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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/10 20060101AFI20240125BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20240125BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F01D17/10 C
F01K27/02 C
F01D17/10 G
H02P9/04 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020137425
(22)【出願日】2020-08-17
(65)【公開番号】P2022033495
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】井手 和成
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
(72)【発明者】
【氏名】森山 慧
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-082701(JP,A)
【文献】特開2000-145410(JP,A)
【文献】特開2009-191715(JP,A)
【文献】特開平11-022421(JP,A)
【文献】特開平06-248904(JP,A)
【文献】特開平08-005044(JP,A)
【文献】特開昭54-047010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/10
F01K 27/02
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴミ焼却設備が生成した蒸気を発電設備に供給して、前記発電設備が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラントの制御装置であって、
前記ゴミ焼却設備から前記発電設備に蒸気を供給するラインに設けられた蒸気加減弁を制御する蒸気加減弁制御部、を備え、
前記蒸気加減弁制御部は、前記発電設備が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記蒸気加減弁の開度を制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記蒸気加減弁制御部は、前記低周波成分を除去した値を、不完全積分により演算する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記蒸気加減弁制御部は、MVを前記周波数の計測値と前記周波数について定められた基準値との偏差に基づく開度、MVを前記圧力の計測値と前記圧力について定められた基準値との偏差に基づく開度、γを所定の正の実数としたときに、以下の式(1)によって、前記蒸気加減弁の開度MVGVを演算する、
【数1】
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記蒸気を生成するゴミ焼却設備におけるゴミの燃焼を制御する燃焼制御部、
を更に備え、
前記燃焼制御部は、前記蒸気の流量の指令値を、前記低周波成分に基づいて補正し、補正後の前記蒸気の流量の指令値に基づいて、前記ゴミの燃焼を制御する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記燃焼制御部は、前記補正後の前記蒸気の流量の指令値と、前記蒸気の流量の計測値との偏差に基づいて、前記ゴミ焼却設備に供給する燃焼空気の供給を補償する補償量を演算し、前記蒸気の流量の指令値に基づく前記燃焼空気の供給量に前記補償量を加算して、前記燃焼空気の供給を制御する、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記燃焼制御部は、前記燃焼空気に関する前記補償量のうち、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答に要する時間に基づく周波数成分を抽出し、前記蒸気の流量の指令値に基づくゴミの供給指令値に抽出した値を加算して、前記ゴミの供給を制御する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記発電設備の出力と、出力の上げ代および下げ代とに基づいて、前記燃焼空気の供給量の指令値を補正する燃焼空気演算部、
をさらに備える請求項5から請求項6の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記発電設備の出力と、出力の上げ代および下げ代とに基づいて、前記ゴミの供給指令値を補正するゴミ供給演算部、
をさらに備える請求項6に記載の制御装置。
【請求項9】
前記燃焼制御部は、前記ゴミ焼却設備の燃焼室における前記ゴミの燃え切り位置が、燃え切り位置の設定値を超過する場合、前記ゴミの供給量を減少させる、
請求項4から請求項8の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記発電設備の出力と、出力の上げ代および下げ代とに基づいて、前記蒸気の圧力の指令値を補正する設定蒸気圧力補正部、
をさらに備える請求項1から請求項9の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
ゴミ焼却設備が生成した蒸気を発電設備に供給して、前記発電設備が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラントの制御方法であって、
前記発電設備が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記ゴミ焼却設備から前記発電設備に蒸気を供給するラインに設けられた蒸気加減弁の開度を制御する、
制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、
ゴミ焼却設備が生成した蒸気を発電設備に供給して、前記発電設備が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラントの制御方法であって、
前記発電設備が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記ゴミ焼却設備から前記発電設備に蒸気を供給するラインに設けられた蒸気加減弁の開度を演算する処理、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴミ焼却発電プラントの制御装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉にボイラを設置し、ゴミ焼却の際に発生する熱を回収し、発生した蒸気により発電を行なうゴミ発電は、ゴミを単に廃棄物としてではなく、ゴミに燃料としての付加価値を生じせしめる点で経済的に重要である。ゴミの燃料としての付加価値を向上するには、発生する蒸気量を安定化させ、計画したとおりの発電ができるようにすることが最も効果的である。
【0003】
最近では、再生可能エネルギーが大量導入され、電力系統の周波数が基準値(西日本では60Hz、東日本では50Hz)を超過したら電気出力を下げ、基準値に不足したら電気出力を上げるという、いわゆる調整力が経済的な価値として認められるようになった。ゴミ焼却発電プラントにも調整力を発揮させられるなら、設置者は、より大きな経済的なメリットを得ることができる。さらに、ゴミ焼却発電プラントで周波数調整運転が可能となれば、たとえば大規模な自然災害により広域な停電が発生したとしても、ゴミ焼却発電プラントは自立的に運転し、災害後のゴミ処理を継続的に行うとともに、周辺施設への電力供給を継続することができる。
【0004】
