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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H01S5/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020030853
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021136317
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発/次々世代加工に向けた新規光源・要素技術開発/高効率加工用GaN系高出力・高ビーム品質半導体レーザーの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川口 真生
【審査官】八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/026730(WO,A1)
【文献】特開平8-107254(JP,A)
【文献】特開2020-4752(JP,A)
【文献】特開2008-16864(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163598(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/48028(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層、活性層、及び、第2導電型半導体層がこの順に積層された半導体レーザ素子を複数備える半導体レーザ装置であって、
複数の前記半導体レーザ素子は、
第1活性層に流す電流を狭窄するための第1ストライプ構造を有し、第1光を出射する第1半導体レーザ素子と、
第2活性層に流す電流を狭窄するための第2ストライプ構造を有し、前記第1光よりも波長が長い第2光を出射する第2半導体レーザ素子と、を含み、
前記半導体レーザ装置は、前記第1半導体レーザ素子との間で前記第1光を共振させ、且つ、前記第2半導体レーザ素子との間で前記第2光を共振させる外部共振器を備え、
積層方向から見た場合に、前記第1半導体レーザ素子における前記第1光を出射する第1端面での前記第1ストライプ構造の幅である第1ストライプ幅は、前記第2半導体レーザ素子における前記第2光を出射する第2端面での前記第2ストライプ構造の幅である第2ストライプ幅よりも、小さく、
前記第1端面における、前記外部共振器から戻る前記第1光のスポット径は、前記第2端面における、前記外部共振器から戻る前記第2光のスポット径よりも小さい
半導体レーザ装置。
【請求項2】
積層方向から見た場合に、
前記第1ストライプ構造は、前記第1半導体レーザ素子における前記第1光の出射方向に前記第1ストライプ幅で一様に延在しており、
前記第2ストライプ構造は、前記第2半導体レーザ素子における前記第2光の出射方向に前記第2ストライプ幅で一様に延在している
請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
積層方向から見た場合に、前記第1ストライプ構造は、前記第1端面から、前記第1半導体レーザ素子における前記第1光が出射される向きとは反対側に向かうにつれて幅が狭くなる
請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記第1半導体レーザ素子と前記第2半導体レーザ素子とが一体に形成された半導体レーザアレイを備える
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記外部共振器は、前記第1光及び前記第2光のそれぞれの一部を透過し、且つ、他部を反射するハーフミラーを備える
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
さらに、前記第1光と前記第2光とを合波して出射する合波器を備える
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記合波器は、回折格子を有する波長分散素子を有する
請求項6に記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
さらに、前記第1半導体レーザ素子及び前記第2半導体レーザ素子と、前記外部共振器との間に、前記第1光及び前記第2光をコリメートするコリメータレンズを備える
請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項9】
前記第1端面と前記コリメータレンズとの距離と、前記第2端面と前記コリメータレンズとの距離とは、等しい
請求項8に記載の半導体レーザ装置。
【請求項10】
第1導電型半導体層、活性層、及び、第2導電型半導体層がこの順に積層された半導体レーザアレイを複数備える半導体レーザ装置であって、
複数の前記半導体レーザアレイは、
第1活性層に流す電流を狭窄するための第1ストライプ構造を複数有し、第1光を出射する第1半導体レーザアレイと、
第2活性層に流す電流を狭窄するための第2ストライプ構造を複数有し、前記第1光よりも波長が長い第2光を出射する第2半導体レーザアレイと、を含み、
前記半導体レーザ装置は、前記第1半導体レーザアレイとの間で前記第1光を共振させ、且つ、前記第2半導体レーザアレイとの間で前記第2光を共振させる外部共振器を備え、
積層方向から見た場合に、前記第1半導体レーザアレイにおける前記第1光を出射する第1端面での前記第1ストライプ構造の幅である第1ストライプ幅は、前記第2半導体レーザアレイにおける前記第2光を出射する第2端面での前記第2ストライプ構造の幅である第2ストライプ幅よりも、小さい
半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外部共振器型の半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工用の光源として用いられる半導体レーザ装置がある。この種の半導体レーザ装置には、高い光出力が要求される。そこで、高い光出力を得るために、複数のレーザ光を1つの光路を通過するように纏める、つまり、複数のレーザ光を合波する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、光出力を向上させるために、半導体レーザ素子が出射した光を当該半導体レーザ素子とハーフミラー等の光学系との間で共振させてレーザ光として出射する外部共振器型の半導体レーザ装置がある。
【0004】
ここで、ハーフミラー等の光学系を用いて複数の半導体レーザ素子との間で光を外部共振させて半導体レーザ装置からレーザ光を出射させるために、当該複数の半導体レーザ素子のそれぞれに投入される必要がある電流量は、複数の半導体レーザ素子が出射する光の波長に応じて異なる場合がある。当該複数の半導体素子のそれぞれにおける発振しきい値が異なるためである。複数の半導体レーザ素子のそれぞれに異なる電流量を投入するためには、当該複数の半導体レーザ素子のそれぞれに同じ電流量を投入する場合と比較して、構造が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5981855号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】J. Piprek and S. Nakamura, Physics of high-power InGaN=GaN lasers, IEE Proc.-Optoelectron., Vol. 149, No. 4, August 2002
【文献】S. K. Pugh, D. J. Dugdale, S. Brand, and R. A. Abram, Band-gap and k.p. parameters for GaAlN and GaInN alloys,Journal of Applied Physics 86, 3768 (1999),25 January 1999
