(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】物品管理システムおよび物品管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0601 20230101AFI20240125BHJP
【FI】
G06Q30/0601 338
(21)【出願番号】P 2020003259
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-03-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
(72)【発明者】
【氏名】栗原 亜由美
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-038270(JP,A)
【文献】特開2006-331077(JP,A)
【文献】特開2017-057069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理システムであって、
前記エリア内の物品に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波からエネルギーを得て動作する無線タグと、
前記エリアから所定距離以内において、前記無線タグからタグ識別情報を受信する携帯端末と、
前記携帯端末と通信可能であり、前記エリア内の物品を識別する物品情報と、前記物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と、を対応付けて記憶する情報処理装置とを含み、
前記携帯端末は、前記無線タグからタグ識別情報を受信した場合に、受信したタグ識別情報
に対応付けて記憶されている物品情報が、予め、ユーザを識別するユーザ識別情報と対応付けて登録された物品情報に含まれるか、前記情報処理装置に対して
問合せを行い、
前記情報処理装置は、前記問合せに応じて、
前記受信したタグ識別情報に対応付けて記憶されている物品情報が、前記携帯端末から取得したユーザ識別情報に対応付けて登録された物品情報に含まれると判断した場合に、前記受信したタグ識別情報に対応付けて記憶されている物品情報によって特定される物品が前記エリア内にある
ことを前記携帯端末に通知する、
物品管理システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、前記携帯端末から受信するタグ識別情報に基づき、前記予め登録された物品情報によって特定される物品が前記携帯端末の近傍にある場合に前記携帯端末に通知する、
請求項1に記載された物品管理システム。
【請求項3】
前記情報処理装置は、前記予め登録された物品情報によって特定される物品に関連する関連物品が前記エリア内にある場合には、前記関連物品が前記エリア内にあることを前記携帯端末に通知する、
請求項1又は2に記載された物品管理システム。
【請求項4】
前記物品管理システムは、前記情報処理装置と通信可能な複数の無線装置をさらに含み、
各無線装置は、固有の装置識別情報に関連付けられ、前記無線タグと通信可能であり、
前記情報処理装置は、各無線装置から受信する装置識別情報およびタグ識別情報に基づいて、前記予め登録された物品情報によって特定される物品の位置を特定し、特定した位置に関する情報を前記携帯端末に通知する、
請求項1から3のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項5】
前記複数の無線装置の各々は、前記無線タグと通信できない状態が所定時間以上継続する場合には、無線送信を開始するか、又は、送信電力を増加させる、
請求項4に記載された物品管理システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、複数のユーザの各々を識別するユーザ識別情報と、各ユーザによって予め登録された物品情報と、を対応付けて記憶し、
前記問合せの元となるユーザのユーザ識別情報を基に当該ユーザに対して予め登録された物品情報によって特定される物品が前記エリア内にあるか否か判断する、
請求項1から5のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項7】
エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理システムであって、
エリア内の物品に取り付けら、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波からエネルギーを得て動作する無線タグと、
エリアから所定距離以内において、当該エリア内の無線タグからタグ識別情報を受信する携帯端末と、
前記携帯端末と通信可能であり、所定エリアを含む複数エリア内の各エリアを識別するエリア識別情報ごとに、物品を識別する物品情報と、物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報、を対応付けて記憶する情報処理装置と、を含み、
前記情報処理装置は、前記携帯端末から受信するタグ識別情報に基づき、予め登録された物品情報によって特定される物品が前記複数エリアのうち前記所定エリアにある場合に前記携帯端末に通知する、
物品管理システム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、前記携帯端末から受信するタグ識別情報に基づき、前記予め登録された物品情報によって特定される物品が前記携帯端末の近傍にある場合に前記携帯端末に通知する、
請求項7に記載された物品管理システム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、前記予め登録された物品情報によって特定される物品に関連する関連物品が前記所定エリア内にある場合には、前記関連物品が前記所定エリア内にあることを前記携帯端末に通知する、
請求項7又は8に記載された物品管理システム。
【請求項10】
前記物品管理システムは、前記情報処理装置と通信可能な複数の無線装置をさらに含み、
各無線装置は、固有の装置識別情報に関連付けられ、前記無線タグと通信可能であり、
前記情報処理装置は、各無線装置から受信する装置識別情報およびタグ識別情報に基づいて、前記予め登録された物品情報によって特定される物品の位置を特定し、特定した位置に関する情報を前記携帯端末に通知する、
請求項7から9のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項11】
前記複数の無線装置の各々は、前記無線タグと通信できない状態が所定時間以上継続する場合には、無線送信を開始するか、又は、送信電力を増加させる、
請求項10に記載された物品管理システム。
【請求項12】
前記無線タグは、Bluetooth Low Energy(登録商標)の規格に準拠したパケットをブロードキャスト送信する、
請求項1から11のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項13】
前記パケットは、無線タグのタグ識別情報を含み、
前記携帯端末は、受信したパケットに含まれるタグ識別情報を前記情報処理端末に送信する、
請求項12に記載された物品管理システム。
【請求項14】
前記情報処理装置は、前記携帯端末から取得した前記タグ識別情報を認証し、認証が成功し、かつ予め登録された物品情報によって特定される物品が前記エリア内にある場合に前記携帯端末に通知する、
請求項1から13のいずれか一項に記載された物品管理システム。
【請求項15】
エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理方法であって、
前記エリア内の物品に取り付けられた無線タグが、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波からエネルギーを得て動作し、
前記エリアから所定距離以内を移動する携帯端末が、前記無線タグからタグ識別情報を受信し、
前記携帯端末と通信可能な情報処理装置が、前記エリア内の物品を識別する物品情報と、物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と、を対応付けて記憶しており、
前記携帯端末が、前記受信したタグ識別情報
に対応付けて記憶されている物品情報が、予め、ユーザを識別するユーザ識別情報と対応付けて登録された物品情報に含まれるか、前記情報処理装置に
問合せを行い、
前記情報処理装置が、前記問合せに応じて、
前記受信したタグ識別情報に対応付けて記憶されている物品情報が、前記携帯端末から取得したユーザ識別情報に対応付けて登録された物品情報に含まれると判断した場合に、前記受信したタグ識別情報に対応付けて記憶されている物品情報によって特定される物品が前記エリア内にある
ことを前記携帯端末に通知する、
物品管理方法。
【請求項16】
エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理方法であって、
エリア内の物品に取り付けられた無線タグが、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波からエネルギーを得て動作し、