しかしながら、現状、ゴミ焼却発電プラントの電気出力は、ゴミの発熱量に応じてある程度の時間的な変動を容認しながら、ほぼ出力一定で運転されている。発電出力を外部から要求された値に瞬時に一致させるような運転はしていない。公知のゴミ焼却発電プラントでは、ゴミ発電の特徴である発生蒸気量を任意に制御することができず、それに関連して、蒸気タービンに連結された発電機の発電電力を任意に制御することができない。これに対し、発電出力の基準値を低い値に設定し、基準値を超えた分の蒸気は発電用のタービンを、バイパス設備を介してバイパスして復水器に導く制御が提案されている(特許文献2)。しかし、このような運転は、基準値を超える比較的大量の蒸気の熱エネルギーを、バイパス設備を通して環境に捨てるので、再生可能なエネルギーを無駄にしてしまう。この対策として、ガスタービン駆動の発電機を備え、負荷変動を吸収させてゴミ焼却発電プラントは一定出力で運転することが行われている(特許文献3)。しかしながら、電力系統が需要する電力が、ゴミ焼却発電プラント単体での供給力より小さくなるような状況ではガスタービン駆動の発電機の電力は不要となる。したがって、ゴミ焼却発電プラント自体が調整力を発揮することはやはり価値がある。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、ゴミ焼却炉プラントが排出した蒸気を利用する発電設備において、補助ボイラとアキュムレータを並列に連結し、負荷のベース部分を賄う分量の蒸気を補助ボイラから供給し、変動部分に対応するための蒸気をアキュムレータから供給する制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平02-126003号公報
【文献】特開第4944831号公報
【文献】特開平11-303610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゴミ焼却発電プラントに電力の調整力を発揮させる制御は提供されていない。特許文献1には、負荷追従能力を補う制御しか開示されていない。
【0008】
本開示は、上記課題を解決することができる制御装置、制御方法およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の制御装置は、ゴミ焼却設備が生成した蒸気を発電設備に供給して、前記発電設備が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラントの制御装置であって、前記ゴミ焼却設備から前記発電設備に蒸気を供給するラインに設けられた蒸気加減弁を制御する蒸気加減弁制御部、を備え、前記蒸気加減弁制御部は、前記発電設備が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記蒸気加減弁の開度を制御する。
【0010】
また、本開示の制御方法は、ゴミ焼却設備が生成した蒸気を発電設備に供給して、前記発電設備が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラントの制御方法であって、前記発電設備が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記ゴミ焼却設備から前記発電設備に蒸気を供給するラインに設けられた蒸気加減弁の開度を制御する。
【0011】
また、本開示のプログラムは、コンピュータに、ゴミ焼却設備が生成した蒸気を発電設備に供給して、前記発電設備が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラントの制御方法であって、前記発電設備が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記ゴミ焼却設備から前記発電設備に蒸気を供給するラインに設けられた蒸気加減弁の開度を演算する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
上述の制御装置、制御方法およびプログラムによれば、ゴミ焼却発電プラントが系統電力の周波数調整に対応する運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】各実施形態に係るゴミ焼却発電プラントの一例を示す図である。
図2】第一実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図3A】第一実施形態に係る蒸気加減弁の開度指令値の一例を示す第1図である。
図3B】第一実施形態に係る蒸気加減弁の開度指令値の一例を示す第2図である。
図3C】第一実施形態に係る蒸気加減弁の開度指令値の一例を示す第3図である。
図3D】第一実施形態に係る蒸気加減弁の開度指令値の一例を示す第4図である。
図4】第一実施形態に係る圧力補償量演算部の一例を示す図である。
図5】第一実施形態に係る燃焼制御の一例を示す図である。
図6】第二実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図7】第三実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図8】第三実施形態に係る設定蒸気圧力補正部の一例を示す図である。
図9A】第三実施形態に係るルックアップテーブルの一例を示す図である。
図9B】第三実施形態に係るルックアップテーブルの一例を示す図である。
図10】第四実施形態に係る燃焼空気演算部およびゴミ供給演算部の一例を示す図である。
図11】第五実施形態に係るゴミ供給量の制御の一例を示す図である。
図12】各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(システム構成)
図1は、各実施形態に係るゴミ焼却発電プラントの一例を示す図である。
ゴミ焼却発電プラント100は、ゴミ焼却設備30と、発電設備40とを備える。ゴミ焼却設備30は、ゴミが投入されるホッパ1と、ホッパ1に投入されたゴミを下部へ導くシュート2と、シュート2を通じて供給されたゴミを燃焼室6内に供給するプッシャ10と、プッシャ10によって供給されたゴミを受けて、ゴミを移送しながら乾燥と燃焼を行う火格子3と、ゴミを燃焼する燃焼室6と、灰を排出する灰出口7と、空気を供給する送風機4と、送風機4によって供給された空気を火格子3の各部へ導く複数の風箱5A~5Eと、ボイラ9と、を備える。発電設備40は、蒸気タービン41と、蒸気タービン41によって発電された電力を計測する電力計42と、を備える。
【0015】
プッシャ10は、矢印αの方向に移動して、シュート2を通じて供給されたゴミを押し出すことにより、ゴミを火格子3へ供給する給じん装置である。火格子3は、シュート2及び燃焼室6の底部に設けられゴミを搬送する。火格子3は、プッシャ10によって供給されたゴミの水分を蒸発させて乾燥させる乾燥域3Aと、乾燥域3Aの後流に位置し、乾燥したゴミを燃焼させる燃焼域3Bと、燃焼域3Bの後流に位置し、燃焼されずに通過してきた固定炭素分等の未燃分を灰になるまで燃焼させる後燃焼域3Cとを備えている。制御装置20からの制御信号を受け、火格子3の動作速度が制御される。燃焼室6の壁には、窓Wが設けられ、窓Wから燃焼室6の内部の様子を撮影するようにカメラ16が設置されている。カメラ16は、制御装置20と接続されており、カメラ16が撮影した画像は制御装置20へ送信される。
【0016】
送風機4は、火格子3の下方に設けられ、風箱5A~5Eを介して、空気を火格子3の各部に供給する。送風機4と風箱5A~5Eを接続する管路には、各々バルブ8A~8Eが設けられ、バルブ8A~8Eの開度を調節することにより、風箱5A~5Eへ供給される燃焼空気の流量を調節することができる。制御装置20からの制御信号を受け、送風機4の送風量、バルブ8A~8Eの開度が制御される。
【0017】
燃焼室6は、火格子3の上方に、一次燃焼室6Aと二次燃焼室6Bとからなり、ボイラ9は、燃焼室6の後流に配設されている。ボイラ9は、燃焼室6から送られた排ガスとボイラ9内を循環する水と熱交換して蒸気を発生させる。蒸気は管路13を通じて発電設備40の蒸気タービン41へ供給される。管路13には、蒸気の流量を検出する蒸気流量センサ11が設けられている。蒸気流量センサ11は制御装置20と接続されていて、蒸気流量センサ11が計測した計測値は、制御装置20へ送信される。管路13には、蒸気の圧力を検出する蒸気圧力センサ14が設けられている。蒸気圧力センサ14は制御装置20と接続されていて、蒸気圧力センサ14が計測した計測値は、制御装置20へ送信される。管路13には、管路13を流れる蒸気の流量を調節する蒸気加減弁15が設けられている。蒸気加減弁15は制御装置20と接続されていて、制御装置20は蒸気加減弁15の開度を制御する。管路13は、発電設備40と接続されていて、ゴミ焼却設備30が発生させた蒸気を蒸気タービン41へ供給する。蒸気タービン41は、ゴミ焼却設備30から供給された蒸気によって発電を行う。蒸気タービン41は、図示しない電力系統と接続されていて、電力計42は、蒸気タービン41が発電した電力および周波数を計測する。電力計42は、制御装置20と接続されていて、電力計42が計測した計測値は、制御装置20へ送信される。