【文献】Larry A.Coldren著、木村達也訳、半導体レーザとフォトニクス集積回路、オーム社、第2章2.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、複数の半導体レーザ素子を備える外部共振器型の半導体レーザ装置において、当該複数の半導体レーザ素子のそれぞれの発振しきい値を近づけることができる半導体レーザ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る半導体レーザ装置は、第1導電型半導体層、活性層、及び、第2導電型半導体層がこの順に積層された半導体レーザ素子を複数備える半導体レーザ装置であって、複数の前記半導体レーザ素子は、第1活性層に流す電流を狭窄するための第1ストライプ構造を有し、第1光を出射する第1半導体レーザ素子と、第2活性層に流す電流を狭窄するための第2ストライプ構造を有し、前記第1光よりも波長が長い第2光を出射する第2半導体レーザ素子と、を含み、前記半導体レーザ装置は、前記第1半導体レーザ素子との間で前記第1光を共振させ、且つ、前記第2半導体レーザ素子との間で前記第2光を共振させる外部共振器を備え、積層方向から見た場合に、前記第1半導体レーザ素子における前記第1光を出射する第1端面での前記第1ストライプ構造の幅である第1ストライプ幅は、前記第2半導体レーザ素子における前記第2光を出射する第2端面での前記第2ストライプ構造の幅である第2ストライプ幅よりも、小さい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数の半導体レーザ素子を備える外部共振器型の半導体レーザ装置において、当該複数の半導体レーザ素子のそれぞれの発振しきい値を近づけることができる半導体レーザ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、比較例に係る半導体レーザ素子を示す上面図である。
図2図2は、実施の形態に係る半導体レーザ装置を示す上面図である。
図3図3は、実施の形態に係る半導体レーザ素子を示す上面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線における、実施の形態に係る半導体レーザ素子を示す断面図である。
図5図5は、実施の形態に係る半導体レーザ素子における発振波長に対する発振しきい値電流密度を示すグラフである。
図6図6は、実施の形態に係る半導体レーザ素子における発振波長に対するストライプ幅を示すグラフである。
図7A図7Aは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の第1工程を示す模式的な断面図である。
図7B図7Bは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の第2工程を示す模式的な断面図である。
図7C図7Cは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の第3工程を示す模式的な断面図である。
図7D図7Dは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の第4工程を示す模式的な断面図である。
図7E図7Eは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の第5工程を示す模式的な断面図である。
図7F図7Fは、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の第6工程を示す模式的な断面図である。
図8図8は、変形例に係る半導体レーザ素子を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
本開示に係る半導体レーザ装置は、例えば、レーザ加工用の光源として用いられる。
【0012】
レーザ加工は、金属、樹脂、炭素繊維等の加工対象素材に対して、制御性よく、クリーンに溶接、切断、改質等をできる手段として注目されている。レーザ加工によれば、例えば、アーク放電に比べて小さなスポット溶接が可能な点、金型を使った切断に比べて切り屑の発生を抑制できる点等により、高品質な加工を実現できる。
【0013】
このようなレーザ加工を行うレーザ加工機には、半導体レーザ装置から出射されるレーザ光を直接用いるDDL(Direct Diode Laser)方式が採用される場合がある。
【0014】
DDL方式は、(i)レーザ光を変換しないため高効率であり、(b)半導体レーザ装置が備える半導体レーザ素子に採用される材料が適切に選択されることで、波長が紫外から赤外までの任意のレーザ光で加工が可能である、という2つの特徴を有する。近年、DDL方式では、窒化物半導体(GaN、InGaN、AlGaN等)を用いた、波長が400nm帯のレーザ光を出射する半導体レーザ素子を備える半導体レーザ装置が、銅を高効率で加工できる点で特に注目されている。
【0015】
一般に、半導体レーザ素子の発光部(活性層)であるエミッタの幅(例えば、リッジ部の幅)を広げることで、当該発光部に投入できる電力を増やすことができる。
【0016】
これにより、半導体レーザ素子の出力(光出力)を上げることができる。
【0017】
しかしながら、半導体レーザ素子の発光効率は、30%~50%である。発光に寄与しない電力は、熱になってエミッタの温度を上昇させる。この温度上昇は、半導体レーザ素子に光出射による熱飽和を生じさせ、半導体レーザ素子の出力の向上に悪影響を及ぼす。
【0018】
そこで、1つの基板上に複数のエミッタが形成されたアレイ構造(マルチエミッタともいう)を有する半導体レーザアレイがある。
【0019】
半導体レーザアレイでは、各エミッタから出射された複数のレーザ光を加工用に用いるために、当該複数のレーザ光を1つのレーザ光に纏める必要がある。例えば、半導体レーザアレイにおける互いに異なる発光点から出射された複数のレーザ光は、1点で加工対象素材に照射される必要がある。そのため、例えば、複数のレーザ光の光軸が揃えられる必要がある。
【0020】
例えば、複数のレーザ光を1つの光軸に揃える(言い換えると、1つの光路を通過するように纏める)方法として、波長合成法がある。波長合成法は、半導体レーザアレイから出射された複数のレーザ光のそれぞれの光軸を同一の光軸を集める方法であり、ビーム品質が高い(例えば、加工対象素材において複数のレーザ光の光スポットの位置及び形状が揃いやすい)という特徴を有する。
【0021】
ここで、波長合成法の原理について説明する。
【0022】
周期dを有する回折格子にN本のレーザ光が入射するとき、各レーザ光の波長をλiとし、回折格子に入射するレーザ光の入射角をθi、(i=1、2、・・・、N)とし、0を除く任意の整数をmとした場合、下記の式(1)を満たす。
【0023】
d×(sinθi+sinθ0)=mλi 式(1)
【0024】
上記の式(1)が満たされれば、出射角θ0の方向にレーザ光が出射されることが、一般的な回折現象として導かれる。すなわち、ビーム品質を劣化させることなく、同軸上に(つまり、1つの光軸上に)複数のレーザ光を合成(合波)できる。
【0025】
このような波長合成法による半導体レーザ素子の比較例を説明する。
【0026】
図1は、比較例に係る半導体レーザ素子を示す上面図である。
【0027】
なお、図1に示す比較例に係る半導体レーザ素子1010、1011、1012を有する半導体レーザアレイ1000は、GaN(Gallium Nitride)系半導体レーザ素子である。また、以下で説明する比較例は、半導体レーザアレイ1000と出力カプラ(ハーフミラー等の光学系)とで外部共振する、外部共振器型の波長合成法であるが、図1では、出力カプラの図示を省略している。
【0028】
外部共振を利用する波長合成法では、複数の半導体レーザ素子1010、1011、1012を整列させ(図1に示す比較例では、半導体レーザアレイ1000)、コリメータ光学系(コリメータレンズ)1060と回折格子を有する波長分散素子(不図示)とは、半導体レーザアレイ1000と出力カプラとの間に配置される。
【0029】
