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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電動機、電動送風機および電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240125BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20240125BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20240125BHJP
   A47L 9/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K1/16 Z
H02K3/34 C
A47L9/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020162663
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055208
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中津川 潤之介
(72)【発明者】
【氏名】床井 博洋
(72)【発明者】
【氏名】本多 武史
(72)【発明者】
【氏名】坂上 誠二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 則和
(72)【発明者】
【氏名】菊地 聡
(72)【発明者】
【氏名】湧井 真一
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/074535(WO,A1)
【文献】特開2007-124820(JP,A)
【文献】特開2005-269831(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 1/16
H02K 3/34
A47L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとコイルと絶縁ボビンとを有する固定子と、永久磁石を有する回転子と、を備え、
前記コアは、ヨーク部であるリングコアと、ティース部であるティースコアとに分かれ、
前記ティースコアは、前記絶縁ボビンに固定され、前記ティースコアと前記リングコアとの間にギャップを設けることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記絶縁ボビンは、前記永久磁石と前記ティースコアとの間で周方向に伸びる内周部と、
前記ティースコアと前記リングコアとの間で周方向に伸びる外周部と、
前記内周部と前記外周部とを径方向に繋ぐ壁部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記絶縁ボビンは、前記ティースコアと前記リングコアとの間に設けられた前記ギャップに向かって伸びる突起を有することを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項4】
前記ティースコアは、前記永久磁石に対向する面が広く、前記リングコアに対向する面が狭くなっており、
前記絶縁ボビンは、前記ティースコアの形状に合わせて、前記ティースコアと周方向両側で接する前記壁部が、前記永久磁石に対向する側が広く、前記リングコアに対向する側が狭くなっていることを特徴とする請求項2に記載の電動機。
【請求項5】
前記ティースコアと前記リングコアと間の前記ギャップが、接着剤で充填されていることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項6】
前記絶縁ボビンは、前記ティースコアごとに分離して構成されており、
前記絶縁ボビンと前記永久磁石との間に、当該絶縁ボビンを保持する円筒状の保持部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
【請求項7】
インペラとファンカバーと流路とを有する送風機を駆動する電動機を備える電動送風機であって、
前記電動機は、前記請求項1から6の何れか一項に記載の電動機であることを特徴とする電動送風機。
【請求項8】
集塵室および集塵するのに必要な吸込気流を発生させる電動送風機を備える電気掃除機であって、
前記電動送風機は、前記請求項7に記載の電動送風機を備えることを特徴とする電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機、電動送風機および電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機や機械装置の小型・軽量化を目的として、電動機の高速化が進展している。なかでも、近年需要が急速に高まっているコードレス掃除機では、電動送風機のファン径縮小や軽量化を図るため、毎分8万回転以上のブラシレス電動機が搭載されている。電動機を高速化すると、コアを流れる磁束が高周波化して鉄損が増加し、軸受の摩擦損失も増加する。さらに、電動機を小型化すると、体積当たりの発熱量が増加、放熱面積が減少し、温度が上昇する。損失増加や温度上昇は、いずれも電動機効率の低下につながり、高速化による小型化の実現を妨げることになる。
