(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】封止構造及びそれを備えた圧力容器
(51)【国際特許分類】
F16J 12/00 20060101AFI20240125BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20240125BHJP
F16J 13/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16J12/00 G
F16J12/00 D
F16J15/06 Z
F16J13/02
(21)【出願番号】P 2020016118
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 亮太
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-109070(JP,U)
【文献】特開2008-298128(JP,A)
【文献】特開2017-170337(JP,A)
【文献】特開2009-275861(JP,A)
【文献】米国特許第05072851(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00
F16J 15/06
F16J 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止対象空間内が異常昇圧した際に、該封止対象空間内の圧力を避圧可能に設けられた封止構造であって、
少なくとも1つの避圧用流路と、退避空間と、封止部材と、連通流路と、を備え、
該連通流路は、該封止対象空間、該避圧用流路及び該退避空間と連通可能に設けられ、
該封止部材は、常時は該連通流路を封止すると共に該封止対象空間内の圧力が異常昇圧した際に変形可能に設けられており、
該封止部材が該異常昇圧によって変形した際に、該封止部材が該退避空間へと移動し、
それによって、該連通流路を介して該封止対象空間と該避圧用流路とが連通することを特徴とする封止構造。
【請求項2】
前記封止構造は、圧力容器に用いられるものであり、
前記封止対象空間は、該圧力容器内部の空間であることを特徴とする請求項1に記載の封止構造。
【請求項3】
前記封止構造は、前記圧力容器の容器本体と該容器本体に螺着される蓋部との間に設けられるものであり、
前記避圧用流路の少なくとも1つは、該容器本体と該蓋部との螺合部に設けられることを特徴と請求項2に記載の封止構造。
【請求項4】
前記封止構造は、前記圧力容器の容器本体と該容器本体に螺着される蓋部との間に設けられるものであり、
前記避圧用流路の少なくとも1つは、該蓋部に設けられた避圧用孔として設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の封止構造。
【請求項5】
請求項2乃至
4の何れかに記載の封止構造を備えることを特徴とする圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止構造及びそれを備えた圧力容器に関し、より詳細には、避圧可能な封止構造及びそれを備えた圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力容器がある。圧力容器は、使用圧力についてある程度の安全率が設けられているものの何かしらの要因で内圧が異常昇圧してしまった場合に破裂等の起こることを想定して避圧手段を備えていることが望ましい。そのため、従来の圧力容器においては、安全弁を設け、圧力容器内の圧力が異常昇圧した際に安全弁により避圧をしている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この様な安全弁の一例として、ハウジング内にポペットを有するものがある。この安全弁は、ポペットを挟んで高圧側の第1キャビティーと低圧側第2キャビティーとに区画されており、これら2つのキャビティー間の圧力差によって、ポペットがハウジング内を摺動する様になっており、それによって、ある一定以上の圧力差が生じた際に、第1キャビティーと第2キャビティーとを連通させ、避圧ができるようになっている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-125623号公報
【文献】特表平11-501716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の安全弁は、一度、避圧される毎に使い捨てで交換されるのではなく、避圧後に容易に元の状態へと戻せる様になっているため、ポペット等の可動部を有するものである。この可能部の存在は、安全弁を繰り返し使用できるという利点を生む一方、可動部は、比較的損傷しやすく、作動不良の要因となりやすいという問題があった。又、使い捨ての圧力容器等の避圧後に引き続きの使用が想定されない圧力容器においては、この様な安全弁では、オーバースペックであり、コスト高となるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、可動部を必要としない、より簡易な避圧手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、封止対象空間内が異常昇圧した際に、該封止対象空間内の圧力を避圧可能に設けられた封止構造であって、少なくとも1つの避圧用流路と、退避空間と、封止部材と、連通流路と、を備え、該連通流路は、該封止対象空間、該避圧用流路及び該退避空間と連通可能に設けられ、該封止部材は、常時は該連通流路を封止すると共に該封止対象空間内の圧力が異常昇圧した際に変形可能に設けられており、該封止部材が該異常昇圧によって変形した際に、該封止部材が該退避空間へと移動し、それによって、該連通流路を介して該封止対象空間と該避圧用流路とが連通することを特徴とする封止構造である。又、本発明は、前記封止構造を備えることを特徴とする圧力容器である。
