(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240125BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240125BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20240125BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J7/35 K
(21)【出願番号】P 2020065290
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-221051(JP,A)
【文献】特開2017-022919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0083714(US,A1)
【文献】特開2014-057448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 3/46
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源からの電力を一括して受電可能なエリアに設けられた電力供給システムであって、
系統電源と複数の電力負荷とを接続する第一配電線と、
前記第一配電線の中途部と前記複数の電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一配電線に出力可能な第一発電部と、
前記第一配電線の前記中途部と前記複数の電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能な複数の蓄電池と、
前記第一配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一配電線に出力可能な第二発電部と、
前記複数の蓄電池の制御を実行可能な制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記第一発電部の発電電力と前記複数の電力負荷の消費電力に基づいて前記複数の蓄電池の設定を行う第一の制御と、
事前に設定された前記エリア内の優先事項に基づいて、前記第一の制御における前記複数の蓄電池の設定の補正を行う第二の制御と、
を実行可能である、
電力供給システム。
【請求項2】
前記第一配電線を介して系統電源からの電力を一括して受電可能な第一受電盤と、
前記第一受電盤に前記第一配電線を介して接続されると共に、前記複数の電力負荷と前記第一発電部と前記複数の蓄電池とが接続されたグループを構成する第二受電盤と、
を具備し、
前記制御部は、
前記第一の制御において、前記グループ内で、前記複数の蓄電池の放電電力を前記複数の電力負荷に融通するように前記複数の蓄電池の設定を行う、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記第一受電盤に前記第一配電線とは異なる第二配電線を介して接続されると共に、前記第二発電部に接続される第三受電盤を具備する、
請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第一の制御において、
前記第一受電盤と前記第二受電盤との間で受け渡しされる電力を小さくするように前記複数の蓄電池の設定を行う、
請求項2または請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記優先事項には、
系統電源と前記第一受電盤との間で受け渡しされる電力を小さくすることが含まれる、
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記優先事項には、
系統電源から前記第一受電盤が受ける電力が所定の閾値を越えた場合に、当該受ける電力を前記所定の閾値よりも小さくすることが含まれる、
請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第二の制御において、
系統電源から前記第一受電盤が電力を受ける場合であって、かつ、前記複数の蓄電池に、待機する蓄電池が含まれる場合、前記待機する蓄電池を放電させる、
請求項2から請求項6までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力を充放電可能な複数の蓄電池を具備する電力供給システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、複数の蓄電池及び太陽光発電部を具備し、当該複数の蓄電池の放電電力や太陽光発電部の発電電力を複数の住宅(負荷)に供給可能な電力供給システムが記載されている。前記電力供給システムにおいて、複数の蓄電池及び太陽光発電部は、系統電源と負荷とを接続する配電線に設けられる。
【0004】
そして、複数の負荷の合計の消費電力に対して太陽光発電部の発電電力だけでは不足する場合に、複数の蓄電池のうち必要な台数の蓄電池に放電指示が行われる。放電指示が行われた蓄電池は、前記配電線を流れる電力に応じた電力を放電する。これにより、複数の蓄電池の放電電力を、複数の負荷に供給することができる。
【0005】
しかしながら、蓄電池への放電指示(制御)は、複数の負荷の合計の消費電力と太陽光発電部の発電電力とに基づいて行われるため、他の電力に関する情報が考慮されていなかった。すなわち、前記電力供給システムでは、例えば複数の負荷への蓄電池からの電力供給以外に他の優先事項がある場合に、当該複数の負荷への蓄電池からの電力供給と当該優先事項との両立を図ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、例えば複数の負荷への蓄電池からの電力供給以外に他の優先事項がある場合に、当該複数の負荷への蓄電池からの電力供給と当該優先事項との両立を図ることができる電力供給システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、系統電源からの電力を一括して受電可能なエリアに設けられた電力供給システムであって、系統電源と複数の電力負荷とを接続する第一配電線と、前記第一配電線の中途部と前記複数の電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一配電線に出力可能な第一発電部と、前記第一配電線の前記中途部と前記複数の電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能な複数の蓄電池と、前記第一配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一配電線に出力可能な第二発電部と、前記複数の蓄電池の制御を実行可能な制御部と、を具備し、前記制御部は、前記第一発電部の発電電力と前記複数の電力負荷の消費電力に基づいて前記複数の蓄電池の設定を行う第一の制御と、事前に設定された前記エリア内の優先事項に基づいて、前記第一の制御における前記複数の蓄電池の設定の補正を行う第二の制御と、を実行可能であるものである。
【0010】
請求項2においては、前記第一配電線を介して系統電源からの電力を一括して受電可能な第一受電盤と、前記第一受電盤に前記第一配電線を介して接続されると共に、前記複数の電力負荷と前記第一発電部と前記複数の蓄電池とが接続されたグループを構成する第二受電盤と、を具備し、前記制御部は、前記第一の制御において、前記グループ内で、前記複数の蓄電池の放電電力を前記複数の電力負荷に融通するように前記複数の蓄電池の設定を行うものである。
【0011】
請求項3においては、前記第一受電盤に前記第一配電線とは異なる第二配電線を介して接続されると共に、前記第二発電部に接続される第三受電盤を具備するものである。
【0012】
請求項4においては、前記制御部は、前記第一の制御において、前記第一受電盤と前記第二受電盤との間で受け渡しされる電力を小さくするように前記複数の蓄電池の設定を行うものである。
【0013】
請求項5においては、前記優先事項には、系統電源と前記第一受電盤との間で受け渡しされる電力を小さくすることが含まれるものである。
【0014】
請求項6においては、前記優先事項には、系統電源から前記第一受電盤が受ける電力が所定の閾値を越えた場合に、当該受ける電力を前記所定の閾値よりも小さくすることが含まれるものである。
【0015】
請求項7においては、前記制御部は、前記第二の制御において、系統電源から前記第一受電盤が電力を受ける場合であって、かつ、前記複数の蓄電池に、待機する蓄電池が含まれる場合、前記待機する蓄電池を放電させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、エリア内において、例えば複数の電力負荷への蓄電池からの電力供給以外に他の優先事項がある場合に、当該複数の電力負荷への蓄電池からの電力供給と当該優先事項との両立を図ることができる。
