(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】水取り器設置方法
(51)【国際特許分類】
F16T 1/00 20060101AFI20240125BHJP
F16L 41/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16T1/00 G
F16L41/06
(21)【出願番号】P 2020093630
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 知広
(72)【発明者】
【氏名】小林 真澄
(72)【発明者】
【氏名】今野 実
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-230511(JP,A)
【文献】実開昭59-015894(JP,U)
【文献】実開平03-012087(JP,U)
【文献】実開平04-124395(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/00
F16L 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向にガス流路が配置されたガス管に、前記ガス管の外周に沿った受部、及び前記ガス管を穿孔するための穿孔用口部、を有する水取り器を取り付ける水取り器設置方法であって、
前記受部を前記ガス管の外周に融着させ、
前記穿孔用口部からアクセスして前記ガス管の下壁に水抜き孔を穿孔し、
前記穿孔用口部の開口を閉鎖
し、
前記水取り器は、前記ガス管からの水を導入する筒状の水導入部、前記水導入部と接続された水貯留管を有し、前記水導入部を下向きに延出させ、前記水貯留管を水平方向または斜め下方向に延出させ、前記水貯留管は、前記水導入部の下端から水平方向または斜め下方向に、鉛直方向からみて、前記ガス流路の配管方向との角度が20度以上60度以下で延出され、一端部が前記水導入部の下端に接続され、他端部に前記水抜き管が接続されている、
水取り器設置方法。
【請求項2】
前記穿孔用口部は、前記ガス管と直交する水平方向に開口し、
前記水平方向にカッターを移動させて前記穿孔を行う、
請求項1に記載の水取り器設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水取り器設置方法に係り、ガスを流通させるガス管へ水取り器を設置するための水取り器設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス管に水が溜まった場合に、水を抜くために水取り器を設置し、水を抜いている。例えば、特許文献1の水取り器は、ガス管の外周に大経の管を偏心配置し、その管の底部に水を溜め、上方へ延出された管を用いて、水を抜いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水取り器は、ガス管よりも大経の管を外周に配置するため、既設のガス管へ取り付け作業を行う場合、施工領域が広くなり、取り付け作業が大掛かりとなっていた。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して成されたものであり、簡易な作業でガス管に水取り器を設置する水取り器設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る水取り器設置方法は、水平方向にガス流路が配置されたガス管に、前記ガス管の外周に沿った受部、及び前記ガス管を穿孔するための穿孔用口部、を有する水取り器を取り付ける水取り器設置方法であって、前記受部を前記ガス管の外周に融着させ、前記穿孔用口部からアクセスして前記ガス管の下壁に水抜き孔を穿孔し、前記穿孔用口部の開口を閉鎖するものである。
【0007】
請求項1に係る水取り器設置方法は、受部、及び穿孔用口部、を有する水取り器を、水平方向にガス流路が配置されたガス管に取り付けるものである。受部は、ガス管の外周に沿って融着されるものであり、穿孔用口部は、穿孔するためにガス管へのアクセスする部分である。水取り器の設置は、まず、受部をガス管の外周に融着させ、次に、穿孔用口部からアクセスしてガス管の下壁に水抜き孔を穿孔し、その後、穿孔用口部の開口を閉鎖する。
【0008】
このようにして水取り器を設置することにより、穿孔用口部からアクセスして容易に穿孔作業を行うことができると共に、穿孔用口部の開口を閉鎖することにより、容易に作業口からのガス管からのガス排出を防止することができる。
なお、ここでの「水平方向」は、実質的な水平方向を意味しており、水平方向に対して0°~15°程度の傾斜角度を有する方向を含んでいる。
【0009】
請求項2に係る水取り器設置方法は、前記穿孔用口部は、前記ガス管と直交する水平方向に開口し、前記水平方向にカッターを移動させて前記穿孔を行うものである。
【0010】
請求項2に係る水取り器設置方法によれば、穿孔用口部から作業用のアクセスを行い、ガス管と直交する水平方向にカッターを移動させてガス管の下壁に穿孔を行うことができる。
【0011】
請求項1に係る水取り器設置方法は、前記水取り器は、前記ガス管からの水を導入する筒状の水導入部、前記水導入部と接続された水貯留管を有し、前記水導入部を下向きに延出させ、前記水貯留管を水平方向または斜め下方向に延出させるものである。
