IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特許7426234化合物又は樹脂の精製方法、及び組成物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】化合物又は樹脂の精製方法、及び組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/82 20060101AFI20240125BHJP
   C07C 39/14 20060101ALI20240125BHJP
   C07C 39/15 20060101ALI20240125BHJP
   C07C 39/17 20060101ALI20240125BHJP
   C07D 311/78 20060101ALI20240125BHJP
   C07D 311/82 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C07C37/82
C07C39/14
C07C39/15
C07C39/17
C07D311/78
C07D311/82
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019503081
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2018007609
(87)【国際公開番号】W WO2018159707
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-01-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2017037388
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】内山 直哉
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳矢
(72)【発明者】
【氏名】牧野嶋 高史
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】野田 定文
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158456(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/024778(WO,A1)
【文献】特開2009-282080(JP,A)
【文献】特開2014-2358(JP,A)
【文献】特開2006-83214(JP,A)
【文献】特開2007-33542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00-409/44
C07B 31/00- 61/00
C07D201/00-521/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-3)で表される化合物と、溶媒と、を含む溶液を調製する工程と、
前記溶液をフィルターに通液することにより精製する工程と、
を含み、
前記フィルターの濾材が、ポリアミド製の濾材及びポリオレフィン樹脂製の濾材からなる群より選ばれる1種以上を含み
前記フィルターの公称孔径が、0.2μm以下である、前記化合物の精製方法。
【化1】
(式(1-3)中、R は炭素数1~60の2n価の基又は単結合であり、pは各々独立して0~2の整数であり、nは1~4の整数であり、R は各々独立して、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子又はチオール基であり、m は、各々独立して0~8の整数であり、qは、各々独立して1~8の整数である。)
【請求項2】
酸素濃度が20%未満の雰囲気で精製を行う、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
前記フィルターが、中空糸膜フィルター、メンブレンフィルター及びプリーツ膜フィルターからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の精製方法。
【請求項4】
前記フィルターの濾材が、フッ素樹脂製の濾材を更に含む、請求項1~のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項5】
前記フィルターが、イオン交換体を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項6】
前記フィルターが、ゼータ電位を有する物質を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項7】
前記溶媒が、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項8】
前記精製Cr量が、前記化合物の質量に対して50ppb以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の精製方法。
【請求項9】
前記式(1-3)で表される化合物が、下記式(1-4)で表される化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の精製方法。
【化2】
(式(1-4)中、R、p及びnは上記式(1-3)で説明したものと同義であり、Rは上記式(1-3)で説明したものと同義であり、m4′は、各々独立して0~7の整数である。)
【請求項10】
前記式(1-4)で表される化合物が、下記式(1-5)で表される化合物である、請求項に記載の精製方法。
【化3】
(上記式(1-5)中、Rは前記式(1-3)で説明したものと同義であり、Rは前記式(1-3)で説明したものと同義であり、m4′′は各々独立して、0~5の整数である。)
【請求項11】
下記式(1-3)で表される化合物と、99ppb以下のNaと、60ppb未満のFeと、80ppb未満のCrと、70ppb未満のSnと、を含む組成物の製造方法であって、
溶媒と、前記化合物、99ppb超のNa、60ppb以上のFe、80ppb以上のCr及び70ppb以上のSnを含む前駆体組成物と、を含む溶液を調製する工程と、
前記溶液をフィルターに通液することにより、前記溶液中におけるNa、Fe、Cr及びSnの含有量を、それぞれ、99ppb以下、60ppb未満、80ppb未満及び70ppb未満とする工程と、
を含み、
前記フィルターの濾材が、ポリアミド製の濾材及びポリオレフィン樹脂製の濾材からなる群より選ばれる1種以上を含み、
前記フィルターの公称孔径が、0.2μm以下である、前記組成物の製造方法。
【化4】
(式(1-3)中、R は炭素数1~60の2n価の基又は単結合であり、pは各々独立して0~2の整数であり、nは1~4の整数であり、R は各々独立して、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子又はチオール基であり、m は、各々独立して0~8の整数であり、qは、各々独立して1~8の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する化合物又は樹脂の精製方法、及び組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~2に記載されているような、特定の骨格を有するポリフェノール化合物又は樹脂は、耐熱性、耐エッチング性、溶媒溶解性に優れているため、半導体用のコーティング剤、レジスト用材料、半導体下層膜形成材料として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2013/024778号
【文献】国際公開2013/024779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記用途においては、特に金属含有量が、歩留まり向上のために重要な性能項目となっている。すなわち、金属含有量の多い特定の骨格を有するポリフェノール化合物又は樹脂を用いた場合には、半導体中に金属が残存し、半導体の電気特性を低下させることから、金属含有量を低減することが求められている。
特定の骨格を有するポリフェノール化合物又は樹脂の金属含有量を低減するための精製方法として、該化合物又は樹脂と有機溶媒を含む混合物にイオン交換水又は純水を加えることで再結晶を行った後、固液分離を行う方法、あるいは該化合物又は樹脂を水と任意に混和しない有機溶媒に溶解させ、その溶液を水溶液と接触させ抽出処理を行うことにより、金属分を水相に移行させたのち、有機相と水相を分液して金属含有量を低減させる方法等が考えられる。
【0005】
しかしながら、上記方法では、金属含有量の多い特定の骨格を有するポリフェノール化合物又は樹脂を原料として用いると、特定の金属種に対する除去効果が十分ではないという問題がある。
【0006】
また、別の手法として、該化合物又は樹脂と有機溶媒を含む混合物を、イオン交換樹脂と接触させる方法も考えられる。しかしながら、イオン交換樹脂を用いる方法では、種々の金属イオンを含有する場合は、イオン交換樹脂の選択に難があり、金属の種類によっては除去が困難であるという問題、非イオン性の金属の除去が困難であるという問題、さらには、ランニングコストが大きいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、特定の構造を有する化合物又は樹脂中の種々の金属分の含有量を著しく低減できる精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物又は樹脂と溶媒とを含む溶液を、フィルターに通液させることにより、該溶液中の金属分の含有量が顕著に低減されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は次のとおりである。
[1]
下記式(1A)で表される化合物及び下記式(2A)で表される構造を有する樹脂からなる群より選ばれる1種以上の物質と、溶媒と、を含む溶液を調製する工程と、
前記溶液をフィルターに通液することにより精製する工程と、
を含む、物質の精製方法。
【化1】