これにより、出力カプラで互いに波長が異なる複数の光が重畳される。出力カプラで重畳された一部の光は、出力カプラから半導体レーザアレイ1000に向かう方向へと反射され、往路と逆の経路(光路)を通過して半導体レーザアレイ1000へと帰還する。
【0030】
上記した特許文献1では、近赤外波長の砒化物半導体(GaAs(Gallium Arsenide)、AlGaAs(Aluminium Gallium Arsenide)、InGaAs(Indium Gallium Arsenide)等)を用い、且つ、DDL方式が採用された波長合成法によるシステムが提案されている。特許文献1に開示されたシステムのように、多数のエミッタそれぞれからの光を合波する際には、各エミッタから均一に且つ高い出力の光を出射させることが重要である。特許文献1で開示された構成では、出力カプラに入射された光の一部は、出力カプラから半導体レーザ素子に向かう方向、具体的には、光学系を往路と逆の経路で半導体レーザ素子へと帰還する、このような光は、コリメータ光学系で集光されて半導体レーザ素子の端面に照射される。
【0031】
ここで、コリメータ光学系が同一であっても、帰還する光の波長が波長分散光学系(回折格子)で選択された異なる波長であるため、コリメータレンズから半導体レーザ素子の端面に照射される光は、異なる焦点深度を有する。
【0032】
例えば、図1に示すように、出力カプラで反射された光1040は、半導体レーザ素子1010に入射される。また、出力カプラで反射された光1041は、半導体レーザ素子1011に入射される。出力カプラで反射された光1042は、半導体レーザ素子1012に入射される。光1040、1041、1042は、例えば、波長分散素子によって、互いに異なる波長の光となっている。ここで、図1に示すように、光1040、1041、1042の波長によって、半導体レーザ素子1010、1011、1012の端面における光の広がり幅が異なるため、半導体レーザ素子1010、1011、1012のそれぞれの導波路1030、1031、1032内の導波モードへと結合する光の割合が半導体レーザ素子1010、1011、1012ごとに異なってしまう。
【0033】
また、ある波長で発振する半導体レーザ素子へと帰還する光の幅を導波モードへの結合効率が高くなるように設計しても、別の波長で発振する半導体レーザ素子においては、結合効率が高くなるレーザ光の適切な幅が異なるため、結合効率が高くならない。
【0034】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、半導体レーザ素子の導波路のサイズを出射する光の波長に応じて適切に設定することで、導波路における導波モードの結合効率を、当該光の波長によらず大きく保つことができることを見出した。また、本願発明者らは、鋭意検討した結果、半導体レーザ素子に投入される電流を狭窄するためのストライプ構造のサイズを適切に設定することで、発振しきい値を調整できることを見出した。
【0035】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、及び、構成要素の配置位置や接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。
【0036】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0037】
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合にも適用される。
【0038】
また、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、Z軸方向を鉛直方向とし、Z軸に垂直な方向(XY平面に平行な方向)を水平方向としている。また、本明細書において、Z軸正方向を上方と記載し、Z軸負方向を下方と記載する場合がある。また、本明細書において、半導体レーザ素子が光を出射する向きをY軸正方向として記載する場合がある。
【0039】
また、本明細書において、寸法等について記載されている数値は、完全に当該数値であることを意味するだけでなく、数%程度、例えば、5%の差異を含むことを意味する。
【0040】
(実施の形態)
[半導体レーザ装置の構成]
図2は、実施の形態に係る半導体レーザ装置を示す上面図である。
【0041】
半導体レーザ装置100は、レーザ光を出力する光源である。レーザ光は、例えば、400nm~450nm程度の波長であり、複数のレーザ光が合波されて1つの光路で(例えば、複数のレーザ光の光軸が揃えられて)半導体レーザ装置100から出射される。
【0042】
半導体レーザ装置100は、複数の半導体レーザアレイ200、201、202と、コリメータ光学系(コリメータレンズ)260、261、262と、合波器(波長分散素子)270と、外部共振器(ハーフミラー)280と、を備える。
【0043】
複数の半導体レーザアレイ200、201、202は、それぞれ、複数の光(レーザ光)を出射する半導体レーザ光源である。複数の半導体レーザアレイ200、201、202は、それぞれ、1つの発光点を有する、つまり、1本のレーザ光を出射する半導体レーザ素子を複数備える。複数の半導体レーザアレイ200、201、202は、それぞれ、このような複数の半導体レーザ素子が一体に形成された半導体レーザアレイである。
【0044】
コリメータ光学系260、261、262は、それぞれ、半導体レーザアレイから出射されたレーザ光をコリメートするコリメータレンズである。コリメータ光学系260、261、262は、それぞれ、例えば、速軸コリメータレンズ(FAC/Fast Axis Collimator)と、遅軸コリメータレンズ(SAC/Slow Axis Collimator)とを備える。
【0045】
合波器270は、半導体レーザアレイ200、201、202のそれぞれから出射されたレーザ光を合波して出射する光学系である。本実施の形態では、合波器270は、波長分散素子を有する。
【0046】
波長分散素子は、回折格子を有する光学系である。波長分散素子は、入射された光の波長に応じた角度で光を反射させる。そのため、波長分散素子によれば、波長の異なる複数のレーザ光を1本のレーザ光として出射できる。また、波長分散素子によれば、複数の波長の光を含む1本のレーザ光を波長ごとに異なる角度で出射できる。
【0047】
なお、本実施の形態では、反射型の波長分散素子を例示しているが、透過型の波長分散素子でもよい。
【0048】
外部共振器280は、入射したレーザ光の一部を透過し、他部を反射するハーフミラーである。外部共振器280で反射されたレーザ光は、合波器270及びコリメータ光学系260を介して半導体レーザアレイ200、201、202に戻る。半導体レーザアレイ200、201、202に戻ったレーザ光は、半導体レーザアレイ200、201、202の内部(より具体的には、導波路)を通過して、半導体レーザアレイ200、201、202の反射面(レーザ光を出射する出射端面と反対側の面)で反射される。反射されたレーザ光は、半導体レーザアレイ200、201、202の内部(より具体的には、導波路)を通過して、半導体レーザアレイ200、201、202の出射端面から出射される。
【0049】
このように、半導体レーザアレイ200、201、202の反射面と、外部共振器280との間で共振されたレーザ光が半導体レーザ装置100から出射される。
【0050】
[半導体レーザ素子の構成]
続いて、図2図4を参照しながら、実施の形態に係る半導体レーザ素子の構成について説明する。なお、半導体レーザ装置100が備える半導体レーザアレイ200、201、202の構造は、後述するストライプ幅以外は実質的に同じであるため、半導体レーザアレイ200の構造について詳細に説明する。
【0051】
