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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】トランスミッション及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/72 20060101AFI20240125BHJP
   F16H 3/58 20060101ALI20240125BHJP
   F16H 47/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16H3/72 A
F16H3/58
F16H47/04 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020037675
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021139435
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】三浦 裕介
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075692(JP,A)
【文献】特開2001-200900(JP,A)
【文献】独国実用新案第202009007972(DE,U1)
【文献】中国実用新案第206234335(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/72
F16H 3/58
F16H 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、前記入力軸に接続された第1ギア機構と、前記第1ギア機構に接続された第1出力ギアと、前記入力軸に接続された第2ギア機構と、前記第2ギア機構に接続された第2出力ギアと、前記第1ギア機構と前記第2ギア機構とに接続され前記入力軸に対する前記第1出力ギアの速度比と前記入力軸に対する前記第2出力ギアの速度比とを無段変速させるモータとを含む無段変速機構と、
第1トランスファ軸と、
第1回転要素と、第2回転要素と、第3回転要素とを含み、前記第1トランスファ軸回りに回転可能な遊星歯車機構と、
第2トランスファ軸と、
前記第2トランスファ軸回りに回転可能な第1被駆動ギアと、
出力軸と、
を備え、
前記第1出力ギアは、前記第1回転要素に接続され、
前記第2出力ギアは、前記第1被駆動ギアを介して、前記第2回転要素に接続され、
前記出力軸は、前記第3回転要素に接続されている、
トランスミッション。
【請求項2】
前記モータの回転速度が、0より大きい所定回転速度で、前記第3回転要素の回転速度は0である、
請求項1に記載のトランスミッション。
【請求項3】
前記第1トランスファ軸は、前記第2トランスファ軸から偏心して配置されている、
請求項1又は2に記載のトランスミッション。
【請求項4】
前記無段変速機構は、前記第1出力ギアに連結された中間軸をさらに含み、
前記第1トランスファ軸は、前記中間軸から偏心して配置されている、
請求項1から3のいずれかに記載のトランスミッション。
【請求項5】
前記第2トランスファ軸は、前記中間軸から偏心して配置されている、
請求項4に記載のトランスミッション。
【請求項6】
前記中間軸は、前記モータに直接的に連結されている、
請求項4又は5に記載のトランスミッション。
【請求項7】
係合状態で前記第1トランスファ軸を前記第3回転要素に連結し、非係合状態で前記第1トランスファ軸を前記第3回転要素と非連結にする第1クラッチをさらに備え、
前記第1クラッチが前記係合状態で、前記出力軸は、前記第1トランスファ軸を介して前記第3回転要素と接続される、
請求項1から6のいずれかに記載のトランスミッション。
【請求項8】
係合状態で前記第2トランスファ軸を前記第1被駆ギアに連結し、非係合状態で前記第2トランスファ軸を前記第1被駆ギアと非連結にする第2クラッチをさらに備え、
前記第1クラッチが前記非係合状態で、且つ、前記第2クラッチが前記係合状態で、前記出力軸は、前記第2トランスファ軸を介して前記第1被駆動ギアと接続される、
請求項7に記載のトランスミッション。
【請求項9】
前記第3回転要素に接続され、前記第2トランスファ軸回りに回転可能な第2被駆動ギアと、
係合状態で前記第2トランスファ軸を前記第2被駆動ギアに連結し、非係合状態で前記第2トランスファ軸を前記第2被駆動ギアと非連結にする第3クラッチと、
をさらに備え、
前記第3クラッチが前記係合状態で、前記出力軸は、前記第2トランスファ軸と前記第2被駆動ギアとを介して、前記第3回転要素と接続される、
請求項1から8のいずれかに記載のトランスミッション。
【請求項10】
