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特許7426242光プローブ、プローブカード、測定システムおよび測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】光プローブ、プローブカード、測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240125BHJP
   G01R 1/07 20060101ALI20240125BHJP
   H01S 5/02 20060101ALI20240125BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20240125BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01L21/66 C
H01L21/66 B
G01R1/07
H01S5/02
G01R31/26 F
G02B6/02 421
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020003701
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021110677
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】奥田 通孝
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】福士 樹希也
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-283684(JP,A)
【文献】特開昭63-224385(JP,A)
【文献】特開2007-240648(JP,A)
【文献】特開2003-161860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01S 5/02
G01M 1/00
G01R 1/07
G01R 31/26 -31/265
G01R 31/302-31/304
G01R 31/308-31/311
G02B 6/02 - 6/08
G02B 6/42 - 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部および前記コア部の外周に配置されたクラッド部により構成された、光半導体素子からの光信号が入射する入射面が曲率半径Rの曲面であり、
前記光信号の放射角γ、前記クラッド部に透過せずに前記コア部を伝搬する前記光信号の前記入射面における有効入射半径Se、前記光信号の前記入射面の入射点における前記コア部の屈折率n(r)、および前記入射点における屈折角βを用いて、前記曲率半径Rおよび前記入射点における中心半角ωが、
R=Se/sin(ω)
ω=±sin-1({K22/(K12+K22)}1/2
ただし、
K1=n(r)×cos(β)-cos(γ/2)
K2=n(r)×sin(β)-sin(γ/2)
の関係を満たすことを特徴とする光プローブ。
【請求項2】
前記有効入射半径Seと前記光プローブのコア半径Crが等しくなり、前記光半導体素子と前記入射面との間が取り得る最大の作動距離である場合の前記光信号の放射半角αを用いて、前記曲率半径Rが、
R≧Cr/sin(ω)
ただし、
K1=n(r)×cos(β)-cos(α)
K2=n(r)×sin(β)-sin(α)
α=sin-1{n(r)×sin(β+ω)}-ω
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光プローブ。
【請求項3】
最大作動距離WDmがCr/tan(α)であり、
作動距離WDが、WD≦WDmの関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の光プローブ。
【請求項4】
前記入射面に接続する第1領域と、前記第1領域よりも前記コア部の径が小さい第2領域とを連結した構成であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光プローブ。
【請求項5】
前記入射面から中心軸に沿って一定の長さに渡って、前記コア部の屈折率を増大する添加物が拡散されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光プローブ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光プローブと、
前記光プローブを保持する光プローブヘッドと
を備えることを特徴とするプローブカード。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光プローブと、
前記光プローブを保持する光プローブヘッドと、
前記光プローブヘッドの位置を制御する光プローブ駆動装置と、
前記光半導体素子に電気信号を送信する電気プローブを保持する電気プローブヘッドと、
前記電気プローブヘッドの位置を制御する電気プローブ駆動装置と
を備え、1の前記光半導体素子について前記光プローブと前記電気プローブを含む1のプローブユニットを構成することを特徴とする測定システム。
【請求項8】
前記光プローブをアレイ状に配置した光プローブアレイが構成され、
前記光プローブヘッドが前記光プローブアレイを保持する
ことを特徴とする請求項7に記載の測定システム。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光プローブを用いる測定方法であって、
前記光半導体素子と前記入射面との間の作動距離が一定の状態で前記光プローブに対して相対的に前記光半導体素子を移動させ、移動距離に対する前記光信号の入射強度の関係を示す入射強度パターンを取得し、
前記入射強度パターンを用いて前記光信号の放射角を算出する
ことを特徴とする測定方法。
【請求項10】
前記入射強度がピーク値の1/e2となる移動距離Deと作動距離WDを用いて、前記入射強度がピーク値の1/eとなる1/e放射角γeを、
γe=2×tan-1(De/(4×WD))
の式を用いて算出することを特徴とする請求項9に記載の測定方法。
【請求項11】
前記入射強度がピーク値の1/2となる移動距離Dhと作動距離WDを用いて、前記入射強度がピーク値の1/2となる1/2放射角γhを、
γh=2×tan-1(Dh/(4×WD))
の式を用いて算出することを特徴とする請求項9又は10に記載の測定方法。
【請求項12】
前記光プローブの前記コア部に前記光信号の少なくとも一部が入射する入射移動範囲Dw、前記入射強度パターンの平坦部である入射安定範囲Dpを用いて、前記有効入射半径Seおよび前記光信号の入射半径Srが、
Se=1/4×(Dw+Dp)
Sr=1/4×(Dw-Dp)
の関係を満たし、
前記入射強度がピーク値の1/e2となる移動距離Deおよび前記入射強度がピーク値の1/2となる移動距離Dhを用いて、前記入射強度がピーク値の1/eとなる1/e放射角γeおよび前記入射強度がピーク値の1/2となる1/2放射角γhを、
γe=2×De/Dh×tan―1(Sr/WD)
γh=2×tan―1(Sr/WD)
の関係式を用いて算出することを特徴とする請求項9に記載の測定方法。
【請求項13】
基準とする前記光半導体素子について前記光プローブを用いて前記放射角γを計測器により計測し、
前記計測器による計測値からみなし作動距離cWDを算出し、
前記みなし作動距離と前記移動距離を用いて、前記光信号の前記放射角を算出する
ことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項14】
前記光信号の光軸の延伸方向に垂直なXY平面において、X方向とY方向についてそれぞれ前記光半導体素子を移動させ、
前記X方向について取得した前記入射強度パターンを用いて前記X方向の前記放射角を算出し、
前記Y方向について取得した前記入射強度パターンを用いて前記Y方向の前記放射角を算出する
ことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子の特性測定に使用される光プローブ、測定システムおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンフォトニクス技術を用いて、電気信号と光信号を入出力信号とする光半導体素子がウェハに形成される。ウェハに形成された状態で光半導体素子の特性を測定するために、電気信号を伝搬させる電気プローブと光信号を伝搬させる光プローブとを有する測定システムを用いて、光半導体素子とテスタなどの測定装置を接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-31136号公報
【文献】特開昭60-64443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光プローブを用いた測定方法において、光半導体素子からの光信号が入射する光プローブの入射面と光半導体素子との位置偏差や、光プローブの中心軸と光半導体素子からの光信号の光軸との角度のずれが生じることがある。この位置偏差や角度のずれに起因して、光プローブに入射する光信号のパワーが変動し、測定された光信号の出力の安定性が損なわれる。このような変動要因等により、光プローブを用いた測定において測定精度が低下する問題があった。
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は、ウェハ状態において光半導体素子の短時間且つ高精度の測定が可能な光プローブ、プローブカード、測定システムおよび測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、光信号が入射する入射面が曲率半径の曲面である光プローブが提供される。光信号の放射角γ、クラッド部に透過せずにコア部を伝搬する光信号の入射面における有効入射半径Se、光信号の入射面の入射点におけるコア部の屈折率n(r)、および入射点における屈折角βを用いて、入射面の曲率半径Rおよび入射点における中心半角はωが、R=Se/sin(ω)、ω=±sin-1({K22/(K12+K22)}1/2)の関係を満たす。ただし、K1=n(r)×cos(β)-cos(γ/2)、K2=n(r)×sin(β)-sin(γ/2)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウェハ状態において光半導体素子の短時間且つ高精度で安定した測定が可能な光プローブ、プローブカード、測定システムおよび測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る光プローブの構成を示す模式図である。
図2】最大作動距離における光プローブの構成を示す模式図である。
図3】光プローブの中心軸と光信号の光軸の偏差の例を示す模式的な平面図である。
図4】チルト角の例を示す模式図である。
図5】入射端が平面な平面光プローブの構成を示す模式図である。
図6】平面光プローブを用いて測定した入射強度パターンの例を示すグラフである。
図7】光プローブの入射面の曲率半径と入射面における開口数の関係を示すグラフである。
図8】入射面の曲率半径と入射角比率の関係を示すグラフである。
図9】光信号の放射半角とクラッド入射角の関係を示すグラフである。
図10】入射強度パターンの例を示すグラフである。
図11】光プローブの中心軸に対して光信号の光軸の位置を変化させた場合の入射強度パターンのイメージ図である。
図12】作動距離を変化させたときの入射強度パターンの変化を示すグラフである。
図13】入射面の曲率半径と有効入射半径との関係を示すグラフである。
図14】入射面の曲率半径と入射安定距離の関係を示すグラフである。
図15】入射面の曲率半径と最大作動距離の関係を示すグラフである。
図16】光プローブに入射した光信号の損失特性を示すグラフである。
図17】第1の実施形態に係る光プローブを用いた測定システムの構成例を示す模式図である。
図18】第1の実施形態に係る光プローブを用いた測定方法の例を示すフローチャートである。
図19】第2の実施形態に係る光プローブの構成を示す模式図である。
図20】第3の実施形態に係る光プローブの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る光プローブ10は、図1に示すように、光半導体素子20から出力される光信号Lを受光する。光プローブ10は、コア部111およびコア部111の外周に配置されたクラッド部112により構成される屈折率分布型の光導波路を有する。コア部111の屈折率は、クラッド部112の屈折率よりも大きい。図1は、光信号Lが入射する入射面100を含む光プローブ10の一方の端部を示す。入射面100は、一定の曲率半径Rの凸球面である。
【0011】
図1において、コア半径Crはコア部111の半径である。また、プローブ半径Drはクラッド部112を含めた光プローブ10の半径である。光プローブ10には、光ファイバや、光ファイバとレンズを組み合わせた構成などを採用可能である。例えば、グレーデッドインデックス型(GI型)光ファイバを利用して光プローブ10を製造できる。
【0012】
図1では、光プローブ10のコア部111の中心軸C10および光信号Lの光軸C20の延伸方向をZ方向としている。また、Z方向に垂直な平面をXY平面として、図1の紙面の左右方向をX方向、紙面に垂直な方向をY方向としている。
【0013】
光半導体素子20は、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などである。光半導体素子20と光プローブ10とは光学的に接続され、光半導体素子20から出力された光信号Lが光プローブ10に入射する。
【0014】
光プローブ10と光半導体素子20は、Z方向に沿って作動距離WDだけ離間して配置されている。作動距離WDは、光半導体素子20から出力された光信号Lを光プローブ10が受光できる範囲に設定される。すなわち、光信号Lの入射面100での入射範囲がコア部111の外縁より内側となるように作動距離WDが設定される。ここで、光信号Lの入射範囲は、光信号Lがピーク値の1/e2以上の強度で進行する方向の範囲とする。
【0015】
図1に示すように、放射角γの光信号Lが、光半導体素子20から出力される。光信号Lは、入射面100での光信号Lの入射範囲の端部である入射点Qにおいて、曲率半径方向と屈折角βをなしてコア部111を進行する。入射点Qにおける入射面100の中心半角ωとする。
【0016】
図1において、放射角γの光信号Lの入射面100での入射範囲の直径を入射直径Sd、入射範囲の半径を入射半径Srとして示した。入射直径Sdは、光信号Lの放射角γを用いて以下の式(1)で表される:

