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特許7426240ボイラの運転シミュレータ、ボイラの運転支援装置、ボイラの運転制御装置、ボイラの運転シミュレーション方法、ボイラの運転シミュレーションプログラム、及びボイラの運転シミュレーションプログラムを記録した記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ボイラの運転シミュレータ、ボイラの運転支援装置、ボイラの運転制御装置、ボイラの運転シミュレーション方法、ボイラの運転シミュレーションプログラム、及びボイラの運転シミュレーションプログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/18 20060101AFI20240125BHJP
   G05B 13/04 20060101ALI20240125BHJP
   G05B 17/00 20060101ALI20240125BHJP
   G09B 9/00 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
F22B35/18
G05B13/04
G05B17/00
G09B9/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020003146
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021110507
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 一彦
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】三田 尚
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-041403(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208773(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/159883(WO,A1)
【文献】特開2006-194550(JP,A)
【文献】特開2000-346304(JP,A)
【文献】特開平06-266408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 35/18
G05B 13/04
G05B 17/00
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの運転シミュレータであって、
前記ボイラは当該ボイラの伝熱部内を流れる流体の経路となる第1分岐系統と、前記伝熱部内において前記第1分岐系統に対して空間的に間隔を空けて配置された第2分岐系統と、を備え、
前記運転シミュレータは、
前記ボイラを仮想運転した際に前記伝熱部に生じる仮プロセス値を演算するためのボイラ伝熱モデルに、前記仮想運転において前記ボイラに設定されると仮定される仮入力パラメータを含む計算条件を適用し、前記第1分岐系統上にある前記伝熱部に生じる第1仮プロセス値と、前記第2分岐系統上にある前記伝熱部に生じる第2仮プロセス値と、を其々演算し、前記第1仮プロセス値及び前記第2仮プロセス値を其々出力するボイラ伝熱計算部を備え、
前記計算条件は、前記仮入力パラメータと、当該仮入力パラメータを用いた数値流体力学計算を行って得られるアウトプットとが紐づけられた条件であることを特徴とするボイラの運転シミュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラの運転シミュレータであって、
前記ボイラ伝熱計算部は、前記伝熱部を前記流体の流路方向下流から上流に向かって複数のブロックに分割し、前記第1分岐系統上にある各ブロックに生じる前記第1仮プロセス値と、前記第2分岐系統上にある各ブロックに生じる前記第2仮プロセス値と、を其々演算する、
ことを特徴とするボイラの運転シミュレータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボイラの運転シミュレータであって、
前記計算条件は、前記仮入力パラメータと、前記ボイラの熱量変動又はエンタルピー変動の周期変化又は熱量変動量の少なくとも一つを含むアウトプットとが紐づけられた条件であり、
前記ボイラの運転シミュレータは、前記仮入力パラメータと、前記周期変化又は前記熱量変動量の少なくとも一つを含むアウトプットとを前記ボイラ伝熱モデルに適用し、前記周期変化又は前記熱量変動量の少なくとも一つを含む前記第1仮プロセス値及び前記第2仮プロセス値を其々演算し、其々出力する、
ことを特徴とするボイラの運転シミュレータ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載のボイラの運転シミュレータにおいて、
