(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】太陽光パネルの火災検知装置
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20240125BHJP
H02S 50/00 20140101ALI20240125BHJP
【FI】
G08B17/10 F
H02S50/00
(21)【出願番号】P 2019235600
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奈須野 善之
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0090310(US,A1)
【文献】独国実用新案第202006007613(DE,U1)
【文献】特開2016-224780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/10
H02S 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の屋根上に設置される太陽光パネルの火災を検知する火災検知装置であって、
前記太陽光パネルの周辺に配置された匂いセンサー
と、
前記太陽光パネルが発電した電力を外部に取り出す配線ケーブルの周囲に配置され、熱によって匂い物質を拡散する感熱部材とを備える、
太陽光パネルの火災検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽光パネルの火災検知装置において、
前記匂いセンサーは、前記屋根の頂部に配置される、
太陽光パネルの火災検知装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の太陽光パネルの火災検知装置において、
前記感熱部材は、前記配線ケーブルの接続部の周囲に配置される、
太陽光パネルの火災検知装置。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか一項に記載の太陽光パネルの火災検知装置において、
複数の前記感熱部材が、前記配線ケーブルに沿って所定の間隔で配置される、
太陽光パネルの火災検知装置。
【請求項5】
請求項
1~
4のいずれか一項に記載の太陽光パネルの火災検知装置において、
前記感熱部材は、前記太陽光パネルと前記屋根との間に配置される、
太陽光パネルの火災検知装置。
【請求項6】
請求項
1~
4のいずれか一項に記載の太陽光パネルの火災検知装置において、
前記感熱部材は、前記太陽光パネルから見て前記屋根の裏側に配置される、
太陽光パネルの火災検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光パネルの火災検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な住宅用太陽光発電システムでは、住宅の屋根に太陽光パネルが2次元的に配置されている。太陽光パネルからの出力電流は、パワーコンディショナによって交流化され、電力が得られる。
【0003】
このような太陽光発電システムが普及する一方で、太陽光発電システムに起因する火災が問題となってきている。太陽光パネルは、光が照射されている状態では常に発電するため、太陽光パネルの故障により発熱が生じて火災発生につながることがある。
【0004】
太陽光パネルの火災を検知するために、特許文献1には、火災用検知線(ワイヤーセンサー)を太陽光パネルに設置する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、太陽光パネルに故障が生じ、太陽光パネルを構成する樹脂等が実際に発火しないと、火災を検知することができない。
【0007】
前記に鑑み、本発明は、太陽光パネルが燃焼する前に太陽光パネルの火災の予兆を検知できる太陽光パネルの火災検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本願発明者らは、鋭意検討の結果、太陽光パネルが発火する前には、太陽光パネルの構成部材(例えば配線ケーブル等)や、太陽光パネルの設置部材(例えばルーフィング材等)が加熱され高温になり、これらの部材の構成物質(例えば樹脂)の一部が気化するという現象に着目し、太陽光パネル等の昇温に伴い気化した物質を検知する匂いセンサーを太陽光パネルの周辺に配置するという発明に想到した。
【0009】
