(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】光造形用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/04 20060101AFI20240125BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20240125BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240125BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240125BHJP
A61C 7/08 20060101ALI20240125BHJP
A61M 16/06 20060101ALI20240125BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240125BHJP
【FI】
C08F290/04
B29C64/264
B33Y70/00
B33Y80/00
A61C7/08
A61M16/06 D
B29C64/106
(21)【出願番号】P 2020060709
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100174779
【氏名又は名称】田村 康晃
(72)【発明者】
【氏名】伊東 美咲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲司
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001939(JP,A)
【文献】特開昭63-233907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/106
C08F 290/04
B29C 64/264
B33Y 70/00
B33Y 80/00
A61C 7/08
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)及び光重合開始剤(D)を含有し、
前記末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は炭素数2~4のアルキレン基であり、aは1又は2であり、A
1は共役ジエン化合物の重合体及び/又はその水素添加物である。)
で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)、及び下記一般式(II)
【化2】
(式中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4、R
5はそれぞれ独立に、2価の非置換又は置換された炭化水素基であり、R
6は炭素数2~4のアルキレン基であり、bは1又は2であり、A
2は共役ジエン化合物の重合体及び/又はその水素添加物である。)
で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、光造形用樹脂組成物。
【請求項2】
R
2及び/又はR
6がエチレン基である、請求項1に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項3】
R
4及びR
5の炭化水素基が、脂肪族、芳香族及び/又は脂環式の炭素数6~20の炭化水素基である、請求項1又は2に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項4】
前記末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)が、一般式(II)で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項5】
R
5の炭化水素基が、イソホロン基、トリレン基、4,4’-ジフェニルメタン基、ナフチレン基、キシリレン基、フェニレン基、3,3’-ジクロロ-4,4’-フェニルメタン基、トルイレン基、ヘキサメチレン基、4,4’-ジシクロヘキシルメタン基、水添化キシリレン基、トリフェニレンメタン基、及びテトラメチルキシレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項6】
A
1及びA
2の共役ジエン化合物の重合体及び/又はその水素添加物が、ブタジエンの重合体、イソプレンの重合体、及びそれらの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項7】
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体及び/又はその水素添加物の数平均分子量が500~10,000である、請求項1~6のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項8】
R
1及び/又はR
3が水素原子である、請求項1~7のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項9】
前記重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リン酸基、1級及び2級のアミノ基、並びにウレタン結合を含有しないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項10】
前記重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が、多脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項11】
前記多脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体が、トリシクロデカン環、ノルボルナン環、アダマンタン環、及びデカヒドロナフタレン環からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項10に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項12】
前記重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、及びシクロオクタン環からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項13】
前記(メタ)アクリルアミド化合物(B)が、単官能性(メタ)アクリルアミド化合物を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項14】
前記(メタ)アクリルアミド化合物(B)が、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物の硬化物からなる、歯科材料。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物の硬化物からなる、歯科用アライナー。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物の硬化物からなる、歯科用咬合スプリント。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物の硬化物からなる、睡眠時無呼吸症候群用治療具。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光造形用樹脂組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光造形用樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、光造形によって造形したときに、応力保持性、靭性及び耐水性に優れた立体造形物を得ることができる。特に歯科用マウスピースに好適である。
【背景技術】
【0002】
液状の光硬化性樹脂に必要量の制御された光エネルギーを供給して、薄層状に硬化させ、その上にさらに液状光硬化性樹脂を供給した後、制御下に光照射して薄層状に積層硬化させるという工程を繰り返すことによって立体造形物を製造する方法、いわゆる光学的立体造形法に関する多数の提案がなされている。
【0003】
立体造形物を光学的に製造する際の代表的な方法としては、容器に入れた液状光硬化性樹脂組成物の液面に、所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御された紫外線レーザーを選択的に照射して所定の厚さで硬化させて硬化層を形成し、次にその硬化層の上に1層分の液状光硬化性樹脂組成物を供給して、同様に紫外線レーザーを照射して前記と同じように硬化させて連続した硬化層を形成させるという積層操作を繰り返して最終的な形状の立体造形物を製造する液槽光造形という方法が一般に採用されている。この方法による場合は、造形物の形状がかなり複雑であっても、簡単にかつ比較的短時間で精度良く目的とする立体造形物を製造することができるために近年大きな注目を集めている。
【0004】
そして、光造形法によって得られる立体造形物が単なるコンセプトモデルから、テストモデル、試作品等へと用途が展開されるようになっており、それに伴ってその立体造形物は造形精度に優れていることが益々要求されるようになっている。しかも、そのような特性と併せて目的に合わせた特性も優れていることが求められている。とりわけ、歯科材料分野においては、歯科用マウスピースは、患者個人ごとに形状が異なり、かつ形状が複雑であることから、光造形法の応用が期待されている。
【0005】
歯科用マウスピースは、歯科用アライナーと呼ばれる歯並びを矯正するために歯列に装着するもの、歯科用咬合スプリントと呼ばれる顎位を矯正するために装着するもの、睡眠時無呼吸症候群の治療のために夜間就寝中に歯列に装着するもの、歯ぎしりによる歯の摩耗を抑制するために歯列に装着するもの、コンタクトスポーツにおいて、競技中に歯牙や顎骨に大きな外力が加わることにより発生する外傷を低減し、顎口腔系及び脳を保護するために口腔内に装着するもの等である。近年、歯科矯正においては審美性の良さや外したいときに外せるため急速に利用が拡大している装置である。また、睡眠時無呼吸症候群は医療において注目されている症例であり、その治療用具として急速に利用が進んでいる。