電動機の高速化に伴う鉄損増加を抑制する構造として、鉄損の発生部位であるティースを持たないスロットレス電動機や、ティースを小型化したスロット付き電動機が知られている。
【0003】
特許文献1には、巻線と鉄心を配置したステータと、複数の磁極を構成する永久磁石を配置したロータを持つ永久磁石形モータにおいて、巻線は複数の集中巻された空心を有するコイルによって構成され、鉄心は前記コイルの空心に挿入されるティースを備える永久磁石形モータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-187344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電動機は、一般的な電動機と比べてティースの角度幅が狭く、コイルの偏平度合が大きく構成されている。そして、スロットレス電動機よりも鎖交磁束数を増加させるとともに、巻線の作る磁束を分散し磁気飽和の影響を減少させている。その一方で、ティースを設けたことにより、ロータの永久磁石とティースとの間に磁気吸引力が働き、ティースが径方向内側に引き寄せられる力が発生し、電動機駆動時の騒音を引き起こすおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電動機のティースにはたらく磁気吸引力を低減し、電動機駆動時の騒音を抑制する電動機、電動送風機および電気掃除機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電動機は、コアとコイルと絶縁ボビンとを有する固定子と、永久磁石を有する回転子と、を備え、前記コアは、ヨーク部であるリングコアと、ティース部であるティースコアとに分かれ、前記ティースコアは、前記絶縁ボビンに固定され、前記ティースコアと前記リングコアとの間にギャップを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電動機のティースにはたらく磁気吸引力を低減し、電動機駆動時の騒音を抑制する電動機、電動送風機および電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動機を斜め前上方から見た斜視図である。
図2図1の電動機の断面図である。
図3】上記第1の実施形態に係る電動機を駆動している時に、ギャップの径方向幅が大きい場合におけるティースコアとリングコアにはたらく磁気吸引力の解析結果を示す図である。
図4】上記第1の実施形態に係る電動機を駆動している時に、ギャップの径方向幅が小さい場合におけるティースコアとリングコアにはたらく磁気吸引力の解析結果を示す図である。
図5】上記第1の実施形態に係る電動機のギャップの大きさと磁気吸引力の脈動の大きさの関係を示す図である。
図6】上記第1の実施形態に係る電動機のギャップの大きさと磁気吸引力の平均値の関係を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る電動機の断面図である。
図8図7の電動機のティースコアと絶縁ボビンの構成を示す側面図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る電動機の断面図である。
図10図9の電動機のティースコアと絶縁ボビンの構成を示す側面図である。
図11】本発明の第4の実施形態に係る電動機の断面図である。
図12】本発明の第5の実施形態に係る電動機の断面図である。
図13】本発明の第6の実施形態に係る電動機を備える電動送風機の断面図である。
図14】本発明の第7の実施形態に係る電気掃除機をスティック型として使用する際の斜視図である。
図15】上記第7の実施形態に係る電気掃除機をハンディ型として使用する際の斜視図である。
図16】上記第7の実施形態に係る電気掃除機本体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同様の構成要素には同様の符号を付し、説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電動機100を斜め前上方から見た斜視図である。なお、以下では電動機100の向かって右側を右側と称し、向かって左側を左側と称す。図2は、図1の電動機100の断面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、電動機100は、固定子1と、固定子1の内周側にエアギャップを介して配置される回転子2と、からなる。
電動機100は、コア10(図2参照)、コイル13および絶縁ボビン12を有する固定子1と、永久磁石21を有する回転子2と、を備える。
コア10は、ヨーク部であるリングコア11とティース部であるティースコア14とに分かれ、ティースコア14は、絶縁ボビン12に固定される。
電動機100は、ティースコア14とリングコア11との間にギャップ15を設けることを特徴とする。
【0013】
<固定子1の構成>
固定子1は、円筒状のリングコア11と、その内周側に配置された絶縁ボビン12と、絶縁ボビン12に巻回されたコイル13と、リングコア11とギャップ15を介して絶縁ボビン12に納められたティースコア14と、を備える。
【0014】