Sd=2×WD×tan(γ/2) ・・・(1)
【0017】
図2に、光プローブ10の入射面100と光半導体素子20との間で取り得る最大の作動距離WD(以下、「最大作動距離WDm」という。)である状態を示す。図2に示すように、最大作動距離WDmの場合の放射半角をαとする。最大作動距離WDmで中心軸C10と光軸C20が一致する場合に、中心半角ωが最大である。以下において、最大の中心半角ωを「最大中心半角ωm」という。
【0018】
光信号Lを測定する場合、光プローブ10と光半導体素子20のXY平面における位置偏差を考慮する必要がある。図3に、位置偏差によって、光プローブ10の中心軸C10と光信号Lの光軸C20がX方向に沿ってずれている状態を示した。
【0019】
図3に、クラッド部112に透過せずにコア部111を伝搬する光信号Lの、入射面100における入射領域を有効入射半径Seで示した。また、光信号Lの入射半径Srを図3に示した。有効入射半径Seで規定される範囲内に入射半径Srの範囲が含まれれば、光プローブ10と光半導体素子20との間に位置偏差があっても、光プローブ10での光信号Lの伝送損失が抑制される。図3では、光信号Lの伝送損失が生じない中心軸C10と光軸C20との位置の距離を「入射安定距離Ds」として示した。
【0020】
また、図4に示すように、光プローブ10の中心軸C10と光信号Lの光軸C20が平行でなく、中心軸C10と光軸C20がチルト角ζで交差する場合にも、光プローブ10において光信号Lの入射変動が生じる。詳細を後述するように、光プローブ10によれば、チルト角ζが生じた場合にも入射変動を抑制できる。
【0021】
以下に、光信号Lの放射角の測定について説明する。作動距離WDを一定にして、入射面100に対して相対的に光半導体素子20をX方向やY方向に移動させることにより、移動距離に対する入射強度の関係を示す特性(以下、「入射強度パターン」という。)が得られる。最初に、図5に示す入射面100が平面である光プローブ(以下、「平面光プローブ」という。)を用いた、入射強度パターンの測定について説明する。
【0022】
図5に示した平面光プローブに、コア径Cdが2×Cr、開口数NAがsin(αf)の光ファイバを用いる。入射面100に光信号Lが入射する入射直径Sdは、2×Srである。また、平面光プローブの開口数NAから、放射角γと入射許容半角αfは、γ<2αfの関係である(αf=sin-1(NA))。
【0023】
放射角γの光信号Lが平面光プローブの入射面100に入射した場合、コア部111の内部を進行した光信号Lは、コア部111とクラッド部112の境界面にπ/2-βの入射角で入射する。屈折角βは、中心軸C10から半径方向の距離rにおけるコア部111の屈折率n(r)を用いて式(2)で定義される:

β=sin-1(sin(γ/2)/n(r)) ・・・(2)

屈折率n(r)は以下の式(3)で表される:

n(r)=n(c)×(1-(A1/2×r)2/2) ・・・(3)

ここで、n(c)は中心軸C10でのコア部111の屈折率、A1/2はコア部111の屈折率分布定数である。
【0024】
また、コア半径Crの位置でのコア部111の境界屈折率n(rc)、境界屈折角β(rc)は、式(4)、式(5)でそれぞれ表される:

n(rc)=n(c)×(1-(A1/2×Cr)2/2) ・・・(4)
β(rc)=sin-1{sin(γ/2)/n(rc)} ・・・(5)

屈折角βが境界屈折角β(rc)以上の場合、光信号Lが、コア部111内を反射伝搬せずにクラッド部112に透過、放射する。このため、コア部111を伝搬する光信号Lが減衰する。
【0025】
次に、光信号Lの放射角の測定について説明する。作動距離WDが一定の状態でXY平面において入射面100に対して相対的に光半導体素子20を移動させることにより、光信号Lについて移動距離に対する入射強度の関係を示す入射強度パターンが得られる。
【0026】
図6は、作動距離WDが20、50、100、150、200μmのそれぞれについて、平面光プローブの入射面100に対して光半導体素子20を移動させたときの光信号Lの入射強度Pの入射強度パターンを示す。作動距離WDが大きくなるにつれて、入射面100における中心軸C10から光信号Lの外縁までの距離(以下において、「移動距離D」という。)も大きくなる。なお、図6は、コア半径Crが44.5μm、開口数NAが0.29の平面光ファイバの入射面100に、放射角γが17.6°の光信号Lを入射させたものである。
【0027】
図6に示すように、入射強度Pの入射強度パターンは、作動距離WDが小さな場合は台形状である。作動距離WDが大きくなるにつれて、入射強度Pのピーク値が低下し、入射強度パターンの形状はガウシアン形状に近づく。図6に示した入射強度パターンから、作動距離WDが100μm以上の場合に、移動距離Dに対して入射強度Pのピーク値の減衰が大きくなる傾向にある。
【0028】
入射強度パターンから、入射直径Sd(Sd=2×Sr)とコア径Cd(Cd=2×Cr)がほぼ等しくなる作動距離WDを設定する。図6に示した入射強度パターンから、入射強度Pのピーク値が低下せず、入射強度パターンの形状がほぼガウシアン形状になるのは、WD=150μmの場合であり、これが平面光プローブのコア部111の外縁と光信号Lの外縁がほぼ一致する条件である。その場合に入射強度Pがピーク値の1/e2となるXY平面の1/e2移動距離Deは、図6から、De=4×Sr=112μmである。したがって、入射強度Pがピーク値の1/eとなる1/e放射角γeについて式(6)が成立する:

tan(γe/2)=De/(4×WD)=0.187 ・・・(6)

式(6)から、γe=2×tan-1(De/(4×WD))=21.2°である。
【0029】
また、入射強度Pがピーク値の1/2となる1/2移動距離Dhは77.5μmである。したがって、入射強度Pがピーク値の1/2となる1/2放射角γhについて式(7)が成立する:

tan(γh/2)=Dh/(4×WD)=0.129 ・・・(7)

式(7)から、γh=2×tan-1(Dh/(4×WD))=14,7°である。
【0030】
上記のように、入射面100と光半導体素子20との中心軸C10に垂直なXY平面における相対的な移動距離と光信号Lの入射強度との関係から、光信号Lの放射角を算出することができる。
【0031】
一方、ファーフィールドパターン(Far Field Pattern:FFP)測定器などの計測器を用いた放射角の計測値(以下、単に「計測値」という)は、γe=21.2°、γh=17.6°である。光半導体素子20がVCSELの場合、入射強度Pの入射強度パターンはほぼ台形状に近く、ガウシアン形状にならない。そのため、入射強度Pのピーク値の1/2放射角γhは小さめに計測される。
【0032】
次に、入射面100が曲率半径Rの曲面である光プローブ10による放射角の測定について説明する。ここで、光プローブ10の入射面100での開口数NAがsin(α)とする。光プローブ10の入射面100で、スネルの法則から以下の式(8)の関係が成立する:

sin(α+ωm)=n(r)×sin(β+ωm) ・・・(8)

式(8)から、以下の式(9)が得られる:

α=sin-1(n(r)×sin(β+ωm)}-ωm ・・・(9)