具体的には、本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置は、建屋の屋根上に設置される太陽光パネルの火災を検知する火災検知装置であって、太陽光パネルの周辺に配置された匂いセンサーを備える。
【0010】
本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置によると、太陽光パネルの周辺に匂いセンサーが配置されるため、太陽光パネルに故障が生じ太陽光パネル等が昇温するに伴って気化した物質を匂いセンサーによって検知することができる。従って、太陽光パネルが燃焼する前に太陽光パネルの火災の予兆を検知することが可能となる。
【0011】
本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置において、匂いセンサーは、屋根の頂部に配置されてもよい。このようにすると、屋根に沿って棟側に上昇してきた気化物質を検知しやすくなる。
【0012】
本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置において、太陽光パネルが発電した電力を外部に取り出す配線ケーブルの周囲に、熱によって匂い物質を拡散する感熱部材が配置されてもよい。このようにすると、太陽光パネルに故障が生じた際に昇温しやすい配線ケーブルの熱によって、感熱部材から匂い物質が拡散され、匂いセンサーによって検知されるため、太陽光パネルの火災の予兆を検知しやすくなる。特に、配線ケーブルの接続部は、太陽光パネルの故障時に昇温しやすいため、配線ケーブルの接続部の周囲に感熱部材が配置されると、太陽光パネルの火災の予兆をさらに検知しやすくなる。また、複数の感熱部材が、配線ケーブルに沿って所定の間隔で配置されると、配線ケーブルのどこで昇温しても、当該昇温に伴う気化物質の発生を匂いセンサーによって検知しやすくなる。
【0013】
また、本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置において、配線ケーブルの周囲に感熱部材を配置する場合、感熱部材は、太陽光パネルと屋根との間に配置されてもよい。このようにすると、感熱部材が太陽光パネルの陰に配置されるため、感熱部材が直射日光にさらされる場合と比べて、通常時の環境温度を低くすることができる。従って、太陽光パネルに故障が生じて配線ケーブルが高温になったことを検知しやすくなる。
【0014】
また、本発明に係る太陽光パネルの火災検知装置において、配線ケーブルの周囲に感熱部材を配置する場合、感熱部材は、太陽光パネルから見て屋根の裏側に配置されてもよい。このようにすると、感熱部材が屋根の裏側に配置されるため、感熱部材が屋根の表側に配置される場合と比べて、通常時の環境温度をさらに低くすることができる。従って、太陽光パネルに故障が生じて配線ケーブルが高温になったことをさらに検知しやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、太陽光パネルが燃焼する前に太陽光パネルの火災の予兆を検知できる太陽光パネルの火災検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】太陽光パネルが設置された屋根構造の一例の外観を示す斜視図である。
【
図2】太陽光パネルを含む太陽電池モジュールの一例を正面側から見た斜視図である。
【
図3】
図2に示す太陽電池モジュールを裏面側から見た斜視図である。
【
図4】
図2に示す太陽電池モジュールの裏面構造を正面側から透視した斜視図である。
【
図5】実施形態に係る太陽光パネルの火災検知装置の一例の概略構成図である。
【
図6】実施形態に係る匂いセンサーが、屋根の頂部に配置された様子の一例を示す断面図である。
【
図7】実施形態に係る匂いセンサーの外観及び内部構成の一例を示す斜視図である。
【
図8】実施形態に係る太陽光パネルの火災検知装置の他例の概略構成図である。
【
図9】実施形態に係る感熱部材が、太陽光パネルの配線ケーブルの周囲に配置された様子の一例を示す平面図である。
【
図10】実施形態に係る感熱部材の構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る太陽光パネルの火災検知装置について説明する。尚、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0018】
<太陽光パネルが設置された屋根の構造>
