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特許7426324放射性同位体の製造方法、放射性同位体製造システム及びカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】放射性同位体の製造方法、放射性同位体製造システム及びカプセル
(51)【国際特許分類】
   G21G 1/08 20060101AFI20240125BHJP
   G21G 4/08 20060101ALI20240125BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G21G1/08
G21G4/08 G
G21K5/08 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020178336
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069252
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 展行
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 涼吉
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-013617(JP,A)
【文献】特表2020-512545(JP,A)
【文献】特開2016-80574(JP,A)
【文献】木村明博 他,99Mo製造におけるMoリサイクル技術の予備試験(1),JAEA-Technology,2013-025,日本,日本原子力研究開発機構,2013年10月,p.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 1/08
G21G 4/08
G21K 5/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体の原料であるRI原料を濃縮した濃縮RI原料を、ペレット化して格納したカプセルを製造するカプセル製造ステップと、
前記カプセルを、原子炉内に搬送し、前記原子炉内から回収する放射化ステップと、
放射化した前記カプセルに含まれる放射性同位体を液化する液化ステップと、
前記液化ステップで生成した液体から放射性同位体を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで放射性同位体を抽出した残液から濃縮RI原料を抽出し、前記カプセル製造ステップの濃縮RI原料として供給する残液処理ステップと、を含み、
前記RI原料は、モリブデン‐98であり、
放射性同位体は、モリブデン‐99であり、
前記抽出ステップは、放射性同位体としてモリブデン‐99から変換されたテクネチウム99mを抽出し、
前記残液処理ステップは、残液を回収してから、100時間以上1000時間以下処理を待機して、残液に含まれるモリブデン‐99をテクネチウム99に変換し、残液に含まれるモリブデン‐98と他の成分を分離して、モリブデン‐98を抽出する放射性同位体の製造方法。
【請求項2】
放射性同位体の原料であるRI原料を濃縮した濃縮RI原料を、ペレット化して格納したカプセルを製造するカプセル製造ステップと、
前記カプセルを、原子炉内に搬送し、前記原子炉内から回収する放射化ステップと、
放射化した前記カプセルに含まれる放射性同位体を液化する液化ステップと、
前記液化ステップで生成した液体から放射性同位体を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで放射性同位体を抽出した残液から濃縮RI原料を抽出し、前記カプセル製造ステップの濃縮RI原料として供給する残液処理ステップと、を含み、
前記残液処理ステップは、残液が所定の線量以下になることを確認して、放射性同位体の成分の変換の状態を判定するステップを有する放射性同位体の製造方法。
【請求項3】
前記カプセル製造ステップは、前記残液処理ステップで抽出された濃縮RI原料と、新たなRI原料とを用いて、前記カプセルを製造する請求項1または請求項2に記載の放射性同位体の製造方法。
【請求項4】
前記液化ステップで抽出した液体を精製し、放射性同位体を使用する使用ステップと、
前記使用ステップで排出される排液を回収し、回収した排液から濃縮RI原料を抽出し、前記カプセル製造ステップの濃縮RI原料として供給する再処理ステップと、を含み、