コア径Cdの端部では、ωm=Cr/Rである。
【0033】
したがって、入射面100の曲率半径Rと光信号Lの放射半角αの関係を得ることができる。放射半角αは入射面100に入射する光信号Lの許容入射半角でもあり、放射角γが2×αを超えると、光信号Lがコア部111とクラッド部112の境界からクラッド部112に透過、放射により減衰し、伝送損失が発生する。
【0034】
図7に、NA=0.29、コア径Cd=89μmの光ファイバと、NA=0.275、コア径Cd=62.5μmの光ファイバを用いた場合の、曲率半径Rである入射面100における開口数(以下、「入射開口数RNA」という。)の関係を示した。
【0035】
図7に示すように、曲率半径Rが小さいほど、光プローブ10の入射開口数RNAが大きくなる。例えば、NA=0.29の光ファイバを用いて曲率半径Rが145μmの光プローブ10を構成した場合、RNA=0.5、γ=60°が、光信号Lの入射境界条件になる。「入射境界条件」は、クラッド部112に透過せずに光信号Lがコア部111を伝搬する条件である。一方、NA=0.275の光ファイバを用いて曲率半径Rが145μmの光プローブ10を構成した場合、RNA=0.4、γ=48°が入射境界条件になる。
【0036】
光信号Lの放射角γについてα≧γ/2の関係であれば、光プローブ10のコア部111に光信号Lが入射した後、クラッド部112に透過せずに光信号Lがコア部111内を殆ど減衰なしに伝搬する。このように、入射面100を曲面にすることにより、入射面100が平面である光プローブと比較して、伝送損失を抑制でき、入射する光信号Lの放射角γが大きなものでも入射できる。したがって、特に光信号Lの放射角γが大きな場合に、入射面100を曲面にすることは有効である。つまり、光信号Lの放射角γが大きな場合に、曲率半径Rの設定により光プローブ10の入射境界条件が調整できる。
【0037】
光プローブ10がX方向に沿って紙面の左方向に入射安定距離Dsだけ移動した場合、光プローブ10の入射面100において式(10)が成立する:

sin(γ/2+ω)=n(r)×sin(β+ω) ・・・(10)

ここで、光プローブ10に使用する光導波路(例えば光ファイバ)の開口数NAについてのβ=sin-1(NA/n(r))の関係式より、式(11)が得られる:

ω=±sin-1({K22/(K12+K22)}1/2) ・・・(11)

式(11)で、係数K1および係数K2は以下の値である:

K1=n(r)×cos(β)-cos(γ/2)
K2=n(r)×sin(β)-sin(γ/2)
【0038】
また、有効入射半径Seと光プローブ10のコア半径Crが一致する場合に、作動距離WDが最大作動距離WDmである場合の光信号Lの光プローブ10への入射が許容される放射半角αを用いて、曲率半径Rは式(12)の関係を満たし、中心半角ωは式(13)で表される:

R≧Cr/sin(ω) ・・・(12)
ω=±sin-1({K22/(K12+K22)}1/2) ・・・(13)

ここで、WDm=Cr/tan(α)である。式(13)で、係数K1および係数K2は以下の値である:

K1=n(r)×cos(β)-cos(α)
K2=n(r)×sin(β)-sin(α)

ここで、α=sin―1{n(r)×sin(β+ω)}-ωである。測定する光半導体素子の光信号Lの放射角γが既知の場合、2α≧γとなるように、α、ωを設定し、入射面100の曲率半径Rが設定できる。
【0039】
光プローブ10が入射安定距離Dsだけ移動した場合に、以下の式(14)~式(16)が成り立つ:

Se=R×sin(ω) ・・・(14)
Ds=Se-Sr ・・・(15)
Sr=WD×tan(γ/2) ・・・(16)

ここで、Cr≧Se>Sr≧0、R≧Drである。有効入射半径Seは、曲率半径Rが大きい程大きく、入射半径Srは、作動距離WDが小さい程小さくなる。入射安定距離Dsを広く設定、すなわち有効入射半径Seを大きく入射半径Srを小さく設定することにより、光信号Lについて安定した特性を測定するための、光プローブ10の中心軸C10と光信号Lの光軸C20の位置偏差の許容値を大きくできる。式(14)から、曲率半径Rについて、以下の式(17)が得られる:

R=Se/sin(ω) ・・・(17)
【0040】
図8に、入射面100を通過した光信号Lのコア部111とクラッド部112の境界面への入射角(以下、「クラッド入射角θ」という。)に関して、光プローブ10および平面光プローブの入射角比率Irと、曲率半径Rとの関係を示す。ここで、平面光プローブのクラッド入射角θ1、曲率半径Rの光プローブ10のクラッド入射角θ2として、入射角比率Ir=θ2/θ1である。なお、平面光プローブでは、曲率半径Rが無限大であり、入射角比率Irは1である。
【0041】
図8に示すように、曲率半径Rが小さいほど、入射角比率Irは小さく、クラッド入射角θが小さい。このため、曲率半径Rが小さいほど、光プローブ10の中心軸C10に対する光信号Lの光軸C20の角度変化があっても、光プローブ10のコア部111における光信号Lの伝搬に対する変動が生じにくい。例えば光プローブ10をアレイ状に配列した光プローブアレイではX方向又はY方向の微小なチルト角ζが生じ、クラッド入射角θが変動するが、光プローブ10では入射面100が曲面であることにより、クラッド入射角θが小さくなっている。このため、中心軸C10に対する光軸C20の角度がチルト角ζの発生により変動しても、クラッド入射角θは、光信号Lがクラッド部112に透過して減衰するクラッド入射臨界角θ(rc)以下に十分に納まり、クラッド部112放射による減衰が生じにくくなる。このため、チルト角ζに起因する光信号Lのコア部111内の伝搬での変動が抑制される。
【0042】
図9は、光信号Lの入射が許容される放射半角αに対するクラッド入射角θの関係を、入射面100が平面である場合と、100、125、150μmの曲率半径Rの曲面である場合について比較した結果である。図9で、クラッド入射臨界角θ(rc)はクラッド入射角θの臨界角であり、クラッド入射角θがクラッド入射臨界角θ(rc)以上の場合は、光信号Lはクラッド部112に透過して減衰する。図9のグラフからも、入射面100を曲面にすることにより、光信号Lの放射角γに対し、クラッド入射角θを小さくできることがわかる。また、曲率半径Rが小さい方がクラッド入射角θは小さくなる傾向になる。したがって、図9に示すように、入射面100が曲面である場合に、クラッド入射角θは、臨界角であるクラッド入射角θ(rc)に対して十分に小さい。このため、入射面100を曲面にすることにより、チルト角ζに起因して入射面100で光信号Lの入射角に角度ずれが生じても、光信号Lの減衰を抑制できる。
【0043】
図10は、光プローブ10の入射面100の曲率半径Rが70、74、80μmの場合と、入射面100が平面の場合について、作動距離WDが100μmであるときの入射強度パターンの実測値を比較したグラフである。図10に示したグラフの横軸は移動距離Dである。図10から、曲率半径Rが小さいほど入射強度Pが大きめになる。曲率半径Rにより入射光のクラッド入射角が小さくなり、クラッド部放射による減衰が生じにくくなるためである。それに対し、入射面100が平面の場合は、入射面100が球面である場合に比較して、入射強度パターンの強度が低めであり、入射強度パターンの両肩が丸まり、なだらかに減衰する。
【0044】
図11は、一定の作動距離WDで、光プローブ10の中心軸C10に対して光信号Lの光軸C20の位置を距離DxyだけX方向又はY方向に変化させた場合の入射強度パターンのイメージ図である。距離Dxyの変化による入射強度パターンは、ほぼ台形状である。入射強度パターンの入射強度P=1の平坦部は、+方向と-方向の入射安定距離Dsに相当する入射安定範囲である。この入射安定範囲で位置偏差が生じても入射強度Pは変化せず、安定した入射強度が得られる。光プローブ10のコア部111に光信号Lの少なくとも一部が入射する入射移動範囲Dw、および入射安定範囲Dpは、Dw=2(Se+Sr)、Dp=2(Se-Sr)=2Dsで示される。
【0045】
入射面100が平面の場合は、Se=Crである。したがって、伝送損失の生じないX方向の放射角γxとY方向の放射角γyは、以下の式(18)、式(19)によりそれぞれ算出される:

