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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】インペラ
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/16 20230101AFI20240125BHJP
   B01F 27/906 20220101ALI20240125BHJP
【FI】
C02F3/16
B01F27/906
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020059036
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021154242
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-233507(JP,A)
【文献】特開2001-252681(JP,A)
【文献】特開昭52-041446(JP,A)
【文献】特開2002-018259(JP,A)
【文献】実開昭58-003997(JP,U)
【文献】特開2019-089051(JP,A)
【文献】実開昭56-028793(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/14-3/26
C02F 7/00
B01F27/00-27/96
B01F21/00-25/90
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に対して曝気及び/又は撹拌を行うインペラであって、
軸と、
前記軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、
周方向において隣り合う二つの羽根部の間に配置され、前記二つの羽根部を連結する複数のつなぎ板と、を備え、
前記つなぎ板と前記軸との間には、隙間が形成されており、
前記つなぎ板の径方向外側の端部は、前記軸方向から見て、前記軸から前記羽根部の径方向外側の端部までを全長とする前記羽根部の長さの90%よりも径方向外側の位置に設置され、
前記軸方向から見て、前記軸から前記つなぎ板までの隙間の長さは、前記軸から前記つなぎ板の径方向外側の端部までの長さの40~70%であることを特徴とする、インペラ。
【請求項2】
前記つなぎ板の前記軸から径方向外側の位置は、前記羽根部の前記軸から径方向外側の位置と一致することを特徴とする、請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記羽根部は前記つなぎ板の上表面側及び下表面側の両側に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的水処理設備用の縦軸型曝気撹拌装置のインペラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水や汚水等の被処理水を生物処理する生物処理設備として、無終端状の循環水路が形成されたオキシデーションディッチ槽を使用する方法が知られている。このオキシデーションディッチ槽における曝気撹拌装置としては、縦軸型、横軸型及び斜軸型の3種類が知られている。
特許文献1には、オキシデーションディッチ槽内に配置され、排水の液面に略垂直な方向、すなわち、液面に対して交差する方向を軸方向として回転して、排水の曝気撹拌を行うインペラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-005728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オキシデーションディッチ槽において被処理水を曝気撹拌するためには、曝気撹拌装置を長時間可動させ続ける必要がある。そのため、被処理水と常に接しているインペラは、曝気撹拌装置の動力を増加させることなく、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることにより、回転に必要な動力を低下させることができるインペラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題について鋭意検討した結果、軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、複数の羽根部を連結するつなぎ板を備えるインペラにおいて、つなぎ板の径方向外側の端部の位置をインペラの径方向外側に設置することにより、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることができることを見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下のインペラである。
【0007】