前記仮入力パラメータを用いた数値流体力学計算を行ってアウトプットを演算し、前記仮入力パラメータと前記アウトプットとが紐づけられた少なくとも一つ以上の初期計算条件に基づいて、前記仮入力パラメータと前記アウトプットとの関係を機械学習して前記初期計算条件よりも多い追加計算条件を演算し、前記初期計算条件及び前記追加計算条件を指標データベースに記録する指標作成部を更に備え、
前記ボイラ伝熱計算部は、前記指標データベースからボイラ伝熱計算に用いる計算条件を読み出し、前記ボイラ伝熱モデルに読み出した計算条件を適用して前記第1仮プロセス値及び前記第2仮プロセス値を演算する、
ことを特徴とするボイラの運転シミュレータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載のボイラの運転シミュレータと、
当該運転シミュレータが演算した前記第1仮プロセス値及び前記第2仮プロセス値の良否を評価し、当該評価結果に基づいて当該運転シミュレータがシミュレートした計算条件を選択し、選択した計算条件に含まれる仮入力パラメータを実入力パラメータとして前記ボイラの運転制御装置に出力する、
ことを特徴とするボイラの運転支援装置。
【請求項6】
請求項に記載のボイラの運転支援装置、及び前記ボイラに備えられた操作端の其々に通信接続された前記ボイラの運転制御装置であって、
前記運転制御装置は、前記ボイラの運転支援装置から取得した前記実入力パラメータを前記操作端に設定する制御信号を、前記操作端に対して出力する、
ことを特徴とするボイラの運転制御装置。
【請求項7】
ボイラの伝熱部内を流れる流体の経路となる第1分岐系統と、前記伝熱部内において前記第1分岐系統に対して空間的に間隔を空けて配置された第2分岐系統と、を備えたボイラの運転シミュレーション方法であって、
前記ボイラを仮想運転した際に前記伝熱部に生じる仮プロセス値を演算するためのボイラ伝熱モデルに、前記仮想運転において前記ボイラに設定されると仮定される仮入力パラメータを含む計算条件を適用し、前記第1分岐系統上にある前記伝熱部に生じる第1仮プロセス値と、前記第2分岐系統上にある前記伝熱部に生じる第2仮プロセス値と、を其々演算するステップと、
前記第1仮プロセス値及び前記第2仮プロセス値を其々出力するステップと、
を含み、
前記計算条件は、前記仮入力パラメータと、当該仮入力パラメータを用いた数値流体力学計算を行って得られるアウトプットとが紐づけられた条件であることを特徴とするボイラの運転シミュレーション方法。
【請求項8】
請求項に記載のボイラの運転シミュレーション方法を、コンピュータに実行させるためのボイラの運転シミュレーションプログラム。
【請求項9】
請求項に記載のボイラの運転シミュレーションプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラの運転シミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所に設置されたボイラの運転シミュレータとして、特許文献1には、「内側のループは、まず仮定した計画で運転したときのプラントの特性を短時間で予測可能な高速版動特性シミュレータと、この予測値を運転制限条件の制限値と比較評価し、より良好な運転特性を得る方向に上記計画をファジィ推論等により修正する手段から成る。外側のループは、内側のループで得られた最適計画を入力する高精度の動特性シミュレータと、内側と外側ループにより得られた特性の差異が減少する方向に内側ループの運転制限条件と動特性モデルの修正を指示する手段等から成る。繰返しを伴う起動試験時には、外側の動特性シミュレータの代りに、実プラントを用いてもよい(要約抜粋)」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3333674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボイラの炉内に空間的な広がりがあることから、ボイラを実際に燃焼させると、伝熱面の左右方向の位置によって伝熱面温度が異なることがある。ボイラの運転についての経済性・安定性をより追求するためには、運転シミュレータの高精度化が求められるが、そのためには、ボイラの伝熱部の空間偏差を考慮することが望ましい。しかし、特許文献1では空間偏差については考慮されておらず、シミュレータの結果として運転状況の平均値のみを求めており、更なる工夫の余地がある。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、ボイラの運転シミュレーションの高精度化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、特許請求の範囲に記載の構成を備える。