前記カプセル製造ステップは、前記再処理ステップで抽出された濃縮RI原料と、新たなRI原料とを用いて、前記カプセルを製造する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射性同位体の製造方法。
【請求項5】
前記使用ステップは、放射性同位体としてモリブデン‐99から変換されたテクネチウム99を抽出するジェネレータの生成を含み、
前記処理ステップは、前記ジェネレータを処理して使用した液体を排液として回収する請求項に記載の放射性同位体の製造方法。
【請求項6】
放射性同位体の原料であるRI原料を濃縮し、ペレット化して格納したカプセルを製造するカプセル製造装置と、
前記カプセルを、原子炉内に搬送し、前記原子炉内から回収する放射化装置と、
放射化した前記カプセルに含まれる放射性同位体を液化する液化装置と、
前記液化装置で生成した液体から放射性同位体を抽出する抽出装置と、
前記抽出装置で放射性同位体を抽出した残液から濃縮RI原料を抽出し、前記カプセル製造装置の濃縮RI原料として供給する残液処理装置と、を含み、
前記RI原料は、モリブデン‐98であり、
放射性同位体は、モリブデン‐99であり、
前記抽出装置は、放射性同位体としてモリブデン‐99から変換されたテクネチウム99mを抽出し、
前記残液処理装置は、残液を回収してから、100時間以上1000時間以下処理を待機して、残液に含まれるモリブデン‐99をテクネチウム99に変換し、残液に含まれるモリブデン‐98と他の成分を分離して、モリブデン‐98を抽出する
放射性同位体製造システム。
【請求項7】
放射性同位体の原料であるRI原料を濃縮し、ペレット化して格納したカプセルを製造するカプセル製造装置と、
前記カプセルを、原子炉内に搬送し、前記原子炉内から回収する放射化装置と、
放射化した前記カプセルに含まれる放射性同位体を液化する液化装置と、
前記液化装置で生成した液体から放射性同位体を抽出する抽出装置と、
前記抽出装置で放射性同位体を抽出した残液から濃縮RI原料を抽出し、前記カプセル製造装置の濃縮RI原料として供給する残液処理装置と、を含み、
前記残液処理装置は、残液が所定の線量以下になることを確認して、放射性同位体の成分の変換の状態を判定する
放射性同位体製造システム。
【請求項8】
前記カプセル製造装置は、前記残液処理装置で抽出された濃縮RI原料と、新たなRI原料とを用いて、前記カプセルを製造する請求項6または請求項7に記載の放射性同位体製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性同位体の製造方法、放射性同位体製造システム及びカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
医用や工業用などの用途に、放射性同位体を用いることが知られている。特許文献1には、酸化モリブデンをRI原料として、成型して焼結したモリブデン焼結体を作成し、作成した焼結体を原子炉で照射することで、放射性同位体である99Moを製造する旨が記載されている。また、特許文献2には、テクネチウム99mジェネレータに含まれるモリブデン98をモリブデン酸として回収する方法が記載されている。一方、非特許文献1には、99mTcは、ジェネレータで製造、供給されるよりも、注射液や他の形態で、より多く供給されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-175409号公報
【文献】特開2012-13617号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】アイソトープ等流通統計2019、公益社団法人日本アイソトープ協会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医用テクネチウム99mは、特許文献2に記載されているようなジェネレータを介してより、注射液等の別の形態により提供されることが多いことから、濃縮モリブデン98を回収し再利用するプロセスを、ジェネレータに限らず、濃縮モリブデン98を利用する全てのテクネチウム99m抽出において採用可能な製造方法が求められている。