(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】超電導線の接続構造および超電導線の接続構造の製造方法、ならびに、超電導マグネット装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/68 20060101AFI20240125BHJP
H01B 12/08 20060101ALI20240125BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240125BHJP
H01F 6/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01R4/68 ZAA
H01B12/08
H01R43/00 Z
H01F6/06 500
(21)【出願番号】P 2019227212
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏原 慶一朗
(72)【発明者】
【氏名】横山 彰一
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-029557(JP,A)
【文献】特開2015-050082(JP,A)
【文献】特開2014-182874(JP,A)
【文献】特開昭64-033871(JP,A)
【文献】特開昭60-095868(JP,A)
【文献】特開2015-103501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 3/00- 4/22
H01R 4/58- 4/72
H01R 43/00-43/02
H01F 6/00- 6/06
H01B 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属系超電導材料から構成されるフィラメント、および、該フィラメントを覆い、安定化材で構成された被覆部を含む超電導線同士の前記フィラメントを互いに接続する超電導線の接続構造であって、
前記フィラメントとして、複数の第1フィラメント、および、複数の第2フィラメントと、
前記複数の第1フィラメントおよび前記複数の第2フィラメントの各々のいずれもが一方側から挿通される貫通孔を有するスリーブとを備え、
前記スリーブは、前記貫通孔の貫通方向の前記一方側に位置する第1部分と、他方側に位置する第2部分とを有し、
前記第2部分における前記貫通孔の、前記貫通方向に直交する断面の断面積が、前記第1部分における前記貫通孔の、前記貫通方向に直交する断面における前記貫通孔の断面積より小さ
く、
前記複数の第1フィラメントのうち、前記被覆部から露出している部分の一部は撚り線が施され、
前記複数の第2フィラメントのうち、前記被覆部から露出している部分の一部は撚り線が施され、
前記複数の第1フィラメントのうち撚り線が施されている部分と、前記複数の第2フィラメントのうち撚り線が施されている部分とが、共に撚り線化されることで、複合撚り線が形成され、
前記複合撚り線は、前記スリーブの前記一方側から前記第1部分を通過するように挿通される、
超電導線の接続構造。
【請求項2】
前記スリーブは、前記第1部分および前記第2部分のみからなり、
前記第1部分および前記第2部分は一体で構成されている、請求項
1に記載の超電導線の接続構造。
【請求項3】
前記貫通方向から見て、前記第1部分における前記貫通孔の前記断面の短手方向の長さは、前記第2部分における、前記短手方向と同じ方向での前記貫通孔の長さより短く、
前記貫通方向から見て、前記第1部分における前記貫通孔の前記断面の長手方向の長さは、前記第2部分における、前記長手方向と同じ方向での前記貫通孔の前記断面の長さより長い、請求項1
又は2に記載の超電導線の接続構造。
【請求項4】
前記スリーブは、前記一方側から前記他方側に向かうにつれて、前記貫通孔の断面の断面積が小さくなっている、請求項1
又は2に記載の超電導線の接続構造。
【請求項5】
前記第1部分および前記第2部分は別体で構成されており、かつ、互いに離間している、請求項
1に記載の超電導線の接続構造。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の超電導線の接続構造と、
前記複数の第1フィラメントを含む前記超電導線によって形成された第1コイルと、
前記複数の第2フィラメントを含む前記超電導線によって形成された第2コイルとを備える、超電導マグネット装置。
【請求項7】
金属系超電導材料から構成されるフィラメント、および、該フィラメントを覆い、安定化材で構成された被覆部を含む超電導線同士の前記フィラメントを互いに接続する超電導線の接続構造の製造方法であって、
前記フィラメントとして、複数の第1フィラメントと、複数の第2フィラメントとを準備する準備工程と、
前記複数の第1フィラメントおよび前記複数の第2フィラメントの両方を、スリーブの貫通孔の一方側から挿通する挿通工程と、
前記複数の第1フィラメントと前記第2フィラメントとが挿通されている前記スリーブを外側から押圧することにより、前記複数の第1フィラメントおよび前記複数の第2フィラメントを互いに圧接する圧接工程とを備え、
前記スリーブは、前記貫通孔の前記一方側に位置する第1部分と、他方側に位置する第2部分とを有し、
前記圧接工程において、前記第2部分の、前記貫通孔の貫通方向に直交する断面における断面積が、前記第1部分の、前記貫通孔の前記貫通方向に直交する断面における断面積より小さくなるように、前記スリーブを外側から押圧
し、
前記準備工程において、
前記複数の第1フィラメントの一部を前記被覆部から露出させて撚り線を施し、
前記複数の第2フィラメントの一部を前記被覆部から露出させて撚り線を施し、
前記複数の第1フィラメントのうち撚り線を施した部分と、前記複数の第2フィラメントのうち撚り線を施した部分とを、共に撚り線化し、複合撚り線を形成し、
前記圧接工程において、
前記複合撚り線が、前記スリーブの前記一方側から前記第1部分を通過するように、前記スリーブを外側から押圧する、
超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項8】
前記圧接工程は、前記第1部分のみを押圧する第1圧接工程と、前記第2部分のみを押圧する第2圧接工程とを含む、請求項
7に記載の超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項9】
前記圧接工程は、前記第1部分および前記第2部分の両方を同時に押圧する同時圧接工程と、前記第2部分のみを押圧する第2圧接工程とを含む、請求項
7に記載の超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項10】
前記同時圧接工程においては、前記貫通方向に対して直交する高さ方向に沿う方向に前記スリーブを押圧し、前記第2圧接工程においては、前記高さ方向に沿う方向に前記第2部分のみを押圧する、請求項
9に記載の超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項11】
前記同時圧接工程においては、前記貫通方向に対して直交する高さ方向に沿う方向に前記スリーブを押圧し、前記第2圧接工程においては、3次元空間において前記貫通方向および前記高さ方向の両方に対して直交する幅方向に沿って、前記第2部分のみを押圧する、請求項
9に記載の超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項12】
前記圧接工程は、前記第1部分および前記第2部分の両方を同時に押圧する同時圧接工程のみを含み、
前記同時圧接工程においては、前記スリーブの前記一方側から前記他方側に向かうにつれて、前記貫通孔の前記貫通方向に直交する断面の断面積が小さくなるように、前記スリーブを押圧する、請求項
7に記載の超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項13】
前記同時圧接工程においては、前記貫通方向に対して直交する高さ方向に沿う方向に前記スリーブを押圧する、請求項1
2に記載の超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項14】
前記同時圧接工程においては、前記貫通方向に沿う方向を径方向とする仮想円の周方向に沿う方向に前記スリーブを押圧する、請求項1
2に記載の超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項15】
前記第1部分および前記第2部分は別体で構成されており、かつ、互いに離間している、請求項
8に記載の超電導線の接続構造の製造方法。
【請求項16】
請求項7から請求項1
5のいずれか1項に記載の超電導線の接続構造の製造方法により、前記複数の第1フィラメントと前記複数の第2フィラメントとを互いに接続する接続工程と、
前記複数の第1フィラメントを含む前記超電導線により第1コイルを形成する第1コイル形成工程と、
前記複数の第2フィラメントを含む前記超電導線により第2コイルを形成する第2コイル形成工程とを備える、超電導マグネット装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超電導線の接続構造および超電導線の接続構造の製造方法、ならびに、超電導マグネット装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線の接続構造および超電導線の接続構造の製造方法を開示した先行文献として、特許第2902239号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載の超電導線の接続構造の製造方法は、前処理工程と、中間処理工程と、接続工程とを備えている。超電導線は、合金系超電導材料からなる多数本のフィラメントが安定化材中に埋設されてなる。前処理工程では、超電導線の接続部において、安定化材を除去する。中間処理工程では、安定化材が除去された複数の超電導線の露出したフィラメントを成形する。中間処理工程は、整線化工程と、撚線化工程とを有する。整線化工程では、複数の超電導線の露出したフィラメントを解す。撚線化工程では、フィラメントをツイストする。接続工程では、複数の超電導線のフィラメントを一括してスリーブ内に挿入し、ダイスによりスリーブとともにフィラメントを押圧して接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された超電導線の接続構造においては、スリーブの貫通孔の貫通方向に直交する、貫通孔の断面の断面積を小さくするほど、貫通孔内のフィラメントの充填率が向上する。フィラメントの充填率が向上すれば、スリーブ内のフィラメントの臨界電流値が向上する。これにより、超電導線の接続構造における電気的特性が向上する。
【0005】
貫通孔の上記断面の断面積を小さくためには、フィラメントが貫通孔に挿通された状態のスリーブを、外側から高い圧力で押圧することが考えられる。しかしながら、このように高い圧力でスリーブを外側から押圧すると、貫通孔内のフィラメントが押圧力によって塑性変形する場合がある。上記貫通孔の貫通方向に沿って延びるようにフィラメントの当該塑性変形が生じた場合、上記断面におけるフィラメントの断面積が小さくなる。そうすると、フィラメントの臨界電流値がかえって低下する。低下した臨界電流値を超える電流がフィラメントを流れると、超電導状態のフィラメントが常電導状態に相転移する、クエンチと呼ばれる異常現象が生じるおそれがある。また、さらに高い圧力でスリーブを外側から押圧すると、貫通孔内のフィラメントが破断する、すなわち、フィラメントが機械的に断線する場合がある。
