(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】水晶発振器
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240125BHJP
H01L 23/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
H01L23/04 E
H01L23/04 Z
(21)【出願番号】P 2020090211
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 真人
(72)【発明者】
【氏名】入江 健治
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-014208(JP,A)
【文献】特開2011-166241(JP,A)
【文献】特開2007-006270(JP,A)
【文献】特開2015-065555(JP,A)
【文献】特開2010-050778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
H01L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水晶振動子を格納するパッケージを備える水晶発振器において、
一面側に前記水晶振動子が設けられ、他面側に当該水晶振動子を発振させるための発振回路を含む回路部品及び前記パッケージ内の温度を調整する発熱体が設けられた基板と、
前記水晶振動子、前記回路部品及び前記発熱体が前記パッケージの壁部から離間するように、前記基板における端部のみを一面側から支持するために当該パッケージの内壁に形成される段部と、
前記発熱体に設けられる端子と前記パッケージの内部に設けられる端子とを前記基板を介さずに接続するワイヤと、
を備えることを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
前記基板の一面側には、前記回路部品の熱を前記パッケージの壁部を介して当該パッケージの外部へ放散させるための放熱用の金属膜が設けられることを特徴とする請求項1記載の水晶発振器。
【請求項3】
前記水晶振動子は水晶片を収容すると共に前記パッケージ内に設けられる水晶振動子用のパッケージを備え、
前記放熱用の金属膜は、当該水晶振動子用のパッケージに設けられる端子に接続されることを特徴とする請求項2記載の水晶発振器。
【請求項4】
前記放熱用の金属膜は、前記段部における前記基板を支持する支持面に重なって設けられることを特徴とする請求項2または3記載の水晶発振器。
【請求項5】
前記段部には、当該段部の前記基板を支持する支持面と前記パッケージの外側の表面とを接続する導電路が形成されていないことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一つに記載の水晶発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子を格納するパッケージ内の温度調整が行われる水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲温度の変化の影響が抑制されて安定した発振出力を得るための水晶発振器として、水晶振動子を格納すると共に内部の温度調整が行われるパッケージを備えた水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)が知られている。そのOCXOの製造工程においては、上記のパッケージの構成部品が接合されることで、当該パッケージの気密封止が行われる。具体的には例えば、各種の回路部品が搭載される基板を支持するベースの金属部と、金属製のカバーにおける外側に広がって形成される周縁部と、を抵抗溶接により接合して、その気密封止が行われることがあった。
【0003】
なお、例えば特許文献1にはOCXOの一例として、基板の下面に水晶振動子及びヒータ(発熱体)、基板の上面に発振回路及びヒータが夫々搭載され、基板の周縁部がパッケージ内に設けられる段部に支持された構成のものが示されている。そしてこのOCXOにおいては、基板に設けられる端子と当該端子に接続されるボンディングワイヤとを介して、基板に搭載される各部品とパッケージ内に設けられる端子とが電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-14208(
