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特許7426235グリオキサール化ポリアクリルアミドからなる乾燥強化剤を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】グリオキサール化ポリアクリルアミドからなる乾燥強化剤を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/28 20060101AFI20240125BHJP
   C08F 20/56 20060101ALI20240125BHJP
   C08G 12/46 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08F8/28
C08F20/56
C08G12/46
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019506753
(86)(22)【出願日】2017-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 AT2017000016
(87)【国際公開番号】W WO2017185110
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2019-09-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】A212/2016
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】512123385
【氏名又は名称】アプライド・ケミカルズ・ハンデルス-ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケルマン,ヌリ
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】大畑 通隆
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-503271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08G 4/00- 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性塩基性媒体中でのポリアクリルアミドとエタンジアール(グリオキサール)との定量的反応によってグリオキシル化ポリアクリルアミドを調製するための方法であって、ポリアクリルアミドの水性溶液が、循環ポンプによる撹拌下、エタンジアールとともに補給され、前記反応が、塩基の添加によって、塩基性のpH値で開始され、かつ、撹拌及び/又は循環下で反応させられ、その後、前記反応が、2~30分の事前に定められた設定反応時間の終了後、撹拌及び/又は循環下、酸の添加によって停止される方法において、前記反応が、非連続的な方法として実施され、
記反応の終了が、以下の要因:
d)pH値の減少と、
a)濁度測定、及びe)循環ポンプの電流消費から選択される1つと、
の少なくとも2つを測定することにより監視され、
かつ/あるいは
記反応の終了が、要因d)pH値の減少を測定することにより監視され、前記反応が、以下の要因:
b)温度に応じたpH調整、及び
c)反応時間に応じたpH調整
の少なくとも1つによって制御及び/又は調節されることを特徴とし、
前記b)において、前記反応が開始pHで開始され、前記開始pHが、開始pH=20℃での基準pH+[(開始温度-20℃).F](式中、基準pHは、事前に選択された値を構成し、開始温度は、反応の開始/最初の温度を表し、Fは、0.03~0.08の乗数である。)の式に従い、
前記c)において、1つのバッチ反応において前記事前に定められた設定反応時間からの1~10分のずれを検出した場合、次のバッチ反応において、前記ずれを補正するために、開始pHについて0.1~1.0のpH補正が行われる、方法。
【請求項2】