ボイラ9の排ガス出口には、煙道12が接続されていて、ボイラ9で熱回収された排ガスは煙道12を通過して不図示の排ガス処理設備を通過後、外部に排出される。
【0018】
制御装置20は、データ取得部21と、制御部22と、記憶部25と、を備える。
データ取得部21は、センサの計測値、ユーザの指示値など各種データを取得する。例えば、データ取得部21は、蒸気流量センサ11が計測した蒸気流量の計測値を取得する。データ取得部21は、蒸気圧力センサ14が計測した蒸気圧力の計測値(PV)を取得する。データ取得部21は、電力計42が計測した電力系統の周波数の計測値(PV)を取得する。電力系統の周波数は発電機の回転数から換算してもよい。
【0019】
制御部22は、電力系統の需要に対応する(基準となる周波数を維持できるような)量および圧力の蒸気を提供できるようにゴミ焼却設備30を運転する。例えば、ゴミ焼却設備30が供給する蒸気流量、圧力等を監視しながら、発電所の出力が安定するように、蒸気加減弁15の開度、燃焼室6へのゴミの供給量、燃焼空気の供給量を算出し、これらを制御する。制御部22は、蒸気加減弁制御部23と、燃焼制御部24と、を備える。蒸気加減弁制御部23は、蒸気圧力と電力周波数とに基づいて、蒸気加減弁15の開度を演算し、その開度で蒸気加減弁15を制御することにより、ゴミ焼却設備30から発電設備40へ供給する蒸気流量を制御する。燃焼制御部24は、蒸気圧力および蒸気流量の計測値と設定値の偏差に基づいて、ゴミ焼却設備30の燃焼制御を行う。燃焼制御は、燃焼空気やゴミの供給量を制御することにより実行される。燃焼制御部24は、送風機4の回転数やバルブ8A~8Eの開度制御により、所望の量の燃焼空気を燃焼室6へ供給し、プッシャ10の制御により、所望の量のゴミを燃焼室6へ供給する。
【0020】
記憶部25は、データ取得部21が取得した情報や、制御に必要な情報、例えば、蒸気流量設定値などを記憶する。
【0021】
<第一実施形態>
図2図5を用いて第一実施形態に係るゴミ焼却発電プラント100の制御について説明する。
(構成)
図2は、第一実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
図2に制御装置20のうち制御部22の要部の構成を示す。制御部22は、周波数制御部221と、圧力制御部222と、開度演算部224と、圧力補償量演算部225と、蒸気流量補償量演算部226と、位相補償部227と、加算部229と、加算部22A1と、減算部22Bと、加算部22Cと、を備える。これらのうち、周波数制御部221と、圧力制御部222と、開度演算部224と、は蒸気加減弁制御部23が備え、他の構成は、燃焼制御部24が備える。
【0022】
(系統の周波数に基づく蒸気加減弁の開度)
周波数制御部221は、電力系統の周波数の計測値PVと、電力系統の周波数の設定値SVとを取得し、計測値PVが設定値SVとなるような蒸気加減弁15の開度MVを演算する。
通常の運転では、ゴミ焼却発電プラント100の1つの出力が増減しても、電力系統に連系している他の発電プラントがその出力の変動を吸収するために電力系統の周波数は変動しない。しかし、ゴミ焼却発電プラント100を電力系統と解列し、ゴミ焼却発電プラント100の電力でゴミ焼却発電プラント100を運転する動力を賄うときには、発電量と消費動力を釣り合わせなければならない。発電量が消費電力に対して不足すれば、ゴミ焼却発電プラント100の周波数は時間と共に低下し、発電量が消費電力に対して過剰であれば、ゴミ焼却発電プラント100の周波数は時間と共に増加する。周波数が一定になるように蒸気流量を加減すれば、発電量と消費電力の釣合いが取れる。そのような状態を維持することが運転の継続に重要である。周波数制御部221は、周波数の観点から、周波数を一定に保つための蒸気加減弁15の開度MVを演算する。
【0023】
周波数制御部221は、例えば、周波数の基準値SVと、周波数の計測値PVと、発電出力の基準値SV_ と、から以下の式(1)のように比例制御(P制御)により開度MVを定めてもよい。
MV = k(SV-PV)+SV_ ・・・(1)
【0024】
(蒸気圧力に基づく蒸気加減弁の開度)
圧力制御部222は、蒸気圧力センサ14が計測する蒸気圧力の計測値PVと、蒸気圧力の設定値SVとを取得し、計測値PVが設定値SVとなるような蒸気加減弁15の開度MVを演算する。
ゴミ焼却設備30は、通常時には蒸気圧力を一定にするように運転される。ゴミの発熱量はその由来により多様であるので、燃焼室6に供給するゴミの質量や体積を厳密に一定にしたとしても、ゴミが燃焼して発生する熱は時間と共に変動することは避けられない。そこで、ゴミの供給を一定にし、それでも避けることができない燃焼熱の変動は、発電量を加減する運転(蒸気流量を加減する)によって対応する。ゴミの燃焼熱の値を1つ決めると、それに釣り合うよう発電量も1つ決まる。両者の釣合いが取れていれば、蒸気圧力は一定の値を保つ。燃焼熱よりも発電量が大きければ、蒸気圧力は時間と共に低下し、燃焼熱よりも発電量が小さければ、蒸気圧力は時間と共に上昇する。このように蒸気圧力は、発電量と燃焼熱の釣合いを表している。従って、蒸気圧力を一定にするように蒸気流量を加減して発電量を調整することは合理的である。圧力制御部222は、蒸気圧力の観点から、蒸気圧力を一定に保つための蒸気加減弁15の開度MVを演算する。
【0025】
圧力制御部222は、例えば、蒸気圧力の設定値SVと蒸気圧力の計測値PVとから以下の式(2)のように不完全積分からなる比例積分制御(PI制御)により、開度MVを定めるように構成されていてもよい。
【0026】
【数1】
【0027】
kは比例ゲインを表す一般的な記号である。TはPI制御器における積分の時定数を表す一般的な記号、sはラプラス演算子である。Tは不完全積分の時定数であり、後述の蒸気流量制御(後述する式(5))と関連付けて定めるものである。ここで、不完全積分とする理由は、低周波数成分の遮断にある。電力系統の周波数は、例えば50Hzや60Hzのような基準値を中心に短周期でランダムに変動するのに対して、蒸気圧力の変動は持続的(低周波)である。例えば、蒸気圧力の低下が持続的であると、MVの値が小さい状態が持続する。後述するように、蒸気加減弁15への開度指令は、MVと、周波数に基づく開度MVの小さいほうが採られる。開度MVが開度MVより小さい場合、蒸気圧力の低下が無視された状態が継続する。前述した低周波数成分の遮断は、これを回避し、蒸気圧力の低下が持続的になることを防止するために実施する。後述するように、蒸気圧力は、蒸気加減弁15の制御の他にも、燃焼制御により調整できることから、遮断された低周波成分は燃焼制御で補償して遮断による不都合を回避する。
【0028】
(蒸気加減弁の開度の決定)
開度演算部224は、開度MVと開度MVを取得し、蒸気加減弁15の開度を演算する。ゴミ焼却発電プラント100の制御には、上述のとおり、(a)蒸気圧力を一定にする事と、(b)周波数を一定にする事と、の2つの要請がある。しかし、蒸気加減弁15の制御で2つの要請を完全に満たすことは不可能である。そこで、開度演算部224は、より急迫した側を選択する観点で以下の式(3)の制御ロジックで蒸気加減弁15の開度を決定する。
MVGV = min{MV,MV}・・・(3)
MVGVは、2つの要請を調停した結果の蒸気加減弁15の開度指令である。つまり、開度演算部224は、MVとMVのうち、小さい値を蒸気加減弁15の開度として決定する。式(3)は、急迫した側を選択することに意味があり、開度演算部224は、例えば、以下の式(4)のようにべき乗の計算によって、蒸気加減弁15の開度を演算してもよい。
【0029】
【数2】
【0030】
式(4)のγは正の実数であり、例えば4や10に設定する。γを+∞とすると、式(4)は、式(3)に一致する。式(3)または式(4)によると、蒸気圧力制御と周波数制御の判定が簡素化され、さらに連続的に切り替えることができる。さらに、式(4)によると、蒸気加減弁15の開度を連続的かつ滑らかに切り替えることができる。この様子を図3A図3Dに示す。
【0031】
図3A図3Dにγの値を変化させたときの開度を示す。