図1に示すように、本実施形態の屋根構造1は、例えば、スレート瓦2で葺かれた野地板3の上に、軒先取付け金具5及び中間取付け金具6を介して太陽電池モジュール10が取付けられたものである。ここで、屋根構造1の必要部分には、雨仕舞い板11が設置されていてもよい。スレート瓦2は、例えば、セメント等で成形された略長方形の薄板であり、スレート瓦2の短手方向の中心近傍には、予め、太陽電池モジュール10を取り付けるための複数の孔が設けられていてもよい。
【0019】
<太陽光パネルを含む太陽電池モジュールの構造>
図2~
図4に示すように、太陽電池モジュール10は、2つの長辺と2つの短辺とを有し、正面視が略長方形状である。太陽電池モジュール10は、太陽光パネル13と、太陽光パネル13の裏面に取付けられる端子ボックス14と、端子ボックス14から延設される二本の配線ケーブル16、18と、配線ケーブル16、18のそれぞれに接続されるコネクタ20、22と、断熱補強材23とを備える。太陽光パネル13が発電した電力を端子ボックス14及び配線ケーブル16、18を介して外部に取り出すことが可能である。
【0020】
尚、本実施形態において、太陽電池モジュール10は、配線ケーブル16、18側が棟側になる向きに敷設されるので、以下の記載では、説明の便宜上、配線ケーブル16、18が引き出される側を上側として説明する。
【0021】
図2に示すように、太陽光パネル13は、ほぼ長方形の面状に形成される。太陽光パネル13の長手方向及び短手方向の長さはそれぞれ、例えば、900~1200mm及び230~650mmである。また、太陽光パネル13の長手方向及び短手方向の長さはそれぞれ、例えば、スレート瓦2の2倍程度及び1.3~1.6倍程度である。より具体的には、太陽光パネル13の短手方向の長さは、スレート瓦2の短手方向の長さよりも長く、重ねられた状態におけるスレート瓦2の2枚分に相当する長さである。
【0022】
本実施形態で採用する太陽光パネル13は、例えば集積型太陽電池である。太陽光パネル13としては、例えば、ガラス基板に導電膜や半導体膜を積層し、これに複数の縦列の溝15を設けて所定数の単体電池(太陽電池セル)17を形成し、各太陽電池セル17を電気的に直列接続したものなどを採用することができる。本実施形態の太陽光パネル13は、一枚で、例えば約100ボルトの電圧を得ることができる。各太陽電池セル17は電気的に直列接続されると共に端子ボックス14に接続される。尚、
図2においては、作図の関係上、溝15の数は実際よりも少なく描いている。
【0023】
本実施形態の太陽光パネル13には、各太陽電池セル17を横断する限定溝21が設けられている。限定溝21の位置は、配線ケーブル16、18が導出される側の辺を上辺としたときに、例えば、当該上辺から30mm~60mm程度内側に入った位置である。太陽光パネル13では、限定溝21によって各太陽電池セル17が、
図2のA領域(稼働領域)と、
図2のB領域(非稼働領域)とに分断されている。B領域は、太陽電池モジュール10を屋根に敷設した際に、棟側の段の太陽電池モジュール10に覆われて陰になる部分(重なり部)である。そのため、本実施形態では、面積の広いA領域の太陽電池セル17だけが端子ボックス14に接続されており、日陰になって発電に寄与しないB領域は、端子ボックス14に接続されていない。
【0024】
図3に示すように、太陽電池モジュール10において、端子ボックス14は、太陽光パネル13の裏面側に接着剤などを用いて固定されている。端子ボックス14は、太陽光パネル13の長辺の略中央であって、一方の長辺50側の領域に取付けられている。すなわち、端子ボックス14は、太陽光パネル13の裏面であって上側の位置に取付けられている。従って、端子ボックス14は、太陽電池モジュール10の上側の長辺寄りに位置する。より具体的には、太陽光パネル13の上側の辺の位置よりも30~50mm程度内側に入った位置に、端子ボックス14の上側の辺がある。
【0025】
端子ボックス14の内部には、太陽光パネル13の正極が接続されるプラス側電極接続端子(図示せず)と、太陽光パネル13の負極が接続されるマイナス側電極接続端子(図示せず)とが設けられている。端子ボックス14内において、プラス側電極接続端子には、プラス側の被覆導線が二本接続されており、マイナス側電極接続端子には、マイナス側の被覆導線が二本接続されている。第一ケーブル16は、二本のプラス側導線のうちの一方のプラス側導線と、二本のマイナス側導線のうちの一方のマイナス側導線とを束ねて形成された二芯ケーブルである。第二ケーブル18は、二本のプラス側導線のうちの他方のプラス側導線と、二本のマイナス側導線のうちの他方のマイナス側導線とを束ねて形成された二芯ケーブルである。第一ケーブル16と第二ケーブル18とを区別しやすくするために、両者の色彩や長さを相違させてもよい。