半導体レーザ装置100は、第1導電型半導体層と、活性層と、第1導電型とは異なる第2導電型半導体層とがこの順に積層された半導体レーザ素子を複数備える。本実施の形態では、半導体レーザ装置100が備える複数の半導体レーザ素子は、半導体レーザ素子(第1半導体レーザ素子)10と、半導体レーザ素子(第2半導体レーザ素子)11と、半導体レーザ素子(第3半導体レーザ素子)12と、を含む。また、本実施の形態では、半導体レーザ装置100は、複数の半導体レーザ素子が一体に形成された半導体レーザアレイを備える。具体的には、半導体レーザ装置100は、半導体レーザ素子10と、半導体レーザ素子11と、半導体レーザ素子12とが一体に形成された半導体レーザアレイ200を備える。なお、半導体レーザアレイ200が備える半導体レーザ素子の数は、複数であればよく、特に限定されない。
【0052】
図3は、実施の形態に係る半導体レーザ素子を示す上面図である。
【0053】
半導体レーザアレイ200が有する複数の半導体レーザ素子10、11、12は、それぞれ、第1導電型半導体層と、活性層と、第2導電型半導体層と、リッジ部(ストライプ構造)と、を備える。具体的には、半導体レーザ素子10は、第1導電型半導体層と、活性層(第1活性層)103と、第2導電型半導体層と、リッジ部(第1ストライプ構造)10Rと、を備える。また、半導体レーザ素子11は、第1導電型半導体層と、第2活性層103a(図4参照)と、第2導電型半導体層と、リッジ部(第2ストライプ構造)11Rと、を備える。また、半導体レーザ素子12は、第1導電型半導体層と、第3活性層103b(図4参照)と、第2導電型半導体層と、リッジ部12Rと、を備える。本実施の形態では、半導体レーザ素子10、11、12のそれぞれの第1導電型半導体層、活性層、第2導電型半導体層は、それぞれ一体に(1つの層として)形成されている。
【0054】
リッジ部10R、11R、12Rは、それぞれ、半導体レーザ素子10、11、12がそれぞれ有する活性層に流れる電流を狭窄するために半導体レーザ素子10、11、12に形成された狭窄部である。リッジ部10R、11R、12Rは、光の出射方向(本実施の形態では、Y軸方向)に延在している。リッジ部10R、11R、12Rの下方には、導波路が形成されており、当該導波路を導波して出射端面240から光が出射される。導波路は、第1導電型半導体層と、活性層と、第2導電型半導体層とによって形成される光の導波部である。
【0055】
具体的には、半導体レーザ素子10は、第1活性層103に流す電流を狭窄するためのリッジ部10Rを有し、第1光(光400)を出射する。また、半導体レーザ素子11は、第2活性層103aに流す電流を狭窄するためのリッジ部11Rを有し、光400とは波長が異なる第2光(光401)を出射する。また、半導体レーザ素子12は、第3活性層103bに流す電流を狭窄するためのリッジ部12Rを有し、光400、401とは波長が異なる第3光(光402)を出射する。
【0056】
コリメータ光学系260は、半導体レーザ素子10、11、12のそれぞれから出射された光400、401、402をそれぞれコリメートして合波器270に出射する。具体的に例えば、コリメータ光学系は、半導体レーザ素子10、半導体レーザ素子11、及び、半導体レーザ素子12と、外部共振器280との間に、光400、401、402のそれぞれをコリメートするコリメータレンズである。また、本実施の形態では、半導体レーザ素子10における光400を出射する第1端面と、半導体レーザ素子11における光401を出射する第2端面と、半導体レーザ素子12における光402を出射する第3端面とは、同じ端面(出射端面240)である。本実施の形態では、第1端面とコリメータ光学系260との距離と、第2端面とコリメータ光学系260との距離と、第3端面とコリメータ光学系260との距離とは、等しく距離L10である。また、コリメータ光学系260は、外部共振器280で反射されて且つ合波器270で分波されることで入射された光(帰還光)を半導体レーザ素子10、11、12のそれぞれに集光して出射する。
【0057】
本実施の形態では、コリメータ光学系260は、半導体レーザ素子10から出射された光400をコリメートするレンズ部と、半導体レーザ素子11から出射された光401をコリメートするレンズ部と、半導体レーザ素子12から出射された光402をコリメートするレンズ部と、が一体に形成されているが、別体に形成されていてもよい。本実施の形態では、各レンズ部は、同じ材料で同じ形状(例えば、レンズ面が同じ曲率)に形成されている。
【0058】
合波器270は、コリメータ光学系260から出射された光400、401、402を合波して外部共振器280に出射する。本実施の形態では、合波器270は、光400、401、402を合波して出射する回折格子を有する波長分散素子を有する。また、合波器270は、外部共振器280で反射されることで入射された光を分波してコリメータ光学系260に出射する。
【0059】
外部共振器280は、合波器270を介して半導体レーザ素子10との間で光400を共振させ、合波器270を介して半導体レーザ素子11との間で光401を共振させ、且つ、合波器270を介して半導体レーザ素子12との間で光402を共振させる。本実施の形態では、外部共振器280は、光400、401、402のそれぞれの一部を透過し、且つ、他部を反射するハーフミラーである。
【0060】
また、図2に示す外部共振器280で反射された光は、出射端面240から入射して当該導波路を導波して反射端面250で反射されて、さらに、当該導波路を導波して出射端面240から出射される。例えば、半導体レーザ素子10と、半導体レーザ素子11と、半導体レーザ素子12とでは、異なる波長の光が入射及び出射される。具体的には、半導体レーザ素子10で入射及び出射される光400と、半導体レーザ素子11で入射及び出射される光401と、半導体レーザ素子12で入射及び出射される光402とでは、波長が異なる。
【0061】
そのため、同じコリメータ光学系260を用い、且つ、コリメータ光学系260と出射端面240との距離が同じである場合、半導体レーザ素子10と、半導体レーザ素子11と、半導体レーザ素子12とでは、出射端面240において、光400と、光401と、光402とのスポット径が異なる。
【0062】
また、リッジ部10Rと、リッジ部11Rと、リッジ部12Rとは、幅(本実施の形態では、X軸方向の長さ)が互いに異なる。例えば、リッジ部10R、11R、12Rの幅は、それぞれ、光400、401、402の出射端面240におけるスポット径に応じたサイズとなっている。具体的には、積層方向から見た場合(本実施の形態では、Z軸正方向側から半導体レーザアレイ200を見た場合)に、半導体レーザ素子10における光400を出射する第1端面でのリッジ部10Rの幅であるストライプ幅(幅L0)と、半導体レーザ素子11における光401を出射する第2端面でのリッジ部11Rの幅である第2ストライプ幅(幅L1)と、半導体レーザ素子12における光402を出射する端面でのリッジ部12Rの幅である第3ストライプ幅(幅L2)とは、互いに異なる。なお、本実施の形態では、ここでの幅とは、X軸方向の長さである。
【0063】
また、半導体レーザアレイ200が備える半導体レーザ素子10、11、12におけるリッジ部10R、11R、12Rは、出射する波長が短い方が、幅が小さい。本実施の形態では、光401は、光400よりも波長が長い。また、光402は、光401よりも波長が長い。本実施の形態では、例えば、光400と光401とは、波長が0.1~0.3nm程度離れている。光401と光402とは、波長が0.1~0.3nm程度離れている。光400と、光401と、光402とのそれぞれの波長の差は、特に限定されない。
【0064】
また、積層方向からに見た場合に、出射端面240での幅L0は、出射端面240での幅L1よりも、小さい。また、積層方向からに見た場合に、出射端面240での幅L1は、出射端面240での幅L2よりも、小さい。
【0065】
なお、本実施の形態では、積層方向から見た場合に、リッジ部10R、11R、12Rは、それぞれ、半導体レーザ素子10、11、12のそれぞれの光400、401、402の出射方向(本実施の形態では、Y軸方向)に幅L0、L1、L2でそれぞれ一様に延在している。例えば、リッジ部R10は、半導体レーザ素子10における光400の出射方向に幅L0で一様に延在している。また、例えば、リッジ部11Rは、半導体レーザ素子11における光401の出射方向に幅L1で一様に延在している。また、例えば、リッジ部12Rは、半導体レーザ素子12における光402の出射方向に幅L2で一様に延在している。