エリアから所定距離以内を移動する携帯端末が、当該エリア内の前記無線タグからタグ識別情報を受信し、
前記携帯端末と通信可能な情報処理装置が、所定エリアを含む複数エリア内の各エリアを識別するエリア識別情報ごとに、物品を識別する物品情報と、物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と、を対応付けて記憶しており、
前記情報処理装置が、前記携帯端末から受信するタグ識別情報に基づき、予め登録された物品情報によって特定される物品が前記複数エリアのうち前記所定エリアにある場合に前記携帯端末に通知する、
物品管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理システムおよび物品管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)タグは近年構築されつつあるIoT(Internet of Things)技術で活用が進んでいる。活用が検討されている分野は、物流・流通、交通、金融、FA、アミューズメント、医療、食品等、幅が広い。
例えば、IoT技術を利用したシステムの一形態として、RFIDタグを利用した、物品としての商品の管理システムが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、商品陳列場所の複数の商品棚の各々にRFIDタグリーダライタを設け、各商品棚の各棚段に配置したアンテナをRFIDタグリーダライタに接続させ、RFIDタグリーダライタに、商品に付されたRFIDタグを非接触で読み取らせる在庫管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の商品管理システムは、例えば店舗での各商品の在庫の有無を判別できるが、来店者にとって興味のある商品が店舗にあるとは限らない。来店者にとって興味のある商品が店舗にあることが分かれば、来店者は、当該商品を購入するか否かについて判断することができ、来店者にとって有益である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、エリア内に特定の物品があることを認識し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、エリア内に存在する一以上の物品の管理を行う物品管理システムであって、前記エリア内の物品に取り付けられ、固有のタグ識別情報を記憶し、周囲の電波からエネルギーを得て動作する無線タグと、前記エリアから所定距離以内を移動し、前記無線タグからタグ識別情報を受信する携帯端末と、前記携帯端末と通信可能であり、前記エリア内の物品を識別する物品情報と、物品に取り付けられている無線タグのタグ識別情報と、を対応付けて記憶する情報処理装置とを含み、前記携帯端末は、前記無線タグからタグ識別情報を受信した場合に、受信したタグ識別情報に対応付けて記憶されている物品情報が、予め、ユーザを識別するユーザ識別情報と対応付けて登録された物品情報に含まれるか、前記情報処理装置に対して問合せを行い、前記情報処理装置は、前記問合せに応じて、前記受信したタグ識別情報に対応付けて記憶されている物品情報が、前記携帯端末から取得したユーザ識別情報に対応付けて登録された物品情報に含まれると判断した場合に、前記受信したタグ識別情報に対応付けて記憶されている物品情報によって特定される物品が前記エリア内にあることを前記携帯端末に通知する、物品管理システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、エリア内に特定の物品があることを認識し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の商品管理システムのシステム構成を概略的に示す図である。
【
図2】第1の実施形態の商品管理システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図3】IoTタグから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
【
図4】在庫データベースのデータ構成例を示す図である。
【
図5】商品登録データベースのデータ構成例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態の商品管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図7】第1の実施形態の商品確認処理のフローチャートである。
【
図8A】来店者端末に表示される画像の一例を示す図である。
【
図8B】来店者端末に表示される画像の一例を示す図である。
【
図9】第2の実施形態の商品確認処理のフローチャートである。
【
図10】第3の実施形態の商品管理システムのシステム構成を概略的に示す図である。
【
図12】第3の実施形態の商品管理システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図13】第3の実施形態の商品管理システムの動作を示すシーケンスチャートである。
【
図14】第3の実施形態の商品管理システムにおいて、商品のエリア内の位置を特定する別の方法について説明する図である。
【
図15】来店者端末に表示される画像の一例を示す図である。
【
図16】第4の実施形態の商品管理システムの動作を示すシーケンスチャートの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において「物品」とは、例えば製品、半製品(製造途中にある中間段階の製品)、商品等の有体物を意味する。以下の実施形態では、物品の一例として商品を挙げる。
本開示において「通信可能」とは、直接的に通信が可能である場合に限られず、間接的に通信が可能である場合も含まれる。例えば、「A装置とC装置が通信可能である」とは、A装置とC装置が直接的に通信を確立してデータの送信若しくは受信を行う場合に限られず、A装置とC装置がB装置を介してデータの送信若しくは受信を行う場合も含まれる。
本開示において「物品情報」とは、物品を他の物品と識別可能とする情報であれば如何なる情報でもよく、例えば、物品に固有のコード、シリアル番号、型式、種別等であってもよく、物品の画像情報であってもよい。
本開示において「物品情報に関連する関連情報」又は「物品に関連する関連物品」とは、目的とする物品情報若しくは物品と予め関連付けられているものに限られず、物品の取引者若しくは需要者が、目的とする物品情報若しくは物品と関連付けられることが想起可能なものであればよい。例えば、同一のデザインの商品、若しくは同一のデザインが付された、色違いの商品同士、又はサイズ違いの商品同士は、当然に関連付けられているといえる。
本開示におけるIoTタグの通信距離は一例に過ぎず、限定されない。IoTタグの通信距離は、IoTタグの用途に応じて適宜変更若しくは調整可能である。
【0010】
(1)第1の実施形態
以下、物品管理システムの一実施形態である商品管理システムについて図面を参照して説明する。また、本実施形態の商品管理システム1では、周囲環境の電波を基に発電する環境発電型タグであって、バッテリを備えていないタグであるIoTタグ(以下では適宜、単に「タグ」という。)を利用するものとする。
【0011】
(1-1)商品管理システムのシステム構成
先ず、
図1を参照して本実施形態の商品管理システム1のシステム構成について説明する。
図1は、本実施形態の商品管理システム1のシステム構成を概略的に示す図である。
図1において、本実施形態の商品管理システム1は、店舗内の各商品に取り付けられたIoTタグT(無線タグの一例)から受信する信号を基に、ネットワークに接続されたアプリケーションサーバ5によって在庫管理が行われるクラウド型のシステムである。なお、アプリケーションサーバ5は、複数の店舗の在庫管理を行うことが可能であるが、
図1では1つの店舗のみを示している。
【0012】
図1に示すように、商品管理システム1では、例えば店舗内には無線装置2が設けられ、来店者CSは来店者端末4(携帯端末の一例)を所持している。
来店者端末4は、店舗エリアから所定距離以内を移動することが想定される。ここで、「所定距離」とは、来店者端末4が店舗外に位置した場合であっても店舗内のタグと通信可能となる距離であり、上述したように、タグの用途に応じて適宜変更若しくは調整可能な距離である。店舗エリアとは、例えば店舗等の予め区画されたエリアでもよく、区画されたエリアから所定距離だけ離れた近傍エリアを含んでいてもよい。
来店者端末4は、限定しない例として、例えば、ラップトップ型のパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォンが挙げられる。来店者端末4は、無線通信ネットワーク若しくは店舗内LAN(Local Area Network)(図示せず)およびネットワークNWを介してアプリケーションサーバ5と通信可能である。
図1では、来店者が1名であり1つの来店者端末4のみが示されるが、店舗内に複数の来店者がいる場合には複数の来店者端末4が存在しうる。
【0013】