γx=2×tan-1(Srx/WD) ・・・(18)
γy=2×tan-1(Sry/WD) ・・・(19)

ここで、Cr≧Se>Sr≧0である。
【0046】
図12は、作動距離WDを50~200μmで変化させたときの入射強度パターンの変化を示す。ここでは、入射面100の曲率半径Rが70μmの光プローブ10を用いた。光半導体素子20がVCSELの場合、ファーフィールドパターンが台形状の強度分布であり、強度がピーク強度の1/2である1/2放射角γhが、おおよそ強度分布の平均値の放射角である。このため、有効入射半径Se、入射半径Srも入射強度平均値のトレースを示しているとみなせる。図11、Se-Sr=Dp/2、Se+Sr=Dw/2から、Se=1/4×(Dw+Dp)、Sr=1/4×(Dw-Dp)である。図12より、Dp=40(μm)、Dw=80(μm)である。上式よりSe=30(μm)、Sr=10(μm)が求まる。WD=100μmの場合、γh=2×tan―1(Sr/WD)=2×tan―1(10/100)=11.4°である。1/2放射角γhと1/e放射角γeが強度分布から比例関係にあるとすると、入射強度パターンより、γe=2×(De/Dh)tan―1(γh)=2×(66/56)tan-1(10/100)=13.5°が得られる。
【0047】
しかしながら、本測定のようにWD=100~200(μm)の場合、測定値は、ファーフィールドパターンではなく、より絞られたニアフィールドパターンに近い値となるため、計測値で測定した値γe=21.2°、γh=17.6°からずれた値になる。したがって、ファーフィールドパターン値を得るには補正が必要である。
【0048】
このような入射強度パターンから得られる値と計測値から得られた値に差異がある場合、以下のような処理を行い、差異を削減することができる。
【0049】
計測値の放射角γを用いると、tan(γh/2)=Sr/cWDである。ここで、入射強度Pがピーク値の1/2となる条件がSr=10μm、γh=17.6°であるので、tan(17.6°/2)=Sr/cWD=10/cWD=0.155であり、それより、cWD=64.5μmとなる。ここで、cWD=Sr/tan(γ/2)は、放射角の計測値から得られる作動距離(以下、「みなし作動距離」という。)である。
【0050】
みなし作動距離cWDを用いて、1/e放射角γeおよび1/2放射角γhが以下のように求まる:

γe=2×(De/Dh)×tan-1(Sr/(cWD))
γh=2×tan-1(Sr/(cWD))

