返される。これにより、
図1、
図11に示す水素精製器16では、改質ガスG2が、製品水素ガスと不純物を含むオフガスとに分離され、製品水素ガスは製品水素配管P11へ送出される。送出された製品水素ガスは、製品水素供給管P11Aと製品水素分析用配管P11Bとに分流される。
【0113】
図1に示す水素製造装置10の製品水素供給管P11Aを流れる製品水素ガスは、逆止弁66、及び背圧弁70を流れて水素ホルダ50に一旦貯留されてから供給対象設備へ供給される。これに対して、
図11に示す水素製造装置510の製品水素供給管P11Aを流れる製品水素ガスは、逆止弁及び背圧弁を流れることなく供給対象設備へ供給される。このように、水素製造装置10では、水素精製器16によって精製された製品水素ガスは、背圧弁70を流れて供給対象設備へ供給される。つまり、背圧弁70に対して上流側の製品水素ガスの圧力は、設定圧力以上となっている。
【0114】
ここで、例えば、工場等の供給対象設備で消費する製品水素ガスの量が変化によって、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力が変動してしまい、製品水素ガスが逆方向へ流れようとすることがある。
【0115】
このような場合に水素製造装置510では、製品水素ガスが逆流して、水素精製器16側の吐出側から製品水素ガスが水素精製器16に流入してしまう。
【0116】
これに対して、水素製造装置10では、逆止弁66が配置されていることで、製品水素ガスの水素精製器16側への流れは制限される。また、逆止弁66が製品水素ガスの流れを制限することで、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力が過大に高くなることがある。
【0117】
しかし、ベント管P11Cの途中には、リリーフ弁68が配置されている。製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力が過大圧力以上になると、リリーフ弁68が開放され、製品水素ガスは、ベント管P11Cを通って外部へ放出される。
【0118】
また、例えば、供給対象設備で消費する製品水素ガスの量が変化することで、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力変動が生じることがある。
図10のグラフには、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力変動が、一例として示されている。このグラフの横軸が時間であり、縦軸が圧力である。このグラフからわかるように、製品水素供給管P11Aでは、供給対象設備で消費する製品水素ガスの量が変化することで、製品水素ガスの圧力変動が生じる。なお、
図10のグラフにおいて、圧力が0.87〔MPa〕近傍の最初の時間帯及び最後の時間帯については、水素を供給していない時間帯である。換言すれば、圧力が0.87〔MPa〕近傍の最初の時間帯と、圧力が0.87〔MPa〕近傍の最後の時間帯との間の時間帯で、製品水素ガスが供給対象設備へ供給されている。
【0119】
このような場合に水素製造装置510では、製品水素ガスの圧力に関わらず製品水素ガスが製品水素供給管P11Aを流れるようになっている。このため、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力変動が生じると、水素精製器16に設けられた第1吸着塔102、及び第2吸着塔104における改質ガスG2にも圧力変動が生じてしまう。
【0120】
第1吸着塔102の改質ガスG2の圧力、又は第2吸着塔104の改質ガスG2の圧力が低下がると、吸着作業工程において、不純物の吸着量も減るため、製品水素ガスの純度も低下してしまう。また、第1吸着塔102の改質ガスG2の圧力、又は第2吸着塔104の改質ガスG2の圧力が低下がると、脱着作業工程において、脱着中の吸着塔に流れる製品水素ガス(パージガス)の量が減少するため、吸着剤に付着した不純物の除去が不十分となってしまう。
【0121】
このような場合に水素製造装置10では、製品水素供給管P11Aに背圧弁70が配置されている。このため、背圧弁70に対して上流側の製品水素ガスの圧力は、設定圧力以上となっている。このため、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力変動に起因して、水素精製器16側の製品水素ガスの圧力低下が抑制される。
【0122】
(まとめ)
以上説明したように、水素製造装置10では、背圧弁70が、製品水素供給管P11Aの途中に配置されている。このため、製品水素ガスの圧力に関わらず製品水素ガスが製品水素供給管P11Aを流れる水素製造装置510の場合と比して、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力変動に起因して、水素精製器16側の製品水素ガスの圧力が低下するのを抑制することができる。
【0123】
また、水素製造装置10では、水素製造装置510と比して、水素精製器16側の製品水素ガスの圧力低下が抑制されることで、第1吸着塔102、及び第2吸着塔104の改質ガスG2の圧力低下が抑制される。これにより、吸着作業工程において、不純物の吸着量が減るのを抑制することができる。
【0124】
また、水素製造装置10では、水素製造装置510と比して、水素精製器16側の製品水素ガスの圧力低下が抑制されることで、脱着作業工程において、脱着中の吸着塔に流れる製品水素ガス(パージガス)の量が減少するのが抑制される。これにより、吸着剤に付着した不純物の除去が不十分となるのを抑制することができる。
【0125】
また、水素製造装置10では、製品水素供給管P11Aに配置された逆止弁66と、製品水素供給管P11Aにおいて逆止弁66に対して上流側の部分から分岐しているベント管P11Cと、ベント管P11Cに配置されたリリーフ弁68とが設けられている。このため、逆止弁、ベント管、及びリリーフ弁が設けられていない水素製造装置510と比して、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力が過大圧力以上となるのが抑制される。これにより、逆止弁、ベント管、及びリリーフ弁が設けられていない水素製造装置510と比して、製品水素ガスの圧力が高くなることに起因して水素精製器16が損傷するのを抑制することができる。
【0126】
また、水素製造装置10では、製品水素供給管P11Aおいて背圧弁70に対して下流側には、水素ホルダ50が設けられている。このため、水素ホルダが設けられていない水素製造装置510と比して、製品水素供給管P11Aの製品水素ガスの圧力変動に起因して、水素精製器16側の製品水素ガスの圧力が変化するのを抑制することができる。
【0127】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、水素製造装置10は、逆止弁66、ベント管P11C、及びリリーフ弁68を備えたが、これらを備えていなくてもよい。しかし、この場合には、これらを備えることで奏する作用は奏しない。
【0128】
また、上記実施形態では、水素製造装置10は、水素ホルダ50を備えたが、備えていなくてもよい。しかし、この場合には、水素ホルダを備えることで奏する作用は奏しない。
【0129】
また、上記実施形態では、ベント管P11C、及び逆止弁66は、背圧弁70の上流側に配置されたが、下流側に配置されてもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、脱硫器60は、常温脱硫方式の脱硫器であったが、例えば、水添脱硫方式の脱硫器であってもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、検出装置52は、燃料電池セルの電解質層を利用した検出装置であったが、例えば、薄膜円筒の共振周波数が周囲のガス密度により変化することを原理として用いた水素純度計や、光学的に水素の純度を測定するセンサ等、水素濃度が測定可能であれば何れの装置を用いてもよい。
【符号の説明】
【0132】
10 水素製造装置
12 改質器
14 圧縮機
16 水素精製器
50 水素ホルダ
66 逆止弁
68 リリーフ弁(他の許容部材の一例)
70 背圧弁(許容部材の一例)
P11 製品水素配管(水素供給管の一例)
P11A 製品水素供給管(水素供給管の一例)
P11C ベント管