上記課題を解決するための本発明のインペラは、被処理水に対して曝気及び/又は撹拌を行うインペラであって、軸と、前記軸から径方向外側に延びる複数の羽根部と、周方向において隣り合う二つの羽根部の間に配置され、前記二つの羽根部を連結する複数のつなぎ板と、を備え、前記つなぎ板と前記軸との間には、隙間が形成されており、前記つなぎ板の径方向外側の端部は、前記軸方向から見て、前記軸から前記羽根部の径方向外側の端部までを全長とする前記羽根部の長さの90%よりも径方向外側の位置に設置することを特徴とする。
【0008】
本発明のインペラよれば、つなぎ板の径方向外側の端部が羽根部の端部付近まで広がっていることから、インペラの回転によってつなぎ板の上表面を移動する被処理水に対して、強い遠心力が与えられる。よって、被処理水がつなぎ板の上表面でより加速されて、長い距離を飛散することができる。これにより、被処理水に多量の酸素が取り込まれて、効率よく被処理水に酸素を供給できるというものである。
また、換言すれば、酸素供給量を一定に保って縦軸型曝気撹拌装置の運転を行う場合には、インペラの回転数を抑えることができるため、インペラの回転に必要な動力供給を低く抑えることが可能となる。
よって、本発明のインペラによれば、酸素供給効率を効果的に増加させることが可能となる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明のインペラは、軸方向から見て、軸からつなぎ板までの隙間の長さは、軸からつなぎ板の径方向外側の端部までの長さの40~70%であることを特徴とする。
この特徴によれば、軸からつなぎ板までの隙間により形成された通水孔の大きさが、酸素供給効率を効果的に増加させるという観点で適切な大きさとなる。つまりは、軸からつなぎ板までの隙間の長さが、軸からつなぎ板の径方向外側の端部までの長さの40%以上であることにより、十分な揚水量を確保できる通水孔を形成することができる。また、軸からつなぎ板までの隙間の長さが、軸からつなぎ板の径方向外側の端部までの長さの70%以上であることにより、つなぎ板の径方向の長さが十分に確保されるため、つなぎ板の上表面で被処理水が加速されて、被処理水の飛沫が長い距離を飛散することができる。
よって、本発明のインペラによれば、酸素供給効率を効果的に増加させることが可能となる。
【0010】
また、本発明のインペラの一実施態様としては、羽根部はつなぎ板の上表面側及び下表面側の両側に設けられていることを特徴とする。
この特徴によれば、つなぎ板の上表面側及び下表面側の両側に設けられた各々の羽根部によって通水孔から揚水された被処理水をインペラの周囲に飛散するため、酸素供給効率を効果的に増加させることが可能となる。
また、つなぎ板の下表面側に設けられた羽根部によって被処理水が撹拌されるため、飛散により多量の酸素が供給された被処理水と、流路内を流れる被処理水と混合することができる。これにより、流路内の底部方向にも酸素を供給することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることで、回転に必要な動力を低下させることができるインペラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】無終端水路を平面から見た場合における、本発明の生物処理設備の構成を示す概略説明図である。
図2】無終端水路の断面における、本発明の縦軸型曝気撹拌装置の構造を示す概略説明図である。
図3A】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す概略斜視図である。
図3B】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す概略平面図である。
図3C】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す図3BのV-V方向における概略断面図である。
図3D】本発明の第一の実施態様におけるインペラを示す図3BのV-V方向における概略断面図であり、つなぎ板の端部の位置を説明するための概略説明図である。
図4A】本発明の第二の実施態様におけるインペラを示す概略斜視図である。
図4B】本発明の第二の実施態様におけるインペラを示す概略平面図である。
図4C】本発明の第二の実施態様におけるインペラを示す図4BのV-V方向における概略断面図である。
図4D】本発明の第二の実施態様におけるインペラを示す図4BのV-V方向における概略断面図であり、隙間の大きさを説明するための概略説明図である。
図5A】本発明の第三の実施態様におけるインペラを示す概略斜視図である。
図5B】本発明の第三の実施態様におけるインペラを示す概略平面図である。
図5C】本発明の第三の実施態様におけるインペラを示す図4BのV-V方向における概略断面図である。
図5D】本発明の第三の実施態様におけるインペラを示す図4BのV-V方向における概略断面図であり、つなぎ板の端部の位置及び隙間の大きさを説明するための概略説明図である。