係合状態で前記第1トランスファ軸を前記第2回転要素に連結し、非係合状態で前記第1トランスファ軸を前記第2回転要素と非連結にする第4クラッチをさらに備え、
前記第4クラッチが前記係合状態で、前記出力軸は、前記第1トランスファ軸を介して、前記第2回転要素と接続される、
請求項9に記載のトランスミッション。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のトランスミッションを備える作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスミッション及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などの無段変速可能なトランスミッションが、従来、知られている。例えば、特許文献1のトランスミッションは、第1遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構と、第1モータと、第2モータとを備えている。
【0003】
トランスミッションの入力軸は、FR切換機構を介して、第1遊星歯車機構のサンギアに接続されている。第1遊星歯車機構のリングギアは、クラッチを介して、第2遊星歯車機構のキャリアに接続されている。第2遊星歯車機構のリングギアは、出力軸に接続されている。第1モータは、第1遊星歯車機構のキャリアに接続されている。第2モータは、第1遊星歯車機構のリングギアに接続されている。特許文献1のトランスミッションでは、第1モータと、第2モータとの回転速度を制御することで、入力軸に対する出力軸の速度比を無段階に変化させる、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-329244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1では、第1モータ、又は、第2モータが、第1遊星歯車機構、又は、第2遊星歯車機構を介して、出力軸に接続されている状態で、車速が0であるときには、第1モータ、又は、第2モータの回転速度は0になる。この場合、モータでの作動油の漏れが増大することで、トランスミッションにおけるエネルギー効率が低下してしまう。
【0006】
本開示の目的は、無段変速機構を備えるトランスミッションにおいてエネルギー効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るトランスミッションは、無段変速機構と、第1トランスファ軸と、遊星歯車機構と、第2トランスファ軸と、第1被駆動ギアと、出力軸とを備える。無段変速機構は、入力軸と、第1ギア機構と、第1出力ギアと、第2ギア機構と、第2出力ギアと、モータとを含む。第1ギア機構は、入力軸に接続される。第1出力ギアは、第1ギア機構に接続される。第2ギア機構は、入力軸に接続される。第2出力ギアは、第2ギア機構に接続される。モータは、第1ギア機構と第2ギア機構とに接続される。モータは、入力軸に対する第1出力ギアの速度比と、入力軸に対する第2出力ギアの速度比とを無段変速させる。遊星歯車機構は、第1回転要素と、第2回転要素と、第3回転要素とを含む。遊星歯車機構は、第1トランスファ軸回りに回転可能である。第1被駆動ギアは、第2トランスファ軸回りに回転可能である。第1出力ギアは、第1回転要素に接続される。第2出力ギアは、第1被駆動ギアを介して、第2回転要素に接続される。出力軸は、第3回転要素に接続される。
【0008】
本開示の他の態様に係る作業車両は、上述したトランスミッションを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るトランスミッションでは、無段変速機構からの回転は、第1出力ギアと第2出力ギアとに分かれて出力される。第1出力ギアからの回転は、遊星歯車機構の第1回転要素に伝達される。第2出力ギアからの回転は、第1被駆動ギアを介して、遊星歯車機構の第2回転要素に伝達される。第1出力ギアからの回転と第2出力ギアからの回転とは、遊星歯車機構において合成されて、出力軸に伝達される。そのため、第1出力ギアからの回転と第2出力ギアからの回転とを相殺させることで、出力軸の回転速度が0であっても、モータの回転を確保することができる。それにより、トランスミッションにおいてエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る作業車両の側面図である。
図2】実施形態に係るトランスミッションのスケルトン図である。
図3】前進低速モードでの伝達経路を示すトランスミッションのスケルトン図である。
図4】前進高速モードでの伝達経路を示すトランスミッションのスケルトン図である。
図5】後進低速モードでの伝達経路を示すトランスミッションのスケルトン図である。