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、RI原料を効率よく使用でき、効率よく放射性同位体を製造することができる放射性同位体の製造方法、放射性同位体製造システム及びカプセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る放射性同位体の製造方法は、放射性同位体の原料であるRI原料を濃縮した濃縮RI原料を、ペレット化して格納したカプセルを製造するカプセル製造ステップと、前記カプセルを、原子炉内に搬送し、前記原子炉内から回収する放射化ステップと、放射化した前記カプセルに含まれる放射性同位体を液化する液化ステップと、前記液化ステップで生成した液体から放射性同位体を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップで放射性同位体を抽出した残液から濃縮RI原料を抽出し、前記カプセル製造ステップの濃縮RI原料として供給する残液処理ステップと、を含む。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る放射性同位体の製造方法は、放射性同位体の原料であるRI原料を濃縮した濃縮RI原料を、ペレット化して格納したカプセルを製造するカプセル製造ステップと、前記カプセルを、原子炉内に搬送し、前記原子炉内から回収する放射化ステップと、放射化した前記カプセルに含まれる放射性同位体を液化する液化ステップと、前記液化ステップで抽出した液体を精製し、放射性同位体を使用する使用ステップと、前記使用ステップで排出される排液を回収し、回収した排液から濃縮RI原料を抽出し、前記カプセル製造ステップの濃縮RI原料として供給する再処理ステップと、を含む。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る放射性同位体製造システムは、放射性同位体の原料であるRI原料を濃縮した濃縮RI原料を、ペレット化して格納したカプセルを製造するカプセル製造装置と、前記カプセルを、原子炉内に搬送し、前記原子炉内から回収する放射化装置と、放射化した前記カプセルに含まれる放射性同位体を液化する液化装置と、前記液化装置で生成した液体から放射性同位体を抽出する抽出装置と、前記抽出装置で放射性同位体を抽出した残液から濃縮RI原料を抽出し、前記カプセル製造装置の濃縮RI原料として供給する残液処理装置と、を含む。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るカプセルは、内部にRI原料が充填され、原子炉内に配置され、前記原子炉内で前記RI原料が放射性同位体に変換されるカプセルであって、前記原子炉内で放射化されたカプセル内の充填物から放射性同位体を抽出した残留物から抽出したRI原料と、照射されていないRI原料とをペレット化したRI原料が格納される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、RI原料を効率よく使用でき、効率よく放射性同位体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、放射性同位体製造システムの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、原子力発電プラントの一例の概略構成図である。
図3図3は、計装管及び放射性同位体製造装置を説明する概略側面図である。
図4図4は、本実施形態に係るカプセルユニットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0014】
図1は、放射性同位体製造システムの概略構成を示す模式図である。図1に示す放射性同位体製造システム(製造システム)10は、RI(Radioisotope)原料に放射線を照射し、放射性同位体を製造する。また、製造システム10は、放射性同位体を使用用途に基づいて処理し、製剤、ジェネレータを生成する。また、製造システム10は、残液や排液を回収して、残液や排液に含まれるRI原料を抽出して、放射性同位体を製造する原料として利用する。製造システム10は、カプセル製造装置12と、原子炉(放射化装置)14と、液化装置16と、テクネチウム抽出装置(抽出装置)18と、製剤生成装置20と、抽出後残液処理装置(残液処理装置)22と、ジェネレータ製造装置30と、ジェネレータ使用設備32と、回収装置34と、排液処理装置36と、を含む。
【0015】