図6A】既存のインペラを示す概略斜視図である。
図6B】既存のインペラを示す概略平面図である。
図6C】既存のインペラを示す図6BのV-V方向における概略断面図である。
図7】本発明の実施例1のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図8】本発明の実施例2のシミュレーションの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一の実施態様]
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第一の実施態様における無終端水路2を平面から見た場合における、生物処理設備1の構成を示す概略説明図である。なお、図中の矢印は、無終端水路2を流れる循環流を表したものである。
【0014】
(生物処理設備)
本発明における生物処理設備1は、無終端水路2内で被処理水を循環しながら生物処理を行うオキシデーションディッチ法に使用するものである。被処理水は、特に制限されないが、例えば、下水、畜産廃水、工場廃水等の有機性廃水が挙げられる。
生物処理設備1は、図1に示すように周囲壁21及び区画壁22により形成された無終端水路2、無終端水路2に設置された縦軸型曝気撹拌装置3及びガイド板7を備えている。
【0015】
無終端水路2は、平行に延びる直線状の2本の直線水路2aと、2本の直線水路2aの両端において直線水路2aを連結して被処理の循環流を形成する循環水路2bからなる。
第一の実施態様の生物処理設備1では、直線水路2aの区画壁22の近傍に縦軸型曝気撹拌装置3が設置されている。なお、縦軸型曝気撹拌装置3は、循環流路2bに配置してもよい。
【0016】
縦軸型曝気撹拌装置3は、流路内の被処理水に対して表面曝気を行い、被処理水に酸素を供給するものである。また、縦軸型曝気撹拌装置3は、近傍に配置されたガイド板7と共に、無終端水路2に循環流を形成する。具体的には、縦軸型曝気撹拌装置3が被処理水内に撹拌流を発生し、この撹拌流の流れを、近傍に配置されたガイド板7が案内することにより無終端水路2に循環流を形成する。
【0017】
(縦軸型曝気撹拌装置)
図2は、本実施態様における縦軸型曝気撹拌装置3の構造を示す概略説明図である。図2に示すように、縦軸型曝気撹拌装置3は、被処理水を曝気撹拌するためのインペラ31、インペラ31を回転するための動力を供給する駆動部33を備えている。
また、本実施態様におけるインペラ31は、駆動部33に連結された軸31Cと、軸31Cに放射状に取り付けられた複数の羽根部31Aと、複数の羽根部31Aを連結するつなぎ板31Bを備える。
【0018】
また、図3Aには、本発明の第一の実施態様のインペラ31の斜視図を示し、図3Bには、本発明の第一の実施態様のインペラ31を軸方向から見た平面図を示す。図3A図3Bに示すように、つなぎ板31Bは、軸31Cとの間に、隙間を介して設置されており、この隙間は、被処理水を揚水するための通水孔31Dを形成する。
【0019】
次に、縦軸型曝気撹拌装置3の動作について説明する。
図2に示すように、縦軸型曝気撹拌装置3は、通水孔31Dを被処理水中に配置し、羽根部31Aの先端が水面上に出るように設置する。この位置でインペラ31を回転すると、羽根部31Aにより掻き寄せられた被処理水は、遠心力により羽根部31Aの先端から飛沫として周囲に飛散する。縦軸型曝気撹拌装置3の近傍に配置されたガイド板7は、上端が水面付近に位置するように設置されており、被処理水の飛沫は、ガイド板7を越えて遠方まで飛散することができる。被処理水の飛沫は、大気中を飛散する間に空気を取り込み、空気を含む状態で被処理水に着水する。これにより、被処理水に酸素を供給することができる。
【0020】
羽根部31Aから被処理水が飛散すると、つなぎ板31Bと軸31Cの間に形成された通水孔31Dから被処理水が流れ込むため、連続して被処理水をインペラ31の周囲に飛散することができる。
【0021】
また、被処理水中に位置する羽根部31Aは、被処理水中に撹拌流を形成する。撹拌流は、ガイド板7により下流側に向かって案内され、無終端水路2に循環流を形成する。
【0022】
次に、インペラ31の各部について詳細に説明する。
<軸>
軸31Cは、図2に示すように、駆動部33に連結されており、駆動部33からの動力によりインペラ31を回転駆動させることを目的とするものである。
軸31Cは、駆動部33からの動力によりインペラ31を回転駆動させることができれば、形状等は特に限定されるものではない。例えば、円柱状、多角柱状などの形状のものが挙げられる。また、軸31Cは、内部が空洞である中空構造でもよい。この場合、軸31Cの強度を保ちつつ、インペラ31全体を軽量化できるため、低い動力で被処理水を曝気撹拌することができる。
【0023】
軸の材質は、特に制限されないが、例えば、鉄やステンレスなどの金属製、硬質プラスチックなどの樹脂製などが挙げられる。強度や耐腐食性の観点から、ステンレスなどの耐腐食性の金属が好ましい。