その一例をあげるならば、ボイラの運転シミュレータであって、前記ボイラは当該ボイラの伝熱部内を流れる流体の経路となる第1分岐系統と、前記伝熱部内において前記第1分岐系統に対して空間的に間隔を空けて配置された第2分岐系統と、を備え、前記運転シミュレータは、前記ボイラを仮想運転した際に前記伝熱部に生じる仮プロセス値を演算するためのボイラ伝熱モデルに、前記仮想運転において前記ボイラに設定されると仮定される仮入力パラメータを含む計算条件を適用し、前記第1分岐系統上にある前記伝熱部に生じる第1仮プロセス値と、前記第2分岐系統上にある前記伝熱部に生じる第2仮プロセス値と、を其々演算し、前記第1仮プロセス値及び前記第2仮プロセス値を其々出力するボイラ伝熱計算部を備え、前記計算条件は、前記仮入力パラメータと、当該仮入力パラメータを用いた数値流体力学計算を行って得られるアウトプットとが紐づけられた条件であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ボイラの運転シミュレーションの高精度化を行えるボイラの運転シミュレータを提供することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の発電プラントの流体系統図
図2】ボイラの運転シミュレータを搭載した運転支援装置のハードウェア構成図
図3】運転支援装置の機能ブロック図
図4】プロセスシミュレータの処理の流れを示すフローチャート
図5】ボイラ運転支援装置の全体の処理の流れを示すフローチャート
図6A】機械学習用の入出力関係を定義したデータ例を示す図
図6B】指標DB例を示す図
図7】従来の熱計算処理例(節炭器から過熱器)を示す図
図8】ボイラの系統を考慮したボイラ伝熱計算例を示す図
図9】ボイラの系統に加え、経時変化に伴う周期及び熱量変動を考慮したボイラ伝熱計算例を示す図
図10】運転シミュレータ出力を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0010】
発電プラント100は、燃料を燃焼させ、該燃焼の熱によって蒸気を発生させるボイラ110と、ボイラ110が発生した蒸気を用いてタービンを回転させることにより発電機101を駆動させて発電する蒸気タービン、具体的には高圧蒸気タービン(HPT)121と、中圧蒸気タービン(IPT)122と、低圧蒸気タービン(LPT)123と、ボイラ110に水を供給する給水ライン130と、運転制御装置150(図2)と、を備える。
【0011】
ボイラ110は、節炭器(ECO)111と、火炉水冷壁(WW)112と、汽水分離器(WS)113と、過熱器(SH)114と、再熱器(RH)115と、を備える。
【0012】
本実施形態では、過熱器114は、流路方向下流から上流に向かって複数段、具体的には1SH、2SH、3SHの3段の過熱器114を備える(図7,8,9参照)。再熱器115は、下流から上流に向かって2段備える。
【0013】
給水ライン130上には、復水器131と、復水ポンプ132と、低圧給水過熱器(低圧ヒーター)133と、脱気器134と、給水ポンプ135と、高圧給水過熱器(高圧ヒーター)136とが設けられる。
【0014】
上記構成を有する発電プラント100では、節炭器111で、供給された水を燃焼ガスとの熱交換により予熱する。節炭器111で予熱された水は、火炉水冷壁112において、壁に形成された不図示の炉壁管を通すことにより水-蒸気2相流体を生成する。火炉水冷壁112において生成された水-蒸気2相流体は、汽水分離器113に送られて、飽和蒸気と飽和水とに分離される。ここで、飽和蒸気は過熱器114へ、飽和水は第1配管161を通り復水器131へ、それぞれ、導かれる。
【0015】
汽水分離器113で分離された飽和蒸気は、燃焼ガスとの熱交換により過熱器114で過熱され、主蒸気管162を経由して高圧蒸気タービン121に供給される。主蒸気管162には、常時開の第1塞止弁176が設けられる。高圧蒸気タービン121の出口は、低温再熱蒸気管163に連結される。
【0016】
低温再熱蒸気管163は、再熱器115の手前の第1連結点191において、ベンチレータライン199に分岐接続する。ベンチレータライン199は復水器131に連結する。低温再熱蒸気管163において、第1連結点191と再熱器115との間には高圧蒸気タービン121への蒸気の逆流を抑止するための排気強制逆止弁192が備えられる。
【0017】
ベンチレータライン199において、第1連結点191と復水器131との間には、ベンチレータ弁193が備えられる。ベンチレータ弁193は常時閉状態であり、FCB(ファストカットバック)運転時に全開、通常運転時及び所内単独負荷運転時に全閉する。
【0018】
高圧蒸気タービン121で所定の仕事を行った蒸気は、通常運転時は、低温再熱蒸気管163を経由して再熱器115に導かれる。ここでいう通常運転とは、送電系統に接続した状態での運転をいう。
【0019】
再熱器115では、高圧蒸気タービン121で所定の仕事を行った蒸気を再度過熱する。再熱器115で過熱された蒸気は、高温再熱蒸気管164を経由して中圧蒸気タービン122及び低圧蒸気タービン123に供給され、そこで、それぞれ仕事を行い、発電機101を駆動する。高温再熱蒸気管164には、常時開の第2塞止弁177が設けられる。