【0006】
本開示は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、電気的特性を向上させるとともに信頼性を向上できる、超電導線の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に基づく超電導線の接続構造は、超電導線同士のフィラメントを互いに接続する。超電導線は、フィラメントと、被覆部とを含んでいる。フィラメントは、金属系超電導材料から構成されている。被覆部は、フィラメントを覆い、安定化材で構成されている。超電導線の接続構造は、フィラメントとして複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントと、スリーブとを備えている。スリーブは、貫通孔を有している。貫通孔においては、複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントの各々のいずれもが一方側から挿通されている。スリーブは、第1部分と、第2部分とを有している。第1部分は、貫通孔の貫通方向の上記一方側に位置している。第2部分は、貫通孔の貫通方向の他方側に位置している。第2部分における貫通孔の、貫通方向に直交する断面における断面積は、第1部分における貫通孔の、貫通方向に直交する断面における断面積より小さい。
【0008】
本開示に基づく超電導線の接続構造の製造方法は、超電導線同士のフィラメントを互いに接続する超電導線の接続構造の製造方法である。超電導線は、フィラメントと、被覆部とを含む。フィラメントは、金属系超電導材料で構成される。被覆部は、フィラメントを覆い、安定化材で構成される。上記超電導線の接続構造の製造方法は、準備工程と、挿通工程と、圧接工程とを備えている。準備工程においては、フィラメントとして、複数の第1フィラメントと、複数の第2フィラメントとを準備する。挿通工程においては、複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントの両方を、スリーブの貫通孔の一方側から挿通する。圧接工程においては、複数の第1フィラメントと第2フィラメントとが挿通されているスリーブを外側から押圧することにより、複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントを互いに圧接する。スリーブは、第1部分と、第2部分とを有する。第1部分は、貫通孔の貫通方向の上記一方側に位置する。第2部分は、貫通孔の貫通方向の他方側に位置する。圧接工程においては、第2部分の、貫通孔の貫通方向に直交する断面における断面積が、第1部分の、貫通孔の貫通方向に直交する断面における断面積より小さくなるように、スリーブを外側から押圧する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第2部分においては、貫通孔の貫通方向に直交する断面における断面積を小さくして、複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントの充填率を高めることができる。このため、超電導線の接続構造の電気的特性を向上できる。さらに、第2部分における貫通孔内に位置する複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントのいずれかが断線した場合においても、第1部分における貫通孔内において複数の第1フィラメントと複数の第2フィラメントとの電気的接続が確保される。このため、超電導線の接続構造の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る超電導マグネット装置の構成を模式的に示す回路図である。
【
図2】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントを準備してスリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
【
図5】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の第1圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の第2圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図7】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例において、複数のフィラメントを準備してスリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
【
図9】
図8の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをIX-IX線矢印方向から見た断面図である。
【
図10】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例の同時圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図11】
図10の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXI-XI線矢印方向から見た断面図である。
【
図12】実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例の第2圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図13】
図12に示す複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXIII-XIII線矢印方向から見た図である。
【
図14】実施の形態2に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
【
図15】
図14の超電導線の接続構造をXV-XV線矢印方向から見た断面図である。
【
図16】
図14の超電導線の接続構造をXVI-XVI線矢印方向から見た断面図である。
【
図17】実施の形態2に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントを準備して、スリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
【
図18】
図17の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXVIII-XVIII線矢印方向から見た断面図である。
【
図19】実施の形態2に係る超電導線の接続構造の製造方法の同時圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図20】
図19の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXX-XX線矢印方向から見た断面図である。
【
図21】実施の形態2に係る超電導線の接続構造の製造方法において、第2圧接工程において圧接する直前の状態を示す部分断面図である。
【
図22】
図21の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXXII-XXII線矢印方向から見た断面図である。
【
図23】実施の形態2に係る超電導線の接続構造の製造方法の第2圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図24】
図23の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXXIV-XXIV線矢印方向から見た断面図である。
【
図25】実施の形態3に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
【
図26】実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法を示すフローチャートである。
【
図27】実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法の同時圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図28】実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法の第1変形例において、複数のフィラメントを準備して、スリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
【
図29】実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法の第1変形例において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図30】実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法の第2変形例において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図31】実施の形態4に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
【
図32】実施の形態4に係る超電導線の接続構造の製造方法において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図33】実施の形態5に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
【
図34】実施の形態5に係る超電導線の接続構造の製造方法において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図35】実施の形態5に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図36】比較例に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
【
図37】比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントを準備した状態を示す部分断面図である。
【
図38】比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントをスリーブに挿通する直前の状態を示す部分断面図である。
【
図39】比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントをスリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
【
図40】
図39の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXL-XL線矢印方向から見た断面図である。