【0024】
図2に示すように、軸31Cは、複数の軸からなり、複数の軸を連結する連結部31Eを備える。軸31Cを複数の軸に分割可能とすることにより、インペラ31の被処理水の水深に対する位置を調整することができる。例えば、被処理水の底部付近にインペラ31を設置する場合には、連結部31Eを分割して、延伸のための軸(不図示)を追加して、軸31Cの長さを延伸することができる。
【0025】
また、図2に示すように、昇降装置31Fを備えてもよい。昇降装置31Fは、インペラ31を昇降させるための装置であり、昇降装置31Fを備えることにより、インペラ31の高さ位置を微調整することが可能となる。インペラ31の高さを微調整することにより、インペラ31により形成する飛沫の量や飛散距離を調整することができるため、被処理水に対する酸素の供給効率を向上させることで、回転に必要な動力を低下させるという本発明の効果をより発揮することができる。
【0026】
<羽根部>
図3Aに示すように、羽根部31Aは、軸31Cから径方向外側に延びるように形成されており、軸31Cには、複数の羽根部31Aが取り付けられている。第一の実施態様のインペラ31では、羽根部31Aは、羽根板310A及び羽根板310Bの二枚の板部材からなり、羽根板310Aは、板面が軸方向(略鉛直方向)と略平行に設置される。羽根板310Bは、羽根板310Aの上端部と連続して形成され、羽根板310Aからインペラ31の回転方向前方に向けて傾斜して設置される。また、図3Bに示すように、羽根板310A(破線まで)は、軸31Cの軸心から放射状に固定されている。羽根板310Aを軸心から放射状に固定することにより、インペラ31の回転時のバランスが取り易い。
【0027】
羽根板310A及び羽根板310Bは、一枚の板部材を折り曲げることで、それぞれ形成されてもよいし、別々の板部材を組み合わせことで形成されてもよい。一枚の板部材を折り曲げて形成する場合には、羽根部31A全体の強度を高く保つことができる。また、別々の板部材を組み合わせて形成する場合には、各羽根板を取り換えることにより種々の形状に変更することができる。
【0028】
また、図3Cに示すように、羽根部31Aは、軸31Cからインペラ径方向外側に向かって上向きに傾斜している。これにより、被処理水を遠方まで飛散させることができるため、酸素の供給率効率を高めることができる。なお、羽根部31Aと被処理水の水面とのなす角は、例えば、10~80°であり、好ましくは20~60°である。
【0029】
また、羽根板310Aの下端の形状は、径方向外側先端から軸31Cに向かって、羽根板310Aの幅が拡大している。これにより、被処理水の内部に配置される軸31C付近では、羽根板310Aが大きくなるため、強い撹拌流を形成することができる。
【0030】
羽根部31Aの設置数は、特に限定されない。羽根31Aの設置数は、好ましくは、インペラ31を平面視した場合において等間隔に2~12枚程度であることが挙げられる。この場合、効果的に被処理水を撹拌及び大気中に飛散させることができる。さらに好ましくは、インペラ31の設置数は、インペラ31を平面視した場合において等間隔に6~8枚であることが挙げられる。この場合、発生する撹拌流の強さと大気中に飛散される被処理水の水量が最適となるため、効率よく被処理水を曝気撹拌することができる。
【0031】
また、図3Aに示すように、周方向に隣り合う羽根板310Aの間には、つなぎ板31Bが連結する。つなぎ板31Bは、羽根板310Aの中腹に固定されており、羽根板310Aは、つなぎ板31Bの上表面側に位置する羽根板上部311と、つなぎ板31Bの下表面側に位置する羽根板下部312に分割されている。羽根板上部311は、インペラ31が回転により通水孔31Dより揚水された被処理水を、インペラ31の周囲に飛散させる機能を有する。羽根板下部312は、水中に配置され主として被処理水に撹拌流を形成するものである。また、羽根板下部312は、先端を被処理水面上に配置することにより、インペラの周囲に被処理水を飛散させることもできる。
【0032】
図3Aに示すように、羽根板310Bは、回転方向前方に向かって傾斜しており、羽根板310Aで掻き寄せた被処理水を羽根板310Aに沿って径方向外側に案内する。羽根板310Bを設けることにより、被処理水の飛散量が増加して酸素供給効率を一層向上することができる。なお、羽根板310Bと羽根板310Aのなす角は、例えば、好ましくは100~170°であり、より好ましくは110~160°である。
【0033】
羽根板310A及び羽根板310Bの材質は、特に制限されないが、例えば、鉄やステンレスなどの金属製、硬質プラスチックなどの樹脂製などが挙げられる。強度や耐腐食性の観点から、ステンレスなどの耐腐食性の金属が好ましい。
【0034】
なお、羽根部31Aの形状は、特に制限されず、例えば、第一の実施態様では、羽根板310Aの板面が軸方向(略鉛直方向)と略平行に設置されるが、羽根板310Aの板面を水面に対して傾斜して固定してもよい。また、羽根板310Bを設けずに、羽根部31Aを羽根板310Aのみで形成してもよい。