店舗内に設けられている無線装置2は、例えば各商品のIoTタグTに対して無線環境を提供することができる。無線装置2は、例えば、無線LAN(Local Area Network)装置、アクセスポイント等であるが、タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末であってもよい。
後に詳述するが、IoTタグTは、周囲環境の電波を基に発電する環境発電型の装置であり、バッテリを備えていない。無線装置2の数は問わないが、店舗内のすべてのIoTタグTが発電可能な無線環境を提供できると良い。
【0014】
なお、本実施形態の商品管理システム1において、無線装置2は必須の構成要素ではなく、無線装置2がなくとも店舗内において十分に環境発電可能である場合には、無線装置2は必要ない。例えば、無線装置2がない場合であっても来店者端末4によって放射される無線信号によってIoTタグTが環境発電可能であるならば、無線装置2は必要ない。また、IoTタグTは、来店者端末4および無線装置2以外の他の装置(例えば、店員の携帯端末等)から送信される電波をも環境発電のために利用することができる。言い換えれば、来店者端末4、あるいは来店者端末4以外の他の装置によって提供される電波が環境発電のために十分でない場合に、IoTタグTは、無線装置2から放射される電波を環境発電のために利用することができる。
【0015】
IoTタグTの通信距離は、例えば3~10メートルの範囲である。したがって、来店者端末4を所持する来店者CSが店舗に近付き(例えば、店舗のエリアから所定距離以内に位置し)、あるいは、店舗内に位置するときに、店舗内の商品に取り付けられているIoTタグTと来店者端末4とが通信可能となる。
【0016】
IoTタグTは、低電力消費の無線通信を行うように構成されており、通信プロトコルの例としては、Bluetooth Low Energy(登録商標)(以下、BLE)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等が挙げられる。以下では、BLEによる通信を行う場合を例として説明する。
IoTタグTは、BLEの規格に準拠する場合、周囲のBLE端末に対してアドバタイジングパケット(後述する)をブロードキャストする。
【0017】
来店者CSが所持する来店者端末4は、店舗の商品に関するアプリケーションプログラムがインストールされている。このアプリケーションプログラム(以下、単に「商品アプリケーション」という。)を実行することで、来店者CSは、例えば、店舗で扱う様々な商品の詳細情報を閲覧し、あるいは、来店前に気に入った、若しくは気になる商品を登録しておくことができる。
【0018】
また、来店者端末4は、BLE端末として機能する。つまり、来店者端末4は、IoTタグTによりブロードキャストされるアドバタイジングパケットを受信する。アドバタイジングパケットには、IoTタグTの固有の識別情報として、暗号化されたタグID(タグ識別情報の一例)が含まれている。来店者端末4は、IoTタグTから受信した情報を、無線通信ネットワーク(図示せず)若しくは店舗内LANおよびネットワークNWを介してアプリケーションサーバ5に送信する。
【0019】
アプリケーションサーバ5(情報処理装置の一例)は、例えば店舗に対してクラウド型の在庫管理サービスを提供するとともに、来店者CSに対して商品の情報についてのウェブサービスを提供するネットワークサーバである。
アプリケーションサーバ5は、店舗で保有するタグIDと商品コードとを対応付けた在庫データベースを記憶している。また、アプリケーションサーバ5は、商品アプリケーションを使用するユーザ(来店者CSを含む)が商品を登録するための商品登録データベースを記憶する。
後述するように、アプリケーションサーバ5は、来店者CSが予め商品アプリケーションを通して登録した商品が店舗に陳列されているか否かを判断して、店舗に陳列されていると判断した場合には来店者CSの来店者端末4に通知する。なお、以下の説明では、ユーザが商品登録データベースに登録した商品を適宜「登録商品」と表記する。
【0020】
(1-2)商品管理システムの各装置の構成
次に、
図2~
図5を参照して、本実施形態の商品管理システム1の各装置の構成を説明する。
図2は、本実施形態の商品管理システム1の各装置の内部構成を示すブロック図である。
図3は、IoTタグTから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
図4は、在庫データベースのデータ構成例を示す図である。
図5は、商品登録データベースのデータ構成例を示す図である。
【0021】
図2を参照すると、IoTタグTは、制御部11、アンテナ12、ハーベスティング部13、電圧制御部14、RFトランシーバ15、および、センサ16を含む。
IoTタグTの全体の形態は図示しないが、例えば、アンテナ12とセンサ16が形成される所定のパターンの導電性金属箔と、当該金属箔に接続されるICチップとを含む薄膜状の部材である。ICチップ内に、制御部11、ハーベスティング部13、および、電圧制御部14、RFトランシーバ15が実装される。
【0022】
制御部11はマイクロプロセッサとメモリ111を有し、IoTタグTの全体を制御する。メモリ111は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)であり、マイクロプロセッサによって実行されるプログラムのほか、IoTタグTに固有の識別情報であるタグID、センサ16が出力するセンサデータを記憶する。
【0023】
ハーベスティング部13は、周囲環境の電波(例えば周囲の無線通信による電波)に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ131に貯蔵する。本実施形態では、ハーベスティング部13は、例えばアンテナ12が受信した無線信号を直流電圧に変換し、エネルギーストレージ131に貯蔵する。エネルギーストレージ131は、例えばキャパシタである。キャパシタの場合には、半導体チップ上に構成されたもの(つまりオンダイ(on-die)型のキャパシタ)でもよい。
【0024】
ハーベスティング部13が環境発電に使用する電波は、広範囲の周波数帯域において複数の異なる周波数帯の電波である。例えば、いわゆる3G~5G等の移動体通信システムで採用されている周波数帯の無線通信による電波、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格で採用されている周波数帯の無線通信による電波、ZigBee(登録商標)やThread等の通信プロトコルに代表される2.4GHz帯の無線通信による電波、RFIDで採用されている周波数帯(例えば、900MHz帯、13.56MHz帯)の無線通信による電波等が挙げられる。
ここに例示したような電波は、一般に、ほとんどすべての店舗で適用可能である。そして、店舗内の商品に取り付けられているIoTタグTは、周囲環境の電波を基にしてハーベスティング部13による環境発電で得られる電力で動作する。そのため、IoTタグTにバッテリを搭載する必要がなく、システムコストを抑制することができる。また、バッテリを搭載する必要がないことから、バッテリの交換作業を行わずに済むため、タグが存在するにもかかわらずタグIDを取得できないという不具合が生じない。
【0025】
電圧制御部14は、制御部11およびRFトランシーバ15に動作電圧を供給するとともに、エネルギーストレージ131の電圧をモニタしており、モニタ結果に応じて電力モードを切り替える。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以下である場合には、電力モードを最小限の回路のみを動作させる第1モードとし、このとき制御部11およびRFトランシーバ15では、後述するパケットの生成や無線信号の送信等が行われない。エネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上まで充電された場合には、電力モードを通常の処理ルーチンを実行する第2モードとし、このとき制御部11およびRFトランシーバ15ではパケットの生成、無線信号の送信を含む各種の処理が行われる。
なお、制御部11は、例えば電力モードが第1モードの場合であってもエネルギーストレージ131の電圧が所定の閾値以上に充電された場合には、センサ16により検出されたセンサデータを、検出時刻のデータとともにメモリ111に格納してもよい。その場合、制御部11は、電力モードが第1モードから第2モードに切り替えられた時点で、メモリ111に格納していたセンサデータおよび検出時刻のデータを含むパケットを生成し、送信してもよい。それによって、エネルギーストレージ131の充電電圧が比較的低い期間におけるタグの動きの有無に関する情報を無線装置2に提供することができる。
【0026】
センサ16は、例えば、IoTタグT自体の動き(モーション)を検出する。検出されたデータ(センサデータ)は、後述するパケットに含めるためにメモリ111に一時的に格納される。センサデータは、例えばタグが動かされたか否かについて判断可能となるように構成されている。なお、センサデータは、IoTタグTの動きの程度を示す値であってもよく、IoTタグTが動いたか否かを示す2値であってもよい。
