(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】汚物処理装置
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20240125BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20240125BHJP
D21C 5/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B09B3/70
B09B3/00 ZAB
D21C5/02
(21)【出願番号】P 2019232454
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 克久
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】畑中 郁則
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-019169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
D21C 5/00- 5/02
B02C 13/00-13/31
18/00-18/38
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水状態のポリマーを含む被処理物の破砕片と、前記ポリマーの保水力を低下させる処理液とが収容される処理槽と、
前記処理槽内の前記破砕片と前記処理液を前記処理槽の外部へ排出する排出路と、
前記排出路の途中に設けられた開閉弁と、
前記排出路における排出過程で前記開閉弁の開度を経時的に変動させる制御部とを備え
、
前記制御部により、前記開閉弁は最小開度時に全閉しないように制御される汚物処理装置。
【請求項2】
前記
処理槽は、前記排出路に連通する排出口と、前記排出口に向けて水を吐出する給水部とを備え、
前記給水部における水の吐出が、前記排出路における排出過程において前記制御部によって制御される請求項1に記載の汚物処理装置。
【請求項3】
前記
給水部は、前記開閉弁の開度が増大したときに水を吐出するように前記制御部によって制御される請求項
2に記載の汚物処理装置。
【請求項4】
前記
開閉弁の開度の増減に伴って開度の最大ピークが複数回繰り返される過程で、前記給水部からの水の吐出を伴う最大ピーク時の開度が、前記給水部からの水の吐出を伴わない最大ピーク時の開度よりも大きくなるように、前記開閉弁の開度が前記制御部によって制御される請求項
2及び請求項3のいずれか1項に記載の汚物処理装置。
【請求項5】
前記
給水部から水が吐出するときに前記開閉弁が全開状態となるように、前記開閉弁の開度が前記制御部によって制御される請求項
2から請求項4のいずれか1項に記載の汚物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汚物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用済みの紙おむつを廃棄処理する廃棄処理設備が開示されている。この廃棄処理設備は、紙おむつを破砕した後に、ポリマー分解槽内において、紙おむつの破砕片と水と分解剤を混合して撹拌し、紙おむつのポリマーから水分を分離させる。ポリマーから水分を分離させた後、ポリマー分解槽内のパルプ成分は、パルプ脱水機によって脱水され、回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パルプ脱水機は、ポリマー分解槽と同じ高さに設定されているため、ポリマー分解槽内のパルプ成分をパルプ脱水機へ送るために、ポンプが設けられている。ポンプを用いずにパルプ成分をパルプ脱水機へ送る場合は、パルプ脱水機をポリマー分解槽の下方に設置し、ポリマー分解槽からパルプ脱水機への排出路に開閉弁を設ければよい。ポリマー分解槽内でポリマーから水分を分離する処理を行っている間は、開閉弁を閉弁しておく。ポリマーから水分を分離させた後は、開閉弁を開弁すると、パルプ成分が、パルプ成分の自重とポリマー分解槽内の水圧とによって、ポリマー分解槽から排出される。しかし、開閉弁がボールバルブである場合、開閉弁内の流路の断面積が比較的小さいため、紙おむつの破砕片が開閉弁内に詰まることが懸念される。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、開閉弁の詰まりを防止することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の汚物処理装置は、吸水状態のポリマーを含む被処理物の破砕片と、前記ポリマーの保水力を低下させる処理液とが収容される処理槽と、前記処理槽内の前記破砕片と前記処理液を前記処理槽の外部へ排出する排出路と、前記排出路の途中に設けられた開閉弁と、前記排出路における排出過程で前記開閉弁の開度を経時的に変動させる制御部とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図8】離水処理工程におけるポリマーの粒径の変化をあらわすグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本開示の汚物処理装置10を具体化した実施形態1を
図1~
図9を参照して説明する。以下の説明において、上下の方向については、
図1,5にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図1~4にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。前後の向きについては、
図2,4における下方、及び
図5における右方を、前方と定義する。
【0009】
汚物処理装置10は、被処理物としての使用済の紙おむつDを廃棄するための処理を行う装置である。汚物処理装置10は、複数の使用済みの紙おむつDが時間差で不定期的に発生する介護施設等に設置される。
【0010】
処理対象の紙おむつDは、高吸水性ポリマーP(SAP,super absorbent polymer、以下単にポリマーPと表記する)やパルプを、不織布等のシート材S内に収容したものである。シート材Sは、ポリプロピレン製の不織布等からなる表層材と、ポリエチレン等の樹脂材からなる防水材とを有する。表層材と防水材との間にパルプやポリマーPが挟まれている。パルプとポリマーPは、し尿等の汚物の水分を吸収する吸水性能と、水分を吸収した状態に保つ保水性能とを有する。シート材Sは、ポリエチレン等の比重が水よりも小さい樹脂材を含む。水分を吸収する前のポリマーPの粒径は150~600μmである。水分を吸収したポリマーPは膨潤してゲル状となり、吸水状態のポリマーPの粒径は600μm~4mmである。
【0011】
使用済みの紙おむつDの処理は、紙おむつDを破砕する破砕工程と、吸水状態のポリマーPから水分を分離させる離水処理工程と、脱水工程とを経て行われる。脱水工程では、離水処理工程で使用した処理液TやポリマーPから分離した水分等の廃液を、シート材SやポリマーP等の固形物から分離させる。
【0012】
離水処理工程では、水分を吸収したポリマーPの保水性能を低下させる離水剤Rを用いて行う。具体的には、離水剤Rを水に溶解した処理液Tに、紙おむつDの破砕片Fを浸漬させる。破砕片Fには、吸水状態のポリマーPが含まれる。離水剤Rの一例として、本実施形態では、2価の金属イオンを含む塩化カルシウムが用いられる。離水剤RとポリマーPとを反応させることによって、水分を吸収したポリマーPから水分が分離する。水分が分離したポリマーPは、吸水性能を失い、再び水分を吸収不能な不可逆状態となる。使用済みの紙おむつDに、水分を吸収していないポリマーPが含まれていても、そのポリマーPの吸水性能は失われる。
【0013】
図1に示すように、汚物処理装置10は、多機能処理装置11と、脱水装置60とを備えて構成されている。多機能処理装置11は、投入部12と、破砕装置25と、離水処理装置38と、制御部58とを備えて構成されている。多機能処理装置11は、投入部12と破砕装置25と離水処理装置38とで共用される縦長箱状のハウジング13を有する。投入部12の下方には破砕装置25が配置され、破砕装置25の下方には離水処理装置38が配置され、離水処理装置38の下方には脱水装置60が配置されている。
【0014】
投入部12は、下面が開放された箱形をなす。投入部12の内部は、使用済みの紙おむつDが投入される投入空間14である。本実施形態1では、投入部12に、第1投入口15と第2投入口17が設けられている。投入部12には、第1投入口15及び第2投入口17のいずれか一方のみが設けられていてもよい。第1投入口15は、ハウジング13を構成する右側の壁部に形成されている。第1投入口15は、投入部12の外側から開閉操作が可能な第1蓋16が設けられている。第1蓋16は、自身の下端縁に沿って水平方向(すなわち、前後方向)に伸びる中心軸16Aを有する。中心軸16Aはハウジング13に支持されている。第1蓋16は、中心軸16A周りに外側へ回動して、自身の姿勢を起立状態Vと倒伏状態Lとに変化し得るようになっている。
