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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】太陽光パネルの火災検知装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/06 20060101AFI20240125BHJP
   H02S 50/00 20140101ALI20240125BHJP
【FI】
G08B17/06 D
H02S50/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019235593
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105759
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈須野 善之
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111853(JP,A)
【文献】特開2016-224780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/06
H02S 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の屋根上に設置される太陽光パネルの火災を検知する火災検知装置であって、
周囲温度が所定の温度に達したことを検知するワイヤーセンサーを備え、
前記ワイヤーセンサーは、前記太陽光パネルから見て前記屋根の裏側に配置され、
前記太陽光パネルが発電した電力を外部に取り出す配線ケーブルに沿って、前記ワイヤーセンサーは配置される、
太陽光パネルの火災検知装置。
【請求項2】
請求項に記載の太陽光パネルの火災検知装置において、
前記ワイヤーセンサーは、熱電対型ワイヤーセンサーである、
太陽光パネルの火災検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネルの火災検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な住宅用太陽光発電システムでは、住宅の屋根に太陽光パネルが2次元的に配置されている。太陽光パネルからの出力電流は、パワーコンディショナによって交流化され、電力が得られる。
【0003】
このような太陽光発電システムが普及する一方で、太陽光発電システムに起因する火災が問題となってきている。太陽光パネルは、光が照射されている状態では常に発電するため、太陽光パネルの故障により発熱が生じて火災発生につながることがある。
【0004】
太陽光パネルの火災を検知するために、特許文献1には、火災用検知線(ワイヤーセンサー)を太陽光パネルに設置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-224780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、太陽光パネルに故障が生じ、太陽光パネルを構成する樹脂等が実際に発火しないと、火災を検知することができない。
【0007】
前記に鑑み、本発明は、太陽光パネルが燃焼する前に太陽光パネルの火災の予兆を検知できる太陽光パネルの火災検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本願発明者らは、鋭意検討の結果、太陽光パネルが発火する前には、太陽光パネルが発電した電力を外部に取り出す配線ケーブルが加熱されて高温になりやすいという現象に着目し、この配線ケーブルに沿ってワイヤーセンサーを配置するという発明に想到した。
【0009】
具体的には、本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置は、建屋の屋根上に設置される太陽光パネルの火災を検知する火災検知装置であって、周囲温度が所定の温度に達したことを検知するワイヤーセンサーを備え、太陽光パネルが発電した電力を外部に取り出す配線ケーブルに沿って、ワイヤーセンサーは配置される。
【0010】
本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置によると、太陽光パネルの配線ケーブルに沿って、周囲温度が所定の温度に達したことを検知するワイヤーセンサーが配置される。このため、太陽光パネルに故障が生じて配線ケーブルが加熱されて高温になったことをワイヤーセンサーによって検知することができる。従って、太陽光パネルが燃焼する前に太陽光パネルの火災の予兆を検知することが可能となる。