センサ16は、IoTタグTに係る重量や圧力を検出してもよい。センサ16は、ICチップに温度センサが内蔵されている場合には、温度を検出してもよい。
【0027】
制御部11は、電力モードが第2モードの場合に、BLEのプロトコルに従ってアドバタイジングパケットを生成する。
アドバタイジングパケットは、BLEにおいてブロードキャスト通信を実現するためにアドバタイジングチャネルを利用して送信されるパケットであり、
図3に示すパケット構成を有する。アドバタイジングパケットは、以下では適宜、単に「パケット」という。
【0028】
図3においてプリアンブル及びアドレスアクセスは、それぞれが所定の固定値である。CRCは巡回検査符号であり、パケットペイロード(つまり、アドバタイジングチャネルPDU(protocol data unit))を対象として所定の生成多項式を用いて算出される検査データである。
アドバタイジングチャネルPDU(以下、単に「PDU」という。)は、ヘッダとペイロードとからなり、当該ペイロードは、ADVアドレスとADVデータとからなる。ADVアドレスはアドバタイザー(つまり、報知する主体であるIoTタグT)のアドレスであるが、送信元を特定しないように送信の都度に設定されるランダムな値でもよい。ADVデータはアドバタイザーのデータ(ブロードキャストデータ)であり、本実施形態では、タグIDおよびセンサ16によって出力されるセンサデータを含む。
【0029】
制御部11は、PDUを暗号化することが好ましい。暗号化方法は限定しないが、例えば鍵長128ビットのAES(Advanced Encryption Standard)を利用することができる。
【0030】
RFトランシーバ15は、送信するパケット(ベースバンド信号)に対して所定のデジタル変調(例えばGFSK(Gaussian Frequency Shift Keying))を行った後に直交変調を行い、高周波信号(BLEの場合、2.4GHzの周波数帯の信号)をアンテナ12に送出する。
【0031】
アンテナ12は、送信アンテナと発電用アンテナを含む。
送信アンテナは、RFトランシーバ15によって送出される高周波の無線信号(パケット)を送信する。他方、発電用アンテナは、例えば周囲環境の電波や無線装置2から送信される無線信号を受信し、ハーベスティング部13と協働してレクテナとして機能する。
【0032】
図2に示すように、無線装置2は、制御部21、アンテナ22、および、RF発信機25を備える。
制御部21は、RF発信機25を制御するマイクロコントローラを含み、例えば、ベースバンド信号の生成、送信タイミングの決定等を行う。
RF発信機25は、ビーコン信号をアンテナ22から送信するために、例えば所定のパターンのベースバンド信号を直交変調してアンテナ22に送出する。
【0033】
前述したように、IoTタグTは、周囲環境の電波に基づいて環境発電を行うが、周囲環境の電波が少ない場合には、パケットの生成や無線信号の送信等の通常の動作が行われない(例えば、電力モードが第1モードの場合)。そこで、無線装置2の制御部21は、IoTタグTと通信できない状態(例えば、アドバタイジングパケットを受信できない状態)が所定時間以上継続する場合には、アンテナ22による無線送信を開始するか、又は、アンテナ22による送信電力を増加させるようにRF発信機25を制御することが好ましい。それによって、IoTタグTの周囲環境の電波が増加するために電力の貯蔵が可能となり、無線装置2との無線通信を開始、あるいは再開することができるようになる。
【0034】
図2に示すように、来店者端末4は、制御部41、ストレージ42、操作入力部43、表示部44、第1通信部45、および、第2通信部46を備える。
【0035】
制御部41は、マイクロプロセッサを主体として構成され、来店者端末4の全体を制御する。例えば、制御部41は、IoTタグTから受信したパケットのPDUを復号し、CRCからIoTタグT側と同一の生成多項式を用いて誤り検出を行った後、当該PDUからブロードキャストデータを抽出する。制御部41は、来店者端末4のユーザIDと、抽出したブロードキャストデータとを含む商品確認要求を、第2通信部46を介してアプリケーションサーバ5に送信する。
ユーザIDは、来店者端末4のユーザを識別するための固有の識別情報である。ユーザIDは、商品アプリケーションを利用するユーザの間で重複することがないように決定され、各ユーザに割り当てられる。ユーザIDは、例えば、商品アプリケーションにログインするときに要求される情報に含まれる。
【0036】
来店者端末4には、前述した商品アプリケーションおよびウェブブラウザを含む各種のプログラムがインストールされている。
商品アプリケーションは、例えばウェブアプリケーションであり、ウェブブラウザ上で動作する。商品アプリケーションは、第2通信部46を介してアプリケーションサーバ5との間でHTTP(Hypertext Transfer Protocol)通信(もしくはよりセキュアなHTTPS通信)を行い、商品に関するコンテンツ(例えばHTML文書等)を取得して表示部44に表示する。
商品アプリケーションは、ユーザによる所定の操作に応じてユーザが選択した商品の商品コードを登録することをアプリケーションサーバ5に要求する。当該要求に応じて、アプリケーションサーバ5の商品登録データベースに、ユーザごとに登録商品コードが記録される。
商品アプリケーションは、後述するように、来店者端末4を所持する来店者CSの登録商品、つまり、登録商品コードに対応する商品が陳列している場合、登録商品が陳列していることを示すメッセージを表示する。
【0037】
ストレージ42は、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置であり、制御部41によって実行される各種のプログラム(例えば、商品アプリケーション、ウェブブラウザ)を格納する。ストレージ42は、店舗内の各IoTタグTから得られたブロードキャストデータを一時的に保持してもよい。
【0038】
操作入力部43は、各種のプログラムを実行するために来店者から操作入力を受け付ける入力インタフェースであり、表示部44の表示パネルに設けられるタッチパネル入力部であってもよい。表示部44は、例えばLCD(Liquid Crystal Panel)等の表示パネルと、表示パネルの駆動回路とを含み、制御部41によるプログラムの実行結果を表示する。
第1通信部45は、例えば、第2通信部46よりも狭い通信範囲で対象物と無線通信を行うものであり、例えば各IoTタグTからBLEプロトコルに従って送信されるパケットを受信するように構成されている。
第2通信部46は、無線通信ネットワーク若しくは店舗内LANおよびネットワークNWを介してアプリケーションサーバ5と通信を行うための通信インタフェースである。
【0039】
図2に示すように、アプリケーションサーバ5は、制御部51、ストレージ52、および、通信部53を備える。
制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、アプリケーションサーバ5の全体を制御する。
ストレージ52は、例えばHDDの大規模記憶装置を備え、在庫データベース(在庫DB)および商品登録データベース(商品登録DB)を記憶する。
【0040】
図4の在庫データベースは、1つのレコードについて「店舗ID」、「タグID」、「商品コード」、「色」、「サイズ」、「在庫有無」、「商品位置」の各フィールドの値を有し、各店舗の商品の在庫の有無を管理するためのデータベースである。店舗IDは、アプリケーションサーバ5が管理する複数の店舗の各々を識別するための識別情報である。商品コード(物品情報の一例)は、JANコード等の商品を特定する情報である。「色」および「サイズ」の各フィールドには、商品コードに対応する商品の色およびサイズを示す値が格納される。「在庫有無」フィールドには、商品コードに対応する商品の在庫の有無を示す値が格納される。「商品位置」フィールドには、例えば、商品が配置されている棚の棚IDが格納される。なお、
図4に示した各フィールドは一例に過ぎず、商品に関する他のデータに関するフィールド(例えば、商品の種別、商品カテゴリー、通常品/限定品の区別等)を設けてもよい。
在庫データベースは、店舗に対する商品の入荷情報を基に作成、更新される。例えば店舗に新たな商品が入荷されると、在庫データベースに1つのレコードが作成される在庫データベースはまた、店舗から商品が無くなると(例えば、商品が購入され、あるいは他の店舗に移管されると)、在庫データベースから当該商品に対応するレコードが削除される。
図4に示したように、在庫データベースでは、店舗IDごとに、タグIDと、当該タグIDのタグが取り付けられた商品の内容とが対応付けられている。タグIDは、2以上のタグについて同一の情報となることがないタグ固有の識別情報であるため、タグIDが分かれば、対応する商品を有する店舗が一意に特定される。したがって、来店者端末4が在庫データベースに含まれるいずれかのタグIDを受信したことが分かれば、来店者端末4が来店中の、若しくは近傍にいる店舗を特定することができる。
【0041】