【0015】
投入部12内には、閉鎖部22が第1投入口15を内側から覆うように設けられている。閉鎖部22は、例えば、平板状をなして形成された可撓性を有したゴムや合成樹脂等で形成されている。閉鎖部22には、閉鎖部22の上端の僅か下方から下端にかけて複数のスリットが形成されている。閉鎖部22には、スリットによって、上端部が互いに連結した複数の矩形部22Aが形成されている。閉鎖部22は、上端部が第1投入口15の上端縁に沿うように投入部12に取り付けられている。例えば、紙おむつDを第1投入口15から投入部12内に投入する際、閉鎖部22は、各矩形部22Aが投入部12内に押し広げられる。投入部12内に紙おむつDを投入し終えると、各矩形部22Aは再び、第1投入口15を閉鎖するように元の姿勢に戻る。
【0016】
汚物処理装置10が設置された階で発生した使用済みの紙おむつDは、第1投入口15から投入空間14内に投入することができる。このとき、手動で第1蓋16を起立状態Vから倒伏状態Lに変化させ、第1投入口15を開放状態にする。使用者は、第1投入口15及び閉鎖部22を介して投入部12内に紙おむつDを投入する。このとき、第1蓋16は、自身の姿勢が倒伏状態Lに維持される。このため、第1蓋16は、内面(すなわち、起立状態Vにおいて、投入部12内に位置する面)に付着した水分等が床に流れることを防ぐことができる。紙おむつDは、第1蓋16の内面に沿うように投入部12に投入されることになる。このため、第1投入口15から紙おむつDを投入する場合、破砕装置25に対する紙おむつDの姿勢は、安定し易い。紙おむつDを投入した後は、使用者は、手動によって第1蓋16を倒伏状態Lから起立状態Vに変化させ、第1投入口15を閉鎖状態にする。
【0017】
第2投入口17は、ハウジング13を構成する壁部のうち第1投入口15とは異なる左側の壁部に形成されている。第2投入口17には、投入空間14内へ開く第2蓋18が設けられている。第2投入口17には、シューター19の下流端が接続されている。シューター19の上流端は、汚物処理装置10が設置された階以上の上層階に設けた投棄口(図示省略)として機能する。上層階で発生した使用済みの紙おむつDは、投棄口からシューター19内に投入される。シューター19内に投入された紙おむつDは、シューター19を通り、第2蓋18を押し動かして第2投入口17から投入空間14内に収容される。紙おむつDが第2投入口17を通過すると、第2蓋18は、自重により第2投入口17を閉塞する。
【0018】
投入部12には、第1投入口15と第2投入口17から投入空間14内に紙おむつDが投入されたことを検知する投入センサ20が設けられている。投入センサ20は、1つの紙おむつDが投入される毎に、検知信号を制御部58へ送信する。制御部58には、図示しない操作部が電気的に接続されている。汚物処理装置10を使用する使用者がこの操作部を操作することによって、汚物処理装置10の動作を開始したり停止したりすることができる構成となっている。
【0019】
投入部12の上面には、脱臭装置21が設けられている。投入部12の上面には、
図2に示すように、第1開口12A、第2開口12B、及び第3開口12Cが開口して形成されている。第3開口12Cは、投入部12の上面のうち、左右方向において第1投入口15に近い右側の側縁部に沿うように配置されている。第1開口12A、及び第2開口12Bは、投入部12の上面のうち、左右方向において第3開口12Cを挟んで第1投入口15から離れた左側の側縁部に沿うように配置されている。
【0020】
脱臭装置21は、
図2に示すように、第1脱臭装置21A、及び第2脱臭装置21Bを有している。第1脱臭装置21A、及び第2脱臭装置21Bは、投入部12の上面に左右方向に並んで配置されている。具体的には、第2脱臭装置21Bは、投入部12の上面のうち、左右方向において第1投入口15に近い右側の側縁部に沿うように配置されている。第1脱臭装置21Aは、投入部12の上面のうち、左右方向において第2脱臭装置21Bを挟んで第1投入口15から離れた左側の側縁部に沿うように配置されている。第1脱臭装置21Aは、ケース21C、吸気部21D、及び脱臭部本体21Eを有している。ケース21Cは、上端が閉鎖され、下端が開放された箱状をなしている。ケース21Cは、下端を投入部12の上面に当接させるように取り付けられている。ケース21Cは、投入部12の第1開口12Aと第2開口12Bとを連通させている。
【0021】
吸気部21Dには、例えば、公知の軸流ファン等が用いられる。吸気部21Dは、下面から吸気し上面から送風する。吸気部21Dは、制御部58に電気的に接続されている。吸気部21Dは、第1開口12Aを下面で覆うように投入部12の上面に取り付けられている。吸気部21Dは、ケース21C内に位置している。吸気部21Dは、第1開口12Aを介して投入部12から吸気する。
【0022】
脱臭部本体21Eには、例えば、活性炭が付着した不織布等で形成された、所謂、脱臭フィルターが用いられる。脱臭部本体21Eは、吸気部21Dの上面(すなわち、送風する面)から送風された空気が脱臭部本体21Eの前側面に吹き付けるように配置される。具体的には、脱臭部本体21Eは、ケース21C内において、第1開口12Aが連通する側と第2開口12Bが連通する側とを仕切るように配置されている。吸気部21Dは、下面から投入部12内の空気を吸引して上面から脱臭部本体21Eに向けて送風する。脱臭部本体21Eは、吸気部21Dの上面から送風された空気を脱臭する。脱臭された空気は、第2開口12Bを介して投入部12内に戻される。第2開口12Bは、第1脱臭装置21Aで脱臭された空気を投入部12内に戻す循環口である。第1脱臭装置21Aは、主として投入部12内の左側の領域において空気を前後方向に循環して脱臭する。
【0023】
第2脱臭装置21Bは、ケース21F、吸気部21G、及び脱臭部本体21Hを有している。ケース21Fは、上面が閉鎖され、下面及び、後面の一部が開放された箱状をなしている。ケース21Fは、下面を投入部12の上面に当接させるように取り付けられている。ケース21Fの後面は開放されている。ケース21Fは、ケース21Fの下面が投入部12の第3開口12Cの上方に重なるように、投入部12の上面に配置されている。
【0024】
吸気部21Gには、吸気部21Dと同様に、公知の軸流ファン等が用いられる。吸気部21Gは、下面から吸気し上面から送風する。吸気部21Gは、制御部58に電気的に接続されている。吸気部21Gは、吸気部21Gの下面で第3開口12Cを覆うように投入部12の上面に取り付けられている。吸気部21Gは、ケース21F内に位置している。吸気部21Gは、第3開口12Cを介して投入部12から吸気する。
【0025】
脱臭部本体21Hには、脱臭部本体21Eと同様に、例えば、活性炭が付着した不織布等で形成された、所謂、脱臭フィルターが用いられる。脱臭部本体21Hは、ケース21Fの開放された後面を塞ぐように配置される。脱臭部本体21Hの前面には、吸気部21Gの上面(すなわち、送風する面)から送風された空気が吹き付けられる。脱臭部本体21Hは、後面から脱臭された空気を外部に排出する。このとき、外部に排出される空気Exは、第1投入口15が形成されている右側とは異なる後方向に向けて排出される。これによって、第1投入口15と対向する位置にいる使用者に向けて脱臭された空気が排出されないため、汚物処理装置10は、使用者に臭気を感じに難くすることができる。吸気部21Gは、下面から投入部12内の空気を吸引して上面から脱臭部本体21Hに向けて送風する。つまり、第2脱臭装置21Bは、投入部12内に投入された紙おむつDから発生した臭気を投入部12の右側から吸気して脱臭し、脱臭済みの空気を外部に排出する。
【0026】
破砕装置25は、投入部12に投入された被破砕物である紙おむつDを、破砕するための装置である。破砕装置25は、周壁部26と、左右一対の破砕部材28と、第1給水部34とを有する。周壁部26は、ハウジング13を構成し、投入部12の壁部の下端に連なっている。破砕装置25の内部には、周壁部26で囲まれた破砕空間27が形成されている。破砕空間27は、投入空間14に連通している。破砕空間27内は、一対の破砕部材28が収容されている。
【0027】
一対の破砕部材28は、全体として軸線を前後方向に向けた円柱形をなす。各破砕部材28は、破砕用モータ29によって回転駆動される回転軸30を有する。破砕用モータ29の駆動は、制御部58によって制御される。一対の破砕部材28は、回転軸30の軸線を同じ高さで左右に並べるように配置されている。各破砕部材28の外周には複数の剪断刃31が形成されている。1つの剪断刃31は、回転軸30と同心の円盤形をなす。剪断刃31の最大外径は、回転軸30の外径よりも大きい寸法である。複数の剪断刃31は、回転軸30の軸線方向に一定間隔を空けて配置されている。1つの剪断刃31の軸線方向の幅寸法は、隣り合う剪断刃31の間隔と同じか、それよりも僅かに小さい寸法である。