【0020】
主蒸気管162における過熱器114と第1塞止弁176との間にある第2連結点194と、低温再熱蒸気管163における排気強制逆止弁192の下流側にある第3連結点195とは、高圧バイパス蒸気管165により連結される。高圧バイパス蒸気管165には、常時閉の高圧バイパス開閉弁171が設けられる。
【0021】
また、高温再熱蒸気管164において、再熱器115と第2塞止弁177との間にある第4連結点196と、復水器131とは、低圧バイパス蒸気管167により連結される。低圧バイパス蒸気管167には、常時閉の低圧バイパス開閉弁172が設けられる。
【0022】
低圧蒸気タービン123で仕事を終えた蒸気は、第1排気蒸気管166によって復水器131に供給される。復水器131で凝縮した復水は、汽水分離器113から送られた飽和水と共に復水ポンプ132によって低圧ヒーター133を通過した後、脱気器134に送られ、復水中のガス成分が除去される。脱気器134を経た復水は、更に給水ポンプ135によって昇圧された後、高圧給水過熱器136に送給されて加熱され、最終的には、ボイラ110へ還流される。
【0023】
また、発電プラント100には、過熱蒸気の温度を制御するための3つのスプレイが備えらえる。具体的には、1段目の過熱器114である1SHの出口と、2段目の過熱器114である2SHの入口との間の流路には、前段過熱器スプレイ211からの給水が流入する第1給水口201が備えられる。前段過熱器スプレイ211から第1給水口201への給水の流路となる前段過熱器給水ライン215には、前段過熱器スプレイ弁202が備えられる。
【0024】
2SHの出口と3段目の過熱器114である3SHの入口との間には、後段過熱器スプレイ212からのスプレイが流入する第2給水口203が備えられる。後段過熱器スプレイ212から第2給水口203への給水の流路となる後段過熱器給水ライン216には、後段過熱器スプレイ弁204が備えられる。
【0025】
同様に、1段目の再熱器115の出口と、2段目の再熱器115の入口との間の流路には、再熱器スプレイ213からのスプレイが流入する第3給水口205が備えられる。再熱器スプレイ213から第3給水口205への給水の流路となる再熱器給水ライン217には、再熱器スプレイ弁206が備えられる。
【0026】
図1では説明の便宜のため、運転制御装置150(図2参照)と各制御弁とを接続する信号線は簡略化して図示するが、各制御弁と運転制御装置150とは、信号線を介して電気的に、又は通信接続される。そして運転制御装置150の開度制御信号が各制御弁に伝達され、各制御弁の開閉制御が実行される。
【0027】
図2は、ボイラ110の運転シミュレータを搭載した運転支援装置300のハードウェア構成図である。運転支援装置300は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)302、ROM(Read Only Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304、入力I/F305、及び出力I/F306を含み、これらがバス307を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。出力I/F306には、モニタ308を接続し、運転シミュレータのシミュレート結果を表示できるように構成されてもよい。
【0028】
一方、ボイラ110の運転制御装置150は、CPU151、RAM152、ROM153、HDD154、入力I/F155、及び出力I/F156を含み、これらがバス157を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。
【0029】
運転制御装置150の出力I/F156は運転支援装置300の入力I/F305に接続される。そして、ボイラ110の実運転に用いられた実入力パラメータと、当該実入力パラメータをボイラ110に設定して実運転した結果得られた実プロセス値とが、運転制御装置150から運転支援装置300へ送信される。送信された実入力パラメータと実プロセス値とは紐づけられた一つの計算条件を形成する。なお、図2では、運転支援装置300と運転制御装置150とは別体のハードウェアにより構成する例を示したが、運転支援装置300と運転制御装置150とを同一のハードウェアにより構成し、各装置の機能を実現するプログラムを一つのハードウェアで実行させてもよい。また運転制御装置150は、ボイラ110の運転支援装置300から取得した実入力パラメータをボイラ110の操作端に設定する制御信号を、操作端に対して出力する。これにより、運転支援装置300により評価された運転条件(下記「計算条件」に相当する)で実運転をすることができる。
【0030】
図3は、運転支援装置300の機能ブロック図である。運転支援装置300は、ボイラ110の運転シミュレータ350と、指標作成部330と、運転シミュレータ350でシミュレーションした計算条件の中から好適な計算条件を選択し、運転制御装置150に出力する運転支援部360と、を含む。運転シミュレータ350は、運転支援装置300の一機能ではなく、運転シミュレータ350単体でもシミュレーション機能を実現する装置として構成できる。