【0012】
請求項1に係る水取り器設置方法によれば、水導入部を下向きに延出させてガス管からの水を流入させ、水貯留管に水を貯留させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る水取り器設置方法によれば、簡易な作業でガス管に水取り器を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】本実施形態の水取り器の水抜き孔穿孔中の接続部材の断面図である。
【
図4】本実施形態の水取り器の接続部材の断面図である。
【
図5】本実施形態の水取り器の樹脂製ガス管へ取り付け前の側面図である。
【
図6】本実施形態の変形例の水取り構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1、及び
図2には、本発明の実施形態に係る水取り構造10A及び水取り器12Aが示されている。
【0016】
水取り器12Aは、水平方向Xに流路が配置された樹脂製ガス管G1に適用されるものである。樹脂製ガス管G1の下壁(鉛直方向下部分)には、水抜き孔H(
図4参照)が穿孔されている。樹脂製ガス管G1は、地中に埋設されており、掘削により樹脂製ガス管G1周りの作業領域を確保して水取り器12Aを設置する。水取り器12Aの設置後に、樹脂製ガス管G1は埋め戻される。
【0017】
水取り器12Aは、接続部材20、水導入管30、水貯留管34、及び水抜き管38を備えている。
図3及び
図4にも示されるように、接続部材20は、受部22、水導入部24、カッター収納部26、及び、穿孔用口部28を有している。受部22は、樹脂製ガス管G1の外周に沿った形状とされ、樹脂製ガス管G1の外周面に水抜き孔Hを囲むように融着されている。水導入部24は、受部22と一体的に円筒状に形成されており、取り付けられた状態で、下方(鉛直方向Zの下向き)へ突出し、下向きに開口している。水導入部24の開口は、水抜き孔Hと連通されている。
【0018】
カッター収納部26は、受部22及び水導入部24と一体的に形成されており、水導入部24から樹脂製ガス管G1が延出される水平方向Xと直交する水平方向Yに突出している。カッター収納部26は、有底円筒状とされ、内部にカッター26Kが収納されている。
【0019】
穿孔用口部28は、受部22及び水導入部24と一体的に形成されており、水平方向Xからみて、水導入部24を挟んでカッター収納部26と反対向きで水平方向Yに突出している。穿孔用口部28は円筒状とされており、水平方向Yに開口する開口28Aが形成されている。開口28Aは、取り外し可能な蓋部29で閉鎖されている。穿孔用口部28の外周の先端寄りの部分には、Oリング28Fが配置され、蓋部29の内壁との間をシールしている。
【0020】
図3に示されるように、カッター収納部26及び穿孔用口部28は、同心円状に配置されている。以下、カッター収納部26及び穿孔用口部28の円筒の軸心を「軸心S」と称する。カッター収納部26には、カッター26K及び係合軸26Aが収納されている。カッター26Kは環状とされており、軸心Sに沿って移動可能とされている。カッター26Kは、軸心S周りに回転しつつ軸心Sに沿って移動して樹脂製ガス管G1を穿孔する。係合軸26Aは、後述する治具Jと係合し、治具Jにより回転することにより、カッター26Kを軸心Sに沿って回転させながら移動させる。
【0021】
穿孔用口部28の開口28Aの内側には、アクセス部28Bが設けられている。アクセス部28Bは、カッター26Kを移動させるための治具Jを挿入するための挿入口28C、挿入口28Cを閉鎖する逆止弁28D、治具Jの側面に当接して挿入口28Cとの間をシールするOリング28Eを有している。水抜き孔Hの穿孔は、治具Jを挿入して、係合軸26Aと係合させ、回転操作することにより、カッター26Kを軸心Sに沿って移動させて行う。
【0022】
水導入管30は、継手30A及び管体30Bを有している。継手30Aは、上側が水導入部24と接続され、下側が管体30Bの上端と接続されている。管体30Bの下端は、後述する水貯留管34の継手34Aと接続される。水貯留管34は、水導入管30を介して水導入部24と連接されている。
【0023】
水貯留管34は、継手34A、管体34B、及び継手34Cを有している。継手34Aは、流路が略直角に屈曲する所謂エルボ継手であり、継手34Aの一端側には管体30Bの下端が接続され、継手34Aの他端には管体34Bの一端側が接続されている。管体34Bは管体30Bよりも小径とされており、継手34Aの各々の接続部分は、接続対象の管体に対応した外径とされており、管体34Bが接続された側(以下「下流側34A2」という)は、管体30Bと接続された側(以下「上流側34A1」という)よりも小径とされている。継手34Aは、上流側34A1の流路が鉛直方向に配置され、下流側34A2側の流路が水平方向に配置される。また、下流側34A2の流路は、樹脂製ガス管G1の配管方向(水平方向X)及びこれと直交する方向(水平方向Y)と角度θ(本実施形態では鉛直方向Zからみた角度)をもって配置されている。管体30Bの流路は、下流側34A2と同方向に配置されている。すなわち、鉛直方向Zからみて、下流側34A2の流路の延出方向と樹脂製ガス管G1の配管方向のなす角度がθとなっている。角度θは、20度以上60度以下であることが好ましい。
【0024】