RI原料は、放射性同位体の原料である。RI原料は、原子炉14で中性子束に暴露されることで、放射性同位体に変換される。RI原料Mは、粉末が焼き固められたブロック状となっているが、それに限られない。RI原料は、例えば、モリブデン‐98(以下、98Moとも記載する。)を用いることができる。RI原料は、中性子束が照射されることで、放射性同位体として、モリブデン‐99(以下、99Moとも記載する。)となる。RI原料は、モリブデンを用いることが好ましいが、これに限定されない。RI原料は、例えば、クロム‐50、銅‐63、ジスプロシウム‐164、エルビウム‐168、ホルミウム‐165、ヨウ素-130、イリジウム-191、鉄‐58、ルテチウム‐176、パラジウム‐102、リン‐31、カリウム‐41、レニウム‐185、サマリウム‐152、セレン‐74、ナトリウム‐23、ストロンチウム‐88、イッテルビウム‐168、イッテルビウム‐176、イットリウム‐89、のうち少なくとも1つであってよい。そして、それらのRI原料に中性子束が照射されることで、放射性同位体として、それぞれ、クロム‐51、銅‐64、ジスプロシウム‐165、エルビウム‐169、ホルミウム‐166、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄‐59、ルテチウム‐177、パラジウム‐103、リン‐32、カリウム‐42、レニウム‐186、サマリウム‐153、セレン‐75、ナトリウム‐24、ストロンチウム‐89、イッテルビウム‐169、イッテルビウム‐177、イットリウム‐90、が製造される。
【0016】
本実施形態では、RI原料に98Mo98)を用い、放射性同位体として99Moを生成し、99Moからテクネチウム‐99m(以下、99mTcとも記載する。)を抽出して、99mTcを各種用途に使用する場合として説明する。
【0017】
カプセル製造装置12は、RI原料を焼結してペレットを製造し、製造したペレットをカプセルに封入する。ペレットは、RI原料を濃縮した材料と、後述する残液処理、排液処理で抽出したRI原料を処理して生成する。カプセル製造装置12は、RI原料の純度を制御し、例えば、90%以上の純度の原料(濃縮RI原料)を焼結してペレットを製造する。本実施形態の場合、カプセル製造装置12は、純度の高い高濃縮の三酸化モリブデンの粉末を焼結することで、98Moのペレットを製造する。濃縮RI原料は、モリブデン中の98Mo濃度を50%以上とする。98Moの濃度は、高いほど好ましい。また、本実施形態では、ペレットとしたが、カプセルの内部に封入する濃縮RI原料の形状は特に限定されない。また、カプセルは、放射線を透過する材料であり、原子炉14で放射線が照射された状態で、形状を維持できる材料であればよい。
【0018】
原子炉(放射化装置)14は、カプセル製造装置12で製造したカプセルに対して、放射線を照射して、濃縮RI原料を放射性同位体に変換する。原子炉14は、カプセルを原子炉内に例えば7日程度の間、配置し、放射線を照射する。
【0019】
次に、図2から図4を用いて、カプセル製造装置12で製造するカプセルと、カプセルを放射化する原子炉14の一例である原子力発電プラントについて説明する。本実施形態では、原子炉として発電プラントに用いられる原子炉の場合として説明するが、発電を行わない原子炉に適用することもできるし、専用の同位体生成炉にも適用することができる。図2は、原子力発電プラントの一例の概略構成図である。図2に示す原子力発電プラントは、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を有する。また、本実施形態では、原子炉をPWRの場合として説明するが、PWR以外の原子炉としてもよい。この原子力発電プラントは、原子炉格納容器100内において、加圧水型原子炉の原子炉容器101、加圧器102、蒸気発生器103および一次冷却水ポンプ104が、一次冷却水管105により順次接続されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。
【0020】
原子炉容器101は、内部に燃料集合体120を密閉状態で格納するもので、燃料集合体120が挿抜できるように、原子炉容器本体101aとその上部に装着される原子炉容器蓋101bとにより構成されている。原子炉は、原子炉容器101内に格納した燃料集合体120で放射線を発生させ、核反応を発生させることで、熱エネルギーを発生させる。原子炉容器本体101aは、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口側管台101cおよび出口側管台101dが設けられている。出口側管台101dは、蒸気発生器103の入口側水室103aに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口側管台101cは、蒸気発生器103の出口側水室103bに連通するように一次冷却水管105が接続されている。
