(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】貨物自動車荷台用システムフロアおよびシステムフロアセット
(51)【国際特許分類】
B62D 33/02 20060101AFI20240125BHJP
B62D 33/00 20060101ALI20240125BHJP
B60P 1/52 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B62D33/02 B
B62D33/00 A
B60P1/52 Z
(21)【出願番号】P 2020181784
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】516275734
【氏名又は名称】尾上 昌史
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾上 昌史
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-003184(JP,U)
【文献】特表2017-523075(JP,A)
【文献】実開昭51-038812(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0065264(US,A1)
【文献】米国特許第04893862(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/02
B62D 33/00
B60P 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送用箱が積載される貨物自動車の荷台に配置されるシステムフロアであって、
前記荷台の長手方向に隣り合って並ぶ複数の床板を備え、
前記複数の床板は、
前記荷台の長手方向に延び、輸送用箱が前記荷台の幅方向に移動することを規制するガイド部を有し、
前記荷台から脱着自在であり、
前記ガイド部は、2つ以上の前記床板に形成される溝であり、
隣り合う前記床板は、一方の前記床板の前記溝の内面と、他方の前記床板の前記溝の内面とが、隣り合う前記床板のつなぎ目において面一となるように位置合わせをする複数の固定部材により前記荷台に固定され、
複数の前記固定部材のそれぞれは、前記荷台上の所定
の位置に設けられる
ことを特徴とする貨物自動車荷台用のシステムフロア。
【請求項2】
輸送用箱が積載される貨物自動車の荷台に配置されるシステムフロアであって、
前記荷台の長手方向に隣り合って並ぶと共に、前記荷台から脱着自在な複数の床板を備え、
前記複数の床板は、前記荷台の長手方向に直交する向きに回転軸を有し、かつ、前記荷台の長手方向に並ぶ複数のローラ部材が配置される収納部を有し、
隣り合う前記床板は、一方の前記床板の前記収
納部の内面と、他方の前記床板の前記収
納部の内面とが、隣り合う前記床板のつなぎ目において面一となるように位置合わせをする複数の固定部材により前記荷台に固定され、
複数の前記固定部材のそれぞれは、前記荷台上の所定
の位置に設けられ
、
前記収納部は、該収納部に配置された各前記ローラ部材の上端が前記床板の上面よりも上方に突出するように形成される
ことを特徴とする貨物自動車荷台用のシステムフロア。
【請求項3】
輸送用箱が積載される貨物自動車の荷台に配置されるシステムフロアであって、
前記荷台の長手方向に隣り合って並ぶと共に、前記荷台から脱着自在である複数の床板を備え、
前記複数の床板は、
前記荷台の長手方向に延び、輸送用箱が前記荷台の幅方向に移動することを規制するガイド部、または
前記荷台の長手方向に直交する向きに回転軸を有し、かつ、前記荷台の長手方向に並ぶ複数のローラ部材が配置される収納部を有し、
前記複数の床板のそれぞれには、該床板を吊り上げるための吊り具が設けられ
、
前記収納部は、該収納部に配置された各前記ローラ部材の上端が前記床板の上面よりも上方に突出するように形成される
ことを特徴とする貨物自動車荷台用のシステムフロア。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムフロアであって、
前記複数の床板は、
前記荷台の長手方向に延び、
前記荷台の長手方向に直交する向きに回転軸を有し、かつ、前記荷台の長手方向に並ぶ複数のローラ部材が配置される収納部をさらに備え
、
前記収納部は、該収納部に配置された各前記ローラ部材の上端が前記床板の上面よりも上方に突出するように形成される
ことを特徴とする貨物自動車荷台用のシステムフロア。