【0028】
各剪断刃31の外周面は、周方向に一定ピッチで複数の突起32を配置した鋸歯状をなしている。突起32の突出方向は、剪断刃31の径方向に対して斜め方向である。突起32は、その突起32の回転方向前方に向かうように突出している。剪断刃31の外周のうち周方向に隣り合う突起32の間には、凹部33が形成されている。複数の凹部33は、剪断刃31の外周において周方向に間隔を空けて配置されている。一方の剪断刃31の突起32及び凹部33の形状は、他方の剪断刃31の突起32及び凹部33の形状と、左右対称である。
【0029】
図3に示すように、一方の破砕部材28に形成されている複数の剪断刃31と、他方の破砕部材28に形成されている複数の剪断刃31は、回転軸30の軸線方向に交互に並ぶように配置されている。汚物処理装置10を正面から見た
図1に示す正面視において、一方の破砕部材28の回転方向と、他方の破砕部材28の回転方向は、互いに逆向きである。一方の剪断刃31と他方の剪断刃31が軸線方向に重なる領域では、一方の剪断刃31も他方の剪断刃31も、破砕部材28の回転に伴って下方へ変位する。
【0030】
軸線方向に隣り合う剪断刃31の間には、破砕部材28同士が干渉せずに円滑な回転でき、かつ剪断刃31の間に紙おむつDの破砕片Fが噛み込まない程度の必要最小のクリアランスが空いている。剪断刃31同士の間のクリアランスは、例えば40μm以上である。一方の破砕部材28の剪断刃31の外周と、他方の破砕部材28の回転軸30の外周面との間には、双方の破砕部材28の回転を妨げない程度の必要最小のクリアランスが空いている。剪断刃31と回転軸30との間のクリアランスは、例えば100μm以上である。
【0031】
剪断刃31のうち、軸線方向に交互に並ぶ部位とは反対側の部位は、破砕部材28の回転に伴って上方へ変位する。剪断刃31のうち上向きに移動する部位は、周壁部26の内面に沿うように配置されている。剪断刃31と周壁部26の間には、剪断刃31が周壁部26と干渉せずに円滑な回転でき、かつ剪断刃31と周壁部26との間に紙おむつDの破砕片Fが入り込まない程度の必要最小のクリアランスが空いている。剪断刃31と周壁部26との間のクリアランスは、例えば100μm以上である。
【0032】
一方の破砕部材28の最大外径と他方の破砕部材28の最大外径は、互いに同じ寸法である。破砕部材28の最大外径は120mmであり、破砕部材28の回転速度は9rpmである。したがって、破砕部材28の外周、即ち剪断刃31の周速度は、0.057m/sである。破砕部材28の外周、即ち剪断刃31の周速度は、0.1m/s以下であることが好ましい。1つの剪断刃31の幅寸法、即ち回転軸30の軸線方向の寸法は、6mm以上であり、且つ30mm以下である。剪断刃31の幅寸法は、吸水状態のポリマーPの粒径である4mmよりも大きい寸法が好ましい。
【0033】
第1給水部34は周壁部26のうち破砕部材28よりも上方の位置に配置されている。第1給水部34の第1ノズル35からは、破砕空間27内に水が吐出される。第1ノズル35から吐出された水は、破砕部材28に対し上から降り注ぐ。破砕部材28に降り注がれた水は、剪断刃31同士の隙間、剪断刃31と回転軸30との隙間、剪断刃31と周壁部26との隙間を通過して、破砕部材28の下方へ流れ落ちる。第1給水部34の給水動作は、制御部58によって制御される。
【0034】
離水処理装置38は、処理槽39と、撹拌部材48と、第2給水部54と、離水剤供給部56とを備えている。処理槽39は箱形をなし、処理槽39の上面のうち右側領域が開放されている。処理槽39の内部は、離水処理を行うための処理空間である。処理槽39の上面部のうち開放された右側領域は、破砕装置25の周壁部26の上端に連なっている。破砕空間27と処理槽39内の空間は上下に連通している。
【0035】
処理槽39の底面41は、平面からなる第1傾斜面42と、同じく平面からなる第2傾斜面43とによって構成されている。処理槽39の底面41は、第1傾斜面42と第2傾斜面43との境界線44において谷状に屈曲している。第1傾斜面42は、底面41のうち前側の領域を構成する。第1傾斜面42は、処理槽39の上面の開口領域の下方、即ち一対の破砕部材28の下方に配置されている。第2傾斜面43は、底面41のうち後側の領域を構成する。第2傾斜面43は、一対の破砕部材28に対して後方へ外れた領域に配置されている。
【0036】
図5に示すように、第1傾斜面42の左右方向の下端縁と第2傾斜面43の左右方向の下端縁は、鈍角をなして連なっている。第1傾斜面42は、後方に向かって下るように傾斜しているとともに、左方に向かって下るように傾斜している。第2傾斜面43は、前方に向かって下るように傾斜しているとともに、左方に向かって下るように傾斜している。第1傾斜面42と第2傾斜面43の境界線44は、後述する排出口47に向かって下る方向に傾斜している。第1傾斜面42の前後寸法は第2傾斜面43の前後寸法よりも大きい。
図5に示すように、側面視において、水平面Hに対する第2傾斜面43の傾斜角度βは、水平面Hに対する第1傾斜面42の傾斜角度αよりも大きい。第1傾斜面42の傾斜角度αは、15°である。第2傾斜面43の傾斜角度βは、45°以下である。
【0037】
処理槽39を構成する左側壁部46には、円形の排出口47が形成されている。処理槽39内で離水処理が終了した後は、処理槽39内の破砕片F、ポリマーP、処理液Tが排出口47から排出され、排出路64を通って脱水装置60へ送られる。破砕片Fには、シート材Sのうち水よりも比重の小さい樹脂材等の軽量破片も含まれる。排出口47の開口領域の高さ寸法、即ち排出口47の直径寸法は、50mm以上である。この寸法設定は、剪断刃31で剪断される破砕片Fの最大幅寸法が30mm程度と想定されることに基づくものである。
【0038】
排出口47は、処理槽39内に向かって右方へ開口し、底面41のうち最も低い位置に開口している。具体的には、排出口47は、第1傾斜面42及び第2傾斜面43の左縁部における下端位置であり、前後方向において境界線44と対応する位置に開口している。したがって、処理槽39の底面41は、排出口47に向かって下り勾配となるように傾斜している。
【0039】
排出口47の最下端は、処理槽39の底面41の最下端に近い高さに位置する。処理槽39の最大深さは、処理槽39の底面41のうち境界線44の最下端(すなわち、左端)から、処理槽39の上端(すなわち、破砕装置25の下端)までの高さ寸法である。処理槽39の最大深さは、処理槽39の底面41から排出口47の最上端までの高さの3倍以内の寸法である。処理槽39内において貯留可能な処理液Tの最高深さは、底面41から最高液面水位までの高さ寸法である。処理槽39の最大深さは、最高液面水位と同じ寸法である。この寸法設定によれば、処理槽39内に貯留される処理液Tの水位を比較的低くして、処理液Tの液面の面積を広く確保することが可能である。本実施形態1では、処理槽39の左右寸法及び前後寸法は、処理槽39の最大深さ寸法よりも大きい。
【0040】
底面41には、撹拌部材48が設けられている。
図4に示すように、離水処理装置38を上から見た平面視において、撹拌部材48は底面41のうち第1傾斜面42と対応する範囲のみに配置されている。前後方向において、撹拌部材48は、第1傾斜面42の中央よりも後側、即ち排出口47及び境界線44に近い側へ偏った位置に配置されている。左右方向において、撹拌部材48は、第1傾斜面42の中央よりも左側、即ち排出口47に近い側へ偏った位置に配置されている。
図1に示すように、撹拌部材48は、上下方向の駆動軸49を有する撹拌用モータ50によって回転駆動される。
【0041】
撹拌部材48は、駆動軸49と同心の円盤状をなす本体部51と、本体部51と一体回転する複数のリブ52とを有する。本体部51は、第1傾斜面42と平行をなす。本体部51の下面と第1傾斜面42との間には、撹拌部材48の円滑な回転を可能とし、且つ紙おむつDの破砕片Fを噛み込まない程度のクリアランスが空いている。この撹拌部材48と第1傾斜面42との間のクリアランスは、約10mmである。複数のリブ52は、本体部51の表面から突出しており、本体部51の回転中心から径方向に延びている。複数のリブ52は、本体部51の上面において放射状に配置されている。
【0042】
撹拌用モータ50の駆動は、制御部58によって制御される。離水処理において、撹拌部材48は、制御部58によって正方向と逆方向へ交互に回転駆動される。正方向は、
図4における反時計回り方向であり、逆方向は、