ティースコア14およびコイル13は、各3個であり、周方向に120度ずつの間隔で配置されている。コイル13には、それぞれ電気角120度ずつ位相をずらした三相交流電流が通電され、回転磁界が形成される。
リングコア11およびティースコア14は、例えば電磁鋼板を軸方向(図2の断面図に対して垂直な方向)積層して構成できる。ティースコア14は、周方向(回転子2の回転方向)に積層してもよい。
【0015】
絶縁ボビン12は、永久磁石21とティースコア14との間で周方向に伸びる内周部121と、ティースコア14とリングコア11との間で周方向に伸びる外周部122と、内周部121と外周部122とを径方向に繋ぐ壁部123と、を備える。
絶縁ボビン12は、例えば樹脂で構成できる。ガラス繊維等で強化した樹脂を用いると、熱によるクリープが起きにくく、またコイル巻回時に変形しにくくなり、量産時の製造ばらつきを小さくできる。
【0016】
絶縁ボビン12は、内周側が円筒状につながっており(図2の内周部121参照)、ティースコア14は、例えば外周側から絶縁ボビン12に挿入され、内周側の円筒部分で受けることができる。ティースコア14を挿入した絶縁ボビン12にコイル13が巻回された後に、リングコア11に圧入または接着剤で固定される。
ここで、ティースコア14は、永久磁石21と対向する内周側は絶縁ボビン12と接することで永久磁石21からの磁気吸引力に対して固定され、リングコア11と対向する外周側には、磁気抵抗となるギャップ15(空隙)が設けられている。
【0017】
<回転子2の構成>
回転子2は、円筒状の永久磁石21と、その内周側に配置されたシャフト22と、を備える。
永久磁石21の極数は、例えば4極であり、着磁分布は極異方性またはハルバッハ配列である。回転子2の磁極と固定子1の回転磁界との間に生じる磁気的な相互作用によりトルクが発生し、回転子2が周方向に回転する。
【0018】
以下、上述のように構成された電動機100の動作を説明する。
まず、コア10にはたらく磁気吸引力について述べる。
図3および図4は、電動機100を駆動している時にティースコア14とリングコア11にはたらく磁気吸引力(電磁力の径方向成分Fr)の解析結果を示す図である。図3は、ティースコア14とリングコア11との間のギャップ15の径方向幅が大きい場合(基準値:1とする)であり、図4は、ティースコア14とリングコア11との間のギャップ15の径方向幅が小さい場合(基準値:0とする)である。図3および図4の横軸は、回転子2の回転角度θである。
【0019】
図3に示すように、ティースコア14とリングコア11との間のギャップ15が小さい場合、ティースコアのFrが大きく脈動している。これに対して、図4に示すように、ティースコア14とリングコア11との間のギャップ15が大きい場合、脈動が大幅に低減されている。
【0020】
次に、ギャップ15の大きさと磁気吸引力の脈動の大きさについて述べる。
図5は、ギャップ15の大きさと磁気吸引力の脈動の大きさ(Fr_pp)の関係を示す図である。図5の横軸は、ティースコア14とリングコア11との間のギャップ15の径方向幅である。
図5に示すように、ティースコア14とリングコア11との間のギャップ15が大きくなるほどティースコア14の磁気吸引力脈動が小さくなっている。これは、ティースコア14とリングコア11の間のギャップ15が広がることで、ティースコア14は永久磁石21から受ける内周方向への磁気吸引力だけでなく、リングコア11との相互作用により外周方向への磁気吸引力もはたらき、逆方向の力同士が相殺されるためと考えられる。
【0021】
次に、ギャップ15の大きさと磁気吸引力の平均値の関係について述べる。
図6は、ギャップ15の大きさと磁気吸引力の平均値(Fr_ave)の関係を示す図である。図6の横軸は、ティースコア14とリングコア11との間のギャップ15の径方向幅である。
図6に示すように、ティースコア14とリングコア11との間のギャップ15が大きいほど磁気抵抗が大きくなり、リングコア11にはたらく磁気吸引力の平均値(Fr_ave)が小さくなる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の電動機100は、コア10、コイル13および絶縁ボビン12を有する固定子1と、永久磁石21を有する回転子2と、ヨーク部であるリングコア11と、絶縁ボビン12に固定され、ティース部であるティースコア14と、ティースコア14とリングコア11との間に設けられたギャップ15と、を備える。
【0023】
従来例では、ティースコアにはたらく磁気吸引力が大きく、ティースコアを強固に固定するためにリングコアとはめ合わせたり、リングコアに接着したりする必要があった。
【0024】
これに対し、本実施形態は、ティースコア14とリングコア11の間に設けたギャップ15によってティースコア14にはたらく磁気吸引力脈動を小さくすることができる(図6参照)。これにより、ティースコア14をリングコア11とはめ合わせたり、リングコア11に接着したりすることなく、絶縁ボビン12に挿入して固定することができる。また、ティースコア14にはたらく磁気吸引力脈動により生じていたモータの電磁振動を小さくすることができ(図3および図4参照)、電動機駆動時の騒音を小さくできる。