【
図41】比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法の圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図42】
図41の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXLII-XLII線矢印方向から見た断面図である。
【
図43】実施の形態6に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
【
図44】実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法を示すフローチャートである。
【
図45】実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントを準備して、スリーブの第1部分に挿通した状態を示す部分断面図である。
【
図46】実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法の第1圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図47】実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントをスリーブの第2部分に挿通した状態を示す部分断面図である。
【
図48】実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法の第2圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【
図49】実施の形態7に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施の形態に係る超電導線の接続構造および超電導マグネット装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る超電導マグネット装置の構成を模式的に示す回路図である。
図1に示すように、実施の形態1に係る超電導マグネット装置1は、第1コイル10と、第2コイル20と、超電導線の接続構造100とを備えている。第1コイル10と、第2コイル20とは、超電導線の接続構造100によって互いに直列に接続されている。
【0013】
本実施の形態に係る超電導マグネット装置1は、第3コイル30および第4コイル40をさらに備えている。第3コイル30は、第2コイル20と互いに直列に接続されている。第4コイル40は、第3コイル30と互いに直列に接続されている。
図1に示すように、第3コイル30は、本実施の形態に係る超電導線の接続構造100によって第2コイル20と互いに接続されていてもよい。第4コイル40は、本実施の形態に係る超電導線の接続構造100によって第3コイル30と互いに接続されていてもよい。第1コイル10、第2コイル20、第3コイル30および第4コイル40の各々は、超電導線101によって形成されている。なお、本実施の形態に係る超電導マグネット装置1は、複数の追加コイルをさらに備えていてもよい。複数の追加コイルの各々も、超電導線101によって形成されている。複数の追加コイルの各々は、超電導線の接続構造100によって、第1コイル10、第2コイル20、第3コイル30および第4コイル40と、互いに直列に接続されていてもよい。
【0014】
超電導マグネット装置1は、超電導永久電流スイッチ50と、励磁用電源端子60とをさらに備えている。超電導永久電流スイッチ50に接続された2つの超電導線101のうちの一方は、第1コイル10を構成する超電導線101に接続されており、他方は、第4コイル40を構成する超電導線101に接続されている。超電導永久電流スイッチ50に接続された2つの超電導線101は、それぞれ、本実施の形態に係る超電導線の接続構造100により、第1コイル10を形成する超電導線101および第2コイル20を形成する超電導線101に接続されていてもよい。本実施の形態において、励磁用電源端子60の一方端は、第1コイル10を構成する超電導線101で形成され、他方端は、第4コイル40を形成する超電導線101で形成されている。なお、本実施の形態に係る超電導マグネット装置1は、1以上の追加の超電導永久電流スイッチをさらに備えていてもよい。1以上の追加の超電導永久電流スイッチの各々は、超電導永久電流スイッチ50と互いに並列に接続されていてもよい。1以上の追加の超電導永久電流スイッチの各々は、互いに並列に接続されていてもよい。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
図2に示すように、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100は、超電導線101同士のフィラメント102を互いに接続する。
【0016】
超電導線101は、フィラメント102と、被覆部103とを含んでいる。フィラメント102は、金属系超電導材料から構成されている。被覆部103は、フィラメント102を覆っている。被覆部103は、安定化材で構成されている。
【0017】
超電導線の接続構造100は、フィラメント102として複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120と、スリーブ130とを備えている。本実施の形態に係る超電導マグネット装置1においては、
図1および
図2に示すように、第1コイル10は、フィラメント102として複数の第1フィラメント110を含む超電導線101によって形成されている。第2コイル20は、フィラメント102として複数の第2フィラメント120を含む超電導線101によって形成されている。
【0018】
複数の第1フィラメント110のうち、被覆部103に覆われた部分は、撚り線で構成されている。複数の第2フィラメント120のうち、被覆部103に覆われた部分は、撚り線で構成されている。
図2に示すように、複数の第1フィラメント110のうち、被覆部103から露出している部分の一部は撚り線が解されている。複数の第2フィラメント120のうち、被覆部103から露出している部分の一部は撚り線が解されている。複数の第1フィラメント110のうち撚り線が解されている部分と、複数の第2フィラメント120のうち撚り線が解されている部分とが、共に撚り線化されることで、複合撚り線104が形成されている。
【0019】
スリーブ130は、貫通孔131を有している。スリーブ130は、第1部分132と、第2部分133とを有している。第1部分132は、貫通孔131の貫通方向の上記一方側に位置している。第2部分133は、貫通孔131の貫通方向の他方側に位置している。本実施の形態において、第1部分132および第2部分133は一体で構成されている。スリーブ130は、第1部分132および第2部分133のみからなる。
【0020】
第2部分133における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Sbは、第1部分132における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さい。
【0021】
貫通孔131においては、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の各々のいずれもが一方側から挿通されている。具体的には、本実施の形態において、貫通孔131内には複合撚り線104が位置している。
【0022】
以下、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法について説明する。
図3は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法を示すフローチャートである。
図3に示すように、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法は、準備工程S1と、挿通工程S2と、圧接工程S3とを備えている。
【0023】
図4は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントを準備してスリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
【0024】
図4に示すように、準備工程S1においては、フィラメント102として、複数の第1フィラメント110と、複数の第2フィラメント120とを準備する。本実施の形態においては、具体的には、まず、一方の超電導線101における複数の第1フィラメント110、および、他方の超電導線101における複数の第2フィラメント120の各々を被覆する被覆部103の一部を除去する。複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の各々について、被覆部103が除去された部分の撚り線を解して整線化する。整線化された複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の各々を互いに撚り線化して、複合撚り線104を形成する。
【0025】
図4に示すように、挿通工程S2においては、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の両方を、スリーブ130の貫通孔131の一方側から挿通する。本実施の形態においては、具体的には、挿通工程S2において、複合撚り線104を、スリーブ130の貫通孔131の一方側から挿通する。
【0026】
圧接工程S3においては、まず、
図4に示すように、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120が挿通されたスリーブ130を、ダイス2内に配置する。そして、ダイス2によって、複数の第1フィラメント110と第2フィラメント120とが挿通されているスリーブ130を外側から押圧することにより、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120を互いに圧接する。
【0027】
図3に示すように、本実施の形態において、圧接工程S3は、第1圧接工程S31と、第2圧接工程S32とをこの順で含んでいる。圧接工程S3は、第2圧接工程S32と、第1圧接工程S31とをこの順で含んでいてもよい。
【0028】
図5は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の第1圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図5に示すように、第1圧接工程S31においては、第1部分132のみを押圧する。具体的には、スリーブ130の一方側に位置する第1部分132のみがダイス2に重なるようにスリーブ130を配置した後、ダイス2によって、第1部分132のみを外側から押圧する。本実施の形態においては、第1圧接工程S31において、上記貫通方向に対して直交する高さ方向に沿う方向に第1部分132のみを押圧する。
【0029】