(式(1A)中、Xは酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であり、Rは炭素数1~60の2n価の基又は単結合であり、Rは各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~40のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基であり、mは各々独立して0~9の整数であり、nは1~4の整数であり、pは各々独立して0~2の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種を含む基であり、すべてのmが同時に0となることはない。)
【化2】
(式(2A)中、X、R、R、n及びpは、前記式(1A)において説明したものと同義であり、Rは単結合又は炭素数1~40のアルキレン基であり、mは各々独立して0~8の整数である。ここで、Rのうち、少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種以上を含む基であり、すべてのmが同時に0となることはない。)
[2]
酸素濃度が20%未満の雰囲気で精製を行う、[1]に記載の精製方法。
[3]
前記フィルターの公称孔径が、0.2μm以下である、[1]又は[2]に記載の精製方法。
[4]
前記フィルターが、中空糸膜フィルター、メンブレンフィルター及びプリーツ膜フィルターからなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の精製方法。
[5]
前記フィルターの濾材が、ポリアミド製、ポレオレフィン樹脂製及びフッ素樹脂製からなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の精製方法。
[6]
前記フィルターが、イオン交換体を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の精製方法。
[7]
前記フィルターが、ゼータ電位を有する物質を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の精製方法。
[8]
前記溶媒が、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロペンタノン及びシクロヘキサノンからなる群より選ばれる1種以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の精製方法。
[9]
前記精製を行った後の前記溶液金属において、クロムの含有量、前記物質の質量に対して50ppb以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の精製方法。
[10]
前記式(1A)で表される化合物及び前記式(2A)で表される構造を有する樹脂が、それぞれ、下記式(1A’)で表される化合物及び下記式(2A’)で表される構造を有する樹脂である、[1]~[9]のいずれかに記載の精製方法。
【化3】
(式(1A’)中、R、X、m及びpは、式(1A)において説明したものと同義であり、Rは、炭素数1~40のn価の基又は単結合であり、Rは、水素原子、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数6~30のアリール基であり、nは1~4の整数である。)
【化4】
(式(2A’)中、R、X、m及びpは、式(2A)において説明したものと同義であり、R、R及びnは、式(1A’)において説明したものと同義である。)
[11]
前記式(1A)で表される化合物が、式(1)で表される化合物である、[1]~[10]のいずれかに記載の精製方法。
【化5】
(式(1)中、X、m、n及びpは前記式(1A)において説明したものと同義であり、Rは前記式(1A)におけるRと同義であり、Rは各々独立して、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基であり、ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのmが同時に0となることはない。)
[12]
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-1)で表される化合物である、[11]に記載の精製方法。
【化6】
(式(1-1)中、Zは酸素原子又は硫黄原子であり、R、R、m、p及びnは前記式(1)において説明したものと同義である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのmが同時に0となることはない。)
[13]
前記式(1-1)で表される化合物が、下記式(1-2)で表される化合物である、[12]に記載の精製方法。
【化7】
(式(1-2)中、R、R、m、p及びnは前記式(1)において説明したものと同義である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのmが同時に0となることはない。)
[14]
前記式(1-2)で表される化合物が、下記式(1-3)で表される化合物である、[13]に記載の精製方法。
【化8】
(式(1-3)中、R、p及びnは、前記式(1)で説明したものと同義であり、Rは各々独立して、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子又はチオール基であり、mは、各々独立して0~8の整数であり、qは、各々独立して0~8の整数である。ここで、すべてのqが同時に0となることはない。)
[15]
前記式(1-3)で表される化合物が、下記式(1-4)で表される化合物である、[14]に記載の精製方法。
【化9】
(式(1-4)中、R、p及びnは上記式(1)で説明したものと同義であり、Rは上記式(1-3)で説明したものと同義であり、m4′は、各々独立して0~7の整数である。)
[16]
前記式(1-4)で表される化合物が、下記式(1-5)で表される化合物である、[15]に記載の精製方法。
【化10】
(上記式(1-5)中、Rは前記式(1)で説明したものと同義であり、Rは前記式(1-3)で説明したものと同義であり、m4′′は各々独立して、0~5の整数である。)
[17]
前記式(1A)で表される化合物が、下記式(3)で表される化合物である、[1]~[10]のいずれかに記載の精製方法。
【化11】
(式(3)中、Rは前記式(1A)におけるRと同義であり、n及びpは前記式(1A)において説明したものと同義であり、R及びRは各々独立して炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基であり、mは各々独立して0~8の整数であり、mは各々独立して0~9の整数である。ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm及びmが同時に0となることはない。)
[18]
前記式(3)で表される化合物が、下記式(3-1)で表される化合物である、[17]に記載の精製方法。
【化12】
(式(3-1)中、R、R、R及びnは、前記式(3)において説明したものと同義であり、m5’は各々独立して0~4の整数であり、m6’は各々独立して0~5の整数である。ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm5’及びm6’が同時に0となることはない。)
[19]
前記式(3-1)で表される化合物が、下記式(3-2)で表される化合物である、[18]に記載の精製方法。
【化13】
(式(3-2)中、Rは前記式(3)で説明したものと同義であり、R及びRは各々独立して炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基であり、m及びmは各々独立して0~7の整数である。)
[20]
前記式(2A)で表される構造を有する樹脂が、下記式(2)で表される構造を有する樹脂である、[1]~[19]のいずれかに記載の精製方法。
【化14】
(式(2)中、X、R、R、n及びpは前記式(1)において説明したものと同義であり、Rは前記式(2A)におけるRと同義であり、mは前記式(2A)において説明したものと同義である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのmが同時に0となることはない。)
[21]
前記式(2)で表される構造を有する樹脂が、下記式(2-1)で表される構造を有する樹脂である、[20]に記載の精製方法。
【化15】
(式(2-1)中、Zは前記式(1-1)で説明したものと同義であり、R、R、R、m、p及びnは前記式(2)において説明したものと同義であり、ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのmが同時に0になることはない。)
[22]
前記式(2A)で表される構造を有する樹脂が、下記式(4)で表される構造を有する樹脂である、[1]~[19]のいずれかに記載の精製方法。
【化16】
(式(4)中、R、R、R、m、m、p及びnは、上記式(3)で説明したものと同義であり、Rは前記式(2)で説明したものと同義であり、ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm及びmが同時に0となることはない。)
[23]
下記式(1A)で表される化合物及び下記式(2A)で表される構造を有する樹脂からなる群より選ばれる1種以上の物質と、99ppb以下のNaと、60ppb未満のFeと、80ppb未満のCrと、70ppb未満のSnと、を含む組成物の製造方法であって、
溶媒と、前記物質、99ppb超のNa、60ppb以上のFe、80ppb以上のCr及び70ppb以上のSnを含む前駆体組成物と、を含む溶液を調製する工程と、
前記溶液をフィルターに通液することにより、前記溶液中におけるNa、Fe、Cr及びSnの含有量を、それぞれ、99ppb以下、60ppb未満、80ppb未満及び70ppb未満とする工程と、
を含む、組成物の製造方法。
【化17】
(式(1A)中、Xは酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であり、Rは炭素数1~60の2n価の基又は単結合であり、Rは各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~40のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基であり、mは各々独立して0~9の整数であり、nは1~4の整数であり、pは各々独立して0~2の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種を含む基であり、すべてのmが同時に0となることはない。)