ポリアクリルアミド及びエタンジアールが、3:1~10:1の比で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリアクリルアミド及びエタンジアールが、5:1~6:1の比で使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリアクリルアミド及びエタンジアールの前記反応が、酸によって、反応混合物のpH値を2~6の値まで減少させることによって停止されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリアクリルアミド及びエタンジアールの前記反応が、酸によって、反応混合物のpH値を3.5~4.5の値まで減少させることによって停止されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸の添加による前記反応の停止が、少なくとも0.1~1の値の前記反応混合物のpH値の減少が始まった後、及び/又は、反応混合物の濁度が、4~10NTU増加した後、行われることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記酸の添加による前記反応の停止が、少なくとも0.3の値の前記反応混合物のpH値の減少が始まった後、行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記乗数Fが、0.05であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項9】
エタンジアールとのポリアクリルアミドの前記反応が、6~20分の事前に定められた設定反応時間にわたって実施されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸の添加による前記反応の停止が、初期値と比較して0.1A~1Aの範囲内の前記循環ポンプの一定の電流消費に達したとき実施されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
記反応の終了が、要因a)及びd);)及びe);並びにa)、d)及びe)の組合せを測定することによって監視される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応が、要因b)及びc)の組合せによって制御及び/又は調節されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアクリルアミドの水性溶液が、循環ポンプによる撹拌下、エタンジアール(グリオキサール)とともに補給され、反応が、塩基、特に強塩基の添加によって、塩基性のpH値、特に8を上回るpH値で開始され、かつ、撹拌及び/又は循環下で反応させられ、その後、反応が、2~30分の所定の反応時間の終了後、撹拌及び/又は循環下、酸の添加によって停止される、グリオキシル化ポリアクリルアミドの乾燥強化剤を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工業用の乾燥強化剤を調製するための方法は公知であり、前記方法のほとんどが連続的に稼働している。このような方法では、ビニルアミドポリマー及び反応性セルロース剤の実質的に水性の反応混合物が、所定の時間、塩基性のpH値で通常反応させられ、所望の付加物が形成されたとき適時に反応が停止されるようにするために、入ってくる水の温度、反応混合物のpH値、反応性セルロース材料の消費量、ビニルアミドポリマーの濃度のような複数の要因が、付加物などの形成前及び形成中に測定される。適時に反応を停止できるようにするために、反応進行度を決定するための粘度測定が、特に、多くの様々な測定に加えて既に実施されている。公知の方法のほとんどが、インサイチューで調製されないが、タンクローリーによって最終消費者まで輸送され、そこで反応に必要な濃度、例えば、3~4%まで希釈される生成物を生じる。これらの公知の方法には、膨大な量の液体が輸送されなければならないという欠点があり、これとは別に、生成物は、安定剤の添加にもかかわらず輸送中に劣化し、全体の貯蔵寿命又は保管寿命が短くなるという欠点がある。
【0003】
例えば、US 7,875,676は、セルロース反応性ポリビニルアミド付加物を調製するための方法について記載しており、この方法では、ビニルアミドポリマー及びセルロース反応剤の水性反応混合物が、反応中の粘度を測定しながら、連続的に反応される。粘度が、25℃の温度において30cP以下のとき、反応が停止される。付加物の粘度が測定されるような方法には、反応を停止する瞬間が見過ごされた場合、すなわち、粘度が上昇しすぎた場合、非水溶性ゲルが形成され、これは乾燥強化剤として使用され得ないという問題がある。このようなグリオキシル化付加物は、さらに、著しい量の有機材料及び/又は有機油のような溶媒を含有し、これらは、費用がかかるだけでなく、高揮発性でもあり、したがって、このような付加物の使用を制限する。
【0004】