【0006】
これら、歯科用マウスピースには、応力保持性、靭性及び耐水性が共通して要求されている。応力保持性が損なわれると矯正力や衝撃吸収性を喪失し、装着具としての機能を果たさないものになり、靭性が損なわれると装着感が悪いものとなったり、破壊しやすくなると頻繁に作り直すことが必要となってしまうといった問題がある。さらに、耐水性が損なわれると力学的特性が低下し、やはり矯正力や衝撃吸収性を喪失したり、破壊しやすくなり実用に耐えないものとなる問題がある。
【0007】
また、通常、歯科用マウスピース、睡眠時無呼吸症候群用治療具を作製する際には、口腔内の印象を取得することが必要となるが、その不快感から患者負担となることや、技工操作に熟練を要するといった課題が従来から指摘されていた。近年では、デジタル技術の発達から、印象取得については、光学的な口腔内スキャンを応用する試みがなされ、成形においては光学的立体造形を応用する試みがなされている。造形においては光硬化性樹脂組成物を使用するが、一般に応力保持性及び耐水性を発現する樹脂組成物ほど、低極性のモノマーを使用する傾向となるため硬化性が低くなり、硬化物の応力保持性に劣る傾向にあり、特に光学的立体造形においては、光照射時間が極端に短くかつ一層一層の造形毎に酸素に暴露されるため、特に硬化が不十分となりやすく、これまで応力保持性と靭性、耐水性を両立することが困難であった。
【0008】
このような背景の中、硬化物の靭性及び耐水性に優れ、光学的立体造形が可能な技術として、例えば、特許文献1には、重合基を有するポリブタジエンからなる光硬化性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の光硬化性樹脂組成物は、歯科用アライナー、歯科用咬合スプリント及び睡眠時無呼吸症候群用治療具としては、強度が不十分であり、応力保持性については何ら記載されていない。
【0011】
そこで本発明は、硬化物の応力保持性、靭性及び耐水性に優れ、とりわけ光学的立体造形によって成形される、歯科用マウスピースに好適な光造形用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)及び光重合開始剤(D)を含有し、
前記末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)が、下記一般式(I)
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基であり、R
2は炭素数2~4のアルキレン基であり、aは1又は2であり、A
1は共役ジエン化合物の重合体及び/又はその水素添加物である。)
で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)、及び下記一般式(II)
【化2】
(式中、R
3は水素原子又はメチル基であり、R
4、R
5はそれぞれ独立に、2価の非置換又は置換された炭化水素基であり、R
6は炭素数2~4のアルキレン基であり、bは1又は2であり、A
2は共役ジエン化合物の重合体及び/又はその水素添加物である。)
で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、光造形用樹脂組成物;
[2]R
2及び/又はR
6がエチレン基である、[1]に記載の光造形用樹脂組成物;
[3]R
4及びR
5の炭化水素基が、脂肪族、芳香族及び/又は脂環式の炭素数6~20の炭化水素基である、[1]又は[2]に記載の光造形用樹脂組成物;
[4]前記末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)が、一般式(II)で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[5]R
5の炭化水素基が、イソホロン基、トリレン基、4,4’-ジフェニルメタン基、ナフチレン基、キシリレン基、フェニレン基、3,3’-ジクロロ-4,4’-フェニルメタン基、トルイレン基、ヘキサメチレン基、4,4’-ジシクロヘキシルメタン基、水添化キシリレン基、トリフェニレンメタン基、及びテトラメチルキシレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[6]A
1及びA
2の共役ジエン化合物の重合体及び/又はその水素添加物が、ブタジエンの重合体、イソプレンの重合体、及びそれらの水素添加物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[7]末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体及び/又はその水素添加物の数平均分子量が500~10,000である、[1]~[6]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[8]R
1及び/又はR
3が水素原子である、[1]~[7]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[9]前記重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リン酸基、1級及び2級のアミノ基、並びにウレタン結合を含有しないことを特徴とする、[1]~[8]に記載の光造形用樹脂組成物;
[10]前記重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が、多脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[11]前記多脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体が、トリシクロデカン環、ノルボルナン環、アダマンタン環、及びデカヒドロナフタレン環からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、[10]に記載の光造形用樹脂組成物;
[12]前記重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、及びシクロオクタン環からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、[1]~[9]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[13]前記(メタ)アクリルアミド化合物(B)が、単官能性(メタ)アクリルアミド化合物を含む、[1]~[12]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[14]前記(メタ)アクリルアミド化合物(B)が、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、[1]~[13]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物;
[15][1]~[14]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物の硬化物からなる、歯科材料;
[16][1]~[14]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物の硬化物からなる、歯科用アライナー;
[17][1]~[14]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物の硬化物からなる、歯科用咬合スプリント;
[18][1]~[14]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物の硬化物からなる、睡眠時無呼吸症候群用治療具;
[19][1]~[14]のいずれかに記載の光造形用樹脂組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光造形用樹脂組成物は、硬化物の応力保持性、靭性及び耐水性に優れ、とりわけ光学的立体造形によって成形される、歯科用マウスピースに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の光造形用樹脂組成物は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)及び光重合開始剤(D)を含有する。前記末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)及び(a-II)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性など)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。また、本明細書において、式中の各記号の数値も、適宜組み合わせ可能である。
【0015】
[末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)]
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、本発明の光造形用樹脂組成物において、光造形用樹脂組成物の硬化物に柔軟性及び耐水性を付与するために用いられる。また、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、光で硬化した際に、造形精度に優れる。末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、共役ジエン重合体骨格が極めて低極性で疎水性であるため、耐水性に優れると考えられる。
【0016】
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)として、上記一般式(I)で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)(以下、これを「末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)」という。)、及び上記一般式(II)で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)(以下、これを「末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)」という。)について説明する。