【0066】
図4は、実施の形態に係る半導体レーザ素子を示す断面図である。具体的には、図4には、図3のIV-IV線における、実施の形態に係る半導体レーザ素子を複数有する半導体レーザ素子アレイ200の断面を示している。なお、半導体レーザ素子10、11、12は、それぞれ導波路10L、11L、12Lを有し、リッジ部10R、11R、12Rの幅L0、L1、L2以外については、同様の層構造を有する。そのため、以下では、半導体レーザ素子10の構造について詳細に説明する。
【0067】
半導体レーザ素子10は、共振器を形成する光出射側端面(図3に示す出射端面240)及び光反射側端面(図3に示す反射端面250)を有するレーザ素子である。
【0068】
半導体レーザ素子10は、基板101と、積層構造体と、第2導電側電極107と、パッド電極108と、第1導電側電極109と、を備える。当該積層構造体は、第1導電型半導体層である第1導電型クラッド層102、活性層(第1活性層)103、及び、第2導電型半導体層である第2導電型クラッド層104を含む。本実施の形態では、当該積層構造体は、コンタクト層105と、絶縁層106と、をさらに含む。当該積層構造体の一方側の端面と他方側の端面との間に導波路10Lが形成される。当該積層構造体の一方側の端面(例えば、出射端面240)には光出射側端面コート膜(不図示)が配置され、他方側の端面(例えば、反射端面250)には光反射側端面コート膜(不図示)が配置される。
【0069】
これにより、当該積層構造体の一方側の端面は、光出射側端面となり、他方側の端面は、光反射側の端面となる。
【0070】
基板101は、半導体レーザ素子10の基材である。本実施の形態では、基板101は、GaN単結晶基板である。基板101は、GaN単結晶基板に限定されず、窒化物半導体層を積層し得る基板であればよい。例えば、基板101は、SiC基板、サファイア基板等であってもよい。
【0071】
第1導電型クラッド層102は、基板101の上方に配置される第1導電型の半導体からなるクラッド層である。本実施の形態では、第1導電型クラッド層102は、Siがドープされ、3μmの膜厚を有するn型のAlGa1-xN(x=0.03)層である。例えば、第1導電型クラッド層102におけるSi濃度は、1×1017cm-3である。
【0072】
活性層103は、第1導電型クラッド層102の上方に配置され、Inを含む窒化物半導体からなる発光層である。本実施の形態では、活性層103は、5nmの膜厚を有し、InGa1-xNからなる井戸層と、10nmの膜厚を有し、GaNからなる障壁層とが交互に2層ずつ積層された量子井戸活性層を含む。
【0073】
なお、活性層103の構成は、これに限定されない。活性層103は、量子井戸活性層の上方及び下方の少なくとも一方に形成されたガイド層を含んでもよい。
【0074】
第2導電型クラッド層104は、活性層103の上方に配置され、第2導電型の窒化物半導体からなるクラッド層である。本実施の形態では、第2導電型クラッド層104は、Mgがドープされたp型のAlGaN/GaN超格子層を含む。例えば、第2導電型クラッド層104におけるMg濃度は、1×1019cm-3である。また、例えば、AlGaN/GaN超格子層は、Alの平均組成比が3%であり、3nmの膜厚を有するAlGaN層と、3nmの膜厚を有するGaN層とが交互にそれぞれ100層積層された層である。
【0075】
コンタクト層105は、第2導電型クラッド層104の上方に配置され、第2導電型の窒化物半導体からなる層である。本実施の形態では、コンタクト層105は、Mgがドープされ、5nmの膜厚を有するGaN層である。例えば、コンタクト層105におけるMg濃度は1×1020cm-3である。
【0076】
なお、例えば、第1導電型は、n型であり、第2導電型は、p型である。もちろん、第1導電型が、p型であり、第2導電型が、n型でもよい。
【0077】
絶縁層106は、第2導電型クラッド層104の上方に配置される絶縁材料からなる層である。本実施の形態では、絶縁層106は、コンタクト層105の側面及び第2導電型クラッド層104の上面に配置され、200nmの膜厚を有するSiOからなる層である。
【0078】
第2導電側電極107は、コンタクト層105の上方に配置される導電材料からなる層である。第2導電側電極107は、コンタクト層105と接触する。本実施の形態では、第2導電側電極107は、コンタクト層105側から順にPd及びPtが積層された積層膜である。
【0079】
なお、第2導電側電極107の構成はこれに限定されない。第2導電側電極107は、例えば、Cr、Ti、Ni、Pd、Pt及びAuの少なくとも一つで形成された単層膜又は多層膜であってもよい。本実施の形態では、第2導電側電極107の幅は、30μmである。ここで、第2導電側電極107の幅とは、基板101の主面(Z軸正方向側の面)に平行で、半導体レーザ素子10の共振方向に垂直な方向における第2導電側電極107の寸法のことを意味する。
【0080】
なお、第2導電側電極107の幅は30μmに限定されず、10μm以上150μm以下であればよい。また、第2導電側電極107は、絶縁層106上にも形成されてもよい。
【0081】
パッド電極108は、第2導電側電極107の上方に配置されたパッド状の電極である。本実施の形態では、パッド電極108は、第2導電側電極107側から順にTi及びAuが積層された積層膜である。
【0082】
なお、パッド電極108の構成はこれに限定されない。パッド電極108は、例えば、Ti及びAu、Ti、Pt及びAu、Ni及びAu等の積層膜であってもよい。
【0083】
第1導電側電極109は、基板101の下方に配置される電極である。本実施の形態では、第1導電側電極109は、基板101側から順にTi、Pt及びAuが積層された積層膜である。
【0084】
なお、第1導電側電極109の構成はこれに限定されない。第1導電側電極109は、例えば、Ti及びAu、Ti、Pt及びAu等の積層膜であってもよい。
【0085】
また、半導体レーザ素子10は、リッジ部10R、及び、導波路10Lを有する。
【0086】
リッジ部10Rは、活性層103に流れる電流を狭窄するために半導体レーザ素子10に形成された狭窄部である。リッジ部10Rは、例えば、第2導電型クラッド層104の一部である。リッジ部10Rは、Y軸方向に延在している。
【0087】
導波路10Lは、半導体レーザ素子10の内部で光が導波する部分である。導波路10Lは、例えば、第1導電型クラッド層102の一部と、活性層103の一部と、第2導電型クラッド層104の一部とからなる。リッジ部10Rによって活性層103に流れる電流が狭窄されることにより、活性層103において光が生成される位置が決まる。そのため、断面視した場合(例えば、図4の断面を見た場合)、例えば、リッジ部10Rの幅(Y軸方向の長さ)は、導波路の10Lの幅(Y軸方向の長さ)と略同一となる。また、半導体レーザ素子10から出射される光400の発光点(出射端面240における光出射部分)のX軸方向の幅は、導波路10LのX軸方向の幅、及び、リッジ部10Rの幅L0と、凡そ同じになる。
【0088】
なお、上記したように、半導体レーザ装置100が備える半導体レーザアレイ201、202の構造は、半導体レーザアレイ200とストライプ幅以外は実質的に同じである。例えば、半導体レーザアレイ201は、半導体レーザアレイ200が備える複数のリッジ部とストライプ幅が異なり、且つ、互いにストライプ幅が異なる複数のリッジ部を備える。また、例えば、半導体レーザアレイ202は、半導体レーザアレイ200、201が備える複数のリッジ部とストライプ幅が異なり、且つ、互いにストライプ幅が異なる複数のリッジ部を備える。
【0089】
[検討結果]