このように、ティースコア14にはたらく磁気吸引力を低減することで、ティースコア14を絶縁ボビン12にて固定することを実現し、かつモータの電磁騒音を低減させる電動機100を提供することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る電動機100Aの断面図である。図2と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図7に示すように、電動機100A(100)は、コア10、コイル13および絶縁ボビン12Aを有する固定子1と、永久磁石21を有する回転子2と、ヨーク部であるリングコア11と、絶縁ボビン12Aに固定され、ティース部であるティースコア14と、ティースコア14とリングコア11との間に設けられたギャップ15と、を備える。
【0026】
絶縁ボビン12Aは、永久磁石21とティースコア14との間で周方向に伸びる内周部121と、ティースコア14とリングコア11との間で周方向に伸びる外周部122と、内周部121と外周部122とを径方向に繋ぐ壁部123と、ティースコア14とリングコア11との間に設けられたギャップ15に向かって伸びる突起124と、を備える。
【0027】
絶縁ボビン12Aには、リングコア11とティースコア14の間のギャップ15に向かって突起124が伸びている。すなわち、絶縁ボビン12Aの突起124は、ギャップ15に左右から差し込まれるように伸びている。突起124は、ギャップ15の径方向厚さを所定厚さに保つスペーサとしての機能を有する。
ティースコア14の周方向幅をAとし、ギャップ15の周方向幅をBとすると、A>Bという関係が成り立つ。突起124によって、リングコア11とティースコア14の間のギャップ15を確保しつつ、ティースコア14を絶縁ボビン12Aに固定することができる。また、突起124の径方向厚さにより、ギャップ15の径方向の幅を任意に設定することができる。
【0028】
図8は、図7の電動機100Aのティースコア14と絶縁ボビン12Aの構成を示す側面図であり、絶縁ボビン12Aを軸方向に2分割して示す。
図8に示すように、絶縁ボビン12Aを軸方向に2分割し、ティースコア14に軸方向の両側からかぶせることで、ティースコア14を絶縁ボビン12Aの中に納めることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、電動機100Aは、絶縁ボビン12Aが、ティースコア14とリングコア11との間に設けられたギャップ15に向かって伸びる突起124を有する。これにより、ティースコア14を絶縁ボビン12Aに固定することができるとともに、ティースコア14とリングコア11の間のギャップ15を精度よくかつ容易に確保することができる。
【0030】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る電動機100Bの断面図である。図2と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図9に示すように、電動機100B(100)は、コア10、コイル13および絶縁ボビン12Bを有する固定子1と、永久磁石21を有する回転子2と、ヨーク部であるリングコア11と、絶縁ボビン12Bに固定され、ティース部であるティースコア14Bと、ティースコア14Bとリングコア11との間に設けられたギャップ15と、を備える。
【0031】
ティースコア14Bは、内周側の永久磁石21に対向する面が広く、外周側のリングコア11に対向する面が狭くなっている。ティースコア14Bは、内周側の周方向幅をCとし、外周側の周方向幅をDとすると、C>Dという関係が成り立つ。
【0032】
絶縁ボビン12Bは、永久磁石21とティースコア14との間で周方向に伸びる内周部121と、ティースコア14とリングコア11との間で周方向に伸びる外周部122と、外方に向かって開口部が狭くなるように傾斜しながら内周部121と外周部122とを繋ぐ壁部123Bと、を備える。
【0033】
絶縁ボビン12Bは、ティースコア14Bの形状に合わせて、ティースコア14Bと周方向両側で接する壁部123Bが互いに平行ではなく、永久磁石21に対向する側が広く、リングコア11に対向する側が狭くなっている。すなわち、絶縁ボビン12Bは、内周側の周方向幅が広く、外周側の周方向幅が狭くなっている。
外方に向かって狭くなるように傾斜した壁部123Bによって、リングコア11とティースコア14Bの間のギャップ15を確保しつつ、ティースコア14Bを絶縁ボビン12Bに強固に固定することができる。
【0034】
図10は、図9の電動機100Bのティースコア14Bと絶縁ボビン12Bの構成を示す側面図であり、絶縁ボビン12Bを軸方向に2分割して示す。
図10に示すように、絶縁ボビン12Bを軸方向に2分割し、ティースコア14Bに軸方向の両側からかぶせることで、ティースコア14Bを絶縁ボビン12Bの中に納めることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、電動機100Bは、ティースコア14が、永久磁石21に対向する面が広く、リングコア11に対向する面が狭くなっており、絶縁ボビン12が、ティースコア14の形状に合わせて、ティースコア14と周方向両側で接する壁部123B、が互いに平行ではなく、永久磁石21に対向する側が広く、リングコア11に対向する側が狭くなっている。これにより、ティースコア14Bとリングコア11の間のギャップ15を容易に確保しつつ、ティースコア14Bを絶縁ボビン12Bにより強固に固定することができる。