WO 2009/059725から、グリオキシル化N-ビニルアミンを得ることができるが、その際アクリルアミド及びジアリルジメチルアンモニウムクロリドの混合物がグリオキシル化され、反応は、専ら濁度測定によって監視され、したがって、正確な終了、又は定量的反応が起こったときに関する正確な記述は可能ではないようである。
【0005】
WO 2013/084062 A1から、ポリビニルアミドからセルロース活性付加物を製造する方法を引用することができ、この方法では、所望の付加物の生成を濁度の変化で判定している。
【0006】
市販のグリオキシル化ポリビニルアミド付加物は、さらに、わずか数週間の非常に短い貯蔵寿命を有するという欠点があり、前記貯蔵寿命は、pH値、濃度及び貯蔵温度の関数であるため、実用において問題があるが、この理由は、新たに届けられる付加物又は新たに利用できる付加物が供給されるように、それが常に守られなければならないからである。
【0007】
このような手順において、少なくともある程度、経済的に稼働するために、このような使用には高すぎるビニルアミドポリマー濃度を有する生成物が供給され、したがって、妥当な反応を可能にするために、この実際の使用の前に希釈されなければならない。
【0008】
最後に、公知の方法のほとんどにおいて、所望の粘度に達した後、多量の未反応のグリオキサールが生成物中に残り、したがって、このような生成物は乾燥強化剤として使用され得ないという不利な点がある。
【0009】
紙及び厚紙を増強するための乾燥強化剤としてのグリオキシル化ポリアクリルアミド、並びにグリオキサール又は反応性セルロース剤で熱硬化性になるように修飾されたセルロースの反応性の水溶性ビニルアミドコポリマーの応用が、紙及び厚紙を増強するために施される。しかし、架橋剤としてのグリオキサールの使用のために、これらの生成物は、このような懸濁液の安定性及び貯蔵に関する問題を伴い、これらの安定性の低下のために、おおよそ3~6週の範囲の保管寿命を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7875676号明細書
【文献】国際公開第2009/059725号
【文献】国際公開第2013/084062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、反応混合物中のグリオキサールを定量的に反応させることが可能な、乾燥強化剤を調製するための方法を提供すること、したがって、長期間の貯蔵安定性を有する乾燥強化剤を提供することができ、乾燥強化剤の調製方法を提供することを目的としている。これは、特に乾燥強化剤の調製直後に一般に使用され得る。本発明はさらに、乾燥強化剤を調製するための方法を提供することを目的とし、グリオキサールの定量的反応が、反応混合物中で疑いなく確認され得るような正確な方法で制御され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明による方法は、本質的に、水性塩基性媒体中の過剰量のポリアクリルアミドとのエタンジアールの定量的反応が、以下の要因:
a)濁度測定
b)温度に応じたpH調整
c)反応時間に応じたpH調整
d)pH値の減少、又は
e)循環ポンプの電流消費
のうちの少なくとも2つによって制御及び/又は調節される非連続的な方法として実施されることを特徴とする。
【0013】
方法が、非連続的な方法として実施されるので、水性塩基性媒体中の過剰量のポリアクリルアミドとのエタンジアールの定量的反応が、任意のバッチにおける複数の要因に応じて制御又は調節され得る。同時に、これらの要因のうちの少なくとも2つが反応中に測定されるので、再現可能な又は正確に再現可能な生成物を任意のバッチによって調製することが可能になった。
【0014】
そのうちの2つが制御量又は調節量としてそれぞれ同時に使用される個々の要因は、以下の通りである:
a)濁度測定
濁度の変化が、反応の転化率の指標であり、反応混合物が、通常5~15NTUの範囲の初期濁度を有することが明らかになった。濁度が反応中に規定値の上昇を示したとき、これは、所望の転化率が達せられたことを示し、任意のさらなる反応は、酸の添加によって防止できる。反応が、酸の添加によって停止されない限り、濁度はさらに上昇する。濁度測定は、好ましくは、初期濁度の値が測定値に入らないような差異測定として実施されるため、明らかな結果を常に得る。
【0015】
b)温度によるpH調整