【0018】
請求項2においては、グループ内における複数の電力負荷への電力の融通と優先事項との両立を図ることができる。
【0019】
請求項3においては、エリア内において、第二受電盤により構成されるグループとは別で発電を行うことができる。
【0020】
請求項4においては、エリア内において、グループ内外に流れる電力を小さくすることができる。
【0021】
請求項5においては、エリア内外に流れる電力を小さくすることができる。
【0022】
請求項6においては、エリア内へと流れる電力が所定の値よりも大きくなるのを抑制することができる。
【0023】
請求項7においては、エリア内へと流れる電力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムの構成を示したブロック図。
【
図3】電力融通制御のうち事前設定制御を示したフローチャート。
【
図4】電力融通制御のうち蓄電システム動作制御を示したフローチャート。
【
図5】(a)買電がある場合の電力の供給態様の一例を示したブロック図。(b)
図5(a)に示す状態から電力融通制御を行った場合の電力の供給態様の一例を示したブロック図。
【
図6】(a)売電がある場合の電力の供給態様の一例を示したブロック図。(b)
図5(a)に示す状態から電力融通制御を行った場合の電力の供給態様の一例を示したブロック図。
【
図7】第一実施形態に係る電力融通補正制御を示したフローチャート。
【
図8】同じく、電力融通補正制御による処理の内容と結果を記載した図。
【
図9】(a)第一の状態である場合の電力の供給態様の一例を示したブロック図。(b)
図9(a)に示す状態から電力融通補正制御を行った場合の電力の供給態様の一例を示した図。
【
図10】(a)第二の状態である場合の電力の供給態様の一例を示したブロック図。(b)
図10(a)に示す状態から電力融通補正制御を行った場合の電力の供給態様の一例を示した図。
【
図11】(a)第三の状態である場合の電力の供給態様の一例を示したブロック図。(b)
図11(a)に示す状態から電力融通補正制御を行った場合のパターン1の電力の供給態様の一例を示した図。
【
図12】
図11(a)に示す状態から電力融通補正制御を行った場合のパターン2の電力の供給態様の一例を示した図。
【
図13】(a)第四の状態である場合の電力の供給態様の一例を示したブロック図。(b)
図13(a)に示す状態から電力融通補正制御を行った場合の電力の供給態様の一例を示した図。
【
図14】第二実施形態に係る電力融通補正制御を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
【0026】
図1に示す電力供給システム1は、所定の事業者(アグリゲータ)によりエネルギー管理が行われる所定の地域(エリア)に適用される。アグリゲータは、高圧一括受電を行って、受けた電力を前記所定の地域における住宅や商業施設等の種々の需要家に供給することで、一括したエネルギー管理を行っている。なお以下では、本実施形態に係る電力供給システム1が適用された前記所定の地域を「一括受電エリアA」と称する。
【0027】
一括受電エリアAには、複数の住宅Hの集合体であって、当該複数の住宅H間で互いにエネルギー(主に電力)を融通するグループ(以下では「住宅群A1」と称する)が設けられる。住宅群A1においては、使用される電力がアグリゲータから各住宅Hへ売電される。また、住宅群A1で余剰した電力をアグリゲータへ販売することもできる。
【0028】
なお、本実施形態においては、住宅群A1に3つの住宅Hが設けられるものとする。各住宅Hには、電力を消費する電気機器(住宅負荷HL)が設けられる。住宅負荷HLは、系統電源Kと接続される。
【0029】
また、一括受電エリアAには、住宅群A1に含まれない商業施設Sや図示せぬ会社や病院等が設けられる。以下では、前記商業施設Sや図示せぬ会社や病院等の、住宅群A1に含まれないグループを「非住宅群A2」と称する。非住宅群A2においても、住宅群A1と同様に、使用される電力がアグリゲータから売電される。また、非住宅群A2で余剰した電力をアグリゲータへ売電することもできる。
【0030】
なお、本実施形態において、非住宅群A2に商業施設Sが設けられるものとする。商業施設Sには、電力を消費する電気機器(非住宅負荷SL)が設けられる。非住宅負荷SLは、系統電源Kと接続される。
【0031】
電力供給システム1は、一括受電エリアAに適用され、当該一括受電エリアA内で所定の需要家に電力を供給するためのものである。また、電力供給システム1は、一括受電エリアAの住宅群A1において、複数の住宅H間で電力を融通することができる。
図1及び
図2に示すように、電力供給システム1は、第一配電線10、一括受電盤20、スマートメータ30、第二配電線40、非住宅群受電盤50、非住宅群発電部60、住宅群受電盤70、総負荷センサ80、蓄電システム90及びEMS装置100を具備する。
【0032】
第一配電線10は、系統電源Kと3つの住宅Hとを接続するものである。具体的には、第一配電線10の一端側は、系統電源Kと接続される。また、第一配電線10の他端側は、3つに分岐すると共に、分岐したそれぞれの端部が住宅H(住宅負荷HL)に接続される。なお以下では、第一配電線10における前記一端側(系統電源K側)を「上流側」と、前記他端側(住宅H側)を「下流側」と称する場合がある。
【0033】
一括受電盤20は、系統電源Kからの電力を一括して受けるための受電設備である。一括受電盤20は、第一配電線10のうち、上流側の端部近傍(系統電源Kの直ぐ下流側)に設けられる。一括受電盤20は、受けた電力を下流側へと配電することができる。また、一括受電盤20は、系統電源Kへと電力を渡すことができる。このように、一括受電エリアAにおいては、系統電源Kとの電力の受け渡しは、必ず一括受電盤20を介して行われる。
【0034】
スマートメータ30は、電力を検出可能なものである。スマートメータ30は、一括受電盤20内で、第一配電線10の中途部に設けられる。スマートメータ30は、後述するEMS装置100と接続され、当該EMS装置100へ検出結果を送信することができる。スマートメータ30は、図示せぬ遮断器を具備する。スマートメータ30は、系統電源Kから第一配電線10に受けた電力(下流側へ流れる電力)が契約容量を超えた場合に、前記遮断器により第一配電線10の電力流通を遮断することができる。
【0035】
こうして、スマートメータ30は、系統電源Kから一括受電エリアAが受けた電力を検出することができる。すなわち、スマートメータ30の検出結果から一括受電エリアA全体としての買電に関する情報を取得することができる。また、スマートメータ30は、一括受電エリアAから系統電源Kへと逆潮流される電力を検出することができる。すなわち、スマートメータ30の検出結果から一括受電エリアA全体としての売電に関する情報を取得することができる。
【0036】
第二配電線40は、系統電源Kと商業施設Sとを接続するものである。具体的には、第二配電線40の一端側の端部は、一括受電盤20内で第一配電線10の中途部(より詳細には、スマートメータ30の下流側)と接続される。なお以下では、第二配電線40と第一配電線10との接続部を「接続部10a」と称する。また、第二配電線40の他端側の端部は、商業施設S(非住宅負荷SL)と接続される。なお以下では、第二配電線40における前記一端側(第一配電線10側)を「上流側」と、前記他端側(非住宅負荷SL側)を「下流側」と称する場合がある。
【0037】
非住宅群受電盤50は、一括受電盤20から第二配電線40へと配電された電力を受けるための受電設備である。非住宅群受電盤50は、第二配電線40の下流側に設けられる。非住宅群受電盤50は、受けた電力を非住宅負荷SLへと配電することができる。また、非住宅群受電盤50は、後述する非住宅群発電部60の発電電力を受けて、一括受電盤20へ渡すことができる。
【0038】
非住宅群発電部60は、太陽光を利用して発電する装置である。非住宅群発電部60は、太陽電池パネル等により構成される。非住宅群発電部60は、例えば商業施設の屋上等の日当たりの良い場所に設置される。非住宅群発電部60は、所定の配電線を介して、非住宅群受電盤50内で、第二配電線40に接続される。
【0039】
住宅群受電盤70は、一括受電盤20から第一配電線10の下流側へと配電された電力(すなわち、住宅群A1側へ流れる電力)を受けるための受電設備である。住宅群受電盤70は、第一配電線10のうち、一括受電盤20の直ぐ下流側に設けられる。住宅群受電盤70は、受けた電力を後述する蓄電システム90や住宅負荷HLへと配電することができる。また住宅群受電盤70は、住宅群A1内の電力(太陽光発電部91の発電電力及び蓄電池92の放電電力)を受けて、太陽光発電部91の発電電力のうち余剰した電力を一括受電盤20へ渡すことができる。このように、住宅群A1においては、一括受電盤20との電力の受け渡しは、必ず住宅群受電盤70を介して行われる。
【0040】