図4、段落0020)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OCXOについて小型化することが求められており、それに応じて、パッケージの構成部品における溶接の対象となる領域について、縮小化することが求められている。そのような事情に対応するために、例えばパッケージの構成部品として縦断面が凹状のセラミックス製のベースと、金属製のリッドとを用い、シーム溶接等によりリッドとベースの開口縁に設けられる金属部とを接合して封止を行うことが検討されている。
【0006】
しかし、そのように封止が行われることで製造されたパッケージを備えるOCXOについてはセラミックスの熱伝導率が比較的高いために、パッケージ内に設けられる発熱体の熱がパッケージに伝わり、当該パッケージの外部に発散するおそれがある。そうなると、パッケージ内の温度制御が困難になってしまう。つまり、OCXOの小型化とパッケージ内の温度制御性とが、トレードオフの関係になっている。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型で且つ安定した発振出力を得ることができる水晶発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水晶発振器は、内部に水晶振動子を格納するパッケージを備える水晶発振器において、
一面側に前記水晶振動子が設けられ、他面側に当該水晶振動子を発振させるための発振回路を含む回路部品及び前記パッケージ内の温度を調整する発熱体が設けられた基板と、
前記水晶振動子、前記回路部品及び前記発熱体が前記パッケージの壁部から離間するように、前記基板における端部のみを一面側から支持するために当該パッケージの内壁に形成される段部と、
前記発熱体に設けられる端子と前記パッケージの内部に設けられる端子とを前記基板を介さずに接続するワイヤと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水晶発振器によれば、基板の一面側に水晶振動子、基板の他面側に発振回路を含む回路部品及び発熱体が夫々設けられ、基板に設けられるこれらの各構成要素がパッケージの壁部から離間するように、当該基板の端部が当該パッケージ内に支持される。そして、発熱体の端子とパッケージに設けられる端子とが、基板を介さずにワイヤにより接続される。このような構成により基板の大型化が防止されると共に、発熱体からパッケージへの伝熱が抑制されて当該パッケージ内の温度の制御性が高くなる。従って本発明の水晶発振器については、小型なものとすることができ、且つ安定した発振出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るOCXOの横断平面図である。
【
図6】前記OCXOを各々構成する基板とパッケージとの位置関係を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るパッケージを備える水晶発振器であるOCXO1について、
図1の横断平面図、
図2の縦断正面図、
図3の縦断側面図、
図4の上面側分解斜視図、
図5の下面側分解斜視図を適宜参照しながら説明する。OCXO1は、基板11、パッケージ2、IC(Integrated Circuit)チップ3、水晶振動子4及び2つのコンデンサ5を備える。ICチップ3、水晶振動子4及びコンデンサ5については基板11に設けられており、その配置については後述する。
【0012】
恒温槽としての役割を有するパッケージ2は角型に形成され、ベース21と、リッド(蓋)22とにより構成される。パッケージ2は平面視長方形状に構成されている。以下、OCXO1を説明するにあたり、当該長方形の長辺方向を左右方向、短辺方向を前後方向として説明する。また、リッド22が設けられる側を上側として説明する。ただし、ここで述べる上下左右前後の方向はOCXO1の構成の説明のために便宜上付したものであり、OCXO1はどのような向きで使用されてもよい。パッケージ2の左右の長さは9mm以下、より具体的には例えば7mmであり、パッケージ2の前後の長さは7mm以下、より具体的には例えば5mmである。
【0013】