図6は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の第2圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図6に示すように、第2圧接工程S32においては、第2部分133のみを押圧する。具体的には、スリーブ130の他方側に位置する第2部分133のみがダイス2に重なるようにスリーブ130を配置した後、ダイス2によって、第2部分133のみを外側から押圧する。本実施の形態においては、第2圧接工程S32において、上記高さ方向に沿う方向に第2部分133のみを押圧する。
【0030】
図5および
図6に示すように、本実施の形態においては、圧接工程S3において、第2部分133の、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積Sbが、第1部分132の、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さくなるように、スリーブ130を外側から押圧する。具体的には、第2圧接工程S32における押圧力が、第1圧接工程S31における押圧力より大きくなるようにして、スリーブ130を外側から押圧する。上記の工程により、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100が製造される。
【0031】
以下、実施の形態1に係る超電導マグネット装置の製造方法について説明する。実施の形態1に係る超電導マグネット装置1の製造方法は、接続工程と、第1コイル形成工程と、第2コイル形成工程とを備えている。本実施の形態に係る超電導マグネット装置1の製造方法において、各工程の順序は特に限定されない。
【0032】
図1に示すように、接続工程においては、上述した実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法により、複数の第1フィラメント110と複数の第2フィラメント120とを互いに接続する。第1コイル形成工程においては、複数の第1フィラメント110を含む超電導線101により第1コイル10を形成する。第2コイル形成工程においては、複数の第2フィラメント120を含む超電導線101により第2コイル20を形成する。なお、実施の形態1に係る超電導マグネット装置の製造方法において、接続工程は、第1コイル形成工程および第2コイル形成工程の後に行なわれる。
【0033】
本実施の形態に係る超電導マグネット装置1の製造方法は、必要に応じて、第3コイル30を準備する工程、第4コイル40を準備する工程、第2コイル20と第3コイル30とを互いに接続する工程、第3コイル30と第4コイル40とを互いに接続する工程、超電導永久電流スイッチ50を第1コイル10および第4コイル40の各々に接続する工程、励磁用電源端子60を設ける工程をさらに備えてもよい。本実施の形態に係る超電導マグネット装置1の製造方法は、複数の追加のコイルの各々を、第1コイル10、第2コイル20、第3コイル30および第4コイル40と互いに直列接続されるように接続する工程をさらに備えていてもよい。本実施の形態に係る超電導マグネット装置1の製造方法は、1以上の追加の永久電流スイッチの各々を、超電導永久電流スイッチ50と互いに並列に接続する工程をさらに備えていてもよい。上記の工程により、実施の形態1に係る超電導マグネット装置1が製造される。
【0034】
なお、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法においては、圧接工程S3が、第1圧接工程S31に代えて同時圧接工程を含んでいてもよい。
【0035】
図7は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例を示すフローチャートである。
図7に示すように、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例においては、圧接工程S3が、同時圧接工程S30と、第2圧接工程S32とをこの順で含んでいる。本変形例においては、第2圧接工程S32と同時圧接工程S30とをこの順で含んでいてもよい。
【0036】
図8は、本実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例において、複数のフィラメントを準備してスリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
図9は、
図8の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをIX-IX線矢印方向から見た断面図である。
図10は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例の同時圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図11は、
図10の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXI-XI線矢印方向から見た断面図である。
【0037】
図8から
図11に示すように、同時圧接工程においては、第1部分132および第2部分133の両方を同時に押圧する。具体的には、スリーブ130の全体がダイス2に重なるように、スリーブ130をダイス2内に配置したあと、ダイス2によって、スリーブ130全体を外側から押圧する。本変形例においては、同時圧接工程において、貫通方向に対して直交する高さ方向に沿う方向にスリーブ130を押圧する。本変形例においては、同時圧接工程S30において、スリーブ130にかかる押圧力が、貫通孔131の貫通方向にかけて均等となるように、スリーブ130を押圧する。
【0038】
図12は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例の第2圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図13は、
図12に示す複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXIII-XIII線矢印方向から見た図である。
【0039】
図12および
図13に示すように、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法と同様に、第2圧接工程S32においては、上記高さ方向に沿う方向に第2部分133のみを押圧する。なお、第2圧接工程S32で使用するダイス2については、同時圧接工程S30で使用したダイス2の上部ダイスを下部ダイスとして使用し、同時圧接工程S30で使用したダイス2の下部ダイスを上部ダイスとして使用することができる。
【0040】
上記のように、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100においては、スリーブ130が、貫通孔131を有している。貫通孔131においては、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の各々のいずれもが一方側から挿通されている。スリーブ130は、第1部分132と、第2部分133とを有している。第1部分132は、貫通孔131の貫通方向の上記一方側に位置している。第2部分133は、貫通孔131の貫通方向の他方側に位置している。第2部分133における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積は、第1部分132における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積より小さい。
【0041】
これにより、第2部分133においては、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積を小さくして、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の充填率を高めることができる。このため、超電導線の接続構造100の電気的特性を向上できる。さらに、第2部分133における貫通孔131内に位置する複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120のいずれかが断線した場合においても、第1部分132における貫通孔131内において複数の第1フィラメント110と複数の第2フィラメント120との電気的接続が確保される。このため、超電導線の接続構造100の信頼性を向上できる。
【0042】
本実施の形態においてスリーブ130は、第1部分132および第2部分133のみからなる。第1部分132および第2部分133は一体で構成されている。
【0043】
第1部分132および第2部分133の各々が上記の構成となる場合であっても、複数の第1フィラメント110と複数の第2フィラメント120との電気的接続が確保され、超電導線の接続構造100の信頼性を向上できる。
【0044】
実施の形態1に係る超電導マグネット装置は、超電導線の接続構造100と、第1コイルと、第2コイルとを備えている。第1コイル10は、複数の第1フィラメント110を含む超電導線101によって形成されている。第2コイル20は、複数の第2フィラメント120を含む超電導線101によって形成されている。
【0045】
これにより、電気的特性が向上し、かつ、信頼性が向上した超電導線の接続構造100を備える超電導マグネット装置1は、電気的特性が向上し、かつ、信頼性が向上する。
【0046】
実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法は、準備工程S1と、挿通工程S2と、圧接工程S3とを備えている。準備工程S1においては、フィラメント102として、複数の第1フィラメント110と、複数の第2フィラメント120とを準備する。挿通工程S2においては、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の両方を、スリーブ130の貫通孔131の一方側から挿通する。圧接工程S3においては、複数の第1フィラメント110と第2フィラメント120とが挿通されているスリーブ130を外側から押圧することにより、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120を互いに圧接する。スリーブ130は、第1部分132と、第2部分133とを有する。第1部分132は、貫通孔131の貫通方向の上記一方側に位置する。第2部分133は、貫通孔131の貫通方向の他方側に位置する。圧接工程S3においては、第2部分133の、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積が、第1部分132の、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積より小さくなるように、スリーブ130を外側から押圧する。
【0047】
これにより、第2部分133においては、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積を小さくして、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の充填率を高めることができる。このため、超電導線の接続構造100の電気的特性を向上できる。さらに、第2部分133における貫通孔131内に位置する複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120のいずれかが断線した場合には、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120が挿通される上記一方側に位置する第1部分132における貫通孔131内において、複数の第1フィラメント110と複数の第2フィラメント120との電気的接続が確保される。このため、電流経路がオープン状態になることが抑制され、超電導線の接続構造100の信頼性を向上できる。