図3Aはγ=100のときのMV、MV、MVGVの関係を示す図である。図3B図3C図3Dは、それぞれγ=10、γ=6、γ=4のときのMV、MV、MVGVの関係を示すグラフである。γ=100のケースは、不図示の式(3)のグラフと同様のグラフであり、2つの入力のうちの値が小さいほうのみが出力を支配する。例えば、MV<MVのとき、MVGVはMVのみで(すなわち、図示する面Bで)決まる。MV>MVのとき、MVGVはMVで(すなわち、図示する面Aで)決まる。別の言い方をすると、面BがMVGVを支配するときには、MVはMVGVに全く影響しない。例えば、MV>>MVであるならば、MVGVにMVが全く影響しなくてもよい。しかし、MVとMVが拮抗するとき、すなわちMV≒MVのときには、MVGVは両者を勘案したものとすることが好ましいと考えられる。そのようにすれば、A面とB面の切り替わりをスムーズにすることができる。式(3)では面Aと面Bは明確な稜線により分けられるが、発電設備40に供給する蒸気流量の制御を安定させるためには、これを滑らかなものにすべきである。図3A図3Dは、順にγの値を100、10、6、4と小さくするにつれて、面Aと面Bの境界が稜線から曲面に変化する様子を示している。式(3)の代わりに、例えば、γ=6程度にした式(4)を利用すれば、図3Cに示すようにMVとMVのスムーズな切り替えを行うことができる。
【0032】
(蒸気圧力の変動(低周波成分)の補償)
開度演算部224が周波数に基づく開度MVを選択した場合、蒸気圧力は蒸気加減弁15以外の手段に依って調整されなければならない。蒸気圧力が過度に不足すると、ボイラ9が空焚きになり熱的に破損し、蒸気圧力が過大であると、ボイラ9が構造的に損傷する恐れがある。本実施形態では、周波数制御による蒸気加減弁15の開度制御を実現するために蒸気加減弁15以外の手段(蒸気流量指令の制御)により蒸気圧力を調節する。ゴミ焼却設備30は、通常、プラントの運転者が蒸気流量をある設定値として定め、蒸気流量センサ11が計測する蒸気流量が、この設定値に一致するよう燃焼制御が行われる。開度演算部224は、運転者によって指定された蒸気流量の設定値を、蒸気圧力の偏差に基づき修正する。
圧力補償量演算部225は、蒸気圧力の計測値PVと、蒸気圧力の設定値SVとを取得し、低周波成分(圧力の偏差)を補償する補償量を演算する。具体的には、圧力補償量演算部225は、例えば、以下の式(5)の第2項のように、比例積分制御器を用いて補償量を演算する。比例積分制御器の積分時定数Tは、式(2)で述べた不完全積分の時定数Tと同じものである。Tの役割は、蒸気圧力の調整のうち、高周波数成分を式(2)に基づく蒸気加減弁15の開度制御により行い、低周波数成分を式(5)によって行うよう周波数成分を配分する役割を果たす。不完全積分の時定数Tは300秒よりも小さい値にすると適当である。
【0033】
【数3】
【0034】
圧力補償量演算部225の一例を図4に示す。図4は、図2の22-1の範囲を記載した図である。圧力補償量演算部225は、補償量を演算し、燃焼制御部24は、運転者が指示した蒸気流量の指令値SVに演算した補償量を加算し、SV´に補正する(式(5))。
【0035】
(燃焼制御)
補正後の蒸気流量の指令値SV´は、燃焼調節に利用される。燃焼制御部24は、蒸気流量の指令値SV´に基づき、概略、SV´が増大すれば燃焼熱を増やし、SV´が減少すれば燃焼熱を減らすよう制御する。燃焼調節の基本は、蒸気流量の計測値PVが指令値SV´に一致するように、燃焼熱を加減することにある。その目的のため、本実施形態では、図5に示す構成により、燃焼室6へ供給される燃焼空気およびゴミの供給量を演算する。
【0036】
図5は、第一実施形態に係る燃焼制御の一例を示す図である。図5は、図2の22-2の範囲を記載した図である。
燃焼制御部24は、蒸気流量の計測値PVと指令値SV´の偏差を補償する補償量を演算する蒸気流量補償量演算部226と、フィードバック制御ループの一巡伝達関数の交差角速度が概ね300-1(rad/s)より大きく(追従時定数が300秒よりも小さくなる)よう設定する位相補償部227と、蒸気流量に応じた燃焼空気の流量を演算する燃焼空気演算部226Aと、蒸気流量に応じたゴミ供給量を演算するゴミ供給演算部226Bと、を備える。
【0037】
蒸気流量補償量演算部226は、補正された蒸気流量の指示値SV´と蒸気流量の計測値PVとの偏差に基づき、例えば、以下の式(6)により、比例積分制御(PI制御)などのフィードバック制御を行う。
dSVa = k(1+1/T)(SV´-PV)・・・(6)
kはPI制御の比例ゲインを表す一般的な記号でありTは一般的な積分時定数を表している。このPI制御器の出力は、燃焼空気の調節値dSVとなる。燃焼空気のおおよその流量は蒸気流量の指令値SVの値と、燃焼空気演算部226Aが備える所定の関数2261によって算出することができる。関数2261は、蒸気流量の指令値SVを入力すると、指令値SVに応じた燃焼空気の流量を出力する。関数2261が出力する値を燃焼空気流量の名目の指令値SVa0と記す。燃焼制御部24は、減算部22Bを用いて、dSVから、位相補償部227が出力したdSVを減算し、加算部22Cを用いて名目の空気流量SVa0に、dSVを減算した後のdSVを加算して、燃焼空気の供給指令値SVを算出する。指令値SVは燃総空気の供給元圧の指令値や、流量の指令値に使われる。例えば、燃焼制御部24は、指令値SVに基づいて、バルブ8a~8dの開度や送風機4の回転数を調節して燃焼空気の供給量を調節する。
【0038】
また、燃焼空気の供給に対する蒸気流量の応答の時定数は出力に応じて概ね100秒から300秒程度の間で変化するので、燃焼空気流量のフィードバックループの交差角速度は余裕をみても時定数300秒に相当する300-1(rad/s)より大きく設定できる。フィードバックループ制御では、指令値に対する応答は交差角速度の逆数が時定数となる。従って、交差角速度は、300-1(rad/s)を下限としてこれより大きく設定する。
【0039】
燃焼空気の流量を増やすことにより、燃焼が促進されて蒸気流量が追加的に増加する。しかしながらこの発熱は炉内にある燃料としてのごみを追加的に消費した結果得たものだから、消費した分は追加的に供給しなければならない。その目的のために、燃焼空気の調値dSVに基づきごみ供給の調節値dSVを算出して、ゴミ供給の指令値SVを補正する。ゴミ供給指令値のおおよその値は、蒸気流量の指令値SVの値と、ゴミ供給演算部226Bが備える所定の関数2262によって算出することができる。関数2262は、蒸気流量の指令値SVを入力すると、指令値SVに応じたゴミ供給量を出力する。関数2262が出力する値を、ゴミ供給の名目の指令値SVw0と記す。燃焼制御部24は、名目の指令値SVw0に、空気の調値dSVに基づく調節値dSVを加算して、調整後のゴミ供給の指令値SVを演算する。
【0040】
位相補償部227は、以下の式(7)により、燃焼空気流量の調節値dSVを位相補償して、ゴミ供給の調節値dSVを算出する。
【0041】
【数4】
【0042】
式(7)のaとbは位相補償器の調整係数である。一般的に、蒸気流量の応答の時定数は、空気流量に対しては1分から数分程度であるのに対し、ごみ供給に対しては5分以上であり、蒸気流量の調節には燃焼空気の流量を変更するほうが速い応答が得られる。そこで、角速度が300-1(rad/s)以上の周波数領域の調節は燃焼空気の流量を調整することにより行い、ゴミ供給にはそれよりも低い周波数領域を分担させる。このような考えに基づき、前記位相補償器は角速度が300-1(rad/s)以上の周波数領域は高域遮断特性を有するよう設定する。これを、名目のごみ供給指令値SVw0に加算したものが、実際のごみ供給指令値SVである。一方、空気流量の調節値dSVからdSVを差し引いて低周波数成分を除去する。
【0043】
(動作)
次に、図2、図、図5を参照して、制御部22の処理の流れについて説明する。データ取得部21は、所定の時間間隔で、蒸気流量センサ11が計測した蒸気流量PV、蒸気圧力センサ14が計測した蒸気圧力PV、電力計42が計測した周波数PVを取得し、これらの値を制御部22へ出力している。
1.蒸気加減弁の制御
蒸気加減弁制御部23は、所定の制御周期で以下の処理を行う。
蒸気加減弁制御部23は、周波数制御部221を用いて周波数に基づく開度MVを演算する。並行して、制御部22は、圧力制御部222を用いて蒸気圧力に基づく開度MVを演算する。次に開度演算部224が、式()または式()により、蒸気加減弁15の開度指令値MVGVを演算する。蒸気加減弁制御部23は、MVGVによって蒸気加減弁15の開度を制御する。
【0044】
2.燃焼制御
燃焼制御部24は、圧力補償量演算部225を用いて、蒸気圧力の設定値SVと蒸気圧力の計測値PVの偏差を補償する補償量を演算する。次に、燃焼制御部24は、蒸気流量の指令値SVに補償量を加算して、補正後の蒸気流量の指令値SV´を演算する。次に燃焼制御部24は、蒸気流量補償量演算部226を用いて、蒸気流量の指令値SV´と蒸気流量の計測値PVの偏差を補償する燃焼空気の流量の調節dSVを演算する。次に燃焼制御部24は、位相補償部227を用いて、位相補償dSVを演算する。燃焼制御部24は、調節値dSVから位相補償dSVを減算した値に、蒸気流量の指令値SVに基づく燃焼空気の供給量SVa0を加算して、燃焼空気の供給指令値SVを演算する。燃焼制御部24は、蒸気流量の指令値SVに基づくゴミ供給の指令値SVW0に、位相補償dSVを加算した値を加算して、ゴミ供給の指令値SVを演算する。