【化18】
(式(2A)中、X、R、R、n及びpは、前記式(1A)において説明したものと同義であり、Rは単結合又は炭素数1~40のアルキレン基であり、mは各々独立して0~8の整数である。ここで、Rのうち、少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種以上を含む基であり、すべてのmが同時に0となることはない。)
【発明の効果】
【0009】
本発明により、特定の構造を有する化合物又は樹脂中の種々の金属分の含有量を著しく低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
本実施形態に係る物質の精製方法は、下記式(1A)で表される化合物及び下記式(2A)で表される構造を有する樹脂から選ばれる1種以上の物質と、溶媒と、を含む溶液を調製する工程と、前記溶液をフィルターに通液することにより精製する工程と、を含む。
このように構成されているため、本実施形態に係る物質の精製方法によれば、上記物質中の種々の金属分の含有量を著しく低減することができる。
なお、本実施形態における「精製」とは、上記物質と共存し得る金属成分を十分に低減する操作を意味し、具体的には、精製後の上記物質中において、Na量が99ppb以下、Fe量が60ppb未満、Cr量が80ppb未満、及びSn量が70ppb未満となる。本実施形態においては、精製後の物質と共存し得るNa量が50ppb以下、Fe量が50ppb以下、Cr量が50ppb以下、及びSn量が50ppb以下であることが好ましい。これらの金属成分量は後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
なお、本実施形態における「通液」とは、上記溶液がフィルターの外部から当該フィルターの内部を通過して再度フィルターの外部へと移動することを意味し、例えば、上記溶液を単にフィルターの表面で接触させる態様や、上記溶液を当該表面上で接触させつつイオン交換樹脂の外部で移動させる態様(すなわち、単に接触する態様)は除外される。
【0012】
[式(1A)で表される化合物]
本実施形態で使用される化合物は、下記式(1A)で表される化合物である。
【0013】
【化19】
【0014】
式(1A)中、Xは酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示す。
【0015】
は炭素数1~60の2n価の基又は単結合である。炭素数1~60の2n価の基とは、例えば、n=1のときには、炭素数1~60のアルキレン基、n=2のときには、炭素数1~60のアルカンテトライル基、n=3のときには、炭素数2~60のアルカンヘキサイル基、n=4のときには、炭素数3~60のアルカンオクタイル基のことを示す。該2n価の基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するもの等が挙げられる。ここで、脂環式炭化水素基については、有橋脂環式炭化水素基も含まれる。
また、該2n価の基はハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、アルコキシ基、チオール基又は炭素数6~40の芳香族基を含んでいてもよい。さらに、該2n価の基はエーテル結合、ケトン結合、エステル結合又は二重結合を含んでいてもよい。
さらに、上記炭素数は、1~40であることが好ましい。
【0016】
は各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~40のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~40のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基である。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種を含む基である。
【0017】
mは各々独立して0~9の整数である。ここで、すべてのmが同時に0となることはない。
nは1~4の整数であり、pは各々独立して0~2の整数である。
【0018】
式(1A)で表される化合物は、製造のし易さの観点から下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化20】
【0019】
前記式(1)中、X、m、n及びpは前記と同義である。ここで、すべてのmが同時に0となることはない。Rは前記Rと同義である。
は各々独立して、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基である。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種である。
【0020】
前記式(1)で表される化合物は、耐熱性の観点から下記式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化21】
【0021】
前記式(1-1)中、Zは酸素原子又は硫黄原子であり、R、R、m、p及びnは前記式(1)で説明したものと同義である。ここで、すべてのmが同時に0となることはなく、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種である。
【0022】
また、上記式(1-1)で表される化合物は、原料供給性の観点から下記式(1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化22】
【0023】
前記式(1-2)中、R、R、m、p及びnは前記式(1)で説明したものと同義である。ここで、すべてのmが同時に0となることはなく、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種である。
【0024】
さらに、前記式(1-2)で表される化合物は、熱硬化特性及び溶解安定性の観点から下記式(1-3)で表される化合物であることが好ましい。
【化23】
【0025】
前記式(1-3)中、R、p及びnは前記式(1)で説明したものと同義である。Rは各々独立して、炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子又はチオール基である。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
は各々独立して、0~8の整数であり、qは各々独立して、0~8の整数である。ここで、すべてのqが同時に0となることはない。
【0026】
さらに、前記式(1-3)で表される化合物は、耐熱性及び溶解安定性の観点から下記式(1-4)で表される化合物であることが好ましい。
【化24】
【0027】
前記式(1-4)中、R、p及びnは上記式(1)で説明したものと同義である。Rは前記式(1-3)で説明したものと同義である。
4′は各々独立して、0~7の整数である。
【0028】
さらに、前記式(1-4)で表される化合物は、原料入手性及び製造のし易さの観点から下記式(1-5)で表される化合物であることが好ましい。
【化25】
【0029】
前記式(1-5)中、Rは前記式(1)で説明したものと同義であり、Rは前記式(1-3)で説明したものと同義である。m4′′は各々独立して、0~5の整数である。
さらに、前記式(1-5)において、Rは少なくとも1つの水素原子又はメチル基を有することが好ましい。
【0030】
また、前記式(1A)で表される化合物は、溶解性向上の観点から下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化26】
【0031】
式(3)中、n及びpは、前記式(1A)において説明したものと同義であり、Rは、前記式(1A)におけるRと同義であり、
及びRは各々独立して炭素数1~40のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基である。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
は各々独立して0~8の整数であり、mは各々独立して0~9の整数である。ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm及びmが同時に0となることはない。
【0032】
前記式(3)で表される化合物は、原料入手性の観点から下記式(3-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化27】
【0033】
前記式(3-1)中、R、R、R及びnは、前記式(3)で説明したものと同義である。m5’は各々独立して0~4の整数であり、m6’は各々独立して0~5の整数である。ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm5’及びm6’が同時に0となることはない。
【0034】
前記式(3-1)で表される化合物は、原料入手性及び製造のし易さの観点から下記式(3-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化28】
【0035】
前記式(3-2)中、Rは前記式(3)で説明したものと同義である。
及びRは各々独立して、炭素数1~40の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~40のアリール基、炭素数2~40のアルケニル基、炭素数1~40のアルコキシ基、ハロゲン原子、チオール基又は水酸基である。ここで、前記アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
及びmは各々独立して0~7の整数である。
さらに、前記式(3-2)において、Rは少なくとも1つの水素原子メチル基を有することが好ましい。
【0036】
[式(1A’)で表される化合物]
本実施形態において、式(1A)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1A’)で表される化合物であることが好ましい。
【0037】
【化29】