上記のベース21は、パッケージ2の側壁と底部とを構成し、その材質はセラミックスである。ベース21の縦断面は凹状に形成されており、従ってベース21は、上側に開口する開口部を備えている。この開口部の縁に沿うように、金属部として環状突起であるシールリング23が形成されている。このシールリング23上に、金属板であるリッド(蓋)22の周縁部が溶接され、パッケージ2内が気密空間とされている。当該気密空間は、平面視、概ね長方形状に形成されている。
【0014】
ベース21の下面には、OCXO1を外部機器に接続するための金属製のパッド24、25が設けられており、例えばパッド24は4つ、パッド25は2つ設けられている。パッド24はOCXO1を構成する各回路に接続される電極端子である。つまり、パッド24は基板11に搭載される上記の各部品に電気的に接続されており、各パッド24がOCXO1の外部に設けられる外部機器の電極端子に接続されることで、OCXO1が動作する。
【0015】
パッケージ2の内部について説明する。パッケージ2内の4つの各角部における側壁の下部側がパッケージ2の内側に向けて膨らむように形成されることで、当該パッケージ2の内側壁には段部26が設けられている。見方を変えればパッケージ2内にて4つの各角部における底面が盛り上がることで、段部26が形成されている。段部26の上面は、基板11をパッケージ2の底壁及びリッド22と平行に支持する支持面27をなす。
【0016】
また、パッケージ2の前方側、後方側の各側壁における左右の中央下部もパッケージ2の内側に向けて膨らむように形成されることで、左右に細長の段部28が設けられており、各段部28は既述の段部26よりも高く形成されている。各段部28の上面には金属膜のパターンとして、複数の端子29が形成されている。端子29は、パッケージ2の側壁及び底壁の内部や、当該底壁の表面に形成される図示しない導電路を介して、上記したパッケージ2の下面のパッド24に接続されている。以下、混同を避けるために段部26を基板支持用段部26、段部28を接続用段部28と記載する場合が有る。
【0017】
続いて、基板11について説明する。基板11は例えば樹脂製であり、その上面側(他面側)、下面側(一面側)には金属膜、例えば銅膜からなるパターンが形成されている。そのパターンのうち、下面側のパターンである放熱用パターンについては、後に具体的に説明する。
【0018】
基板11は平面視概ね長方形であり、例えば長辺方向の長さ、短辺方向の長さは夫々5mm、3mmである。当該基板11については、図示しない接着材を介して、その4つの角部の下面側が、上記した基板支持用段部26の支持面27上に固定されて支持されており、その長辺方向、短辺方向は、パッケージ2の長辺方向、短辺方向に対して夫々揃えられている。そして、基板11の側面はパッケージ2の側壁から離れている。さらに詳しく述べると、基板11に設けられる各部品(ICチップ3、水晶振動子4及びコンデンサ5)については、パッケージ2の内壁から離間している。従って、基板11及び基板11に搭載される各部品については、基板11の角部を除いて、パッケージ2の中空に浮いた状態となっている。なお、基板11の前方側、後方側の各々における左右の中央部には、切り欠き12が設けられており、当該基板11と上記のパッケージ2の接続用段部28との接触が防止されている。
【0019】
基板11の上面側には、ICチップ3及び2つのコンデンサ5が設けられている。各コンデンサ5は、バイパスコンデンサであり、基板11の左右に各々設けられている。そしてICチップ3は、基板11の中央部に、コンデンサ5に挟まれて設けられている。ICチップ3は、水晶振動子4を発振させるための発振回路、発振回路からの出力を増幅する増幅回路(出力回路)及び発熱体(ヒータ回路)などの複数の回路を含む回路部品である。なお、図示は省略しているが基板11の上面あるいは下面には、水晶振動子4の温度を検出するための回路部品として、サーミスタが設けられている。当該サーミスタによる検出温度に応じて、ICチップ3による発熱体の発熱量の調整がなされ、水晶振動子4の温度、即ちパッケージ2内の温度が一定となるよう温度制御がなされる。このサーミスタについても、他の回路部品と同様にパッケージ2の内壁には接触していない。
【0020】