【0031】
運転シミュレータ350は、制御シミュレータ310及びプロセスシミュレータ320を含む。
【0032】
制御シミュレータ310は、操作端モデル311、制御装置モデル312、及び検出端モデル313を含む。
【0033】
プロセスシミュレータ320は、ボイラ110の蒸気に関するプロセス値(例えば蒸気の流量、蒸気温度、蒸気圧力)についてのシミュレーションを、設計データ及び物理式と工学式に基づき行う。
【0034】
プロセスシミュレータ320は、ボイラ伝熱モデル作成部321と、ボイラ伝熱モデル作成部321が作成したボイラ伝熱モデルを記憶するボイラ伝熱モデル記憶部322と、ボイラ伝熱モデルを用いて伝熱計算を行うボイラ伝熱計算部323と、後述する指標(空間偏差、経時的なゆらぎに関わる指標を含んでもよい)を記憶する指標データベース(DB)記憶部324とを含む。ここでいう「ボイラ伝熱モデル」とは、ボイラ110を仮想運転した際にボイラ110の伝熱部に生じる仮プロセス値を再現したモデルである。
【0035】
ボイラ伝熱計算部323は、操作端モデル311から仮入力パラメータを取得する(操作量入力処理)と、これを用いて流量・圧力分布計算処理、マスバランス計算処理、ヒートバランス計算処理の順に実行し、各計算処理の結果得られる仮プロセス値を検出端モデル313及び指標DB記憶部324に出力する(プロセス値出力処理)。
【0036】
指標DB記憶部324に記憶される経時的なゆらぎに関わる指標は、指標作成部330で作成される。指標作成部330は、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)シミュレータによる処理、その結果得られたCFD計算結果を用いて機械学習を行う処理、機械学習の結果から指標を抽出する指標抽出処理を実行する。
【0037】
制御装置モデル312は、ボイラ110の運転制御装置150のモデルである。制御装置モデル312は、検出端モデル313から仮プロセス値の入力を受け付けると、その仮プロセス値に基づいて、ボイラ110を最適運転するための仮入力パラメータを演算し、操作端モデル311に仮入力パラメータを設定する。
【0038】
運転支援部360は、運転シミュレータ350がシミュレーションした計算条件を取得し、各計算条件の良否を評価する計算条件評価部361と、計算条件評価部361の評価結果を基に好適な計算条件を選択して運転制御装置150へ当該計算条件に含まれる入力パラメータを実入力パラメータとして運転制御装置150に出力する実入力パラメータ出力部362とを含む。運転制御装置150は、この実入力パラメータをボイラ110の各操作端に設定する。これにより、運転シミュレータ350によりシミュレートされた計算条件を用いてボイラ110を実運転させることができる。
【0039】
計算条件評価部361の処理例として、例えば、予め各プロセス値に対して、プロセス値に応じた個別スコアを割当てて、一つの計算条件で得られたプロセス値の個別スコアを合計して合計スコアを算出する。そして実入力パラメータ出力部362が、合計スコアの大小を基に運転制御装置150へ出力すべき計算条件を選択し、出力してもよい。
【0040】
図4及び図5は、ボイラの運転支援装置の処理手順を示すフローチャートである。図4は,事前準備として行う指標作成部330の処理の流れを示すフローチャートである。図5は、主に運転シミュレータ350の処理の流れを示すフローチャートである。
【0041】
図4のフローチャートの説明を行う。指標作成部330(CFDシミュレータ)にて、ボイラの燃焼特性を再現したCFDシミュレーションの計算条件を設定し(S101)、CFD計算を実施する(S102)。ここで用いられるCFDには、燃焼の空間偏差や経時的なゆらぎが再現できる方法が好ましく、例えば、LES(Large Eddy Simulation、非定常シミュレーション)がその候補になる。また、ここでいう「計算条件」とは、CFDシミュレーション計算を行う際の運転条件であって、具体的には操作端に設定される入力パラメータのセットを含んで定義される。入力パラメータ例として、例えばダンパの開度、各種スプレイ弁の開度制御信号が含まれる。また1つの計算条件に含まれる個々の入力パラメータやCFD計算に用いられる数式も計算条件に含まれてもよい。
【0042】