【0036】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態に係る電動機100Cの断面図である。図2と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図11に示すように、電動機100C(100)は、コア10、コイル13および絶縁ボビン12Cを有する固定子1と、永久磁石21を有する回転子2と、ヨーク部であるリングコア11と、絶縁ボビン12Cに固定され、ティース部であるティースコア14と、ティースコア14とリングコア11との間に設けられたギャップ15と、ギャップ15に充填された接着剤151と、を備える。
【0037】
絶縁ボビン12Cは、内周側(内周部121)が円環ではなく、3分割された3つの部材からなる。
ティースコア14とリングコア11の間のギャップ15には、接着剤151が充填されている。
ティースコア14とリングコア11とを接着剤151で固定することで、ティースコア14の内周側を絶縁ボビン12Cで受ける必要がなくなる。このため、ティースコア14と永久磁石21の間のエアギャップを狭めることができ、電動機のトルクを向上できる。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、電動機100Cは、絶縁ボビン12Cが、内周側(内周部121)が3分割された3つの部材からなり、かつ、ティースコア14とリングコア11と間のギャップ15が接着剤151で充填されている。絶縁ボビン12Cが、内周側が3分割された3つの部材からなることで、ティースコア14の内周側を内周部121で受ける必要がなくなり(ティースコア14を径方向に大きくでき)、ティースコア14と永久磁石21の間のエアギャップをより狭めることができる。これにより、トルクを向上した電動機100Cを提供することができる。
【0039】
(第5の実施形態)
図12は、本発明の第5の実施形態に係る電動機100Dの断面図である。図11と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
図12に示すように、電動機100D(100)は、図11に示す絶縁ボビン12Cを、さらに2分割した絶縁ボビン12D1,12D2(12D)と、絶縁ボビン12Dの内周側に配置された円筒状の保持部材16と、を備える。
【0040】
電動機100D(100)は、絶縁ボビン12D1,12D2(12D)を個別に分離した構成を採ることで、各絶縁ボビン12Dにコイル13を高占積率に巻回した後に、リングコア11の内周側に納めることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、電動機100Dは、絶縁ボビン12Dが、ティースコア14ごとに分離して構成され、絶縁ボビン12Dと永久磁石21との間に円筒状の保持部材161が配置されている。これにより、コイル13を高占積率に巻回した電動機100Dを提供することができる。
【0042】
また、本実施形態では、保持部材16に、ティースコア14と対向する部分に、径方向に突出する凸部161を設けている。このようにすることで、凸部161によって絶縁ボビン12Dの周方向位置を精度よく確保するとともに、ティースコア14を安定して固定することができる。
【0043】
(第6の実施形態)
本発明の電動機を適用した一例である電動送風機について説明する。
図13は、本発明の第6の実施形態に係る電動機100を備える電動送風機200の断面図である。
図13に示すように、電動送風機200は、斜流インペラ40(インペラ)とファンカバー41と流路42とを備える送風機であり、電動機100を備える。
【0044】
電動機100は、各実施形態の電動機100,100A~100Dのいずれを適用してもよい。
電動機100は、モータハウジング30の中に納められ、絶縁ボビン12がエンドブラケット31に設けられたコイル保持部32に固定されている。回転子2は軸受33を介してモータハウジング30に回転自在に固定されている。
シャフト22の軸端には、斜流インペラ40が設けられ、ファンカバー41とともに電動送風機200を構成している。また、モータハウジング30の外周とファンカバー41の間には円筒状に流路42が設けられている。
【0045】
以下、上述のように構成された電動送風機200の動作を説明する。
回転子2の外周側には、永久磁石21により直流磁界が形成されている。一方、図示しないインバータにより所定の周波数に変換した3相電力をコイル13に給電すると、固定子1の内周側に回転磁界が形成される。
回転子2の磁極位置に合わせた電流を通電することで、回転磁界と直流磁界との吸引反発によりトルクが発生し、回転子2が軸Oを中心として回転する。
これにより、図13の細矢印に示すように、斜流インペラ40が回転し、紙面に向かって左側から吸気し、ファンカバー41を介して、流路42に気流Fを送風する(図13の太矢印参照)。斜流インペラ40で形成された気流Fは、右側に向かう直進成分と、軸の回転と同方向の旋回成分からなる。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、本発明の電動機100を用いた電動送風機200により、小型・軽量かつ高効率・低騒音な電動送風機を提供することができる。