総負荷センサ80は、電力を検出可能なものである。総負荷センサ80は、住宅群受電盤70内で、第一配電線10の中途部(当該第一配電線10が分岐する直ぐ上流側)に設けられる。総負荷センサ80は、後述するEMS装置100と接続され、当該EMS装置100へ検出結果を送信することができる。総負荷センサ80は、下流側にある全ての(3つの)住宅負荷HLへと流れる電力を検出することができる。すなわち、総負荷センサ80の検出結果から、全ての住宅負荷HLの消費電力の合計(以下では「住宅総負荷」と称する)を取得することができる。
【0041】
蓄電システム90は、太陽光を利用して発電可能であると共に、電力を充放電可能なものである。蓄電システム90は、太陽光発電部91、蓄電池92、電力センサ93及びパワコン94を具備する。
【0042】
太陽光発電部91は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部91は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部91は、住宅Hの屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光発電部91は、後述するパワコン94に接続される。
【0043】
蓄電池92は、電力を充放電可能なものである。蓄電池92は、例えばリチウムイオン電池等により構成される。蓄電池92は、後述するパワコン94に接続される。蓄電池92は、稼動中における充放電等の動作の態様が設定された運転モードとして、放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モードを有する。なお、これらのモードについての詳細な説明は後述する。なお、本実施形態において、蓄電池92の最大放電電力は、2000Wであるとする。また、蓄電池92の最大充電電力は、2000Wであるとする。また、蓄電池92には、蓄電池92の稼動状態を維持するための電池残量として所定の残量(以下では「最低残量」と称する)が設定される。また、蓄電池92は、例えば放電効率を考慮して放電の閾値(最小放電電力)が任意に設定される。放電の閾値としては、任意の値(例えば、1000W)を採用することができる。また、蓄電池92は、放電の閾値が設定されている場合であっても、EMS装置100の指示により当該設定にかかわらず放電することもできる。
【0044】
電力センサ93は、電力を検出可能なものである。電力センサ93は、住宅群受電盤70内で第一配電線10の中途部に設けられる。具体的には、電力センサ93は、住宅群受電盤70内で後述するパワコン94と第一配電線10との接続部10aの直ぐ上流側に設置される。第一配電線10において、電力センサ93と前記(パワコン94と第一配電線10との)接続部10aとの間には、他の電線や電気機器が接続されていない。電力センサ93は、パワコン94と接続され、パワコン94へ検出結果を送信することができる。
【0045】
パワコン94は、電力を適宜変換可能なハイブリッドパワーコンディショナである。パワコン94は、上述の如く太陽光発電部91及び蓄電池92に接続される。また、パワコン94は、第一配電線10の中途部に接続される。具体的には、パワコン94は、住宅群受電盤70内で総負荷センサ80よりも上流側に接続される。このように、パワコン94は、太陽光発電部91と蓄電池92と第一配電線10との間に設けられる。
【0046】
こうして、太陽光発電部91の発電電力は、パワコン94を介して第一配電線10に出力することができる。また、太陽光発電部91の発電電力は、パワコン94を介して蓄電池92に充電することができる。また、蓄電池92の放電電力は、パワコン94を介して第一配電線10に出力することができる。また、第一配電線10を流れる電力(系統電源Kからの電力)は、パワコン94を介して蓄電池92に充電することができる。
【0047】
また、パワコン94は、上述の如く電力センサ93と接続される。パワコン94は、電力センサ93の設置箇所を流れる電力の大きさ及び向き(上流側又は下流側)に関する情報を取得することができる。パワコン94は、電力センサ93から取得した情報に基づいて、蓄電池92の充放電の制御を行うことができる。
【0048】
こうして、蓄電システム90は、太陽光発電部91の発電電力や蓄電池92の放電電力を、パワコン94を介して第一配電線10へ出力することができる。また、蓄電システム90は、太陽光発電部91の発電電力や系統電源Kからの電力を、パワコン94を介して蓄電池92に充電することができる。
【0049】
本実施形態において、蓄電システム90は3つ設けられる。3つの蓄電システム90(より詳細には、蓄電システム90のパワコン94)は、第一配電線10にそれぞれ互いに直列となるように接続される。具体的には、3つの蓄電システム90は、住宅群受電盤70内で、総負荷センサ80よりも上流側に1つずつ順番に接続される。各蓄電システム90は、3つの住宅Hのうちいずれかの住宅Hに所有されている。
【0050】
図2に示すEMS装置100は、蓄電システム90の動作を制御することによって、電力供給システム1における電力の供給態様を制御するものである。EMS装置100は、3つの蓄電システム90のそれぞれのパワコン94に接続される。EMS装置100は、パワコン94を介して蓄電池92を制御することができる。具体的には、EMS装置100は、蓄電池92の運転モードを切り換えることができる。
【0051】
また、EMS装置100は、パワコン94を介して蓄電システム90及び太陽光発電部91に関する情報を取得することができる。具体的には、例えば、EMS装置100は、蓄電池92の電池残量に関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、蓄電池92の実行中の運転モードに関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、蓄電池92の放電量に関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、太陽光発電部91の発電電力に関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、全ての(3つの)太陽光発電部91の発電電力に関する情報に基づいて、当該全ての太陽光発電部91の発電電力の合計(以下では「PV総発電」と称する)を取得することができる。
【0052】
また、EMS装置100は、スマートメータ30に接続される。EMS装置100は、スマートメータ30から上述の如く一括受電エリアA全体としての買電電力及び売電電力に関する情報を取得することができる。また、EMS装置100は、総負荷センサ80に接続される。EMS装置100は、総負荷センサ80から上述の如く住宅総負荷に関する情報を取得することができる。
【0053】
また、EMS装置100は、電力の供給態様に関する種々の制御を実行することができる。EMS装置100が実行する制御には、後述する電力融通制御や電力融通補正制御が含まれる。
【0054】
上述の如き電力供給システム1の構成において、当該電力供給システム1を構成する各種の機器のうち、住宅群受電盤70、総負荷センサ80及び蓄電システム90は、住宅群A1に含まれる。一方、一括受電盤20、スマートメータ30、非住宅群受電盤50及び非住宅群発電部60は、非住宅群A2に含まれる。
【0055】
こうして、系統電源Kから一括受電盤20が受けた電力(すなわち、非住宅群A2が受けた電力)は、一括受電エリアA全体として買電した電力となる。また、一括受電盤20から系統電源Kへと渡された電力(すなわち、非住宅群A2から渡された電力)は、一括受電エリアA全体として売電した電力となる。
【0056】
これに対して、一括受電盤20から住宅群受電盤70が受けた電力(すなわち、非住宅群A2から住宅群A1が受けた電力)は、住宅群A1が(アグリゲータから)買電した電力となるものの、一括受電エリアAとしては、系統電源Kとの関係で電力の受け渡しは発生していない。すなわち、一括受電エリアA全体として見れば、買電した電力は増えない。また、一括受電盤20へと住宅群受電盤70から渡した電力(すなわち、住宅群A1から非住宅群A2へと渡した電力)は、住宅群A1が(アグリゲータへと)売電した電力となるものの非住宅負荷SLで消費されてしまうため、一括受電エリアAとしては、系統電源Kとの関係で電力の受け渡しは発生していない。すなわち、一括受電エリアA全体として見れば、売電した電力は増えない。
【0057】
以下では、蓄電池92の運転モード(放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モード)について説明する。
【0058】
放電モードは、負荷追従運転により蓄電池92を放電させるモードである。放電モードが実行された場合、蓄電池92は、電力センサ93の検出結果に応じて放電可能な状態となる。具体的には、蓄電池92は、電力センサ93が下流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応する電力を放電する。