【0017】
[末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)]
式(I)の各記号について説明する。R1は水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。R2は炭素数2~4のアルキレン基であり、例として、エチレン基、1,3-プロピレン基、1,2-プロピレン基、1,4-ブチレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基、1,1-ジメチルエチレン基が挙げられ、エチレン基が好ましい。aは1又は2であり、2が好ましい。
【0018】
また、式(I)において、基A1は共役ジエン化合物の重合体及び/又はその水素添加物である。共役ジエン化合物の例としては、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ファルネセンなどが挙げられる。基A1は、ブタジエン及び/又はその水素添加物;イソプレン及び/又はその水素添加物;ブタジエン及びイソプレン及び/又はこれらの水素添加物から構成されていることが好ましい。
【0019】
基A1の共役ジエン化合物の重合体に関し、共役ジエン重合体のミクロ構造は特に制限されないが、共役ジエンがブタジエンである場合には、その1,2-結合単位の含有量が1~99モル%であることが好ましく、2.5~95モル%であることがより好ましい。また、共役ジエン化合物が、イソプレンである、又はブタジエンとイソプレンの混合物である場合は、その1,2-結合単位の含有量及び3,4-結合単位の含有量の合計が1~99モル%であることが好ましく、2.5~95モル%であることがより好ましい。
【0020】
また、基A1が2種以上の共役ジエン(例えば、ブタジエンとイソプレン)を含む場合は、それらの結合形態は特に制限はなく、ランダム、テーパード、完全交互、一部ブロック状、又はブロック状であってもよく、それらの2種以上の組合せであってよい。
【0021】
基A1の水素添加物は、通常、共役ジエン重合体を製造し、これを水素添加することによって導入される。共役ジエン重合体が水素添加された末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は、共役ジエン重合体が水素添加されていない末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)よりも、保存安定性が高い。そこで、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)が、共役ジエン重合体に水素添加物を含む場合には、水素添加率は50モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0022】
なお、基A1の水素添加物の水素添加率は、ヨウ素価測定、赤外分光測定、NMR測定などにより求めることができる。
【0023】
基A1は、本発明の目的及び効果の妨げにならない限り、共役ジエン重合体以外に、その他のモノマー単位を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、メタクリル酸メチル、ビニルメチルエーテル、N-ビニルカルバゾール、β-ピネン、8,9-p-メンテン、ジペンテン、メチレンノルボルネン、2-メチレンテトラヒドロフランなどに由来する構造単位が挙げられる。基A1は、これらのモノマーを、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0024】
基A1の数平均分子量は、500~10,000の範囲であることが好ましく、750~5,000の範囲であることがより好ましく、1,000~3,000の範囲であることがさらに好ましい。基A1の数平均分子量が500以上である場合、光造形用樹脂組成物の硬化物が高い靭性を得やすい傾向にあり、10,000以下である場合、光造形用樹脂組成物が適切な流動性を得られる傾向にある。なお、ここでいう数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求まるポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0025】
本発明の基A1の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量:Mw/Mn)は、組成物の適切な粘度及び硬化物の高い靭性を得やすいことから、1.0~2.0であることが好ましく、1.0~1.5であることがより好ましく、1.0~1.25であることがさらに好ましい。このような分子量分布の基A1は、リビングアニオン重合法により得ることができる。重量平均分子量は、数平均分子量と同様に、GPC法により測定できる。
【0026】
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)の製造方法は特に限定されず、その製法の如何に拘わらず上記一般式(I)で表される化合物、及びその化合物を含有する光造形用樹脂組成物は本発明の範囲に包含されるが、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)は好ましくは以下の方法で製造できる。
【0027】
<末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)の代表的な製法例>
(1)テトラヒドロフラン溶媒中で1,4-ジリチオ-1,1,4,4-テトラフェニルブタンなどのジアニオン系開始剤を用いて共役ジエン化合物を重合後に、エチレンオキシドを添加して末端リチウムオキシドに変換し、メタノールを添加して反応を完全に停止させて、下記一般式(V)
【化3】
(式中、R
2、A
1、及びaは上記と同一意味を有する。)
で表される末端水酸基変性共役ジエン重合体を得る。
【0028】
(2)A
1の骨格に相当する共役ジエン化合物の重合体が水素添加されている末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、すなわち、共役ジエン重合体の水素添加物を含む末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)を製造するには、上記(1)の方法で得られた末端水酸基変性共役ジエン重合体を、例えば、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素系溶媒中で、水素添加触媒の存在下で、通常、反応温度として20~100℃の範囲で、水素圧力0.1~10MPaの範囲の条件下で水素添加すればよい。前記水素添加触媒としては、例えば、ラネーニッケル触媒;Pt、Pd、Ru、Rh、Niなどの金属をカーボン、アルミナ、硅藻土などの担体に担持させた不均一触媒;ニッケル、コバルトなどの第9、10族の金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物又は有機リチウム化合物などの組み合わせからなるチーグラー・ナッタ触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛又はマグネシウムなどを含む有機金属化合物の組合せからなるメタロセン系触媒などが挙げられる。
(3)一般式(V)で表される末端水酸基変性共役ジエン重合体1モルに対して、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物((メタ)アクリル酸クロリド等)又は(メタ)アクリル酸無水物を反応させることによって、下記一般式(I)
【化4】
(式中、R
1、R
2、A
1、及びaは上記と同一意味を有する。)
で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)を製造する。
【0029】
[末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)]
式(II)の各記号について説明する。R3は水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。R4、R5はそれぞれ独立に、2価の非置換又は置換された炭化水素基であり、該炭化水素基が、脂肪族、芳香族及び/又は脂環式の炭素数6~20の炭化水素基であることが好ましい。R6は炭素数2~4のアルキレン基であり、例として、エチレン基、1,3-プロピレン基、1,2-プロピレン基、1,4-ブチレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基、1,1-ジメチルエチレン基が挙げられ、エチレン基が好ましい。bは1又は2であり、2が好ましい。
【0030】
また、式(II)において、基A2は共役ジエン化合物の重合体及びその水素添加物であり、基A1と同様である。
【0031】
前記R4、R5が脂肪族炭化水素基の場合、例として、直鎖状又は分岐鎖状の、アルキレン基、アルケニレン基などが挙げられる。アルキレン基としては、例えば、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、エイコサメチレン基などが挙げられる。アルケニレン基としては、例えば、1-ヘキセニレン基、2-ヘキセニレン基、3-ヘキセニレン基などが挙げられる。
【0032】
前記R4、R5が脂環式炭化水素基の場合、例として、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、ジメチルシクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基などが挙げられる。シクロアルケニレン基としては、例えば、シクロヘキセニレン基、シクロヘプテニレン基、シクロオクテニレン基、シクロノネニレン基、シクロデセニレン基などが挙げられる。
【0033】
前記R4、R5が芳香族炭化水素基の場合、例として、アリーレン基が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、メチルフェニレン基、キシリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントリレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基などが挙げられる。