(式(1A’)中、R、X、m及びpは、式(1A)において説明したものと同義であり、Rは、炭素数1~40のn価の基又は単結合であり、Rは、水素原子、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数6~30のアリール基であり、nは1~4の整数である。)
【0038】
式(1A’)中、n個存在する「>C(R)-」及び1個存在するRは、全体として、2n価の基Rに対応する。なお、n=1のとき、Rは、炭素数1~40のn価の基であり、n=2~4のとき、Rは、炭素数1~40のn価の基又は単結合である。
【0039】
式(1A’)で表される化合物は、製造のし易さの観点から下記式(1’)で表される化合物が好ましい。
【化30】
(式(1’)中、R、R、X、m、n及びpは、式(1A’)において説明したものと同義であり、Rは、式(1)において説明したものと同義である。)
【0040】
前記式(1’)で表される化合物は、耐熱性の観点から下記式(1-1’)で表される化合物であることが好ましい。
【化31】
(式(1-1’)中、R、R、R、m、n及びpは、式(1’)において説明したものと同義であり、Zは式(1-1)において説明したものと同義である。)
【0041】
また、上記式(1-1’)で表される化合物は、原料供給性の観点から下記式(1-2’)で表される化合物であることが好ましい。
【化32】
(式(1-2’)中、R、R、R、m、n及びpは、式(1-1’)において説明したものと同義である。)
【0042】
さらに、前記式(1-2’)で表される化合物は、熱硬化特性及び溶解安定性の観点から下記式(1-3’)で表される化合物であることが好ましい。
【化33】
(式(1-3’)中、R、R、n及びpは、式(1-2’)において説明したものと同義であり、R、m及びqは、式(1-3)において説明したものと同義である。)
【0043】
さらに、前記式(1-3’)で表される化合物は、耐熱性及び溶解安定性の観点から下記式(1-4’)で表される化合物であることが好ましい。
【化34】
(式(1-4’)中、R、R、R、n及びpは、式(1-2’)において説明したものと同義であり、m4’は、式(1-4)において説明したものと同義である。)
【0044】
さらに、前記式(1A’)で表される化合物は、耐熱性及び溶解安定性の観点から下記式(3’)で表される化合物であることが好ましい。
【化35】
(式(3’)中、R、R、n及びpは、式(1A’)において説明したものと同義であり、R、R、m及びmは、式(3)において説明したものと同義である。)
【0045】
さらに、前記式(3’)で表される化合物は、耐熱性及び溶解安定性の観点から下記式(3-1’)で表される化合物であることが好ましい。
【化36】
(式(3-1’)中、R、R、R、R、n及びpは、式(1A’)において説明したものと同義であり、m5’及びm6’は、式(3-1)において説明したものと同義である。)
【0046】
本実施形態において、Rは炭素数が7以上のアリール基であることが好ましく、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。炭素数が7以上のアリール基としては、以下に限定されないが、例えば、ビフェニル基、ナフタレン基、アントラセン基、ピレン基等が挙げられる。
【0047】
前記式(1)で表される化合物の具体例を、以下に例示するが、ここで列挙した限りではない。
【0048】
【化37】
【0049】
前記式中、R及びXは、上記式(1)で説明したものと同義である。m´は0~7の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm´が同時に0となることはない。
【0050】
【化38】
【0051】
【化39】
【0052】
【化40】
【0053】
上記式中、R及びXは上記式(1)で説明したものと同義である。
´は0~7の整数である。m´´は0~5の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、m´及びm´´が同時に0となることはない。
【0054】
【化41】
【0055】
上記式中、R、X及びm´は、上記で説明したものと同義である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm´が同時に0となることはない。
【0056】
【化42】
【0057】
【化43】
【0058】
【化44】
【0059】
上記式中、R及びXは上記式(1)で説明したものと同義である。m´は0~7の整数である。m´´は0~5の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、m´及びm´´が同時に0となることはない。
【0060】
【化45】
【0061】
前記式中、R及びXは、上記式(1)で説明したものと同義である。m´は0~7の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm´が同時に0となることはない。
【0062】
【化46】
【0063】
【化47】
【0064】
上記式中、R及びXは上記式(1)で説明したものと同義である。m´は0~7の整数である。m´´は0~5の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、m´及びm´´が同時に0となることはない。
【0065】
【化48】
【0066】
前記式中、R及びXは、前記式(1)で説明したものと同義である。m´は0~7の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm´が同時に0となることはない。
【0067】
【化49】
【0068】
【化50】
【0069】
前記式中、R及びXは前記式(1)で説明したものと同義である。m´は0~7の整数である。m´´は0~5の整数である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、m´及びm´´が同時に0となることはない。
【0070】
以下に、上記式(3)で表される化合物の具体例を例示するが、ここで列挙した限りではない。
【0071】
【化51】
【0072】
【化52】
【0073】
【化53】
【0074】
【化54】
【0075】
【化55】
【0076】
前記化合物中、R及びRは前記式(3)で説明したものと同義である。
11は0~6の整数であり、m12は0~7の整数である。
ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm11及びm12が同時に0となることはない。
【0077】
【化56】
【0078】
【化57】
【0079】
【化58】
【0080】
【化59】
【0081】
前記化合物中、R及びRは前記式(3)で説明したものと同義である。
5’は各々独立して0~4の整数であり、m6’は各々独立して0~5の整数である。
ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm5’及びm6’が同時に0となることはない。
【0082】
【化60】
【0083】
【化61】
【0084】
【化62】
【0085】
前記化合物中、R及びRは上記式(3)で説明したものと同義である。m11は0~6の整数であり、m12は0~7の整数である。
ここで、R11及びR12から選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm11及びm12が同時に0となることはない。
【0086】
【化63】
【0087】
【化64】
【0088】
前記化合物中、R及びRは、前記式(1)で説明したものと同義である。
5’は各々独立して0~4の整数であり、m6’は各々独立して0~5の整数である。
ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm5’及びm6’が同時に0となることはない。
【0089】
【化65】
【0090】
【化66】
【0091】
【化67】
【0092】
【化68】
【0093】
【化69】
【0094】
【化70】
【0095】
【化71】
【0096】
【化72】
【0097】
【化73】
【0098】
【化74】
【0099】
【化75】
【0100】
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【化87】
【化88】
【化89】
【化90】
【化91】
【化92】
【化93】
【化94】
【化95】
【化96】
【0101】
[式(1A)で表される化合物及び式(1A’)で表される化合物の調製方法]
本実施形態において使用される、式(1A)で表される化合物及び式(1A’)で表される化合物は、公知の手法を応用して適宜合成することができ、その合成手法は特に限定されない。該化合物は、例えば、国際公開2013/024779号や国際公開2015/137486号に記載されている方法等によって製造することができる。該文献には、ナフトール類やビフェノール類等と、アルデヒド類やケトン類とを酸触媒下にて反応させる方法等が記載されている。
【0102】
[式(2A)で表される構造を有する樹脂]
本実施形態で使用される樹脂として、下記式(2A)で表される構造を有する樹脂が挙げられる。
【化97】
【0103】
前記式(2A)中、X、R、R、n及びpは前記式(1A)において説明したものと同義である。ここで、Rのうち、少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種以上を含む基である。
は単結合又は炭素数1~40のアルキレン基である。該アルキレン基は、直鎖状又は分岐状のどちらであってもよい。
は各々独立して0~8の整数であり、ここで、すべてのmが同時に0となることはない。
【0104】
前記式(2A)で表される構造を有する樹脂は、製造のし易さの観点から下記式(2)で表される構造を有する樹脂であることが好ましい。
【化98】
【0105】
前記式(2)中、X、R、R、n及びpは前記式(1)において説明したものと同義である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種である。
は前記式(2A)におけるRと同義である。
は前記式(2A)において説明したものと同義である。ここで、すべてのmが同時に0となることはない。
【0106】
前記式(2)で表される構造を有する樹脂は、耐熱性向上の観点から下記式(2-1)で表される構造を有する樹脂であることが好ましい。
【化99】
【0107】