図5の商品登録データベースは、1つのレコードについて「ユーザ情報」、「登録商品コード」の各フィールドの値を有し、例えばユーザが気に入った商品や気になる商品等、ユーザが商品を登録しておくためのデータベースである。「ユーザ情報」フィールドの詳細は限定するものではないが、例えば「ユーザID」、「ユーザ名称」、「ユーザアドレス」等のサブフィールドを含む。
商品登録データベースに商品コードを登録するために、ユーザ(例えば来店者CS)は、商品アプリケーション上で、商品コードの登録を要求するための所定の処理を行う。
【0042】
例えば、制御部51のマイクロプロセッサは所定のプログラムを実行することで、以下の処理を行う。
(i) 図示しない店舗端末からの商品情報を基に、在庫データベースを更新する。
例えば、店舗に新たな商品が入荷した場合、店舗端末からの商品情報を基に、在庫データベースに1つのレコードを作成する。
店舗にある商品が購入された、あるいは他の店舗に移管した等によって、店舗から商品が無くなった場合には、店舗端末からの商品情報を基に、当該商品に対応するレコードを削除する。
【0043】
(ii) 来店者端末4から受信した商品確認要求に含まれるブロードキャストデータからタグIDを抽出し、抽出したタグIDの認証を行う。
なお、認証は、例えば、ネットワークNWに接続された認証サーバ(図示せず)に問合せを行い、認証サーバから認証結果を取得することで行ってもよい。この場合、認証サーバは、例えば、IoTタグTの製造者が管理するサーバであって、製造したすべてのIoTタグTのタグIDを記憶するデータベースを有し、当該データベースを参照して、アプリケーションサーバ5から問合せのあったタグIDの認証を行う。
【0044】
(iii) ユーザIDと認証が成功したタグIDとに基づいて、商品確認処理を実行する。商品確認処理は、例えば、ユーザIDに対応する登録商品が店舗にあるか否か確認する処理である。
商品確認処理は、商品登録データベースを参照して、ユーザIDに対応する登録商品コード(つまり、来店者端末4の登録商品)を特定することを含む。
商品確認処理は、在庫データベースにおいて、処理対象のタグIDに関連付けられた店舗IDを特定することを含む。在庫データベースにおいて同一のデータである2以上のタグIDは存在しないため、タグIDをキーとして、複数の店舗IDのうちいずれかの店舗IDが一意に特定される。さらに、在庫データベースを参照することで、特定された店舗IDに関連付けられ、かつ在庫有を示す商品コード(つまり、対応する店舗にある商品)が特定される。
来店者端末4の登録商品と、対応する店舗にある商品とを突き合わせることで、来店者の登録商品が店舗にあるか否かについて確認することができる。なお、登録商品に対応する関連商品(後述する)が店舗にあるか否かについて確認してもよい。
【0045】
通信部53は、来店者端末4との間で通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
例えば、制御部51は、通信部53を介して、来店者の登録商品が店舗エリア内にある場合には、登録商品が店舗エリア内にあることを来店者端末4に通知する。制御部51は、通信部53を介して、来店者の登録商品に対応する関連商品(後述する)が店舗エリア内にある場合には、関連商品が店舗エリア内にあることを来店者端末4に通知することが好ましい。
【0046】
制御部51は、タグIDの認証が成功した場合に限り、当該タグIDに基づく商品確認処理の実行し、商品確認要求の実行結果に基づいて通知内容を来店者端末4に対する送信することが好ましい。すなわち、制御部51は、タグIDの認証が成功し、かつ登録商品が店舗エリア内にある場合に来店者端末4に通知内容を送信することが好ましい。そうすることで、タグIDの認証によって当該タグIDが真正であるか否かについて確認できるため、誤った通知内容を来店者端末4に送信することがない。
【0047】
(1-3)商品管理システムの動作
次に、
図6および
図7を参照して、本実施形態の商品管理システム1の動作を説明する。
図6は、本実施形態の商品管理システム1の動作を示すシーケンスチャートである。
図7は、本実施形態の商品確認処理のフローチャートである。
図6のシーケンスチャートの処理は、来店者端末4が店舗内の各IoTタグ(タグT1,T2,…)からパケットを受信する度に繰り返し行われる。
【0048】
無線装置2は、例えばビーコン信号を放射することで(ステップS2)、店舗内の各商品に取り付けられているタグT1,T2,…が発電可能な無線環境を提供することができる。各タグは、周囲環境の電波に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ(例えばキャパシタ)に貯蔵して動作する。そして、タグT1,T2,…が、パケットを生成し(ステップS4)、生成したパケットをブロードキャストする(ステップS6)。
【0049】
例えば来店者CSの来店者端末4が店内に位置するか、あるいは店舗の外に位置したとしても店舗に近い位置にある場合には、来店者端末4と店内のタグとの間でBLE通信が可能となる。すなわち、来店者端末4は、タグから送信されるパケットを受信可能となる。来店者端末4は、受信したパケットに含まれるPDUを復号し、PDUからブロードキャストデータを抽出する。次いで来店者端末4は、ユーザIDと、抽出したブロードキャストデータとを含む商品確認要求をアプリケーションサーバ5に送信する(ステップS8)。
【0050】
ブロードキャストデータには、タグIDと、センサデータとが含まれている。
アプリケーションサーバ5は、受信した商品確認要求に含まれるブロードキャストデータからタグIDを抽出し、タグIDの認証を行う(ステップS10)。タグIDの認証は、例えば、外部の認証サーバに問合せを行うことで得られる認証結果に基づいて行うことができる。
【0051】
タグIDの認証が成功するとアプリケーションサーバ5は、来店者CS(ユーザ)の登録商品が店舗に陳列されているか確認する商品確認処理を実行する(ステップS12)。商品確認処理については後述するが、例えば、来店者端末4のユーザである来店者の登録商品が店内に陳列されているか否か等が確認される。
アプリケーションサーバ5は、ステップS12の商品確認処理の処理結果に基づき、来店者端末4に通知する通知内容を作成し(ステップS13)、作成した通知内容を来店者端末4に送信する(ステップS14)。
来店者端末4は、アプリケーションサーバ5からの通知内容を表示する(ステップS16)。
【0052】
以下、ステップS12の商品確認処理の詳細な内容について
図7を参照する。
なお、以下の説明において、関連商品とは、例えば、登録商品と色違い若しくはサイズ違いの別の商品、登録商品の後継となる別の商品、登録商品と組み合わせて使用することが予め定義された別の商品等である。関連商品に対応する商品コードを「関連商品コード」という。
図7において、アプリケーションサーバ5は、商品登録データベースを参照して、商品確認要求に含まれるユーザIDに基づき、来店者CSが登録している登録商品コードを特定する(ステップS20)。次に、アプリケーションサーバ5は、在庫データベースを参照して、処理対象のタグIDに基づき、来店者が来店している店舗の店舗IDを特定する(ステップS22)。
前述したように、
図4の在庫データベースには、店舗ごとに商品(タグID)の在庫を管理しているため、来店者端末4から取得したタグIDに基づき、来店者が来店している店舗の店舗IDを特定できる。次に、アプリケーションサーバ5は、在庫データベースを参照して、特定した店舗IDに基づき、現在、当該店舗IDの店舗に在庫がある商品の商品コードを抽出する(ステップS24)。
【0053】
アプリケーションサーバ5は、ステップS24で抽出した商品コードのうち、ステップS20で特定した登録商品コードが含まれると判断した場合には(ステップS26:YES)、来店者CSが登録している登録商品コードに対応する商品(登録商品)が店内に陳列されている(店内に有る)と判断する(ステップS28)。
アプリケーションサーバ5は、ステップS24で抽出した商品コードのうち、ステップS20で特定した登録商品コードが含まれないと判断し(ステップS26:NO)、かつ当該登録商品コードに対応する関連商品コードが含まれると判断した場合(ステップS30:YES)、関連商品が店内に陳列されていると判断する(ステップS32)。アプリケーションサーバ5は、ステップS24で抽出した商品コードのうち、関連商品コードが含まれないと判断した場合には(ステップS30:NO)、登録商品も関連商品も店内に陳列されていないと判断する(ステップS34)。
なお、登録商品コード及び/又は関連商品コードが複数存在する場合には、ステップS26,S32の判断は、個々の登録商品コード及び/又は関連商品コードごとに行われ、店内に陳列されている登録商品及び/又は関連商品の数量を特定してもよい。その場合、在庫データベースにおいて、同一の登録商品コード及び/又は関連商品コードを含むレコード数がカウントされる。
【0054】
図8Aおよび
図8Bは、アプリケーションサーバ5が作成する来店者端末4への通知内容の一例である。来店者端末4は、通知内容を含む画面として例えば画面G1~G5を表示部に表示する。画面G1~G5の各々は、通知内容を含む画面のそれぞれ別個の表示例である。