図6】後進高速モードでの伝達経路を示すトランスミッションのスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本開示の実施形態に係る作業車両1の側面図である。図1に示すように、作業車両1は、車体2と作業機3とを備えている。車体2は、前車体2aと後車体2bとを含む。後車体2bは、前車体2aに対して左右に旋回可能に接続されている。前車体2aと後車体2bとには、油圧シリンダ15が連結されている。油圧シリンダ15が伸縮することで、前車体2aが、後車体2bに対して、左右に旋回する。
【0012】
作業機3は、掘削等の作業に用いられる。作業機3は、前車体2aに取り付けられている。作業機3は、ブーム11と、バケット12と、油圧シリンダ13,14とを含む。油圧シリンダ13,14が伸縮することによって、ブーム11及びバケット12が動作する。
【0013】
作業車両1は、エンジン21と、トランスミッション23と、走行装置24とを備えている。エンジン21は、例えばディーゼルエンジンなどの内燃機関である。トランスミッション23は、エンジン21に接続される。トランスミッション23は、変速比を無段階に変更可能である。
【0014】
走行装置24は、作業車両1を走行させる。走行装置24は、前輪25と後輪26とを含む。前輪25は、前車体2aに設けられる。後輪26は、後車体2bに設けられる。前輪25と後輪26とは、図示しないアクスルを介して、トランスミッション23に接続されている。
【0015】
作業車両1は、油圧ポンプ28を備える。油圧ポンプ28は、エンジン21に接続される。油圧ポンプ28は、エンジン21によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ28から吐出された作動油は、上述した油圧シリンダ13-15に供給される。作業車両1は、コントローラ27を含む。コントローラ27は、例えばプロセッサとメモリとを含む。コントローラ27は、エンジン21及びトランスミッション23を制御する。
【0016】
図2は、トランスミッション23の構成を示すスケルトン図である。図2に示すように、トランスミッション23は、無段変速機構31とトランスファ機構32とを含む。無段変速機構31は、エンジン21に接続されている。無段変速機構31は、入力軸33と、中間軸34と、第1ギア機構35と、第1出力ギア36と、第2ギア機構37と、第2出力ギア38と、第1モータ41と、第2モータ42とを含む。
【0017】
入力軸33は、エンジン21に接続されている。中間軸34は、入力軸33から偏心して配置されている。第1ギア機構35は、入力軸33に接続されている。第1出力ギア36は、第1ギア機構35に接続されている。第2ギア機構37は、入力軸33に接続されている。第2出力ギア38は、第2ギア機構37に接続されている。
【0018】
第1ギア機構35は、第1入力ギア43と第1遊星歯車機構44とを含む。第1入力ギア43は、入力軸33に連結されている。第1遊星歯車機構44は、中間軸34と同軸に配置されている。第1遊星歯車機構44は、中間軸34回りに回転可能である。第1遊星歯車機構44は、第1キャリア45と、複数の第1プラネタリギア46と、第1サンギア47と、第1リングギア48とを含む。第1キャリア45は、中間軸34に対して、相対的に回転可能である。第1キャリア45は、ギア49に連結されている。ギア49は、第1入力ギア43と噛み合っている。第1キャリア45は、ギア49を介して、第1入力ギア43に接続されている。
【0019】
第1プラネタリギア46は、第1キャリア45に回転自在に保持されている。第1プラネタリギア46は、第1キャリア45が中間軸34回りを回転することによって、中間軸34回りに公転可能である。第1サンギア47は、第1プラネタリギア46と噛み合っており、第1プラネタリギア46に接続されている。第1サンギア47は、中間軸34に連結されている。第1サンギア47は、中間軸34と共に回転する。第1リングギア48は、第1プラネタリギア46に接続されている。第1リングギア48は、内歯車50と外歯車51とを含む。第1リングギア48の内歯車50は、第1プラネタリギア46と噛み合っている。
【0020】
第2ギア機構37は、第2入力ギア52と第2遊星歯車機構53とを含む。第2入力ギア52は、入力軸33に連結されている。第2遊星歯車機構53は、中間軸34と同軸に配置されている。第2遊星歯車機構53は、中間軸34回りに回転可能である。第2遊星歯車機構53は、第2サンギア54と、複数の第2プラネタリギア55と、第2キャリア56と、第2リングギア57とを含む。
【0021】
第2サンギア54は、ギア58に連結されている。ギア58は、第2入力ギア52と噛み合っている。第2サンギア54は、ギア58を介して、第2入力ギア52に接続されている。第2サンギア54は、中間軸34回りに回転可能である。第2サンギア54は、中間軸34に対して、相対的に回転可能である。
【0022】