【0021】
蒸気発生器103は、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように端部が管板103dに支持されている。そして、入口側水室103aは、入口側の一次冷却水管105が接続され、出口側水室103bは、出口側の一次冷却水管105が接続されている。また、蒸気発生器103は、管板103dによって区画された上部側の上端に、出口側の二次冷却水管106aが接続され、上部側の側部に、入口側の二次冷却水管106bが接続されている。二次冷却水管106a、106bは、蒸気タービンに接続されて、二次冷却水の循環経路が構成されている。蒸気タービンには、発電機が接続されている。また、二次冷却水の循環経路には、二次冷却水を冷却する復水器や、ポンプ等が接続されている。
【0022】
また、原子炉容器本体101aは、下鏡101eを貫通する多数の計装管台が設けられ、この各計装管台は、計装管147Aが連結される。計装管147Aは、炉内計装案内管と、コンジットチューブ148と、シンブルチューブ151とを含む。計装管台は、炉内側の上端部に炉内計装案内管が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ148が連結されている。各炉内計装案内管は、上端部が下部炉心支持板に連結されており、振動を抑制するための上下の連接板が取付けられている。コンジットチューブ148は、下部炉心板に至り設けられており、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が挿入されるシンブルチューブ151が敷設される。シンブルチューブ151は、コンジットチューブ148を介して計装管台および炉内計装案内管を通り、下部炉心板を貫通して燃料集合体120まで敷設可能となっている。
【0023】
計装管147Aは、中性子束検出器が挿入される。計装管147Aは、炉心129まで延在することで、挿入された中性子束検出器が、中性子束に晒されて中性子束を検出する。具体的には、計装管147Aは、シンブルチューブ151が敷設されるコンジットチューブ148が、炉心129まで延在する。
【0024】
図3は、計装管及び放射性同位体製造装置を説明する概略側面図である。図3に示すように、コンジットチューブ148は、計装管台の外部まで延出される。図3に示すように、原子炉容器101は、原子炉格納容器内に支持されている。原子炉格納容器100は、原子炉容器101の下方に配管室155が形成されている。複数のコンジットチューブ148は、下鏡101eから原子炉容器101の外部に引き出され、配管室を湾曲して上方に引き回された後、端部が別室のシールテーブル156に固定されている。シンブルチューブ151は、この固定されたコンジットチューブ148の端部から敷設される。そして、このシンブルチューブ151に中性子束検出器が挿入される。
【0025】
シールテーブル156は、図3に示すように、板状に形成され、コンジットチューブ148の端部が下から上に貫通された状態で固定されている。複数のコンジットチューブ148は、等間隔で並べられてシールテーブル156の上面から林立されている。
【0026】
このように、計装管147Aは、コンジットチューブ148にシンブルチューブ149が敷設される構成であるが、それに限られず、中性子束検出器や後述のカプセルユニット151が挿入される任意の形状の管であってよい。
【0027】
放射性同位体製造装置150は、シールテーブル156が配置されている空間に配置されている。放射性同位体製造装置150は、コンジットチューブ153に接続している。コンジットチューブ153は、他のコンジットチューブ148と同様にシールテーブル156に接続される。放射性同位体製造装置150は、シールテーブル156を介してコンジットチューブ153と接続される。放射性同位体製造装置150は、コンジットチューブ153を介して、カプセルユニット151を原子炉の原子炉容器101内に挿入し、原子炉容器内101で原料に放射線を照射し放射性同位体に変換した後、原子炉容器101から回収する。
【0028】
