IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

特許7426303燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法
<>
  • 特許-燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法 図1
  • 特許-燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法 図2
  • 特許-燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法 図3
  • 特許-燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法 図4
  • 特許-燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/19 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G21C19/19 010
G21C19/19 060
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020117043
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014619
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】根布 景
(72)【発明者】
【氏名】小林 希士
(72)【発明者】
【氏名】菅野 智
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-010532(JP,A)
【文献】特開2017-109806(JP,A)
【文献】特開2016-194494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/18
G21C 19/19
B66C 13/06
B66C 13/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の管状部材が互いに伸縮自在に組み合わされた伸縮管と、前記伸縮管の下端に設けられている原子炉用の燃料集合体を掴む燃料掴み具と、前記管状部材に取り付けられた可撓性を有する引張部材と、前記引張部材を巻き取る駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置に入力されている前記管状部材の定常走行速度、減速開始時間、減速加速度及び目標速度に基づいて、前記管状部材の移動速度を前記定常走行速度から前記目標速度まで減速させ
前記管状部材の通常の下降速度を前記定常走行速度とすると、前記管状部材の下降開始から減速開始時間までは、前記定常走行速度での前記管状部材の移動を、前記制御装置によって制御された前記駆動装置によって行い、前記減速開始時間からは、前記制御装置に入力されている前記減速加速度によって前記管状部材の移動が減速され、前記目標速度となるまで減速制御し、
前記制御装置には、減速終了した前記管状部材の位置から着座するまでのマージン距離及び着座速度が更に入力されており、
前記制御装置によって前記目標速度に制御された後に前記着座速度となるように制御され、前記マージン距離を移動した後、前記管状部材が所定の位置に着座することを特徴とする燃料掴み装置の制御システム。
【請求項2】
請求項に記載の燃料掴み装置の制御システムであって、
前記駆動装置は、ホイスト用電動機と、該ホイスト用電動機で回転駆動される巻き胴とから成り、前記巻き胴には、前記引張部材が前記伸縮管を上下に伸縮させる力を伝える部材として巻き掛けられており、
前記管状部材の下降開始から前記減速開始時間までは前記定常走行速度での前記管状部材の移動を、前記制御装置及び前記制御装置によって制御された前記ホイスト用電動機と前記巻き胴によって行うことを特徴とする燃料掴み装置の制御システム。
【請求項3】
請求項に記載の燃料掴み装置の制御システムであって、
前記伸縮管は複数の前記管状部材が重なり合って伸び縮みするように構成され、その内の最も外側の前記管状部材の上端は燃料取替機の横行台車に固定されると共に、最も内側の前記管状部材は前記引張部材によって前記巻き胴に接続され、前記巻き胴が前記ホイスト用電動機によって駆動されて前記引張部材の巻き上げ、巻き下げを行うことによって最も内側の前記管状部材の上下駆動を行い、
かつ、前記燃料掴み具が前記引張部材によって前記巻き胴に接続され、前記巻き胴が前記ホイスト用電動機によって駆動されて前記引張部材の巻き上げ、巻き下げを行うことによって前記燃料掴み具が上下に駆動されることを特徴とする燃料掴み装置の制御システム。
【請求項4】
請求項に記載の燃料掴み装置の制御システムであって、