燃焼制御部24は、指令値SVに基づいて、送風機4、バルブ8A~8Eを制御する。燃焼制御部24は、指令値SVに基づいて、プッシャ10を制御して、燃焼室6へ供給されるゴミの量を制御する。
【0045】
本実施形態によれば、電力の周波数を一定にする要請と、蒸気圧力を一定にする要請とのうち急迫する方を選択して、発電設備40へ供給する蒸気流量を調節することにより、ゴミ焼却発電プラント100単体で、電力の調整力を発揮することができる。また、蒸気流量を調節にあたって、蒸気圧力の変動が持続的であることについて、蒸気圧力変動の高周波成分だけを抽出して、蒸気加減弁15の開度MVを算出し、蒸気圧力変動の低周波成分については、燃焼制御にて補償することとしたため、周波数調整が優先された場合でも、蒸気圧力の上昇や低下が持続する状況を回避することができる。また、燃焼制御において、応答性の良い燃焼空気の流量制御による蒸気流量の制御を優先して行い、ゴミ供給制御により、燃焼室6内のゴミ量を調整することとしたので、蒸気圧力の変動に対処しつつ、出力調整の速応性を確保することができる。
【0046】
また、特許文献2に開示のタービンバイパス弁に頼ることなくより広い範囲で周波数調整運転が可能となる。これにより従来はタービンバイパスして未利用のまま環境に捨てていたゴミの熱エネルギーが節約される。したがって出力調整運転中のゴミ焼却設備30の熱効率を向上させることができる。また、上記では、電力系統の周波数に対応する周波数調整運転について説明したが、速応性を改善する効果があり、周波数調整運転ではない通常運転中においても蒸気流量の変動を抑制できるので計画通りの発電が可能となる。
【0047】
<第二実施形態>
次に図6を参照して、第二実施形態に係るゴミ発電プラントついて説明する。
図6は、第二実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
第二実施形態に係る制御部22Aは、周波数制御部221と、圧力制御部222Aと、HPF(ハイパスフィルター)223と、開度演算部224と、圧力補償量演算部225Aと、蒸気流量補償量演算部226と、位相補償部227と、減算部228と、加算部229と、加算部22A1と、減算部22Bと、加算部22Cと、を備える。第一実施形態との違いは、計測値PVと設定値SVに基づいて開度MVを演算するPI制御器(圧力制御部222A)の後段に低域遮断フィルタ(高域通過フィルタ)HPF223を直列に結合した点であり、それに伴い、いくつかの構成が変更されている。
【0048】
圧力制御部222Aは、以下の式(2a)によって、開度MVを演算する。
【0049】
【数5】
【0050】
第二実施形態の場合、圧力制御部222Aが演算した開度MVp1は、さらにHP223によって低周波成分を遮断した開度MVp2に変換されて開度演算部224に入力される。
【0051】
図6における圧力補償量演算部225Aは、蒸気圧力の計測値と、蒸気圧力の設定値とを取得し、式(5)の代わりに以下の式(5a)の第2項によって低周波成分の補償量を演算する。
SV´ = SV +F(MVp1-MVp2)・・・・(5a)
式(5a)において、蒸気流量の指令値SVと蒸気圧力の操作量MVp1およびMVp2は単位が異なる。前者の単位は[t/h]であり、後者は弁開度であるので[%]である。したがって、加算の前には、関数Fにより、弁開度を蒸気流量に換算している。
燃焼制御部24は、運転者が指示した蒸気流量の指令値SVに、圧力補償量演算部225Aが演算した補償量を加算してSV´に補正する(式(5a))。上述の単位換算の操作は、本願の制御演算の加減算処理において一般的に実施される。
【0052】
(動作)
次に、図6を参照して、制御部22の処理の流れについて説明する。データ取得部21は、所定の時間間隔で、蒸気流量センサ11が計測した蒸気流量PV、蒸気圧力センサ14が計測した蒸気圧力PV、電力計42が計測した周波数PVを取得し、これらの値を制御部22へ出力している。制御部22は、所定の制御周期で以下の処理を行う。
1.蒸気加減弁の制御
蒸気加減弁制御部23は、周波数制御部221を用いて周波数に基づく開度MVを演算する。並行して、蒸気加減弁制御部23は、圧力制御部222Aを用いて蒸気圧力に基づく開度MVp1を演算する。HP223は、開度MVp1の低周波成分を除去して、残りの高周波成分MVp2を出力する。次に開度演算部224が、開度MVと、開度MVp2と、式()または式()とにより、蒸気加減弁15の開度指令値MVGVを演算する。蒸気加減弁制御部23は、蒸気加減弁15の開度が指令値MVGVとなるように制御する。
【0053】
2.燃焼制御
燃焼制御部24は、圧力補償量演算部225Aを用いて、蒸気圧力の設定値SVと蒸気圧力の計測値PVの偏差を補償する補償量を演算する。次に、燃焼制御部24は、圧力の補償量から開度MVp2(高周波成分)を減じ、補償量2を演算する。次に燃焼制御部24は、蒸気流量の指令値SVに補償量2を加算して、加算後の蒸気流量の指令値SV´を演算する(式(5))。次に燃焼制御部24は、蒸気流量補償量演算部226を用いて、蒸気流量の指令値SV´と蒸気流量の計測値PVの偏差を補償する調節値dSVを演算する。次に燃焼制御部24は、位相補償部227を用いて、位相補償dSVを演算する。
燃焼制御部24は、調節値dSVから位相補償dSVを減算した値に、蒸気流量の指令値に基づく燃焼空気の供給量SVa0を加算して、燃焼空気の供給指令値SVを演算する。燃焼制御部24は、位相補償dSVに、蒸気流量の指令値に基づくゴミ供給の指令値SVw0を加算して、ゴミ供給の指令値SVを演算する。
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
<第三実施形態>
以下、本開示の第三実施形態に係るゴミ発電プラントついて図7図9Bを参照して説明する。
(構成)
図7は、第三実施形態に係る制御装置の要部の機能構成の一例を示す図である。
第三実施形態に係るゴミ焼却設備30は、予測される発電量の変動に応じて蒸気圧力の設定値SVを変更する設定蒸気圧力補正部22Dを備える。図7に第三実施形態に係るゴミ焼却設備30の一部の構成を示す。図7は、図2図6の22-3の範囲の第三実施形態における構成を記載した図である。図7に示すように、設定蒸気圧力補正部22Dは、第一実施形態、第二実施形態の圧力制御部222の前段に設けられる。
【0055】
電力系統の周波数の変動に応じて周波数を一定に保つ周波数調整運転では、周波数調整のために蒸気流量を加減しなければならない。例えば、周波数が急増すると、蒸気タービン41に供給する蒸気流量を減らして発電量を制限しなければならない。このとき、ゴミ焼却発電プラント100では、ゴミ焼却設備30から供給する蒸気が、蒸気タービン41が消費する蒸気を超過し、結果として蒸気圧力が上昇する。従って、燃焼制御では、蒸気圧力の超過が過大になる前に燃焼を抑制するよう、燃焼空気およびゴミの供給を減らすよう指令する。一方、周波数が急減すると、蒸気タービン41に供給する蒸気流量を増やして発電量を追加しなければならない。このとき、ゴミ焼却発電プラント100では、蒸気タービン41が消費する蒸気が、ゴミ焼却設備30から供給される蒸気を超過し、結果として蒸気圧力が下降する。従って、燃焼制御では空気およびゴミ供給を増やすよう指令する。このように、周波数調整運転では、周波数が上がるか下がるかに応じて、燃焼を減らすか増やすかの調整がされる。第三実施形態では、燃焼を増やす余地と減らす余地が、ゴミ焼却発電プラント100の出力に依存することに注目し、蒸気圧力の設定値を変更する。例えば、既に最大出力で運転しているならば、燃焼をさらに増やす余地はないが減らす余地はある。一方、最小出力で運転しているならば、燃焼をさらに減らす余地はないが増やす余地はある。ボイラプラントの共通の性質としてボイラ9が発生する蒸気の消費が減ると圧力が上昇し、蒸気の消費が増えると蒸気の圧力が下降する。そこで、最大出力付近で運転するときには、出力低下時の圧力上昇に備えて蒸気圧力を低く設定し、最小出力付近で運転するときには、出力上昇時の圧力低下に備えて蒸気圧力を高く設定する。
【0056】
図8は、第三実施形態に係る設定蒸気圧力補正部の一例を示す図である。