【0035】
<つなぎ板>
図3A図3Cに示すように、つなぎ板31Bは、軸31Cとの間に隙間を介して羽根板310Aに固定されており、当該隙間は、被処理水が通過する通水孔31Dを形成する。
【0036】
つなぎ板31Bは、板部材により形成され、その材質は、特に制限されないが、例えば、鉄やステンレスなどの金属製、硬質プラスチックなどの樹脂製などが挙げられる。強度や耐腐食性の観点から、ステンレスなどの耐腐食性の金属が好ましい。
【0037】
なお、軸31C、羽根部31A、つなぎ板31Bは、それぞれ別体として連結しても、一体として形成してもよい。
【0038】
第一の実施態様のインペラ31は、図3Dに示すように、つなぎ板31Bの径方向外側の端部313は、軸31Cの方向から見て、軸31Cから羽根部31Aの径方向外側の端部までを全長とする羽根部31Aの長さ(X)の90%よりも径方向外側の位置(斜線部)に配置する。
なお、つなぎ板31Bの端部313は、羽根部31Aの長さ(X)の100%を超えてもよいが(つなぎ板の端部が、羽根部31Aの端部より外側に位置する形状)、好ましくは100%以下である。
【0039】
通水孔31Dから流れ込む被処理水は、つなぎ板31Bの上表面を流れる際に遠心力が与えられ加速する。つなぎ板31Bの上表面で加速された被処理水の流れは、羽根部31Aから勢いよく飛散する。つなぎ板31Bの端部313を羽根部31Aの長さ(X)の90%よりも外側に配置すると、遠心力が強く与えられるため、飛沫の飛距離が大きくなる。よって、飛沫に取り込まれる酸素の量が多くなり、酸素の供給効率が向上するという効果を奏する。
つなぎ板31Bの端部313の位置を最適化することで、従来のインペラと比較して、より遠くに被処理水を飛散させることができるため、効果的に被処理水を曝気することが可能となる。
【0040】
(ガイド板)
ガイド板7は、縦軸型曝気撹拌装置3のインペラ31によって発生した撹拌流を整流することで、無終端水路2内の被処理水を撹拌及び循環させることを目的とするものである。
ガイド板7は、図1に示すように、縦軸型曝気撹拌装置3の上流側を覆うように区画壁22に固定されている。
ガイド板の設置高さは、図2に示すように、上端は被処理水の略水面に位置し、下端は縦軸型曝気撹拌装置の下端と同等、もしくはやや上位に位置している。ガイド板の上端を略水面に位置することにより、インペラ32の回転により飛散する飛沫が周囲に着水し、酸素供給効率を高めることができる。また、浮遊するスカムを消失させる作用に優れる。
また、ガイド板の下端を、縦軸型曝気撹拌装置の下端と同等に設置することにより、インペラ32の回転により発生した撹拌流を所定の位置に誘導することができる。
【0041】
[第二の実施態様]
図4A図4Cは、各々、第二の実施態様におけるインペラ41の構造を表す斜視図、平面図、断面図である。
以下、図面を用いて詳細に解説していく。なお、羽根部41A、軸41Cについては、第一の実施態様における羽根部31A、軸31Cと同一の内容であるため説明を省略する。
【0042】
<つなぎ板>
第二の実施態様のインペラ41は、図4Dに示すように、軸41Cの方向から見て、軸41Cからつなぎ板41Bまでの隙間の長さ(Y1)は、軸41Cからつなぎ板41Bの径方向外側の端部413までの長さ(Y2)の40~70%である。
【0043】
軸41Cからつなぎ板41Bまでの隙間の長さ(Y1)を、軸41Cからつなぎ板41Bの径方向外側の端部413までの長さ(Y2)の40~70%とすると、通水孔41Dから流れ込む被処理水の水量を十分に確保することができる。よって、被処理水の飛散量が大きくなり、酸素の供給効率が向上するという効果を奏する。
つなぎ板41Bと軸41Cとの隙間を最適化することで、従来のインペラと比較して、より多くの被処理水を飛散させることができるため、効果的に被処理水を曝気することが可能となる。
【0044】
[第三の実施態様]
図5A図5Cは、各々、第三の実施態様におけるインペラ51の構造を表す斜視図、平面図、断面図である。
以下、図面を用いて詳細に解説していく。なお、羽根部51A、軸51Cについては、第一の実施態様における羽根部31A、軸31C、及び、第二の実施態様における羽根部41A、軸41Cと同一の内容であるため説明を省略する。
【0045】
<つなぎ板>
本実施態様におけるインペラ51は、図5Dに示すように、つなぎ板51Bの端部513は、羽根部51Aの長さ(X)の90%よりも径方向外側の位置(斜線部)に配置する。さらに、軸51Cからつなぎ板51Bまでの隙間の長さ(Y1)は、軸51Cからつなぎ板51Bの径方向外側の端部513までの長さ(Y2)の40~70%である。これらの特徴によれば、インペラ51の回転によって揚水される被処理水の水量を十分に確保しつつ、被処理水がつなぎ板51Bの上表面を流れる際に遠心力が与えられて加速し、飛沫の飛距離を大きくするという作用がある。