第2プラネタリギア55は、第2サンギア54と噛み合っており、第2サンギア54に接続されている。第2プラネタリギア55は、第2キャリア56に回転自在に保持されている。第2キャリア56は、中間軸34回りに回転可能である。第2キャリア56は、中間軸34に対して、相対的に回転可能である。第2プラネタリギア55は、第2キャリア56が中間軸34周りを回転することによって、中間軸34回りに公転可能である。第2リングギア57は、第2プラネタリギア55に接続されている。第2リングギア57は、内歯車59と外歯車60とを含む。第2リングギア57の内歯車59は、第2プラネタリギア55と噛み合っている。
【0023】
第1モータ41は、油圧式のポンプ/モータである。第1モータ41の回転軸61は、中間軸34から偏心して配置されている。第1モータ41の回転軸61には、第1モータギア62と第2モータギア63とが連結されている。第1モータギア62は、第1リングギア48の外歯車51と噛み合っている。第1リングギア48は、第1モータギア62を介して、第1モータ41の回転軸61に接続されている。第2モータギア63は、第2リングギア57の外歯車60と噛み合っている。第2リングギア57は、第2モータギア63を介して、第1モータ41の回転軸61に接続されている。
【0024】
第2モータ42は、油圧式のポンプ/モータである。第2モータ42は、油圧回路30介して、第1モータ41に接続されている。第2モータ42は、中間軸34と同軸に配置されている。第2モータ42の回転軸は、中間軸34に直接的に連結されている。中間軸34の延びる方向において、第1遊星歯車機構44は、第2モータ42と第2遊星歯車機構53との間に配置されている。
【0025】
第1モータ41がポンプとして機能して作動油を吐出するときには、第2モータ42は、モータとして機能して第1モータ41からの作動油によって駆動される。逆に、第2モータ42がポンプとして機能して作動油を吐出するときには、第1モータ41は、モータとして機能して第2モータ42からの作動油によって駆動される。
【0026】
第1出力ギア36は、中間軸34と同軸に配置されている。第1出力ギア36は、中間軸34に連結されている。第1出力ギア36は、中間軸34を介して、第1サンギア47に接続されている。第1出力ギア36は、中間軸34と共に回転する。第2出力ギア38は、中間軸34と同軸に配置されている。第2出力ギア38は、第1出力ギア36と同軸に配置されている。第2出力ギア38は、第2キャリア56に連結されている。第2出力ギア38は、第2キャリア56と共に、中間軸34回りに回転可能である。第2出力ギア38は、中間軸34に対して相対的に回転可能である。
【0027】
第1モータ41の容量、及び/又は、吐出油圧は、コントローラ27によって制御される。コントローラ27は、第1モータ41の回転速度を制御する。それにより、第1モータ41は、入力軸33に対する第1出力ギア36の速度比と、入力軸33に対する第2出力ギア38の速度比とを無段変速させる。第2モータ42の容量、及び/又は、吐出油圧は、コントローラ27によって制御される。コントローラ27は、第2モータ42の回転速度を制御する。それにより、第2モータ42は、入力軸33に対する第1出力ギア36の速度比と、入力軸33に対する第2出力ギア38の速度比とを無段変速させる。
【0028】
トランスファ機構32は、無段変速機構31と走行装置24とに接続されている。トランスファ機構32は、無段変速機構31からの駆動力を走行装置24に伝達する。トランスファ機構32は、第1トランスファ軸64と、第3遊星歯車機構65と、第2トランスファ軸66と、第1被駆動ギア67と、第2被駆動ギア68と、出力軸69とを含む。また、トランスファ機構32は、第1クラッチC1と、第2クラッチC2と、第3クラッチC3と、第4クラッチC4とを含む。
【0029】
第1トランスファ軸64は、中間軸34から偏心して配置されている。第1トランスファ軸64には、第1トランスファギア70が連結されている。第1トランスファギア70は、第1トランスファ軸64と共に回転する。
【0030】
第2トランスファ軸66は、中間軸34から偏心して配置されている。第2トランスファ軸66は、第1トランスファ軸64から偏心して配置されている。第2トランスファ軸66には、第2トランスファギア71が連結されている。第2トランスファギア71は、第2トランスファ軸66と共に回転する。
【0031】
第3遊星歯車機構65は、第1トランスファ軸64と同軸に配置されている。第3遊星歯車機構65は、第1トランスファ軸64回りに回転可能である。第3遊星歯車機構65は、第3サンギア72と、複数の第3プラネタリギア73と、第3キャリア74と、第3リングギア75とを含む。第3サンギア72は、ギア76に連結されている。ギア76は、第3サンギア72と共に回転する。
【0032】