図8に示すように、設定蒸気圧力補正部22Dは、出力の下げ代を設定する下げ代設定部22D1と、ルックアップテーブル22D2と、最大許容圧力を設定する最大許容圧力設定部22D3と、減算部22D4と、出力の上げ代を設定する上げ代設定部22D5と、ルックアップテーブル22D6と、最小許容圧力を設定する最小許容圧力設定部22D7と、減算部22D8と、最適値選択部22D9と、を備える。
【0057】
ΔDNは出力の下げ代を表す。ΔDNは予め定められた一定の値(例えば、10%減)であってもよいし、電力の需要予測等に基づいて設定される所定時間未来の出力の低下幅であってもよい。ΔUPは出力の上げ代を表す。ΔDNと同様、ΔUPは一定の値や予測に基づく上昇幅でもよいし、現在の出力と出力100%の差分(例えば、現在70%の出力で運転している場合、30%など)であってもよい。
【0058】
下げ代設定部22D1は、ΔDNと蒸気流量の指令値SVsを入力し、max{ΔDN、SV-最小出力}によって下げ代を設定する。例えば、ΔDNが-30%、(SVに対応する出力)-最小出力が-10%の場合、下げ代設定部22D1は、-10%を下げ代に設定する。
【0059】
ルックアップテーブル22D2には、初期蒸気流量と下げ代に対して、蒸気圧力の最大偏差が定義されている。ルックアップテーブル22D2の一例を図9Aに示す。例えば、現在、100%定格出力に対応する蒸気流量で運転している場合、下げ代が-10%であれば、蒸気圧力の最大偏差は0.04MPaである。設定蒸気圧力補正部22Dは、ルックアップテーブル22D2を参照して、SVと下げ代に対応する蒸気圧力の最大偏差ΔpDNを出力する。
【0060】
最大許容圧力設定部22D3は、蒸気流量の指令値SVに対して許容できる最大の圧力pMAXを出力する。ボイラ9には蒸気圧力の上限値pMAXと下限値pMINがある。圧力の上限値pMAXは、圧力容器としての耐圧限度などが決定要素の1つとして定められる。最大許容圧力設定部22D3は、蒸気流量ごとに蒸気圧力の上限値pMAXを定めたテーブルや関数を有しており、このテーブルを参照して、指令値SVに対応する蒸気圧力の上限値pMAXを決定し、この値を出力する。
【0061】
減算部22D4は、蒸気圧力の上限値pMAXから下げ代に対する蒸気圧力の最大偏差ΔpDNを減じてSVpMAXを演算する。
【0062】
上げ代設定部22D5は、ΔUPと蒸気流量の指令値SVsを入力し、min{ΔUP、最大出力-SV}によって上げ代を設定する。例えば、ΔUPが30%、最大出力-(SVに対応する出力)が10%の場合、上げ代設定部22D5は、10%を上げ代に設定する。
【0063】
ルックアップテーブル22D6には、初期蒸気流量と上げ代に対して、蒸気圧力の最大偏差が定義されている。ルックアップテーブル22D6の一例を図9Bに示す。例えば、現在、80%定格出力に対応する蒸気流量で運転している場合、上げ代が10%であれば、蒸気圧力の最大偏差は-0.04MPaである。設定蒸気圧力補正部22Dは、ルックアップテーブル22D6を参照して、SVと上げ代に対応する蒸気圧力の最大偏差ΔpUPを出力する。
【0064】
最小許容圧力設定部22D7は、蒸気流量の指令値SVに対して許容できる最小の圧力pMINを出力する。ボイラ9には蒸気圧力の上限値pMAXと下限値pMINがある。圧力の下限値pMINは、例えばタービンで動力を取り出すのに必要なタービン排圧と蒸気圧との差圧などによって定められる。最小許容圧力設定部22D7は、蒸気流量ごとに蒸気圧力の下限値pMINを定めたテーブルや関数を有しており、このテーブルを参照して、指令値SVに対応する蒸気圧力の下限値pMINを決定し、この値を出力する。
【0065】
減算部22D8は、蒸気圧力の下限値pMINから上げ代に対する蒸気圧力の最大偏差ΔpUPを減じてSVpMINを演算する。
【0066】
最適値選択部22D9は、SVpMINからSVpMAXの間で蒸気圧力として最適な値を選択する。例えば、最適値選択部22D9は、蒸気流量の指令値SVごとに圧力とゴミ焼却発電プラント100の効率の関係を定めたテーブル等を有しており、プラント効率が最大となる圧力を選択する。選択した蒸気圧力は、蒸気圧力の設定値SV´である。
【0067】
(動作)
次に、図8を参照して、設定蒸気圧力補正部22Dの処理の流れについて説明する。
設定蒸気圧力補正部22Dは、蒸気流量の指令値SVと、出力の下げ代ΔDNと、出力の上げ代ΔUPと、を入力する。
下げ代設定部22D1は、指令値SVとΔDNとを入力して下げ代を設定する。次に設定蒸気圧力補正部22Dは、下げ代設定部22D1が設定した下げ代と、指令値SVと、ルックアップテーブル22D2とに基づいて、蒸気圧力の偏差ΔpDNを算出する。これと並行して、最大許容圧力設定部22D3は、指令値SVを入力して、pMAXを出力する。減算部22D4は、pMAXからΔpDNを減算してSVpMAXを演算する。
【0068】
一方、上げ代設定部22D5は、指令値SVとΔUPとを入力して上げ代を設定する。次に設定蒸気圧力補正部22Dは、上げ代設定部22D5が設定した上げ代と、指令値SVと、ルックアップテーブル22D6とに基づいて、蒸気圧力の偏差ΔpUPを算出する。これと並行して、最小許容圧力設定部22D7は、指令値SVを入力して、pMINを出力する。減算部22D8は、pMINからΔpUPを減算してSVpMINを演算する。最適値選択部22D9は、SVpMAXとSVpMINとを取得して、この範囲で適切な値を選択して蒸気圧力の設定値SV´として出力する。以降の処理は、蒸気圧力の設定値SVがSV´に置き換わるだけで、第一実施形態、第二実施形態と同様である。
【0069】
第三実施形態によれば、出力(発電量)の変動に応じて蒸気圧力の設定値を変更することができる。例えば、出力が大きいときには出力の低下に備え、蒸気圧力の設定値SV´を低く設定し、出力が小さいときには出力の上昇に備え、蒸気圧力の設定値SV´を高く設定することができる。これにより、周波数が変動した際に余裕をもって燃焼制御を行うことができる。
第三実施形態は、第一実施形態~第二実施形態の何れとも組み合わせることが可能である。
【0070】
<第四実施形態>
次に本開示の第四実施形態に係るゴミ発電プラントついて図10を参照して説明する。
(構成)
第四実施形態に係るゴミ焼却設備30は、燃焼室6内のゴミの保有量を調節する機能を備える。現状のように、ゴミ焼却設備30の都合で燃焼調整するならば、燃焼室内のゴミの保有量に応じてゴミを燃焼させればよい。しかし、周波数調整運転では、燃焼室内にゴミが少ないときの大出力や、ゴミが多いときの小出力など、ゴミの保有量に応じて燃やす方法では対応できない。周波数調整運転では、ゴミの保有量が不足していても燃焼空気の追加により出力を増大させるといった運転や、ゴミの保有量が過剰であっても燃焼を減じて出力を抑制するような運転が必要となる。これが可能になるのは、出力とゴミの保有量は厳密に一対一に固く拘束されるものではなく、燃焼空気による調節代があるからである。第四実施形態では、この調整代を利用する。周波数調整運転では、電力系統の周波数に従って燃焼調節しなければならない。例えば燃焼室内のゴミの量が不足し、燃焼空気を最大限まで追加してやっと出力を維持している状況にあるならば、出力を増やす側の周波数調整には応じられない。このような状況に陥ることを防ぐには、燃焼空気の流量を上限から離して運転しなければならない。そのためには、燃焼室内のゴミの保有量を増やしておかなければならない。第三実施形態と同様に、本実施形態では、燃焼を増やす余地と減らす余地が、ゴミ焼却発電プラント100の出力に依存することに注目する。例えば、既に最大出力で運転しているならば、燃焼をさらに増やす指令を受け付けることはないから、保有するゴミは少な目にして燃焼空気の流量を過剰気味にすることでトータルの燃焼量を確保する。これにより、出力を低下させるために燃焼空気の流量を減じたときに、ゴミの保有量が過剰になりにくい。一方、最小出力で運転しているならば、燃焼をさらに減らすことはないから、燃焼空気を抑え気味にして、且つ、燃焼室内に保有するゴミの量を多目にして運転する。これにより、将来、出力を増やすときに燃焼室内のゴミの保有量が不足することを予防することができる。具体的な構成例を図10に示す。
【0071】
(出力に応じた燃焼空気流量の調整)
図10は、第四実施形態に係る燃焼空気演算部およびゴミ供給演算部の一例を示す図である。図10は、図5の燃焼空気演算部226Aおよびゴミ供給演算部226Bに対応する本実施形態の構成を示した図である。