【0011】
本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置において、ワイヤーセンサーは、太陽光パネルと屋根との間に配置されてもよい。このようにすると、ワイヤーセンサーが太陽光パネルの陰に配置されるため、ワイヤーセンサーが直射日光にさらされる場合と比べて、通常時の環境温度を低くすることができる。従って、太陽光パネルに故障が生じて配線ケーブルが高温になったことを検知しやすくなる。
【0012】
本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置において、ワイヤーセンサーは、太陽光パネルから見て屋根の裏側に配置されてもよい。このようにすると、ワイヤーセンサーが屋根の裏側に配置されるため、ワイヤーセンサーが屋根の表側に配置される場合と比べて、通常時の環境温度をさらに低くすることができる。従って、太陽光パネルに故障が生じて配線ケーブルが高温になったことをさらに検知しやすくなる。この場合、ワイヤーセンサーが、熱電対型ワイヤーセンサーであると、太陽光パネルとワイヤーセンサーとの間に屋根が介在することに起因して、配線ケーブルの熱がワイヤーセンサーに届きにくい場合にも、僅かな熱(温度変化)を確実に検知することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、太陽光パネルが燃焼する前に太陽光パネルの火災の予兆を検知できる太陽光パネルの火災検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】太陽光パネルが設置された屋根構造の一例の外観を示す斜視図である。
図2】太陽光パネルを含む太陽電池モジュールの一例を正面側から見た斜視図である。
図3図2に示す太陽電池モジュールを裏面側から見た斜視図である。
図4図2に示す太陽電池モジュールの裏面構造を正面側から透視した斜視図である。
図5】実施形態に係る太陽光パネルの火災検知装置の概略構成図である。
図6】実施形態に係るワイヤーセンサーが、太陽光パネルの配線ケーブルに沿って配置された様子の一例を示す平面図である。
図7】実施形態に係るワイヤーセンサーが、太陽光パネルと屋根との間に配置された様子の一例を示す断面図である。
図8】実施形態に係るワイヤーセンサーが、太陽光パネルから見て屋根の裏側に配置された様子の一例を示す断面図である。
図9】実施形態に係るワイヤーセンサーの一例を示す図である。
図10】実施形態に係るワイヤーセンサーの他例を示す図である。
図11】実施形態に係るワイヤーセンサーの他例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る太陽光パネルの火災検知装置について説明する。尚、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0016】
<太陽光パネルが設置された屋根の構造>
図1に示すように、本実施形態の屋根構造1は、例えば、スレート瓦2で葺かれた野地板3の上に、軒先取付け金具5及び中間取付け金具6を介して太陽電池モジュール10が取付けられたものである。ここで、屋根構造1の必要部分には、雨仕舞い板11が設置されていてもよい。スレート瓦2は、例えば、セメント等で成形された略長方形の薄板であり、スレート瓦2の短手方向の中心近傍には、予め、太陽電池モジュール10を取り付けるための複数の孔が設けられていてもよい。
【0017】
<太陽光パネルを含む太陽電池モジュールの構造>
図2図4に示すように、太陽電池モジュール10は、2つの長辺と2つの短辺とを有し、正面視が略長方形状である。太陽電池モジュール10は、太陽光パネル13と、太陽光パネル13の裏面に取付けられる端子ボックス14と、端子ボックス14から延設される二本の配線ケーブル16、18と、配線ケーブル16、18のそれぞれに接続されるコネクタ20、22と、断熱補強材23とを備える。太陽光パネル13が発電した電力を端子ボックス14及び配線ケーブル16、18を介して外部に取り出すことが可能である。
【0018】
尚、本実施形態において、太陽電池モジュール10は、配線ケーブル16、18側が棟側になる向きに敷設されるので、以下の記載では、説明の便宜上、配線ケーブル16、18が引き出される側を上側として説明する。
【0019】
図2に示すように、太陽光パネル13は、ほぼ長方形の面状に形成される。太陽光パネル13の長手方向及び短手方向の長さはそれぞれ、例えば、900~1200mm及び230~650mmである。また、太陽光パネル13の長手方向及び短手方向の長さはそれぞれ、例えば、スレート瓦2の2倍程度及び1.3~1.6倍程度である。より具体的には、太陽光パネル13の短手方向の長さは、スレート瓦2の短手方向の長さよりも長く、重ねられた状態におけるスレート瓦2の2枚分に相当する長さである。