【0048】
本実施の形態において、圧接工程S3は、第1圧接工程S31と、第2圧接工程S32とを含んでいる。第1圧接工程S31においては、第1部分132のみを押圧する。第2圧接工程S32においては、第2部分133のみを押圧する。
【0049】
これにより、第2圧接工程S32における押圧力を第1圧接工程S31における押圧力より大きくすることで、簡易な工程で、第2部分133の、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積Sbを、第1部分132の、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さくすることができる。さらに、スリーブ130に挿通される複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の各々の機械的強度または形状などに応じて、第1圧接工程S31および第2圧接工程S32の各々における押圧力を最適化することで、超電導線の接続構造100の電気的特性をさらに向上させることができる。
【0050】
実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例においては、圧接工程S3は、同時圧接工程S30と、第2圧接工程S32とを含んでいる。同時圧接工程S30においては、第1部分132および第2部分133の両方を同時に押圧する。
【0051】
これにより、第1部分132のみを押圧する第1圧接工程が不要となることで第1圧接工程において押圧位置を制御することが不要となり、超電導線の接続構造100の製造方法を簡略化できる。
【0052】
実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例においては、同時圧接工程S30において、上記貫通方向に対して直交する高さ方向に沿う方向にスリーブ130を押圧する。第2圧接工程S32においては、高さ方向に沿う方向に第2部分133のみを押圧する。
【0053】
これにより、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120が挿通されたスリーブ130の押圧方向を一方向で固定できるため、超電導線の接続構造100の製造方法を簡略化できる。
【0054】
実施の形態1に係る超電導マグネット装置の製造方法は、接続工程と、第1コイル形成工程と、第2コイル形成工程とを備えている。接続工程においては、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法により、複数の第1フィラメント110と複数の第2フィラメント120とを互いに接続する。第1コイル形成工程においては、複数の第1フィラメント110を含む超電導線101により第1コイル10を形成する。第2コイル形成工程においては、複数の第2フィラメント120を含む超電導線101により第2コイル20を形成する。
【0055】
このように製造された超電導マグネット装置1は、電気的特性が向上し、かつ、信頼性が向上した超電導線の接続構造100を備えるため、電気的特性が向上し、かつ、信頼性が向上する。
【0056】
実施の形態2.
以下、実施の形態2に係る超電導線の接続構造について説明する。実施の形態2に係る超電導線の接続構造は、第2部分の構成が主に、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の第2部分133の構成と異なる。よって、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様である構成については説明を繰り返さない。なお、実施の形態2に係る超電導線の接続構造についても、実施の形態1に係る超電導マグネット装置1に適用可能である。
【0057】
図14は、実施の形態2に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
図15は、
図14の超電導線の接続構造をXV-XV線矢印方向から見た断面図である。
図16は、
図14の超電導線の接続構造をXVI-XVI線矢印方向から見た断面図である。
【0058】
図14から
図16に示すように、実施の形態2に係る超電導線の接続構造200においては、貫通孔131の貫通方向から見て、第1部分232における、貫通孔131の断面の短手方向の長さは、第2部分233における、上記短手方向と同じ方向での貫通孔131の断面の長さより短い。さらに、実施の形態2に係る超電導線の接続構造200においては、貫通孔131の貫通方向から見て、第1部分232における、貫通孔131の断面の長手方向の長さは、第2部分233における、上記長手方向と同じ方向での貫通孔131の長さより長い。このように、第2部分233においては、貫通孔131の断面について上記長手方向の長さと上記短手方向の長さとの差が比較的小さいため、第2部分233における貫通孔131内の複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の各々が、貫通孔131内において互いに相対的な位置に偏りがあっても、複数の第1フィラメント110と複数の第2フィラメント120との接触面積を十分大きくすることができる。ひいては、超電導線の接続構造200の電気的特性をさらに向上できる。
【0059】
なお、貫通孔131の第1部分232における断面の短手方向の長さは、第1部分232の貫通孔131を貫通方向から見たときに、貫通孔131の中心点を通る最小の径を構成する軸の長さである。また、貫通孔131の第1部分232における断面の長手方向の長さは、上記短手方向に直交し、かつ、当該中心点を通る径を構成する軸の長さである。
【0060】
本実施の形態においても、第2部分233における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Sbは、第1部分232における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さい。これにより、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様に、超電導線の接続構造200について、電気的特性を向上できるとともに、信頼性を向上できる。
【0061】
以下、実施の形態2に係る超電導線の接続構造200の製造方法について説明する。実施の形態2に係る超電導線の接続構造200の製造方法は、第2圧接工程が、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例における第2圧接工程S32と異なっている。よって、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例と同様である構成については、説明を繰り返さない。
【0062】
図17は、実施の形態2に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントを準備して、スリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
図18は、
図17の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXVIII-XVIII線矢印方向から見た断面図である。
図19は、実施の形態2に係る超電導線の接続構造の製造方法の同時圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図20は、
図19の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXX-XX線矢印方向から見た断面図である。
【0063】
図17から
図20に示すように、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例と同様に、実施の形態2に係る超電導線の接続構造200の製造方法は、準備工程S1と、挿通工程S2と、圧接工程S3とを備え、圧接工程S3は、発明の実施の形態1と同様に、同時圧接工程S30を少なくとも含んでいる。
【0064】
図21は、実施の形態2に係る超電導線の接続構造の製造方法において、第2圧接工程において圧接する直前の状態を示す部分断面図である。
図22は、
図21の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXXII-XXII線矢印方向から見た断面図である。
図23は、実施の形態2に係る超電導線の接続構造の製造方法の第2圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図24は、
図23の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXXIV-XXIV線矢印方向から見た断面図である。
【0065】
図21から
図24に示すように、実施の形態2に係る超電導線の接続構造200の製造方法の圧接工程S3は、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例と同様に、同時圧接工程S30と第2圧接工程S32とをこの順で含む。実施の形態2に係る超電導線の接続構造200の製造方法においては、第2圧接工程S32において、貫通方向および上記高さ方向の両方に対して直交する幅方向に沿って、第2部分233のみを押圧する。これにより、第2部分233の貫通孔131内に位置する複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の各々は複数方向から圧接され、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120は互いにより強固に接続される。
【0066】
具体的には、
図19から
図22に示すように、第2圧接工程S32においては、同時圧接工程S30における貫通孔131の貫通方向から見たときの複数第1フィラメント110と複数の第2フィラメント120とスリーブ230とを、ダイス2に対して相対的に貫通孔131の中心軸の周方向に90°回転させた状態にして、第2部分233のみを押圧する。
【0067】
なお、本実施の形態においても、圧接工程S3は、第2圧接工程S32と、同時圧接工程S30とを、この順で含んでもよい。圧接工程S3が、第2圧接工程S32と、同時圧接工程S30とをこの順で含む場合は、第2圧接工程S32においてスリーブ230を押圧した後、第2圧接工程S32における貫通孔131の貫通方向から見たときの複数第1フィラメント110と複数の第2フィラメント120とスリーブ230とを、ダイス2に対して相対的に貫通孔131の中心軸の周方向に90°回転させた状態にした後に、同時圧接工程S30において、スリーブ130を押圧する。
【0068】
上記の工程により、実施の形態2に係る超電導線の接続構造200が製造される。
実施の形態3.