ICチップ3の上面に多数の端子が設けられている。これらの端子について、パッケージ2側の端子29との混同を避けるためにチップ端子32と記載する。その多数のチップ端子32のうちの一部の複数の端子は、上記したパッケージ2の接続用段部28の端子29とボンディングワイヤ33により各々接続されている。つまり、基板11に設けられる金属膜であるパターンを介さずに、チップ端子32と端子29とがボンディングワイヤ33により直接、接続されている。ボンディングワイヤ33については比較的細く、例えばその断面の直径が30μmである。また、ボンディングワイヤ33は例えば金または銅により構成されている。
【0021】
なお、多数のチップ端子32のうちの他の一部の複数の端子については水晶振動子4、コンデンサ5と電気的接続がなされるように、基板11の上面に設けられるパターンに対して、ボンディングワイヤ33によって接続されている。ただし、そのようなチップ端子32のうちの他の一部の端子、基板11の上面のパターン、当該他の一部の端子と当該パターンとを接続するボンディングワイヤ33については図示を省略している。
【0022】
上記した、基板11を介さずにボンディングワイヤ33によってパッケージ2の端子29に直接接続されるチップ端子32としては、発熱体に設けられる複数のチップ端子32が含まれる。説明の便宜上、この発熱体のチップ端子32を32A、32Bと記載する。チップ端子32Aは発熱体に電源電圧を印加する端子(Vcc端子)であり、チップ端子32Bはグランド端子である。
【0023】
そのように発熱体のチップ端子32A、32Bがボンディングワイヤ33によりパッケージ2の端子29に直接接続される構成によって、発熱体のパッケージ2の外部への放熱が抑制される。この放熱の抑制について、より詳しく述べる。仮にチップ端子32A、32Bと端子29とを直接接続するのではなく、基板11にチップ端子32A、チップ端子32Bの各々と接続される金属膜のパターンを形成し、このパターンとパッケージ2の端子29とをボンディングワイヤ33によって接続した構成としたとする。あるいは、基板11にチップ端子32A、32Bの各々と接続される金属膜のパターンを形成すると共に、パッケージ2の基板支持用段部26にこの基板11のパターンと接続され、パッケージ2の外部へと引き出される導電路を設けた構成としたとする。
【0024】
しかし、それらのように基板11にチップ端子32A、32Bに接続されるパターンを形成した構成とすると、発熱体の熱は当該パターン、つまりは基板11に移動するが、既述したように基板11の角部はパッケージ2に接触していることから当該角部を介してのパッケージ2への伝熱量が多くなり、その結果としてパッケージ2の外側への放熱量が多くなってしまう。一方で、発熱体のチップ端子32A、32Bがボンディングワイヤ33によって直接、パッケージ2の端子29に接続された構成では、チップ端子32A、32Bに接続される基板11のパターンが無いため、当該パターンを介した当該基板11への熱伝導が無いし、ボンディングワイヤ33は細いために当該ボンディングワイヤ33を介したパッケージ2への熱の移動は少ない。従って、発熱体の熱がパッケージ2内に籠もりやすく、パッケージ2の外部への放熱を抑制することができる。
【0025】
チップ端子32A、32Bは各々複数、例えば
図1に示すように2つのボンディングワイヤ33により、パッケージ2の端子29に接続されている。それにより、チップ端子32A、32Bと端子29との間の電圧降下が抑制される。また、パッケージ2の外側の温度(周囲環境温度)次第では、高い発熱量を得るために発熱体には比較的大きな電流が流れるが、そのような場合でも1つあたりのボンディングワイヤ33からの発熱が抑えられ、当該発熱によるボンディングワイヤ33の破損を、より確実に防止することができる。なお、チップ端子32A、32Bに各々接続されるボンディングワイヤ33としてはこの例に限られず、2つより多くてもよい。
【0026】
以下、基板11の下面を概略的に示す
図6も参照しながら説明する。基板11の裏側の中央部には、水晶振動子4が設けられている。この水晶振動子4はパッケージ化されている。具体的に説明すると、水晶振動子4については、励振電極が形成された水晶片(説明の便宜上、水晶振動子素子41とする)の他に、当該水晶振動子素子41を気密に収容する振動子用パッケージ42を備えている。角型に形成された振動子用パッケージ42の表面には4つの端子が形成されており、当該4つの端子は基板11の下面に設けられるパターンに各々接続されている。
【0027】