前記式(2-1)中、Zは前記式(1-1)で説明したものと同義であり、酸素原子又は硫黄原子であることを示す。
、R、R、m、p及びnは前記式(2)で説明したものと同義である。ここで、Rの少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのmが同時に0となることはない。
【0108】
また、前記式(2)で表される構造を有する樹脂は、溶解安定性の観点から下記式(4)で表される構造を有することが好ましい。
【化100】
【0109】
前記式(4)中、R、R、R、m、m、p及びnは、前記式(3)で説明したものと同義である。
は前記式(2)で説明したものと同義である。
ここで、R及びRから選ばれる少なくとも1つは水酸基及びチオール基から選ばれる1種であり、すべてのm及びmが同時に0となることはない。
【0110】
[式(2A’)で表される構造を有する樹脂]
本実施形態において、式(2A)で表される構造を有する樹脂は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(2A’)で表される構造を有する樹脂であることが好ましい。
【化101】
【0111】
式(2A’)中、R、X、m及びpは、式(2A)において説明したものと同義であり、R、R及びnは、式(1A’)において説明したものと同義である。
【0112】
式(2A’)で表される構造を有する樹脂は、製造のし易さの観点から下記式(2’)で表される構造を有する樹脂であることが好ましい。
【化102】
(式(2’)中、R、R、X、m、n及びpは、式(2A)において説明したものと同義であり、R及びRは、式(2)において説明したものと同義である。)
【0113】
前記式(2’)で表される構造を有する樹脂は、耐熱性向上の観点から下記式(2-1’)で表される構造を有する樹脂であることが好ましい。
【化103】
(式(2-1’)中、R、R、R、R、m、n及びpは、式(2’)において説明したものと同義であり、Zは、式(2-1)において説明したものと同義である。)
【0114】
また、前記式(2’)で表される構造を有する樹脂は、溶解安定性の観点から下記式(4’)で表される構造を有することが好ましい。
【化104】
(式(4’)中、R、R、n及びpは、式(2’)において説明したものと同義であり、R、R、m及びmは、式(4)において説明したものと同義である。)
【0115】
[式(2A)で表される構造を有する樹脂及び下記式(2A’)で表される構造を有する樹脂の調製方法]
本実施形態において使用される、式(2A)で表される構造を有する樹脂、及び下記式(2A’)で表される構造を有する樹脂は、公知の手法を応用して適宜合成することができ、その合成手法は特に限定されない。該樹脂は、例えば、国際公開2013/024779号公報や国際公開2015/137486号公報に記載されている方法等によって製造することができる。該文献には、ナフトール類やビフェノール類等と、アルデヒド類やケトン類とを酸触媒下にて反応させて得られた化合物を架橋反応性のある化合物と反応させ、オリゴマー化又はポリマー化する方法が記載されている。
【0116】
[溶液の調製工程]
本実施形態で使用する精製対象となる溶液は、前述した前記式(1A)で表される化合物及び前記式(2A)で表される構造を有する樹脂から選ばれる1種以上の物質と、後述する溶媒と、を含むものである。また、該溶液は、各種界面活性剤、各種架橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤等を含有したものであってもよい。
【0117】
本実施形態で使用される溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。使用する溶媒の量は、精製対象となる物質に対して、通常1~100質量倍が溶解性の向上と精製後の固体回収の容易さの観点から好ましい。より好ましくは5~50質量倍、さらに好ましくは10~50質量倍である。
【0118】
使用される溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾールなどのモノアルコール類、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-ペンチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-ペンチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、N-メチルピロリドン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドンなどの窒素化合物系溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
【0119】
これらの中でも、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。作業性や仕込み量の管理のし易さの点で好ましい。
【0120】
[溶液の精製工程(通液工程)]
本実施形態におけるフィルター通液工程において、前記物質と溶媒とを含む溶液中の金属分の除去に用いられるフィルターは、通常、液体ろ過用として市販されているものを使用することができる。フィルターの濾過精度は特に限定されないが、フィルターの公称孔径は0.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2μm未満であり、さらに好ましくは0.1μm以下であり、よりさらに好ましくは0.1μm未満であり、一層好ましくは0.05μm以下である。また、フィルターの公称孔径の下限値は、特に限定されないが、通常、0.005μmである。ここでいう公称孔径とは、フィルターの分離性能を示す名目上の孔径であり、例えば、バブルポイント試験、水銀圧入法試験、標準粒子補足試験など、フィルターの製造元により決められた試験法により決定される孔径である。市販品を用いた場合、製造元のカタログデータに記載の値である。公称孔径を0.2μm以下にすることで、溶液を1回フィルターに通液させた後の金属分の含有量を効果的に低減することができる。特に、クロム(Cr)の含有量を使用する精製対象物質の質量に対して、好ましくは50ppb以下、より好ましくは20ppb以下、さらに好ましくは5ppb以下に低減することができる。本実施形態においては、溶液の各金属分の含有量をより低減させるために、フィルター通液工程を2回以上行ってもよい。
【0121】
フィルターの形態としては、中空糸膜フィルター、メンブレンフィルター、プリーツ膜フィルター、並びに不織布、セルロース、及びケイソウ土などの濾材を充填したフィルターなどを用いることができる。上記した中でも、フィルターが、中空糸膜フィルター、メンブレンフィルター及びプリーツ膜フィルターからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。また、特に高精細な濾過精度と他の形態と比較した濾過面積の高さから、中空糸膜フィルターを用いることが特に好ましい。
【0122】
前記フィルターの材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、グラフト重合によるイオン交換能を有する官能基を施したポリエチレン系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリルなどの極性基含有樹脂、フッ化ポリエチレン(PTFE)などのフッ素含有樹脂を挙げることができる。上記した中でも、フィルターの濾材が、ポリアミド製、ポレオレフィン樹脂製及びフッ素樹脂製からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。これらのフィルターを採用する場合、例えば焼結金属材質のフィルターを採用する場合に比べ、濾材からの金属溶出の懸念が低減される傾向にあり、好ましい。さらに、クロム等の重金属の低減効果の観点からポリアミドが特に好ましい。
【0123】
ポリアミド系フィルターとしては(以下、商標)、以下に限定されないが、例えば、キッツマイクロフィルター(株)製のポリフィックスナイロンシリーズ、日本ポール(株)製のウルチプリーツP-ナイロン66、ウルチポアN66、スリーエム(株)製のライフアシュアPSNシリーズ、ライフアシュアEFシリーズなどを挙げることができる。
ポリオレフィン系フィルターとしては、以下に限定されないが、例えば、日本ポール(株)製のウルチプリーツPEクリーン、イオンクリーン、日本インテグリス(株)製のプロテゴシリーズ、マイクロガードプラスHC10、オプチマイザーD等を挙げることができる。
ポリエステル系フィルターとしては、以下に限定されないが、例えば、セントラルフィルター工業(株)製のジェラフローDFE、日本フィルター(株)製のブリーツタイプPMC等を挙げることができる。
ポリアクリロニトリル系フィルターとしては、以下に限定されないが、例えば、アドバンテック東洋(株)製のウルトラフィルターAIP-0013D、ACP-0013D、ACP-0053D等を挙げることができる。
フッ素樹脂系フィルターとしては、以下に限定されないが、例えば、日本ポール(株)製のエンフロンHTPFR、スリーエム(株)製のライフシュアFAシリーズ等を挙げることができる。
これらのフィルターはそれぞれ単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
また、上記フィルターには陽イオン交換樹脂などのイオン交換体や、濾過される有機溶媒溶液にゼータ電位を生じさせるカチオン電荷調節剤などが含まれていてもよい。
イオン交換体を含むフィルターとして、以下に限定されないが、例えば、日本インテグリス(株)製のプロテゴシリーズ、倉敷繊維加工(株)製のクラングラフト等を挙げることができる。
また、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリンカチオン樹脂などの正のゼータ電位を有する物質を含むフィルターとしては(以下、商標)、以下に限定されないが、例えば、スリーエム(株)製ゼータプラス40QSHやゼータプラス020GN、あるいはライフアシュアEFシリーズ等が挙げられる。
【0125】