ポリアクリルアミドのエタンジアールとの反応に関しては、溶液が塩基性のpH値を有するとき、反応が常に起こることに基本的に留意されたい。反応時間は、次いで、pH値に応じて変化するが、このpH値はプラントの比較的複雑な制御又は調節を必要とすると思われる。しかし、驚くべきことに、反応時間が、実質的に一定のままであり又は事前設定され得ること、並びに12~18分の反応時間が、プラントの能力が著しく低下すると思われる長すぎる反応時間と、容器壁面及びプラントの配管内の付着物の増加が観察されると思われる短すぎる反応時間との間の最適な時間になることが明らかになった。
【0016】
この理由により、温度は、pHに加えて、反応速度の制御における別の重要な要因である。しかし、実際には、反応混合物の温度を常に一定に維持することはほとんど不可能であるので、本発明によるpH調整は温度によって行われる、すなわち、温度補正係数が入力され、これに基づいてpH値が温度差の程度に従って規定値から自動的に減少又は増加する。設定値は、例えば、20℃でもよい。
【0017】
c)反応時間によるpH調整
pH値を反応時間によって補正することも可能である。この場合、補正は実質的に、定量的な反応の終了が達成されるまでpHが調整され、これによって、時間ずれの場合、pH設定値が補正されるように進められる。さらに、いくつかの連続して発生する時間ずれの場合、pH設定値が減少し得る最低pHが決定され、同様に、いくつかの連続する時間ずれの場合、pH設定値が増加し得る最高pHが決定される。本発明によるpH補正は、各ずれにおける即座の補正を不要にするように、事前に規定されたより大きい又はより小さいずれの数値の後にのみ行われる。したがって、バッチにおける所望の反応時間が規定値を超える場合又は規定値に達していない場合、さらに、ここで、不感帯、すなわち、測定に入らない範囲が規定され得、ずれている反応時間が記憶され、同じずれが次のバッチにおいて起こると、補正が自動的に行われる。
【0018】
d)pH値の減少
エタンジアールとのグリオキシル化ポリアクリルアミドの反応において、pH値の減少は反応中に測定される。したがって、反応は、同様に、pH値のこのような減少が観察されると反応が停止されるように制御又は調節できるが、この理由は、反応が、その時にも定量的に完了してしまっているからである。
【0019】
e)電流消費又は循環ポンプ
最後に、循環ポンプの電流消費を介して反応を、制御又は調節することが可能であるが、これは本発明による反応が実施されるプラント内に組み込まれている。。この場合、循環ポンプは、反応中、着実に増加する電流消費を制御し、定量的反応の最後に、もはや増加しない一定値で急に調整し、結果として、反応の終了を示す。循環ポンプの電流消費は、表示され、任意選択的に記録もされ、したがって、方法を制御するためにも使用され得る。
【0020】
本発明によれば、これらのパラメータのうちの少なくとも2つが、反応終了について、すなわち、エタンジアール又はグリオキサールのポリアクリルアミドとの定量的反応について確実に示すために測定又は決定される。驚くべき方法でのこのようなプロセス管理は、従来の付加物よりも著しく向上した貯蔵安定性を有する、ポリアクリルアミド及びグリオキサールからの付加物の調製を、同時に低下した水分で可能にし、これは、未反応のグリオキサールの失われた残留量による可能性がある。
【0021】
特に信頼性の高いプロセス管理、とりわけ、本発明によるエタンジアールの定量的反応は、本発明のさらなる開発に対応して、ポリアクリルアミド及びエタンジアールが、3:1~10:1、特に5:1~6:1の量比で使用される場合、確実になる。
【0022】
特に、pH値の減少が、反応の終了を決定するための制御量又は調節量のうちの1つとして使用される場合、方法は、本発明のさらなる開発に対応して、ポリアクリルアミド及びエタンジアールの反応が、酸の添加によって、反応混合物のpHを2~6、特に3.5~4.5の値まで減少させることによって停止されるように実施される。そうすることで、約0.3のpH減少が観察されたら即座に、反応が、酸の添加によって停止され、系のpHが、2~6、特に3.5~4.5の範囲の値まで下げられる。前記酸として、硫酸、亜硫酸、塩酸、フッ化水素酸、酢酸、クエン酸、リン酸、アジピン酸及びシュウ酸から選択される任意の酸が添加され得る。
【0023】
濁度測定及び/又はpH値の減少が、本発明による方法の制御において制御量又は調節量として使用される場合、本発明による方法は、酸性化が、少なくとも0.1~約1、特に0.3の値の反応混合物のpH減少が始まった後、及び/又は、反応混合物の濁度が、4~10NTU、特に6NTU増加した後、行われるように実施される。特に、両方の要因、すなわち、pH値の減少及び濁度の増加が考慮される場合、エタンジアールとのポリアクリルアミドの定量的反応の実現直後に反応の終了を正確に決定し、酸を添加することによって反応を停止することが可能である。