【0026】
尚、第一ケーブル16の長さと第二ケーブル18の長さとの合計は、太陽光パネル13の長辺の長さよりも長い。また、第一ケーブル16の端部に設けられた第一コネクタ20と、第二ケーブル18の端部に設けられた第二コネクタ22とは、同極同士を電気的に接続可能に構成されている。
【0027】
図3に示すように、太陽電池モジュール10の強度や断熱性を確保するために、太陽光パネル13の裏面に発泡樹脂製の断熱補強材23が取付けられる。断熱補強材23は、太陽光パネル13の裏面の中央部分にあり、太陽光パネル13の下辺の近傍に沿う領域には、断熱補強材23が欠落した配線収納空間41が形成されている。また、太陽光パネル13における端子ボックス14が取付けられる部位には、端子ボックス用欠落部43がある。端子ボックス14は、配線ケーブル16、18が引き出される側を除く三方を断熱補強材23によって囲まれている。太陽光パネル13における端子ボックス用欠落部43の長辺方向の両側方にも欠落部45が設けられている。欠落部45の下方に位置する断熱補強材23の厚さは薄く、溝状部46となっている。太陽光パネル13の上側の長辺50の近傍部分40でも断熱補強材23が欠落している。当該部分40は、中間取付け金具6におけるB領域の前部側に載置される部位に対応する。欠落部45と溝状部46とは、軒側と棟側とで連続する2つの太陽電池モジュール10間でコネクタ接続を行うときに、第一ケーブル16や第二ケーブル18を通すためのスペースとなる。太陽光パネル13の左右の短辺には、樹脂系材料からなるサイドガスケット47が取付けられている。
【0028】
本実施形態において、太陽電池モジュール10は、野地板3上に、列状及び複数段状に並べられて平面的な広がりをもって載置され、同列上で隣接する太陽電池モジュール10(太陽光パネル13)同士の配線ケーブル16、18を接続することによって、配線が行われている。具体的には、隣接する太陽電池モジュール10,10において、一方の太陽電池モジュール10の第一コネクタ20と、隣接する他方の太陽電池モジュール10の第二コネクタ22とを接続させることによって、隣接する二つの太陽電池モジュール10,10が電気的に並列に接続される。従って、左右に隣接する太陽電池モジュール10,10を配線ケーブル16、18によって接続することにより、1つのモジュール段に含まれる全ての太陽電池モジュール10を順次並列に接続することができる。
【0029】
<太陽光パネルの火災検知装置>
図5に示すように、本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100は、匂いセンサー101と監視制御部102とから構成される。匂いセンサー101は、太陽光パネル13の周辺に配置され、太陽光パネル13の構成部材(配線ケーブル16、18等)や設置部材(野地板3等)の昇温に伴い気化した物質(例えば樹脂等)を検知する。監視制御部102は、匂いセンサー101からの出力の変動を監視し、太陽光パネル13の構成部材や設置部材等の発熱の有無を検知する。匂いセンサー101と監視制御部102との間の信号の送受信は、有線、無線のいずれで行ってもよい。また、匂いセンサー101への電力供給には、付属の電池、例えば小型太陽電池を用いてもよいし、或いは、太陽電池モジュール10や監視制御部102から匂いセンサー101に電力供給を行ってもよい。
【0030】
匂いセンサー101の配置場所は、太陽光パネル13の周辺であれば、特に限定されないが、設置環境の観点から、太陽光パネル13の裏側(例えばスレート瓦2と野地板3との間)や野地板3の裏側等の日陰に配置してもよい。或いは、屋根構造1に沿って棟側に上昇してきた気化物質を検知しやすいように、屋根構造1の頂部付近に匂いセンサー101を配置してもよい。例えば、
図6に示すように、屋根構造1の頂部を覆うスレート瓦2Aと野地板3との間に匂いセンサー101を配置してもよい。
【0031】
監視制御部102は、例えば、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリデバイスとを有する。監視制御部102は、火災検知に特化した制御部として構成してもよいし、或いは、太陽光発電用のEMS(Energy Management System)の一部として構成してもよい。また、監視制御部102は、ベル、ブザー等の警報装置等を備えていてもよい。