【0008】
なお、本発明は、前記封止構造が、圧力容器に用いられるものとし、前記封止対象空間を、該圧力容器内部の空間とすることが可能である。又、本発明は、前記封止構造が、前記圧力容器の容器本体と該容器本体に螺着される蓋部との間に設けられるものとし、前記避圧用流路の少なくとも1つを、該容器本体と該蓋部との螺合部に設けることが可能である。又、本発明は、前記封止構造を、前記圧力容器の容器本体と該容器本体に螺着される蓋部との間に設けられるものとし、前記避圧用流路の少なくとも1つを、該蓋部に設けられた避圧用孔として設けることも可能である。又、本発明は、前記封止部材を、前記圧力容器の封止手段を兼ねているものとすることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、封止構造において、封止対象空間が異常昇圧した際に、封止部材が変形すると共に変形した該封止部材が退避空間へと移動する様になっており、それによって、該封止対象空間と避圧用流路を連通する様にしたので、可動部を設けなくとも避圧することが可能である。又、封止構造そのものによって避圧が可能となるのでより簡易な避圧手段を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1の要部拡大図であり、(a)は常時の状態を、(b)は避圧時の状態を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態を示す図であり、
図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1実施形態を
図1及び
図2に基づき説明する。先ず、本実施形態の構成について説明する。圧力容器1は、容器本体2と、蓋部3と、封止構造4と、を備えている。容器本体2は、その上端部には、口部20が設けられている。口部20は、その外面に螺条21が形成されている。尚、本実施形態においては、容器本体2は、カプセル型をしているが、砲弾型、球型その他の形状であってもよい。
【0012】
蓋部3は、容器本体2の口部20に取付可能に設けられている。本実施形態においては、蓋部3は、蓋体30と、固定具31と、を有している。蓋体30は、口部20を閉塞可能に設けられていると共に図示されないバルブ等の圧力容器1の開閉手段が設けられている。又、固定具31は、その内面に螺条32(雌ねじ)が形成されており、口部20の螺条21(雄ねじ)に対して螺合可能となっており、蓋体30を口部20に固定するために設けられている。
【0013】
封止構造4は、封止対象空間5を封止可能に設けられており、避圧用流路40、退避空間41、封止部材42及び連通流路43を備えている。本実施形態においては、封止対象空間5は、容器本体2内の空間であり、封止構造4は、容器本体2、具体的には口部20と、蓋部3との間に設けられており、蓋部3を口部20へと取り付けた際にその間に生じる隙間を閉塞し、圧力容器1を密封するためのものである。この封止構造4を設けることで、封止対象空間5内が異常昇圧した際に、その封止対象空間5内の圧力を避圧可能となる。
【0014】
連通流路43は、封止対象空間5、避圧用流路40及び退避空間41と連通可能に設けられており、その内方には封止部材42が収容されており、常時は、封止部材42によって封止されている。本実施形態においては、連通流路43は、蓋部3の蓋体30と容器本体2の口部20との間に位置する様に設けられている。
【0015】
封止部材42は、封止対象空間5内の圧力が異常昇圧した際に変形可能で移動可能に設けられている。本実施形態においては、封止部材42は、常時において、蓋部3の蓋体30と容器本体2の口部20との間にそれらの間の隙間を閉塞する様に連通流路43に収容されており、圧力容器1の封止部材としての役割を兼ねている。封止部材42としては、例えば、圧力容器1の充填圧よりも大きく且つ圧力容器1の耐圧限界よりも低い圧力で変形可能な適宜の硬度の0-リングを採用することが可能であり、又、例えば、ゴムやエラストマーからなる平パッキンやTゴム、オイルシートなどを使用してもよい。
【0016】
退避空間41は、少なくとも封止対象空間5内の圧力の異常昇圧によって変形した封止部材42を収容可能な大きさに形成された空間である。本実施形態においては、退避空間41は、蓋部3の蓋体30と固定具31との間に位置する様に設けられている。又、退避空間41は、連通流路43と連通していると共に避圧用流路40とも連通している。
【0017】
避圧用流路40は、圧力容器1内に存在する流体が流通可能に設けられている。なお、流体としては、気体に限られず液体でもよく、粉末等が圧力容器に充填される場合でもよい。本実施形態においては、避圧用流路40は、容器本体2の口部20に蓋部3を螺着した際に、口部20の螺条21と固定具31の螺条32との間に生じる間隙を利用して、螺合部6に設けられている。
【0018】
次に、本実施形態の避圧工程について説明する。
(1)圧力容器1の封止対象空間5内の圧力が異常昇圧すると、封止部材42は、その圧力に耐えきれなくなり変形する。