継手34Cについても、流路が略直角に屈曲する所謂エルボ継手であり、継手34Cの一端側には管体34Bの他端が接続され、継手34Cの他端には水抜き管38の下端が接続されている。管体34Bが接続された側(以下「上流側34C1」という)の流路は、管体34Bと同方向に配置され、水抜き管38が接続された側(以下「下流側34C2」という)の流路は、鉛直方向Zに配置される。
【0025】
水抜き管38は、長尺の管体とされており、継手34Cとの接続部分から上方へ延出され、樹脂製ガス管G1よりも上方まで達している。水抜き管38は、水貯留管34の外側で上方へ延出されている。水抜き管38の上端には、蓋部材39が取り付けられている。
【0026】
次に、本実施形態の水取り器12Aの設置作業について説明する。
【0027】
まず、継手30Aと管体30Bとを接続して水導入管30を形成すると共に、継手34A、管体34B、継手34Cを接続して、水貯留管34を形成する。次に、水貯留管34の継手34Cに水抜き管38を接続し、水貯留管34の継手34Aに水導入管30の管体30Bを接続する。そして、水抜き管38の先端に蓋部材39を取り付け、継手30Aと接続部材20の水導入部24とを接続する。これにより、取り付け前の水取り器12Aが形成される。
【0028】
図5に示すように、水取り器12Aは、樹脂製ガス管G1の下側から接続部材20の受部22を外周面に当接させ、融着させる。融着は、受部22に通電して受部22の内側面及び樹脂製ガス管G1の外周面を溶融させることにより行うことができる。
【0029】
その後、接続部材20の蓋部29を取り外し、治具Jを開口28Aから挿入して係合軸26Aと係合させ、治具Jを回転させてカッター26Kを穿孔用口部28側へ移動させて、樹脂製ガス管G1の下部を穿孔する。穿孔した孔が水抜き孔Hとなる。水抜き孔Hを形成した後、治具Jを回転させてカッター26Kをカッター収納部26内に戻し、穿孔用口部28に蓋部29を取り付ける。これにより、水取り器12Aの取り付けが完了する。
【0030】
樹脂製ガス管G1の水は、水抜き孔Hから水導入管30を通って水貯留管34内に貯留される。水を抜く際には、蓋部材39を取り外し、不図示のポンプを水抜き管38の上端から挿入し、水貯留管34から水を吸引して排出する。
【0031】
本実施形態の水取り構造10Aに用いる水取り器12Aは、水導入管30、水貯留管34、水抜き管38がいずれも管で構成されているので、互いに容易に接続することができる。また、既存の継手や管体を用いて容易に構成することができる。さらに、水導入管30、水貯留管34、水抜き管38の各々の、長さや径、樹脂製ガス管G1との角度を現場に合わせて容易に変更することができる。また、水抜き管38は、水貯留管34の外側で上方へ延出されているので、水抜き管38と水貯留管34の径や形状などの制約が少なく、設計の自由度を高くすることができる。
【0032】
また、本実施形態では、樹脂製ガス管G1に水取り器12Aを取り付けた後、水抜き孔Hを穿孔するので、ガスを止めることなく、水取り器12Aを設置することができ、ガス管を切断したり、迂回配管を行ったりする必要がなく、簡易に設置することができる。
【0033】
また、本実施形態では、接続部材20を用いて樹脂製ガス管G1との接続を行っているので、取り付け作業を容易に行うことができる。また、接続部材20の穿孔用口部28は受部22と一体的に形成されているので、別体とされている場合と比較して、各々の位置決めを容易に行うことができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、接続部材20にカッター26Kが内蔵されているので、このカッター26Kを移動させることにより、樹脂製ガス管G1に容易に水抜き孔Hを穿孔することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、水導入管30の流路を鉛直方向Zに配置したが、必ずしもこの方向である必要はなく、水導入部24から下向きで水を水貯留管34へ流すことができれば、流路は斜め方向に配置されていてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、水貯留管34の流路を水平方向に配置したが、必ずしもこの方向である必要はなく、水抜き管38側が低くなるように配置されていてもよい。水平方向または水抜き管38側を低い位置に配置することにより、ポンプでの水抜きを行いやすくすることができる。
【0037】
さらに、貯留する水量や掘削の範囲を考慮して、
図6に示されるように、水貯留管34を貯留部材32に置き換え、水抜き管38を貯留部材32の上部32Aに接続してもよい。上部32Aを継手30Aと同様にして水導入部24と接続し、下部32Bを水を貯留するタンクで構成することができる。この構造によれば、水平方向の掘削領域を狭くしつつ、所望の容量のタンクに水の貯留を行うことができる。
【0038】
なお、本実施形態では、水取り器12Aを樹脂製ガス管G1に適用したが、樹脂製以外のガス管、例えば金属製のガス管に適用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10A 水取り構造
12A 水取り器
20 接続部材
22 受部
24 水導入部
26K カッター
28 穿孔用口部
28A 開口
30 水導入管
34 水貯留管
G1 樹脂製ガス管
H 水抜き孔