図10に示すように、燃焼空気演算部226A´は、下げ代設定部2263と、上げ代設定部2264と、平均値演算部2267と、加算部2268と、減算部2269と、関数2261とを備える。
【0072】
ΔDNは、現在の出力から出力をステップ的に下げるときの下げ幅を表している。ΔUPは、現在の出力から出力をステップ的に上げるときの上げ幅を表している。ΔDNおよびΔUPには、例えば、全出力の20%相当分のような値を設定する。
下げ代設定部2263は、ΔDNと蒸気流量の指令値SVsを入力し、max{ΔDN、SVsに対応する出力-最小出力}によって下げ代を設定する。
上げ代設定部2264は、ΔUPと蒸気流量の指令値SVsを入力し、min{ΔUP、最大出力-SVsに対応する出力}によって上げ代を設定する。
加算部2268は、指令値SVに下げ代を加算する。加算後の値をSVs1とする。
減算部2269は、指令値SVから上げ代を減算する。減算後の値をSVs2とする。平均値演算部2267は、SVs1とSVs2の平均値を演算する。
関数2261は、蒸気流量を入力すると、その蒸気流量に対応する出力に応じた燃焼空気の流量を出力する関数である。関数2261が出力する値を、周波数調整運転に対応する燃焼空気の流量の指令値SVa0´と記す。
【0073】
(動作の例)
例えば、ΔUPとΔDNはともに20%で、現在運転中の出力が90%出力であるならば、10%出力を追加すると100%出力に達するので上げ代は10%である。一方、下げ代は、20%である。両者の平均値は、下げ代の20%から上げ代の10%を引いて2で割ることにより、5%である。このとき、SVa0´は現在運転中の90%出力に%を足した95%出力での運転に相当する燃焼空気の流量となる。
【0074】
別の例として、最小出力が30%であり、現在運転中の出力が40%出力の場合を考える。ΔUPとΔDNはともに20%である。この場合、上げ代は20%である。下げ代は10%である。両者の平均値は下げ代の10%から上げ代の20%を差し引いて2で割ることにより、-5%となる。このときSVa0´は現在運転中の40%出力に-5%を足した35%出力での運転に相当する燃焼空気の流量となる。
【0075】
(出力に応じたゴミ供給量の調整)
図10に示すように、ゴミ供給演算部226B´は、下げ代設定部2271と、上げ代設定部2272と、平均値演算部2273と、減算部2274と、加算部2275と、関数2262とを備える。
ΔDN、ΔUPについては、燃焼空気演算部226A´の説明と同様である。
下げ代設定部2271は、ΔDNと蒸気流量の指令値SVsを入力し、max{ΔDN、SVsに対応する出力-最小出力}によって下げ代を設定する。
上げ代設定部2272は、ΔUPと蒸気流量の指令値SVsを入力し、min{ΔUP、最大出力-SVsに対応する出力}によって上げ代を設定する。
減算部2274は、指令値SVから下げ代を減算する。減算後の値をSVs3とする。加算部2275は、指令値SVと上げ代を加算する。加算後の値をSVs4とする。 このように下げ代/上げ代の加算と減算が燃焼空気の流量のときとは逆になっている。
平均値演算部2273は、SVs3とSVs4の平均値を演算する。
関数2262は、蒸気流量を入力すると、その蒸気流量に対応する出力に応じたゴミの供給量を出力する関数である。関数2262が出力する値を、周波数調整運転に対応するゴミ供給量の指令値SVw0´と記す。
【0076】
(動作の例)
例えば、ΔUPとΔDNはともに20%で、現在運転中の出力が90%出力であるならば、10%出力を追加すると100%出力に達するので、上げ代は10%、下げ代は20%である。上げ代の10%から下げ代の20%を引いて-10%である。このとき、SVw0´は現在運転中の90%出力に-10%を足した80%出力での運転に相当するゴミ供給となる。
【0077】
別の例として最小出力が30%であり現在運転中の出力が40%出力の場合を考える。ΔUPとΔDNはともに20%である。この場合上げ代は20%である。下げ代は10%である。両者の平均値は上げ代の20%から下げ代の10%を差し引いて2で割ることにより、5%となる。このときSVw0´は現在運転中の40%出力に%を足した45%出力での運転に相当するゴミ供給となる。
【0078】
本実施形態によれば、第一実施形態の効果に加え、ゴミの保有量を適切に管理することで、周波数調整運転により、急激な出力の増大や低下に迫られたときでも、燃焼室内のゴミが不足したり、過剰に余ったりすることがなく、出力に応じた蒸気流量を発電設備40に供給することができる。
第四実施形態は、第一実施形態~第三実施形態の何れとも組み合わせることが可能である。また、第一実施形態及び第二実施形態に対して、燃焼空気演算部226A´又はゴミ供給演算部226B´の一方だけを備える構成としてもよい。
【0079】
<第五実施形態>
以下、本開示の第五実施形態に係るゴミ発電プラントついて図11を参照して説明する。第五実施形態では、燃焼室内のゴミの保有量を監視し、燃焼中のゴミが排出されることを防ぐ。現在、ごみ焼却炉で行われているように、炉の都合で燃焼調整できるならば、ゴミが灰になる前に排出されることはない。しかし、周波数調整運転では、電力系統の周波数に従って燃焼調節しなければならず、例えば、炉内のゴミの量が過剰で出口付近まで燃焼中のゴミがあるような状態のときに燃焼が制限されると、燃焼中のゴミが炉から排出される恐れがある。燃焼中のゴミが排出されると火災などのリスクがある。
【0080】
(構成)
図11は、第五実施形態に係るゴミ供給量の制御の一例を示す図である。
図11は、図5に示した22-2の範囲について、第五実施形態における構成を記載した図(22-2´とする。)である。図11の22-2の範囲の構成は図5に示すものと同じである為、説明を省略する。
【0081】
第五の実施形態に係る燃焼制御部24は、第一実施形態の構成に加え、燃え切り位置推定部2281と、ゴミ燃焼発熱推定部2282と、適正燃え切り位置算出部2283と、減算部2284と、補正用関数2285と、を備える。
燃え切り位置推定部2281は、カメラ16が撮影した画像を取得し、画像処理により、燃焼中のゴミと、燃え切って灰になっているゴミの境界である燃え切り位置X^を検出する。
ゴミ燃焼発熱推定部2282は、以下の式(8)によってゴミの燃焼熱を推定する。
【0082】
【数6】
【0083】
Vはプッシャ10によるゴミの供給速度[m /s]である。t[s]は現在の時刻であり、これを、例えば、過去1Hr積分すると、過去1時間のごみ供給量となる。一方、Qは蒸気流量[t/h]である。これを同様に過去1Hr積分すると、過去1時間に発生した蒸気量となる。蒸気量に対するごみ供給量の比率がqである。qを、ゴミの燃焼発熱の目安とする。
【0084】
適正燃え切り位置算出部2283は、過去の運転実績に基づいて、未燃状態のゴミが存在しない燃え切り位置と、蒸気流量と、比率qの関係を記憶している。適正燃え切り位置算出部2283は、蒸気流量Qと、ゴミ燃焼発熱推定部2282が出力した比率qを取得し、蒸気流量Qおよび比率qのときの燃え切り位置XMAXを算出する。燃え切り位置は、図1の後燃焼域3Cにおいて紙面右側へ行くほど大きな値となるとする。
減算部2284は、XMAXからX^を減じる。減じた値が負であれば、画像処理によって検出された燃え切り位置X^は適切な燃え切り位置XMAXを超過していることになる。つまり、この場合、ゴミの保有量が過多の為、ゴミの供給量を抑制する必要がある。
補正用関数2285は、(XMAX-X^)を入力すると、(XMAX-X^)に応じたゴミ供給の補正量dSVw0´を出力する。図11に補正用関数2285のグラフが図示されている。グラフの縦軸は補正量dSVw0´、横軸は(XMAX-X^)である。図示するように、(XMAX-X^)が負の場合、補正量dSVw0´は負の値となる。これは、ゴミ供給量を減じて、燃え切り位置X^を排出口から遠ざける効果がある。
【0085】
燃焼制御部24は、適正燃え切り位置算出部2283が出力したXMAXから燃え切り位置推定部2281が出力したX^を減じた値と、補正用関数2285を用いて、ゴミ供給の補正量dSVw0´を算出する。燃焼制御部24は、加算部22A1を用いて、第一実施形態で説明した処理によって演算したゴミ供給の指令値SVに補正量dSVw0´を更に加算して、補正後のゴミ供給の指令値SVを求める。
【0086】
本実施形態によれば、ゴミの燃え切り位置を監視して、その位置が適切な範囲となるよう制御することで、燃焼中のゴミの排出を防ぐことができる。
第五実施形態は、第一実施形態~第四実施形態の何れとも組み合わせることが可能である。
【0087】