図4における時計回り方向である。離水処理の後、排出口47からは、処理槽39内のポリマーPを含む破砕片Fと、処理液Tが排出される。平面視において、排出口47における排出流の流線47Lは、排出口47が形成されている左側壁部46に対して直角な方向であり、境界線44と平行な方向である。撹拌部材48の外周縁に接する接線のうち、左側壁部46と直角な接線は、排出流の流線47Lと平行に近接する。換言すると、撹拌部材48の外周縁に接する接線のうち、境界線44と平行な接線の延長線上には、排出口47が存在する。したがって、排出時に撹拌部材48の回転によって生成される流れのうち、排出口47に向かう流れの流線48Lは、排出口47における排出流の流線47Lと平行に近接する。
【0043】
離水処理中において、1回の正方向への回転角度は、60°である。1回の逆方向への回転角度は、正方向への回転角度よりも小さい45°である。正方向と逆方向のいずれにおいても、1回の回転角度は10°以上、且つ120°以下であることが好ましい。撹拌部材48の外径寸法は、120mmである。1回の正方向への回転に要する時間は0.3秒であり、1回の逆方向への回転に要する時間は0.2秒である。撹拌部材48の外周の周速度は、200mm/sである。尚、離水処理中の撹拌部材48の外周の周速度は、100~500mm/sの範囲で調整可能である。離水処理が終了した後、処理槽39内への給水が開始してから、処理槽39内の破砕片Fと処理液Tが排出され、脱水装置60から破砕片Fの固形物が回収されるまでの間、撹拌部材48の外周の周速度は、600mm/s以上で調整される。
【0044】
第2給水部54は、処理槽39に取り付けられた第2ノズル55を有する。第2ノズル55は、処理槽39内に臨んでいる。第2ノズル55は、排出口47に向かって水を吐出する向きに配置されている。第2ノズル55からの水の吐出と停止は、制御部58によって制御される。処理槽39には、離水剤供給部56が取り付けられている。離水剤供給部56は、上述した離水剤Rを所定量だけ処理槽39内に供給するものである。離水剤Rの供給動作と供給量は、制御部58によって制御される。
【0045】
処理槽39と脱水装置60との間には、排出路64が設けられている。排出路64の上流端は排出口47ら接続され、排出路64の下流端は脱水装置60に接続されている。排出路64は、上流端から下流端に至る全領域において、上流端から下流端に向かって下り勾配となる形態である。処理槽39内の破砕片Fや処理液T等は、自重と処理槽39内の処理液Tの水圧とによって、排出路64内を下流側へ流れるようになっている。
【0046】
排出路64の途中には、排出路64を開閉する開閉弁65が設けられている。開閉弁65としては、例えば、電動ボールバルブが用いられている。開閉弁65が開弁すると、処理槽39内の破砕片Fや処理液Tが、排出口47と排出路64を通って脱水機61内に流入する。開閉弁65が閉弁すると、処理槽39内の破砕片Fや処理液Tは、脱水機61へ流出されず、処理槽39内に留まった状態を保つ。詳しくは後述するが、開閉弁65の開閉動作は、制御部58によって制御される。
【0047】
脱水装置60は、脱水機61と、流入部62と、流出部63と、集水部69とを有している。流入部62は、脱水機61の左端部に配置され、脱水機61から上方へ筒状に突出した形態である。流入部62の上端部には、排出路64の下流端が接続されている。処理槽39の破砕片Fと処理液Tは、排出口47と排出路64と開閉弁65と流入部62を通過することによって、脱水機61内に移送される。流入部62は、排出路64を介して処理槽39の排出口47と連通している。流出部63は、脱水機61の右端部に配置され、脱水機61から下方へ筒状に突出した形態である。流出部63の下端部には、下向きに開口する回収口71が形成されている。
【0048】
脱水装置60は処理槽39の真下に配置されている。流入部62は脱水装置60の左端部に配置されている。排出口47は処理槽39の左端部に配置されている。したがって、排出口47と流入部62のいずれかが、本実施形態とは左右逆の位置に配置されている場合に比べると、本実施形態1の排出路64の長さは、最短の経路となっている。排出路64は、破砕片Fと処理液Tを自重と処理槽39内の処理液Tの水圧とによって脱水装置60へ送る経路なので、経路長が短いことは、排出路64内で破砕片Fが詰まり難いことを意味する。
【0049】
脱水機61内には、脱水用フィルター66と、移送部材としてのスクリュー67が収容されている。脱水用フィルター66は、軸線を左右方向に向けた円筒状をなす。脱水用フィルター66の目は、例えば300μmである。この目の大きさは、吸水状態から水分が分離した後の離水状態のポリマーPの粒径よりも、小さい寸法である。脱水用フィルター66の内部空間は、破砕片Fを移送するための移送空間66Sである。移送空間66Sの上流端は流入部62の下端部に連通し、移送空間66Sの下流端は流出部63の上端部に連通している。
【0050】
スクリュー67は、軸部67Aと、軸部67Aの外周から螺旋状に突出した送り板67Bとを有する。スクリュー67は、脱水用フィルター66内に同軸状に収容され、脱水用モータ68によって回転駆動される。脱水用モータ68の動作は制御部58によって制御される。スクリュー67は、流入部62から移送空間66S内に移送された破砕片Fと処理液Tを、流出部63へ移送する方向へ回転する。脱水用フィルター66の網目を通過しない破砕片Fは、スクリュー67の送り板67Bによって移送空間66Sの下流端まで運ばれ、流出部63内を落下して回収口71から回収される。
【0051】
脱水機61の下面部のうち脱水用フィルター66と対応する領域には、集水部69が形成されている。スクリュー67による移送方向において、集水部69は、スクリュー67による移送経路、即ち移送空間66Sの上流端から下流端に至る全範囲にわたり、移送空間66Sに向けて上向きに開口している。集水部69のうち最も低い位置には、排水口70が形成されている。スクリュー67が移送空間66S内の破砕片Fと処理液Tを移送する過程では、処理液Tを含む廃液が、脱水用フィルター66の網目を通って移送空間66S外へ流下する。移送空間66S外へ流下した廃液は、集水部69で集められ、排水口70から排水管(図示省略)を介して下水等へ排出される。
【0052】
スクリュー67の軸線は、脱水機61の軸線と同じであり、スクリュー67による移送方向と平行である。平面視(図示省略)において、スクリュー67の軸線は、処理槽39の境界線44と平行である。
図1に示すように、側面視において、スクリュー67の軸線は、水平方向に対して傾斜している。具体的には、スクリュー67の軸線は、スクリュー67の移送方向両端部のうち、移送方向上流端よりも移送方向下流端の方が高くなるように傾斜している。したがって、スクリュー67の軸線が水平である場合に比べると、脱水機61の移送方向下流端から下向きに突出する回収口71と、脱水機61の移送方向上流端の下端との高低差が小さくなっている。移送空間66S内でスクリュー67が破砕片Fを移送する方向は、破砕片Fを重力に抗して持ち上げていく方向となっている。
【0053】
処理槽39は脱水装置60の上方に配置されている。処理槽39の底面41の境界線44は、スクリュー67の移送方向における下流端側から上流端側に向かって下るように傾斜している。
図1に示すように、汚物処理装置10を前方から見た正面視において、処理槽39の底面41の傾斜の向きと脱水機61の上面傾斜の向きが、同じ向きである。これにより、処理槽39の底面41と脱水機61の上面との間の上下方向のデッドスペースが狭められている。
【0054】
制御部58は、投入部12への紙おむつDの投入量や、紙おむつDの投入後の経過時間に応じて、離水処理の開始のタイミングを制御する。制御部58は、離水処理装置38における離水処理時間と、離水処理後の破砕片Fと処理液Tを脱水装置60へ移送するタイミングを制御する。
【0055】
汚物処理装置10は、時間差で不定期的に発生する複数の使用済みの紙おむつDを、効率的に処理することができる。以下、その工程を説明する。まず、処理量設定部72、待機時間設定部73、及び撹拌用設定部75において設定を行う。処理量設定部72においては、離水処理開始の条件となる紙おむつDの投入数を処理数として設定する。この設定処理数は、本実施形態では、汚物処理装置10の最大処理能力に相当する数であるが、任意の数を設定することも可能である。また、設定処理数は、複数個に限らず、1個でもよい。設定処理数は、一回の離水処理工程で処理すべき紙おむつDの数として、処理量設定部72から制御部58に入力される。
【0056】
待機時間設定部73においては、離水処理開始の条件となる待機時間を設定する。この待機時間は、前回の離水処理の終了後に最初に紙おむつDが投入部12に投入されてから、破砕処理を開始させるまでに待機し得る最長の時間である。撹拌用設定部75においては、撹拌部材48の回転動作に関する条件が設定される。具体的には、撹拌部材48が回転動作を継続する時間、撹拌部材48の正方向と逆方向への回転角度、撹拌部材48の回転速度が設定される。撹拌用設定部75で設定された撹拌部材48の回転動作に関する条件は、制御部58に入力される。