図5は、実施の形態に係る半導体レーザ素子における発振波長に対する発振しきい値電流密度を示すグラフである。なお、図5には、計算結果(破線で図示)及び実験結果(○で図示)を示している。図5に示すグラフにおいて、横軸は、半導体レーザ素子から出射させるレーザ光の波長(発振波長)であり、縦軸は、対応する波長のレーザ光を半導体レーザ素子に発振させるための、積層方向から見た場合のリッジ部の単位面積あたりの電流密度のしきい値(発振しきい値電流密度)である。図5における計算結果及び実験結果は、いずれも活性層にInGaNを用い、共振器長を2mmとした場合の結果である。また、図5に示す計算結果を得るための計算では、非特許文献1に記載の物性パラメータを用い、非特許文献2に記載のk・p摂動を用いたバンド計算を、非特許文献3に記載の古典的レーザ理論に適用して実施している。
【0090】
図5に示されるように、実験結果及び計算結果のいずれの場合においても、450nm程度までは、発振波長が長波長化するにつれて、単位面積あたりの発振しきい値電流密度が低下する。
【0091】
例えば、上記した特許文献1に開示されている構成で、上記した波長分散素子を用いた波長合成法による400nm帯(例えば、400nm~450nm)の波長を出射するDDL方式の半導体レーザ装置を備える加工機システムを構築する場合、当該半導体レーザ装置は、例えば、400nm帯で発振するエミッタを多数有する必要がある。
【0092】
400nm帯のレーザ光を出射する半導体レーザ素子には、例えば、活性層にInGaN系半導体が用いられる。
【0093】
InGaN系半導体では、In組成を増加させることで発振波長を長波長化させることができる。一方、In組成を増加させることで、半導体のバンド構造の変化等に起因して、発振しきい値電流密度が低下する。そのため、複数の半導体レーザ素子ごとに発振しきい値電流密度が異なるために、単位面積あたりに複数の半導体レーザ素子ごとに投入すべき電流量(発振しきい値)が異なるという課題がある。
【0094】
ここで、発振しきい値は、活性層に導入する電流量を上げることができれば、それに伴って上げることができる。例えば、積層方向から見た場合に、リッジ部の面積を大きくすることで、活性層に導入する電流量を上げることができる。一方、例えば、積層方向から見た場合に、リッジ部の面積を小さくすることで、活性層に導入する電流量を下げることができる。つまり、複数の半導体レーザ素子のそれぞれのリッジ部のサイズを適切に設定することで、複数の半導体レーザ素子のそれぞれの発振しきい値を揃えることができる。
【0095】
図6は、実施の形態に係る半導体レーザ素子における発振波長に対するストライプ幅(例えば、リッジ部の幅)を示すグラフである。図6に示すグラフにおいて、横軸は、発振波長であり、縦軸は、対応する波長のレーザ光を半導体レーザ素子に出射させる場合に、発光効率がよい(例えば、85%以上の発光効率とすることができる)好適なストライプの幅である。また、図6は、ストライプ幅が一様に延在している場合のグラフである。また、図6は、共振器長(例えば、図3に示す半導体レーザ素子10のY軸方向の長さ)は一定としている。
【0096】
図6に示されるように、発振波長が長波長化するにつれて、好適なストライプ幅も大きくなる。
【0097】
そのため、例えば、共振器長が同じであれは、発振波長が長波長である程、リッジ幅を広くすることで、半導体レーザ素子に入射される光と導波路との結合効率を高くできる。
【0098】
以上の結果から、例えば、積層方向から見た場合のリッジ部のサイズを適切にすることにより、各半導体レーザ素子の発振しきい値を揃え、且つ、結合効率がよい半導体レーザ装置が実現され得る。
【0099】
[製造方法]
続いて、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の概要について、図面を用いて説明する。
【0100】
図7A図7Fは、それぞれ、実施の形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の各工程を示す断面図である。なお、図7A図7Fにおいては、図4に対応する断面における、半導体レーザ素子10の拡大図を示している。
【0101】
まず、図7Aに示されるように、基板101を準備し、基板101上に、基板101側から順に、第1導電型クラッド層102、活性層103、第2導電型クラッド層104及びコンタクト層105を形成する。本実施の形態では、有機金属気相成長法(MOCVD/Metal Oxide Chemical Vapor Deposition)により、各層の成膜を行う。
【0102】
次に、図7Bに示されるように、コンタクト層105上に、SiO等からなるマスク110を形成する。本実施の形態では、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により、膜厚300nm程度のマスク110を形成する。
【0103】
次に、図7Cに示されるように、マスク110をパターニングする。本実施の形態では、フォトリソグラフィー及びエッチングを用いて、マスク110の一部を選択的に除去する。これにより、帯状のマスク110を形成する。
【0104】
次に、図7Dに示されるように、帯状に形成されたマスク110を用いて、コンタクト層105及び第2導電型クラッド層104をエッチングすることで、コンタクト層105及び第2導電型クラッド層104にリッジ部10Rを形成する。コンタクト層105及び第2導電型クラッド層104のエッチングとしては、例えば、Cl等の塩素系ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)法によるドライエッチングを用いるとよい。また、マスク110をフッ酸等のウェットエッチングによって除去する。
【0105】
次に、図7Eに示されるように、コンタクト層105及び第2導電型クラッド層104を覆うように、絶縁層106を成膜する。絶縁層106としては、プラズマCVDにより、膜厚300nmのSiOを形成する。
【0106】
次に、フォトリソグラフィーとウェットエッチングにより、リッジ部10R上の絶縁層106のみを除去して、コンタクト層105の上面を露出させる。
【0107】
次に、真空蒸着法及びリフトオフ法を用いて、コンタクト層105上に第2導電側電極107を形成する。
【0108】
次に、第2導電側電極107及び絶縁層106を覆うようにパッド電極108を形成する。具体的には、フォトリソグラフィー等によって、パッド電極108を形成しない部分にレジストをパターニングし、基板101の上方の全面に真空蒸着法などによってパッド電極108を形成し、リフトオフ法を用いて不要な部分を除去する。これにより、所定形状のパッド電極108を形成する。
【0109】
以上の工程により、図7Fに示されるように、半導体レーザ素子10が形成される。
【0110】
[効果等]
以上説明したように、実施の形態に係る半導体レーザ装置100は、第1導電型半導体層、活性層、及び、第2導電型半導体層がこの順に積層された半導体レーザ素子を複数備える半導体レーザ装置である。半導体レーザ装置100が備える複数の半導体レーザ素子は、第1活性層103に流す電流を狭窄するための第1ストライプ構造(例えば、リッジ部10R)を有し、光400を出射する半導体レーザ素子10と、第2活性層103aに流す電流を狭窄するための第2ストライプ構造(例えば、リッジ部11R)を有し、光400よりも波長が長い光401を出射する半導体レーザ素子11と、を含む。また、半導体レーザ装置100は、半導体レーザ素子10との間で光400を共振させ、且つ、半導体レーザ素子11との間で光401を共振させる外部共振器280を備える。積層方向から見た場合に、半導体レーザ素子10における光400を出射する第1端面(出射端面240)での第1ストライプ構造の幅である第1ストライプ幅(例えば、幅L0)は、半導体レーザ素子11における光401を出射する第2端面(出射端面240)での第2ストライプ構造の幅である第2ストライプ幅(例えば、幅L1)よりも、小さい。
【0111】