【請求項5】
輸送用箱が積載される貨物自動車の荷台に配置されるシステムフロアセットであって、
前記荷台から交換可能な第1システムフロアと第2システムフロアとを備え、
前記第1システムフロアおよび前記第2システムフロアはそれぞれ、前記荷台の長手方向に隣り合って並ぶと共に、前記荷台から脱着自在である複数の床板を備え、
前記第1システムフロアは、隣り合う少なくとも2つの前記床板に亘って形成されると共に、前記輸送用箱が前記荷台の幅方向に移動することを規制するガイド部を有し、
前記第2システムフロアは、隣り合う少なくとも2つの前記床板に亘って形成されると共に、前記荷台の長手方向に複数並び、かつ、前記荷台の長手方向に直交する向きに回転軸を有するローラ部材が配置される収納部を有し
、
前記収納部は、該収納部に配置された各前記ローラ部材の上端が前記床板の上面よりも上方に突出するように形成される
ことを特徴とするシステムフロアセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車の荷台の底面に取り付けられるシステムフロアおよびシステムフロアセットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、貨物をトラックやトレーラなどで運送する場合、貨物を収容する輸送用箱が用いられる。輸送用箱は、トラックやトレーラなどの荷台に設けられた荷室に積み込まれて運送されるが、積み込む輸送用箱が大型であったり、比較的重かったりすると、該輸送用箱を作業者が荷室に詰め込むには手間がかかる。
【0003】
特許文献1には、荷台1の床面に2つの溝が設けられたトラックの荷台構造が開示されている。輸送箱を荷台に積み込む際、輸送箱下面のキャスタを該溝に入れて荷台内部に押し込むことで輸送箱を荷台内の所定の位置まで移動できる。特許文献2には、荷台の床面にローラが設置されたローラ装置が開示されている。ローラ上に荷物を載置して荷台内を移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-27313号公報
【文献】実全昭51-038812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、貨物自動車の荷台はフルフラットの平面床であり、荷主の要望や輸送用箱の積込方法に合わせた架装荷台を平面床に設けている。荷室への輸送用箱の積込方法は、輸送用箱の大きさや形状によって異なるため、特定の種類の輸送用箱を運送する貨物自動車は、該特定の輸送箱を運送可能な荷台床面を有する貨物自動車に限定されてしまう。
【0006】
このことにより、輸送用箱の種類に応じた荷台床面を備えたトラックを手配するという手間が生じる。また、運送する輸送用箱の種類ごとにトラックを用意しなければならないため、例えば、ある特定の輸送用箱の運送量が増えれば、該輸送用箱に対応するトラックを買い足す必要がありコストがかかる。さらに、トラック台数を増やしても、該輸送用箱の運送量が減少すると該トラックを余らすことになり、トラック台数全体の稼働率を低下させることになる。加えて、余ったトラックの荷台床面を別の荷台床面に交換する場合、専門業者に依頼することになり、交換作業のための日数や工賃がかかってしまう。加えて、輸送用箱に対応する荷台を備えたトラックがない場合、運送依頼を受任できないという不都合が生じる。
【0007】
本発明は、かかる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貨物自動車に限定されることなく複数種類の輸送用箱の運送に対応できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明では、貨物自動車の荷台床面を輸送用箱に応じて荷台に着脱可能に構成した。
【0009】
具体的には、第1の発明は、
貨物自動車の荷台に配置されるシステムフロアであって、
前記荷台の長手方向に隣り合って並ぶ複数の床板を備え、
前記複数の床板は、
前記荷台の長手方向に延び、前記輸送用箱が前記荷台の幅方向に移動することを規制するガイド部を有し、
前記荷台から脱着自在である
ことを特徴とする。
【0010】