【0059】
なお、放電モードが実行された場合において、電力センサ93が下流側へ流れる電力を検出した場合であっても、蓄電池92の電池残量が放電可能な残量でない場合(例えば、電池残量が残量下限値である場合や最低残量である場合)には、蓄電池92は放電することができずに待機状態となる。
【0060】
充電モードは、蓄電池92を充電させるモードである。蓄電池92は、太陽光発電部91が発電している場合、当該太陽光発電部91の発電電力を充電する。また、蓄電池92は、太陽光発電部91が発電していない場合や、太陽光発電部91の発電電力が最大充電電力よりも小さい場合、第一配電線10を流れる電力(例えば系統電源Kからの電力)も充電する。また、太陽光発電部91の発電電力の一部が蓄電池92に充電された場合、当該発電電力の残りは第一配電線10に出力される。
【0061】
なお、充電モードが実行された場合であっても、満充電である場合には蓄電池92は充電できずに待機状態となる。この場合、太陽光発電部91の発電電力の全部が第一配電線10に出力される。
【0062】
待機モードは、蓄電池92を待機させるモードである。待機モードが実行された場合、蓄電池92は稼動したまま待機状態となる(充放電を行わない)。
【0063】
充放電モードは、負荷追従運転により蓄電池92を充放電させるモードである。充放電モードが実行された場合、蓄電池92は、電力センサ93の検出結果に応じて充放電可能な状態となる。
【0064】
具体的には、蓄電池92は、放電モードと同様に、電力センサ93が下流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応する電力を放電する。また、電力センサ93が下流側へ流れる電力を検出した場合であっても、蓄電池92の電池残量が放電可能な残量でない場合には、蓄電池92は放電することができずに待機状態となる。
【0065】
また、充放電モードが実行された場合、蓄電池92は、電力センサ93が上流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応する電力を充電する。すなわち、蓄電池92は、太陽光発電部91が発電している場合であって、発電電力が住宅負荷HLに対して余剰している場合(余剰した分の発電電力が系統電源K側へ流れている場合)に、余剰した分の太陽光発電部91の発電電力を充電する。
【0066】
また、充放電モードが実行された場合、蓄電池92は、太陽光発電部91の発電電力が住宅負荷HLに対して余剰している場合であっても、満充電である場合には充電できない。この場合、太陽光発電部91の発電電力の全部が第一配電線10に出力される。
【0067】
また、充放電モードが実行された場合、蓄電池92は、電力センサ93が上流側及び下流側へ流れる電力を検出しなかった場合には待機状態となる。なお、電力センサ93が上流側及び下流側へ流れる電力を検出しなかった場合とは、例えば太陽光発電部91の発電電力が第一配電線10に出力され、住宅負荷HLに対して余剰も不足もしていない場合(均衡した状態)が想定される。
【0068】
なお、蓄電池92の運転モードは、パワコン94を介して行われるEMS装置100からの指示により切り替えられる。以下では、EMS装置100による蓄電池92の運転モードを実行する(切り替える)ための指示を、それぞれ放電指示、充電指示、待機指示及び充放電指示という場合がある。
【0069】
電力供給システム1は、上述の如く住宅群A1において、複数の住宅H間で電力を融通することができる。以下では、EMS装置100による、電力供給システム1における電力を融通する制御(電力融通制御)について説明する。電力融通制御には、事前設定制御と、蓄電システム動作制御と、が含まれる。
【0070】
まず、
図3のフローチャートを用いて、事前設定制御について説明する。
【0071】
事前設定制御は、後述する蓄電システム動作制御を行うにあたって、所定の条件に基づく設定(後述する放電優先順位の設定)を事前に行うものである。事前設定制御は、EMS装置100により、例えば蓄電システム動作制御が行われる前日の24時(当日の0時)に実行される。
【0072】
ステップS101において、EMS装置100は、各蓄電システム90の蓄電池92の積算放電量を取得する。具体的には、EMS装置100は、蓄電池92ごとに、本日(直近の24時間の間に)放電された電力量の総和を取得する。EMS装置100は、ステップS101の処理を実行した後、ステップS102の処理を実行する。
【0073】
ステップS102において、EMS装置100は、ステップS101で取得した積算放電量に基づいて、全ての蓄電システム90の蓄電池92に対して放電優先順位を設定する。具体的には、EMS装置100は、全ての蓄電池92に対して、積算放電量の少ない順番に高い放電優先順位(本実施形態においては、第1位、第2位、第3位)を設定する。なお、放電優先順位とは、複数の蓄電池92のうちどの蓄電池92を他の蓄電池92に対して優先的に放電させるのかの判断基準となるものである。EMS装置100は、ステップS102の処理を実行した後、事前設定制御を終了する。事前設定制御の後、EMS装置100は、蓄電システム動作制御を実行する。
【0074】
次に、
図4のフローチャートを用いて、蓄電システム動作制御について説明する。
【0075】
蓄電システム動作制御は、事前設定制御で行われた設定(放電優先順位)に基づいて、蓄電システム90の蓄電池92を具体的に動作させるものである。蓄電システム動作制御は、EMS装置100により、予め規定されたタイミング(例えば5分ごと)に繰り返し実行される。
【0076】
ステップS110において、EMS装置100は、現時点の住宅総負荷及びPV総発電に関する情報を取得する。なお、住宅総負荷とは、上述の如く、全ての(3つの)住宅負荷HLの消費電力の合計である。また、PV総発電とは、上述の如く、全ての(3つの)太陽光発電部91の発電電力の合計である。EMS装置100は、ステップS110の処理を実行した後、ステップS120の処理を実行する。
【0077】
ステップS120において、EMS装置100は、住宅総負荷がPV総発電以上であるか否かを判定する。EMS装置100は、住宅総負荷がPV総発電以上であると判定した場合(ステップS120:YES)、ステップS150へ移行する。一方、EMS装置100は、住宅総負荷がPV総発電よりも小さいと判定した場合(ステップS120:NO)、ステップS130へ移行する。
【0078】
ステップS130において、EMS装置100は、充電する蓄電池92の台数を算出する。ステップS130においては、住宅総負荷がPV総発電よりも小さいため、太陽光発電部91の発電電力が住宅負荷HLの消費電力に対して余剰した状態となっている。
【0079】
そこで、EMS装置100は、余剰電力で何台の蓄電池92を充電させるのかを、「充電する蓄電池台数=(PV総発電-住宅総負荷)/蓄電池の最大充電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数に小数点が含まれる場合は、小数点以下は適宜切り上げ又は切り捨てて、充電する蓄電池92の台数を算出する。EMS装置100は、ステップS130の処理を実行した後、ステップS140の処理を実行する。
【0080】
ステップS140において、EMS装置100は、ステップS130にて算出した台数の蓄電池92に充電指示を行う。このとき、EMS装置100は、全ての蓄電池92(又は、充電指示を行うことが可能な蓄電池92)から電池残量を取得し、当該電池残量が少ない蓄電池92から順に前記台数分だけ充電指示を行う(充電に関する設定を行う)。また、EMS装置100は、充電指示を行った蓄電池92以外の蓄電池92に待機指示を行う(待機に関する設定を行う)。
【0081】
こうして、住宅群A1内において余剰電力がある場合は、太陽光発電部91の発電電力をできるだけ蓄電池92に充電する。これにより、住宅群A1内における太陽光発電部91の発電電力の自己消費率を向上させることができる。EMS装置100は、ステップS140の処理を実行した後、蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0082】
また、ステップS120で住宅総負荷がPV総発電以上であると判定した場合に移行するステップS150において、EMS装置100は、最大放電電力で放電可能な蓄電池92の台数を算出する。ステップS150においては、住宅総負荷がPV総発電以上であるため、太陽光発電部91の発電電力が住宅負荷HLの消費電力に対して不足した状態となっている。
【0083】
そこで、EMS装置100は、不足電力を何台の蓄電池92の放電で賄えるのかを、「放電する蓄電池台数=(住宅総負荷-PV総発電)/蓄電池の最大放電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数に小数点が含まれる場合は、小数点以下は適宜切り上げ又は切り捨てて、放電する蓄電池92の台数を算出する。EMS装置100は、ステップS150の処理を実行した後、ステップS160の処理を実行する。