複数の前記管状部材のそれぞれには、該管状部材の抜け落ちを防ぐためのストッパーが備えられており、複数の前記管状部材のそれぞれは、隣接する前記管状部材に備えられている前記ストッパーによって支持されることを特徴とする燃料掴み装置の制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料掴み装置の制御システムであって、
前記燃料集合体を前記燃料掴み具により掴む操作は遠隔操作で行われ、この遠隔操作を行う操作員に、前記管状部材の減速開始以降の制御が行われていることを示す制御状態表示器を備えていることを特徴とする燃料掴み装置の制御システム。
【請求項6】
複数の管状部材が互いに伸縮自在に組み合わされた伸縮管と、前記伸縮管の下端に設けられている原子炉用の燃料集合体を掴む燃料掴み具と、前記管状部材に取り付けられた可撓性を有する引張部材と、前記引張部材を巻き取る駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置とを備えた燃料掴み装置を制御する際に、
前記制御装置に入力されている前記管状部材の定常走行速度、減速開始時間、減速加速度及び目標速度に基づいて、前記管状部材の移動速度を前記定常走行速度から前記目標速度まで減速させ
前記管状部材の通常の下降速度を前記定常走行速度とすると、前記管状部材の下降開始から減速開始時間までは、前記定常走行速度での前記管状部材の移動を、前記制御装置によって制御された前記駆動装置によって行い、前記減速開始時間からは、前記制御装置に入力されている前記減速加速度によって前記管状部材の移動が減速され、前記目標速度となるまで減速制御し、
前記制御装置には、減速終了した前記管状部材の位置から着座するまでのマージン距離及び着座速度が更に入力されており、
前記制御装置によって前記目標速度に制御された後に前記着座速度となるように制御され、前記マージン距離を移動した後、前記管状部材が所定の位置に着座するように制御することを特徴とする燃料掴み装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法に係り、特に、原子炉内の燃料及びブレードガイドを掴んで原子炉ウェルプールと使用済み燃料貯蔵プールとの間を移動させ、燃料集合体の取替や配置換え作業を行うものに好適な燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電所では、原子炉ウェルプールと使用済み燃料貯蔵プール間を走行する燃料取替機が原子力プラント設備として装備されている。
【0003】
上記燃料取替機は、原子炉ウェルプールと使用済み燃料貯蔵プール間を走行する走行台車と、その走行台車上を前述の各プールを横切るように走行する横行台車と、その横行台車に設置された燃料掴み装置とを備えている。
【0004】
このような燃料取替機は、燃料掴み装置で燃料集合体やブレードガイドを掴んで、各台車の移動によって、燃料集合体やブレードガイドを原子炉ウェルプールと使用済み燃料貯蔵プールとの間を移動させ、燃料集合体の取替や配置換え作業を行う。
【0005】
また、燃料取替機の燃料掴み装置は、複数の管状部材が伸縮動作自在に組み合わされた伸縮管と、その伸縮管の下端に設けられている原子炉用の燃料集合体を掴む燃料掴み具と、前記管状部材を、ロープの巻き取りと繰り出しで上下方向に伸縮動作させる駆動装置とを備えている。
【0006】
燃料掴み装置の伸縮管は、径の異なる円筒状の複数の管状部材を互いに伸縮移動自在に組み合わせて構成され、管状部材には隣接し合う管状部材から抜け落ちないように、或いは下段の管状部材が上段の管状部材を引っ掛けることで管状部材全体を上昇させられるように、ストッパーが装備されている。
【0007】
また、伸縮管は、燃料集合体を掴みに移動する際や掴んだ燃料集合体を降ろす際に、駆動装置で伸縮させる必要がある。この際、伸縮管の伸縮動作が急速であると、ストッパーに衝撃が加わるため、緩慢な速度で伸縮動作がなされる。
【0008】
原子力発電所に設置した燃料取替機の燃料掴み装置の先行技術文献としては、特許文献1を挙げることができる。
【0009】
この特許文献1に開示されている燃料掴み装置には、燃料掴み装置の伸縮管の伸縮時間を短縮し、燃料交換作業の高速化を図るために、制御装置で電動機の速度制御を行い、伸縮管の昇降開始及び停止時のSカーブ速度を与えることで、上下方向へ移送中の燃料集合体へ与える加速度を緩和可能にさせることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-10532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
通常、伸縮管の管状部材を緩慢に移動させることは、交換作業の時間増大につながり、原子力発電所の稼働率の低下する要因となりうる。これを解決するには、管状部材を従来に比べて高速で移動させながら、ストッパーに加わる衝撃力を低減させる方法が必要となる。
【0012】