【0047】
(第7の実施形態)
本発明の電動機を適用した一例である電気掃除機400について説明する。
図14図16は、本発明の第7の実施形態に係る電動機100を備える電気掃除機400の構成図である。図14は、電気掃除機400をスティック型として使用する際の斜視図、図15は、電気掃除機400をハンディ型として使用する際の側面図、図16は、電気掃除機400本体の縦断面図である。
なお、以下では、スティック型とハンディ型とを適宜切り替えて使用できる充電式の電気掃除機400に適用した場合を例に挙げて説明するが、スティック型のみ、ハンディ型のみ、など様々なタイプの電気掃除機に適用することができる。
【0048】
図14図16に示すように、電気掃除機400は、塵埃を集塵する集塵室401および集塵するのに必要な吸込気流を発生させる電動送風機200(図16参照)を備える。
電気掃除機400は、電動送風機200を収納する掃除機本体410、掃除機本体410に対して伸縮自在に設けられた伸縮パイプ402、伸縮パイプ402の一端に設けられたグリップ部403、およびグリップ部403に設けられた電動送風機200の入切を行うスイッチ部404を備えて構成される。
【0049】
図14に示す電気掃除機400は、スティック状態であり、伸縮パイプ402が伸ばされた状態である。また、掃除機本体410の他端には吸口体405が取り付けられ、掃除機本体410と吸口体405とが接続部406で繋がれている。
【0050】
図15に示す電気掃除機400は、ハンディ状態であり、伸縮パイプ402が掃除機本体410内に収納され、グリップ部403が伸縮パイプ402側に近接した状態である。また、ハンディ状態での持ち手となるハンディグリップ部407は、掃除機本体410の上面側に、近接されたグリップ部403と集塵室401との間に設けられている。また、掃除機本体410の他端部には吸口体(隙間ノズル)408が取り付けられ、掃除機本体410と吸口体408とが接続部406で繋がれている。
【0051】
以上の構成において、電気掃除機400は、グリップ部403のスイッチ部404を操作することで、掃除機本体410に収納された電動送風機200(図16参照)が作動し、吸込気流を発生させる。そして、吸口体405,408から塵埃を吸込み、接続部406を通して掃除機本体410の集塵室401に集塵する。
【0052】
図16は、電気掃除機400本体の縦断面図である。なお、図16は、ハンディ状態であり、掃除機本体410から吸口体408を取り外した状態である。
図16に示すように、掃除機本体410の内部には、吸引力を発生させる電動送風機200(図13参照)、電動送風機200に電力を供給する電池ユニット420、駆動用回路430が設けられている。
【0053】
吸口体405、408(図14および図15参照)から吸い込まれた空気は、掃除機本体410に設けられた流路440(図14参照)を通って電動送風機200の前方に配置された集塵室401に送られ、集塵室401内に集塵される。そして、集塵室401で塵挨が分離された後の空気は、電動送風機200、駆動用回路430を通り、掃除機本体410に形成された排気口(不図示)から外部に排出される。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、電気掃除機400は、本発明の電動機100を用いた電動送風機200を備える。これにより、小型・軽量かつ高効率・低騒音な電気掃除機を提供することができる。
【0055】
[変形例]
各実施形態では、電動機100は、永久磁石21の極数を4極とし、着磁分布は極異方性またはハルバッハ配列であるとしたが、2極や6極など他の極数でもよく、着磁分布も並行着磁や径方向着磁でもよい。
永久磁石21の材質としては、例えばサマリウム鉄窒素磁石やネオジム磁石などの希土類系磁性粉末と有機バインダーとを混合して作られる希土類系ボンド磁石を想定しているが、希土類系焼結磁石やフェライト磁石など、他の永久磁石を用いてもよい。また、永久磁石を用いないリラクタンスモータなどを用いてもよい。
また、コイルの数も3に限らず、6、9など、3の倍数となる他の数でもよい。
【0056】
各実施形態では、電動機100は、回転子2を内周側、固定子1を外周側としたインナーロータ構造としたが、回転子2を外周側、固定子1を内周側としたアウターロータ構造としてもよい。
【0057】
上記した実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 固定子
2 回転子
10 コア
11 リングコア
12,12A,12C,12D,12D1,12D2 絶縁ボビン
13 コイル
14,14B ティースコア
15 ギャップ(空隙)
16 保持部材
21 永久磁石
32 コイル保持部
40 斜流インペラ(インペラ)
41 ファンカバー
42 流路
100,100A~100D 電動機
121 内周部
122 外周部
123,123B 壁部
124 突起
151 接着剤
161 凸部
200 電動送風機(送風機)
400 電気掃除機
401 集塵室
410 掃除機本体
図1
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