つなぎ板51Bと軸51Cとの隙間、及び、つなぎ板51Bの端部513の位置を最適化することで、従来のインペラ、第一の実施態様のインペラ31、第二の実施態様のインペラ41と比較して、効果的に被処理水を曝気することが可能となる。
また、これらの特徴によれば、さらに少ない動力で酸素供給効率を効果的に増加させることが可能となる。
【0046】
[実施例1]
第一の実施態様のインペラ31、第三の実施態様のインペラ51及び既存のインペラ61(図6A図6B)の動力と曝気量の関係について、シミュレーションにより比較した。
シミュレーションでは、第一の実施態様のインペラ31、第三の実施態様のインペラ51及び既存のインペラ61の外径を同一とした。
既存のインペラ61は、つなぎ板61Bの端部の位置を羽根部61Aの長さ(X)の85%とし、軸61Cからつなぎ板61Bまでの隙間の長さ(Y1)を軸61Cからつなぎ板61Bの径方向外側の端部までの長さ(Y2)の35%と設定した。
第一の実施態様のインペラ31は、つなぎ板31Bの端部の位置を羽根部31Aの長さ(X)の100%とし、軸31Cからつなぎ板31Bまでの隙間の長さ(Y1)を軸31Cからつなぎ板31Bの径方向外側の端部までの長さ(Y2)の35%と設定した。
第三の実施態様のインペラ51は、つなぎ板51Bの端部の位置を羽根部51Aの長さ(X)の100%とし、軸51Cからつなぎ板51Bまでの隙間の長さ(Y1)を軸51Cからつなぎ板51Bの径方向外側の端部までの長さ(Y2)の55%と設定した。
【0047】
シミュレーションの結果を図7のグラフに示す。グラフの横軸は動力、縦軸は曝気量である。なお、曝気量は、所定の領域の通過する被処理水の飛沫の量とした。
【0048】
図7に示すとおり、各インペラの回転に用いた動力が同じ場合、曝気量代替指標が第三の実施態様のインペラ51が最も高く、次いで、第一の実施態様のインペラ31が高かった。そして、既存のインペラ61が最も低いという結果となった。
また、同じ曝気量で見れば、第三の実施態様のインペラ51が最もエネルギー効率が高く、次いで、第一の実施態様のインペラ31のエネルギー効率が高く、既存のインペラ61が最も低いことが分かった。
【0049】
[実施例2]
実施例2は、第三の実施態様のインペラ51及び既存のインペラ61のインペラの回転数と酸素供給効率の関係について、シミュレーションにより比較した。その他の条件は、実施例1と同様に行った。
【0050】
シミュレーションの結果を図8のグラフに示す。グラフの横軸はインペラの回転数、縦軸は酸素供給効率である。酸素供給効率とは、被処理水に供給される酸素量を、単位時間当たりの動力量で除したものであり、高いほど少ない動力で効率よく酸素を供給できることを示している。
【0051】
図8に示すとおり、各インペラの回転数が同じである場合、第三の実施態様のインペラ51が既存のインペラ61よりも酸素供給効率が高いという結果となった。
【0052】
なお、上述した実施態様は曝気撹拌装置のインペラの一例を示すものである。本発明に係るインペラは、上述した実施態様に限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係るインペラを変形してもよい。
【0053】
例えば、羽根部及びつなぎ板を同軸上に縦に二つ設置してもよい。
これにより、下側に配置されたインペラを被処理水に完全に水没させることで被処理水を撹拌し、上側に配置されたインペラで被処理水を大気中に飛散させることができるため、曝気効率を維持しながら撹拌力を向上させることができる。
【0054】
また、羽根板の軸に対する角度や、羽根板やつなぎ板の軸に対する角度を、インペラ設置後に容易に変更できるような構造としてもよい。この場合、被処理水の粘性等に対応して、容易に最適な曝気撹拌能力を発揮するように現場でインペラの形状を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のインペラは、生物学的水処理設備用の縦軸型曝気撹拌装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 生物処理設備、2 無終端水路、2a 直線水路、2b 循環水路、21 周囲壁、22 区画壁、3 縦軸型曝気撹拌装置、31,41,51,61 インペラ、31A,41A,51A,61A 羽根部、31B,41B,51B,61B つなぎ板、31C,41C,51C,61C 軸、31D,41D,51D,61D 通水孔、310A,310B 羽根板、311 羽根板上部、312 羽根板下部、313,413,513 つなぎ板の端部、31E 連結部、31F 昇降装置、33 駆動部、7 ガイド板、X 羽根部の長さ、Y1 隙間の長さ、Y2 つなぎ板の端部までの長さ

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
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図6A
図6B
図6C
図7
図8