したがって、実際に測定した1/e2移動距離De、1/2移動距離Dhの値を用いて、X方向とY方向のそれぞれの放射角γe、γhが求まる。例えば、基準VCSELの放射角を基準にして、基準の放射角との差異から放射角を設定する。このようにして、計測値からより正確に放射角を設定することができる。
【0051】
図13は、入射面100の曲率半径Rと有効入射半径Seとの関係の理論値を示したグラフである。図13において、光プローブ10に用いた光ファイバの開口数NAが0.29の場合と開口数NAが0.275の場合を示した。曲率半径Rと有効入射半径Seとの関係は、式(17)から求めることができる。
【0052】
有効入射半径Seとコア径Cdを一致させることにより、位置偏差による伝送損失を抑制するために有効入射半径Seを最大限活用できる。有効入射半径Seとコア径Cdを一致させるためには、図13におけるSe=Cr=44.5μmの条件から、NA=0.29、コア半径Cr=44.5μmの光プローブ10では、曲率半径Rを155μmの近傍に設定すればよい。また、Se=Cr=31.3μmの条件から、NA=0.275、コア半径Cr=31.3μmの光プローブ10では、曲率半径Rを127μmの近傍に設定すればよい。
【0053】
図14は、NA=0.275とNA=0.29の光ファイバを光プローブ10に用いたそれぞれの場合における、安定した入射強度が得られる入射安定距離Dsと曲率半径Rの関係を示したグラフである。図14に示した×印は、NA=0.29の場合の実測値をプロットしたものである。図14に示すように、曲率半径Rが大きいほど、入射安定距離Dsが大きい。また、光プローブ10に使用する光ファイバのコア径Cd(=2×Cr)が、大きいほど、入射安定距離Dsは広がる。コア半径Cr=44.5μmの場合は、入射安定距離Dsはほぼ±30μmまで設定できる。コア半径Cr=31.3μmの場合は、入射安定距離Dsはほぼ±15μmまで設定できる。
【0054】
図15は、入射面100の曲率半径Rと最大作動距離WDmの関係を示したグラフである。コア半径Cr=44.5μm、曲率半径R=155μmの場合、最大作動距離WDmは約300μm弱である。コア半径Cr=31.3μm、曲率半径R=125μmの場合で、最大作動距離WDmは約200μm程度である。光プローブ10の使用時は、WD≦WDmに設定する。
【0055】
図16は、WD=100μmの場合における、光プローブ10に入射した光信号Lの損失特性を示したグラフである。図16に示したグラフの横軸は、移動距離Dである。損失変動が0.1dB以内である移動距離Dを入射安定距離Dsとすると、図16から、R=75μmの場合に入射安定距離Dsは±15μmである。また、R=93μmの場合に入射安定距離Dsは±20μmである。R=116μmの場合に入射安定距離Dsは±20μm以上である。一方、入射面100が平面である場合の入射安定距離Dsは、±17μmである。以上から、入射面100を曲面にすることにより、入射安定距離Dsが変化し、曲率半径Rが大きいほど入射安定距離Dsがより広がる。
【0056】
以上説明したように、第1の実施形態に係る光プローブ10は、式(17)に示した曲率半径R=Se/sin(ω)および式(11)に示した中心半角ω=±sin-1({K22/(K12+K22)}1/2)の特性を有する。これにより、入射安定距離Dsが広範囲になるように光プローブ10の入射面100の曲率半径Rが設定される。これにより、位置偏差やチルト角ζに対する入射変動が抑制され、光プローブ10に安定して光信号Lを入射させることができる。その結果、光プローブ10を用いた光半導体素子20の測定によれば、光プローブ10と光半導体素子20のXY平面における位置偏差やチルト角ζが生じても、光プローブ10の入射面100に入射する光信号Lの伝送損失を抑制できる。
【0057】
また、光信号Lの入射範囲がコア部111の内部となる適切な作動距離WDで光プローブ10と光半導体素子20をXY平面で相対的に移動させることにより、光信号Lを光プローブ10の入射面100に安定して入射させることができる。このため、光プローブ10と光半導体素子20とのX方向およびY方向での相対的な距離を変化させてそれぞれ得られる光信号Lの入射強度パターンから、光半導体素子20のX方向の放射角γxとY方向の放射角γyを測定することができる。光信号Lの入射強度パターンは、光プローブ10をX方向とY方向のそれぞれにおいて±方向に移動させることにより測定する。そして、上記に説明したように、入射強度パターンから1/e放射角γeおよび1/2放射角γhを求めることができる。なお、光信号Lの入射強度パターンを用いて放射角を求める方法は、光プローブ10の入射面100が平面であっても有効である。
【0058】
ところで、図1に示した光プローブ10を複数配列して多芯の光プローブアレイを構成してもよい。例えば、n本の光プローブ10を一列に配列した構成の光プローブ群をm個配列して、n×m個の光プローブ10をアレイ状に配置した光プローブアレイを構成する。複数の光半導体素子20にそれぞれ対応させた光プローブ10により構成した光プローブアレイを使用することにより、ウェハ200にアレイ状に配置された複数個の光半導体素子20を同時に測定することができる。これにより、ウェハ200に形成された光半導体素子20のトータルの測定時間を短縮することができる。
【0059】
上記の光プローブアレイを用いた測定システムの構成例を図17に示す。図17に示した測定システムは、光プローブ10をアレイ状に配置した光プローブアレイを保持する光プローブヘッド15と、複数本の電気プローブ30を配列して構成した電気プローブアレイを保持する電気プローブヘッド35を備える。電気プローブ30として、例えば、カンチレバータイプ、垂直ニードルタイプ、垂直スプリングタイプなどが使用される。光プローブ10と電気プローブ30のそれぞれは、X方向に沿って等間隔に配置されている。図示を省略するが、X方向と同様にY方向に沿っても、光プローブ10および電気プローブ30は等間隔に配置されている。
【0060】
図17に示す測定システムは、ウェハ200に形成された複数の光半導体素子20の特性測定に使用される。ステージ50に搭載されたウェハ200の主面には、光半導体素子20がアレイ状に形成されている。例えば、一つの光半導体素子20について光プローブ10と電気プローブ30が対で配置される。このように、1の光半導体素子20について、光プローブ10と電気プローブ30を含む一つのプローブユニットが構成されている。プローブユニットは、ウェハ200に形成された光半導体素子20の配置に対応して配置されている。なお、図17では、一つの測定ユニットを構成する光プローブ10と電気プローブ30の本数が1本ずつである場合を例示的に示した。しかし、測定ユニットに含まれる光プローブ10と電気プローブ30の本数は、光半導体素子20の構成や測定内容に応じて任意に設定される。
【0061】
光プローブヘッド15は、光プローブ駆動装置41の制御によってZ方向に移動する。これにより、光プローブ10の入射面100と光半導体素子20とのZ方向に沿った距離の微調整が可能である。また、電気プローブヘッド35は、電気プローブ駆動装置42の制御によってZ方向に移動する。これにより、電気プローブ30の先端と光半導体素子20とのZ方向に沿った距離の微調整が可能である。
【0062】
