IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トヨタプロダクションエンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特許-含浸容器 図1
  • 特許-含浸容器 図2
  • 特許-含浸容器 図3
  • 特許-含浸容器 図4
  • 特許-含浸容器 図5
  • 特許-含浸容器 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】含浸容器
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/44 20060101AFI20240125BHJP
   G01N 15/08 20060101ALI20240125BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20240125BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20240125BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B29C39/44
G01N15/08 C
B29C39/10
B29C70/06
B29C70/48
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020075467
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021171947
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 大地
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 鉄兵
(72)【発明者】
【氏名】川原田 駿人
【審査官】関口 貴夫
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/44
G01N 15/08
B29C 39/10
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸液に対してのシート状の被含浸物の含浸性の評価に用いられ、前記被含浸物を中空部に閉じ込め前記含浸液を前記中空部に供給して前記被含浸物に含浸させる含浸容器であって、
前記中空部の下側凹部を形成し、下部に設けられた導入孔から前記含浸液を前記中空部に導入する下型部と、前記中空部の上側凹部を形成し、上部に設けられた導出孔から、前記中空部からの前記含浸液を導出する上型部とを備え、前記下側凹部と前記上側凹部とが向かい合って前記下型部と前記上型部とが結合することによって前記中空部を形成し、
前記下型部は、前記下側凹部の底面を形成するとともに、前記被含浸物の下部表面に対して垂直方向で前記被含浸物の下部表面全体に広がって形成された複数の下部貫通孔を有した下部整流部を有し、
前記上型部は、前記上側凹部の底面を形成するとともに、前記被含浸物の上部表面に対して垂直方向で前記被含浸物の上部表面全体に広がって形成された複数の上部貫通孔を有した上部整流部を有し、
前記上部整流部の上部貫通孔は、前記上側凹部の中心から周縁に向けて順次、半径方向の孔径を大きく形成したことを特徴とする含浸容器。
【請求項2】
前記下部整流部の下部貫通孔は、前記下側凹部の中心から周縁に向けて順次、半径方向の孔径を大きく形成したことを特徴とする請求項1に記載の含浸容器。
【請求項3】
前記上部貫通孔の半径方向の孔径は、向かい合う領域の下部貫通孔の半径方向の孔径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の含浸容器。
【請求項4】
前記上部貫通孔の孔径は、上部に向かって小さく形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の含浸容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含浸液に対しての被含浸物の含浸条件の評価を安定、かつ、高い信頼性で得ることができる含浸容器に関する。
【背景技術】
【0002】