図4は、本実施形態に係るカプセルユニットの模式図である。本実施形態に係るカプセルユニット151は、連結された複数のカプセル212で構成されており、計装管147A内に挿入される。カプセルユニット151は、内部にRI(Radioisotope)原料を濃縮した濃縮RI原料Mが収納される容器である。
【0029】
カプセル212は、濃縮RI原料Mが収納され、連結部224を介して隣接するカプセル212と接続される。カプセルユニット151は、1つのカプセル212が連結部224で他のカプセル212に接続されることで、カプセル212同士が直列で連結されている。連結部224は、カプセル212同士を連結する部材である。
【0030】
カプセルユニット151は、例えばロール状に巻き取られた状態で保管されていてよい。カプセルユニット151は、カプセル212同士を連結部224で連結しているため、適切に巻き取ることが可能となる。なお、カプセルユニット212は、連結される複数のカプセル212のうちの全てに濃縮RI原料Mが収納されていることに限られず、少なくとも一部のカプセル212に濃縮RI原料Mが収納されていてよい。例えば、先頭のカプセル212や末端のカプセル212には、濃縮RI原料Mが収納されていなくてもよい。
【0031】
図1に戻り、放射性同位体製造システム10の各部の説明を続ける。液化装置16は、原子炉14で濃縮RI原料が放射性同位体(99Mo)に変質されたペレットをカプセルから取り出し、水溶液で溶解して液化する。液化した水溶液には、放射性同位体と変質していない濃縮RI原料が含まれる。液化装置16は、原子炉14から取り出したペレットを放射性同位体の崩壊が進まないようできるだけ短時間で処理する。
【0032】
テクネチウム抽出装置(抽出装置)18は、99Moを含む水溶液から99mTcを抽出する。99mTcの抽出方法は、特に限定されず、種々の方法を用いることができる。抽出装置18は、液化装置16で生成した水溶液を放射性同位体の崩壊が進まないようできるだけ短時間で処理することが好ましい。
【0033】
製剤生成装置20は、抽出装置18で抽出した99mTcを含む液体から、目的に使用する液体の製剤を生成する。生成した製剤は、使用する設備に搬送され、各種用途に使用される。製剤は、医用用途に使用する場合、対象者の体内に注入する注射液となる。製剤生成装置20で生成された製剤は、使用する施設、例えば病院や検査施設に搬送され、使用される。
【0034】
抽出後残液処理装置(残液処理装置)22は、抽出装置18で水溶液から99mTcを抽出した際に生じる残液、つまり、水溶液から抽出した99mTcを取り除いた液体である残液を回収し、残液から98Moを抽出する。残液処理装置22は、抽出した98Moをカプセル製造装置12にRI原料として供給する。残液から抽出する98Moは、原子炉14で99Moに変換されなかった原料である。残液処理装置22は、残液中に含まれる99Mo、99mTcの成分を処理し、具体的には、99Moを99mTcに変換し、99mTcを99Tcに変換する。残液処理装置22は、残液を回収してから上記変換処理が行われる間の時間、例えば、100時間以上1000時間以下、処理を待機する。残液処理装置22は、残液の線量を計測して所定の線量以下になることを確認して、放射性同位体の成分の変換の状態を判定してもよい。残液処理装置22は、放射性同位体を99mTcに変換した後、つまり、99Moの量を低減させた後、98Moと、他の成分、具体的には99mTcを分離することで、残液から、98Moを抽出する。
【0035】
ジェネレータ製造装置30は、99Moを含む水溶液からジェネレータを製造する。ここで、ジェネレータは、99Moを保持する物質であり、99mTcを抽出することができる物質である。ジェネレータとしては、高分子ジルコニア化合物で99Moを吸着した物質、アルミナ、シリカ、キトサン等が例示される。
【0036】
ジェネレータ使用設備32は、ジェネレータを処理することで、放射性同位体、本実施形態では、99mTcを含む物質、例えば、液体を生成し、生成した液体を使用する設備である。ジェネレータ使用設備32は、病院や検査施設である。ジェネレータ使用設備32は、ジェネレータから99mTcを含む物質を生成する際にできる物質は、99mTcを含む物質を使用した後に生じる物質が排液となる。ジェネレータ使用設備32は、排液を貯留し、回収装置34に供給する。なお、回収装置34への排液の回収は、作業員が行えばよい。
【0037】