例えば、画面G1は、来店者の登録商品が店舗の所定の棚番号の棚に陳列されていることを示す通知内容を含む。ここで、棚番号は、在庫データベース(
図4参照)における商品位置に対応する。
画面G2は、来店者の登録商品が店舗になく、関連商品として来店者の登録商品のサイズ違いの商品が店内に陳列されていることを示す通知内容を含む。なお、画面G2には、来店者の登録商品の入荷予定日等の情報を含めてもよい。
画面G3は、来店者の登録商品が店舗になく、関連商品として来店者の登録商品と類似の商品(例えば、登録商品の後継モデル)が店内に陳列されていることを示す通知内容を含む。このメッセージには、例えば、関連商品の数量の情報が含まれる。なお、画面G3において、仮に、後継モデルの商品が未発売で店舗に陳列されていない場合には、当該商品の発売予定日等の情報を含めてもよい。
画面G4は、来店者の登録商品が店舗になく、関連商品として来店者の登録商品と組み合わせて使用することが予め定義された別の商品が店内に陳列されていることを示す通知内容を含む。
登録商品が店舗にない場合には、登録商品の在庫が有る他の店舗の情報を通知内容に含めてもよい。
画面G5は、登録商品に対応する関連商品として対象商品と組み合わせることが推奨される他の商品の画像と、各関連商品の商品位置が示された店舗マップM1とを含む通知内容を含む。この例では、2つの関連商品の各々について商品位置に対応する棚の位置が店舗マップM1に示される。
このように、来店者CSが店舗内で、あるいは店舗に近付いてタグIDを受信すると、来店者CSが予め登録した商品(登録商品)が店舗にある場合には、店舗にあることが来店者端末4に通知されることになる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の商品管理システム1では、例えば、来店者が店舗への来店の前にお気に入りとして登録した商品の商品コードや店舗で手にとって確認したい商品の商品コードを予め登録しておくと、店舗に陳列されている等の情報が来店者端末4に通知される。来店者は、例えば登録商品が店内に陳列されていることを認識できることから、当該商品を手にとって現物の商品を確認することができる。
本実施形態の商品管理システム1によれば、来店者が店舗を巡回しなくても、来店者端末4が店舗内のタグと通信を行うことで、来店者は自身の登録商品が店内に陳列されている場合に陳列されていることが通知される。例えば、来店者は、店舗の近くを通りかかっただけであっても、当該店舗に自身の登録商品が陳列されていることがわかる。そのため、来店者は、店内で自身の登録商品の在庫があるかどうか巡回して確認する手間が省ける利点がある。例えば、来店者は、大型の店舗を巡回して、目的とする自身の登録商品を店内で探索する労力を省くことができる。
また、来店者は、自身の登録商品が店内に陳列されていない場合であっても、登録商品に関連する情報や登録商品の在庫がある他の店舗等の情報を得ることができる。
【0056】
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態に係る商品管理システムについて、第1の実施形態との相違点に着目し、
図9を参照して説明する。
図9は、第2の実施形態の商品確認処理のフローチャートである。
本実施形態の商品管理システムは、アプリケーションサーバ5で実行される商品確認処理(
図6のステップS12)が第1の実施形態と異なる。
【0057】
本実施形態の商品管理システムでは、第1の実施形態とは異なり、来店者が店舗内を巡回し、来店者が自身の登録商品の近傍に到達した時点で、登録商品が近傍にあることを来店者端末4に対して通知するように構成されている。そのため、例えば、来店者が特定の商品を購入する意図がなく来店した場合であっても、適切なタイミングで来店者に登録商品が近傍にあることを来店者に注意喚起させることができる。そのため、店舗にとっては来店者による商品の購入を促進させることができ、来店者にとっては登録商品をその場で直ちに確認する機会が得られる。
商品の近傍とは、当該商品に取り付けられているタグの通信距離の範囲内に位置する程度に、商品に近接していることを意味し、タグの通信距離に応じて適宜、調整若しくは変更可能である。
【0058】
登録商品が来店者の近傍にあることを通知するためには、来店者の来店者端末4と、登録商品に対応するタグとの通信可能距離が長過ぎない方が好ましい。通信可能距離が長過ぎる場合には、通知を受けた来店者が自身の登録商品を探索するのに時間が掛かる。本実施形態ではタグの通信距離は、例えば、2~5メートルの範囲内であるが、これには限定されない。
本実施形態では、来店者の登録商品が店舗内に陳列されている場合には、来店者が店舗内を巡回し、来店者端末4が登録商品に取り付けられているタグと通信可能となる距離まで来店者が登録商品に近付くと、来店者端末4が当該タグから送信されるパケットを受信可能となる。このパケット受信がトリガとなり、アプリケーションサーバ5から来店者端末4に対して、登録商品が来店者端末4の近傍にあることが来店者端末4に通知される。すなわち、アプリケーションサーバ5は、来店者端末4から受信するタグIDに基づき、登録商品が来店者端末4の近傍にある場合に来店者端末4に通知する。
【0059】
図9において本実施形態の商品確認処理では、アプリケーションサーバ5は、商品登録データベースを参照して、ステップS8で受信した商品確認要求に含まれるユーザIDに対応する登録商品コードを特定する(ステップS40)。アプリケーションサーバ5は、在庫データベースを参照して、ステップS10(
図6)で認証を行ったタグIDに対応する商品コードを特定する(ステップS42)。
次いでアプリケーションサーバ5は、ステップS42で特定された商品コードが、ステップS40で特定された登録商品コードと一致するか否か判断する。両者が一致する場合には(ステップS44:YES)、登録商品が来店者端末4の近傍にあると判断される(ステップS46)。逆に両者が一致しない場合には(ステップS44:NO)、ステップS42で特定された商品コードが、来店者の登録商品に対応する関連商品の関連商品コードと一致するか否か判断される。
ステップS42で特定された商品コードが関連商品コードと一致する場合には(ステップS48:YES)、関連商品が来店者端末4の近傍にあると判断される(ステップS50)。逆に両者が一致しない場合には(ステップS48:NO)、登録商品も関連商品も来店者端末4の近傍にないと判断される(ステップS52)。ステップS46,S50,S52の判断結果を含む通知内容が来店者端末4に送信される。
なお、登録商品コードが複数存在する場合には、ステップS44,S48の判断は、個々の登録商品コードごと、又は、個々の登録商品コードに対応する関連商品コードごとに行われる。
【0060】
(3)第3の実施形態
次に、第3の実施形態に係る商品管理システム1Aについて、第1の実施形態との相違点に着目し、
図10~
図14を参照して説明する。
図10は、本実施形態の商品管理システム1Aのシステム構成を概略的に示す図である。
図11は、例示的な店舗フロアの一例に係る平面図である。
図12は、本実施形態の商品管理システム1Aの各装置の内部構成を示すブロック図である。
図13は、本実施形態の商品管理システム1Aの動作を示すシーケンスチャートである。
図14は、本実施形態の商品管理システム1Aにおいて、商品のエリア内の位置を特定する別の方法について説明する図である。
【0061】
本実施形態の商品管理システム1Aは、来店者の登録商品が店舗に陳列されている場合、登録商品が陳列されている位置を特定する情報(位置情報)をも来店者端末4に通知することができる。本実施形態の商品管理システム1Aは、店舗内に複数の無線装置2が設けられ、アプリケーションサーバ5は、各無線装置2から受信する装置IDおよびタグIDに基づいて、登録商品の位置情報を特定し、特定した位置情報を来店者端末4に通知する。登録商品の位置の通知態様は限定しないが、例えば、店舗マップ上で登録商品の位置がわかるように来店者端末4上に表示することが好ましい。登録商品の位置情報を来店者端末4に通知することによって、来店者は店舗内で登録商品を容易に見つけることができるため、商品の購入が短時間で済み来店者にとって便利であるとともに、店舗にとっても商品の販売を促進することができる。
【0062】
上述したように、本実施形態の商品管理システム1Aでは、店舗内に複数の無線装置2が配置される。
図10に示すように、各無線装置2は、ネットワークNWを介してアプリケーションサーバ5と通信可能である。
例えば
図11に示す店舗の平面図では、店舗のエリアを区画する6個の領域R1~R6が設けられる場合、各領域に対応して6個の無線装置2-1~2-6が配置される。無線装置2-1~2-6にはそれぞれ、固有の装置ID(装置識別情報の一例)が割り当てられる。
図11に示す例では、無線装置2-1~2-6にそれぞれ、装置ID:G1~G6が割り当てられている。
【0063】
無線装置2-1~2-6にはそれぞれ、概ね、対応する領域をカバーするように、タグTとの間の無線通信が可能な範囲(通信可能範囲)CA1~CA6が設定されている。例えば、店舗において領域R4に配置されている商品に取り付けられているタグTは、無線装置2-4との間で無線通信が可能となるように設定される。なお、