【0057】
次に、紙おむつDの処理工程のうち破砕処理が開始するまでに制御部58が実行する制御工程を、
図6のフローチャートを参照して説明する。前回の離水処理が完了した後、最初に使用済みの紙おむつDが第1投入口15及び第2投入口17のいずれか一方から投入空間14内に投入されると、投入センサ20から検知信号が制御部58に入力される。制御部58は、最初に使用済みの紙おむつDが投入空間14内に投入されたことを検知すると(ステップS10)、タイマー74を起動させる(ステップS11)。前回の離水処理が完了した後、最初に使用済みの紙おむつDが投入空間14内に投入されると、脱臭装置21は動作を開始する。
【0058】
制御部58は、紙おむつDの投入数が設定処理数と同数に達したか否かを、所定時間毎に比較する(ステップS12)。紙おむつDの投入数が設定処理数に達した場合、制御部58は破砕処理を開始させる(ステップS13)。紙おむつDの投入数が設定処理数に到達していない場合、制御部58は、前回の離水処理が終了した後に最初に紙おむつDが投入されてから、待機時間設定部73で設定した待機時間が経過したか否かを判断する(ステップS14)。タイマー74のカウントダウンが終了していない場合は、待機時間が経過していないと判断する。制御部58は、ステップS14において待機時間が経過していないと判断した場合、紙おむつDの投入数が設定処理数と同数に達したか否かを、再度、判断する(ステップS12)。制御部58は、ステップS12紙おむつDの投入数が設定処理数に達したと判断した場合、破砕処理を開始させる(ステップS13)。
【0059】
ステップS14において、制御部58は、タイマー74のカウントダウンが終了した場合は、最初に紙おむつDを投入されてから待機時間が経過したと判断する。待機時間が経過した場合は、紙おむつDの投入数が設定処理数に満たない場合でも、制御部58は破砕処理を開始させる(ステップS13)。設定処理数が複数であって、投入済みの紙おむつDが1つだけの場合でも、待機時間が経過すれば、制御部58は破砕処理を開始させる。破砕処理では、制御部58は、破砕用モータ29を起動させる。投入された紙おむつDは、投入後、直ちに一対の剪断刃31により破砕され、短冊状の破砕片Fとなって処理槽39内に落下する。破砕後の破砕片Fには、給水状態のポリマーPが含まれる。
【0060】
破砕部材28は、常時、回転し続けてもよく、紙おむつDを破砕する間だけ回転するようにしてもよい。第1給水部34からの給水量は、1つの紙おむつDの破砕と離水処理に必要な量だけである。吸水状態のポリマーPの最大粒径が約4mmであるのに対し、破砕部材28の剪断刃31の幅寸法は6mm以上の寸法なので、吸水状態のポリマーPが剪断刃31によって剪断される虞はない。剪断刃31の外周の周速度は0.1m/s以下という低速度なので、その速度設定によっても吸水状態のポリマーPの破砕を回避できる。剪断刃31の幅寸法は30mm以下なので、紙おむつDのシート材Sを細かく短冊状に剪断することができる。破砕された破砕片Fは、剪断刃31の外周の突起32に引っ掛けられて凹部33に嵌り込むので、確実に破砕部材28の下方の処理槽39へ落下させることができる。
【0061】
制御部58による離水処理と脱水処理の制御を
図7のフローチャートを参照して説明する。制御部58は、撹拌部材48の回転を開始させる(ステップS20)。次に、塩化カルシウムからなる離水剤Rを処理槽39内に投入させるとともに、第1給水部34からの給水を開始させる(ステップS21)。離水剤Rの投入と第1給水部34からの給水は同時に開始されることが好ましいが、離水剤Rの投入と第1給水部34からの給水を時間差で行われるようにしてもよい。第1給水部34から供給された水は、破砕部材28を洗浄し、処理槽39内へ流下する。所定量の給水が行われた後、第1給水部34からの給水を停止させる(ステップS22)。
【0062】
離水剤Rの投入量は、離水処理の対象となる紙おむつDの数、即ち質量に基づいて適正な量となるように制御部58で制御される。処理槽39内に供給されている水に離水剤Rが溶解すると、離水処理用の処理液Tとなる。本実施形態1では、離水剤Rと水を処理槽39へ別々に供給したが、予め離水剤Rを水に溶解した処理液Tを処理槽39に供給してもよい。離水処理は、処理液Tに浸漬されている破砕片FのポリマーPの保水性能を、離水液中の離水剤Rによって低下させ、ポリマーPから水分を分離させる処理である。離水処理の反応速度は、離水剤Rの量が多いほど、即ち処理液Tの濃度が高いほど速くなる。
【0063】
図8に示すように、離水処理の時間が経過するのに伴い、吸水状態のポリマーPの粒径が次第に小さくなっていくとともに、ポリマーPの質量が軽くなっていく。ポリマーPの質量と粒径は、ポリマーPの吸水状態を示す代表パラメーターである。吸水前のポリマーPの粒径は、
図8に符号Gaで示すように約400μmであり、質量は約0.02mgである。吸水状態のポリマーPの粒径は、
図8に符号Gbで示すように約1400μmであり、質量は約0.8mgである。処理液Tが、塩化カルシウムを離水剤Rとする1%濃度の溶液である場合、離水処理開始から250秒が経過すると、ポリマーPの粒径は約600μmまで小さくなり、ポリマーPの質量は0.06mgまで軽くなる。離水処理が開始してから300秒が経過した後は、ポリマーPの粒径と質量は一定のままとなる。
【0064】
撹拌部材48は、
図4における反時計回り方向である正方向へ回転する動作と、逆方向へ回転する動作を交互に繰り返す。したがって、撹拌部材48の回転開始時に、撹拌部材48の上に破砕片Fが山積みになっていても、撹拌部材48が正逆両方向へ移動することにより、破砕片Fの山が崩され、破砕片Fが処理液T中に分散していく。撹拌部材48の外周の周速度は、500mm/sよりも遅い速度なので、破砕片Fや処理液Tが放射状に跳ね飛ばされることはない。
【0065】
撹拌部材48の正方向への回転角度が60°であるのに対し、逆方向への回転角度は45°である。この正逆の回転角度の違いにより、撹拌部材48は正方向へ間欠的に回転していく。撹拌部材48の正方向への間欠回転動作により、処理槽39内のうち撹拌部材48から遠い領域では、処理液Tと破砕片Fが全体として渦巻き状の整流となって流動する。撹拌部材48の近傍では、乱流が生じ、処理液Tと破砕片Fが微細に動く。これらの動きにより、離水剤RがポリマーPに接触して離水処理が進む。
【0066】
制御部58は、離水処理時間が開始してから所定の離水処理時間が経過したか否かを判断する(ステップS23)。所定の離水処理時間が経過すると、離水処理を終了する。所定の離水処理時間は、ポリマーPから水分が完全に分離するのに要する時間よりも短い時間である。離水処理時間が経過した時点のポリマーPの粒径と質量は、離水が完全に行われたときのポリマーPの粒径と質量よりも大きい。
【0067】
離水処理を終了すると、制御部58は、第1給水部34及び第2給水部54から処理槽39への給水を開始させる(ステップS24)。この給水により、処理槽39内の処理液Tの濃度が低下するので、離水剤Rによる離水処理の進行が停止する。この間、ポリマーPが不可逆状態となっている。処理槽39への給水が一定程度進むと、処理槽39への給水を停止する(ステップS25)。この後、制御部58は、撹拌部材48を正回転させ、スクリュー67の回転を開始させ(ステップS26)、その後、開閉弁65を開弁させる(ステップS27)。
【0068】
開閉弁65が開弁されると、処理槽39内の処理液Tと破砕片Fが排出口47から排出される。処理液Tと破砕片Fが排出口47から排出される過程では、撹拌部材48は正回転し続ける。処理液Tの粘度は、第1給水部34及び第2給水部54からの給水によって低くなっているので、流動抵抗が小さく、排出口47からの排出が円滑に行われる。排出口47における排出流の流れの方向は、第1傾斜面42と第2傾斜面43との間の境界線44と平行である。撹拌部材48によって生成される渦流のうち、境界線44に接する領域の流れの一部は、境界線44と平行をなして排出口47に向かう。したがって、排出口47における排出流の流速が高められる。また、開閉弁65が開弁する際に、第2給水部54の第2ノズル55から排出口47に向けて一時的に給水が行われる(ステップS28)。この給水により、排出口47からの排出流の流速が高められる。
【0069】
処理槽39内の処理液Tと破砕片Fが排出路64を通過して排出される過程では、制御部58が、開閉弁65の開閉動作と第2給水部54の給水動作を制御する。その制御形態の一例を、