【0084】
ステップS160において、EMS装置100は、事前設定制御により設定された放電優先順位が高い蓄電システムから順に、ステップS150にて算出した台数分の蓄電池92に放電指示を行う(放電に関する設定を行う)。また、EMS装置100は、放電指示を行った蓄電池92以外の蓄電池92に待機指示を行う。
【0085】
こうして、住宅群A1内において不足電力がある場合は、必要な台数だけ蓄電池92の放電を行う。これにより、住宅群A1内における不足電力が、住宅群A1外から供給された電力(例えば系統電源Kからの買電)によって賄われるのを抑制することができる。EMS装置100は、ステップS160の処理を実行した後、蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0086】
以下では、
図5及び
図6を用いて、電力融通制御(蓄電システム動作制御)が実行された場合の、電力の供給態様の具体例について説明する。
【0087】
なお、
図5及び
図6を用いた説明では、3つの蓄電システム90を、上流側から下流側へと順番に、第一蓄電システム90a、第二蓄電システム90b、第三蓄電システム90cと称する場合がある。
【0088】
まず、
図5(a)では、全ての蓄電システム90の太陽光発電部91が発電を行っているものとする。また、第一蓄電システム90aの蓄電池92には放電指示が行われる一方、第二蓄電システム90b及び第三蓄電システム90cの蓄電池92には待機指示が行われているものとする。この状態において、
図5(a)に示す時点で、住宅総負荷がPV総発電以上である場合(ステップS120:YES)、放電する蓄電池92の台数が算出される(ステップS150)。
【0089】
例えば、ステップS150の処理により、放電する蓄電池92の台数が2台として算出される。こうして、放電優先順位に基づいて、第一蓄電システム90aに加えて例えば第二蓄電システム90bの蓄電池92に対しても放電指示が行われて、当該蓄電池92が放電を開始する(ステップS160)。これによって、
図5(b)に示すように、複数の蓄電池92からの放電電力は、
図5(a)に示す状態よりも増加する。
【0090】
その結果、
図5(b)に示す状態においては、住宅負荷HLが住宅群A1内の電力(太陽光発電部91の発電電力及び蓄電池92の放電電力)のみで賄われている。すなわち、
図5(a)に示す状態において、非住宅群A2から住宅群A1へと電力が供給されていたが、
図5(b)に示す状態においては、非住宅群A2から住宅群A1へと電力は供給されていない。このように、蓄電システム動作制御によって、複数の住宅H間で電力の融通が行われ、住宅群A1内において自給率を向上させることができる。
【0091】
次に、
図6(a)では、全ての蓄電システム90の太陽光発電部91が発電を行っているものとする。また、第一蓄電システム90aの蓄電池92には充電指示が行われる一方、第二蓄電システム90b及び第三蓄電システム90cの蓄電池92には待機指示が行われているものとする。また、太陽光発電部91の発電電力は、非住宅群A2側へ逆潮流されている。この状態において、
図6(a)に示す時点で、住宅総負荷がPV総発電よりも小さいため(ステップS120:NO)、充電する蓄電池92の台数が算出される(ステップS130)。
【0092】
例えば、ステップS130の処理により、充電する蓄電池92の台数が2台として算出される。こうして、電池残量の多い少ないに基づいて、第一蓄電システム90aに加えて例えば第二蓄電システム90bの蓄電池92に対しても充電指示が行われて、当該蓄電池92が充電を開始する(ステップS140)。これによって、
図6(b)に示すように、複数の蓄電池92による充電電力は、
図6(a)に示す状態よりも増加する。
【0093】
その結果、
図6(b)に示す状態においては、全ての太陽光発電部91の発電電力は住宅群A1内のみで使用されている。すなわち、
図6(a)に示す状態において、太陽光発電部91の発電電力は、住宅群A1から非住宅群A2へと供給されていたが、
図6(b)に示す状態においては、住宅群A1から非住宅群A2へと電力は供給されていない。このように、蓄電システム動作制御によって、住宅群A1内において太陽光発電部91の発電電力の自己消費率(PV自己消費率)を向上させることができる。
【0094】
このように、電力融通制御によって、住宅群A1においては、3つの蓄電池92の放電電力を、必要に応じて3つの住宅Hの住宅負荷HLへと供給することができる。すなわち、住宅群A1において、複数の住宅H間で電力を融通することができる。なお、放電する蓄電池92の設定は、積算放電量に基づく放電優先順位に従って行われる。こうして、全ての蓄電池92の放電量の均等化を図ることができる。また、住宅群A1においては、3つの太陽光発電部91の発電電力を、できるだけ逆潮流させずに蓄電池92に充電させることができる。すなわち、電力融通制御によれば、住宅群A1内において、自給率やPV自己消費率を向上させることができる。
【0095】
ここで、本実施形態において、電力供給システム1が適用される一括受電エリアAにおいては、住宅群A1の他にも、非住宅群A2が設けられている。しかしながら、電力融通制御は住宅群A1内で取得できる情報(具体的には、パワコン94及び総負荷センサ80から取得できる情報)にのみに基づいて行われる。換言すれば、住宅群A1内での電力融通は、非住宅群A2における電力の状況を何ら考慮せずに行われている。このような状態においては、非住宅群A2、ひいては一括受電エリアA全体としての、電力の供給態様に関する優先事項が反映されていない可能性がある。
【0096】
そこで、本実施形態に係る電力供給システム1においては、電力融通制御(より詳細には、蓄電システム動作制御)が行われた後に、所定の制御(以下では「電力融通補正制御」と称する)を行うことにより、住宅群A1において複数の住宅H間で電力を融通しながらも、非住宅群A2ひいては一括受電エリアA全体としての優先事項を電力の供給態様に反映させるようにしている。
【0097】
以下では、
図7のフローチャート、
図8から
図13を用いて、第一実施形態に係る電力融通補正制御について説明する。
【0098】
なお、
図9から
図13は、電力の供給態様の一例を示した図であり、これらの図を用いた説明では、3つの蓄電システム90を、上流側から下流側へと順番に、第一蓄電システム90a、第二蓄電システム90b、第三蓄電システム90cと称する場合がある。
【0099】
第一実施形態に係る電力融通補正制御においては、住宅群A1において複数の住宅H間で電力を融通しながらも、一括受電エリアA内の自給率及びPV自己消費率の向上を、当該一括受電エリアA全体の優先事項として電力の供給態様に反映させることを目的としている。
【0100】
電力融通補正制御は、EMS装置100により、上述の如く、電力融通制御(より詳細には、蓄電システム動作制御)が行われた後に実行される。すなわち、電力融通補正制御は、蓄電システム動作制御と同様に、事前設定制御が行われた後、予め規定されたタイミング(例えば5分ごと)に繰り返し実行される。
【0101】
ステップS210において、EMS装置100は、現時点の一括受電エリアA全体及び住宅群A1の状態を取得する。具体的には、EMS装置100は、スマートメータ30から取得した情報に基づいて、現時点の系統電源Kと一括受電盤20との電力の受け渡し(すなわち、一括受電エリアA全体の売買電)に関する情報を取得する。また、EMS装置100は、パワコン94から取得した情報に基づいて、住宅群A1の3つの蓄電池92に放電状態、又は、充電状態、待機状態の蓄電池92があるかに関する情報を取得する。
【0102】
なお以下では、
図8に示すように、ステップS210にて取得した状態のうち、一括受電エリアA全体が売電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に放電指示が行われた蓄電池92がある状態を、「第一の状態」と称する。また、一括受電エリアA全体が売電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に充電指示及び待機指示が行われてた蓄電池92がある状態を、「第二の状態」と称する。また、一括受電エリアA全体が買電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に放電指示及び待機指示が行われた蓄電池92がある状態を、「第三の状態」と称する。また、一括受電エリアA全体が買電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に充電指示が行われた蓄電池92がある状態を、「第四の状態」と称する。
【0103】
EMS装置100は、ステップS210の処理を実行した後、ステップS220の処理を実行する。