以下、実施の形態3に係る超電導線の接続構造について説明する。実施の形態3に係る超電導線の接続構造は、第1部分および第2部分の構成が主に、実施の形態1に係る超電導線の接続構造の第1部分132および第2部分133と異なる。よって、実施の形態3に係る超電導線の接続構造と同様である構成については説明を繰り返さない。なお、実施の形態3に係る超電導線の接続構造についても、実施の形態1に係る超電導マグネット装置1に適用可能である。
【0069】
図25は、実施の形態3に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
図25に示すように、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300において、スリーブ330は、一方側から他方側に向かうにつれて、貫通孔131の断面の断面積が小さくなっている。すなわち、第1部分332と第2部分333とが、貫通孔131の貫通方向に沿って連続的に設けられる。これにより、スリーブ330の機械的強度が向上する。
【0070】
本実施の形態においても、第2部分333における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Sbは、第1部分332における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さい。これにより、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様に、超電導線の接続構造300について、電気的特性を向上できるとともに、信頼性を向上できる。
【0071】
以下、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法について説明する。実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法は、圧接工程が、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例における圧接工程S3と異なっている。よって、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の変形例と同様である構成については、説明を繰り返さない。
【0072】
図26は、実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法を示すフローチャートである。
図26に示すように、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法においては、圧接工程S3は、同時圧接工程S30のみを含んでいる。
【0073】
図27は、実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法の同時圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図27に示すように、本実施の形態において、同時圧接工程S30においては、第1部分332および第2部分333の両方を同時に押圧する。同時圧接工程においては、スリーブ330の一方側から他方側に向かうにつれて、貫通孔131の貫通方向に直交する断面の断面積が小さくなるように、スリーブ330を押圧する。これにより、1回の圧接工程において、第2部分333の、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積Sbを、第1部分332の、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さくすることができる。
【0074】
本実施の形態において、同時圧接工程S30においては、貫通孔131の貫通方向に対して直交する高さ方向に沿う方向にスリーブ330を押圧する。これにより、同時圧接工程S30における第1部分332側の押圧力と、第2部分333側の押圧力とを制御することが容易となる。
【0075】
図27に示すように、より具体的には、本実施の形態の同時圧接工程S30においては、ダイス2aを構成する上部ダイスと下部ダイスとの間の上記高さ方向における距離が、上記一方側から上記他方側に向かうにつれて小さくなっている。このため、本実施の形態の同時圧接工程S30において、上記ダイス2aを用いることで、上述のようにスリーブ330を押圧することができる。
【0076】
なお、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法の同時圧接工程S30においては、上記貫通方向に対して直交する高さ方向とは異なる方向に沿ってスリーブ330を押圧してもよい。
【0077】
図28は、実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法の第1変形例において、複数のフィラメントを準備して、スリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
図29は、実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法の第1変形例において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
【0078】
図28および
図29に示すように、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法の第1変形例においては、同時圧接工程S30において、貫通孔131の貫通方向に沿う方向を径方向とする仮想円の周方向に沿う方向にスリーブ330を押圧する。これにより、スリーブ330について、一方側から他方側に向かうにつれて貫通孔131の断面の断面積を小さくするための圧接工程S3を簡略化できる。
【0079】
本変形例においては、具体的には、ダイス2bを構成する上部ダイスと下部ダイスとが、それぞれ支持部3bに支持されている。ダイス2bは、ダイス2bのスリーブ330側に位置する面が支持部3bを中心とする仮想円の径方向と平行となるように構成されている。ダイス2bのうち上部ダイスは、上記仮想円の周方向に沿って回動可能に構成されている。このため、本変形例の同時圧接工程S30においては、一般的な形状の上記ダイス2bを用いることで、上述のようにスリーブ330を1回のみ押圧して、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300を製造することができる。
【0080】
さらに、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法の第1変形例においては、同時圧接工程S30においてスリーブ330が貫通孔131の貫通方向において固定されていてもよい。
【0081】
図30は、実施の形態3に係る超電導線の接続構造の製造方法の第2変形例において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図30に示すように、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法の第2変形例においては、同時圧接工程S30において、スリーブ330が、貫通孔131の貫通方向に固定されている。これにより、第1部分332および第2部分333の各々に対する押圧力を精度よく調整することが可能となる。
【0082】
図30に示すように、より具体的には、本変形例の同時圧接工程S30においては、ダイス2cのうち下部ダイスが、凹部4cを有している。同時圧接工程S30においては、スリーブ330を、下部ダイスの凹部4cに嵌め込む。このため、本変形例の同時圧接工程S30において、上記ダイス2cを用いることで、ダイス2c内でスリーブ330が滑ることを抑制しつつ、上述のようにスリーブ330を押圧することができる。
【0083】
実施の形態4.