【0020】
本実施形態で採用する太陽光パネル13は、例えば集積型太陽電池である。太陽光パネル13としては、例えば、ガラス基板に導電膜や半導体膜を積層し、これに複数の縦列の溝15を設けて所定数の単体電池(太陽電池セル)17を形成し、各太陽電池セル17を電気的に直列接続したものなどを採用することができる。本実施形態の太陽光パネル13は、一枚で、例えば約100ボルトの電圧を得ることができる。各太陽電池セル17は電気的に直列接続されると共に端子ボックス14に接続される。尚、図2においては、作図の関係上、溝15の数は実際よりも少なく描いている。
【0021】
本実施形態の太陽光パネル13には、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている。限定溝21の位置は、配線ケーブル16、18が導出される側の辺を上辺としたときに、例えば、当該上辺から30mm~60mm程度内側に入った位置である。太陽光パネル13では、限定溝21によって各太陽電池セル17が、図2のA領域(稼働領域)と、図2のB領域(非稼働領域)とに分断されている。B領域は、太陽電池モジュール10を屋根に敷設した際に、棟側の段の太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分(重なり部)である。そのため、本実施形態では、面積の広いA領域の太陽電池セル17だけが端子ボックス14に接続されており、日陰になって発電に寄与しないB領域は、端子ボックス14に接続されていない。
【0022】
図3に示すように、太陽電池モジュール10において、端子ボックス14は、太陽光パネル13の裏面側に接着剤などを用いて固定されている。端子ボックス14は、太陽光パネル13の長辺の略中央であって、一方の長辺50側の領域に取付けられている。すなわち、端子ボックス14は、太陽光パネル13の裏面であって上側の位置に取付けられている。従って、端子ボックス14は、太陽電池モジュール10の上側の長辺寄りに位置する。より具体的には、太陽光パネル13の上側の辺の位置よりも30~50mm程度内側に入った位置に、端子ボックス14の上側の辺がある。
【0023】
端子ボックス14の内部には、太陽光パネル13の正極が接続されるプラス側電極接続端子(図示せず)と、太陽光パネル13の負極が接続されるマイナス側電極接続端子(図示せず)とが設けられている。端子ボックス14内において、プラス側電極接続端子には、プラス側の被覆導線が二本接続されており、マイナス側電極接続端子には、マイナス側の被覆導線が二本接続されている。第一ケーブル16は、二本のプラス側導線のうちの一方のプラス側導線と、二本のマイナス側導線のうちの一方のマイナス側導線とを束ねて形成された二芯ケーブルである。第二ケーブル18は、二本のプラス側導線のうちの他方のプラス側導線と、二本のマイナス側導線のうちの他方のマイナス側導線とを束ねて形成された二芯ケーブルである。第一ケーブル16と第二ケーブル18とを区別しやすくするために、両者の色彩や長さを相違させてもよい。
【0024】
尚、第一ケーブル16の長さと第二ケーブル18の長さとの合計は、太陽光パネル13の長辺の長さよりも長い。また、第一ケーブル16の端部に設けられた第一コネクタ20と、第二ケーブル18の端部に設けられた第二コネクタ22とは、同極同士を電気的に接続可能に構成されている。
【0025】
図3に示すように、太陽電池モジュール10の強度や断熱性を確保するために、太陽光パネル13の裏面に発泡樹脂製の断熱補強材23が取付けられる。断熱補強材23は、太陽光パネル13の裏面の中央部分にあり、太陽光パネル13の下辺の近傍に沿う領域には、断熱補強材23が欠落した配線収納空間41が形成されている。また、太陽光パネル13における端子ボックス14が取付けられる部位には、端子ボックス用欠落部43がある。端子ボックス14は、配線ケーブル16、18が引き出される側を除く三方を断熱補強材23によって囲まれている。太陽光パネル13における端子ボックス用欠落部43の長辺方向の両側方にも欠落部45が設けられている。欠落部45の下方に位置する断熱補強材23の厚さは薄く、溝状部46となっている。太陽光パネル13の上側の長辺50の近傍部分40でも断熱補強材23が欠落している。当該部分40は、中間取付け金具6におけるB領域の前部側に載置される部位に対応する。欠落部45と溝状部46とは、軒側と棟側とで連続する2つの太陽電池モジュール10間でコネクタ接続を行うときに、第一ケーブル16や第二ケーブル18を通すためのスペースとなる。太陽光パネル13の左右の短辺には、樹脂系材料からなるサイドガスケット47が取付けられている。