また、フィルターの接続ジョイント、ハウジングに含まれるO-リング等のパッキング部材の少なくとも一種は、パーフルオロゴム、パーフルオロエラストマーからなり、これらの構成部材全てが、フッ素含有樹脂、パーフルオロゴム、パーフルオロエラストマーから選ばれる材料で構成されていることが好ましい。さらに、上記のパッキング部材は、パーフルオロゴム、パーフルオロエラストマーから選ばれる材料で構成されていることが特に好ましい。これらの部材を使用することで、金属分の含有率が十分に低減される傾向にある。
【0126】
前記物質を含む溶液の精製の際の温度は、高すぎると、溶媒の種類によっては加水分解により、揮発性の酸が遊離する場合があるため好ましくなく、低すぎると、精製対象物質の溶解度が小さくなるので効率的でない。通常、0~40℃、好ましくは5~30℃、特に好ましくは10~25℃の範囲を選択するのがよい。
【0127】
なお、本実施形態の精製方法においては、フィルター通液工程以外の精製工程をさらに加えてもよい。
【0128】
こうして得られた溶液に混入する水分は、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により溶媒を加え、溶液の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0129】
精製対象物質と溶媒とを含む溶液から、精製対象物質のみを得る方法は、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【0130】
本実施形態の精製方法は、酸素濃度が20%未満の雰囲気で行うことが好ましい。すなわち、精製対象物質と溶媒とを含む溶液に接触する外気を、酸素濃度が20%未満に調整し、フィルターに通液する工程までの一連の操作において酸素濃度20%未満の雰囲気を維持することが好ましい。また、精製対象物質と溶媒とを含む溶液の調製後の段階から、フィルターに通液する工程までの一連の操作において酸素濃度20%未満の雰囲気とすることがより好ましい。
酸素濃度は10%未満がより好ましく、5%未満がさらに好ましく、1%未満が特に好ましい。酸素濃度を20%未満にすることにより、精製対象物質の変質を抑えることができ、より高純度の物質が得られる傾向にある。
【0131】
酸素濃度を低下させる方法は、公知の方法で実施でき、特に限定されないが、例えば、精製を行うカラム又は釜に窒素ガスをフローして、あるいは減圧してその後窒素ガスを導入することで、ガス置換を行うことができる。精製を行うカラム又は釜を減圧してその後窒素ガスを導入することが簡便かつ確実で好ましい。
【0132】
酸素濃度の確認は、公知の方法で実施でき、特に限定されないが、例えば、精製を行う釜に窒素ガスをフローして、ベントから排出されるガスの酸素濃度を、酸素濃度計にて測定することができる。また、精製を行う釜に酸素濃度計を設置することもできる。
【0133】
(組成物の製造方法)
本実施形態に係る組成物の製造方法は、上記式(1A)で表される化合物及び上記式(2A)で表される構造を有する樹脂から選ばれる1種以上の物質と、99ppb以下のNaと、60ppb未満のFeと、80ppb未満のCrと、70ppb未満のSnと、を含む組成物の製造方法であって、溶媒と、前記物質、99ppb超のNa、60ppb以上のFe、80ppb以上のCr及び70ppb以上のSnを含む前駆体組成物と、を含む溶液を調製する工程と、前記溶液をフィルターに通液することにより、前記溶液中におけるNa、Fe、Cr及びSnの含有量を、それぞれ、99ppb以下、60ppb未満、80ppb未満及び70ppb未満とする工程と、を含むものである。すなわち、本実施形態における前駆体組成物は、本実施形態における物質と、不純物(当該物質を除くあらゆる成分)との混合物ということもでき、当該前駆体組成物を本実施形態における精製に供することにより、本実施形態の組成物が得られる関係にある。
上記のとおり、本実施形態において用いられる上記式(1A)で表される化合物及び上記式(2A)で表される構造を有する樹脂、並びに溶媒については、本実施形態の精製方法における化合物、樹脂及び溶媒と同様である。また、溶液をフィルターに通液するに際しては、本実施形態の精製方法における通液工程と同様に行うことができる。
【実施例
【0134】
以下、実施例を挙げて、本実施形態の実施の形態をさらに具体的に説明する。ここで、本実施形態は、これらの実施例に限定はされない。
H-NMR測定については、Bruker社製「Advance600II spectrometer」を用いて、次の条件にて行った。
周波数:400MHz
溶媒:d6-DMSO
内部標準:TMS
測定温度:23℃
【0135】
(合成例1)BisN-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積500mLの容器に、1,4-ジヒドロキシベンゼン(関東化学社製試薬)20.0g(200mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)18.2g(100mmol)と、1,4-ジオキサン100mLとを仕込み、95%の硫酸5mLを加えて、100℃で6時間撹拌して反応を行った。次に、24%水酸化ナトリウム水溶液にて反応液を中和後、純水50gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(BisN-1)20.6gを得た。
なお、400MHz-H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。
H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.4(2H,O-H)、7.2~8.1(13H,Ph-H)、6.5(1H,C-H)
【0136】
【化105】
【0137】
(合成例2)BisN-2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積500mLの容器に、2,6-ナフタレンジオール(シグマ-アルドリッチ社製試薬)32.0g(20mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)18.2g(100mmol)と、1,4-ジオキサン200mLとを仕込み、95%の硫酸10mLを加えて、100℃で6時間撹拌して反応を行った。次に、24%水酸化ナトリウム水溶液にて反応液を中和し、純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(BisN-2)25.5gを得た。
なお、400MHz-H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。また、2,6-ジヒドロキシナフトールの置換位置が1位であることは、3位と4位のプロトンのシグナルがダブレットであることから確認した。
H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.7(2H,O-H)、7.2~8.5(19H,Ph-H)、6.6(1H,C-H)
【0138】
【化106】
【0139】
(合成例3)RBisN-2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積500mLの容器に、BisN-2 50g(105mmol)と、パラホルムアルデヒド3.5g(210mmol)、氷酢酸50mLとPGME200mLとを仕込み、95%の硫酸30mLを加えて、反応液を100℃で6時間撹拌して反応を行った。次に、反応液を濃縮し、メタノール1000mLを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される構造を有する目的樹脂(RBisN-2)35.0gを得た。
得られた樹脂について、前記方法によりポリスチレン換算分子量を測定した結果、Mn:778、Mw:1793、Mw/Mn:2.30であった。
得られた樹脂について、前記測定条件でNMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.7(2H,O-H)、7.2~8.5(17H,Ph-H)、6.6(1H,C-H)、4.1(2H,-CH
【0140】
【化107】
【0141】
(合成例4)CH-BisNの合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積500mLの容器に、2,7-ナフタレンジオール(シグマ-アルドリッチ社製試薬)32.0g(20mmol)と、シクロヘキシルベンズアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)18.8g(100mmol)と、1,4-ジオキサン200mLとを仕込み、95%の硫酸10mLを加えて、100℃で6時間撹拌して反応を行った。次に、24%水酸化ナトリウム水溶液にて反応液を中和し、純水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(CH-BisN)30.5gを得た。
なお、400MHz-H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。
H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.7(2H,O-H)、7.2~8.0(14H,Ph-H)、6.2(1H,C-H)、3.4~3.6(11H,C-H)
【0142】
【化108】
【0143】
(合成例5) CAX-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積1Lのガラス容器を準備した。この容器に、N-エチルカルバゾール-3-カルバルデヒド(日触テクノファインケミカル社製)89.0g(400mmol)と、2,6-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製試薬)128.0g(800mmol)と、1,4-ジオキサン(関東化学社製試薬)300mLとを仕込み、p-トルエンスルホン酸(関東化学社製試薬)19.5g(105mmol)を加えて、反応液を調製した。この反応液を90℃で6時間撹拌して反応を行った。次に、24%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製試薬)にて中和処理を行い、反応液を濃縮し、n-ヘプタン(関東化学社製試薬)100mLを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。濾過により得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(CAX-1)20.2gを得た。