図9のグラフに基づいて説明する。グラフの横軸は、開閉弁65の開弁を開始してからの経過時間を秒単位であらわしている。折れ線Gcは、開閉弁65の開度の変化をあらわす。開閉弁65の開度は、グラフの右側の縦軸において全開時の開度を6として示している。縦長の棒線は、開閉弁65の開度を大きくしたときの排出流の流量をあらわす。流量の値は左側の縦軸に示し、単位はリットルである。折れ線Gdは、開閉弁65の開弁後における排出路64の累積流量をあらわす。
【0070】
制御部58は、排出路64における排出過程で開閉弁65の開度を経時的に変動させる。開閉弁65の開弁を開始してから10秒の間に、開閉弁65の開度を全開時の約60%まで増大させていく。この間、排出路64における流量が増大し、破砕片Fと処理液Tが脱水装置60側へ流出する。この後、10秒間で、開度を全閉に近い状態まで絞る。開度を小さくした状態では、排出路64における流量が0に近い値まで絞られる。開度を絞った状態を10秒維持した後、開度を全開時の60%まで大きくして、排出路64における流量を増大させる。
【0071】
この後、10秒間で再び開度を絞り、絞った状態を10秒間維持する。この後、10秒の間に開閉弁65の開度を全開にする。全開状態では、排出路64の流量は、約60%の開度のときよりも多くなる。また、全開状態では、第2給水部54の第2ノズル55から排出口47に向けて水が吐出される。これにより、排出路64内の流速が速くなる。全開した後は、10秒かけて開度を全閉近くまで絞る。この後は、上記のように約60%まで開度を開ける動作を2回行った後、1回全開状態にするという動作を繰り返す。
【0072】
開閉弁65の開度の増減が繰り返されると、開閉弁65の開度の最大ピークが複数回繰り返される。この過程において、第2給水部54からの水の吐出を伴う最大ピーク時の開度は、全開である。これに対し、第2給水部54からの水の吐出を伴わない最大ピーク時の開度は、60%程度であって、第2給水部54からの給水を伴うピーク時の開度よりも小さい。したがって、排出路64における流速の変動幅が大きくなる。このように、開閉弁65の開度の増減を繰り返すことにより、排出路64内における破砕片Fと処理液Tの流れが乱流状態となる。乱流状態になると、排出路64内で破砕片F同士が絡み難くなり、破砕片Fが開閉弁65の入り口に集中し難くなる。したがって、破砕片Fが開閉弁65内で詰まる虞がない。また、開閉弁65の開度を全閉にしないので、開閉弁65に紙おむつDの短冊状の成分を噛み込んで詰まる虞がない。
【0073】
排出口47から排出された処理液Tと破砕片Fは、排出路64を通って脱水機61内へ移送される。脱水機61内では、処理液Tを含んだ破砕片Fが、スクリュー67の送り板67Bに押されて軸線方向に圧縮されるので、破砕片F内の水分が滲み出てくる。滲み出た水分は、脱水用フィルター66の目を通過し、排水口70から排出される。スクリュー67で押されたポリマーPを含む破砕片Fは、回収口71から回収される。
【0074】
脱水用フィルター66内では、ポリマーPの一部が脱水用フィルター66の内周面に接触するため、脱水用フィルター66の目を通過してしまうことが懸念される。しかし、破砕装置25では、剪断刃31の周速度を0.1m/sの低速度に設定するとともに、剪断刃31の幅寸法を吸水状態のポリマーPの粒径よりも大きい6mm以上に設定しているので、吸水状態のポリマーPは、剪断されずに、大きい粒のままで離水処理装置38の処理槽39内へ落下する。さらに、離水処理装置38においては、ポリマーPから水分が完全に分離するより前に、離水処理を終了するので、ポリマーPの粒径はある程度の大きさを有する状態に保持される。したがって、ポリマーPが脱水用フィルター66の目を通過する虞はない。
【0075】
回収口71から破砕片Fの回収が完了したら(ステップS29)、制御部58は、撹拌部材48の回転を停止し(ステップS30)、スクリュー67の回転を停止する(ステップS31)。脱臭装置21も動作を停止する。以上により、離水処理と脱水処理が終了する。尚、回収口71から破砕片Fの回収が完了した後は、使用者が操作部を操作することによって、撹拌部材48の回転と、スクリュー67の回転と、脱臭装置21の動作を停止させてもよい。
【0076】
破砕装置25は、吸水状態のポリマーPを含む被破砕物としての紙おむつDが投入されるハウジング13と、ハウジング13内に収容され、紙おむつDを破砕する破砕部材28を有している。破砕部材28の移動速度は、0.1m/s以下である。紙おむつDを0.1m/s以下の速度で移動する剪断刃31で破砕すると、紙おむつDに含まれる吸水状態のポリマーPは、ほとんど破砕されることなく破砕装置25を通過する。したがって、破砕処理の後、脱水装置60においてポリマーPを脱水用フィルター66によって回収することができる。
【0077】
破砕部材28は回転軸30を中心として回転可能である。破砕部材28の外周には剪断刃31が形成されている。破砕部材28の移動速度は、破砕部材28の回転時における剪断刃31の歯先の周速度である。剪断刃31の歯先の周速度は0.1m/s以下である。紙おむつDは、剪断刃31によって破砕されながら破砕部材28の回転方向へ送られるので、剪断刃31が平行に往復移動するものに比べると、紙おむつDが破砕部材28を通過し易い。
【0078】
2本の回転軸30は、互いに平行に配置されている。一方の回転軸30の剪断刃31と他方の回転軸30の剪断刃31との間で、被破砕物が破砕される。2つの剪断刃31の間に紙おむつDが噛み込むので、紙おむつDを確実に破砕できる。一方の回転軸30の剪断刃31と他方の回転軸30の剪断刃31が、回転軸30の軸線方向に並ぶように配置されているので、2つの剪断刃31の間で紙おむつDを確実に破砕することができる。
【0079】
2本の回転軸30の回転方向は、互いに逆向きである。一方の回転軸30の剪断刃31と他方の回転軸30の剪断刃31の近接部分が、互いに同じ方向、即ち下方へ移動する。紙おむつDの破砕片Fは、2つの剪断刃31で送られることによって、破砕装置25を確実に通過することができる。剪断刃31は、剪断刃31の外周面を凹ませた形態の凹部33を有している。剪断後の紙おむつDの破砕片Fは、凹部33に引っ掛かることによって、破砕装置25を確実に通過することができる。
【0080】
複数の剪断刃31は、剪断刃31の移動方向と交差する方向、即ち回転軸30の軸線方向に隣接して並んでいる。剪断刃31の並び方向における幅寸法は、6mm以上である。吸水状態のポリマーPの最大外径は約4mmなので、ポリマーPが剪断刃31によって破砕されることを抑制できる。複数の剪断刃31は、剪断刃31の移動方向と交差する方向に隣接して並んでおり、剪断刃31の並び方向における幅寸法は、30mm以下である。紙おむつDがシート材Sを含む場合に、シート材Sの破砕片Fを細かくすることができるので、破砕片Fの処理が容易である。
【0081】
汚物処理装置10は、投入部12と破砕装置25と制御部58とを有する。投入部12には、吸水状態のポリマーPを含む紙おむつDが投入される。破砕装置25は、投入された紙おむつDを破砕する処理を行う。制御部58は、投入部12への紙おむつDの投入量が所定量に達したことを条件として、破砕装置25の破砕処理を開始させる。投入部12に時間差で投入された複数の紙おむつDを、まとめて破砕処理することができる。したがって、後から投入された紙おむつDの処理に関して、先に投入された紙おむつDの破砕処理が終了するまで待機する必要がないので、破砕処理の効率が良い。
【0082】
制御部58が破砕処理を開始させる所定量は、離水処理装置38の最大処理能力に相当する量である。離水処理装置38の処理能力を最大限に活かすことができるので、離水処理の回数を少なくすることができる。汚物処理装置10は、所定量を変更することが可能な処理量設定部72を備えている。一度に離水処理する紙おむつDの量を、紙おむつDの投入頻度等に応じて適宜に設定できるので、離水処理の効率を高めることができる。
【0083】
汚物処理装置10は、介護施設等のように広い建物や多層階の建物に設置される。投入部12は第1投入口15と第2投入口17を有しているので、投入部12の数を少なくすることができる。複数の投入口から投入された紙おむつDが、共用の離水処理装置38において離水処理されるので、離水処理装置38の数を少なくすることができる。
【0084】
制御部58は、離水処理の終了後における最初の被処理物の投入から所定の待機時間が経過したことを条件として、破砕装置25の破砕処理を開始させる。投入部12への紙おむつDの投入量が所定量に達していなくても、破砕処理後に最初に紙おむつDが投入されてから所定の待機時間が経過すると、破砕処理が開始される。紙おむつDが離水処理されずに長時間に亘って放置される虞がないので、紙おむつDの臭気に起因する不快な状況を回避できる。
【0085】
汚物処理装置10は、所定の待機時間を変更することが可能な待機時間設定部73を備えている。未処理の紙おむつDの待機時間を、紙おむつDの投入頻度等に応じて適宜に設定できる。離水処理の効率を低下させることなく、未処理の紙おむつDの臭気に起因する不快な状況を回避することができる。