【0026】
本実施形態において、太陽電池モジュール10は、野地板3上に、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、同列上で隣接する太陽電池モジュール10(太陽光パネル13)同士の配線ケーブル16、18を接続することによって、配線が行われている。具体的には、図5に示すように、隣接する太陽電池モジュール10,10において、一方の太陽電池モジュール10の第一コネクタ20と、隣接する他方の太陽電池モジュール10の第二コネクタ22とを接続させることによって、隣接する二つの太陽電池モジュール10,10が電気的に並列に接続される。従って、左右に隣接する太陽電池モジュール10,10を配線ケーブル16、18によって接続することにより、モジュール段36に含まれる全ての太陽電池モジュール10を順次並列に接続することができる。
【0027】
<太陽光パネルの火災検知装置>
図5に示すように、本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100は、ワイヤーセンサー101と、監視制御部102とを備える。ワイヤーセンサー101は、周囲温度が所定の温度に達したことを検知可能である。ワイヤーセンサー101は、図5及び図6に示すように、野地板3上の各モジュール段36において相互に接続された配線ケーブル16、18に沿って配置され、監視制御部102に接続される。
【0028】
監視制御部102は、ワイヤーセンサー101からの出力の変動を監視し、太陽光パネル13(配線ケーブル16、18)の発熱の有無を検知する。監視制御部102は、例えば、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリデバイスとを有する。監視制御部102は、火災検知に特化した制御部として構成してもよいし、或いは、太陽光発電用のEMS(Energy Management System)の一部として構成してもよい。また、監視制御部102は、ワイヤーセンサー101用の電源装置や、ベル、ブザー等の警報装置等を備えていてもよい。
【0029】
本実施形態のワイヤーセンサー101は、配線ケーブル16、18に沿って配置されていれば、例えば、図7に示すように、太陽光パネル13と野地板3との間に配置してもよいし、或いは、図8に示すように、太陽光パネル13から見て野地板3(屋根構造1)の裏側に配置してもよい。ワイヤーセンサー101を太陽光パネル13と野地板3との間に配置する場合、ワイヤーセンサー101をスレート瓦2の下側に配置してもよい。
【0030】
<ワイヤーセンサーの構造>
本実施形態のワイヤーセンサー101は、ライン状に配置可能であり且つ温度変化を検知可能なものであれば、特に構造は限定されないが、例えば、図9図11に示すようなワイヤーセンサー101を用いてもよい。
【0031】
図9に示すワイヤーセンサー101では、例えば銅やアルミニウムからなる一対の導体111が電源装置(図示せず)に接続される。一対の導体111の周りには、形状記憶合金体112が設けられる。形状記憶合金体112の周囲温度が所定の温度に達すると、形状記憶合金体112が形状復元し、一対の導体111が互いに接触又は接続され、電源装置から供給された電流が流れ、当該電流によって周囲温度が検出される。一対の導体111は、一対の被覆電線113の導体から構成されていてもよい。一対の被覆電線113は、所定の温度に達すると溶融する可溶絶縁体を有する可溶絶縁電線からなり、一対の導体111は、可溶絶縁体に収容されている。形状記憶合金体112は、一対の被覆電線113の周りに設けられる。従って、形状記憶合金体112の周囲温度が所定の温度に達すると、形状記憶合金体112が形状復元して一対の被覆電線113が締め付けられると共に可溶絶縁体が溶融する結果、一対の導体111同士が接触又は接続し、火災の予兆が検知される。形状記憶合金体112は、例えばコイル状やスリーブネット状のもので、一対の被覆電線113の周りに巻き付けられる。ここで、一対の被覆電線113の延びる方向に沿って、複数の形状記憶合金体112を所定の間隔を置いて配置してもよい。形状記憶合金体112に代えて、形状記憶樹脂体を用いてもよい。
【0032】
図10に示すワイヤーセンサー101は、芯線121、内側導線122、溶融被覆123、外側導線124、及び、耐熱シース125を有する。内側導線122と外側導線124とは、溶融被覆123により隔てられた一組の導線を構成し、この一組の導線間の短絡を監視制御部102(図6参照)で監視することにより、太陽光パネル13の火災の予兆を検知する。尚、内側導線122と外側導線124との短絡を検出する方法としては、例えば、電圧値を監視する方法、電流値を監視する方法、又は、抵抗値を監視する方法がある。