このように、例えば、互いに異なる波長の光を出射する複数の半導体レーザ素子のうち、長波長側の光を出射する半導体レーザ素子のストライプ幅を広くし、短波長側の光を出射する半導体レーザ素子のストライプ幅を狭くする。例えば、半導体レーザ素子10、11のうち、半導体レーザ素子11のリッジ部11Rの幅L1を、半導体レーザ素子10のリッジ部10Rの幅L0よりも広くする。これにより、出射する光の波長が長い半導体レーザ素子において、発振しきい値を上げることができる。或いは、出射する光の波長が短い半導体レーザ素子において、発振しきい値を下げることができる。そのため、互いに異なる波長の光を出射する複数の半導体レーザ素子の発振しきい値を近づけることができる。また、このような構成によれば、例えば、外部共振器280から戻る光(帰還光)のスポット径が広い半導体レーザ素子11の第1端面における導波路は、半導体レーザ素子10の第2端面における導波路よりも広くなる。そのため、帰還光と導波路との結合効率を、半導体レーザ素子10、11のいずれにおいても高くできる。以上のように、半導体レーザ装置100によれば、複数の半導体レーザ素子を備える外部共振器型の半導体レーザ装置において、当該複数の半導体レーザ素子のそれぞれの発振しきい値を近づけることができる。さらに、半導体レーザ装置100によれば、帰還光と導波路との結合効率を、半導体レーザ素子10、11のいずれにおいても高くできるため、投入電力に対する光出力、つまり、発光効率を高くできる。
【0112】
また、例えば、積層方向から見た場合に、リッジ部10Rは、半導体レーザ素子10における光400の出射方向に幅L0で一様に延在しており、リッジ部11Rは、半導体レーザ素子11における光401の出射方向に幅L1で一様に延在している。
【0113】
これによれば、部分的にリッジ部10R、11Rの幅を変える場合と比較して、半導体レーザ素子10、11を製造しやすくできる。
【0114】
また、例えば、半導体レーザ素子10と半導体レーザ素子11とが一体に形成された半導体レーザアレイ200を備える。
【0115】
これによれば、例えば、半導体レーザ素子10と半導体レーザ素子11とが別体の場合と比較して、半導体レーザ素子10及び半導体レーザ素子11と、外部共振器280等の半導体レーザ装置100が備える光学系との位置合わせがしやすい。
【0116】
また、例えば、外部共振器280は、光400及び光401のそれぞれの一部を透過し、且つ、他部を反射するハーフミラーを備える。
【0117】
これによれば、半導体レーザ素子10、11と、外部共振器280との間で、簡便な構成で外部共振が発生し得る。
【0118】
また、例えば、半導体レーザ装置100は、さらに、光400と光401とを合波して出射する合波器270を備える。つまり、合波器270は、光400の光軸と光401の光軸とが同じ光軸上を通過するように、光400と光401とを合波する。
【0119】
これによれば、合波器270によって光400と光401とを同じ箇所に照射することができる。
【0120】
また、例えば、合波器270は、回折格子を有する波長分散素子を有する。
【0121】
波長分散素子を用いた合波によれば、半導体レーザ素子には、位置によって異なる波長の光が入射される。つまり、複数の半導体レーザ素子が出射する光の波長は、互いに異なることになる。上記したように、半導体レーザ装置100によれば、互いに異なる波長の光を出射する複数の半導体レーザ素子のそれぞれの発振しきい値を近づけることができ、且つ、帰還光と導波路との結合効率を、半導体レーザ素子10、11のいずれにおいても高くできるため、投入電力に対する光出力、つまり、発光効率を高くできる。そのため、本願発明は、波長分散素子による合波を用いた外部共振器型の半導体レーザ装置100に特に有用である。
【0122】
また、例えば、半導体レーザ装置100は、さらに、半導体レーザ素子10及び半導体レーザ素子11と、外部共振器280との間に、光400及び光401をコリメートするコリメータレンズ(コリメータ光学系260)を備える。
【0123】
これによれば、半導体レーザ装置100は、コリメート光を出射できる。
【0124】
また、例えば、上記した第1端面とコリメータレンズとの距離と、上記した第2端面とコリメータレンズとの距離とは、等しい。本実施の形態では、当該第1端面と当該第2端面とは、いずれも出射端面240であり、コリメータレンズとの距離がいずれも距離L10である。
【0125】
このように、例えば、同じコリメータレンズを用いて光400、401をコリメートし、且つ、当該コリメータレンズとの距離が同じになるように、半導体レーザ素子10、11が配置されることで、半導体レーザ素子10、11のそれぞれで配置を変更する場合と比較して、製造が容易になる。ここで、例えば、同じコリメータレンズを用いて光400、401をコリメートし、且つ、当該コリメータレンズとの距離が同じになるように、半導体レーザ素子10、11が配置することで、光400の波長と光401の波長とが異なるために、出射端面240における帰還光のスポット径は、光400と光401とで異なる。しかしながら、上記したように、半導体レーザ装置100によれば、帰還光と導波路との結合効率を、半導体レーザ素子10、11のいずれにおいても高くできる。そのため、本願発明は、同じコリメータレンズを用いて光400、401をコリメートし、且つ、当該コリメータレンズとの距離が同じになるように、半導体レーザ素子10、11が配置される半導体レーザ装置100に特に有用である。
【0126】
[変形例]
以下、本開示に係る半導体レーザ装置の変形例について説明する。変形例に係る半導体レーザ装置の説明においては、半導体レーザ装置100と実質的に同一の構成については同一の符号を付し、説明を一部簡略化又は省略する場合がある。なお、変形例に係る半導体レーザ装置は、半導体レーザ装置100と半導体レーザ素子のリッジ部の形状が異なり、他の部分については、実質的に同一である。
【0127】
図8は、変形例に係る半導体レーザ素子を示す上面図である。なお、図8では、断面を示すものではないが、説明のためにリッジ部にハッチングを付して示している。
【0128】
変形例に係る半導体レーザ装置は、第1導電型半導体層と、活性層と、第1導電型とは異なる第2導電型半導体層とがこの順に積層された半導体レーザ素子を複数備える。例えば、変形例に係る半導体レーザ装置は、半導体レーザ素子(第1半導体レーザ素子)13と、半導体レーザ素子(第2半導体レーザ素子)14と、半導体レーザ素子(第3半導体レーザ素子)15とが一体に形成された半導体レーザアレイ203を備える。なお、半導体レーザアレイ203が備える半導体レーザ素子の数は、複数であればよく、特に限定されない。
【0129】
半導体レーザアレイ203が有する複数の半導体レーザ素子13、14、15は、それぞれ、第1導電型半導体層と、活性層と、第2導電型半導体層と、リッジ部(ストライプ構造)と、を備える。具体的には、半導体レーザ素子13は、第1導電型半導体層と、第1活性層103と、第2導電型半導体層と、リッジ部(第1ストライプ構造)13Rと、を備える。また、半導体レーザ素子14は、第1導電型半導体層と、第2活性層103aと、第2導電型半導体層と、リッジ部(第2ストライプ構造)14Rと、を備える。また、半導体レーザ素子15は、第1導電型半導体層と、第3活性層103bと、第2導電型半導体層と、リッジ部(第3ストライプ構造)15Rと、を備える。
【0130】
本変形例では、半導体レーザ素子13、14、15のそれぞれの第1導電型半導体層、活性層、第2導電型半導体層は、それぞれ一体に形成されている。
【0131】
リッジ部13R、14R、15Rは、それぞれ、半導体レーザ素子13、14、15が有する活性層に流れる電流を狭窄するために半導体レーザ素子13、14、15に形成された狭窄部である。リッジ部13R、14R、15Rは、光の出射方向(本変形例では、Y軸方向)に延在している。リッジ部13R、14R、15Rの下方には、導波路が形成されており、当該導波路を導波して出射端面240から光が出射される。
【0132】
具体的には、半導体レーザ素子13は、第1活性層103に流す電流を狭窄するためのリッジ部13Rを有し、第1光(光403)を出射する。また、半導体レーザ素子14は、第2活性層103aに流す電流を狭窄するためのリッジ部14Rを有し、光403とは波長が異なる第2光(光404)を出射する。また、半導体レーザ素子15は、光403、404とは波長が異なる第3光(光405)を出射する。
【0133】