第1の発明では、ガイド部は荷台の長手方向に延びる。また、ガイド部は、輸送用箱が荷台の幅方向に移動することを規制する。そのため、輸送用箱を荷台の長手方向に移動させることができる。その結果、比較的大型で重い輸送用箱でもガイド部に沿って容易に荷室2内を移動させることができる。また、システムフロアは荷台から脱着可能であるため、運送する輸送用箱に応じて、システムフロアを荷台に取り付け、または取り外すことができる。このことにより、貨物自動車に限定されることなく複数種類の輸送用箱の運送に対応できる。その結果、輸送用箱に応じて貨物自動車を購入するコストを抑えることができる。ひいては、1台の貨物自動車で複数種類の輸送用箱の運送に対応できるため、トラック台数全体の稼働率の低下を抑えることができる。システムフロアの各床板は荷台から脱着自在である。そのため、床板を一枚ずつ荷台に取り付けおよび荷台から取り外しができ、システムフロアが複数の床板に分割されていない場合と比べて、容易にシステムフロアの荷台への取り付けおよび取り外しができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、
前記ガイド部は、2つ以上の前記床板に形成される溝であり、
隣り合う前記床板は、一方の前記床板の前記溝の内面と、他方の前記床板の前記溝の内面とが、隣り合う前記床板のつなぎ目において面一となるように位置合わせをする固定部材により前記荷台に固定されることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、固定部材により隣り合う床板同士の溝の内面の位置が、床板と床板とのつなぎ目においてずれることを抑制できる。このことにより、溝に沿って輸送用箱を移動させるとき、輸送用箱が床板と床板とのつなぎ目にひっかかることを抑制できる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記複数の床板は、
前記荷台の長手方向に延び、
前記荷台の長手方向に直交する向きに回転軸を有し、かつ、前記荷台の長手方向に並ぶ複数のローラ部材が配置される収納部をさらに備える
ことを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、収納部にはローラ部材が配置される。ローラ部材に載置された輸送用箱を荷台長手方向に押すことで、ローラ部材は回転し、該輸送用箱は荷台長手方向に移動する。そのため、比較的容易に該輸送用箱を移動できる。また、システムフロアはガイド部とローラ部材とを備えるため、一つのシステムフロアで2種類の輸送用箱を荷室内において移動できる。
【0015】
第4の発明は、
輸送用箱が積載される貨物自動車の荷台に配置されるシステムフロアであって、
前記荷台の長手方向に並ぶ複数の床板を備え、
前記複数の床板は、前記荷台から脱着自在であり、
前記荷台の長手方向に延び、
前記荷台の長手方向に直交する向きに回転軸を有し、かつ、前記荷台の長手方向に並ぶ複数のローラ部材が配置される収納部を有することを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、収納部には複数のローラ部材を配置できる。輸送用箱を複数のローラ部材の上に載置して荷台長手方向に押すだけで、各ローラ部材が回転することによって該輸送用箱を荷室内の所定の位置まで比較的容易に移動させることができる。
【0017】
第5の発明は、第1および第4の発明のシステムフロアを有するシステムフロアセットである。
【0018】
第5の発明では、貨物自動車の荷台に第1の発明のシステムフロアおよび第2発明のシステムフロアを交換できる。第1の発明のシステムフロアと第2の発明のシステムフロアとを輸送用箱の種類に応じて使いわけることにより、1台の貨物自動車で複数種類の輸送用箱の運送に対応できる。
【発明の効果】
【0019】
上記第1の発明によれば、床板を脱着できるため、荷室に積み込む輸送用箱の形状に応じてシステムフロアの取り付けまたは取り外しできる。このことにより、貨物自動車の限定されることなく、複数種類の輸送用箱の運送に対応できる。
【0020】
上記第2の発明によれば、システムフロアのガイド部に沿って輸送用箱を移動させるとき、床板と床板とのつなぎ目で該輸送用箱がひっかかることを抑制できる。
【0021】
上記第3の発明によれば、システムフロアは、ガイド部とローラ部材とを有するため、1つのシステムフロアで複数種類の輸送用箱の運送に対応できる。
【0022】
上記第4の発明によれば、ローラ部材に載置された輸送用箱を荷台長手方向に押すだけで、比較的容易に該輸送用箱を移動させることができる。
【0023】
上記第5の発明によれば、荷室に積み込む輸送用箱に応じてシステムフロアを荷台に付け替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態に係るシステムフロアが適用される貨物自動車の荷台の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、荷台に取り付けられたシステムフロアを上から見た図である。