【0019】
(2)その後、変形した封止部材42(以下、封止部材42Aと表記する)は、圧力容器1の内圧によって、連通流路43から押し出され、退避空間41へと移動させられる。
【0020】
(3)封止部材42Aが、退避空間41に収容されることによって(
図2(b)参照)、連通流路43を介して、封止対象空間5と避圧用流路40とが連通され、それによって、流路7が形成される。その後、封止対象空間5内の流体が、封止対象空間5から連通流路43を経て避圧用流路40へと至る流路7を通って、圧力容器1外へと排出され、その結果として、圧力容器1の内圧が低下し、避圧が完了する。
【0021】
なお、封止部材42Aが退避空間41に収まらず、避圧流路40の上部を塞ぐ方向に移動したとしても、固定具31と蓋体30とはメタルタッチのため密閉性に乏しいことから、そこから圧力を逃がすことが可能である。
【0022】
従って、本実施形態においては、封止対象空間5内の圧力が異常昇圧した際に、封止部材42が変形し、退避空間41へと移動することで、封止対象空間5と避圧用流路40とが連通して避圧される様になっているため、避圧のために可動部を必要とせず、又、圧力容器1を封止するための封止構造4そのものによって避圧可能となっているため、より簡易な避圧手段を提供することが可能である。
【0023】
本発明の第2実施形態について、
図3に基づき説明する。本実施形態と第1実施形態と相違は、蓋部3に避圧用孔33を設けたことである。第1実施形態と同符号で示した構成は、同実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0024】
本実施形態においては、蓋部3、具体的には、固定具31には、それを貫通する様に形成された避圧用孔33が設けられていると共に避圧用流路44が設けられている。避圧用孔33は、連通流路43と連通している様に設けられていると共に上記避圧工程(3)において、連通流路43を介して、封止対象空間5と連通する様になっており、避圧用流路44の一部を構成している。
【0025】
避圧用流路44は、螺合部6の間隙に設けられた第1の避圧用流路44Aと避圧用孔33として設けられた第2の避圧用流路44Bとによって構成されており、二股に分岐している。なお、避圧用孔33は、固定具31において退避空間41の下方の位置に連通させるように設けてあるが、これに加えて、退避空間41の上方の位置(封止部材42の上方)に連通させるように設けてもよい。このようにすると、封止部材42Aが移動するとき、うまく退避空間41の上部に収まるように移動できず、退避空間41の下側の空間に移動して収縮したとしても、上部に設けた避圧用孔33により圧力を逃がすことができる。
【0026】
本実施形態においては、上記避圧工程(3)において、封止対象空間5内の流体は、封止対象空間5から連通流路43を経て避圧用流路44に至る流路8を通って、圧力容器1外へと排出される様になっている。そのため、本実施形態においては、第1実施形態と比較してより速く圧力容器1内の圧力を開放することが可能となっている。
【0027】
本発明を、上記実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0028】
(1)上記実施形態においては、本発明を、圧力容器1を例に説明したが、本発明は、圧力容器以外にも適用可能である。例えば、圧力配管の封止構造である管接手(図示せず)等に同様の構造を設けて、該管接手等の封止対象空間である該圧力配管内の空間が異常昇圧した際に、該空間内の圧力を避圧できる様にしてもよい。
【0029】
(2)上記実施形態においては、封止部材42を圧力容器1の封止部材としての役割を兼ねるものとしたが、封止構造3に圧力容器1の封止部材を別途設けて、封止部材42を圧力容器1の封止部材を兼ねない様にしてもよい。この場合、避圧による圧力容器のタンク保護開始圧力(本実施形態で示す避圧部材と締結の圧力に依る)は、圧力容器のタンク破損圧力(タンク強度)より小さく、かつシール限界圧力(別に設ける封止部材とその締結の圧力による)より大きいという関係性が必要となる。
【0030】
(3)第2実施形態において、封止対象空間5内の流体が、螺合部6の間隙及び避圧用孔33の両方から圧力容器1外へと排出される様にしたが、避圧用孔33のみから封止対象空間5内の流体が、圧力容器1外へと排出される様にしてもよい。
【0031】
(4)圧力容器1が避圧されたことを、視認できる様に、圧力容器1に、別途、圧力計(図示せず)を設け、又は、圧力容器1を該圧力計に接続し、該圧力計によって、圧力容器1内の圧力を監視できる様にしてもよい。この場合、圧力容器1内の圧力の低下をもって、圧力容器1が避圧されたかが判断することが可能である。
(5)封止構造は、圧力容器の容器本体と該容器本体に螺着される蓋部との間に設けられるものとしたが、蓋部は、ネジによる螺着(締結)に限られない。ガスケットは何らかの方法で押圧してシールしている方式なら何でも適用可能で、いわゆるカムロックのようなワンタッチでガスケットを押圧してシールするもの等にも応用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 圧力容器 2 容器本体 20 口部
21 螺条 3 蓋部 30 蓋体
31 固定具 32 螺条 33 避圧用孔
4 封止構造 40 避圧用流路 41 退避空間
42 封止部材 43 連通流路 44 避圧用流路
5 封止対象空間 6 螺合部 7 流路
8 流路