図12は、各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の制御装置20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0088】
なお、制御装置20の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0089】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0090】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置20、制御方法およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0091】
(1)第1の態様に係る制御装置20は、ゴミ焼却設備30が生成した蒸気を発電設備40に供給して、前記発電設備40が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラント100の制御装置20であって、前記ゴミ焼却設備30から前記発電設備40に蒸気を供給するライン13に設けられた蒸気加減弁15を制御する蒸気加減弁制御部23、を備え、前記蒸気加減弁制御部23は、前記発電設備40が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記蒸気加減弁15の開度を制御する。
これにより、速応性が求められる電力系統の周波数変動に対応した周波数調整運転が可能になる。
【0092】
(2)第2の態様に係る制御装置20は、(1)の制御装置20であって、前記蒸気加減弁制御部は、前記低周波成分を除去した値を、不完全積分により演算する。
蒸気流量制御において、短時間でランダムに変化する電力系統の周波数変動への追従が必要な場面で余計となる圧力変動の低周波成分を遮断することができる。
【0093】
(3)第3の態様に係る制御装置20は、(1)~(2)の制御装置20であって、前記蒸気加減弁制御部は、MVを前記周波数の計測値と前記周波数について定められた基準値との偏差に基づく開度、MVを前記圧力の計測値と前記圧力について定められた基準値との偏差に基づく開度、γを所定の正の実数としたときに、式(1)によって、前記蒸気加減弁の開度MVGVを演算する。
【数7】
これにより、蒸気加減弁の開度について、蒸気圧力を一定に保つ意味合いが強い開度と周波数を一定に保つ意味合いが強い開度との切り替えをスムーズに行うことができ、蒸気流量制御が安定化する。
【0094】
(4)第4の態様に係る制御装置20は、(1)~(3)の制御装置20であって、前記蒸気を生成するゴミ焼却設備におけるゴミの燃焼を制御する燃焼制御部24、を更に備え、前記燃焼制御部は、前記蒸気の流量の指令値を、前記低周波成分に基づいて補正し、補正後の前記蒸気の流量の指令値に基づいて、前記ゴミの燃焼を制御する。
蒸気圧力の計測値の指令値からの偏差のうち、ゴミの燃焼制御で補償することができる低周波成分を考慮したゴミの燃焼制御を行うことができる。これにより、蒸気流量だけでなく、蒸気圧力をも指令値に一致させるよう制御することができる。
【0095】
(5)第5の態様に係る制御装置20は、(4)の制御装置20であって、前記燃焼制御部24は、前記補正後の前記蒸気の流量の指令値と、前記蒸気の流量の計測値との偏差に基づいて、前記ゴミ焼却設備に供給する燃焼空気の供給を補償する補償量を演算し、前記蒸気の流量の指令値に基づく前記燃焼空気の供給量に前記補償量を加算して、前記燃焼空気の供給を制御する。
これにより、蒸気圧力および蒸気流量の計測値と指令値の偏差を補償することで、精度よく蒸気流量を指令値に一致させることができる。
【0096】
(6)第6の態様に係る制御装置20は、(5)の制御装置20であって、前記燃焼制御部24は、前記燃焼空気に関する前記補償量のうち、ゴミの供給に対する蒸気流量の応答に要する時間に基づく周波数成分を抽出し、前記蒸気の流量の指令値に基づくゴミの供給指令値に抽出した値を加算して、前記ゴミの供給を制御する。
応答が遅いゴミの供給に関してはゆっくりと行い、効率の良い燃焼制御が実現できる。
【0097】
(7)第7の態様に係る制御装置20は、(5)~(6)の制御装置20であって、前記発電設備の出力と、出力の上げ代および下げ代とに基づいて、前記燃焼空気の供給量の指令値を補正する燃焼空気演算部、をさらに備える。
出力に応じた量の燃焼空気を供給することにより、燃焼室内のゴミ保有量を適切に管理することができる。
【0098】
(8)第8の態様に係る制御装置20は、(4)~(7)の制御装置20であって、前記発電設備の出力と、出力の上げ代および下げ代とに基づいて、前記ゴミの供給量の指令値を補正するゴミ供給演算部、をさらに備える。
出力に応じた量のゴミを供給することにより、燃焼室内のゴミ保有量を適切に管理することができる。
【0099】
(9)第9の態様に係る制御装置20は、(4)~(8)の制御装置20であって、前記燃焼制御部24は、前記ゴミ焼却設備30の燃焼室6における前記ゴミの燃え切り位置が、燃え切り位置の設定値を超過する場合、前記ゴミの供給量を減少させる。
これにより、燃焼中のゴミが排出を防ぐことができる。
【0100】
(10)第10の態様に係る制御装置20は、(1)~(9)の制御装置20であって、前記発電設備の出力と、出力の上げ代および下げ代とに基づいて、前記蒸気の圧力の指令値を補正する設定蒸気圧力補正部、を更に備える。
これにより、出力に応じて適切に蒸気圧力の設定値を修正することができる。
【0101】
(11)第11の態様に係る制御方法は、ゴミ焼却設備が生成した蒸気を発電設備に供給して、前記発電設備が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラントの制御方法であって、前記発電設備が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記ゴミ焼却設備から前記発電設備に蒸気を供給するラインに設けられた蒸気加減弁の開度を制御する。
【0102】
(12)第12の態様に係るプログラムは、コンピュータに、ゴミ焼却設備が生成した蒸気を発電設備に供給して、前記発電設備が前記蒸気を用いて発電するゴミ焼却発電プラントの制御方法であって、前記発電設備が発電する電力の周波数の計測値と、前記周波数について定められた基準値との偏差、および、前記蒸気の圧力の計測値と、前記圧力について定められた基準値との偏差から所定の低周波成分を除去した値と、に基づいて、前記ゴミ焼却設備から前記発電設備に蒸気を供給するラインに設けられた蒸気加減弁の開度を演算する処理、を実行させる。
【符号の説明】
【0103】
100・・・ゴミ焼却発電プラント、1・・・ホッパ、2・・・シュート、3・・・火格子、3A・・・乾燥域、3B・・・燃焼域、3C・・・後燃焼域、4・・・送風機、
5A~5E・・・風箱、6・・・燃焼室、7・・・灰出口、8A~8E・・・バルブ、
9・・・ボイラ、10・・・プッシャ、11・・・蒸気流量センサ、12・・・煙道、
13・・・管路、14・・・蒸気圧力センサ、15・・・蒸気加減弁、16・・・カメラ
20・・・制御装置、21・・・データ取得部、22、22A・・・制御部、
23・・・蒸気加減弁制御部、24・・・燃焼制御部、25・・・記憶部、
30・・・ゴミ焼却設備、40・・・発電設備、41・・・蒸気タービン、
42・・・電力計、221・・・周波数制御部、222、222A・・・圧力制御部
224・・・開度演算部、225・・・圧力補償量演算部、226・・・蒸気流量補償量演算部、227・・・位相補償部、223・・・HPF、22D・・・設定蒸気圧力補正部、22D1・・・下げ代設定部、22D3・・・最大許容圧力設定部、22D2・・・ルックアップテーブル、22D5・・・上げ代設定部、22D7・・・最小許容圧力設定部、22D6・・・ルックアップテーブル、22D9・・・最適値選択部、226A、226A´・・・燃焼空気演算部、2263・・・下げ代設定部、2264・・・上げ代設定部、2267・・・平均値演算部、2261、2262・・・関数、226B、226B´・・・ゴミ供給演算部、2271・・・下げ代設定部、2272・・・上げ代設定部
2273・・・平均値演算部、2281・・・燃え切り位置推定部、2282・・・ゴミ燃焼発熱推定部、2283・・・適正燃え切り位置算出部、2285・・・補正用関数
900・・・コンピュータ、901・・・CPU、902・・・主記憶装置、903・・・補助記憶装置、904・・・入出力インタフェース、905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12