【0104】
ステップS220において、EMS装置100は、ステップS210で取得した一括受電エリアA全体及び住宅群A1の状態に応じて、電力融通制御における蓄電池92への充放電等の設定の補正として、住宅群A1の蓄電池92の充放電の台数を増減させる。EMS装置100は、ステップS220の処理を実行した後、電力融通補正制御を一旦終了させる。
【0105】
まず、
図8及び
図9を用いて、ステップS210にて取得した状態が、第一の状態である場合の、ステップS220の処理について具体的に説明する。
【0106】
EMS装置100は、第一の状態(一括受電エリアA全体が売電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に放電指示が行われた蓄電池92がある状態)である場合には、住宅群A1の融通制御の補正として、放電指示が行われた蓄電池92の何台かに待機指示を行う。これにより、放電する蓄電池92の台数を減少させ、一括受電エリアAからの売電を減少させる。
【0107】
第一の状態において、EMS装置100は、放電する蓄電池92の何台に待機指示を行うのかを、「待機指示を行う蓄電池台数=一括受電エリアA全体の売電電力/蓄電池92の最大放電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数が小数点が含まれる場合は、系統電源Kへの売電と当該系統電源Kからの買電どちらを許容するかに応じて、小数点以下を切り上げるか、切り捨てるかが決定される。すなわち、系統電源Kへの売電が許容される場合には、小数点以下が切り捨てられる。一方、系統電源Kからの買電が許容される場合には、小数点以下が切り上げられる。
【0108】
ここで、
図9(a)は、電力融通補正制御を実行する時点の、一括受電エリアA全体及び住宅群A1の電力の供給態様の一例を示した図である。
図9(a)の時点では、全ての蓄電システム90の太陽光発電部91が発電を行っているものとする。また、第一蓄電システム90aの蓄電池92には放電指示が行われる一方、第二蓄電システム90b及び第三蓄電システム90cの蓄電池92には待機指示が行われているものとする。また、一括受電エリアA全体として売電(例えば、3000W)が行われている。
【0109】
この状態において、ステップS220の処理により、例えば放電する蓄電池92の1台に待機指示を行うことが算出される。こうして、放電優先順位に基づいて(すなわち、放電指示が行われた蓄電池92のうち放電優先順位の低い順に)、算出された台数(1台)の蓄電池92に待機指示が行われて、当該蓄電池92が放電を停止する。これにより、
図9(b)に示すように、一括受電エリアA全体として売電が(例えば、3000Wから1000Wに)減少することとなる。
【0110】
こうして、第一の状態において、一括受電盤20から住宅群受電盤70へと受ける電力が増加するものの(すなわち、住宅群A1としての買電は増加するものの)、一括受電エリアA全体からすると系統電源Kへの売電を減少させることができる。
【0111】
次に、
図8及び
図10を用いて、ステップS210にて取得した状態が、第二の状態である場合の、ステップS220の処理について具体的に説明する。
【0112】
EMS装置100は、第二の状態(一括受電エリアA全体が売電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に充電指示及び待機指示が行われている蓄電池92がある状態)である場合には、住宅群A1の融通制御の補正として、待機指示が行われた蓄電池92の何台かに充電指示を行う。これにより、充電する蓄電池92の台数を増加させ、一括受電エリアAからの売電を減少させる。
【0113】
第二の状態において、EMS装置100は、待機状態の蓄電池92の何台に充電指示を行うのかを、「充電指示を行う蓄電池台数=一括受電エリアA全体の売電電力/蓄電池92の最大充電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数が小数点が含まれる場合は、系統電源Kへの売電と当該系統電源Kからの買電どちらを許容するかに応じて、小数点以下を切り上げるか、切り捨てるかが決定される。すなわち、系統電源Kへの売電が許容される場合には、小数点以下が切り捨てられる。一方、系統電源Kからの買電が許容される場合には、小数点以下が切り上げられる。
【0114】
ここで、
図10(a)は、電力融通補正制御を実行する時点の、一括受電エリアA全体及び住宅群A1の電力の供給態様の一例を示した図である。
図10(a)の時点では、全ての蓄電システム90の太陽光発電部91が発電を行っているものとする。また、第一蓄電システム90aの蓄電池92には充電指示が行われる一方、第二蓄電システム90b及び第三蓄電システム90cの蓄電池92には待機指示が行われているものとする。また、一括受電エリアA全体として売電(例えば、5000W)が行われている。
【0115】
この状態において、ステップS220の処理により、例えば蓄電池92の3台(すなわち、追加で2台)に充電指示を行うことが算出される。こうして、電池残量に基づいて(すなわち、待機状態の蓄電池92のうち電池残量が少ない蓄電池92から順に)、算出された台数(追加の2台)の蓄電池92に充電指示が行われて、当該蓄電池92が充電を開始する。これにより、
図10(b)に示すように、一括受電エリアA全体として売電が(例えば、5000Wから1000Wに)減少することとなる。
【0116】
こうして、第二の状態において、一括受電盤20から住宅群受電盤70へと受ける電力が増加するものの(すなわち、住宅群A1としての買電が増加するものの)、一括受電エリアA全体からすると系統電源Kへの売電を減少させることができる。
【0117】
次に、
図8、
図11及び
図12を用いて、ステップS210にて取得した状態が、第三の状態である場合の、ステップS220の処理について具体的に説明する。
【0118】
EMS装置100は、第三の状態(一括受電エリアA全体が買電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に放電指示及び待機指示が行われた蓄電池92がある状態)である場合には、住宅群A1の融通制御の補正として、待機指示が行われた蓄電池92の何台かに放電指示を行う。これにより、放電する蓄電池92の台数を増加させ、一括受電エリアAへの買電を減少させる。
【0119】
第三の状態において、EMS装置100は、待機状態の蓄電池92の何台に放電指示を行うのかを、「放電指示を行う蓄電池台数=一括受電エリアA全体の買電電力/蓄電池92の最大放電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数が小数点が含まれる場合は、系統電源Kへの売電と当該系統電源Kからの買電どちらを許容するかに応じて、小数点以下を切り上げるか、切り捨てるかが決定される。すなわち、系統電源Kへの買電が許容される場合には、小数点以下が切り捨てられる。一方、系統電源Kからの売電が許容される場合には、小数点以下が切り上げられる。
【0120】
ここで、ステップS210にて取得した状態が第三の状態である場合において、一括受電エリアAへの買電を減少させる電力の供給態様としては、2通りのパターン(以下では「パターン1」及び「パターン2」と称する)が想定される。そこで以下では、パターン1及びパターン2それぞれについて説明する。
【0121】
まず、第三の状態において、前記電力の供給態様がパターン1である場合について説明する。
【0122】
ここで、
図11(a)は、電力融通補正制御を実行する時点の、一括受電エリアA全体及び住宅群A1の電力の供給態様の一例を示した図である。
図11(a)の時点では、全ての蓄電システム90の太陽光発電部91が発電を行っているものとする。また、第一蓄電システム90a及び第二蓄電システム90bの蓄電池92には放電指示が行われる一方、第三蓄電システム90cの蓄電池92には待機指示が行われているものとする。この状態において、住宅群A1では、3台の太陽光発電部91の発電電力と2台の蓄電池92の放電電力で住宅負荷HLの消費電力が賄われているが、僅かに(1台の蓄電池92の最大放電電力に満たない電力が)不足しているため、住宅群A1(住宅群受電盤70)は当該不足する分の電力を一括受電盤20から受ける。すなわち、住宅群A1では買電が行われている。また、一括受電エリアA全体としても買電(例えば、3000W)が行われている。
【0123】
この状態において、ステップS220の処理により、例えば蓄電池92の3台(すなわち、追加で1台)に放電指示を行うことが算出される。こうして、放電優先順位に基づいて、算出された台数(追加の1台)の蓄電池92に放電指示が行われて、当該蓄電池92が放電を開始する。これにより、住宅群A1内では、放電する蓄電池32が1台追加されたため、太陽光発電部91の発電電力が住宅負荷HLの消費電力に対して余剰することとなる。こうして、一括受電盤20は、当該余剰した電力を住宅群A1(住宅群受電盤70)から受ける。すなわち、住宅群A1では、太陽光発電部91の発電電力の売電が増加する。また、一括受電盤20が受けた電力は、非住宅負荷SLへ供給される。すなわち、