【0032】
<匂いセンサーの構造>
本実施形態の匂いセンサー101は、太陽光パネル13の構成部材や設置部材等の昇温に伴い気化した物質を検知できれば、特に限定されるものではなく、例えば、市販の各種匂い感知器、金属酸化物半導体や合成二分子膜をセンサー部とする臭気濃度計、或いは、ガスクロマトグラフィ等を用いてもよい。金属酸化物半導体をセンサー部とする構成では、センサー部表面に匂い分子が吸着すると、センサー部の電気伝導度が高くなり、抵抗値が低下するので、その抵抗変化をブリッジ回路の偏差電圧として出力する。
【0033】
図7に示す匂いセンサー101は、積層基板110上に搭載された圧力-湿度センサー部114及びガスセンサー部115を有する。圧力-湿度センサー部114及びガスセンサー部115の少なくとも一方は、温度センサー機能を有する。圧力-湿度センサー部114は、積層基板110にアンダーフィル111を介して設けられたASIC(application specific integrated circuit)部112上に、接着層113を用いて保持される。圧力-湿度センサー部114と積層基板110とは信号配線116により接続されると共に、ガスセンサー部115と積層基板110とは信号配線117により接続される。積層基板110上に搭載された各センサー部114、115及びASIC部112等は、ケーシング118により覆われており、ケーシング118におけるガスセンサー部115上の部分には、ポート穴119が設けられている。尚、
図7において、ケーシング118の一部を切り欠いて、ケーシング118の内部を示している。
【0034】
図7に示す匂いセンサー101では、圧力-湿度センサー部114及びガスセンサー部115の計測結果に基づき、ASIC部112によって揮発性有機物質全般、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、フェノール、メチルメルカプタン等が検知される。
【0035】
<感熱部材の利用>
図8に示すように、本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100において、太陽光パネル13等の昇温に伴う気化物質の発生を匂いセンサー101によって検知しやすくするために、熱によって匂い物質を拡散する感熱部材121を用いてもよい。感熱部材121の配置は、太陽光パネル13の周辺であれば、特に限定されるものではないが、例えば、
図9に示すように、モジュール段36を構成する複数の太陽光パネル13を並列に接続する配線ケーブル16、18の周囲に感熱部材121を配置してもよい。この場合、感熱部材121を、配線ケーブル16、18の接続部(コネクタ20、22の接続部)の周囲に配置してもよい。また、複数の感熱部材121を、配線ケーブル16、18に沿って所定の間隔で配置してもよい。また、設置環境の観点から、感熱部材121を、太陽光パネル13の裏側(太陽光パネル13とスレート瓦2又は野地板3との間)や野地板3の裏側等の日陰に配置してもよい。
【0036】
本実施形態で利用可能な感熱部材121は、熱によって匂い物質を拡散するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、
図10に示すような感熱部材121を用いてもよい。
【0037】
図10に示す感熱部材121は、主として、密封容器122と、密閉容器122に収納された匂い物質123とからなる。密封容器122の壁部の一部は、例えば低融点金属からなる密封開放材123から構成される。周囲温度が上がって所定の温度に達すると、密封開放材123が溶融し、密封容器122内の匂い物質123が密封容器122の外側へ拡散して匂いセンサー101によって検知される。密封開放材123の材質を変えれば、溶融温度の設定を自由に変えることができるので、所望の温度で匂い物質123を拡散させることができる。尚、密封容器122の一面には、所定位置への取り付けが容易になるように、両面接着テープ125が貼付されていてもよい。
【0038】