生産性の高い繊維強化複合材料の成形法として、RTM(Resin Transfer Molding)成形法が知られている。RTM成形法は、炭素繊維やガラス繊維等のシート状の繊維強化基材(被含浸物)を成形型内に配置して型締めし、該型内に樹脂を供給して繊維強化基材に樹脂を含浸させた後、該樹脂を硬化させて成形する方法である。RTM成形法は、短いサイクルでの連続生産による大量部品の製造方法として期待される。
【0003】
RTM法によって安定した品質の成形体を短いサイクルで製造するためには、含浸速度を高くすることが求められる。そのためには、樹脂の供給条件、被含浸物の繊維束の太さや織物の仕様、積層方法等の条件を実験により事前に定める必要があるが、この実験をRTM大型設備(注入機や金型)にて行い、成形状態を評価することは時間、コストがかかり煩雑である。そのため、被含浸物への樹脂の含浸性を簡易的に評価する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、被含浸物が収容される中空部を形成する上蓋部とステージ部とを備えた本体部を設け、上蓋部とステージ部とに、同一形状の貫通孔を設けた含浸試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-146392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の含浸試験装置において用いられる本体部(含浸容器)は、上蓋部及びステージ部に同一形状の貫通孔を設けて含浸液の整流化を行っているものの、被含浸物によっては、被含浸物の面方向に対して含浸液の不均一が生じる場合がある。すなわち、被含浸物の厚さ方向に対する含浸の度合いが不均一になる場合がある。この含浸の不均一は、被含浸物が繊維の編み物であり編み方によって被含浸液の流れが不規則になるものと考えられる。したがって、被含浸物の繊維の編み方によっては含浸の不均一が生じてしまい、含浸液に対しての被含浸物の含浸条件の評価が不安定になり、信頼性が悪くなるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、含浸液に対しての被含浸物の含浸条件の評価を安定、かつ、高い信頼性で得ることができる含浸容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、含浸液に対してのシート状の被含浸物の含浸性の評価に用いられ、前記被含浸物を中空部に閉じ込め前記含浸液を前記中空部に供給して前記被含浸物に含浸させる含浸容器であって、前記中空部の下側凹部を形成し、下部に設けられた導入孔から前記含浸液を前記中空部に導入する下型部と、前記中空部の上側凹部を形成し、上部に設けられた導出孔から、前記中空部からの前記含浸液を導出する上型部とを備え、前記下側凹部と前記上側凹部とが向かい合って前記下型部と前記上型部とが結合することによって前記中空部を形成し、前記下型部は、前記下側凹部の底面を形成するとともに、前記被含浸物の下部表面に対して垂直方向で前記被含浸物の下部表面全体に広がって形成された複数の下部貫通孔を有した下部整流部を有し、前記上型部は、前記上側凹部の底面を形成するとともに、前記被含浸物の上部表面に対して垂直方向で前記被含浸物の上部表面全体に広がって形成された複数の上部貫通孔を有した上部整流部を有し、前記上部整流部の上部貫通孔は、前記上側凹部の中心から周縁に向けて順次、半径方向の孔径を大きく形成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記下部整流部の下部貫通孔は、前記下側凹部の中心から周縁に向けて順次、半径方向の孔径を大きく形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記上部貫通孔の半径方向の孔径は、向かい合う領域の下部貫通孔の半径方向の孔径よりも小さいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記上部貫通孔の孔径は、上部に向かって小さく形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、含浸液に対しての被含浸物の含浸条件の評価を安定、かつ、高い信頼性で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施の形態に係る含浸容器を含む含浸評価装置の概要構成を示す模式図である。