【0033】
図10に示すワイヤーセンサー101において、芯線121は、ワイヤーセンサー101に引張強度を与える。内側導線122は、芯線121の外周に螺旋状に巻き付けられている。これにより、ワイヤーセンサー101の中心から離間して内側導線122が配置されるため、周囲温度が高くなったときに内側導線122と外側導線124とが接触しやすくなる。溶融被覆123は、内側導線122の外周を筒状に覆い、外側導線124は、溶融被覆123の外周に螺旋状に巻き付けられている。溶融被覆123は、可溶性絶縁体により形成され、通常時には内側導線122と外側導線124とを絶縁している一方、ワイヤーセンサー101の周囲温度が所定の温度に達すると、溶融被覆123が熱により溶融し、外側導線124が内側導線122に接触し、電気的な短絡を生じる。外側導線124の巻き回し方向は、内側導線122の巻き回し方向と逆方向になっており、溶融被覆123の溶融時に内側導線122と外側導線124とが接触しやすくなっている。耐熱シース125は、外側導線124の外周を筒状に覆う。内側導線122及び外側導線124はそれぞれ、複数の導線により形成してもよい。このようにすると、断線し難く、高温時に短絡する箇所も多くなるので、確実に火災の予兆を検知することができる。このような複数の導線を用いた構成を、内側導線122及び外側導線124のいずれか一方のみに用いてもよい。
【0034】
図10に示すワイヤーセンサー101において、芯線121を例えば難燃性のアラミド繊維等の耐熱樹脂により形成すれば、高温時にもワイヤーセンサー101が断線しにくくなる。内側導線122及び外側導線124の材料としては、例えば銅を用いてもよい。溶融被覆123の材料は、高温により溶融する絶縁性の物質であればよく、例えば100~200℃で溶融するナイロン等の絶縁性物質を用いてもよい。耐熱シース125の材料としては、溶融被覆123が溶融する温度以下では溶融や燃焼を生じない材料、例えばポリ塩化ビニル等を用いてもよい。
【0035】
尚、図10に示すワイヤーセンサー101に代えて、熱を電気的な信号に変えることができる他のワイヤーセンサー、例えば、2本のピアノ線の間に可溶性絶縁体を挟んで撚りをかけたワイヤーセンサー等を用いてもよい。
【0036】
図11に示すワイヤーセンサー101は、熱電対線136を有する熱電対型ワイヤーセンサーである。熱電対線136は、2種類の異なる金属a(金属132)、金属b(金属131)を接合した熱電対を複数直列に接続してなる熱電対部134を接続電線135に組み付けて構成される。金属131は、例えばコンスタンタンで形成され、金属132は、例えば鉄で形成されていてもよい。熱電対を構成する金属131、132は、可撓性があり且つ導電性が高い導線138によって接続される。具体的には、熱電対を構成する2種類の異なる金属131、132はそれぞれ、一端側が中実部となり且つ他端側が開口したパイプ状に形成され、金属131の中実部と金属132の中実部とを接合して熱電対を構成し、当該熱電対における金属131の開口端に次の金属132の開口端を接合し、当該金属132の中実部に次の金属131の中実部を接合して次の熱電対を構成し、当該熱電対における金属131の開口端に次の金属132の開口端を接合し、当該金属132の中実部に中空のパイプ状の金属131を接合して導線接続用金属131aとし、その反対端の金属132の開口端に中空のパイプ状の金属131を接合して導線接続用金属131bとして、1つの熱電対単位133を構成する。また、熱電対単位133を導線138によって直列に4個接続して1つの熱電対部134を構成し、熱電対部134の両端に接続電線135を介在させて熱電対部134を直列に必要個数接続することにより、熱電対線136を構成する。この熱電対線136にリターン線137を合わせて平行線とすることによって、熱電対型のワイヤーセンサー101が構成される。熱電対線136及びリターン線137は、合成樹脂製の被膜139によって一体に被覆される。
【0037】
図11に示すワイヤーセンサー101の熱電対部134においては、金属131の中実部と金属132の中実部との接合部が低温点となり、金属131の開口端と金属132の開口端との接合部が高温点となる。熱電対部134を接続する熱電対線136は、熱電対部134を接続しないリターン線137と平行に一体成形される。熱電対線136及びリターン線137のそれぞれの一端は、監視制御部102(図6参照)に接続されており、熱電対線136及びリターン線137が一体化したワイヤーセンサー101が各モジュール段36の配線ケーブル16、18に沿って引き回された後、熱電対線136及びリターン線137のそれぞれの他端が互いに接続される。