第3サンギア72は、第1トランスファ軸64に対して相対的に回転可能である。第3サンギア72は、第4クラッチC4を介して、第1トランスファ軸64に接続されている。第4クラッチC4は、係合状態で、第3サンギア72を第1トランスファ軸64に連結する。従って、第4クラッチC4が係合状態で、第3サンギア72は、第1トランスファ軸64と共に回転する。第4クラッチC4は、非係合状態で、第3サンギア72を第1トランスファ軸64と非連結にする。従って、第4クラッチC4が非係合状態では、第3サンギア72は第1トランスファ軸64に対して空転可能となる。
【0033】
第3プラネタリギア73は、第3サンギア72と噛み合っており、第3サンギア72に接続されている。第3プラネタリギア73は、第3キャリア74に回転自在に保持されている。第3キャリア74は、第1トランスファ軸64回りに回転可能である。第3プラネタリギア73は、第3キャリア74が第1トランスファ軸64周りを回転することによって、第1トランスファ軸64回りに公転可能である。第3キャリア74は、ギア77に連結されている。ギア77は、第3キャリア74と共に回転する。
【0034】
第3キャリア74は、第1トランスファ軸64に対して相対的に回転可能である。第3キャリア74は、第1クラッチC1を介して、第1トランスファ軸64に接続されている。第1クラッチC1は、係合状態で、第3キャリア74を第1トランスファ軸64に連結する。従って、第1クラッチC1が係合状態で、第3キャリア74は、第1トランスファ軸64と共に回転する。第1クラッチC1は、非係合状態で、第3キャリア74を第1トランスファ軸64と非連結にする。従って、第1クラッチC1が非係合状態では、第3キャリア74は、第1トランスファ軸64に対して空転可能となる。
【0035】
第3リングギア75は、第3プラネタリギア73に接続されている。第3リングギア75は、第1出力ギア36に接続されている。第3リングギア75は、内歯車78と外歯車79とを含む。第3リングギア75の内歯車78は、第3プラネタリギア73と噛み合っている。第3リングギア75の外歯車79は、第1出力ギア36と噛み合っている。
【0036】
第1被駆動ギア67は、第2トランスファ軸66と同軸に配置されている。第1被駆動ギア67は、第2トランスファ軸66に対して相対的に回転可能である。第1被駆動ギア67は、第2出力ギア38と噛み合っている。第1被駆動ギア67は、第2出力ギア38に接続されている。第1被駆動ギア67は、ギア76と噛み合っている。第1被駆動ギア67は、ギア76を介して、第3サンギア72に接続されている。
【0037】
第1被駆動ギア67は、第2クラッチC2を介して、第2トランスファ軸66に接続されている。第2クラッチC2は、係合状態で、第1被駆動ギア67を第2トランスファ軸66に連結する。従って、第2クラッチC2が係合状態で、第1被駆動ギア67は、第2トランスファ軸66と共に回転する。第2クラッチC2は、非係合状態で、第1被駆動ギア67を第2トランスファ軸66と非連結にする。従って、第2クラッチC2が非係合状態では、第1被駆動ギア67は、第2トランスファ軸66に対して空転可能となる。
【0038】
第2被駆動ギア68は、第2トランスファ軸66と同軸に配置されている。第2被駆動ギア68は、第2トランスファ軸66に対して相対的に回転可能である。第2被駆動ギア68は、ギア77と噛み合っている。第2被駆動ギア68は、ギア77を介して、第3キャリア74に接続されている。
【0039】
第2被駆動ギア68は、第3クラッチC3を介して、第2トランスファ軸66に接続されている。第3クラッチC3は、係合状態で、第2被駆動ギア68を第2トランスファ軸66に連結する。従って、第3クラッチC3が係合状態で、第2被駆動ギア68は、第2トランスファ軸66と共に回転する。第3クラッチC3は、非係合状態で、第2被駆動ギア68を第2トランスファ軸66と非連結にする。従って、第3クラッチC3が非係合状態では、第2被駆動ギア68は、第2トランスファ軸66に対して空転可能となる。
【0040】
出力軸69は、走行装置24に接続されている。出力軸69は、第1トランスファ軸64及び第2トランスファ軸66から偏心して配置されている。出力軸69は、中間軸34から偏心して配置されている。出力軸69には、ギア80が連結されている。ギア80は、第1トランスファギア70及び第2トランスファギア71と噛み合っている。出力軸69は、ギア80と第1トランスファギア70とを介して、第1トランスファ軸64に接続されている。出力軸69は、ギア80と第2トランスファギア71とを介して、第2トランスファ軸66に接続されている。
【0041】