光プローブヘッド15および電気プローブヘッド35と光半導体素子20とのX方向およびY方向の位置合わせは、ステージ駆動装置43によってステージ50を移動させることにより可能である。更に、ステージ駆動装置43によってZ方向を中心としてステージ50を回転させることにより、Z方向を中心とする回転方向(以下、「Z回転方向」という。)について、光半導体素子20に対して光プローブ10と電気プローブ30の位置を調整できる。
【0063】
なお、ステージ50の位置を固定し、光プローブヘッド15および電気プローブヘッド35をX、Y、Zの各方向に移動させてもよい。すなわち、光プローブ駆動装置41および電気プローブ駆動装置42によって、光プローブ10および電気プローブ30の光半導体素子20に対する相対的な位置を調整してもよい。
【0064】
上記のように、図17に示した測定システムによれば、光プローブ10および電気プローブ30と光半導体素子20の位置合わせが可能である。なお、光プローブヘッド15の位置と電気プローブヘッド35の位置を独立して制御できるように、測定システムを構成してもよい。他に、光プローブヘッド15および電気プローブヘッド35を固定とし、ステージ50をX、Y、Z方向、Z回転方向に動かして、光プローブヘッド15、電気プローブヘッド35、および光半導体素子20の位置を制御する方法も可能である。このように、光プローブ10および電気プローブ30と光半導体素子20の位置合わせに、様々な調整方法を使用することができる。
【0065】
図17に示した測定システムを介して電気信号と光信号が伝搬し、光半導体素子20の測定が行われる。すなわち、図示を省略したテスタから出力された電気信号が、電気プローブヘッド35に配置された接続端子(図示略)を介して、電気プローブ30に送信される。例えば、光半導体素子20が半導体基板に形成されたVCSELである場合は、電気プローブ30によってVCSELの上面に配置された電気信号端子に電気信号を印加することにより、VCSELが光信号Lを出力する。光信号Lは、光プローブ10により受光される。
【0066】
光プローブ10は、光電変換モジュール45および電気接続端子46を有する光電変換部47に接続する。光半導体素子20が出力した光信号Lは、光プローブ10と光学的に接続する光電変換モジュール45に伝搬する。光電変換モジュール45は、光信号Lを電気信号に変換し、変換した電気信号を電気接続端子46に出力する。電気接続端子46は図示を省略するテスタと電気的に接続しており、光信号Lから光電変換された電気信号が電気接続端子46からテスタに送信される。
【0067】
光電変換モジュール45には、光信号Lをフォトディテクタなどにより電気信号に変換するタイプや、回折格子型デバイスにより光信号Lを分光し、その回折角方向により波長変動を検出するタイプが使用できる。測定用途により、光電変換モジュール45のタイプを使い分けることができる。また、光電変換モジュール45の手前から光信号Lを分岐して、複数の種類の測定を同時に行うこともできる。光電変換部47を用いて光プローブ10の出力を光プローブヘッド15の近傍で光電変換することにより、測定システムの簡素化、測定時間の高速化、測定値の繰り返し再現性の向上が実現できる。このように、光プローブ10および光プローブ10を保持する光プローブヘッド15を備えるプローブカードを用いて、光半導体素子20の測定が可能である。
【0068】
図17に示した測定システムを用いる光半導体素子20の測定は、例えば図18に示すフローチャートのように実行される。以下に、図18を参照して、光半導体素子20の測定方法の例を説明する。
【0069】
まず、ステップS10において、光プローブ10および電気プローブ30と光半導体素子20との位置合わせを行う。そして、Z方向に沿って電気プローブ30と光半導体素子20の相対的な位置を変化させて、光半導体素子20の電気信号端子に電気プローブ30の先端を接続する。この状態で電気プローブ30によって光半導体素子20に電気信号を印加することにより、光半導体素子20が光信号Lを出力する。
【0070】
そして、ステップS20において、光信号Lの光強度を測定する。すなわち、光プローブヘッド15をZ方向に移動させて、所定の作動距離WDになるように光プローブ10を配置する。そして、光プローブ10によって受光した光信号Lを光電変換モジュール45により光電変換し、光信号Lの光出力をモニタする。このとき、光半導体素子20からの光信号Lの出力が最大になるように、光プローブ10の位置を制御する。そして、光信号Lの光出力が最大である位置で光プローブ10を固定する。この状態で、光プローブ10からの光信号Lを測定する。このようにして、光信号Lの光強度が得られる。
【0071】
次に、ステップS30において、作動距離WDを一定に保持して光プローブ10と光半導体素子20の相対的な位置を変化させ、入射強度パターンを取得する。そして、ステップS40において、入射強度パターンから光信号Lの放射角γを測定する。
【0072】
例えばウェハ200に形成されたすべての光半導体素子20についての測定が終了するまで、上記の測定を繰り返す。なお、上記では、光信号Lの光強度と放射角の特性を測定する例を説明したが、光信号Lについて光強度や放射角以外の分光特性他、各温度特性等について測定してもよいことはもちろんである。また、これらの特性を測定する順番は任意である。
【0073】
入射面100の曲率半径Rが式(17)で設定された光プローブ10を用いることにより、複数の光プローブ10を配列した光プローブアレイを用いた測定においても、光信号Lを安定して光プローブ10で受信することができる。つまり、光プローブアレイを用いて、光プローブ10とウェハ200に形成された光半導体素子20の相対的な位置がXY平面で個別に変化しても、それぞれの光半導体素子20の光信号Lを入射面100に安定して入射させることができる。このため、光プローブアレイを用いて、複数の光半導体素子20のそれぞれの入射強度パターンを同時に測定できる。つまり、ウェハ200に形成された光半導体素子20について同時に、X方向の放射角γxやY方向の放射角γyを測定することができる。
【0074】
従来の放射角の測定方法では、ウェハ状態の光半導体素子20について光信号Lの放射角の測定ができず、光半導体素子20をチップ化してから、基板上に配線実装してからビームプロファイラやFFP測定器などを用いて放射角の測定を行っている。すなわち、チップ化した光半導体素子20を基板に実装したりモジュール化したりして、光半導体素子20について個別に光信号Lの放射角を測定する必要があった。このため、放射角の測定に手間と時間を要していた。また、光半導体素子20を個別に測定するため、測定に手間を要し、すべての光半導体素子20について測定を行うことが困難であった。また、一部の光半導体素子20の抜き取り検査とした場合には、他の光半導体素子20の良否判定ができないという問題がある。このため、従来の測定方法では歩留まりの改善を図ることができなかった。
【0075】
これに対し、図17に示した測定システムによれば、光プローブ10を用いて多芯の光プローブアレイを構成することにより、ウェハ状態の複数の光半導体素子20について一括して光信号Lの放射角が測定できる。このため、測定時間が抑制できる。また、光半導体素子20について全数の検査が可能であり、歩留まりを向上させることができる。
【0076】