【0034】
これらの炭化水素基は、異性体がある場合、本発明の効果を有する限り、その異性体を含む。また、前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基からなる群から選ばれる2種以上を組みあわせた基であってもよく、例えば、アルキレン基とアリーレン基との組み合わせ;シクロアルキレン基とアリーレン基との組み合わせ;アルキレン基とシクロアルキレン基との組み合わせ;アルキレン基とシクロアルキレン基とアリーレン基との組み合わせであってもよい。
【0035】
前記炭化水素基が有する置換基の数は、通常1~10個であり、1~8個が好ましく、1~6個がより好ましく、1~4個がさらに好ましい。前記炭化水素基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基;炭素数1~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基;炭素数6~14のアリール基;炭素数3~20のシクロアルキル基などが挙げられる。これらの置換基は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、テトラメチルフェニル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロイコシル基などが挙げられる。なお、これらの置換基は、異性体がある場合、本発明の効果を有する限り、その異性体を含む。
【0036】
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)は、後記するように、一般式;R5-(NCO)2(R5は前記と同一意味を有する。)で表されるジイソシアネート化合物を用いて好ましく製造することができ、R5の好ましい具体例としては、イソホロン基、トリレン基、4,4’-ジフェニルメタン基、ナフチレン基、キシリレン基、フェニレン基、3,3’-ジクロロ-4,4’-フェニルメタン基、トルイレン基、ヘキサメチレン基、4,4’-ジシクロヘキシルメタン基、水添化キシリレン基、トリフェニレンメタン基、テトラメチルキシレン基などが挙げられる。
【0037】
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)の製法は特に限定されず、その製法の如何に拘わらず上記一般式(II)で表される化合物、及びその化合物を含有する光造形用樹脂組成物は本発明の範囲に包含されるが、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)は好ましくは以下の方法で製造できる。
【0038】
<末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)の代表的な製法例>
(4)下記一般式(VI)
【化5】
(式中、R
5は上記と同一意味を有する。)
で表されるジイソシアネート1モルに対して、下記一般式(VII)
【化6】
(式中、R
3及びR
4は上記と同一意味を有する。)
で表される水酸基含有(メタ)アクリレートを、一般式(VI)の一方のイソシアネート基と反応させて、下記一般式(VIII)
【化7】
(式中、R
3、R
4及びR
5は上記と同一意味を有する。)
で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを生成し;次いで
【0039】
(5)上記(4)で得られる一般式(VIII)で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを、下記一般式:(IX)
【化8】
(式中、R
6、A
2、及びbは上記と同一意味を有する。)
で表される末端水酸基変性共役ジエン重合体と反応させることによって、下記一般式(II)
【化9】
(式中、R
3、R
4、R
5、R
6、A
2、及びbは上記と同一意味を有する。)
で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)を製造する。
【0040】
上記(4)の反応は、一般式(VII)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートを、必要に応じて、3級アミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、4-N,N-ジメチルピリジン、4-ピロリジノピリジン)、有機スズ触媒(例えば、ジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレエートなどのジブチルスズ化合物)、カチオン触媒及びアニオン触媒(例えば、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)などのアルキル金属、金属の酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコキシドなどの化合物など)などを用いて、一般式(VI)で表されるジイソシアネートと反応させるのが好ましく、それによって上記した一般式(VIII)で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを円滑に得ることができる。前記反応温度としては、20~80℃が好ましい。
【0041】
上記(5)の反応は、一般式(IX)で表される末端水酸基変性共役ジエン重合体を(4)と同様に、一般式(VIII)で表されるイソシアネート基含有(メタ)アクリレートと反応させるのが好ましく、それによって上記した一般式(II)で表される末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)を円滑に得ることができる。前記反応温度としては、20~80℃が好ましい。
【0042】
一般に、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)及び末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)は、いずれも常温では低粘度の液状~高粘度の液状を呈しており、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)として適当なものを選んで組み合わせることによって、取り扱い性に優れる低粘度の光造形用樹脂組成物を調製できる。また、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と(メタ)アクリルアミド化合物(B)と重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)を組み合わせることによって、光学的立体造形法で造形した際の硬化物の応力保持性、靭性及び耐水性に優れる光造形用樹脂組成物を調製できる。
【0043】
本発明の光造形用樹脂組成物は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)として、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I)及び末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)のうちの1種のみを含有していてもよく、又は2種を含有していてもよい。中でも光造形用樹脂組成物の硬化性、硬化物の靭性及び耐水性がより優れる観点から、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II)が好ましい。末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)の数平均分子量は、500~10,000の範囲であることが好ましく、750~5,000の範囲であることが好ましく、1,000~3,000の範囲であることがさらに好ましい。末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)の数平均分子量が500以上である場合、光造形用樹脂組成物の硬化物が高い靭性を得やすい傾向にあり、10,000以下である場合、光造形用樹脂組成物が適切な流動性を得られる傾向にある。
【0044】
末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)の含有量は、応力保持性、靭性及び耐水性が優れる観点から、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)及びその他の重合性単量体の総量(以下、「重合性成分の総量」ともいう。)を100質量%とした場合に、1~25質量%であることが好ましく、2.5~20質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
[(メタ)アクリルアミド化合物(B)]
(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、本発明の光造形用樹脂組成物における粘度の低減、及び硬化物への強度の付与のために用いられる。
【0046】