以下、実施の形態4に係る超電導線の接続構造について説明する。実施の形態4に係る超電導線の接続構造は、スリーブの構成のみが、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300とは異なっている。よって、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300と同様である構成については説明を繰り返さない。なお、実施の形態4に係る超電導線の接続構造についても、実施の形態1に係る超電導マグネット装置1に適用可能である。
【0084】
図31は、実施の形態4に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
図31に示すように、実施の形態4に係る超電導線の接続構造400において、スリーブ430の外周面135は、貫通孔131の貫通方向に直交する少なくとも一方向から見て、外側に向かって凹状に湾曲している。当該一方向から見て、スリーブ430の内周面134も、外周面135に沿って湾曲していてもよい。これにより、スリーブ430の一方側の端部において、貫通孔131内の複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の充填率が低下するため、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の断線の発生をさらに抑制することができる。
【0085】
本実施の形態においても、第2部分433における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Sbは、第1部分432における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さい。これにより、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様に、超電導線の接続構造400について、電気的特性を向上できるとともに、信頼性を向上できる。
【0086】
以下、実施の形態4に係る超電導線の接続構造400の製造方法について説明する。実施の形態4に係る超電導線の接続構造400の製造方法は、ダイスの形状のみが、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法とは異なっている。よって、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法と同様である構成については、説明を繰り返さない。
【0087】
図32は、実施の形態4に係る超電導線の接続構造の製造方法において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図32に示すように、本実施の形態の同時圧接工程S30においては、ダイス2dのスリーブ430側の面が、スリーブ430に向かって凸状に湾曲している。このようなダイス2dによってスリーブ430を押圧することにより、スリーブ430の外周面135は、貫通孔131の貫通方向に直交する少なくとも一方向から見て、外側に向かって凹状に湾曲する。
【0088】
実施の形態5.
以下、実施の形態5に係る超電導線の接続構造について説明する。実施の形態5に係る超電導線の接続構造は、スリーブの構成のみが、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300とは異なっている。よって、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300と同様である構成については説明を繰り返さない。なお、実施の形態5に係る超電導線の接続構造についても、実施の形態1に係る超電導マグネット装置1に適用可能である。
【0089】
図33は、実施の形態5に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
図33に示すように、実施の形態5に係る超電導線の接続構造500において、スリーブ530の一方側において、外周面135が、貫通孔131の貫通方向に直交する少なくとも一方向から見て、外側に屈曲している。またスリーブ530の一方側において、内周面134が、上記一方向から見て、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の各々から離間するように屈曲している。これにより、スリーブ530の一方側の端部において、貫通孔131内の複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の充填率をより低くできるため、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の断線の発生をさらに抑制することができる。
【0090】
本実施の形態においても、第2部分533における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Sbは、第1部分532における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さい。これにより、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様に、超電導線の接続構造500について、電気的特性を向上できるとともに、信頼性を向上できる。
【0091】
以下、実施の形態5に係る超電導線の接続構造500の製造方法について説明する。実施の形態5に係る超電導線の接続構造500の製造方法は、ダイスの形状のみが、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法とは異なっている。よって、実施の形態3に係る超電導線の接続構造300の製造方法と同様である構成については、説明を繰り返さない。
【0092】
図34は、実施の形態5に係る超電導線の接続構造の製造方法において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図34に示すように、本実施の形態の同時圧接工程S30においては、ダイス2eのスリーブ530側の面のうち、スリーブ530の一方側の端部に対応する面が、スリーブ530から離れるように屈曲している。このようなダイス2eによってスリーブ530を押圧することにより、スリーブ530の一方側の端部において、貫通孔131内の複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の充填率をより低くすることができる。
【0093】
なお、実施の形態5に係る超電導線の接続構造500の製造方法においては、同時圧接工程S30においてスリーブ530が貫通孔131の貫通方向の一方向において固定されていてもよい。
【0094】
図35は、実施の形態5に係る超電導線の接続構造の製造方法の変形例において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図35に示すように、実施の形態5に係る超電導線の接続構造500の製造方法の変形例においては、同時圧接工程S30において、スリーブ530が、貫通孔131の貫通方向のうち他方側に向かって移動しないように固定されている。これにより、第1部分532および第2部分533の各々に対する押圧力を精度よく調整することが可能となる。
【0095】
図35に示すように、より具体的には、本変形例の同時圧接工程S30においては、ダイス2fのうち下部ダイスの他方側の端部が凸部5fを有している。同時圧接工程S30においては、スリーブ530の他方側の端部が、凸部5fの一方側の端部と接触するように、スリーブ530を下部ダイス上に配置する。このため、本変形例の同時圧接工程S30において、上記ダイス2fを用いることで、上述のようにスリーブ530を押圧することができる。
【0096】
実施の形態6.
以下、実施の形態6に係る超電導線の接続構造について説明する。実施の形態6に係る超電導線の接続構造は、スリーブの構成が主に、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100のスリーブ130の構成とは異なる。よって、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様である構成については説明を繰り返さない。なお、実施の形態6に係る超電導線の接続構造についても、実施の形態1に係る超電導マグネット装置1に適用可能である。
【0097】
まず、実施の形態6に係る超電導線の接続構造について説明する前に、比較例に係る超電導線の接続構造と、比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法について説明する。
【0098】
図36は、比較例に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
図36に示すように、比較例に係る超電導線の接続構造900は、実施の形態1と同様、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120と、1つのスリーブ930とを備えている。ただし、スリーブ930における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積は、貫通方向にかけて略同一となっている。
【0099】
図37は、比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントを準備した状態を示す部分断面図である。
図38は、比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントをスリーブに挿通する直前の状態を示す部分断面図である。
図39は、比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントをスリーブに挿通した状態を示す部分断面図である。
図40は、
図39の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXL-XL線矢印方向から見た断面図である。
図41は、比較例に係る超電導線の接続構造の製造方法の圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。
図42は、
図41の複数のフィラメント、スリーブおよびダイスをXLII-XLII線矢印方向から見た断面図である。
【0100】
図37から
図40に示すように、比較例に係る超電導線の接続構造900の製造方法は、実施の形態1と同様に、準備工程と、挿通工程とを備えている。また、
図39から