図11(b)に示すように、非住宅負荷SLの一部が住宅群A1からの電力で賄われるため、一括受電エリアA全体として買電が(例えば、3000Wから1000Wに)減少することとなる。なお、複数の蓄電池92が負荷追従運転により放電を行う場合、それぞれ電力センサ93が蓄電システム90のすぐ上流側に設けられるため、下流側の蓄電池92が上流側の蓄電池92よりも放電し易くなる。そのため、
図11(b)に示す一例では、他の蓄電池92や太陽光発電部91により住宅負荷HLの消費電力が賄われるため、最も上流側の蓄電池92は、放電指示を受けているが、放電を行わずに待機している。このように、
図11(a)及び
図11(b)に示す状態は、放電している蓄電池92の台数は変化がないものの(2台のままであるが)、新たに追加された最も下流側の蓄電池92は
図11(a)に示した状態の最も上流側の蓄電池92よりも大きな電力(最大放電電力)の放電を行っている。こうして、余剰することとなった住宅群A1内の電力は、一括受電盤20へと供給される。
【0124】
こうして、第三の状態においてパターン1では、蓄電池92からの放電が増加することにより住宅群A1からすると太陽光発電部91の発電電力の売電が増加するものの、一括受電エリアA全体からすると系統電源Kからの買電を減少させることができる。
【0125】
次に、第三の状態において、前記電力の供給態様がパターン2である場合について説明する。
【0126】
ここで、
図11(a)において、1台の蓄電池92に待機指示が行われている理由とは、3台の太陽光発電部91の発電電力と2台の蓄電池92の放電電力では住宅負荷HLの消費電力に不足しているものの、不足する電力が蓄電池92の前記放電の閾値(例えば、1000W)に満たないためであるとする。
【0127】
この状態において、住宅群A1では、3台の太陽光発電部91の発電電力と2台の蓄電池92の放電電力に加え、住宅群A1(住宅群受電盤70)が一括受電盤20から受けた電力で、住宅負荷HLの消費電力が賄われている。すなわち、住宅群A1では買電が行われている。また、一括受電エリアA全体としても買電(例えば、3000W)が行われている。
【0128】
この状態において、ステップS220の処理により、例えば蓄電池92の3台(すなわち、追加で1台)に放電指示を行うことが算出される。こうして、放電優先順位に基づいて、算出された台数(追加の1台)の蓄電池92に、放電の閾値の設定にかかわらず放電指示が行われて、当該蓄電池92が放電を開始する。これにより、住宅群A1内では、放電する蓄電池32が1台追加され、住宅負荷HLの消費電力が賄われる。こうして、一括受電盤20から住宅群受電盤70が受ける電力は、ほぼ0Wとなる。すなわち、住宅群A1では買電が減少している。また、
図12に示すように、一括受電盤20から住宅群A1(住宅群受電盤70)が受ける電力が減少するため、一括受電エリアA全体として買電が(例えば、3000Wから1000Wに)減少することとなる。
【0129】
こうして、第三の状態においてパターン2では、蓄電池92からの放電が増加することにより住宅群A1からすると買電が減少し、これにより一括受電エリアA全体からすると系統電源Kからの買電を減少させることができる。
【0130】
次に、
図8及び
図13を用いて、ステップS210にて取得した状態が、第四の状態である場合の、ステップS220の処理について具体的に説明する。
【0131】
EMS装置100は、第四の状態(一括受電エリアA全体が買電を行っている状態であって、かつ、住宅群A1の3つの蓄電池92に充電指示が行われた蓄電池92がある状態)である場合には、住宅群A1の融通制御の補正として、充電指示が行われた蓄電池92の何台かに待機指示を行う。これにより、充電する蓄電池92の台数を減少させ、一括受電エリアAへの買電を減少させる。
【0132】
第四の状態において、EMS装置100は、充電する蓄電池92の何台に待機指示を行うのかを、「待機指示を行う蓄電池台数=一括受電エリアA全体の買電電力/蓄電池92の最大充電電力」の式によって算出する。なお、前記式によって算出された数が小数点が含まれる場合は、系統電源Kへの売電と当該系統電源Kからの買電どちらを許容するかに応じて、小数点以下を切り上げるか、切り捨てるかが決定される。すなわち、系統電源Kへの買電が許容される場合には、小数点以下が切り捨てられる。一方、系統電源Kへの売電が許容される場合には、小数点以下が切り上げられる。
【0133】
ここで、
図13(a)は、電力融通補正制御を実行する時点の、一括受電エリアA全体及び住宅群A1の電力の供給態様の一例を示した図である。
図13(a)の時点では、全ての蓄電システム90の太陽光発電部91が発電を行っているものとする。また、全ての蓄電システム90の蓄電池92に充電指示が行われているものとする。この状態において、住宅群A1では、3台の太陽光発電部91の発電電力に対して3台の蓄電池92が充電を行った後の残りの電力と、住宅群A1(住宅群受電盤70)が一括受電盤20から受けた電力で、住宅負荷HLの消費電力が賄われている。すなわち、住宅群A1では買電が行われている。また、一括受電エリアA全体としても買電(例えば、3000W)が行われている。
【0134】
この状態において、ステップS220の処理により、例えば充電する蓄電池92の2台に待機指示を行うことが算出される。こうして、電池残量に基づいて、算出された台数(2台)の蓄電池92に待機指示が行われて、当該蓄電池92が充電を停止する。これにより、住宅群A1内では、3台の太陽光発電部91の発電電力に対して1台の蓄電池92が充電を行った後の残りの電力により、住宅負荷HLの消費電力が賄われると共に、さらに残りの電力が住宅負荷HLの消費電力に対して余剰することとなる。こうして、一括受電盤20は、当該余剰した電力を住宅群A1(住宅群受電盤70)から受ける。すなわち、住宅群A1では、太陽光発電部91の発電電力の売電が増加する。また、一括受電盤20が受けた電力は、非住宅負荷SLへ供給される。なお、
図13(b)に示す例では、一括受電盤20が受けた電力は、非住宅負荷SLに対しても余剰し、当該余剰した電力が系統電源Kへと売電される。こうして、
図13(b)に示すように、系統電源Kへと売電(例えば、1000W)が行われることとなるが、一括受電エリアA全体として買電が減少することとなる。
【0135】
こうして、第四の状態において、蓄電池92の充電が減少することにより住宅群A1からすると太陽光発電部91の発電電力の売電が増加するものの、一括受電エリアA全体からすると系統電源Kからの買電を減少させることができる。
【0136】
このように、電力融通補正制御においては、一括受電エリアA全体及び住宅群A1の状態に応じて、電力融通制御における蓄電池92への充放電等の設定の補正として、住宅群A1の蓄電池92の充放電の台数を増減させている。これにより、住宅群A1において複数の住宅H間で電力を融通しながらも、一括受電エリアA内の自給率及びPV自己消費率の向上を、当該一括受電エリアA全体の優先事項として電力の供給態様に反映させることできる。
【0137】
以下では、
図8及び
図14のフローチャートを用いて、第二実施形態に係る電力融通補正制御について説明する。
【0138】
第二実施形態に係る電力融通補正制御においては、住宅群A1において複数の住宅H間で電力を融通しながらも、一括受電エリアA全体の買電が所定の閾値を越えた場合に、当該買電を前記所定の閾値よりも小さくすることを目的としている。
【0139】
また、第二実施形態に係る電力融通補正制御において、第一実施形態に係る電力融通補正制御と異なる点は、系統電源Kから一括受電エリアAへ買電を行っている状態で行われる(一括受電エリアAから系統電源Kへ売電を行っている状態では行われない)点であり、かつ、買電電力が所定の設定値よりも大きいか否かの判定が行われる点である。なお以下の説明では、第一実施形態に係る電力融通補正制御と同様の処理については、同じステップ数を使用してその説明を省略する。
【0140】
すなわち、
図14に示すように、第二実施形態に係る電力融通補正制御においては、ステップS210の処理とステップS220の処理との間に、ステップS215の処理が実行される。
【0141】
ステップS215において、EMS装置100は、系統電源Kから一括受電エリアAへの買電電力が所定の設定値よりも大きいか否かが判定される。ここで、所定の設定値とは、例えば電力会社が設定する最大デマンドのような値(超過することにより、電力料金に影響を与えるような値)を参照して設定される値である。
【0142】
こうして、ステップS215において、EMS装置100は、現時点において系統電源Kから一括受電エリアAへの買電電力が所定の設定値よりも大きいか否かを判定し、買電電力が設定値よりも大きいと判定した場合(ステップS215:YES)、ステップS220の処理を実行する。