【0038】
図11に示すワイヤーセンサー101では、周囲温度が上昇すると、熱電対部134における高温点と低温点との間の熱容量の差から熱起電力が発生し、熱電対部134が発生した熱起電力を、熱電対線136及びリターン線137が接続された監視制御部102により感知し、太陽光パネル13の配線ケーブル16、18の温度異常を検知する。
【0039】
ワイヤーセンサー101が、太陽光パネル13から見て野地板3(屋根構造1)の裏側に配置される場合(図8参照)は、配線ケーブル16、18の熱がワイヤーセンサー101に届きにくくなるが、図11に示すような熱電対型のワイヤーセンサー101を用いることにより、僅かな熱(温度変化)を確実に検知することができる。
【0040】
<実施形態の効果>
以上に説明した本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100によると、太陽光パネル13の配線ケーブル16、18に沿って、周囲温度が所定の温度に達したことを検知するワイヤーセンサー101が配置される。このため、太陽光パネル13に故障が生じて配線ケーブル16、18が加熱されて高温になったことをワイヤーセンサー101によって検知することができる。従って、太陽光パネル13が燃焼する前に太陽光パネル13の火災の予兆を検知することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100において、ワイヤーセンサー101が、太陽光パネル13と野地板(屋根)3との間に配置されると、ワイヤーセンサー101が太陽光パネル13の陰に配置される。このため、ワイヤーセンサー101が直射日光にさらされる場合と比べて、通常時の環境温度を低くすることができる。従って、太陽光パネル13に故障が生じて配線ケーブル16、18が高温になったことを検知しやすくなる。
【0042】
また、本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100において、ワイヤーセンサー101が、太陽光パネル13から見て野地板(屋根)3の裏側に配置されると、ワイヤーセンサー101が屋根の表側に配置される場合と比べて、通常時の環境温度をさらに低くすることができる。従って、太陽光パネル13に故障が生じて配線ケーブル16、18が高温になったことをさらに検知しやすくなる。この場合、ワイヤーセンサー101が、熱電対型ワイヤーセンサーであると、太陽光パネル13とワイヤーセンサー101との間に野地板(屋根)3が介在することに起因して、配線ケーブル16、18の熱がワイヤーセンサー101に届きにくい場合にも、僅かな熱(温度変化)を確実に検知できる。
【0043】
<その他の実施形態>
前記実施形態においては、住宅用太陽光発電システムを対象として、太陽光パネルの火災検知装置100について説明したが、太陽光パネルが工場等の屋根に設置される場合であっても、本発明は適用可能である。また、例えば、広大な土地に太陽光パネルを並べるメガソーラー等の場合でも、本発明が適用可能である。すなわち、本発明において、太陽光パネルを支持する屋根構造は、特に限定されるものではない。
【0044】
また、前記実施形態においては、ワイヤーセンサー101を太陽光パネル13の裏側や野地板3の裏側等の日陰に配置したが、これに代えて、ワイヤーセンサー101を日向に配置し、ワイヤーセンサー101を対日光用の保護部材で覆ってもよい。
【0045】
また、前記実施形態においては、図9図11に示すようなワイヤーセンサー101を用いたが、本発明で利用可能なワイヤーセンサーは、ライン状に配置可能であり且つ温度変化を検知可能なものであれば、特に構造は限定されるものではない。例えば、光ファイバの散乱光の温度依存性を利用したワイヤーセンサーも利用可能である。また、温度差を検知するタイプのワイヤーセンサーも利用可能である。この場合、環境温度の通常値と優位な差を持つ異常値を規定する必要があるが、例えば、ワイヤーセンサーを屋根の裏側に配置する場合には、前日の温度の平均値よりも10℃以上高ければ、異常値として判定してもよい。
【0046】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。すなわち、前述の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 屋根構造
2 スレート瓦
3 野地板
13 太陽光パネル
16、18 配線ケーブル
100 火災検知装置
101 ワイヤーセンサー
102 監視制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11