回収装置34は、排液を回収する装置である。回収装置34は、例えば可搬式の容器である。回収装置34は、回収して貯留した排液を排液処理装置36に供給する。回収装置34は、ジェネレータ使用設備32でのジェネレータの処理時、使用時に排出される種々の段階での排液を回収する。
【0038】
排液処理装置36は、回収装置34から供給される排液や98Moを含むジェネレータに含まれる98Moを抽出する。排液処理装置36は、排液から98Moを抽出する方法として、種々の方法を用いることができる。排液処理装置36は、例えば、隔離法及び昇華法の少なくとも一方を用いて、98Moとその他の物質(不純物)を分離し、98Moを抽出してもよい。排液処理装置36は、抽出した98Moをカプセル製造装置12に濃縮RI原料として供給する。排液処理装置36は、排液から98Moを抽出した残りの液体の処理も実行してもよい。具体的には、低レベル放射性廃棄物として廃棄するための処理を行ってもよい。また、排液処理装置36は、廃液の線量を計測して所定の線量以下になることを確認して、処理をしてもよい。
【0039】
次に、放射性同位体製造システム10を用いた放射性同位体の製造方法について説明する。放射性同位体製造システム10は、RI原料として、新規に供給する98Moと、放射性同位体製造システム10で抽出される98Moと用いる。
【0040】
以下、残液処理装置22で抽出した98Moを濃縮RI原料の一部として用いる方法について説明する。放射性同位体製造システム10は、カプセル製造装置12で例えば所定の濃度の酸化モリブデンを濃縮して、焼成することで、98Moのペレットを生成し、ペレットを格納した複数のカプセルを製造する(カプセル製造ステップ)。カプセル製造装置12は、カプセルを繋げたカプセルユニットを作成する。
【0041】
次に、放射性同位体製造システム10は、カプセルユニットを運転されている原子炉14の原子炉容器内に搬送し、所定期間、例えば、7日間、原子炉容器に配置し、カプセルに放射線を照射する(放射化ステップ)。これにより、カプセル内のペレットの98Moは、99Moに変換される。なお、ペレットの全量のうち、99Moに変換される割合は、照射される放射線の線量や照射する期間に応じて変化し、一部の98Moは、99Moに変換されない。
【0042】
放射性同位体製造システム10は、液化装置16で、原子炉14から回収したカプセルから放射化したペレットを取り出し、水溶液で溶かして、99Moを含む水溶液を生成する(液化ステップ)。
【0043】
放射性同位体製造システム10は、抽出装置18で、99Moを含む水溶液を処理し、99Moを含む水溶液から99mTcを抽出する(抽出ステップ)。99mTcは、水溶液に含まれる99Moが時間とともに変換されて生成される。放射性同位体製造システム10は、製剤生成装置20で、抽出装置18で抽出した99mTcら製剤を生成し、使用する施設に供給する。
【0044】
また、放射性同位体製造システム10は、抽出装置18で水溶液から99mTcを抽出することで生じる残液を、残液処理装置22で処理する(残液処理ステップ)。残液処理装置22は、上述したように、残液に含まれる99Moを99mTcに変換させた後、98Moと不純物(99mTcを含む物質)を分離する。放射性同位体製造システム10は、残液処理装置22で分離して生成した98Moをカプセル製造装置12に供給する。
【0045】
放射性同位体製造システム10は、カプセル製造ステップで、残液処理ステップで生成した98Moと、新たに供給される98Moとを用いて、ペレットを生成し、カプセルを製造する。
【0046】
放射性同位体製造システム10は、以上のように、残液処理装置22で、抽出装置18から排出される残液から98Moを抽出することで、残液に含まれる98Moを回収できる。これにより、廃棄される98Moを低減することができる。また、本実施形態のように抽出する98Moをカプセル製造装置12に供給することで、カプセル製造装置12に供給する新しい98Moを少なくできる。これにより、RI原料を効率よく使用でき、効率よく放射性同位体を製造することができる。
【0047】
残液処理装置22は、残液に含まれる99Moを99Tcに変換させた後、98Moと不純物(99Tcを含む物質)を分離することで、抽出した98Moに99Moが含まれることを抑制できる。これにより、カプセル製造装置12に供給するRI原料に含まれる不純物、本実施形態では99Tcを少なくでき、98Moの純度を高くできる。また、放射性同位体製造システム10は、残液処理装置22で、ジェネレータ以外の生成で生じる残液に含まれる98Moを回収することができる。