以上説明したように、第1の実施形態に係る光プローブ10によれば、入射面100の曲率半径Rを調整することにより、入射安定距離Ds=Se-Srを広げることができる。このため、一定の作動距離WDでXY平面において光プローブ10と光半導体素子20の相対的な距離を変化させ、光信号Lの入射強度パターンをX方向とY方向についてそれぞれ取得できる。つまり、X方向について取得した入射強度パターンを用いてX方向の放射角γxを算出し、Y方向について取得した入射強度パターンを用いてY方向の放射角γyを算出できる。そして、X方向とY方向のそれぞれについて1/e放射角γeおよび1/2放射角γhを求めることができる。これにより、例えばファーフィールドパターンが楕円形状の光信号Lについて放射角を測定できる。
【0077】
また、光プローブ10では入射安定距離Dsが広く、且つチルト角ζに起因する入射変動が抑制できる。このため、光プローブ10を配列した光プローブアレイにより、ウェハ200に形成された複数の光半導体素子20を1回の位置合わせで測定した場合に、光プローブ10と光半導体素子20の位置ずれや角度ズレが生じても、入射変動が抑制できる。つまり、光プローブ10のそれぞれについて、光半導体素子20からの光信号Lを安定した状態で入射させることができる。
【0078】
更に、ウェハ状態において光半導体素子20の強度測定や放射角の測定ができるため、光半導体素子20の測定プロセスが簡素化され、測定時間を大幅に短縮できる。このとき、光プローブアレイとは別の基板に電気プローブ30をアレイ状に配置してもよいし、光プローブアレイと電気プローブアレイを一体化した構造であってもよい。ただし、光プローブアレイと電気プローブアレイが一体構造の場合は、光半導体素子20の電気信号端子に接触した状態で、電気プローブ30がX方向、Y方向、Z方向に移動する。このため、電気信号端子と接触させた状態で動かしても電気プローブ30と電気信号端子の接触状態が変わらず、電気信号を電気信号端子に安定して供給できるように、変形可能な歪弾性特性を有する形状、併せ材料や構成を電気プローブ30に採用する。
【0079】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る光プローブ10は、図19に示すように、第1領域101と第2領域102を連結した構成を有する。第1領域101の一方の端面が入射面100であり、第1領域101の他方の端面が第2領域102の端面と接合する。第1領域101と第2領域102の中心軸C10は一致する。
【0080】
入射面100が形成された第1領域101は、第1の実施形態で説明した光プローブ10と同様の構造を有する。すなわち、第1領域101の入射面100は、式(17)および式(11)の関係を満足するように曲率半径Rや中心半角ωが設定された曲面である。例えば、第1領域101にGI型光ファイバを使用する。
【0081】
図19に示した光プローブ10は、例えば以下のように製造される。まず、第1領域101とする大口径のGI型光ファイバと、第2領域102とする標準的な口径のGI型光ファイバとの、端面同士を融着接続する。そして、大口径のGI型光ファイバを、第1領域101の所定の長さにカットする。その後、大口径のGI型光ファイバの端面を曲率半径Rになるように加工する。
【0082】
第1領域101の長さTは、第1領域101と第2領域102の境界で光信号Lが焦点を結ぶように設定すればよい。GIファイバを用いた場合、T=2π×P/A1/2とする。ここで、Pはピッチ長であり、1ピッチで1周期である。A1/2は屈折率分布定数であり、中心軸C10とクラッド部112の屈折率による比屈折率差Δ、コア半径Crにより定まる定数である。仮にP=0.27とした場合、T=0.54π/A1/2である。したがって、第1領域101と第2領域102の境界の近傍を光信号Lの焦点位置とするには、WD=0.46π×n(c)/A1/2とすると、光半導体素子20から第1領域101と第2領域102の境界までの合計の距離が半周期の0.5Pになる。これにより、第1領域101と第2領域102の境界の近傍で光信号Lが焦点を結び、第1領域101に融着接続した第2領域102のコア内部に光信号Lが入射する。
【0083】
また、図19に示したように、第1領域101のコア半径Cr1及びプローブ半径Dr1と、第2領域102のコア半径Cr2及びプローブ半径Dr2が異なっていてもよい。図19に示した光プローブ10は、第1領域101と第2領域102とでクラッド部112の厚さが同等で、且つ第2領域102の径が第1領域101の径よりも小さい。すなわち、第1領域101のコア半径Crが、第2領域102のコア半径Cr2よりも大きい。例えば、第1領域101に大口径のGI型光ファイバを用い、第2領域102に標準的な口径のGI型光ファイバを用いて光プローブ10を構成してもよい。第2領域102に標準的な口径のGI型光ファイバを使用する構成により、光プローブ10の端部を標準的なコア径の光ファイバを用いた光回路用部品、カプラー、光スイッチなどに接続して、低損失な多入力光回路を実現できる。
【0084】
(第3の実施形態)
図20に示した第3の実施形態に係る光プローブ10は、入射面100から中心軸C10に沿って一定の長さUに渡って、コア部111の屈折率を増大する添加物が拡散されている。図20に示した光プローブ10は、入射面100から長さUまでの第1領域101、第1領域101に連結した第2領域102を有する。例えば、コア径Cdが通常の50μm又は62.5μmの光ファイバを使用した第1領域101を1200~1400℃程度に加熱する。これにより、第2領域102に存在するコア部111内の屈折率を増大させる、例えばゲルマニウム(Ge)などの物質を第1領域101に拡散する。
【0085】
屈折率を増大させる物質を第1領域101に添加することにより、光信号Lの半径方向の伝搬領域が増大する。その結果、入射面100のコア径Cdが80μm~100μm程度に拡大する。これにより、光信号Lの入射面100における入射領域が拡大し、トレランス特性を向上させることができる。この場合、コア径Cdを拡大することで、中心軸C10でのコア部111の屈折率n(c)が減少する。このため、開口数NAが小さくなり、入射面100の曲率半径RによりNAの値を調整することができる。
【0086】
上記のように通常の光ファイバを用いて光プローブ10を構成にすることにより、分岐回路、光スイッチングなどの光回路系の素子と光プローブ10の接続が容易になる。したがって、光プローブ10を光学測定系において扱いやすくできる。
【0087】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0088】
例えば、上記では屈折率分布型の光ファイバを用いた光プローブ10について説明したが、ステップインデックス型の光ファイバを用いて光プローブ10を構成してもよい。
また、等間隔に設置した光導波路構造のもので、入射面100を曲率半径R形状に整形した構造、また、同形状機能を有するレンズを装着した構造でも等価に実現できる。
【0089】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0090】
10…光プローブ
15…光プローブヘッド
20…光半導体素子
30…電気プローブ
35…電気プローブヘッド
41…光プローブ駆動装置
42…電気プローブ駆動装置
43…ステージ駆動装置
50…ステージ
100…入射面
111…コア部
112…クラッド部
200…ウェハ
図1
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