しかしながら、上記した特許文献1には、伸縮管の管状部材を高速で移動させながら、ストッパーに加わる衝撃力を低減させることについては記載されていない。
【0013】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、伸縮管の管状部材を高速で移動させながら、ストッパーへの着座時の衝撃力を緩和させることができる燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の燃料掴み装置の制御システムは、上記目的を達成するために、複数の管状部材が互いに伸縮自在に組み合わされた伸縮管と、前記伸縮管の下端に設けられている原子炉用の燃料集合体を掴む燃料掴み具と、前記管状部材に取り付けられた可撓性を有する引張部材と、前記引張部材を巻き取る駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置に入力されている前記管状部材の定常走行速度、減速開始時間、減速加速度及び目標速度に基づいて、前記管状部材の移動速度を前記定常走行速度から前記目標速度まで減速させ
前記管状部材の通常の下降速度を前記定常走行速度とすると、前記管状部材の下降開始から減速開始時間までは、前記定常走行速度での前記管状部材の移動を、前記制御装置によって制御された前記駆動装置によって行い、前記減速開始時間からは、前記制御装置に入力されている前記減速加速度によって前記管状部材の移動が減速され、前記目標速度となるまで減速制御し、
前記制御装置には、減速終了した前記管状部材の位置から着座するまでのマージン距離及び着座速度が更に入力されており、
前記制御装置によって前記目標速度に制御された後に前記着座速度となるように制御され、前記マージン距離を移動した後、前記管状部材が所定の位置に着座することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の燃料掴み装置の制御方法は、上記目的を達成するために、複数の管状部材が互いに伸縮自在に組み合わされた伸縮管と、前記伸縮管の下端に設けられている原子炉用の燃料集合体を掴む燃料掴み具と、前記管状部材に取り付けられた可撓性を有する引張部材と、前記引張部材を巻き取る駆動装置と、前記駆動装置を制御する制御装置とを備えた燃料掴み装置を制御する際に、
前記制御装置に入力されている前記管状部材の定常走行速度、減速開始時間、減速加速度及び目標速度に基づいて、前記管状部材の移動速度を前記定常走行速度から前記目標速度まで減速させ
前記管状部材の通常の下降速度を前記定常走行速度とすると、前記管状部材の下降開始から減速開始時間までは、前記定常走行速度での前記管状部材の移動を、前記制御装置によって制御された前記駆動装置によって行い、前記減速開始時間からは、前記制御装置に入力されている前記減速加速度によって前記管状部材の移動が減速され、前記目標速度となるまで減速制御し、
前記制御装置には、減速終了した前記管状部材の位置から着座するまでのマージン距離及び着座速度が更に入力されており、
前記制御装置によって前記目標速度に制御された後に前記着座速度となるように制御され、前記マージン距離を移動した後、前記管状部材が所定の位置に着座するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、伸縮管の管状部材を高速で移動させながら、ストッパーへの着座時の衝撃力を緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の燃料掴み装置の制御システムの実施例1が採用される原子力発電所内の燃料取替機を示す概略構成図である。
図2図1の平面図である。
図3】本発明の燃料掴み装置の制御システムの実施例1を示す概略構成図である。
図4】本発明の燃料掴み装置の制御方法の実施例1による管状部材の速度制御履歴を示す概念図である。
図5】本発明の燃料掴み装置の制御方法の実施例2による管状部材の速度制御履歴を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の燃料掴み装置の制御システム及びその制御方法を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0019】
先ず、図1及び図2を用いて、本発明の燃料掴み装置の制御システムが採用される原子力発電所内の燃料取替機の全体説明を行う。
【0020】
該図に示すように、原子力発電所の原子炉では、原子炉の停止中に行われる定期検査時に、燃料取替機100を用いて原子炉圧力容器105内の燃料集合体110の取替を行っている。
【0021】
この燃料集合体110の取替作業は、使用済みの燃料集合体110を原子炉圧力容器105の外部に取り出し、使用済み燃料貯蔵プール120側に移動すると共に、新しい燃料集合体110を原子炉圧力容器105内に装荷するものである。
【0022】