図2図2は、含浸容器の詳細構成を示す断面図である。
図3図3は、図2に示した含浸容器のA-A線断面図である。
図4図4は、変形例1にかかる上部貫通孔及び下部貫通孔の形状を示す断面図である。
図5図5は、変形例2にかかる上部貫通孔及び下部貫通孔の形状を示す断面図である。
図6図6は、変形例3にかかる上部貫通孔及び下部貫通孔の形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る含浸容器について説明する。
【0015】
<概要構成>
図1は、本実施の形態に係る含浸容器3を含む含浸評価装置100の概要構成を示す模式図である。含浸評価装置100は、含浸容器3の中空部E内に配置されたシート状の被含浸物10に対する含浸条件、特に含浸係数を評価するものである。シート状の被含浸物10は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の有機、無機繊維の織物や不織布、フェルト、マット等のシート状の繊維基材である。この被含浸物10は、複数の被含浸物を積層されたものであってもよい。中空部Eに供給される含浸液Lは、例えば樹脂であり、RTM成形法では、被含浸物10に樹脂を含浸させた後に、樹脂を硬化させて成形するものである。ただし、含浸液Lは、評価のために繰り返しの使用を行うため、樹脂の粘度に近い油を用いている。この油を用いることによって装置のメンテナンスが容易になる。含浸評価装置100は、含浸液Lである樹脂の供給条件、被含浸物10の繊維束の太さや織物の仕様、積層方法等の条件を予め評価する装置であり、上記のように、被含浸物10の厚さ方向に対する含浸係数を評価するものである。
【0016】
図1に示すように、含浸評価装置100は、供給タンク1、ポンプ2、含浸容器3、貯留タンク4及び評価制御装置5を有する。供給タンク1とポンプ2との間、ポンプ2と含浸容器3との間、及び、含浸容器3と貯留タンク4との間は、それぞれ配管L1~L3で接続される。ポンプ2が駆動されると、供給タンク1内の含浸液Lが配管L1を介して吸い込まれ、配管L2を介して含浸容器3に含浸液Lが供給される。
【0017】
含浸容器3には予め評価すべき被含浸物10が中空部Eに配置され、配管L2を介して導入される含浸液Lが中空部Eに供給される。中空部Eに供給された含浸液Lは、被含浸物10に含浸し、その後、配管L3を介して貯留タンク4に吐出される。供給タンク1には、含浸液Lの温度を検出する温度センサS0が設けられる。配管L2には、配管L2内の含浸液Lの圧力を検出する圧力センサS1、及び、含浸液Lの流量を検出する流量センサS2が設けられる。また、配管L3には、配管L3内の含浸液Lの圧力を検出する圧力センサS3が設けられる。評価制御装置5は、ポンプ2の起動、停止、流量制御などを行うとともに、温度センサS0が検出した温度T、圧力センサS1が検出した圧力P1、流量センサS2が検出した流量Q、圧力センサS3が検出した圧力P2を取得する。評価制御装置5は、被含浸物10の断面積A、厚さzを予め保持している。なお、評価制御装置5は、含浸液Lの物性データである温度と粘度との関係を用い、温度センサS0が検出した温度Tに対応する粘度ηを求める。
【0018】
そして、評価制御装置5は、次式(1)に示すダルシーの法則をもとに、次式(2)により含浸係数kを算出する。
Q=-(A・k)/η・(d(ΔP)/dz) …(1)
k=-(Q/A)・η・(dz/d(ΔP)) …(2)
ここで、Qは、流量センサS2が検出した単位時間当たりの流量であり、ΔPは、圧力センサS1が検出した圧力P1と圧力センサS3が検出した圧力P2との圧力差である。また、上記のように、Aは被含浸物10の断面積、ηは粘度である。
【0019】
なお、評価制御装置5は、ポンプ2の制御と被含浸物10への含浸性の評価とを行うようにしていたが、これに限らず、ポンプ2の制御を行うポンプ制御装置と、温度センサS0、圧力センサS1,S3、流量センサS2などの検出結果をもとに被含浸物10への含浸性の評価を行う評価装置とを別体として構成してもよい。さらに、評価装置に替えて、温度センサS0、圧力センサS1,S3、流量センサS2などの検出結果を記録するデータロガーを配置し、このデータロガーが記録したデータをもとに、後刻、被含浸物10への含浸性の評価を行うようにしてもよい。