図42に示すように、比較例に係る超電導線の接続構造900の製造方法は、圧接工程をさらに備えている。ただし、本比較例においては、圧接工程は、実施の形態1のような第1圧接工程S31および第2圧接工程S32を含んでいない。
【0101】
図39から
図42に示すように、本比較例における圧接工程においては、ダイス2によって、スリーブ930の全体を、スリーブ930の貫通孔131の貫通方向に対して直交する高さ方向に沿う方向に押圧する。本比較例の圧接工程においては、スリーブ930における貫通孔131の、上記貫通方向に直交する断面における断面積が、上記貫通方向にかけて略同一となるように、スリーブ930を外側から押圧する。このようにして、比較例に係る超電導線の接続構造900が製造される。
【0102】
次に、実施の形態6に係る超電導線の接続構造について説明する。
図43は、実施の形態6に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
図43に示すように、第1部分632および第2部分633は別体で構成されており、かつ、互いに離間している。これにより、第1部分632における貫通孔131の貫通方向に直交する断面の断面積Saと、第2部分633における貫通孔131の貫通方向に直交する断面の断面積Sbとを、制御することが容易となる。
【0103】
本実施の形態においても、第2部分633における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Sbは、第1部分632における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さい。これにより、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様に、超電導線の接続構造600について、電気的特性を向上できるとともに、信頼性を向上できる。
【0104】
すなわち、実施の形態6においては、実質的に2つのスリーブ630が設けられている。これら2つのスリーブ630の1つずつに着目すると、2つのスリーブ630の各々は、上記比較例におけるスリーブ930と同様に、貫通孔131の貫通方向に直交する断面における断面積が、貫通方向にかけて略同一となっている。しかしながら、実施の形態6においては、これら2つのスリーブ630の各々の貫通孔131の断面積を互いに異ならせることで、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様に、超電導線の接続構造600について、電気的特性を向上できるとともに、信頼性を向上できる。
【0105】
以下、実施の形態6に係る超電導線の接続構造600の製造方法について説明する。実施の形態6に係る超電導線の接続構造600の製造方法は、挿通工程が主に、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法の挿通工程S2と異なっている。よって、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100の製造方法と同様である構成については、説明を繰り返さない。
【0106】
図44は、実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法を示すフローチャートである。
図44に示すように、実施の形態6に係る超電導線の接続構造600の製造方法の挿通工程S2は、第1挿通工程S21と、第2挿通工程S22とを含んでいる。
【0107】
図45は、実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントを準備して、スリーブの第1部分に挿通した状態を示す部分断面図である。
図45に示すように、本実施の形態においては、第1挿通工程S21において、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の両方を、スリーブ630の第1部分632の一方側から挿通する。具体的には、第1挿通工程S21において、複合撚り線104を、スリーブ630の第1部分632に一方側から挿通する。
【0108】
図46は、実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法の第1圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。第1圧接工程S31においては、まず、
図45に示すように、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120が挿通された第1部分632を、ダイス2内に配置する。そして、ダイス2によって、複数の第1フィラメント110と第2フィラメント120とが挿通されている第1部分632を外側から押圧することにより、第1部分632において、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120を互いに圧接する。
【0109】
実施の形態6に係る超電導線の接続構造600の製造方法は、第1挿通工程S21と第1圧接工程S31とをこの順で含んでいる。
【0110】
図47は、実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法において、複数のフィラメントをスリーブの第2部分に挿通した状態を示す部分断面図である。
図47に示すように、本実施の形態においては、第2挿通工程S22において、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120の両方を、スリーブ630の第2部分633の一方側から挿通する。具体的には、第2挿通工程S22において、複合撚り線104を、スリーブ630の第2部分633の貫通孔131に一方側から挿通する。
【0111】
図48は、実施の形態6に係る超電導線の接続構造の製造方法の第2圧接工程において、ダイスによってスリーブを外側から押圧した状態を示す部分断面図である。第2圧接工程S32においては、まず、
図48に示すように、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120が挿通された第2部分633を、ダイス2内に配置する。そして、ダイス2によって、複数の第1フィラメント110と第2フィラメント120とが挿通されている第2部分633を外側から押圧することにより、第2部分633において、複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120を互いに圧接する。
【0112】
実施の形態6に係る超電導線の接続構造600の製造方法は、第2挿通工程S22と第2圧接工程S32とをこの順で含んでいる。上記の工程により、実施の形態6に係る超電導線の接続構造600が製造される。
【0113】
すなわち、実施の形態6においては、実質的に2つのスリーブ630の各々を、互いに異なる圧接工程において外側から圧接している。これら2つのスリーブ630の1つずつに着目すると、2つのスリーブ630の各々は、上記比較例における圧接工程と同様に、上記貫通方向に直交する断面積が上記貫通方向にかけて略一定となるように、外側から押圧されている。しかしながら、実施の形態6においては、これら2つのスリーブ630の各々の貫通孔131の断面積を互いに異ならせるように2つのスリーブ630の各々を外側から押圧する。これにより、実施の形態1と同様に、電気的特性が向上し、かつ、信頼性が向上した実施の形態6に係る超電導線の接続構造600を製造することができる。
【0114】
実施の形態7.
以下、実施の形態7に係る超電導線の接続構造について説明する。実施の形態7に係る超電導線の接続構造は、スリーブ内に位置する複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントの構成が主に、実施の形態6に係る超電導線の接続構造600の複数の第1フィラメント110および複数の第2フィラメント120と異なる。よって、実施の形態6に係る超電導線の接続構造600と同様である構成については説明を繰り返さない。なお、実施の形態7に係る超電導線の接続構造についても、実施の形態1に係る超電導マグネット装置1に適用可能である。
【0115】
図49は、実施の形態7に係る超電導線の接続構造の構成を示す部分断面図である。
図49に示すように、実施の形態7に係る超電導線の接続構造700は、スリーブ730の内部において、複数の第1フィラメント710および複数の第2フィラメント720が、貫通孔131の中心軸の軸方向に沿って互いに平行に位置している。すなわち、本実施の形態において、複数の第1フィラメント710および複数の第2フィラメント720は、複合撚り線を形成していない。
【0116】
本実施の形態においても、第2部分733における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Sbは、第1部分732における貫通孔131の、貫通方向に直交する断面における断面積Saより小さい。これにより、実施の形態1に係る超電導線の接続構造100と同様に、超電導線の接続構造700について、電気的特性を向上できるとともに、信頼性を向上できる。
【0117】
なお、本実施の形態に係る超電導線の接続構造700を製造する場合は、実施の形態6に係る超電導線の接続構造600の製造方法の第1挿通工程S21および第2挿通工程S22の各々について、複数の第1フィラメント710および複数の第2フィラメント720をツイストさせて撚り線化することなく、互いに平行になるようにして複数の第1フィラメント710および複数の第2フィラメント720の各々を第1部分732および第2部分733の各々の貫通孔131に挿通すればよい。
【0118】
上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0119】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0120】
1 超電導マグネット装置、2,2a,2b,2c,2d,2e,2f ダイス、3b 支持部、4c 凹部、5f 凸部、10 第1コイル、20 第2コイル、30 第3コイル、40 第4コイル、50 超電導永久電流スイッチ、60 励磁用電源端子、100,200,300,400,500,600,700,900 超電導線の接続構造、101 超電導線、102 フィラメント、103 被覆部、104 複合撚り線、110,710 第1フィラメント、120,720 第2フィラメント、130,230,330,430,530,630,730,930 スリーブ、131 貫通孔、132,232,332,432,532,632,732 第1部分、133,233,333,433,533,633,733 第2部分、134 内周面、135 外周面。