なお、400MHz-H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。
H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.9(2H,O-H)、7.0~8.3(17H,Ph-H)、6.2(1H,C-H)、4.2(2H,CH)、1.2(3H,CH
【0144】
【化109】
【0145】
(合成例6) BiF-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積1Lの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノール(東京化成社製試薬)150g(800mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)75g(410mmol)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル300mLとを仕込み、p-トルエンスルホン酸(関東化学社製試薬)19.5g(105mmol)を加えて、反応液を調製した。この反応液を90℃で3時間撹拌して反応を行った。次に、24%水酸化ナトリウム水溶液にて反応液を中和し、蒸留水100gを加えて反応生成物を析出させ、5℃まで冷却した後、濾過を行って分離した。濾過により得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(BiF-1)25.8gを得た。
なお、400MHz-H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。
H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.4(4H,O-H)、6.8~7.8(22H,Ph-H)、6.2(1H,C-H)
【0146】
【化110】
【0147】
(合成例7) BiF-I-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積1Lの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノール(東京化成社製試薬)150g(800mmol)と、4-ヨードベンズアルデヒド(東京化成社製試薬)75g(325mmol)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル300mLとを仕込み、p-トルエンスルホン酸(関東化学社製試薬)19.5g(105mmol)を加えて、反応液を調製した。この反応液を90℃で6時間撹拌して反応を行った。次に、24%水酸化ナトリウム水溶液にて反応液を中和し、蒸留水100gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。濾過により得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(BiF-I-1)24.3gを得た。
なお、400MHz-H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式の化学構造を有することを確認した。
H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.4(4H,O-H)、6.8~7.8(18H,Ph-H)、6.2(1H,C-H)
【0148】
【化111】
【0149】
(合成例8~9)
合成例2の原料である2,6-ナフタレンジオール及び4-ビフェニルカルボキシアルデヒドを表1の原料1及び原料2のように変更し、水1.5mL、ドデシルメルカプタン73mg(0.35mmol)、37%塩酸2.3g(22mmol)を加え、反応温度を55℃に変更し、その他は合成例2と同様に行い、各目的生成物を得た。生成物は、それぞれ、1H-NMRで同定した。結果を表2に示す。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
上記結果より、各生成物が、それぞれ、下記式(P-6)~(P-7)の化学構造を有することを確認した。
【0153】
【化112】
【0154】
【化113】
【0155】
<合成例10> BiN-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積300mLの容器において、2-ナフトール(シグマ-アルドリッチ社製試薬)10g(69.0mmol)を120℃で溶融後、硫酸0.27gを仕込み、4-アセチルビフェニル(シグマ-アルドリッチ社製試薬)2.7g(13.8mmol)を加えて、内容物を120℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液にN-メチル-2-ピロリドン(関東化学株式会社製)100mL、純水50mLを加えたあと、酢酸エチルにより抽出した。次に純水を加えて中性になるまで分液後、濃縮を行って溶液を得た。
得られた溶液を、カラムクロマトによる分離後、下記式(BiN-1)で表される目的化合物(BiN-1)が1.0g得られた。
得られた化合物(BiN-1)について、上述の方法により分子量を測定した結果、466であった。
得られた化合物(BiN-1)について、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiN-1)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.69(2H,O-H)、7.01~7.67(21H,Ph-H)、2.28(3H,C-H)
【0156】
【化114】
【0157】
<合成例11> BiP-1の合成
2-ナフトールの代わりに、2,2’-ビフェノールを使用する以外は合成例1と同様に反応させ、下記式(BiP-1)で表される目的化合物が0.1g得られた。
得られた化合物(BiP-1)について、上述の方法により分子量を測定した結果、466であった。
得られた化合物(BiP-1)について、上述の測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-1)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.40(4H,O-H)、6.80~7.80(23H,Ph-H)、2.25(3H,C-H)
【0158】
【化115】
【0159】
(合成例12~19)
合成例10の原料である2-ナフトール及び4-アセチルビフェニルを表3のように変更し、その他は合成例11と同様に行い、各目的生成物を得た。各生成物は、それぞれ、1H-NMRで同定した。結果を表4に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
上記結果より、各生成物が、それぞれ、下記式(BiN-2)~(P-2)の化学構造を有することを確認した。
【0163】
【化116】
【0164】
【化117】
【0165】
【化118】
【0166】
【化119】
【0167】
【化120】
【0168】
【化121】
【0169】
【化122】
【0170】
【化123】
【0171】
(合成例20~21)
合成例の原料である2-ナフトール及び4-アセチルビフェニルを表5の原料1及び原料2のように変更し、水1.5mL、ドデシルメルカプタン73mg(0.35mmol)、37%塩酸2.3g(22mmol)を加え、反応温度を55℃に変更し、その他は合成例1と同様に行い、各目的生成物を得た。各生成物は、それぞれ、1H-NMRで同定した。結果を表6に示す。
【0172】
【表5】
【0173】
【表6】
【0174】
上記結果より、各生成物が、それぞれ、下記式(P-3)~(P-4)の化学構造を有することを確認した。
【0175】
【化124】
【0176】
【化125】
【0177】
(実施例1)
クラス1000のクリーンブース内にて、1000mL容量の四つ口フラスコ(底抜き型)に、合成例1で得られた化合物(BisN-1)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解させた濃度10質量%の溶液を500g仕込み、続いて釜内部の空気を減圧除去した後、窒素ガスを導入して大気圧まで戻し、窒素ガスを毎分100mLで通気下、内部の酸素濃度を1%未満に調整した後、攪拌しながら30℃まで加熱した。底抜きバルブから上記溶液を抜き出し、フッ素樹脂製の耐圧チューブを経由してダイヤフラムポンプで毎分100mLの流量で公称孔径が0.01μmのポリアミド製中空糸膜フィルター(キッツマイクロフィルター(株)製、商品名:ポリフィックスナイロンシリーズ)に通液し、フッ素樹脂製容器に回収した。得られたBisN-1の溶液を下記条件にて分析した。なお、酸素濃度はアズワン株式会社製の酸素濃度計「OM-25MF10」により測定し、通液終了まで1%未満の酸素濃度を維持するようにした(以下も同様)。
【0178】
(実施例2)
公称孔径が0.01μmのポリエチレン製中空糸膜フィルター(キッツマイクロフィルター(株)製、商品名:ポリフィックス)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBisN-1の溶液を下記条件にて分析した。
【0179】
(実施例3)
公称孔径が0.04μmのポリアミド製中空糸膜フィルター(キッツマイクロフィルター(株)製、商品名:ポリフィックス)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBisN-1溶液を下記条件にて分析した。
【0180】
(実施例4)
公称孔径が5nmのポリエチレン製メンブレンフィルター(日本インテグリス(株)製、商品名:プロテゴ)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBisN-1溶液を下記条件にて分析した。
【0181】
(実施例5)
公称孔径が0.05μmのPTFE製メンブレンフィルター(Millipore(株)製、商品名:オムニポア)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBisN-1溶液を下記条件にて分析した。
【0182】
(実施例6)