図4の全体の流れについて、図6A図6Bを例にとり説明する。図6Aは、機械学習用の入出力関係を定義したデータ例である。図6Bは、指標DB例を示す図である。直交表の横軸T1、T2、・・・、T18(「初期計算条件」に相当する)は、計算条件Tが18あることを示す。この計算条件は、8個の仮入力パラメータ、x1、x2、・・・、x8を含む。S102では、直交表から一つの計算条件、例えばT1の仮入力パラメータx1、x2、・・・、x8を読み出す。そして、指標作成部330(CFDシミュレータ)は、仮入力パラメータx1、x2、・・・、x8をCFD再現モデルに当てはめてボイラ伝熱計算部323がボイラの伝熱計算に用いる値としてのアウトプットを演算する。アウトプットには、空間偏差に関するものと経時偏差に関するものを含んでもよい。空間偏差に関するアウトプットとして第1分岐系統の入熱QA、第2分岐系統の入熱QB、空間的な補正係数α、従来例のボイラ伝熱計算結果に対する補正量Q’また、経時変化に関するアウトプットとして熱量変動の振幅λ、周期Tを含んでもよい。上記各種類のアウトプットは一例であり、これら全てのアウトプットは必要ではなく、適宜少なくとも一つ以上のアウトプットが演算される。
【0043】
指標作成部330(CFDシミュレータ)は、仮入力パラメータと、S103で求めたアウトプットとを紐づけて、機械学習用の入出力関係を設定する(S103)。
【0044】
指標作成部330(CFDシミュレータ)は、計算条件T1からT18の全てについてCFDシミュレーションを行う。
【0045】
指標作成部330(機械学習)は、計算条件T1からT18の全てについてCFDシミュレーションを行った演算結果を用いた入出力関係(主要プロセスリスト)を機械学習して、入出力関係を再現できる機械学習モデルを作成する。ここでの機械学習には、公知のアルゴリズム、例えば、ランダムフォレスト、勾配ブースティング木、ニューラルネットワーク、Ridge回帰、Lasso回帰、最近傍法等を適宜用いてもよい。
【0046】
指標作成部330(指標抽出)は、計算条件T1からT18とは異なる入力パラメータを有する計算条件を設定する。この計算条件が追加計算条件である(S105)。一般に、CFD計算よりも機械学習モデルを用いた計算の方が短時間かつ低コストで行うことができる。図6Bの指標DBでは、CFDの計算条件(18通り)より多い、6561通りの追加計算条件が設定されている(18の計算条件の仮入力パラメータとアウトプットとを基に、3の8乗、すなわち6561の計算条件の仮入力パラメータを設定されている)。なお、図6Bの指標DBには、空間偏差や経時変化に伴う周期、熱量変動量の少なくとも一つを考慮した計算条件が含まれてもよい。
【0047】
指標作成部330(指標抽出)は、計算条件のパラメータを機械学習モデルに入力して、追加計算を実施しアウトプットを得る(S106)。この結果を全6561通り行い、結果を整理して、燃焼の空間偏差、経時的なゆらぎに関わる指標を抽出して指標DB(図6B参照)を作成する(S107)。
【0048】
次に、図5のフローチャートの説明を行う。まず、ボイラ伝熱モデル作成部321がボイラ伝熱の計算条件を設定し、さらに制御シミュレータ310がボイラ110の運転支援等のために必要となる計算条件の設定を行う(S201)。ここでいう計算条件とは、具体的には、運転シミュレーションを行う際の計算条件を規定した仮入力パラメータのセットを意味する。操作端モデル311は、ボイラ伝熱計算部323にボイラ110の各操作端に仮想的に設定される仮入力パラメータを出力する。
【0049】
ボイラ伝熱計算部323は、指標DB記憶部324から空間偏差、ゆらぎ指標を読み込む(S202)。ボイラ伝熱計算部323は、空間偏差、経時変化に伴う周期、ゆらぎ指標をボイラ伝熱モデルに当てはめて、改良計算を実施する(S203)。「改良計算」とは、後述する図7に示した一系統しかないことを前提とする基本計算と区別するための言葉である。
【0050】
ボイラ伝熱計算部323は、検出端モデル313に改良計算の結果を出力する(S204)。
【0051】
続いて、ボイラ伝熱モデル計算の流れを説明する。
【0052】
ボイラ伝熱モデル作成部321は、主機設計データ、補機設計データ、及び系統接続データの入力を受け付け、それら入力データを物理式、工学式に適用してボイラ伝熱モデルを作成する。
【0053】
主機設計データとして例えば発電機101、タービン(HPT121、IPT122、LPT123)、ボイラ110の設計データがある。補機設計データとして、復水器131、脱気器134、復水ポンプ132、給水ポンプ135、ファン、各種制御弁がある。更に系統接続データとして、例えばタービン蒸気、風煙道、ボイラ過熱蒸気の流路系統がある。
【0054】
ボイラ伝熱モデル作成部321がモデル作成に用いる物理式や工学式の例として、物理学に基づく式(1)、流体力学に基づく式(2)、熱力学に基づく式(3)、及び伝熱学に基づく式(4)を用いてもよい。
【数1】
【0055】
ボイラ伝熱モデル作成部321は、作成したボイラ伝熱モデルをボイラ伝熱モデル記憶部322に記憶する。
【0056】
図7は、従来のボイラ伝熱計算処理例であり、節炭器111から3SHまでの間に一系統の蒸気ラインがあると捉え、一系統の蒸気ライン上にある伝熱部を下流から上流に向かってブロック化して熱計算を行った例を示す。具体的には、節炭器(ECO)111、火炉水冷壁(WW)112、汽水分離器(WS)113、過熱器(SH)114は各段、1SH、2SH、3SHに分ける。そして、ボイラ伝熱計算部323は、各ブロックの入口エンタルピー(Hin:これは直前のブロックの出口エンタルピーと同値)、出口エンタルピー(Hout)の差分に、各ブロックのスプレイ流量Gを乗算して、各ブロックの入熱Q**を下式(5)により演算する。