本発明の(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、特に限定されないが、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)と組み合わせた際の末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)との混和性が良く、光造形用樹脂組成物の硬化物の靭性に優れる点から、(メタ)アクリルアミド基を1個有する単官能性(メタ)アクリルアミド化合物が好ましい。また、(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、特に限定されないが、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)と組み合わせた際の末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)との混和性が良く、光造形用樹脂組成物の硬化性に優れる点から、アクリルアミド基を1個有する単官能性アクリルアミド化合物がより好ましい。また、(メタ)アクリルアミド化合物(B)が有する(メタ)アクリルアミド基は、3級アミド基であることが好ましい。3級アミド基が備える置換基は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~8のアルキル基が好ましい。前記アルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~5がより好ましく、1~4がさらに好ましい。ある好適な実施形態では、(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、1分子中に3級アミド基と3級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド化合物を含む。他の好適な実施形態では、(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、アミノ基を有さず、3級アミド基を有する(メタ)アクリルアミド化合物を含む。
【0047】
本発明の光造形用樹脂組成物で用いる(メタ)アクリルアミド化合物(B)の例としては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、光造形用樹脂組成物の硬化性及び硬化物の靭性及び耐水性が優れる点で、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドがさらに好ましく、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミドが特に好ましく、N,N-ジエチルアクリルアミドが最も好ましい。
【0048】
(メタ)アクリルアミド化合物(B)の含有量は、重合性成分の総量を100質量%とした場合に、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、30~70質量%がさらに好ましい。また、(メタ)アクリルアミド化合物(B)の含有量について、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)と組み合わせた際の相溶性、光造形用樹脂組成物の硬化性の点から、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)の含有量より多いことが好ましく、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A):(メタ)アクリルアミド化合物(B)の質量比として、(A):(B)1:1.1~1:20がより好ましく、1:1.5~1:15がさらに好ましい。
【0049】
[重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)]
重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)(以下、「脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)」又は「重合性単量体(C)」ともいう。)は、本発明の光造形用樹脂組成物において、強度及び耐水性を付与するために用いられる。また、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)は極性が極めて低く、(メタ)アクリルアミド化合物(B)は極性が高いため、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と、(メタ)アクリルアミド化合物(B)では相溶しないが、脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)によって相溶し、低粘度で均一な光造形用樹脂組成物を得ることができる。また、一般的に多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を配合した場合、脆化し靭性を損ないやすい傾向となるが、脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)は、芳香環を含有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体と比較して構造に柔軟性があるため脆化を起こしにくく、靭性を損ないにくい。さらに、脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)は、芳香環含有化合物のようにπ電子相互作用がないため、低粘度化するため、造形性に優れた光造形用樹脂組成物が得られやすい傾向となる。ある好適な実施形態としては、芳香環を含有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を実質的に含有しない光造形用樹脂組成物が挙げられる。「芳香環を含有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を実質的に含有しない」とは、光造形用樹脂組成物における当該芳香環を含有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体の含有量が、5質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましく、0.1質量%未満であることがさらに好ましい。芳香環を含有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体としては、特に限定されず、ビスフェノールA骨格を有するジ(メタ)アクリレート(エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。「重合体骨格を含有しない」とは、ダイマー、トリマー、オリゴマー等を含め、単量体が重合して構成される繰り返し構造を含有しないことを意味する。例えば、ポリ(オキシアルキレン)基を含む脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体は、アルキレンオキシドが重合した繰り返し構造であるポリ(オキシアルキレン)基を含むため、重合性単量体(C)には含まない。一方、エチレンオキシド変性水添ビスフェノールAジメタクリレートは、酸素原子を介して各シクロヘキサン環に結合するエチレンオキシド単位を1個ずつ有する化合物については重合体骨格に相当しないため、重合性単量体(C)に含まれる。
【0050】
脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)としては、多官能である限りその官能基の数((メタ)アクリロイルオキシ基の数)に特に制限はないが、得られる硬化物の機械的強度などの観点から、1分子中における(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、2~10であることが好ましく、2~6であることがより好ましく、2~4であることがさらに好ましく、2又は3であることが特に好ましく、2であることが最も好ましい。
【0051】
脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が有する脂環式骨格の種類に特に制限はなく、芳香環に属さない各種の脂環式骨格とすることができる。脂環式骨格は、炭素原子及び水素原子のみから構成され、炭素原子が環状に結合した化合物であり、飽和化合物であってもよく、不飽和化合物であってもよいが、飽和化合物であることが好ましい。
【0052】
脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)としては、例えば、脂環式骨格として単脂環構造を備える単脂環式多官能(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体、脂環式骨格として多脂環構造を備える多脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体などが挙げられる。脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が単脂環構造と多脂環構造とを含む場合、多脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体に含む。前記単脂環構造しては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環;シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロオクタジエン環等のシクロアルケン環などが挙げられる。前記多脂環構造としては、例えば、トリシクロデカン環(例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環等)、ノルボルナン環、アダマンタン環、デカヒドロナフタレン環等のスピロ構造を含まない多環式シクロアルカン環;スピロ[3.4]オクタン環、スピロ[4.4]ノナン環、スピロ[4.5]デカン環等のスピロ環などが挙げられる。これらの脂環式骨格の中でも、得られる硬化物の応力保持性、靭性などの観点から、多脂環構造が好ましく、スピロ構造を含まない多環式シクロアルカン環がより好ましい。当該多脂環構造における環の数は、2~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましく、2~3であることがさらに好ましい。また前記ヘテロ環式骨格の具体例としては、例えば、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、イミダゾリジン環、ピペリジン環、モルホリン環などが挙げられる。脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が、単脂環構造を有する多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体を含有する場合、当該重合性単量体に含まれるは、単脂環の数は1個であってもよく、2個以上(例えば、シクロアルカン環を2個)であってもよい。
【0053】
脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)において、当該脂環式骨格は1価の基として存在していてもよいが、2価以上の基として存在していてもよく、2価の基として存在することが好ましい。2価以上の基として存在する場合、複数存在する結合部位(結合手)のうちの一部がアルキル基等の置換基と結合していてもよく、このような例としては、例えば、イソボルナン環などが挙げられる。
【0054】
脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)が有する脂環式骨格の数に特に制限はなく、1個のみ有していてもよいし、2個以上有していてもよい。脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)における脂環式骨格を構成する炭素原子の総数は、本発明の効果がより顕著に優れることなどから、5~20であることが好ましく、6~18であることがより好ましく、8~12であることがさらに好ましく、9~11であることが特に好ましい。
【0055】
脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)は、得られる光造形用樹脂組成物の硬化物の耐水性の観点から、ウレタン結合を含有しないことが好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リン酸基、1級及び2級のアミノ基、並びにウレタン結合を含有しないことがより好ましい。これらの官能基はヘテロ原子に結合した水素を含有するため、極性が高く、本発明の光造形用樹脂組成物の硬化物が吸水しやすくなり、耐水性が低下する傾向となる。
【0056】
本発明の脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、アダマンタントリオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらの中でも、光造形用樹脂組成物の硬化物の靭性を損なわず、強度に優れる観点から、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートがより好ましい。脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)の含有量は、重合性成分の総量を100質量%とした場合に、脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)の含有量が1.0~60質量%が好ましく、5.0~50質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましい。重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)の含有量が50質量%以下であると、光造形用樹脂組成物の硬化物の柔軟性が良好となる。また、脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)の含有量は、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と、(メタ)アクリルアミド化合物(B)との相溶性、光造形用樹脂組成物の硬化性の点から、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)と、(メタ)アクリルアミド化合物(B)との合計質量(以下、「重合体(A)と化合物(B)との合計質量」ともいう。)より少ないことが好ましく、重合体(A)と化合物(B)との合計質量と、重合性単量体(C)との質量比として、(A)+(B):(C)=9:1~5.5:4.5がより好ましく、8.5:1.5~6:4がさらに好ましい。
【0058】
本発明の光造形用樹脂組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲で(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)以外の重合性単量体を含むことができる。このような重合性単量体としては、例えば、単官能性(メタ)アクリル酸エステル、α-シアノアクリル酸、α-ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸などのエステル類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ-N-ビニル誘導体、及びスチレン誘導体などが挙げられる。
【0059】
本発明の光造形用樹脂組成物に含まれる重合性成分は、実質的に末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)のみから構成されていてもよい。重合性成分が、実質的に末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)のみから構成されるとは、末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)及び脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)以外の他の重合性成分の含有量が重合性成分の総量を100質量%とした場合に、10.0質量%未満であり、好ましくは5.0質量%未満であり、より好ましくは1.0質量%未満であり、さらに好ましくは0.1質量%未満であり、特に好ましくは0.01質量%未満であることを意味する。
【0060】
[光重合開始剤(D)]
本発明に用いられる光重合開始剤(D)は、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている光重合開始剤が好ましく用いられる。
【0061】
光重合開始剤(D)としては、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α-ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α-アミノケトン系化合物、ゲルマニウム化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
これらの光重合開始剤(D)の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキシド類(塩を含む)、及びα-ジケトン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、紫外領域及び可視光領域での光硬化性に優れ、レーザー、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、及びキセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す光造形用樹脂組成物が得られる。
【0063】
(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのカリウム塩、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのアンモニウム塩が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。さらに、特開2000-159621号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0064】
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドのナトリウム塩を光重合開始剤(D)として用いることが特に好ましい。
【0065】
α-ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナントレンキノン、4,4’-オキシベンジル、アセナフテンキノンが挙げられる。これらの中でも、可視光領域の光源を使用する場合には、カンファーキノンが特に好ましい。
【0066】
ゲルマニウム化合物としては、例えば、ベンゾイルトリメチルゲルマニウム(IV)等のモノアシルゲルマニウム化合物;ジベンゾイルジエチルゲルマニウムもしくはビス(4-メトキシベンゾイル)-ジエチルゲルマニウム等のジアシルゲルマニウム化合物が挙げられる。
【0067】
本発明の光造形用樹脂組成物における光重合開始剤(D)の含有量は特に限定されないが、得られる光造形用樹脂組成物の硬化性などの観点から、重合性成分の総量100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましい。光重合開始剤(D)の含有量が前記総量100質量部に対し、0.1質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、成形品が得られないおそれがある。光重合開始剤(D)の含有量は、前記総量100質量部に対し、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。一方、光重合開始剤(D)の含有量が前記総量100質量部に対し、20質量部を超える場合、光重合開始剤自体の溶解性が低い場合には、光造形用樹脂組成物からの光重合開始剤の析出を招くおそれがある。光重合開始剤(D)の含有量は、前記総量100質量部に対し、10質量部以下がより好ましく、7.5質量部以下がさらに好ましい。
【0068】
本発明の光造形用樹脂組成物は、上記の末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)及び光重合開始剤(D)を含有していれば特に限定はなく、例えば、これ以外の成分を含んでいてもよい。本発明の光造形用樹脂組成物は、公知の方法に準じて製造できる。
【0069】
本発明の光造形用樹脂組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、光硬化性の向上を目的として、重合促進剤を含むことができる。重合促進剤としては、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチル等のアミン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、光造形用樹脂組成物に優れた硬化性を付与する観点から、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、及び4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1つが好ましく用いられる。