【0024】
本発明のさらなる開発によれば、pH値の調整が温度によって行われるとき、pH値の調整は、反応混合物の25℃の温度を基準にして、pH値が、開始pH=基準pH+[(開始温度-20℃).F](式中、基準pHは、事前に選択された値を構成し、開始pHは、反応の結果得られ、かつ次の反応の初期値を構成し、開始温度は、反応の最初の温度を表し、Fは、0.03~0.08の乗数である。)の式に従って、反応混合物の温度上昇に伴って減少し、温度低下に伴って増加するように進められる。反応温度は、経時的に100%一定に維持され得ないため、このような運転モードは、温度のわずかなずれが起こるたびに方法の調節が即座に開始されるのを防ぐが、このような方法管理は逆に、上述の温度補正係数を選択することによって、非常に小さいずれを伴う反応混合物のpH設定値の調整を可能にする。
【0025】
このような方法管理の好ましいさらなる開発に対応して、この調整は、pH値の増加又は減少が、0.03~0.08、特に0.05の乗数Fによる温度補正係数を使用して実施されるように進められる。この点に関して、この調整は、例えば、所与の温度、例えば、20℃を基準にして、温度差の程度に従って調整可能で、事前に規定され、さらに、もはや変化し得ない値だけpHが自動的にそれぞれ増加又は減少するが、このような補正係数は、0.03~0.08、特に0.05に選択されるように進められ得る。本発明によれば、最後に、それぞれの反応温度に応じて異なる温度補正係数、例えば、温度補正係数COLD(COLD時の10℃の反応温度は、反応時間を一定に維持するために、pH値のより大きな増加を必要とするため、自由に調整可能である。)、温度補正WARM(例えば、30℃のような高い反応温度においてpHをできるだけ低く維持するために、同様に自由に調整可能である。)、最後に、温度補正係数NORMAL(通常事前に選択された反応温度において選ばれた要因である。)を事前に選択することも可能である。このような事前調整は、ほとんどの場合、季節又はプラントが設置された気候帯に応じて行われるが、この理由は、作業場内の温度が、通常、それぞれ支配的な外部温度の影響を強く受けるためである。反応プラントの利用をできるだけ高めることができるように、本発明による方法は、エタンジアールとのポリアクリルアミドの反応が、6~20分、特に12~18分の所定の一定時間にわたって実施されるようにさらに開発されている。最長20分~最短6分、好ましくは12~18分の所定の一定時間は、通常支配的な温度におけるポリアクリルアミド及びグリオキサールの完全な反応の実現をそれぞれ可能にする。時間差は、この場合、反応が、より高い若しくはより低い外部温度において実施されるかに依存する。製造ホール内の温度及び/又はより高い若しくはより低い水温に対してもいくらか影響する。
【0026】
特に、反応制御が、反応時間に応じたpH調整によって実施される場合、本発明による方法は、固定された一定反応時間において、0.1~1.0、特に0.2~0.4のpH調整が、固定された反応時間からの1~10分、特に2~4分のずれを少なくとも1回検出した後に行われるようにさらに開発されている。このような運転モードによって、固定された反応時間からの反応時間のずれがどれだけ小さくても反応の終了までpH調整が行われることが回避されるが、確実に、固定された時間からの実際のずれが測定された後、pH値の調整が行われ、したがって、固定された反応時間に向かって反応時間を戻すことができる。
【0027】
本発明のさらなる開発に対応して、0.1A~1A、特に0.2A~0.6Aの範囲の循環ポンプの一定の電流消費に達したとき、反応混合物のpH値の減少が酸を利用して実施されるので、ポリアクリルアミドをグリオキサールと反応させることによって乾燥強化剤を調製するための方法を制御するための特にエレガントな選択肢が実現される。このような方法管理は、循環ポンプの電流消費が一定値に達する瞬間の確実な認識を可能にし、その後、この瞬間の直後に、反応を停止するために酸が添加される。このような制御は、したがって、定量的に実施される反応を可能にする。
【0028】