その振動子用パッケージ42の4つの端子のうち、当該振動子用パッケージ42内の図示しない導電路を介して水晶振動子素子41の励振電極に接続される2つの端子を、43として示している。そして、残りの2つの端子を44として示している。端子44はグランド端子であり、基板11に設けられる導電路(スルーホールやパターン)、ボンディングワイヤ33及びパッケージ2の端子29を介することで、パッケージ2の下側のパッド24のうちの接地用のパッド24に電気的に接続されている。
【0028】
そして基板11の下面には、水晶振動子4の左側、右側に各々配置されると共に上記の端子44に接続されるパターンが設けられている。当該パターンを放熱用パターン45とすると、各放熱用パターン45はその一部がパッケージ2の基板支持用段部26の支持面27に重なるように形成されている。上記したように基板11は接着材を介してパッケージ2に固定されるため、放熱用パターン45は、基板支持用段部26の支持面27に接着材を介して積層される。
【0029】
放熱用パターン45の役割について説明すると、ICチップ3に含まれる発熱体以外の各回路については自己消費電力によって発熱し、その発熱量は発熱体の発熱量とは異なり制御することができない。従って、この各回路の発熱によって、パッケージ2内の温度が所望の温度からずれてしまうことが考えられるが、当該発熱の問題に対処するために、放熱用パターン45を設けている。さらに詳しく述べると、ICチップ3の発熱体以外の回路の熱は、ICチップ3と水晶振動子4とを接続するボンディングワイヤ33及び基板11の導電路を介して水晶振動子4へ伝熱されることになる。そして、この熱は水晶振動子4に接続される放熱用パターン45へ伝わり、さらに放熱用パターン45に接するパッケージ2の基板支持用段部26へと移動する。基板11の導電路や放熱用パターン45は金属、即ち導電性が高い材料であることにより、このような基板支持用段部26への伝熱が効率良く行われる。そして、このように基板支持用段部26に移動した熱はパッケージ2の壁部を介して、当該パッケージ2の外側へと放散される。
【0030】
補足して説明しておくと、基板支持用段部26においては基板11の支持面27とパッケージ2の外側表面とを接続する導電路は設けられていない。即ち、端子29とパッケージ2の外側表面のパッド24とを接続する導電路を備える接続用段部28と、当該基板支持用段部26とは互いに異なる構成とされている。これは、仮にパッケージ2の外側と支持面27とを接続する導電路が基板支持用段部26に設けられるとすると、発熱体から発する熱について、当該導電路を介することで基板11からパッケージ2の外部へ放散される量が多くなる懸念が有る、つまり基板11を支持している基板支持用段部26を介しての外部への放熱量が大きくなってしまうおそれが有るためである。即ち、OCXO1においては、基板支持用段部26に上記の導電路を設けない構成とすることで、この基板支持用段部26を介しての不要な放熱を抑制し、パッケージ2内の温度制御性が向上されるようにしている。
【0031】
以上のようにOCXO1においては、基板11の上面側、下面側にICチップ3、水晶振動子4が夫々設けられ、基板11は下面側からパッケージ2の段部26により、その角部が支持される。それによって、そのサイズを例示したようにOCXO1を小型にすることができる。そしてICチップ3に含まれる発熱体のチップ端子32とパッケージ2の端子29とがボンディングワイヤ33で接続されることで、発熱体から発する熱がパッケージ2の外部へ放散することが抑制される。従って、パッケージ2内の温度が設定温度から外れることが抑制されるので、OCXO1については、安定した発振出力を得ることができる。なお、水晶振動子4は、基板11においてベース21の開口側とは反対の下面側に設けられることで、パッケージ2の外側における温度変化等の環境変化の影響を受け難いことも、発振出力の安定化に寄与する。
【0032】
さらに、上記のように発熱体の熱についてはパッケージ2の外部への放散が抑制される一方、ICチップ3のうちの発熱体以外の回路から発する熱については放熱用の金属膜である放熱用パターン45を介して、パッケージ2の外部へ効率良く放散される。従って、より確実にパッケージ2内の温度について、設定温度からのずれを抑制することができる。
【0033】
既述した例では、水晶振動子4の端子43、44のうちのグランド端子である端子44に接続されるように放熱用パターン45を形成しているが、水晶振動子4の端子からパッケージ2に向けて伝熱される構成であればよく、端子43に接続されるように放熱用パターン45を形成してもよい。なお、