その他、感熱部材121として、例えば、熱溶融性組成物で形成したマイクロカプセルに香料を包んだ香料カプセル粉末や、香料などを例えばワックスなどの脂肪酸に練り込んだものや、これらの香料含有物をシート基材上に塗布した感熱ラベルや、これらの香料含有物を粘着剤と混合した感熱塗料などを用いてもよい。感熱塗料を感熱部材121として用いる場合、配線ケーブル16、18等の太陽光パネル13の構成部材に感熱部材121を塗布してもよい。一般の香料は、環境温度が高くなると、揮発しやすくなり、匂いも強くなる。感熱部材121で用いられる匂い物質の場合、常温時には匂いが感じられず、高温時には持続的に強い匂いを発しなければならない。熱溶融性組成物で形成されたマイクロカプセルは、常温時には内部の匂い物質に対して強い密閉力を有し、熱溶融性組成物の融点まで環境温度が上がれば容易に溶融又は崩壊して充填物を拡散させる。カプセルを形成する組成物の成分を変えれば、溶融温度の設定を自由に変えることができるので、所望の温度で匂い物質を拡散させることができる。
【0039】
<実施形態の効果>
以上に説明した本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100によると、太陽光パネル13の周辺に匂いセンサー101が配置されるため、太陽光パネル13に故障が生じ太陽光パネル13等が昇温するに伴って気化した物質を匂いセンサー101によって検知することができる。従って、太陽光パネル13が燃焼する前に太陽光パネル13の火災の予兆を検知することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100において、太陽光パネル13が発電した電力を外部に取り出す配線ケーブル16、18の周囲に、熱によって匂い物質を拡散する感熱部材121が配置されてもよい。このようにすると、太陽光パネル13に故障が生じた際に昇温しやすい配線ケーブル16、18の熱によって、感熱部材121から匂い物質が拡散され、匂いセンサー101によって検知されるため、太陽光パネル13の火災の予兆を検知しやすくなる。特に、配線ケーブル16、18の接続部は、太陽光パネル13の故障時に昇温しやすいため、配線ケーブル16、18の接続部の周囲に感熱部材121が配置されると、太陽光パネル13の火災の予兆をさらに検知しやすくなる。また、複数の感熱部材121が、配線ケーブル16、18に沿って所定の間隔で配置されると、配線ケーブル16、18のどこで昇温しても、当該昇温に伴う気化物質の発生を匂いセンサー101によって検知しやすくなる。
【0041】
また、本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100において、配線ケーブル16、18の周囲に感熱部材121を配置する場合、感熱部材121は、太陽光パネル13と屋根(スレート瓦2又は野地板3)との間に配置されてもよい。このようにすると、感熱部材121が太陽光パネル13の陰に配置されるため、感熱部材121が直射日光にさらされる場合と比べて、通常時の環境温度を低くすることができる。従って、太陽光パネル13に故障が生じて配線ケーブル16、18が高温になったことを検知しやすくなる。
【0042】
また、本実施形態の太陽光パネルの火災検知装置100において、配線ケーブル16、18の周囲に感熱部材121を配置する場合、感熱部材121は、太陽光パネル13から見て屋根(野地板3)の裏側に配置されてもよい。このようにすると、感熱部材121が屋根の裏側に配置されるため、感熱部材121が屋根の表側に配置される場合と比べて、通常時の環境温度をさらに低くすることができる。従って、太陽光パネル13に故障が生じて配線ケーブル16、18が高温になったことをさらに検知しやすくなる。
【0043】
<その他の実施形態>
前記実施形態においては、住宅用太陽光発電システムを対象として、太陽光パネルの火災検知装置100について説明したが、太陽光パネルが工場等の屋根に設置される場合であっても、本発明は適用可能である。また、例えば、広大な土地に太陽光パネルを並べるメガソーラー等の場合でも、本発明が適用可能である。すなわち、本発明において、太陽光パネルを支持する屋根構造は、特に限定されるものではない。
【0044】
また、前記実施形態においては、匂いセンサー101や感熱部材121を太陽光パネル13の裏側や野地板3の裏側等の日陰に配置したが、これに代えて、匂いセンサー101や感熱部材121を日向に配置し、匂いセンサー101や感熱部材121を対日光用の保護部材で覆ってもよい。
【0045】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。すなわち、前述の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 屋根構造
2 スレート瓦
3 野地板
13 太陽光パネル
16、18 配線ケーブル
100 火災検知装置
101 匂いセンサー
102 監視制御部
121 感熱部材