【0086】
汚物処理装置10の離水処理装置38は、処理槽39と、処理槽39内に回転可能に設けた撹拌部材48とを備えている。処理槽39は、吸水状態のポリマーPを有する紙おむつDの破砕片Fと、ポリマーPの保水力を低下させる処理液Tを収容可能である。撹拌部材48は、円盤状の本体部51と、本体部51の表面から突出するリブ52とを有する。リブ52は、本体部51の回転中心から径方向に延びた形態である。
【0087】
処理槽39に投入された破砕処理済みの紙おむつDは、処理液Tととともに撹拌部材48によって撹拌される。撹拌することによって、ポリマーPの保水力が処理液Tによって低下し、ポリマーPに保持されていた水分が、ポリマーPから分離する。撹拌部材48は、回転する円盤状の本体部51の表面に、径方向のリブ52を突出させた形態なので、紙おむつDの破砕片Fが短冊状であっても、破砕片Fが撹拌部材48に絡み付く虞がない。
【0088】
撹拌部材48は、処理槽39の底面41に配置されていて、上下方向の駆動軸49を中心として回転可能である。リブ52は本体部51の上面から突出している。撹拌部材48の高さ寸法が小さいので、処理槽39内に投入された破砕片Fと処理液Tが少量であっても、撹拌部材48は十分な撹拌機能を発揮する。
【0089】
撹拌部材48は、正方向と逆方向の両方向へ回転可能であるから、紙おむつDの破砕片Fが撹拌部材48の上面に山積みになっても、撹拌部材48は十分な撹拌機能を発揮することができる。撹拌部材48の正方向への回転角度と逆方向への回転角度は、10°以上かつ120°以下であるから、紙おむつDの破砕片Fが撹拌部材48に絡み付くことを防止できる。
【0090】
撹拌部材48は、正方向と逆方向へ交互に回転可能なので、紙おむつDの破砕片Fが撹拌部材48に引っ掛かることを防止できる。撹拌部材48の正方向への回転角度は、撹拌部材48の逆方向への回転角度よりも大きい。撹拌部材48の回転方向が正方向と逆方向に交互に切り替わっても、撹拌部材48の回転動作が正方向へ進んでいく。処理槽39内の破砕片Fと処理液Tは、全体として一方向へ回転するように撹拌される。撹拌部材48の正方向への回転時間は、撹拌部材48の逆方向への回転時間よりも長い。正方向と逆方向との間における回転時間の違いにより、紙おむつDの破砕片Fが撹拌部材48に絡み付くことを防止できる。
【0091】
撹拌部材48の外周の周速度は、100~500mm/sである。この周速度によって、撹拌部材48は、充分な撹拌機能を発揮することができる。この周速度であれば、撹拌部材48の回転によって破砕片Fや処理液Tが跳ね飛ばされる虞はない。
【0092】
処理槽39は、処理槽39内の破砕片Fと処理液Tを排出する排出口47を有する。排出口47から排出するときに撹拌部材48の回転によって生成される流れのうち、排出口47に向かう流れの流線48Lは、排出口47における排出流の流線47Lと略平行であるか、排出口47における排出流の流線47Lと重なっている。破砕片Fと処理液Tを効果的に排出することができる。
【0093】
排出口47は、処理槽39の底面41における周縁部に臨むように開口している。撹拌部材48は、処理槽39の底面41における中央よりも排出口47に近い位置に配置されている。撹拌部材48によって生成される流れが、排出口47に強く流れ込むので、排出口47に紙おむつDが詰まることを防止できる。
【0094】
処理槽39の底面41は、撹拌部材48を支持する第1傾斜面42と、第1傾斜面42の最下端縁である境界線44に連なる第2傾斜面43とを備えて構成されている。水平面Hに対する第1傾斜面42の傾斜角度αは、水平面Hに対する第2傾斜面43の傾斜角度βよりも小さい。処理液Tが少量でも撹拌部材48を処理液Tに浸漬させることができる。紙おむつDの破砕片Fが第2傾斜面43上に載置しても、第2傾斜面43の傾斜により、破砕片Fが第1傾斜面42側へ滑り落ちる。
【0095】
汚物処理装置10は、処理槽39内の破砕片Fと処理液Tを排出する排出口47と、第1給水部34及び第2給水部54を有する。第1給水部34と第2吸水部は、排出口47から排出を行うときに処理槽39に水を供給する。第1給水部34及び第2給水部54から処理槽39に水を供給すると、処理液Tの濃度が低下するので、排出口47における排出流の流速が速くなり、排出効率が向上する。第2給水部54は、排出口47に向かって水を吐出する第2ノズル55を有しているので、排出効率が更に向上する。
【0096】
汚物処理装置10は、離水処理装置38と、脱水装置60と、制御部58とを備えている。離水処理装置38は、ポリマーPの保水力を低下させる処理液Tによって、吸水状態のポリマーPから水分を分離させる離水処理を行う。脱水装置60は、離水処理装置38から移送された処理液TとポリマーPを、脱水用フィルター66により分離する。離水処理装置38内の処理液TとポリマーPを脱水装置60へ移送する排出路64には、開閉弁65が設けられている。制御部58は、給水して処理液Tの濃度を低下させた後、開閉弁65を開弁する。制御部58は、処理液Tに浸漬しているポリマーPが吸水前のポリマーPに比べ、吸水度合いを示す代表パラメーターが大きい状態で、開閉弁65を開弁し、離水処理装置38内のポリマーPを脱水装置60へ移送するための制御を実施する。
【0097】
吸水度合いを示す代表パラメーターは、吸水状態のポリマーPの質量を含んでいる。離水処理中のポリマーPは、吸水前のポリマーPよりも重たい状態で脱水装置60へ移送されるので、ポリマーPは、比較的粒径の大きい状態でフィルターによる離水処理工程へ移行する。したがって、ポリマーPをフィルターによって容易に回収することができる。
【0098】
吸水度合いを示す代表パラメーターは、吸水状態のポリマーPの粒径を含んでいる。制御部58は、処理液Tに浸漬しているポリマーPの粒径が吸水前のポリマーPの粒径よりも大きい状態で、離水処理装置38内のポリマーPを脱水装置60へ移送する。この構成によれば、離水処理中のポリマーPは、吸水前のポリマーPよりも粒径の大きい状態で脱水装置60へ移送されるので、ポリマーPをフィルターによって容易に回収することができる。
【0099】
制御部58は、離水処理の経過時間に基づいて、離水処理装置38内のポリマーPを脱水装置60へ移送する。離水処理中は、時間の経過とともに、ポリマーPからの水分の分離量が増大し、ポリマーPの粒径が小さくなっていく。離水処理の経過時間に基づいて、ポリマーPの粒径を推定することができるので、ポリマーPの質量や粒径を確認しなくても、脱水処理に移行することができる。
【0100】
離水処理装置38は、ポリマーPと処理液Tを貯留して離水処理を行う処理槽39と、第1給水部34及び第2給水部54を有する。第1給水部34と第2給水部54は、離水処理済みのポリマーPと処理液Tが脱水装置60へ移送される前に、処理槽39に水を供給する。離水処理が済んだ後は、第1給水部34及び第2給水部54からの水の供給によって処理液Tの濃度が薄められる。これにより、ポリマーPからの離水の進行が抑制され、脱水工程におけるポリマーPの粒径を大きく保つことができる。処理液Tの粘度が低下するので、離水処理装置38から脱水装置60への移送を円滑に行わせることができる。
【0101】
破砕装置25は、第1投入口15を起立状態Vにおいて閉鎖し、倒伏状態Lにおいて開放する第1蓋16を備えている。第1蓋16は、自身の下端縁に沿って横方向に伸びる中心軸16A回りに起立状態Vと倒伏状態Lとに変化する。破砕装置25は、第1蓋16によって第1投入口15が覆われるため、外部に臭気が漏れることを抑えると共に、第1蓋16が倒伏状態Lである場合、第1蓋16の内面に付着した水分が床面等に落下することを抑えることができる。
【0102】
破砕装置25は、投入された紙おむつDに基づき発生した臭気を脱臭する脱臭装置21を備えている。破砕装置25は、投入部12内における臭気を脱臭することによって臭気を弱めることができる。これによって、第1投入口15を開放した場合であっても、第1投入口15から外部へ流れる臭気を弱くすることができる。
【0103】
破砕装置25の脱臭装置21は、投入部12の上部に配置される。紙おむつDに基づき生じた臭気は、上方向に立ち昇り易い。破砕装置25は、上方向に立ち昇る臭気を投入部12の上部において確実に捉えて脱臭することができる。
【0104】
脱臭装置21は、投入された紙おむつDに基づき発生した臭気を脱臭した後の空気を投入部12に戻す第1脱臭装置21Aを有する。このため、破砕装置1は、第1脱臭装置21Aによって投入部12内の空気を繰り返し脱臭し、より確実に投入部12内における臭気を弱めることができる。
【0105】
破砕装置25の投入部12には、空気を投入部12内に戻す第2開口12Bが形成されている。第2開口12Bは、投入部12の上部において、第1投入口15が設けられた側面から離れた位置に設けられている。このため、第1脱臭装置21Aで脱臭された空気は、第1投入口15から離れた位置において投入部12に戻される。これによって、第1投入口15から外部へ向かう空気の流れを抑えられるため、第1投入口15から外部に臭気が漏れ出すことを抑えることができる。