図6では表示を省略しているが、基板11の下面には水晶振動子4と、ICチップ3などの基板11の上面側の各部品とを接続するためのパターン(接続用パターン)が形成される。放熱用パターン45については、この接続用パターンと別個に(分離されて)形成されていてもよいし、当該接続用パターンと一部が共通化されて(互いに接して)形成されていてもよい。
【0034】
また、上記の例では、より確実にパッケージ2に放熱できるように放熱用パターン45は段部26の支持面27に重なるように形成されている。ただし、放熱用パターン45の面積が比較的大きいほど熱輻射によりパッケージ2に向けて移動する熱量が多くなるので、この面積を適切なものに設定することで、放熱用パターン45を段部26に重ならないように形成してもよい。そのように段部26に重ならない場合、例えば基板11の下面に露出している放熱用パターン45の面積が、基板11の下面の面積の20%以上とする。その基板11の下面に露出する面積とは、水晶振動子4などの部品に被覆されていない領域の面積である。
【0035】
なお、
図6に示した例では、放熱用パターン45は4つの基板支持用段部26のうちの3つに重なるように形成されているが、いくつの段部26に重なるように形成するかは、パッケージ2内の温度の制御性が良好なものとなるように任意に決めることができる。つまり、放熱用パターン45に重なる段部26の数としては3つに限られない。
【0036】
上記の例では、発熱体はICチップ3に組み込まれているが、そのように組み込まれておらず、単独の回路部品であってもよい。また、発振回路等の回路部品についても集積化せずに、個別の回路部品としてもよい。また、基板11を支持する基板支持用段部26については上記のように基板11の周縁部の一部である角部を支持する構成とすることには限られず、基板11の周縁部全体を支持するように構成してもよい。ただし基板11からパッケージ2への発熱体の熱の移動を防ぐために、角部のみを支持することが好ましい。
【0037】
また、パッケージ2について溶接された構造であるものとして述べたが、そのように溶接により製造することには限られず、例えばろう材や接着材によりリッド22とベース21との接合を行ってもよい。従って、シールリング23も必須ではなく、リッド22も金属であることには限られない。また、発明が解決しようとする課題の項目で述べたようにベース21がセラミックス製である場合に本発明の技術が有効であるが、本発明によればベース21の材質にかかわらずパッケージ2の外側への熱の放出を抑制することができるので、ベース21はセラミックスによって構成されることには限られず、例えば樹脂などの材料を用いて構成されていてもよい。
【0038】
このように今回開示された実施形態については、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更または組み合わせが行われてもよい。
【0039】
(評価試験)
本発明に関連して行われた評価試験について説明する。シミュレーションにより、OCXO1の周囲環境温度を変化させたときにおけるICチップ3の温度、水晶振動子4の温度を夫々測定した。ICチップ3の温度は、より詳しくはICチップ3に組み込まれたサーミスタによる検出温度であり、水晶振動子4の温度はより詳しくは、水晶振動子4の近傍に設置されるサーミスタによる検出温度である。
図7はこの評価試験の結果を示すグラフである。グラフに示すように周期環境温度が-40℃~+85℃に変化するにあたり、ICチップ3の温度変化は2℃程度、水晶振動子4の温度変化は5℃程度に抑えられている。従って、既述したようにパッケージ2内の温度を安定化させることができるという、OCXO1について既述した効果が得られることが確認された。
【0040】
なお、基板11に放熱用パターン45が設けられないことを除いてはOCXO1と同様に構成したOCXOを用いて、OCXO1について行ったシミュレーションと同様のシミュレーションを行った。その結果、OCXO1の方がICチップ3及び水晶振動子4についての温度変化が抑えられることが確認された。つまり放熱用パターン45を設けることで、パッケージ2内の温度の制御性が高くなることが確認された。
【符号の説明】
【0041】
1 OCXO
2 パッケージ
26 段部
29 端子
3 ICチップ
32A、32B 端子
33 ボンディングワイヤ
4 水晶振動子