また、燃料取替機100は、使用済み燃料貯蔵プール120、原子炉ウェルプール130及び原子炉圧力容器105上を跨ぐように設置され、オペレーティングフロア140上に各プールに沿って敷設された走行レール150上を自在に走行可能な走行台車160と、この走行台車160上に設置された横行レール170上を自在に横行可能な横行台車180とを有し、原子炉ウェルプール130の下方に位置する原子炉圧力容器105の炉心部に配置された燃料集合体110を、その横行台車180から懸垂支持した伸縮管1の下端に設置した燃料掴み具5で掴んで炉心外へ取り出し、使用済み燃料貯蔵プール120の使用済み燃料貯蔵ラック(図示せず)内へ入れて、燃料掴み具5から離すように動作する。
【0023】
一方、伸縮管1の先端の燃料掴み具5は、燃料集合体110上端のハンドル部を遠隔操作で着脱自在にクランプするようになっており、径の異なる円筒状の複数の管状部材1a、1b、1c、1d、1e及び1f(図3参照)を、重なり合って伸び縮みするように設けて伸縮自在に組み合わせた伸縮管1と合わせて燃料取替機100の横行台車180に設置されている。
【0024】
横行台車180には、ホイスト用電動機2と、そのホイスト用電動機2で回転駆動されるロープ巻取りドラムとしての巻き胴3が伸縮管1を上下に伸縮させる駆動装置として設置されている。上記巻き胴3には、ワイヤロープ6が伸縮管1を上下に伸縮させる力を伝える可撓性引張部材として巻き掛けられている。
【0025】
このような構成において、燃料取替機100を炉心から取り出し使用済み燃料貯蔵プール120内へ移送する場合及び燃料集合体110を使用済み燃料貯蔵プール120内から炉心部へ移送する場合には、燃料集合体110を移送するために、伸縮管1の下端に取り付けられた燃料掴み具5の上下の昇降動作が必要となる。
【0026】
また、上記のようにして実施される燃料取替作業は、燃料取替機100の遠隔自動運転により行われるため、燃料取替機100の各台車構造体は十分な剛性のものであり、走行レール150の設置は、十分な精度が必要となる。そして、十分な検出精度を有する座標検出装置により、取り扱い対象の燃料集合体110への自動位置決め及び伸縮管1の伸縮による燃料掴み具5の自動把持を可能としている。
【0027】
次に、伸縮管1の構成及び機能を、図3を使用して以下に説明する。
【0028】
図3に示すように、伸縮管1は管状部材1a、1b、1c、1d、1e及び1fから構成され、最も外側の管状部材1aの上端は横行台車180に固定されている。また、最も内側の管状部材1fは、可撓性のワイヤロープ6bによって巻き胴3bに接続され、巻き胴3bがホイスト用電動機2によって駆動され、ワイヤロープ6bの巻き上げ、巻き下げを行い、これによって最も内側の管状部材1fの上下駆動を行う。
【0029】
また、燃料掴み具5も同様に可撓性のワイヤロープ6aによって巻き胴3aに接続され、同じくホイスト用電動機2によって巻き胴3aが駆動され、燃料掴み具5が上下に駆動される。燃料掴み具5は、燃料集合体8をグラップ又はグラップした燃料集合体8を離す機能を持つ。
【0030】
伸縮管1を構成する各管状部材1a、1b、1c、1d、1e及び1fには、それぞれの管状部材1b、1c、1d、1eの抜け落ちを防ぐため、ストッパー21、22a、22b、22c、23a、23b、23c、23d、24a、24b、24c、24d、25a、25b、25c、25d、26a及び26bが備えられている。
【0031】
図3は、管状部材1b、1c、1d、1e及び1fが下降した状態を示している。
【0032】
管状部材1bが下降する際は、管状部材1bのストッパー22bが、管状部材1cのストッパー23aによって支持されることで、管状部材1bが抜け落ちることを防いでいる。同様に管状部材1cは、ストッパー23aが管状部材1dのストッパー24aに支持されることで管状部材1dに支えられている。同様に管状部材1dは、ストッパー24cが管状部材1eのストッパー25aで支持されることで管状部材1eに支えられている。同様に管状部材1eは、ストッパー25cが管状部材1fのストッパー26aで支持されることで管状部材1fに支えられる。管状部材1fは、ワイヤロープ6bによって上述した如く支持、駆動される。
【0033】
このような構成でワイヤロープ6bによって伸縮管1が下降すると、管状部材1bの外面に備えられたストッパー22aが、管状部材1aの内面に備えられたストッパー21に着座することで、管状部材1bは管状部材1aに支えられる。その他の管状部材1c、1d、1eも、下降時はそれぞれの内側に隣接ずる管状部材のストッパーにより支えられる。また、下降状態から上昇する際には、それぞれの外側に隣接する管状部材のストッパー同士を引っ掛けて一体化することで上昇することになる。
【0034】
次に、上記した燃料掴み装置における制御システム及び制御方法について、以下に説明する。
【0035】
ここでは、下降する管状部材1b、1c、1d、1e及び1fのうち、管状部材1bが下降した際のストッパー22aが、管状部材1aのストッパー21に着座する工程を例として挙げるが、他の管状部材の組合せとして読み替えても良いし、下降を上昇と読み替えても良い。