【0048】
次に、排液処理装置36で98Moを回収する処理について説明する。放射性同位体製造システム10は、カプセル製造ステップ、放射化ステップ、液化ステップは、上述した残液処理装置22を用いた処理と同様の処理を実行する。
【0049】
放射性同位体製造システム10は、ジェネレータ製造装置30で、99Moを含む水溶液を処理し、ジェネレータを生成する。次に、放射性同位体製造システム10は、ジェネレータ使用設備32で、ジェネレータを使用する(使用ステップ)。具体的には、ジェネレータ使用設備32は、ジェネレータを処理して、99mTcを含む液体を生成し、99mTcを含む液体を使用する。
【0050】
放射性同位体製造システム10は、回収装置34で、ジェネレータ使用設備32でジェネレータを使用することで生じる排液を回収する。放射性同位体製造システム10は、廃液処理装置36で排液を処理し、排液に含まれる98Moを抽出し、カプセル製造装置12に供給する(再処理ステップ)。
【0051】
放射性同位体製造システム10は、カプセル製造ステップで、再処理ステップで生成した98Moと、新たに供給される98Moとを用いて、ペレットを生成し、カプセルを製造する。
【0052】
放射性同位体製造システム10は、以上のように、排液処理装置36で、ジェネレータ使用設備32から排出される残液から98Moを抽出することで、排液に含まれる98Moを回収できる。これにより、廃棄される98Moを低減することができる。また、本実施形態のように抽出するMo98をカプセル製造装置12に供給することで、カプセル製造装置12に供給する新しい98Moを少なくできる。これにより、RI原料を効率よく使用でき、効率よく放射性同位体を製造することができる。また、本実施形態のように、回収装置34で、ジェネレータ使用設備32の各工程で排出される排液を回収することで、つまり、ジェネレータの製造時に生じる排液や、ジェネレータから生成した製剤の使用後に排出される排液も回収することで、より多くの98Moを回収することができる。また、放射性同位体製造システム10は、排液処理装置36で、ジェネレータの排液に加え、ジェネレータ以外の生成で生じる排液、例えば、注射剤の残液に含まれる98Moを回収することができる。
【0053】
本実施形態の放射性同位体製造システム10は、残液処理装置22で抽出した98Moと、排液処理装置36で処理した98Moの両方をカプセル製造装置12に供給し、RI原料の一部として用いることが好ましい。これにより、原子炉14に投入されたペレットに含まれる98Moのうち、変換されなかった成分をより多く回収することができる。これにより、RI原料をより効率よく使用することができる。
【0054】
また、本実施形態のように、放射性同位体製造システム10は、RI原料を98Moとし、放射性同位体は、99Moをとし、99Moから変換された99mTcを使用する場合、放射性同位体の生成の過程に対応して、残液、排液から好適に98Moを抽出することができる。
【0055】
また、本実施形態のように、原子炉内で放射化されたカプセル内の充填物から放射性同位体を抽出した残留物から抽出した濃縮RI原料と、照射されていないRI原料を濃縮された原料とをペレット化された濃縮RI原料をカプセルに格納することで、濃縮RI原料を効率よく使用することができる。
【0056】
放射性同位体製造システム10は、抽出装置18とジェネレータ製造装置30の両方を備えているシステムとしたが、抽出装置18とジェネレータ製造装置30のいずれか一方とし、99Moを含む水溶液を一方の装置で全量処理してもよい。この場合、放射性同位体製造システム10は、残液処理装置22と排液処理装置36のうち、抽出装置18とジェネレータ製造装置30の備えている装置に対応する装置のみを備えていればよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
10 放射性同位体製造システム
12 カプセル製造装置
14 原子炉(放射化装置)
16 液化装置
18 テクネチウム抽出装置(抽出装置)
20 製剤生成装置
22 抽出後残液処理装置(残液処理装置)
30 ジェネレータ製造装置
32 ジェネレータ使用設備
34 回収装置
36 排液処理装置
150 放射性同位体製造装置
151 カプセルユニット
212 カプセル
224 連結部
M 濃縮RI原料
図1
図2
図3
図4