【0143】
すなわち、一括受電エリアA全体が買電を行っている状態とは、上述の如き第三の状態及び第四の状態に相当する。したがって、ステップS220の処理においては、第一実施形態に係るステップS220と同様に、住宅群A1の融通制御の補正として、待機指示が行われた蓄電池92の何台かに放電指示を行うか、または、充電指示が行われた蓄電池92の何台かに待機指示を行う。こうして、ステップS220の処理により、一括受電エリアA全体への買電を減少させることができる。
【0144】
また、ステップS215にて、EMS装置100は、買電電力が所定の設定値よりも大きくないと判定した場合(ステップS215:NO)、第二実施形態に係る電力融通補正制御を一旦終了する。
【0145】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1においては、
系統電源Kからの電力を一括して受電可能な一括受電エリアAに設けられた電力供給システムであって、
系統電源Kと複数の住宅負荷HLとを接続する第一配電線10と、
前記第一配電線10の中途部(接続部10a)と前記複数の住宅負荷HLとの間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一配電線10に出力可能な太陽光発電部91と、
前記第一配電線10の前記中途部(接続部10a)と前記複数の住宅負荷HLとの間に設けられ、前記太陽光発電部91の発電電力を充放電可能な複数の蓄電池92と、
前記第一配電線10の前記中途部(接続部10a)よりも系統電源K側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一配電線10に出力可能な非住宅群発電部60(第二発電部)と、
前記複数の蓄電池92の制御を実行可能なEMS装置100(制御部)と、
を具備し、
前記EMS装置100(制御部)は、
前記太陽光発電部91の発電電力と前記複数の住宅負荷HLの消費電力に基づいて前記複数の蓄電池92の設定を行う第一の制御(電力融通制御)と、
事前に設定された前記一括受電エリアA内の優先事項に基づいて、前記第一の制御における前記複数の蓄電池92の設定の補正を行う第二の制御(電力融通補正制御)と、
を実行可能であるものである。
【0146】
このような構成により、電力供給システム1においては、前記太陽光発電部91の発電電力と前記複数の住宅負荷HLの消費電力に基づいて前記複数の蓄電池92の設定を行うことによって複数の住宅負荷HLへの電力供給を可能としながらも、事前に設定された前記一括受電エリアA内の優先事項に基づいて前記複数の蓄電池92の設定の補正を行うことができる。こうして、電力供給システム1においては、一括受電エリアA内において、複数の住宅負荷HLへの電力供給以外に他の優先事項がある場合に、当該複数の住宅負荷HLへの電力供給と一括受電エリアA内の優先事項との両立を図ることができる。
【0147】
また、電力供給システム1においては、
前記第一配電線10を介して系統電源Kからの電力を一括して受電可能な一括受電盤20(第一受電盤)と、
前記一括受電盤20(第一受電盤)に前記第一配電線10を介して接続されると共に、前記複数の住宅負荷HLと前記太陽光発電部91と前記複数の蓄電池92とが接続された住宅群A1(グループ)を構成する住宅群受電盤70(第二受電盤)と、
を具備し、
前記EMS装置100(制御部)は、
前記第一の制御において、前記住宅群A1(グループ)内で、前記複数の蓄電池92の放電電力を前記複数の住宅負荷HLに融通するように前記複数の蓄電池92の設定を行うものである。
【0148】
このような構成により、一括受電エリアA内において、小さなグループ(住宅群A1)がある場合に、住宅群A1における複数の住宅負荷HL(住宅H)間で電力の融通と一括受電エリアA内の優先事項との両立を図ることができる。
【0149】
また、電力供給システム1においては、
前記一括受電盤20(第一受電盤)に前記第一配電線10とは異なる第二配電線40を介して接続されると共に、前記非住宅群発電部60(第二発電部)に接続される非住宅群受電盤50(第三受電盤)を具備するものである。
【0150】
このような構成により、一括受電エリアA内において、住宅群A1とは別で非住宅群発電部60により発電を行うことができる。
【0151】
また、電力供給システム1においては、
前記EMS装置100(制御部)は、
前記第一の制御において、
前記一括受電盤20(第一受電盤)と前記住宅群受電盤70(第二受電盤)との間で受け渡しされる電力を小さくするように前記複数の蓄電池92の設定を行うものである。
【0152】
このような構成により、一括受電エリアA内において、住宅群A1内外に流れる電力を小さくすることできる。すなわち、住宅群A1内における自給率やPV自己消費率を向上させることができる。
【0153】
また、電力供給システム1においては、
前記優先事項には、
系統電源Kと前記一括受電盤20(第一受電盤)との間で受け渡しされる電力を小さくすることが含まれるものである。
【0154】
このような構成により、一括受電エリアA内外に流れる電力を小さくすることができる。すなわち、一括受電エリアA内における自給率やPV自己消費率を向上させることができる。
【0155】
また、電力供給システム1においては、
前記優先事項には、
系統電源Kから前記一括受電盤20(第一受電盤)が受ける電力が所定の閾値を越えた場合に、当該受ける電力を前記所定の閾値よりも小さくすることが含まれるものである。
【0156】
このような構成により、一括受電エリアA内へと流れる電力が所定の値よりも大きくなるのを抑制することができる。
【0157】
また、電力供給システム1においては、
前記EMS装置100(制御部)は、
前記第二の制御において、
系統電源Kから前記一括受電盤20(第一受電盤)が電力を受ける場合であって、かつ、前記複数の蓄電池92に、待機する蓄電池92が含まれる場合、前記待機する蓄電池92を放電させるものである。
【0158】
このような構成により、放電させる蓄電池92の台数を増加させることによって、一括受電エリアA内へと流れる電力を小さくすることができる。
【0159】
なお、本実施形態に係る一括受電エリアAは、本発明に係るエリアの実施の一形態である。
また、太陽光発電部91は、本発明に係る第一発電部の実施の一形態である。
また、非住宅群発電部60は、本発明に係る第二発電部の実施の一形態である。
また、電力融通制御は、本発明に係る第一の制御の実施の一形態である。
また、電力融通補正制御は、本発明に係る第二の制御の実施の一形態である。
また、一括受電盤20は、本発明に係る第一受電盤の実施の一形態である。
また、住宅群受電盤70は、本発明に係る第二受電盤の実施の一形態である。
また、非住宅群受電盤50は、本発明に係る第三受電盤の実施の一形態である。
【0160】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0161】
例えば、本実施形態において、第一発電部及び第二発電部は、太陽光を利用して発電するものとしたが、他の自然エネルギー(例えば、水力や風力)を利用して発電するものであってもよい。
【0162】
また、一括受電エリアA内に、非住宅負荷SLは、必ずしも設けられる必要はない。
【0163】
また、本実施形態においては、積算放電量に基づいて放電優先順位を決定するものとしたが、放電優先順位を決定する基準はこれに限定されるものではなく、例えば蓄電システム90の充電状態(電力を蓄積可能な定格容量に対して蓄積されている電池残量の割合)や充電回数に基づいて決定するものであってもよい。
【0164】
また、本実施形態においては、
図3及び
図4に示す電力融通制御を行う場合、事前設定制御にて複数の蓄電池92の放電優先順位(複数の蓄電池92のうちどの蓄電池92を他の蓄電池92に対して優先的に放電させるのかの判断基準)を決定するものとしたが、前記判断基準を設定するタイミングはこれに限定するものではない。例えば、蓄電システム動作制御の処理中、具体的にはステップS150の処理を行う際に、前記判断基準を設定してもよい。すなわち、放電する蓄電池92の台数を算出するタイミングの都度、前記判断基準を決定してもよい。
【0165】
また、本実施形態においては、蓄電システム90は3つであるとしたが、これに限定するものではない。すなわち、蓄電システム90は4つ以上であってもよい。
【0166】
また、電力センサ等のセンサの配置は、本実施形態に係るものに限定されない。すなわち、EMS装置100が所望の情報を取得できるならば、前記センサの配置は任意に設定することができる。また同様に、住宅負荷HLや非住宅負荷SL等の数も本実施形態のものに限定されない。
【符号の説明】
【0167】
10 第一配電線
10a 接続部
91 太陽光発電部
92 蓄電池
100 EMS装置
A 一括受電エリア
HL 住宅負荷
K 系統電源