グリオキサールとのポリアクリルアミドの反応によって得られる、乾燥強化剤を調製するための方法の制御による特に信頼性の高い結果は、本発明によれば、方法の制御及び/又は調節が、要因a)及びb);a)、b)及びc);a)及びd);a)、b)、c)及びd);a)、d)及びe);b)及びd);b)及びe);b)、c)及びd);又はb)、d)及びe)の組合せを観察することによって実施されるという点で実現される。
【0029】
以下において、本発明が、例示的な実施形態及び図に示したプロセス制御概略図によってさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による乾燥強化剤を調製するための方法を実施するための装置の構造を示す図である。
図2】反応中の循環ポンプの電流消費、pH及び濁度の変化を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、グリオキシル化ポリアクリルアミドを含む乾燥強化剤を調製するための方法の順序を模式的に示しており、ここで、ポリアクリルアミドの水性溶液が、エタンジアール(グリオキサール)とバッチ反応器内で反応する。そうすることで、貯蔵タンク1からのグリオキサールが、定量ポンプ2及び複数の弁を経由して反応器3内に供給される。同時に、ポリアクリルアミドが、少なくとも1つのタンク容器4から、さらに好ましくは2つの独立して制御可能なタンク容器4から、定量ポンプ5並びに詳細に記載されていない複数の制御弁又は調節弁を経由して反応器3内に供給される。グリオキサール及びポリアクリルアミドに加えて、新鮮水タンク6からの供給水が、ライン7及び開弁8、9を経由して、特に反応物の前に又は反応物と同時に反応器3に導入される。水、グリオキサール及びポリアクリルアミドの供給は、この順番で又は同時に行われ、定量ポンプ2及び5は、同時に起動され、所望のモル比のグリオキサール及びポリアクリルアミドを計量分配するようにプログラムされている。定量ポンプ2及び5の起動と同時に、反応器3内に設けられた撹拌機10が、模式的に示した循環ポンプ11と同様、起動され、これはまた、反応物のブレンドに少なくとも部分的に寄与する。所望の量のグリオキサール及びポリアクリルアミド溶液が水に混合された後、供給ポンプ2及び5が停止され、弁8及び9が閉じられ、反応物の供給が停止される。反応物の添加が停止されている間、アルカリタンク13からのアルカリポンプ12を経由したアルカリ液、例えば、苛性ソーダ液の混合は、反応の所望のpH、例えば、pH9に達するまで同時に開始される。アルカリ濃度、特に、pH値を正確に調整できるようにするために、アルカリ液用の供給ポンプ12の起動に加えて弁14及び15が開かれ、前記弁は、所望のpH値の正確な調整を可能にする程度まで希釈されたアルカリ液の反応器3内への計量が可能であるように、水、例えば、新鮮水タンク6からの新鮮水又は部分的に洗浄水タンク16からの洗浄水の濃縮アルカリ液への供給を制御又は調節する。アルカリ液の計量が開始されるとき、特に、塩基性のpH、例えば、9に達したとき、反応器3内の反応物の反応が始まり、以下の要因が連続的に記録される:反応混合物の温度、反応混合物の濁度、反応混合物のpH及び循環ポンプ11の電流消費。以下のパラメータのうちの少なくとも1つに達したとき、すなわち、事前に定められた濁度値に達したとき、循環ポンプの一定の電流消費に達したとき又はpH値の事前に定められた減少を達成するとき、反応が、酸ポンプ17を起動することによって、したがって、酸貯槽18から反応器3内への酸、例えば、硫酸の添加によって停止される。計量される酸のそれぞれの濃度を調整するため、新鮮水タンク6からの新鮮水が、弁20を開くことによって、反応器3への酸供給ライン19内に再び供給される。酸の計量分配時に、反応物の初期濃度を調整するために新鮮水を反応器に投入するための弁8、9及びアルカリ液の濃度を調整するための弁14、15が閉じられる。それぞれの個々の貯蔵タンクをこれらの定量ポンプ及びラインから切り離し可能にするそれぞれの弁も閉じられ、簡単にするために、図1中に示した制御弁又は調節弁は、ここでは詳細に説明せず、これらの機能は自明である。約3~4のpHに達したとき、酸ポンプ17が再び停止され、循環ポンプ11は起動したままであり、生成物を貯蔵タンク23内に排出し、さらに場合によって存在する量の廃棄物を24において即座に排出するために、弁21及び任意選択的に弁22がさらに開かれる。貯蔵タンク23から、生成物が続いて抄紙機に直接供給される。
【0032】