【
図5】
図5は、パレットローダがローラ溝部を移動するところを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ボルトにより締結された固定部材および床板を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、ボルトにより締結された固定部材と床板、およびリング部材を示す模式図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るシステムフロアの
図2相当図である。
【
図9】
図9は、床板の縦断面の一部を示す拡大図である。
【
図11】
図11は、ローラ装置が収納部に配置されているところを示す床板の縦断面図である。
【
図12】
図12は、その他の実施形態に係るシステムフロア11の
図2相当図である。
【
図14】
図14は、システムフロアセットの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」は、特にことわりのない限り、
図1~
図3、
図6~
図9、および
図11~
図14に記載された方向を意味する。
【0026】
-貨物自動車の構成-
図1に示すように、実施形態の貨物自動車は比較的大型のトラックVである。トラックVは、長方形の荷台1を有する。荷台1の上面は平坦に形成される。荷台1の上面には、後述する固定部材12が複数設けられる。固定部材12は、後述するシステムフロア11を取り付けるための部材である。
【0027】
トラックVの荷台1には、箱型の荷室2が設置される。荷室2は、側面開閉扉2c,2cと、背面扉2aと、前壁2bとを有する。側面開閉扉2c,2cは、荷室2の左右の側面がそれぞれ斜め上方に開閉するいわゆるガルウイング型である。背面扉2aは、観音開きのように中央から左右両側に開く。前壁2bは、背面扉2aに向かい合う位置に設けられる。荷室2には、輸送する貨物が収容される輸送用箱が載置される。輸送用箱は、段ボール箱やフォークリフトで搬送される比較的大型のコンテナなどである。
【0028】
-システムフロア-
図2および
図3に示すように、システムフロア11は、荷台1の上面に配置される板状の部材である。システムフロア11は、荷台1上面を覆う矩形に形成される。システムフロア11の板面は木質材料を有する。
【0029】
システムフロア11は、4つの床板10a~10dを有する。具体的に、システムフロア11は、第1~第4床板10a~10dを有する。第1~第4床板10a~10dは、荷台1の長手方向に隣り合って並ぶ。第1~第4床板10a~10dは、背面扉2aから前壁2bに向かって、第1床板10a、第2床板10b、第3床板10cおよび第4床板10dの順に配置される。第1~第4床板10a~10dのうち、隣り合う床板10,10の向かい合う側面は互いに接している。システムフロア11は、ガイド部20、取付孔15、およびリング部材16を有する。
【0030】
ガイド部20は、荷台1の長手方向に延び、輸送用箱が荷台1の幅方向に移動することを規制する。具体的に、ガイド部20は、各床板10に形成される溝である。ガイド部20は、第1ローラ溝部21および第2ローラ溝部22を有する。第1ローラ溝部21および第2ローラ溝部22は、一対の凹溝を有する。第1ローラ溝部21および第2ローラ溝部22は、後述するパレットローダ30を荷台1の長手方向に案内する溝である。各凹溝は、システムフロア11の長手方向の一端から他端に亘って形成される。言い換えると、各凹溝は、各床板10における荷台1の長手方向に向かい合う一辺から他辺に亘って形成される。
【0031】
第1ローラ溝部21は、システムフロア11上面の左側部分に形成される。第2ローラ溝部22は、システムフロア11上面の右側部分に形成される。第1~第2ローラ溝部21,22の凹溝には、上向きに開口したコの字型のレール部材23が篏合される。レール部材23は金属製の部材である。レール部材23の内部を、パレットローダ30が移動する。
【0032】
図4および
図5に示すように、パレットローダ30は、第1ローラ溝部21、および第2ローラ溝部22に沿って、輸送用箱を移動させる道具である。パレットローダ30は、リフト部30aとハンドル部30bとを有する。リフト部30aは、レール部材23の内部を移動する。具体的に、リフト部30aの下面には車輪30cが設けられており、該車輪30cがレール部材23内で転動する。このことにより、リフト部30aはレール部材23に沿って移動する。ハンドル部30bは棒状の部材である。ハンドル部30bの一端は、リフト部30aの基端部に接続される。