ここで、積層方向から見た場合に、リッジ部13Rは、第1端面(出射端面240)から、半導体レーザ素子13における光403が出射される向きとは反対側(本実施の形態では、Y軸負方向側)に向かうにつれて幅が狭くなる。具体的には、リッジ部13Rは、積層方向から見た場合に、出射端面240から反射端面250に向かうにつれて幅が狭くなる。
【0134】
例えば、積層方向から見た場合に、リッジ部13Rは、半導体レーザ素子13における光403を出射する出射端面240での幅である第1ストライプ幅(幅L3)は、図5に基づいて決定される。これにより、半導体レーザ素子13において、導波路と帰還光との結合効率を高めることができる。また、出射端面240以外の部分でリッジ部13Rの幅を適切に設定することで、発振しきい値を適切に設定できる。上記したように、例えば、積層方向から見た場合に、リッジ部13Rの面積を小さくすることで、発振しきい値を小さくすることができる。そのため、半導体レーザ素子13における光403が出射される向きとは反対側に向かうにつれて幅を狭くすることで、導波路と帰還光との結合効率を高め、且つ、複数の半導体レーザ素子13、14、15のそれぞれの発振しきい値で近づけることができる。また、例えば、積層方向から見た場合に、リッジ部13Rは、Y軸負方向側に向かうにつれて幅が徐々に狭くなるテーパ状を有する。これによれば、急激に幅が狭くなる場合と比較して、導波路における光の損失を少なくできる。
【0135】
なお、図8に示すように、積層方向から見た場合に、リッジ部13Rは、Y軸負方向側に向かうにつれて幅が徐々に狭くなる部分と、幅が一様な部分とを有してもよいし、Y軸負方向側に向かうにつれて幅が徐々に狭くなり続けてもよい。
【0136】
また、リッジ部14Rは、出射端面240から、半導体レーザ素子14における光404が出射される向きとは反対側に向かうにつれて幅が狭くなる。
【0137】
また、リッジ部15Rは、出射端面240から、半導体レーザ素子15における光405が出射される向きとは反対側に向かうにつれて幅が狭くなる。
【0138】
例えば、図3に示す半導体レーザ素子10の発振しきい値は、225mAである。また、例えば、図3に示す半導体レーザ素子11の発振しきい値は、220mAである。図3に示す半導体レーザ素子12の発振しきい値は、218mAである。このように、リッジ部10R、11R、12Rの幅を、帰還光と導波路との結合効率を高くするように一様にすると、発振しきい値は、半導体レーザ素子10と、半導体レーザ素子11と、半導体レーザ素子12とで異なる。
【0139】
ここで、図8に示す半導体レーザ素子13、14、15の発振しきい値は、いずれも218mAである。
【0140】
このように、図8に示すように、出射端面240から、半導体レーザ素子13、14、15における光403、404、405が出射される向きとは反対側に向かうにつれて幅が狭くなる構造とすることで、半導体レーザ素子13、14、15のそれぞれの発振しきい値を近づけることができる。
【0141】
また、リッジ部13R、14R、15Rの幅を出射端面240以外の位置で変更することで、帰還光と導波路との結合効率に影響を与えずに、発振しきい値を制御することができる。
【0142】
なお、リッジ部13R、14R、15Rのうち、一部(例えば、半導体レーザ素子13、14、15のうち、出射する光の波長が最も短い半導体レーザ素子13が有するリッジ部13R)のみが、半導体レーザ素子13における光40が出射される向きとは反対側に向かうにつれて幅が狭くなり、他部(例えば、リッジ部14R、15R)が、半導体レーザ素子における光が出射される方向に幅が一様に延在していてもよい。
【0143】
また、例えば、半導体レーザ素子13、14、15における、出射する光の波長が最も短い半導体レーザ素子13が有するリッジ部13Rが、半導体レーザ素子13における光403が出射される向きとは反対側に向かうにつれて幅が狭くなり、出射する光の波長が最も長い半導体レーザ素子15が有するリッジ部15Rが、半導体レーザ素子15における光405が出射される向きとは反対側に向かうにつれて幅が広くなり、リッジ部14Rが、半導体レーザ素子14における光404が出射される方向に幅が一様に延在していてもよい。
【0144】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る半導体レーザ装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0145】
例えば、上記実施の形態では、ストライプ構造としてリッジ部を例示したが、ストライプ構造は、上記したリッジ部に限定されない。ストライプ構造は、活性層に流す電流を狭窄する構造であればよく、例えば、半導体レーザ素子の内部に電流を狭窄するバリア層として形成されていてもよい。
【0146】
また、例えば、上記実施の形態では、複数の半導体レーザ素子が一体に形成された半導体レーザアレイとして説明したが、複数の半導体レーザ素子は、別体として個々に形成されていてもよい。この場合、例えば、複数の半導体レーザ素子における光の出射端面の位置は、同じ平面上に位置しない等、互いに異なっていてもよい。
【0147】
また、例えば、半導体レーザ装置が複数の半導体レーザアレイを備える場合、複数の半導体レーザ素子を有する半導体レーザアレイにおける当該複数の半導体レーザ素子においては、ストライプ幅が同じであり、且つ、複数の半導体レーザアレイごとにストライプ幅が異なっていてもよい。
【0148】
また、例えば、上記実施の形態では、GaN系半導体レーザアレイを例に記載したが、GaAs系、InP系、又は、II-VI族半導体等の、発光領域の波長を変化させることが可能なGaN系以外の材料を用いた半導体レーザ素子が用いられてもよい。また、例えば、半導体レーザ装置が備える複数の半導体レーザ素子として、GaN系材料を用いた半導体レーザアレイと、GaAs系材料を用いた半導体レーザアレイとを、発振しきい値が近しい値となるように、ストライプ幅を各々相違させたうえで組み合わせて用いてもよい。このように、半導体レーザ装置は、材料が互いに異なり、且つ、ストライプ幅が互いに異なる複数の半導体レーザ素子を備えてもよい。
【0149】
また、例えば、上記実施の形態では、複数のレーザ光を合波するために、合波器として波長分散素子を例示したが、合波器は、波長分散素子に限定されない。合波器は、例えば、プリズムでもよい。或いは、合波器は、VBG(Volume Bragg Grating)でもよい。
【0150】
上記実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本開示の半導体レーザ装置は、レーザ加工に用いられる光源、特に、直接加工用半導体レーザ装置を用いたレーザ加工機の光源に適用できる。
【符号の説明】
【0152】
10、13 半導体レーザ素子(第1半導体レーザ素子)
10L、11L、12L、1020、1021、1022 導波路
10R、13R リッジ部(第1ストライプ構造)
11、14 半導体レーザ素子(第2半導体レーザ素子)
11R、14R リッジ部(第2ストライプ構造)
12、15 半導体レーザ素子(第3半導体レーザ素子)
12R、15R リッジ部(第3ストライプ構造)
100 半導体レーザ装置
101 基板
102 第1導電型クラッド層
103 活性層(第1活性層)
103a 第2活性層
103b 第3活性層
104 第2導電型クラッド層
105 コンタクト層
106 絶縁層
107 第2導電側電極
108 パッド電極
109 第1導電側電極
200、201、202、203、1000 半導体レーザアレイ
240 出射端面
250 反射端面
260、261、262、1060 コリメータ光学系(コリメータレンズ)
270 合波器(波長分散素子)
280 外部共振器(ハーフミラー)
400、401、402、403、404、405、1040、1041、1042 光
1010、1011、1012 半導体レーザ素子
L0、L1、L2、L3、L4、L5 幅
L10 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8