次に、トランスミッション23における駆動力の伝達経路について説明する。コントローラ27は、車速に応じて、トランスミッション23における伝達経路を切り替える。コントローラ27は、走行方向に応じて、トランスミッション23における伝達経路を切り替える。コントローラ27は、伝達経路を規定する複数の制御モードから、車速と走行方向とに応じたモードを選択する。複数の制御モードは、前進低速モードと、前進高速モードと、後進低速モードと、後進高速モードとを含む。
【0042】
図3は、前進低速モードでの伝達経路を示す図である。コントローラ27は、走行方向が前進で、車速が0から第1閾値までの範囲では、制御モードを前進低速モードに設定する。図3に示すように、前進低速モードでは、コントローラ27は、第1クラッチC1を係合状態とし、第2~第4クラッチC2-C4を非係合状態にする。この場合、エンジン21からの駆動力は、入力軸33から、第1入力ギア43、ギア49、第1キャリア45、第1プラネタリギア46、第1リングギア48、第1モータギア62を介して、第1モータ41に伝達される。第1モータ41は、ポンプとして機能して、作動油を吐出する。第2モータ42は、第1モータ41から吐出された作動油によって駆動され、モータとして機能する。第2モータ42は、第1サンギア47及び中間軸34を回転させ、それにより第1出力ギア36が回転する。
【0043】
また、エンジン21からの駆動力は、入力軸33から、第2入力ギア52、ギア58、第2サンギア54、第2プラネタリギア55、第2キャリア56を介して、第2出力ギア38に伝達される。それにより、第2出力ギア38が回転する。
【0044】
第1出力ギア36からの駆動力は、外歯車79、第3リングギア75を介して、第3プラネタリギア73に伝達される。第2出力ギア38からの駆動力は、第1被駆動ギア67、ギア76、第3サンギア72を介して、第3プラネタリギア73に伝達される。従って、第1出力ギア36からの駆動力、第2出力ギア38からの駆動力とは、第3遊星歯車機構65において合成される。合成された駆動力は、第3キャリア74、第1クラッチC1、第1トランスファ軸64、第1トランスファギア70、ギア80を介して、出力軸69に伝達される。
【0045】
コントローラ27は、車速の増大に応じて、トランスミッション23の速度比が大きくなるように、第1モータ41と第2モータ42との出力を制御する。トランスミッション23の速度比は、入力軸33の回転速度に対する出力軸69の回転速度である。コントローラ27は、車速に応じて速度比が無段階に変化するように、第1モータ41と第2モータ42との出力を制御する。
【0046】
前進低速モードでは、第1モータ41の回転速度が第1回転速度であり、第2モータ42の回転速度が第2回転速度である状態で、第3キャリア74の回転速度は0になる。第1回転速度と第2回転速度とは、0より大きい。第1モータ41の回転速度が第1回転速度であり、第2モータ42の回転速度が第2回転速度である状態では、第1出力ギア36からの駆動力による第3リングギア75の回転と歯数との積と、第2出力ギア38からの駆動力による第3サンギア72との回転と歯数との積とが、反対方向で且つ同じ大きさになる。それにより、第1出力ギア36からの駆動力による第3リングギア75の回転と、第2出力ギア38からの駆動力による第3サンギア72との回転とが相殺され、第3プラネタリギア73は自転するが公転しない。そのため、第3キャリア74は回転せずに、静止する。
【0047】
以上のように本実施形態に係る作業車両では、第1モータ41と第2モータ42とが回転していても、出力軸69の回転を0にすることができる。そのため、作業車両が停止していても、第1モータ41と第2モータ42とが回転している状態を維持することができる。それにより、トランスミッション23においてエネルギー効率を向上させることができる。なお、第1回転速度と第2回転速度とは、第1モータ41と第2モータ42とにおけるエネルギー効率と燃費とのバランスを考慮して決定されるとよい。
【0048】
コントローラ27は、前進走行中に車速が第1閾値以上になると、制御モードを前進低速モードから前進高速モードに切り替える。図4は、前進高速モードでの伝達経路を示す図である。
【0049】
図4に示すように、前進高速モードでは、コントローラ27は、第2クラッチC2を係合状態とし、第1,第3,第4クラッチC1,C3,C4を非係合状態にする。この場合、エンジン21からの駆動力は、入力軸33から、第1入力ギア43、ギア49、第1プラネタリギア46、第1サンギア47を介して、第2モータ42に伝達される。第2モータ42は、ポンプとして機能して、作動油を吐出する。第1モータ41は、第2モータ42から吐出された作動油によって駆動され、モータとして機能する。第1モータ41からの駆動力は、第2モータギア63、第2リングギア57を介して、第2プラネタリギア55に伝達される。
【0050】
第1入力ギア43からの駆動力と第2入力ギア52からの駆動力とは、第2遊星歯車機構53において合成される。合成された駆動力は、第2出力ギア38、第1被駆動ギア67、第2クラッチC2、第2トランスファ軸66、第2トランスファギア71、ギア80を介して、出力軸69に伝達される。