【0070】
本発明の光造形用樹脂組成物には、ペースト性状を調整するために、又は、光造形用樹脂組成物の硬化物の機械的強度を高めるために、フィラーがさらに配合されていてもよい。フィラーとして、例えば、有機フィラー、無機フィラー、有機-無機複合フィラーなどが挙げられる。フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
有機フィラーの材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用できる。
【0072】
無機フィラーの材料としては、例えば、石英、シリカ、アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-酸化バリウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスが挙げられる。これらもまた、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機フィラーの形状は特に限定されず、不定形フィラー又は球状フィラーなどを適宜選択して使用できる。
【0073】
本発明の光造形用樹脂組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、柔軟性、流動性などの改質を目的として他の重合体を添加できる。例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム及びその水素添加物、ポリブタジエンゴム、液状ポリブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、アクリルゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、又はスチレン系エラストマーを添加できる。添加可能な他の重合体の具体例としては、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(α-メチルスチレン)ブロック共重合体、ポリ(p-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(p-メチルスチレン)ブロック共重合体等のスチレン系ブロック共重合体、又はこれらの水素添加物などが挙げられる。ある好適な実施形態では、他の重合体(プレポリマーを含む)を実質的に含有しない光造形用樹脂組成物が挙げられる。他の重合体を「実質的に含有しない」とは、光造形用樹脂組成物における他の重合体の含有量が、5質量%未満であり、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましく、0.01質量%未満であってもよい。
【0074】
本発明の光造形用樹脂組成物は、必要に応じて、軟化剤を含有していてもよい。軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイルなどの石油系軟化剤、及び、パラフィン、落花生油、ロジンなどの植物油系軟化剤が挙げられる。これらの軟化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。軟化剤の含有量は、本発明の趣旨を損なわない限り特に制限はないが、通常、重合性成分の総量100質量部に対して200質量部以下であり、好ましくは100質量部以下である。
【0075】
また、本発明の光造形用樹脂組成物には、劣化の抑制、又は光硬化性の調整を目的として、公知の安定剤を配合できる。かかる安定剤としては、例えば、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤が挙げられる。安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエンが挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合禁止剤の含有量は、重合性成分の総量100質量部に対し、0.1~5.0質量部が好ましい。
【0077】
また、本発明の光造形用樹脂組成物には、色調又はペースト性状の調整を目的として、公知の添加剤を配合できる。かかる添加剤としては、例えば、着色剤(顔料、染料)、有機溶媒、増粘剤が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
本発明の光造形用樹脂組成物は、造形性に優れ、硬化後の応力保持性、靭性及び耐水性に優れる。従って、本発明の光造形用樹脂組成物は、このような利点が生かされる用途に適用でき、特に、歯科用アライナー、歯科用咬合スプリント及び睡眠時無呼吸症候群用治療具に最適である。本発明の光造形用樹脂組成物を用いる硬化物の形状は、各用途に応じて変更できる。また、本発明の光造形用樹脂組成物は、必要に応じて、歯科用アライナー、歯科用咬合スプリント及び睡眠時無呼吸症候群用治療具などの用途毎に、各成分(末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(A)、(メタ)アクリルアミド化合物(B)、重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)、重合開始剤(D)及び各種任意の成分((A)、(B)、及び(C)以外の重合性成分、重合促進剤(E)、フィラー、他の重合体、軟化剤、安定剤、添加剤など))の種類及び含有量を調整できる。本発明の光造形用樹脂組成物によって得られる硬化物の3点曲げ強さとしては、特に限定されず、30MPa以上であることが好ましく、40MPa以上であることがより好ましく、50MPa以上であることがさらに好ましい。硬化物の3点曲げ強さは、150MPa以下であってもよい。本発明の光造形用樹脂組成物によって得られる硬化物の曲げ弾性率としては、特に限定されず、0.3~3.0GPaの範囲であることが好ましく、0.5~2.5GPaの範囲であることがより好ましく、0.8~2.0GPaの範囲であることがさらに好ましい。
【0079】
本発明の光造形用樹脂組成物は、硬化後の応力保持性、靭性及び耐水性に優れる成形品あるいは立体造形物、さらにはその他の硬化物が得られるという特性を活かして種々の用途に使用することができ、各種成形品の製造、被覆用、真空成形用金型などに用いることができる。
【0080】
本発明の光造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来公知の光学的立体造形法(例えば、吊り上げ式液槽光造形法)及び装置(例えば、DWS社製 DigitalWax(登録商標) 028J-Plus等の光造形機)のいずれもが使用できる。そのうちでも、本発明では、樹脂を硬化させるための光エネルギーとして、活性エネルギー光線を用いるのが好ましい。「活性エネルギー光線」は、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などの光硬化性樹脂組成物を硬化させ得るエネルギー線を意味する。例えば、活性エネルギー光線は、300~400nmの波長を有する紫外線であってもよい。活性エネルギー光線の光源としては、Arレーザー、He-Cdレーザーなどのレーザー;ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、水銀灯、蛍光灯などの照明などが挙げられ、レーザーが特に好ましい。光源としてレーザーを用いた場合には、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮することが可能であり、しかもレーザー光線の良好な集光性を利用して、造形精度の高い立体造形物を得ることができる。
【0081】
上記したように、本発明の光造形用樹脂組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来公知の方法及び従来公知の光造形システム装置のいずれもが採用でき特に制限されないが、本発明で好ましく用いられる光学的立体造形法の代表例としては、所望のパターンを有する硬化層が得られるように、光造形用樹脂組成物に活性エネルギー光線を選択的に照射して硬化層を形成する工程、次いでその硬化層にさらに未硬化液状の光造形用樹脂組成物を供給し、同様に活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する積層する工程を繰り返すことによって、最終的に目的とする立体造形物を得る方法が挙げられる。また、それによって得られる立体造形物はそのまま用いてもよく、場合によってはさらに光照射によるポストキュアあるいは熱によるポストキュアなどを行って、その力学的特性あるいは形状安定性などを一層高いものとしてから使用するようにしてもよい。
【0082】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
【実施例】
【0083】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で多くの変形が当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0084】
[合成例1][末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-I-1)の製造]
5LのSUSオートクレーブ中、空気雰囲気下でアクリル酸クロライド160gと、ピリジン200gと、末端を水酸基で変性した水素添加ポリブタジエン「GI-1000」(数平均分子量:1,500、Mw/Mn:1.15、1,2-結合単位の含有量:7モル%、ヨウ素価測定による水素添加率:96モル%、日本曹達株式会社製)1500gを混合し、60℃にて48時間反応させた。反応液をトルエン1Lで希釈した後、蒸留水0.5Lで3回洗浄、蒸留水/メタノールの50/50(体積比)の溶媒で再沈、減圧乾燥して、末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-I-1)を得た。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-I-1)について、IR測定を行い1735cm-1(CO)のカルボニル基の吸収を確認した。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-I-1)について数平均分子量(Mn)をGPC法で測定したところ、2,600であった。