【0033】
輸送用箱Aは、一対のパレットローダ30,30を用いて第1~第2ローラ溝部21,22上を移動する。具体的に、一対のパレットローダ30,30のリフト部30a,30aをそれぞれ第1ローラ溝部21の各凹溝に入れ、一対のリフト部30a,30aの上面に輸送用箱Aを載置した状態で、ハンドル部30b,30bを手前に押し下げると、てこの原理によりリフト部30a,30aの先端が持ち上がる。この状態で、第1ローラ溝部21の長手方向に2つのハンドル部30b,30bを同時に押すと、各リフト部30aの車輪30cがレール部材23内を転動して、パレットローダ30,30が移動する。このように、比較的大型で重い輸送用箱は、パレットローダ30を用いることにより荷室2の長手方向に移動できる。輸送用箱を所定の位置にまで移動させた後、ハンドル部30bをリフト部30aから取り外す。このことにより、リフト部30aはレール部材23の内側に入った状態で、輸送箱はシステムフロア11上に載置される。
【0034】
図2および
図6に示すように、取付孔15は、固定部材12と床板10とを締結するためのボルトBが挿通する孔である。取付孔15は、各床板10のそれぞれに4つ設けられる。具体的に、取付孔15は、各床板10の右側面の両端、および左側面の両端に形成される。
【0035】
固定部材12は、矩形の平板をL字型に折り曲げた金属製の部材である。具体的に、固定部材12は、第1板部13と第2板部14とを有する。第1板部13は、横方向に並ぶ2つの締結孔17,17を有する。締結孔17,17は、固定部材12と床板10とを締結するためのボルトBが挿通する孔である。第2板部14は、荷台1上面に固定される。
【0036】
固定部材12は、荷台1の上面に10個固定される。具体的に、10個の固定部材12a~12jは、荷台1上面の左縁に沿って5つ(第1~第5固定部材12a~12e)、および荷台1上面の右縁に沿って5つ(第6~第10固定部材12f~12j)配置される。第2~第4固定部材12b~12d、および第7~第9固定部材12g~12iはそれぞれ、隣り合う2つの床板10,10を固定する。
【0037】
例えば、第2固定部材12bは、床板10a、10bの左側面において、床板10aの取付孔15の位置が一方の締結孔17の位置と一致し、床板10bの取付孔15の位置が他方の締結孔17の位置と一致するように配置される。そして、ボルトBが各締結孔17および取付孔15を挿通することによって、床板10a,10bは固定部材12bに締結される。第7固定部材12gも同様に、床板10a、10bの右側側面において、床板10a、10bを締結する。このように、第1~第2固定部材12a,12b、および第6~第7固定部材12f,12gは、第1床板10aを荷台1に固定する。第2~第3固定部材12b,12c、および第7~第8固定部材12g,12hは、第2床板10bを荷台1に固定する。第3~第4固定部材12c,12d、および第8~第9固定部材12h,12iは、第3床板10cを荷台1に固定する。第4~第5固定部材12d,12eおよび第9~第10固定部材12i,12jは、第4床板10dを荷台1に固定する。
【0038】
固定部材12b~12d,12g~12iはまた、隣り合う床板10,10の一方の床板10の第1ローラ溝部21および第2ローラ溝部の内面と、他方の床板10の第1ローラ溝部21および第2ローラ溝部22の内面とが、床板10,10のつなぎ目において面一となるように位置合わせをする。厳密には、固定部材12b~12d,12g~12iは、隣り合う床板10,10の一方の床板10のレール部材23,23の内面と、他方の床板10のレール部材23,23の内面とが、隣り合う床板10,10のつなぎ目において面一となるように位置合わせをする。
【0039】
図7に示すように、リング部材16は、床板10の荷台1への取り付け、および荷台1から取り外しの際に、各床板10を吊り上げるための部材である。リング部材16は、各床板10の側面の取付孔15付近に4つずつ設けられる。各リング部材16は上側部分が回動可能に各床板10の側面に軸支される。リング部材16を回動させて床板10上面から突出させた状態(
図7の二点鎖線の状態)で、各リング部材16の内側に通されたナイロンスリングまたはワイヤをクレーン等で吊り上げることにより、各床板10を荷台1に取り付けたり、荷台1から取り外したりできる。