Q**=(H**out-H**in)xG**flow・・・(5)
【0057】
例えば火炉水冷壁112の入熱Qwwは、下式(6)により得られる。
Qww=(Hww-Heco)xGww・・・(6)
【0058】
図8は、ボイラ110の系統を考慮したボイラ伝熱計算処理例を示す。
【0059】
ボイラ110の蒸気ラインは一系統ではなく、実際には複数の系統に分岐している。そして、複数の分岐系統が水平面内において左右方向に間隔を空けて配置されている。その結果、左右端において、伝熱部への入熱、及び伝熱部出口における流体温度、流体圧力といった出口エンタルピーが異なる。
【0060】
具体的には、図8に示すように、実際のボイラ110では、蒸気ラインは、節炭器111、火炉水冷壁112、汽水分離器113までは1系統であるが、汽水分離器113の出口から1SHの入口までの間で第1分岐系統(左分岐系統)と第2分岐系統(右分岐系統)とに分離する。そして、1SHから3SHの出口までは第1分岐系統(左分岐系統)と第2分岐系統(右分岐系統)とが設けられる。
【0061】
次にボイラ伝熱計算部323は第1分岐系統、第2分岐系統について、1SH、2SH、3SHのブロック毎の入熱Q1sA、Q2sA、Q3sA(Q*sAは第1仮プロセス値に相当する)、Q1sB、Q2sB、Q3sB(Q*sBは第2仮プロセス値に相当する)を求める。具体的には、第1系統の各ブロックの出口エンタルピーH1soA、H2soA、H3soA、第2分岐系統の各ブロックの出口エンタルピーH1soB、H2soB、H3soBを式(5)に当てはめて、第1分岐系統、第2分岐系統上のブロック毎の入熱Q1sA、Q2sA、Q3sA、Q1sB、Q2sB、Q3sBを演算する。
【0062】
ここで、入熱Qの空間偏差を考慮する方法として、以下を代表的にあげることができる。ただし、これに限られず、他の方法を用いてもよい。
1)指標DBに各分岐系統の入熱の値が直接記載されている場合
指標DBからQA,QBを直接読み取って、空間偏差を表現する。
ここで、QA:第1分岐系統の入熱、QB:第2分岐系統の入熱
2)指標DBに空間的な補正係数が記載されている場合
下式(7)に従い、従来例のボイラ伝熱計算(図7参照)を行い、得られた入熱の半分に対して、指標DBから代表系統の補正係数αを読み取り、乗算して左右偏差を求める。
QA=α×Q/2、QB=(1-α)×Q/2・・・(7)
3)指標DBに空間的な補正量が記載されている場合
下式(8)に従い、従来例のボイラ伝熱計算(図7参照)を行い、得られた入熱の半分に対して、指標DBから補正量Q’を読み取り、加減して左右偏差を求める。
QA=Q/2+Q’、QB=Q/2-Q’ ・・・(8)
【0063】
上記は、ある1時点における空間偏差のみを考慮してボイラ伝熱計算処理を行う例である。しかし、ボイラ110の実運転では時間の経過とともに入熱、出口エンタルピーは周期的に変動し、微細時間では入熱、出口エンタルピーにゆらぎが生じる。
【0064】
図9に、ボイラ110の系統に加え、経時変化に伴うゆらぎ(周期及び熱量変動)を考慮したボイラ伝熱計算例を示す。
【0065】
ボイラ伝熱計算部323は、各ブロックの伝熱計算において、入口エンタルピー及び出口エンタルピーの其々にゆらぎ量Δを加える。即ち出口エンタルピーはHout+ΔHout、入口エンタルピーはHin+ΔHinと設定する。そしてこれらの値を式(5)に当てはめることにより、式(9)に示すようにゆらぎ量ΔQが加わった入熱Qを演算する。
【数2】
【0066】
ここで、空間偏差に加えて経時変化に伴う周期及び熱量変動を考慮する場合は、入熱Q(現行出力)を指標DBから算出した振幅λ、周期Tを加味した熱量変動関数QA+Q(λA、TA)、QB+Q(λB、TB)とする。
【0067】
周期及びゆらぎは、ボイラ110に備えられたダンパの開度が変わると生じやすい。よって、仮入力パラメータとしてダンパの開度を含み、当該ダンパの開度が変化した場合に特に上記周期及びゆらぎを含むボイラ伝熱計算を行えることは有効である。
【0068】
プロセスシミュレータ320の作用効果について図10に基づいて説明する。図10は運転シミュレータ出力を示すグラフである。
【0069】
実際のボイラ110では流体経路が分岐しているにも関わらず、従来は、一系統の流体経路と見做して、平均値を出力していた(図10において破線で図示)。従って、ボイラ110内に備えられた分岐系統の空間偏差は考慮されていなかった。その結果、実際には、例えば第1分岐系統(左)では、火炉水冷壁112のエンタルピーが異常値になっていても、シミュレータ出力では右側エンタルピーと平均化されて正常値として検出されることがあり、シミュレーション精度が低かった。
【0070】