【0106】
脱臭装置21は、第2脱臭装置21Bを有する。第2脱臭装置21Bは、投入部12に投入された紙おむつDに基づき発生した臭気を脱臭した後の空気を、外部に排出する。このため、投入部12内を負圧にすることができる。これにより、第1投入口15を開放した状態であっても、第1投入口15から外部に臭気が漏れ出すことを抑えることができる。
【0107】
汚物処理装置10は、吸水状態のポリマーPを有する被処理物としての紙おむつDの破砕片Fと、ポリマーPの保水力を低下させる処理液Tとが収容される処理槽39を備えている。処理槽39内の破砕片Fと処理液Tを排出する排出口47が、処理槽39の側面に開口している。排出口47が、処理槽39の底面41にではなく、処理槽39の側面に開口しているので、破砕片Fのうち処理液Tよりも比重の小さい軽量破片は、処理槽39内に処理液Tが残っている間に排出口47から処理液Tとともに排出される。処理槽39内の紙おむつDの破砕片Fを、処理槽39の底面41に残留させずに排出することができる。
【0108】
処理槽39の底面41から処理液Tの最大貯留時の液面までの高さ寸法は、処理槽39の底面41から排出口47の最上端までの高さの3倍以内の寸法である。この寸法設定によれば、処理槽39内に貯留される処理液Tの水位を比較的低くして、処理液Tの液面の面積を広く確保することができるので、処理液Tの液面に浮かぶ軽量破片の偏在を低減できる。これにより、軽量破片が処理槽39の底面41に残留することを防止できる。
【0109】
1つの剪断刃31の幅寸法は30mm以下であるから、剪断刃31で剪断される破砕片Fの幅寸法は最大で30mm程度である。この点に着目し、排出口47の開口領域の高さ寸法を、50mm以上とした。この寸法設定により、軽量破片を排出口47から処理槽39外へ確実に排出することができる。
【0110】
処理槽39の底面41には、撹拌部材48が回転可能に設けられている。排出口47からの排出時に撹拌部材48の回転によって生成される流れのうち、排出口47に向かう流れの流線48Lは、排出口47における排出流の流線47Lと略平行であるか、流線47Lと重なっている。この構成によれば、軽量破片を排出口47から確実に排出することができる。
【0111】
撹拌部材48は、処理槽39の底面41における中央よりも排出口47に近い位置に配置されているので、撹拌部材48によって生成される流れが、排出口47に強く流れ込む。これにより、軽量破片を排出口47から確実に排出することができる。
【0112】
処理槽39の底面41は、排出口47に向かって下り勾配となるように傾斜しているので、軽量破片を排出口47から確実に排出することができる。処理槽39は、排出口47に向かって水を吐出する第2ノズル55を有している。第2ノズル55から吐出される水によって、排出口47における排出流の流速が速くなるので、軽量破片を確実に排出することができる。
【0113】
汚物処理装置10は、処理槽39と脱水装置60を有する。処理槽39には、吸水状態のポリマーPを含む被処理物としての紙おむつDの破砕片Fと、ポリマーPの保水力を低下させる処理液Tとが収容される。脱水装置60は、処理槽39から排出された破砕片Fと処理液Tを、移送部材としてのスクリュー67によって横向き、即ち左右方向に移動させながら分離する。スクリュー67の移送方向における下流端において、脱水済みの破砕片Fが下向きの回収口71から回収される。
【0114】
脱水装置60は、スクリュー67における移送方向上流端よりも移送方向下流端の方が高くなるように傾斜した形態で配置されている。この構成によれば、下向きの回収口71の位置と、脱水装置60の移送方向上流端の位置との高低差が小さくなるので、脱水装置60を全体的に低い位置に設置することができる。これにより、汚物処理装置10の低背化を図ることができる。
【0115】
脱水装置60内で移送部材によって破砕片Fを移送する方向は、破砕片Fを重力に抗して持ち上げていく方向である。そこで、移送部材としては、回転する軸部67Aの外周に螺旋状の送り板67Bを形成したスクリュー67を用いた。破砕片Fは、螺旋状の送り板67Bによって上昇しながら確実に回収口71へ送られる。
【0116】
処理槽39は脱水装置60の上方に配置されており、処理槽39の底面41は、スクリュー67の移送方向における下流端側から上流端側に向かって下るように傾斜している。汚物処理装置10を前方から見た正面視において、処理槽39の底面41の傾斜の向きと脱水装置60の傾斜の向きが、同じ向きである。これにより、処理槽39の底面41と脱水装置60の上面との間の上下方向のデッドスペースが狭められるので、その分、汚物処理装置10全体の低背化が可能である。
【0117】
脱水装置60は、破砕片Fがスクリュー67によって移送される過程で流下した処理液T等の廃液を受ける集水部69を有している。集水部69は、スクリュー67による移送経路のうち、少なくとも移送方向上流端部に向けて開口するように設けられている。これにより、流下した処理液T等の廃液は、スクリュー67による移送経路の途中に残留することなく集水部69に集められる。
【0118】
汚物処理装置10は、処理槽39と、排出路64と、開閉弁65と、制御部58とを有する。処理槽39には、吸水状態のポリマーPを含む紙おむつDの破砕片Fと、ポリマーPの保水力を低下させる処理液Tとが収容される。排出路64は、処理槽39内の破砕片Fと処理液Tを処理槽39の外部へ排出させる経路である。開閉弁65は、排出路64の途中に設けられている。制御部58は、排出路64における排出過程で開閉弁65の開度を経時的に変動させる。開閉弁65の開度が経時的に変動することによって、排出路64内の流速が経時的に変化するので、開閉弁65内に破砕片Fが詰まることを防止できる。
【0119】
制御部58は、開閉弁65が最小開度時に全閉しないように制御する。開閉弁65が全閉しないので、排出路64における開閉弁65よりも上流側で破砕片Fが詰まる虞がない。
【0120】
処理槽39は、排出路64に連通する排出口47と、排出口47に向けて水を吐出する第2給水部54とを備えている。第2給水部54における水の吐出は、排出路64における排出過程において制御部58によって制御される。破砕片Fと処理液Tの排出中に、第2給水部54から排出口47に向けて水を吐出させると、排出路64内の流速が高くなるので、排出効率が向上する。
【0121】
第2給水部54は、開閉弁65の開度が増大したときに水を吐出するように、制御部58によって制御される。開閉弁65の開度が増大したときに第2給水部54から水を吐出すると、排出路64内の流速が増大するので、排出効率が向上する。開閉弁65の開度は、第2給水部54から水が吐出するときに開閉弁65が全開状態となるように、制御部58によって制御される。開閉弁65を全開にした状態で水が吐出されるので、排出路64における流量を大幅に増大させることができる。
【0122】
開閉弁65の開度の増減に伴って開度の最大ピークが複数回繰り返される過程で、開閉弁65の開度は、第2給水部54からの水の吐出を伴う最大ピーク時の開度が、第2給水部54からの水の吐出を伴わない最大ピーク時の開度よりも大きくなるように、制御部58によって制御される。水を吐出するときと吐出しないときとで開閉弁65の開度の最大ピーク値が異なるようにしたので、排出路64における流速の変動幅が大きくなる。これにより、破砕片F同士の絡み付きや、開閉弁65の入口への破砕片Fの集中が起き難くなるので、開閉弁65の詰まりを、より確実に防止できる。
【0123】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
開閉弁は、ボールバルブに限らず、他の形態の開閉弁であってもよい。
開閉弁が最小開度時に全閉するように制御してもよい。
開閉弁の開度の変動形態としては、増大と減少を繰り返す形態に限らず、開度を増大させた後に一定の開度を保ち、その後に更に開度を増大させる形態や、開度を減少させた後に一定の開度を保ち、その後に更に開度を減少させる形態を含めてもよい。
破砕片と処理液の排出中に、第2給水部から排出口に向けて水を吐出させないようにしてもよい。
第2給水部は、開閉弁の開度に拘わらず、常に水を吐出してもよい。
第2給水部からの水の吐出を伴う最大ピーク時の開度が、第2給水部からの水の吐出を伴わない最大ピーク時の開度と同じでもよく、第2給水部からの水の吐出を伴わない最大ピーク時の開度より小さくてもよい。
給水部から水が吐出するときに開閉弁は全開しなくてもよい。
【符号の説明】
【0124】
10…汚物処理装置、39…処理槽、47…排出口、54…第2給水部(給水部)、58…制御部、64…排出路、65…開閉弁、D…紙おむつ(被処理物)、F…破砕片、P…ポリマー、T…処理液