図11は一例に過ぎず、店舗に配置される無線装置2の数、店舗のエリアを区画する領域の数、あるいは、無線装置2が配置される位置は、例えば、IoTタグTの通信可能範囲や店舗内の通信環境に応じて適宜最適化可能である。
店舗が広く店舗内に多数のタグTが分散して配置される場合には、店舗内に複数の無線装置2を分散して配置することで、店舗内のすべてのタグTとの通信をカバーすることができる。
【0064】
図12に示すように、無線装置2-1~2-6の構成は、
図2に示した無線装置2と同じであるが、ネットワークNWを介してアプリケーションサーバ5と通信可能に構成される。以下、無線装置2-1~2-6に共通する事項について言及するときには、適宜「無線装置2」と表記する。
【0065】
本実施形態の商品管理システム1Aでは、無線装置2がタグTからパケットを受信すると、当該パケットから取得されるブロードキャストデータと、自身の装置IDとを対応付けてアプリケーションサーバ5に送信する。アプリケーションサーバ5は、無線装置2から受信する装置IDを基に、ブロードキャストデータに含まれるタグIDに対応する商品が、店舗のエリア内のいずれの領域に配置されているかを認識することができる。
店舗のエリアを複数の領域に分割する際には、様々な基準に基づいて行うことができる。例えば、複数の領域R1~R6の各々を、商品を配置する異なる棚に対応付けて設定してもよい。この場合、アプリケーションサーバ5は、商品が店舗内のいずれの棚に配置されているか認識することができる。別の例では、複数の領域R1~R6のうち一部の領域を来店者が移動可能な領域(店内領域)に割り当て、一部の領域をバックヤードの領域(バックヤード領域)に割り当ててもよい。この場合、アプリケーションサーバ5は、商品が店内領域にあるか、又はバックヤード領域にあるか認識することができる。
【0066】
図13のシーケンスチャートは、第1の実施形態のシーケンスチャート(
図6)と比較して、主としてA部が追加された点で異なる。
図13において、A部の処理は、店舗内の各タグと無線装置2の通信に基づいて在庫データベースを逐次更新する処理である。すなわち、無線装置2は、例えばビーコン信号を放射することで(ステップS2)、このビーコン信号により店舗内の各商品に取り付けられているタグT1,T2,…が発電可能な無線環境を提供することができる。各タグは、周囲環境の電波に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ(例えばキャパシタ)に貯蔵して動作する。エネルギーストレージの電圧が所定の閾値以上まで充電された場合、タグIDとセンサデータをブロードキャストデータとして含むパケットを生成して送信する(ステップS4,S5)。
無線装置2は、各タグから送信されるパケットを認識して受信すると、当該パケットに含まれるPDUを復号するとともに、PDUに含まれるブロードキャストデータを抽出する。無線装置2は、自身の装置IDと、ブロードキャストデータとをアプリケーションサーバ5に送信する(ステップS9)。
【0067】
アプリケーションサーバ5は、受信したブロードキャストデータに含まれるタグIDの認証を行う(ステップS10)。タグIDの認証は、例えば、外部の認証サーバに問合せを行うことで得られる認証結果に基づいてなされる。タグIDの認証が成功すると、アプリケーションサーバ5は、在庫データベースを更新する(ステップS11)。
在庫データベースの更新では、処理対象のタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「有」のまま(商品入荷時の値)とし、一定期間受信しないタグID対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「無」とする。すなわち、アプリケーションサーバ5は、無線装置2が受信したパケットに含まれるタグIDに基づいて、店舗のエリア内に存在する商品を特定する。在庫データベースにおいて、「在庫有無」フィールドの値が「有」であるレコードの商品コードに対応する商品が店舗に残っていることがわかる。
さらに、アプリケーションサーバ5は、ステップS9で受信した装置IDに対応する店舗内の領域(例えば、R1~R6のいずれか;
図11参照)が、処理対象のタグIDに対応する商品コードの商品の商品位置となるように、在庫データベースを更新する。
【0068】
なお、
図13のA部の処理は、他の実施形態の商品管理システムにおいても無線装置2を利用する場合には実行することができる。このA部の処理を実行することで、店舗の各商品の在庫の有無、および、在庫有りの場合の商品位置を逐次、更新することができる。
【0069】
図13において、B部の処理は、来店者端末4が店舗内のタグから送信されるパケットを受信したときの処理である。このB部の処理は、
図6の処理と基本的に同じであるが、ステップS12A~S16の処理が
図6の場合と異なる。
本実施形態では、ステップS12Aにおいてアプリケーションサーバ5は、
図6のステップS12と同様に来店者の登録商品が店舗に陳列されているか確認することに加えて、登録商品が店舗に陳列されている場合には、在庫データベースを参照して登録商品の商品位置を特定する。また、アプリケーションサーバ5は、登録商品が店舗に陳列されていない場合には、当該登録商品に対応する関連商品が店舗に陳列されているか確認し、店舗に陳列されている場合には在庫データベースを参照して関連商品の商品位置を特定する。アプリケーションサーバ5は、ステップS12Aの商品確認処理の確認結果(来店者の登録商品、又は、当該登録商品の関連商品の商品位置の情報を含む)に基づいて通知内容を作成し(ステップS13)、作成した通知内容を来店者端末4に送信する(ステップS14)。
ステップS14で受信した通知内容に基づき、来店者端末4は、
図8Aおよび
図8Bに例示したように、様々な通知内容を表示する(ステップS16)。本実施形態では、来店者の登録商品の商品位置、又は、当該登録商品の関連商品の商品位置の情報がステップS14の確認結果に含まれるため、来店者端末4は、店舗における商品の位置がわかるように、例えば
図8Bに例示したように店舗のフロアのマップを表示することが好ましい。
【0070】
次に、商品のエリア内の位置を特定する別の方法について、
図14を参照して説明する。
図14では、
図11と同様に、6個の無線装置2-1~2-6が店舗のエリア内に配置されている場合を例示する。
この方法では、各無線装置2は、タグからパケットを受信すると、自身の装置IDと、当該タグからパケットを受信したときの受信信号強度(RSSI(Received Signal Strength Indicator)値)と、当該パケットから得られたブロードキャストデータとをアプリケーションサーバ5に送信する。例えば、
図14において、タグTからパケットを受信したときのRSSI値は、無線装置2-1,2-2,2-4,2-5においてそれぞれ、S
R1,S
R2,S
R4,S
R5である。なお、この例では、無線装置2-3,2-6でのRSSI値は微小であると仮定して無視している。
アプリケーションサーバ5は、各無線装置2のRSSI値を取得すると、RSSI値が最大である無線装置2を特定し、特定した無線装置2の装置IDに対応する店舗内の領域(
図14では、例えば領域R2)を特定する。
【0071】
複数の無線装置2におけるRSSI値を利用して商品位置をさらに精度良く特定することもできる。具体的には、距離に応じた電波の減衰特性を利用し、各端末でのRSSI値に基づいてタグTと各無線装置2との距離を推定し、三角測量法によりタグTを測位する。
例えば
図14において、アプリケーションサーバ5は、各無線装置2のRSSI値を取得した後、大きい順に3個のRSSI値(例えば、S
R1,S
R2,S
R5)と各RSSI値に対応する無線装置2の既知の位置情報とに基づいて、三角測量法によりタグTを測位することができる。また、店舗内の電波の伝播環境は一般に理想的な自由空間ではないため、4個以上の任意の数の無線装置2を単一のタグTの測位に利用することで、さらにタグTの測位精度を高めることもできる。
【0072】
アプリケーションサーバ5が、登録商品を測位するとともに来店者端末4も測位することによって、来店者端末4の現在位置から登録商品の陳列位置までの最短経路を取得し、その最短経路の情報を来店者端末4に通知するようにしてもよい。その場合、来店者端末4の商品アプリケーションは、アプリケーションサーバ5から取得した最短経路の情報を店舗マップ上に表示させてもよい。
すなわち、複数の無線装置2における来店者端末4からの受信信号のRSSI値を利用して、タグTと同様に、来店者端末4も測位することができる。アプリケーションサーバ5は、来店者端末4の位置情報と、登録商品の位置情報と、既知の店舗マップとに基づいて、来店者端末4の位置から登録商品の陳列位置までの最短経路を所定の経路探索プログラムを実行して取得する。アプリケーションサーバ5は、経路探索プログラムの実行結果として最短経路の情報を、
図13のステップS13で作成する通知内容に含ませるようにする。
最短経路の情報を含む通知内容の表示例を
図15に示す。