【0085】
[合成例2][末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II-1)の製造]
5LのSUSオートクレーブ中、空気雰囲気下でイソホロンジイソシアネート390gと、アルミキレートM3.5gと、2-ヒドロキシエチルアクリレート200gを混合し、60℃にて1時間反応させ、反応物Aを合成した。次に、空気雰囲気下にて、先に合成した反応物A600gと、末端を水酸基で変性した水素添加ポリブタジエン「GI-1000」(数平均分子量:1,500、Mw/Mn:1.15、1,2-結合単位の含有量:7モル%、ヨウ素価測定による水素添加率:96モル%、日本曹達株式会社製)1500gと、アルミキレートM12.0gを混合し、60℃にて2時間反応させた。残存NCOが0.1%以下であることを確認して反応を終了し、反応液をトルエン1Lで希釈した後、蒸留水0.5Lで3回洗浄、蒸留水/メタノールの50/50(体積比)の溶媒で再沈、減圧乾燥して、末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-II-1)を得た。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-II-1)について、1H-NMR測定を行い、2つのNHシグナル(4.55ppm、4.70ppm)を確認した。また、IR測定を行い1728cm-1(CO)、3339cm-1(NH)のウレタン結合の吸収を確認した。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-II-1)について数平均分子量(Mn)をGPC法で測定したところ、2,800であった。なお、「残存NCO(%)」とは、化合物の質量中に占めるイソシアネート部位の質量(モル数と42.02(NCO分子量)の乗数)を%で示したものである。
【0086】
[合成例3][末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II-2)の製造]
GI-1000を、末端を水酸基で変性した水素添加ポリブタジエン「GI-3000」(数平均分子量:3,100、Mw/Mn:1.12、1,2-結合単位の含有量:7モル%、ヨウ素価測定による水素添加率:96モル%、日本曹達株式会社製)に変えたこと以外、合成例2と同様に反応、洗浄を行い、末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-II-2)を得た。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-II-2)について、1H-NMR測定を行い、2つのNHシグナル(4.55ppm、4.70ppm)を確認した。また、IR測定を行い1728cm-1(CO)、3339cm-1(NH)のウレタン結合の吸収を確認した。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-II-2)について数平均分子量(Mn)をGPC法で測定したところ、4,200であった。
【0087】
[合成例4][末端(メタ)アクリロイル変性共役ジエン重合体(a-II-3)の製造]
GI-1000を、末端を水酸基で変性した未水添ポリブタジエン「G-1000」(数平均分子量:1,400、Mw/Mn:1.15、1,2-結合単位の含有量:85モル%、日本曹達株式会社製)に変えたこと及びイソホロンジイソシアネートをトリレンジイソシアネートに変えたこと以外、合成例2と同様に反応、洗浄を行い、末端アクリロイル変性未水添ポリブタジエン(a-II-3)を得た。得られた末端アクリロイル変性未水添ポリブタジエン(a-II-3)について、1H-NMR測定を行い、2つのNHシグナル(4.55ppm、4.70ppm)を確認した。また、IR測定を行い1728cm-1(CO)、3339cm-1(NH)のウレタン結合の吸収を確認した。得られた末端アクリロイル変性水素添加ポリブタジエン(a-II-3)について数平均分子量(Mn)をGPC法で測定したところ、2,900であった。
【0088】
実施例又は比較例に係る光造形用樹脂組成物に用いた各成分を略号とともに以下に説明する。
【0089】
[(メタ)アクリルアミド化合物(B)]
DEAA:N,N-ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製)
NIPAM:N-イソプロピルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製)
ACMO:N-アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製)
[重合体骨格を含有しない脂環式多官能性(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(C)]
TCDDMA:トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製)
ADDA:アダマンタンジオールジアクリレート(三菱ガス化学株式会社製)
CHDDMA:1,4-シクロヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製)
【0090】
[光重合開始剤(D)]
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
BAPO:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
【0091】
[重合禁止剤]
BHT:3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン
【0092】
[実施例1~11及び比較例1~4]
表1及び表2に示す分量で各成分を常温(20℃±15℃、JIS(日本工業規格) Z 8703:1983)下で混合して、実施例1~11及び比較例1~4に係る光造形用樹脂組成物としてのペーストを調製した。
【0093】
<応力保持性>
各実施例及び各比較例に係る光造形用樹脂組成物の硬化物について、光造形機(DWS社製 DIGITALWAX(登録商標) 020D)を用いて、長さ60mm、幅20mm、厚さ1.0mmのシート状の硬化物を作製し、JIS K 6251:2010(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)ダンベル状8号形の打抜き刃形で打ち抜き、引張試験片を作製した(n=5)。得られた試験片を用いて、応力保持性(永久歪み)を評価した。具体的には、万能試験機(株式会社島津製作所製、EZ Test EZ-SX 500N)を用いて、治具間距離10mmでクロスヘッドスピード20mm/minで0.5mm引張った後、そのまま24時間保持し、応力の減衰挙動を観察した。この試験で、初期の応力に対する24時間保持後の応力が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
応力保持率(%)=(24時間保持後の応力/初期の応力)×100
【0094】
<靭性(曲げ弾性率、曲げ強さ、破断点変位)>
各実施例及び各比較例に係る光造形用樹脂組成物の硬化物について、JIS T 6501:2012(義歯床用アクリル系レジン)に記載の寸法の試験片(長さ64.0mm、幅10.0mm、厚さ3.3mm)を作製し、空気中で1日保管後、曲げ強さ試験を行って評価し、これを初期値とした。すなわち、万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、クロスヘッドスピード5mm/minで曲げ強さ試験を実施した(n=5)。試験片の曲げ弾性率としては、0.3~3.0GPaの範囲が好ましく、0.5~2.5GPaの範囲がより好ましく、0.8~2.0GPaの範囲がさらに好ましい。曲げ強さ(3点曲げ強さ)としては、30MPa以上が好ましく、40MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましい。破断点変位としては、破断しないことが好ましい。破断点変位について、最後まで破断しない、又は変位20mm以上で破断した場合を靭性が良好「○」とし、変位10mm超20mm未満で破断した場合を靭性が中程度「△」とし、変位10mm以下で破断した場合を靭性が悪い「×」とし、△以上を合格とした。
【0095】
<耐水性>
靭性の測定で作製した硬化物と同様にして作製した、各実施例及び各比較例に係る光造形用樹脂組成物の硬化物について、空気中で1日保管後さらに37℃の水中に168時間浸漬後、上記曲げ強さ試験と同様に、曲げ強さを測定した(n=5)。上記靭性における曲げ強さの測定結果(空気中で1日保管後)を「初期の曲げ強さ」とし、初期の曲げ強さに対する、37℃の水中に168時間浸漬後の曲げ強さ(以下、「水中浸漬168時間後の曲げ強さ」という。)の変化率(低下率)が10%以下であれば耐水性に優れ、7%以下であればより耐水性に優れる。
曲げ強さの変化率(低下率)(%)=〔{初期の曲げ強さ(MPa)-水中浸漬168時間後の曲げ強さ(MPa)}/初期の曲げ強さ(MPa)〕×100
【0096】
【0097】
【0098】
表1及び表2に示す通り、実施例1~11における光造形用樹脂組成物は、硬化物の応力保持率、靭性及び耐水性に優れていた。特に、実施例1~11に係る光造形用樹脂組成物の硬化物の応力保持性は、比較例1、3、4の樹脂組成物より優れていた。また、実施例1~11に係る光造形用樹脂組成物の硬化物の強度は、比較例1及び3、4に係る樹脂組成物の硬化物のものに比べて優れていた。実施例1~11に係る光造形用樹脂組成物の硬化物の靭性は、比較例3の硬化物のものに比べて優れていた。実施例1~11の光造形用樹脂組成物の硬化物の耐水性は、比較例1、3、4の硬化物のものに比べて優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の光造形用樹脂組成物は、硬化物の応力保持性、靭性及び耐水性に優れるため、歯科用マウスピースに特に適している。