【0020】
<含浸容器の構成>
図2は、含浸容器3の詳細構成を示す断面図である。また、図3は、図2に示した含浸容器3のA-A線断面図である。図2に示すように、含浸容器3は、下型部20と上型部30とを有する。下型部20は、被含浸物10が配置される中空部Eの下側凹部22aを形成し、下部(-Z方向)に設けられた導入孔20aから含浸液Lを中空部Eに導入する。上型部30は、中空部Eの上側凹部32aを形成し、上部(+Z方向)に設けられた導出孔30aから、中空部Eからの含浸液Lを導出する。中空部Eは、下側凹部22aと上側凹部32aとがZ方向で向かい合って下型部20と上型部30とが結合することによって形成される。
【0021】
下型部20は、下側凹部22aの底面を形成するとともに、被含浸物10の下部表面に対して垂直方向で被含浸物10の下部表面全体に広がって形成された複数の下部貫通孔23を有した下部整流部22を有する。また、上型部30は、上側凹部32aの底面を形成するとともに、被含浸物10の上部表面に対して垂直方向で被含浸物10の上部表面全体に広がって形成された複数の上部貫通孔33を有した上部整流部32を有する。すなわち、下部貫通孔23及び上部貫通孔33は、被含浸物10の厚さ方向(Z方向)に向けて形成される。
【0022】
下型部20の導入孔20aは、配管L2に接続され、上型部30の導出孔30aは、配管L3に接続される。導入孔20aと下部整流部22との間には、下部整流部22側に向けて広がるテーパ形状の空間E1が形成され、導入した含浸液Lは下部整流部22の下部貫通孔23側に向けて流れる。一方、導出孔30aと上部整流部32との間には、上部整流部32側に向けて広がるテーパ形状の空間E2が形成され、上部貫通孔33から流出した含浸液Lは、導出孔30aに向けて集められる。
【0023】
下部整流部22は、下型部20の下型本体部21に対し、シール13を介して接続される。同様に、上部整流部32は、上型部30の上型本体部31に対し、シール14を介して接続される。また、下部整流部22と上部整流部32とは、位置決め突起11を介してそれぞれが位置決めされて中空部Eを形成するとともに、シール12を介して接続される。
【0024】
含浸容器3の周縁には、Z方向に貫かれた貫通孔43が形成され、貫通孔43にボルト40が挿入され、ナット41を介して下型部20と上型部30とが位置決めされつつボルト締めされる。これにより、下型部20と上型部30との結合状態が維持される。
【0025】
図2及び図3に示すように、上部貫通孔33は、上側凹部32a(中空部E)の中心軸Cから、周縁Edに向けて順次、半径方向ARの孔径を大きくするように形成される。同様に、下部貫通孔23は、中心軸Cから、周縁Edに向けて順次、半径方向ARの孔径を大きくするように形成されている。
【0026】
上部貫通孔33及び下部貫通孔23は、容易な穴形成とするため、中心軸C側を円形孔にし、周縁Ed側を長孔にしている。なお、図3に示した上部貫通孔33では、周方向の孔径も半径方向ARに向けて大きくするようにしている。図3に示した上部貫通孔33では、周縁Ed側の上部貫通孔33間に穴が形成されていないが、この隙間を埋めるように、上部貫通孔33及び下部貫通孔23は、半径方向ARに向けて孔径を大きくした貫通孔を設ける。なお、上部貫通孔33及び下部貫通孔23の孔パターンは同一としている。
【0027】
本実施の形態では、下部貫通孔23の中心軸C側は、周縁Ed側に比べて、孔径が小さいため、導入される含浸液Lの圧損が大きく、下部貫通孔23の周縁Ed側は、中心軸C側に比べて、孔径が大きいため、導入される含浸液のLの圧損が小さい。このため、導入孔20aから導入された含浸液Lは、周縁Ed側に広がって、被含浸物10の下部表面全体に均一な流量で供給される。同様に、上部貫通孔33の中心軸C側は、周縁Ed側に比べて、孔径が小さいため、導入される含浸液Lの圧損が大きく、上部貫通孔33の周縁Ed側は、中心軸C側に比べて、孔径が大きいため、導入される含浸液のLの圧損が小さい。このため、中空部Eから導出される含浸液Lは、周縁Ed側に広がり、被含浸物10の上部表面全体から均一な流量で導出される。したがって、中空部Eの被含浸物10の面方向には均一な流量及び速度の含浸液Lが供給され、かつ、被含浸物10の面方向に対して均一な流量及び速度の含浸液Lが流出され、被含浸物10の厚さ方向(Z方向)に対する含浸液Lの含浸を均一化することができ、安定し、かつ、信頼性の高い含浸係数kを得ることができる。