図15の画面G6は、店舗マップM1において来店者端末4の位置(「現在位置」)から来店者の登録商品の陳列位置(棚SA2)までの最短経路RTの情報を含む通知内容を例示している
【0073】
(4)第4の実施形態
次に、第4の実施形態に係る商品管理システムについて、第3の実施形態との相違点に着目し、
図16を参照して説明する。
図16は、本実施形態の商品管理システムの動作を示すシーケンスチャートの一部である。
第3の実施形態の商品管理システム1Aでは、
図13のA部の処理によって店舗内の商品在庫を示す在庫データベースが逐次更新されていく。この商品在庫の更新では、ステップS10で認証が成功したタグIDに対応する商品コードの商品を在庫有りとする場合について説明した。本実施形態の商品管理システムでは、第3の実施形態と異なり、例えば来店者や店員等によって商品がピックアップされている等、商品が動かされている場合には、当該商品を在庫有りと判断しない。つまり、本実施形態では、店舗内で動かされていない商品のみを在庫有りとして判断される。商品が動かされている場合、例えば、来店者が当該商品を試着し、若しくは購入する可能性や、店員が商品の入れ替え作業等を行っている可能性がある。そのため、例えば店員が来店者に対して確実に購入可能な商品の在庫を案内するために、動かされていない商品を把握できると好都合である。
【0074】
本実施形態の商品管理システムの動作は、
図13のシーケンスチャートのA部と比較して、
図16に示すように、ステップS10と、ステップS11に代わるステップS11Aとの間にC部が含まれる点が異なる。このC部に注目して、以下説明する。
タグIDの認証が成功するとアプリケーションサーバ5は、受信したブロードキャストデータに含まれるセンサデータを参照し、タグが動かされたか否かに基づいて在庫フラグの値を決定する。上述したように、商品に取り付けられているタグは、タグ自体の動き(モーション)、つまり商品の動きを検出するため、来店者や店員等により商品が動かされている場合には、センサデータを参照することで、タグが動かされているか否か判断できる。
在庫フラグの値が「1」であることは、対象となるタグに対応する商品が棚に配置され、動かされていない状態であることを意味する。具体的には、アプリケーションサーバ5は,タグが動かされておらず、タグが動かされてから所定時間経過したという条件を満たした場合(ステップS60:NO、かつステップS64:YES)に限り、在庫フラグの値を「1」とする(ステップS66)。アプリケーションサーバ5は、当該条件を満たさない場合には、在庫フラグの値を「0」とする(ステップS62)。
なお、タグが動かされてから所定時間経過したことを条件に含めているのは、所定時間が動かされていないことが確認できれば、いったん動かされた商品も棚に戻されて動かなくなったと判断できるためである。しかし、その限りではなく、ステップS60のみによって在庫フラグの値を決定してもよい。
【0075】
アプリケーションサーバ5は、タグIDと在庫フラグに基づいて在庫データベースを更新する(ステップS11A)。本実施形態の在庫データベースの更新では、在庫フラグの値が「1」である場合、処理対象のタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「有」とする。逆に、在庫フラグの値が「0」である場合、処理対象のタグIDに対応するレコードの「在庫有無」フィールドの値を「無」とする。
【0076】
以上の処理を実行することで、商品確認処理(
図13のステップS12A)では、来店者の登録商品、又は、当該登録商品に対応する関連商品が近傍にあるか否かの判断に基づく通知(
図13のステップS14)が、来店者にとってより実効的なものとなる。つまり、来店者にとって、例えば他者が現在動かしている登録商品は自身が手に取ることができないため、そのような登録商品が来店者に通知されないような仕組みとすることができる。
【0077】
以上説明したように、各実施形態の商品管理システム1はIoTタグTを利用するが、この利点は以下のとおりである。
一般に、RFIDタグとして、内部に電池を持つアクティブタグと、内部に電池を持たないパッシブタグとが知られている。アクティブタグは通信可能範囲が比較的広いものの、高価であり、また、電池交換が必要であることから、店舗で扱う多数の商品の各々に取り付けるのは現実的でない。
従来の商品管理システムでは、電池を持たないパッシブタグを商品に取り付けることが想定されており、その通信可能範囲は、UHF帯(例えば900MHz帯)の場合で3~8m程度と短い。そのため、特許文献1に記載されたシステムのように、店舗内のすべての商品を読み取るためには短い間隔で多数のアンテナを店舗内に配置し、多数のアンテナを収容する多数のリーダライタを店舗内に配置することが行われる。それに対して、開示のIoTタグTでは、パッシブタグとは異なり、周囲環境に存在する電波によって給電されて動作するため、常に近くに給電のためにリーダライタを固定配置させる必要がない。
RFIDタグとしてパッシブタグを利用した従来の商品管理システムでは、商品陳列場所の複数の商品棚の各々にリーダライタが設けられ、各リーダライタの位置は既知であることから、各リーダライタが受信するRFIDタグの信号を基に、各タグの位置、つまり各商品の位置を推定できる可能性はある。しかし、仮にそのような位置推定が可能であったとしても、前述したように、パッシブタグの通信可能範囲の短さに起因して多数のリーダライタを店舗内に配置しなければならず、システム全体の設置コストが嵩むという不利益がある。
さらに、RFIDとは異なる近距離無線通信方式として、FeliCa(登録商標)等のNFC(Near field communication)が知られているが、通信距離が50cm以下と短く、また高価でもあり、在庫管理に不向きである。
上述した観点に鑑み、各実施形態の商品管理システムでは、周囲環境の電波をもとに発電する環境発電型のタグであって、バッテリを備えていないタグであるIoTタグを利用する。これにより、例えば店舗内の無線装置から放射される無指向性の電波によって発電して動作するため、店舗内に多数のリーダライタを配置する必要がないという利点がある。
【0078】
以上、物品管理システムおよび物品管理方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
例えば、上述した実施形態において、IoTタグは、無線装置2、店員端末、および、来店者端末4のうち少なくともいずれかから放射される電波を基に発電することが可能である。
【0079】
例えば、上述した実施形態において、来店者端末4や無線装置2は、アクセス権限のあるIoTタグTからのパケットのみを受信できるようにしてもよい。店舗内には、本システムとは無関係の携帯端末や無線タグが、BLEのプロトコル等、無線装置2とIoTタグTとの間で行われている無線通信プロトコルと同じプロトコルでデータを送信し、当該データを来店者端末4や無線装置2が受信する可能性がある。そこで、来店者端末4や無線装置2が受信すべきパケットと、受信する必要がないデータとを区別するために、IoTタグTから送信されるパケットには、アクセス権限を示すデータ(アクセス権限データ)を含めるようにすることが好ましい。この場合、上述した実施形態において来店者端末4や無線装置2は、パケットを受信する度に、受信したパケットに含まれるアクセス権限データを確認し、自身にアクセス権限がないパケットを破棄する。
【0080】
例えば、上述した実施形態では、アプリケーションサーバ5は、ユーザごとにユーザの登録商品コードを含む商品登録データベースを記憶しておき、来店者CSの来店者端末4から、ユーザIDとタグIDとを取得して、タグIDに対応する商品コードと登録商品コードが一致するか確認する。しかし、そのような処理方法に限られない。アプリケーションサーバ5ではなく来店者端末4が、登録商品コードを記憶してもよい。その場合には、アプリケーションサーバ5は、在庫データベースを参照することで来店者端末4から取得するタグIDに対応する商品コードを特定して来店者端末4に返し、来店者端末4が、登録商品コードと、アプリケーションサーバ5から受信する商品コードとが一致するか確認して、その確認結果を表示させるようにする。
【0081】
上述した各実施形態では、アプリケーションサーバ5によって商品確認処理の実行結果に基づいて送信される通知内容が、来店者端末4上表示される場合について説明したが、その限りではない。来店者端末4に対する通知方法は表示に行われる場合に限られず、来店者端末4による音声出力、若しくは来店者端末4の振動出力によって行われてもよい。表示以外の出力態様によっても来店者は、例えば登録商品が近傍にあることを知覚的に認識し得る。
【符号の説明】
【0082】
1…商品管理システム
T…IoTタグ
11…制御部
111…メモリ
12…アンテナ
13…ハーベスティング部
131…エネルギーストレージ
14…電圧制御部
15…RFトランシーバ
16…センサ
2…無線装置
21…制御部
22…アンテナ
25…RF発信機
4…来店者端末
41…制御部
42…ストレージ
43…操作入力部
44…表示部
45…第1通信部
46…第2通信部
5…アプリケーションサーバ
51…制御部
52…ストレージ
53…通信部
NW…ネットワーク