【0036】
図3に示すように、本実施例の燃料掴み装置の制御システムを構成するホイスト用電動機2は、制御装置10を備えている。この制御装置10は、減速開始時間と減速加速度及び目標速度がデータとして入力されている。
【0037】
管状部材1bの通常の下降速度を定常走行速度とすると、管状部材1bの下降開始から減速開始時間までは、定常走行速度での管状部材1bの移動を、制御装置10と、この制御装置10によって制御されたホイスト電動機2及び巻き胴3によって行う。
【0038】
本実施例における減速制御の時間履歴の概念を図4に示す。
【0039】
本実施例では、図4に示すように、管状部材1bの減速開始時間からは、制御装置10に入力されている減速加速度によって、管状部材1bの移動が減速され、目標速度となるまで減速制御する。
【0040】
このとき、目標速度は、ストッパー22aに加わる衝撃力がストッパー21の強度を保てる程度の弱い衝撃力となるように、十分遅い速度として定めることができる。
【0041】
目標速度のままストッパー22aがストッパー21に着座することで、衝撃力を緩和した着座が可能となる。また、定常走行速度は、従来技術で採用されていた緩慢な移動速度より十分早い速度とすることで、全体の移動工程時間を短縮することができる。
【0042】
なお、管状部材1bの減速開始時間は、巻き胴3によるワイヤロープ6の巻き上げ長さによって判断しても良いし、その他の方法でも良い。
【0043】
本実施例における管状部材は、可撓性のあるワイヤロープによって吊るされているため、目標速度に制御しても、自由振動による速度誤差を伴うことになるが、この速度誤差も制御が可能である。
【0044】
即ち、本実施例を用いて、管状部材の減速加速度を一定値Aとし、目標速度まで減速した場合、自由振動による速度誤差Veは、自由振動の固有角振動数ω(rad/s)と減速加速度Aによって、次式で求められる。
【0045】
Ve=減速加速度A/(2×固有角振動数ω)
従って、管状部材の減速加速度Aを十分低く、つまり、管状部材の減速をゆっくり行えば、目標速度の誤差を十分小さい範囲に制御可能となる。
【0046】
また、本実施例では、減速開始以降の制御が行われていることを、遠隔操作している操作員に示す制御状態表示器11を備えている。これにより、操作員は制御が行われていることを監視できる。
【0047】
このような本実施例によれば、伸縮管を構成する管状部材を、その走行時間の大部分を従来に比べて高速化することができ、更に、管状部材同士の着座時には速度を緩慢にすることで、ストッパーへの衝撃力を抑制することができる。
【実施例2】
【0048】
本発明の実施例2を、図5を用いて説明する。
【0049】
図5は、実施例2の管状部材の速度と鉛直座標位置の関係を、概念的に示したものである。
【0050】
本実施例では、伸縮管1、ワイヤロープ6、巻き胴3、ホイスト電動機2の構成は実施例1と同様であり、また、実施例1と同様に制御装置10と制御状態表示器11を備えているが、本実施例の制御装置10には、実施例1で示した減速開始時間と減速加速度及び目標速度の他に、減速終了した管状部材の位置から着座位置までのマージン距離と着座速度がデータとして入力されている。
【0051】
そして、制御装置10によって目標速度に制御された後に着座速度となるように制御され、マージン距離を移動した後、管状部材が所定の位置に着座するようにしたものである。即ち、制御装置10によって目標速度まで減速された管状部材は、その後、着座速度まで再び加速され、マージン距離を移動した後着座するものである。
【0052】
このとき、管状部材1bの着座速度は、ストッパー22aに加わる衝撃力が十分小さくなるような低い速度とすることで、管状部材1aのストッパー21への衝撃力を抑制することができる。また、マージン距離は、減速開始時間及び目標速度に達した減速終了時間の測定誤差が予測される場合に、減速終了前に着座しないように十分な距離を設定することで、想定外の着座を防止することができる。
【0053】
このような本実施例であっても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…伸縮管、1a、1b、1c、1d、1e、1f…管状部材、2…ホイスト用電動機、3、3a、3b…巻き胴、5…燃料掴み具、6、6a、6b…ワイヤロープ、8、110…燃料集合体、10…制御装置、11…制御状態表示器、21、22a、22b、22c、23a、23b、23c、23d、24a、24b、24c、24d、25a、25b、25c、25d、26a、26b…ストッパー、100…燃料取替機、105…原子炉圧力容器、120…使用済み燃料貯蔵プール、130…原子炉ウェルプール、140…オペレーティングフロア、150…走行レール、160…走行台車、170…横行レール、180…横行台車。
図1
図2
図3
図4
図5