公称孔径が0.2μmのゼータプラスフィルター40QSH(スリーエム(株)製、イオン交換能あり)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBisN-1溶液を下記条件にて分析した。
【0183】
(実施例7)
公称孔径が0.2μmのゼータプラスフィルター020GN(スリーエム(株)製、イオン交換能あり)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBisN-1溶液を下記条件にて分析した。
【0184】
(実施例8)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例2で得られた化合物(BisN-2)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBisN-2溶液を下記条件にて分析した。
【0185】
(実施例9)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例3で得られた樹脂(RBisN-2)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたRBisN-2溶液を下記条件にて分析した。
【0186】
(実施例10)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例4で得られた化合物(CH-BisN)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたCH-BisN溶液を下記条件にて分析した。
【0187】
(実施例11)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例5で得られた化合物(CAX-1)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたCAX-1溶液を下記条件にて分析した。
【0188】
(実施例12)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例6で得られた化合物(BiF-1)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiF-1溶液を下記条件にて分析した。
【0189】
(実施例13)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例7で得られた化合物(BiF-I-1)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiF-I-1溶液を下記条件にて分析した。
【0190】
(実施例14)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例8で得られた化合物(P-6)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたP-6溶液を下記条件にて分析した。
【0191】
(実施例15)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例9で得られた化合物(P-7)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたP-7溶液を下記条件にて分析した。
【0192】
(実施例16)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例10で得られた化合物(BiN-1)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiN-1溶液を下記条件にて分析した。
【0193】
(実施例17)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例11で得られた化合物(BiP-1)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiP-1溶液を下記条件にて分析した。
【0194】
(実施例18)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例12で得られた化合物(BiN-2)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiN-2溶液を下記条件にて分析した。
【0195】
(実施例19)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例13で得られた化合物(BiN-3)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiN-3溶液を下記条件にて分析した。
【0196】
(実施例20)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例14で得られた化合物(BiN-4)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiN-4溶液を下記条件にて分析した。
【0197】
(実施例21)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例15で得られた化合物(BiP-2)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiP-2溶液を下記条件にて分析した。
【0198】
(実施例22)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例16で得られた化合物(BiP-3)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiP-3溶液を下記条件にて分析した。
【0199】
(実施例23)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例17で得られた化合物(BiP-4)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたBiP-4溶液を下記条件にて分析した。
【0200】
(実施例24)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例18で得られた化合物(P-1)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたP-1溶液を下記条件にて分析した。
【0201】
(実施例25)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例19で得られた化合物(P-2)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたP-2溶液を下記条件にて分析した。
【0202】
(実施例26)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例20で得られた化合物(P-3)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたP-3溶液を下記条件にて分析した。
【0203】
(実施例27)
実施例1における化合物(BisN-1)の代わりに、合成例21で得られた化合物(P-4)を使用した以外は、実施例1と同様に通液し、得られたP-4溶液を下記条件にて分析した。
【0204】
(実施例28)窒素ガス置換なし
クラス1000のクリーンブース内にて、1000mL容量の四つ口フラスコ(底抜き型)に、BisN-1をPGMEに溶解させた濃度2.5質量%の溶液を500g仕込み、攪拌しながら30℃まで加熱した。アズワン株式会社製の酸素濃度計「OM-25MF10」により酸素濃度を測定した結果、20.8%であった。底抜きバルブからBisN-1溶液を抜き出し、フッ素樹脂製の耐圧チューブを経由してダイヤフラムポンプで毎分100mLの流量で公称孔径が0.01μmのポリアミド製中空糸膜フィルター(キッツマイクロフィルター(株)製、商品名:ポリフィックスナイロンシリーズ)に通液した。得られたBisN-1溶液を下記条件にて分析した。
【0205】
(比較例1)フィルター通液なし
クラス1000のクリーンブース内にて、1000mL容量の四つ口フラスコ(底抜き型)に、BisN-1をPGMEに溶解させた溶液(濃度2.5質量%)を500g仕込み、続いて釜内部の空気を減圧除去した後、窒素ガスを導入して大気圧まで戻し、窒素ガスを毎分100mLで通気下、攪拌しながら30℃まで加熱した。底抜きバルブからBisN-1溶液を抜き出し、フッ素樹脂製の耐圧チューブを経由してダイヤフラムポンプで毎分100mLの流量でフッ素樹脂製容器に回収した。回収したBisN-1溶液を下記条件にて分析した。
【0206】
実施例1~28及び比較例1において得られた各種PGME溶液について、金属含有量及び有機純度を測定した。測定結果を表7に示す。各測定については、次の装置及び測定条件にて行った。
[各種金属含有量測定]
ICP-MSを用いて以下の測定条件にての各種PGME溶液中の金属含有量を測定した。
装置:ELAN DRCII(パーキンエルマー製)
温度:25℃
環境:クラス100クリーンルーム
[有機純度測定]
高速液体クロマトグラフィーを用いて以下の測定条件にて各種PGME溶液中の有機純度を測定した。
装置:GL-7400型(日立製)
カラム:X-BRIDE C18
溶離液:アセトニトリル/水
温度:40℃
なお、本明細書において有機純度とは、PGME溶液中に溶解している有機化合物の総質量に対する化合物又は樹脂(例えば、実施例1ではBisN-1)の質量の割合(質量%)を意味する。
【0207】
【表7】
【0208】
表7に示すとおり、本実施形態に係る精製方法によれば、所定構造を有する化合物/樹脂における金属量を低減することができることがわかる。すなわち、本実施形態に係る組成物の製造方法により、前述の化合物/樹脂を含む組成物であって、不純物となる金属含有量の低減された組成物が得られることがわかる。
【0209】
本出願は、2017年2月28日出願の日本国特許出願(特願2017-037388号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明により、金属含有量が顕著に低減された、特定構造を有する物質を工業的に有利に製造することができる。