プロセスの最初に、反応を開始するためのすべての反応物及び必要量の新鮮水並びに必要量のアルカリ液が、反応器3内に投入され、pHが、反応に望ましい値まで調整されたとき、反応物の反応が反応器3内で始まる。撹拌装置10が、循環ポンプ11と同時に起動される。反応を監視するため、少なくとも1つのバイパス回路が、以下の値のうちの少なくとも1つを測定するために、それぞれの弁を開くことによって作動される:反応混合物のpH、循環ポンプの電流消費、濁度測定。
【0033】
濁度測定のために、バイパスライン25に挿入された弁26が開かれ、したがって、循環ポンプ11は、少なくともこの回路を介して反応混合物を永続的に循環させる。前記回路は、さらに、反応混合物の濁度を連続的に測定する濁度計27を備える。弁28及び29が、濁度計上の何らかの付着物を次の測定の前に確実かつ完全に除去する目的で、反応の終了後に新鮮水による濁度計の洗浄を可能にするために設けられている。
【0034】
濁度測定と同時に又は濁度測定とは別に、少なくとも2つのpHプローブ33及び34を備えた第2のバイパスライン32が、弁30及び31を開くことによって作動され得る。pH測定回路に関して、pH測定回路が、濁度測定回路と同時に又はこれとは別に作動され得ることに留意されたい。pHプローブを洗浄するために、最後に、空気源35を個々のプローブに供給するさらなる洗浄回路及び個々のpH測定プローブ用の洗浄回路36並びにドレイン37が設けられている。前記洗浄回路36は、以下の通り操作される:反応が終了した後、pHプローブが、残りの系から切り離されるように、弁30及び31が閉じられる。pHプローブ33、34を洗浄するとき、ドレイン37に接続された弁38が開かれ、液体が、pH値を測定するための循環ラインの遮断された部分から排出される。各pHプローブは、回路36からそれぞれのpHプローブ33、34に洗浄水を直接掛けるための付随する洗浄弁を備える。洗浄水は、反応によるpHプローブ上の付着物を除去するために、加圧下でプローブ33及び34上に噴霧される。効率的な洗浄のために、最初にプローブに洗浄水が噴霧され、続いて、空気源35に接続された、当該プローブに属している弁が、洗浄水をラインから追い出すために開かれ、この後、第2のpHプローブが第1のpHプローブと同じ方法で処理されるサイクルが運転される。このようなサイクルが数回運転され、その後、すべての弁が閉じられ、空気が、洗浄水を利用してラインから追い出され、弁30、31のうちの少なくとも1つが、ライン内の圧力を等しくするために再び開かれる。
【0035】
このような洗浄シーケンスの後、確実に、各pHプローブには、ポリアクリルアミドとのグリオキサールの反応において以前に形成された付着物がなく、付着物のないpHプローブが、pH値の正確な測定を可能にするように、反応物の次の反応に利用可能になる。
【0036】
反応器3からの反応生成物を排出した後、新しいサイクルが始まる前に、プラントにおける水、グリオキサール及びポリアクリルアミドの反応中に管内並びにプローブ上に形成された付着物が、測定誤差を避け、プラントの測定精度を維持するために、説明の通りできるだけ除去される。容器内及び管内の付着物は、このような反応にとって何ら問題にならないが、pHプローブ上の付着物は、pHプローブの測定速度の低下をもたらし、したがって、測定精度、特に、プラントの応答速度の低下をもたらす。プラントの応答速度の低下はもはや、反応の適時かつ正確な停止を可能にせず、これは、反応時間が長くなり、製造ロス及び生成物の悪化をもたらし得るため、pHプローブのための前述の洗浄サイクルが実施される理由である。
【0037】
図2は、水性溶液中のグリオキサール及びポリアクリルアミドの反応中に測定されたいくつかの要因をトレースしたプロットである。
【0038】
プロット中、時間は分で表されている。図2中、曲線Aは、反応過程における濁度の変化を示し、曲線Bは、水性溶液中のポリアクリルアミドとのグリオキサールの反応中に測定されたpH値を示し、曲線Cは、反応中の循環ポンプの電流消費を示す。曲線Aが、約40分の時間まで平均3.5NTUの実質的に一定の濁度値を備えること、前記濁度値が、40分~約59分の時間に約10.9NTUまで急上昇し、次いで、垂直に下降することが明らかである。59分に、反応は、同じく記録された曲線Bにおいて認められるように、酸の添加によって停止された。曲線Bは、pHの増加から明らかなように、37分の時間から40分の時間まで、塩基が、グリオキサール及びポリアクリルアミドに混合されたことを示す。前記pHは、約9.6の初期のpHから約9.3の値まで40分~59分の時間にゆっくりと減少した後、大きく減少し、これは、反応混合物への酸の添加の開始を示し、これにより、図2中に示した実施例の反応時間は約19分であると結論付けることができる。