【0028】
なお、上記の実施の形態では、筐体の側面まで延びる上部整流部32及び下部整流部22にそれぞれ上部貫通孔33及び下部貫通孔23を設けていたが、上部貫通孔33及び下部貫通孔23が形成される領域のみの上部整流部及び下部整流部を、それぞれ上型部30及び下型部20に嵌め込むように形成してもよい。
【0029】
<変形例1>
図4は、変形例1にかかる上部貫通孔及び下部貫通孔の形状を示す断面図である。図4に示すように、変形例1では、実施の形態に対して、下部貫通孔23に対応する下部貫通孔23aを半径方向ARに向けて同一の孔径とし、面的に均一に分散配置している。
【0030】
したがって、変形例1では、下部貫通孔23aの中心軸C側に流入する含浸液Lの流量及び速度が、周縁Ed側よりも大きくなる。しかし、上部貫通孔33は、中心軸Cから周縁Edに向けて順次、半径方向ARの孔径を大きく形成しているので、中空部Eにおいて、中心軸C側に流入した含浸液Lは、半径方向ARに向けて移動するため、結果的に、含浸液Lは、被含浸物10の面方向に対して均一な流量及び速度をもって供給されることになる。
【0031】
<変形例2>
図5は、変形例2にかかる上部貫通孔及び下部貫通孔の形状を示す断面図である。図5に示すように、変形例2では、実施の形態に対して、上部貫通孔33に対応する上部貫通孔33aの孔径を、上部(+Z方向)に向けて小さくなるように形成している。下部貫通孔23は、実施の形態と同じである。
【0032】
したがって、上部貫通孔33a及び下部貫通孔23は、半径方向ARに対して均一な圧損をもつものの、上部貫通孔33aの全体の圧損は、下部貫通孔23の全体圧損に対して大きくなる。このため、中空部Eには、含浸液Lが滞留しやすくなり、中空部Eが含浸液Lに対するバッファ的な作用を生じさせ、さらに上部貫通孔33aから流出する含浸液Lの流量及び速度が半径方向ARに対して均一化する。
【0033】
なお、図5では、上部貫通孔33aをテーパ状に形成しているが、上部貫通孔33aの孔径が上部(+Z方向)に向けて小さくなっていればよく、孔径は直線的に減少しなくてもよい。
【0034】
<変形例3>
図6は、変形例3にかかる上部貫通孔及び下部貫通孔の形状を示す断面図である。図6に示すように、変形例3では、実施の形態に対して、下部貫通孔23に対応する下部貫通孔23bの半径方向ARの孔径を、向かい合う領域の上部貫通孔33の半径方向ARの孔径よりも大きくしている。
【0035】
したがって、上部貫通孔33及び下部貫通孔23bは、半径方向ARに対して均一な圧損をもつものの、上部貫通孔33の全体の圧損は、下部貫通孔23bの全体圧損に対して大きくなる。このため、中空部Eには、含浸液Lが滞留しやすくなり、上部貫通孔33から流出する含浸液Lの流量及び速度が半径方向ARに対して均一化する。
【0036】
なお、図6では、下部貫通孔23bの半径方向ARの孔径を、向かい合う領域の上部貫通孔33の半径方向ARの孔径よりも大きくしているが、逆に、上部貫通孔33の半径方向ARの孔径を、向かい合う領域の下部貫通孔23の半径方向ARの孔径よりも小さくするようにしてもよい。
【0037】
また、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の含浸容器は、含浸液に対しての被含浸物の含浸条件の評価を安定、かつ、高い信頼性で得る場合に有用である。
【符号の説明】
【0039】
1 供給タンク
2 ポンプ
3 含浸容器
4 貯留タンク
5 評価制御装置
10 被含浸物
11 位置決め突起
12~14 シール
20 下型部
20a 導入孔
21 下型本体部
22 下部整流部
22a 下側凹部
23,23a,23b 下部貫通孔
30 上型部
30a 導出孔
31 上型本体部
32 上部整流部
32a 上側凹部
33,33a 上部貫通孔
40 ボルト
41 ナット
43 貫通孔
100 含浸評価装置
AR 半径方向
C 中心軸
E 中空部
E1,E2 空間
Ed 周縁
L 含浸液
L1~L3 配管
S0 温度センサ
S1,S3 圧力センサ
S2 流量センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6