【0051】
図5は、後進低速モードでの伝達経路を示す図である。コントローラ27は、走行方向が後進で、車速が0から第2閾値までの範囲では、制御モードを後進低速モードに設定する。図5に示すように、後進低速モードでは、コントローラ27は、第3クラッチC3を係合状態とし、第1、第2、第4クラッチC1,C2,C4を非係合状態にする。この場合、エンジン21から、無段変速機構31を経て、第3遊星歯車機構65までの伝達経路は、前進低速モードと同様である。前進低速モードと同様に、第1出力ギア36からの駆動力と第2出力ギア38からの駆動力とは、第3遊星歯車機構65において合成される。
【0052】
後進低速モードでは、合成された駆動力は、第3キャリア74、ギア77、第2被駆動ギア68、第3クラッチC3、第2トランスファ軸66、第2トランスファギア71、ギア80を介して、出力軸69に伝達される。後進低速モードにおいても、前進低速モードと同様に、第1モータ41の回転速度が第1回転速度であり、第2モータ42の回転速度が第2回転速度である状態で、第3キャリア74の回転速度は0になる。従って、後進低速モードにおいても、第1モータ41と第2モータ42とが回転している状態で、出力軸69の回転を0にすることができる。そのため、作業車両が停止していても、第1モータ41と第2モータ42とが回転している状態を維持することができる。
【0053】
コントローラ27は、後進走行中に車速が第2閾値以上になると、制御モードを後進低速モードから後進高速モードに切り替える。図6は、後進高速モードでの伝達経路を示す図である。
【0054】
図6に示すように、後進高速モードでは、コントローラ27は、第4クラッチC4を係合状態とし、第1~第3クラッチC1-C3を非係合状態にする。この場合、エンジン21から第2遊星歯車機構53までの伝達経路は、前進高速モードと同様である。第1入力ギア43からの駆動力と第2入力ギア52からの駆動力とは、第2遊星歯車機構53において合成される。合成された駆動力は、第2出力ギア38、第1被駆動ギア67、ギア76、第4クラッチC4、第1トランスファ軸64、第1トランスファギア70、ギア80を介して、出力軸69に伝達される。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。作業車両1は、ホイールローダに限らず、ブルドーザ、或いは油圧ショベルなどの他の車両であってもよい。
【0056】
トランスミッション23の構成は変更されてもよい。例えば、第1遊星歯車機構44の回転要素と第2遊星歯車機構53の回転要素との接続関係が変更されてもよい。第1遊星歯車機構44の回転要素と第1、第2モータ41,42との接続関係が変更されてもよい。第1遊星歯車機構44の回転要素と第1出力ギア36との接続関係が変更されてもよい。
【0057】
第2遊星歯車機構53の回転要素と第1、第2モータ41,42との接続関係が変更されてもよい。第2遊星歯車機構53の回転要素と第2出力ギア38との接続関係が変更されてもよい。第3遊星歯車機構65と第1トランスファ軸64との接続関係が変更されてもよい。第3遊星歯車機構65と第1出力ギア36との接続関係が変更されてもよい。第3遊星歯車機構65と第2出力ギア38との接続関係が変更されてもよい。
【0058】
クラッチC1-C4の配置は変更されてもよい。第1モータ41と第2モータ42とは、油圧式のポンプ/モータに限らず、電気式のジェネレータ/モータであってもよい。各制御モードは、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、図5及び図6に示す伝達経路が、前進での制御モードであってもよい。図3及び図4に示す伝達経路が、後進での制御モードであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示によれば、無段変速機構を備えるトランスミッションにおいてエネルギー効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0060】
31 無段変速機構
33 入力軸
34 中間軸
35 第1ギア機構
36 第1出力ギア
37 第2ギア機構
38 第2出力ギア
41 第1モータ
42 第2モータ
64 第1トランスファ軸
65 第3遊星歯車機構
66 第2トランスファ軸
67 第1被駆動ギア
68 第2被駆動ギア
69 出力軸
72 第3サンギア(第2回転要素)
74 第3キャリア(第3回転要素)
75 第3リングギア(第1回転要素)
C1 第1クラッチ
C2 第2クラッチ
C3 第3クラッチ
C4 第4クラッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6