【0039】
同様に、グラフCから、循環ポンプの電流消費が、最初に約9.8Aの初期値で実質的に一定のままであり、その後、アルカリ液の添加終了後の約5分、実質的に直線的にゆっくりと増加し始めること及び循環ポンプの電力消費が、約10.3Aの電力消費から一定値に再び達することが分かる。循環ポンプ(例えば、F&B Hygia II KYY 65/65/7ポンプ)として、Gundfos Pumpen Vertriebs Gesellschaft m.b.H社の5.2を使用することができる。酸の添加が開始されたとき、すなわち、グリオキサール及びポリアクリルアミドの何らかのさらなる反応を防ぐように、反応が、酸の添加によって停止されたとき、前記値に達した。この瞬間から、循環ポンプの電流消費値は再び一定であった。この場合の全体の出力は、0.1A~1A、特に0.2A~0.6Aの範囲である。
【0040】
これら3つの曲線A、B及びCから分かる通り、3つすべての曲線は、完全な反応の終結を可能とするために、例えば、反応が終了するまで何NTUの濁度の上昇が許容されるのか、反応が終了するまで何アンペアの循環ポンプの電流消費の増加が許容されるのか、並びにグリオキサール及びポリアクリルアミドの反応中、何単位のpH値の減少が許容されるのかなどによって、特に限界値が事前に規定された場合に、反応を制御又は調節するために参考にすべきである。
【実施例
【0041】
本発明による方法は、実施例によって、より詳細に説明される。
【0042】
一般的な方法制御
事前に計算された量の水が混合タンク内に供給される。同時に又は全量の水の供給後、エタンジアール及びポリアクリルアミドが、タンクに供給され、撹拌装置及び循環ポンプによって混合される。塩基の添加によって、反応が、8を上回るpHで開始され、その後、反応並びに反応の終了が、以下の測定のうちの少なくとも2つによって監視される:
a)濁度測定
b)温度に応じたpH調整
c)反応時間に応じたpH調整
d)pH値の減少
e)循環ポンプの電流消費及び
f)傾向線からの濁度のずれ。
【0043】
[実施例1]
反応時間に応じた濁度測定及びpH補正
前述の反応において、濁度は、反応中6NTU上昇する。18分の反応時間の測定は、反応時間が、15分の事前に定められた設定値から3分ずれることを示す。したがって、8.5であった初期のpHに対して0.2pH単位のpH補正が、次のバッチの設定反応時間に向かって反応時間を補正するために、引き続き行われる。
【0044】
[実施例2]
濁度測定及び循環ポンプの電流消費の測定
15分に予定された反応中、濁度が、6NTU上昇する一方、同時に、循環ポンプの電流消費が0.2A~0.6A増加し、この際、両方の値について、反応が始まる前に規定された変化が所定の時間内に達成され、したがって所望の転化率が得られているので、反応が、酸によって即座に停止される。
【0045】
[実施例3]
pH減少及び濁度の増加による制御
グリオキサール及びポリアクリルアミドの反応中、pHが0.3単位減少する。濁度の5NTUの増加が観察された後、反応は、酸によって停止される。同様に、制御は、pH減少及び循環ポンプの電流消費によって可能である。pHの0.3単位の減少が観察された後、ポンプの電流消費がこの場合確認され、初めの0.2Aから0.6Aまで増加したことが明らかである。この場合も、両方の値について、規定された変化が、反応が始まる前に所定の時間内に達成されるため、反応は、酸の添加によって即座に停止される。
【0046】
[実施例4]
規定された反応時間におけるpH減少による制御
グリオキサール及びポリアクリルアミドの反応時間は、15分に事前調整される。pH減少が測定され、pH値が、13分後に0.3既に減少しており、したがって、反応の終了を示すことが見出される。反応は、酸の添加によって停止される。このアプローチが、もう一度繰り返されて同じ結果が得られ、その後、pH補正が、次のアプローチの間、pHを0.2単位減少させることによって行われ、したがって、反応のより低い塩基度のために、反応時間を増加させる。
【0047】
[実施例5]
規定された温度におけるpH補正
反応の初期温度は25℃である。反応の最初のpH値は、以下の式に従って実際の条件に適合される:20℃の基準pH+(反応初期温度-20℃×0.05)=pH値。この場合には、20℃の基準pHは9であり、したがって、この式を適用すると、9.25のpHが得られ、反応が、酸の添加によって、終了とみなされる8.95のpHで停止され得るように、前記pHは、反応過程において0.3単位減少する。
図1
図2