これに対して、本実施形態に係る運転シミュレータでは、第1分岐系統及び第2分岐系統の其々についてエンタルピーを計算するため、空間偏差がシミュレーション出力に現れる(図10において実線で図示)。これにより、シミュレーション精度が向上する。
【0071】
さらに、実際のボイラ110を運転させると、時間の経過に伴いエンタルピーの変動周期、及び熱量変動(ゆらぎ)が生じる。
【0072】
しかし、従来は、周期やゆらぎを考慮していないため、図10に示すように、シミュレータ出力は大きな周期変動はあっても微細なゆらぎはシミュレータ出力には現れず、滑らかな曲線で表せていた。
【0073】
これに対して、本実施形態に係るプロセスシミュレータ320では、周期やゆらぎを考慮するため、図10に示すように運転シミュレータ出力は時間方向に沿って周期を有すると共に、微細時間においてエンタルピーが増減する。これにより、微細時間における異常値の出現もシミュレータで再現でき、シミュレーション精度が向上する。
【0074】
また、本実施形態に係るプロセスシミュレータ320では、指標作成部330がオールペア法、直交表を用いて8の計算条件から6561の追加計算条件を生成し、CFD計算や機械学習を行って指標DBを予め作成する。そのため、空間偏差や周期、ゆらぎを含んだCFD計算に係る演算負荷を、指標DBから指標を読み込んでボイラ伝熱計算を行う。そのため、ボイラ伝熱計算時にCFD計算を行わなくてよく、プロセスシミュレータ320の演算速度を速くすることができる。その結果、ボイラ110の実運転時に並行してプロセスシミュレーションを行い、ボイラ110を監視する運転支援においても、好適な運転シミュレーションを行える。
【0075】
上記実施形態は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での設計変更が可能である。
【0076】
例えば図3に示す指標作成部330について、機械学習を行わずに、CFD計算結果から指標DBを作成してもよい。また、指標作成部330をプロセスシミュレータ320内に配置してもよい。
【0077】
また、図7では、汽水分離器113の下流から第1分岐系統及び第2分岐系統に分岐したが、汽水分離器113の上流から第1分岐系統及び第2分岐系統に分岐するボイラにおいても、本発明は適用できる。その場合も、第1分岐系統及び第2分岐系統の其々についてボイラ伝熱計算を行い、空間偏差や経時偏差が反映された仮プロセス値を出力させてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、指標作成部330は運転シミュレータ350とは別の機能ブロックとして説明したが(図3参照)、指標作成部330は、運転シミュレータ350の一機能として構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 :発電プラント
101 :発電機
110 :ボイラ
111 :節炭器
112 :火炉水冷壁
113 :汽水分離器
114 :過熱器
115 :再熱器
121 :高圧蒸気タービン
122 :中圧蒸気タービン
123 :低圧蒸気タービン
130 :給水ライン
131 :復水器
132 :復水ポンプ
133 :低圧ヒーター
134 :脱気器
135 :給水ポンプ
136 :高圧給水過熱器
150 :運転制御装置
151 :CPU
152 :RAM
153 :ROM
154 :HDD
155 :入力I/F
156 :出力I/F
157 :バス
161 :第1配管
162 :主蒸気管
163 :低温再熱蒸気管
164 :高温再熱蒸気管
165 :高圧バイパス蒸気管
166 :第1排気蒸気管
167 :低圧バイパス蒸気管
171 :高圧バイパス開閉弁
172 :低圧バイパス開閉弁
176 :第1塞止弁
177 :第2塞止弁
191 :第1連結点
192 :排気強制逆止弁
193 :ベンチレータ弁
194 :第2連結点
195 :第3連結点
196 :第4連結点
199 :ベンチレータライン
201 :第1給水口
202 :前段過熱器スプレイ弁
203 :第2給水口
204 :後段過熱器スプレイ弁
205 :第3給水口
206 :再熱器スプレイ弁
211 :前段過熱器スプレイ
212 :後段過熱器スプレイ
213 :再熱器スプレイ
215 :前段過熱器給水ライン
216 :後段過熱器給水ライン
217 :再熱器給水ライン
300 :運転支援装置
305 :入力I/F
306 :出力I/F
307 :バス
308 :モニタ
310 :制御シミュレータ
311 :操作端モデル
312 :制御装置モデル
313 :検出端モデル
320 :プロセスシミュレータ
321 :ボイラ伝熱モデル作成部
322 :ボイラ伝熱モデル記憶部
323 :ボイラ伝熱計算部
324 :指標DB記憶部
330 :指標作成部
350 :運転シミュレータ
360 :運転支援部
361 :計算条件評価部
362 :実入力パラメータ出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10