【0040】
〈システムフロアの取り付けおよび取り外し〉
システムフロア11の荷台1への取り付けおよび取り外しについて説明する。荷台1にシステムフロア11を取り付ける場合、荷室2の側面開閉扉2cを全開にした状態で、クレーンで釣り上げて各床板10を荷台1上面に配置する。このとき、各床板10の取付穴15の位置が、各固定部材12の締結孔17,17の位置に一致するように、第1床板10aから順に、第2床板10b、第3床板10cおよび第4床板10dを荷台1上面に配置していく。配置する床板10の順序に限定はない。その後、各床板10と固定部材12とをボルトBで締結することにより、各床板10は荷台1に固定される。第2~第4固定部材12b~12d、および第7~第9固定部材12g~12iにより、隣り合う床板10,10の向かい合う側面同士は接する。
【0041】
また、隣り合う床板10,10は、固定部材12b~12d,12g~12iに締結されることにより、一方の床板10の第1ローラ溝部21および第2ローラ溝部22の各凹溝と、他方の床板10の第1ローラ溝部21および第2ローラ溝部22の各凹溝とが荷台長手方向に連続するように互いに接続される。具体的に、隣り合う床板10,10の一方の第1ローラ溝部21のレール部材23の内面と他方の第1ローラ溝部21のレール部材23の内面とが面一となる。同様に、隣り合う床板10,10の一方の第2ローラ溝部22のレール部材23の内面と、他方の第2ローラ溝部22のレール部材23の内面とが面一となる。
【0042】
荷台1からシステムフロア11を取り外す場合、荷室2の側面開閉扉2cを全開にした状態で、各床板10と各固定部材12とを締結しているボルトBを外していく。その後、クレーンで各床板10を一枚ずつ吊り上げて荷台1から取り外していく。
【0043】
〈輸送用箱の搬入および搬出〉
次に、荷室2内に輸送用箱を搬入する場合、および荷室2から輸送用箱を搬出する場合について説明する。ここでの輸送用箱は、比較的大型で重い輸送用箱である。
【0044】
まず、荷台1の上面にシステムフロア11を取り付ける。システムフロア11の荷台1への取り付け方は上述した通りである。
【0045】
荷室2の背面扉2aを開けて、輸送用箱を荷室2内に搬入する。このとき、輸送用箱は第1ローラ溝部21の上に配置される。第1ローラ溝部21と輸送用箱の下面との間に一対のパレットローダ30のリフト部30aを差し込んで、輸送用箱を持ち上げる。この状態で、パレットローダ30を第1ローラ溝部21に沿って荷室2の前壁2bに向かって移動させる。
【0046】
隣り合う床板10,10の第1ローラ溝部21の内面(詳細にはレール部材23の内面)は、隣り合う床板10,10のつなぎ目において面一となっているため、リフト部30a,30aは隣り合う床板10とのつなぎ目でひっかかることなくレール部材23内を移動できる。
【0047】
パレットローダ30を所定の位置まで移動させた後、リフト部30aからハンドル部30bを外す。輸送箱をベルト等の固定部材(図示省略)で荷室2内に固定する。輸送箱が複数ある場合は、第2ローラ溝部22も使用して順次荷室内に積み込んでいけばよい。
【0048】
輸送用箱を荷室2から搬出する場合は、固定部材を輸送用箱から取り外し、ハンドル部30bをリフト部30aに取り付ける。ハンドル部30bを手前に押し下げることで、輸送用箱はリフト部30aに載置された状態で持ち上がる。この状態で、背面扉2aに向かってパレットローダ30を移動させて、荷室2から輸送用箱を搬出する。
【0049】
-実施形態の効果-
本実施形態によれば、システムフロア11の第1~第2ローラ溝部21,22に沿って、輸送用箱を荷台1の長手方向に移動させることができる。第1~第2ローラ溝部21,22は、パレットローダ30が移動する溝であるため、比較的大型で重い輸送用箱でも容易に荷室2内を移動させることができる。また、システムフロア11は荷台1から脱着可能であるため、運送する輸送用箱の種類に応じて、システムフロア11を荷台1に取り付け、または取り外すことができる。このことにより、例えば、比較的大型で重い輸送用箱を運送する場合は、システムフロア11を荷台1床面に取り付ければよい。このことにより、トラックに限定されることなく、複数種類の輸送用箱の運送に対応できる。ひいては、輸送用箱ごとにトラックを購入したり、輸送用箱の種類に合わせて既存のトラックの荷台を作り換えたりするためのコストを抑えることができる。特に、トラックの荷台を作り換える作業期間中に該トラックが使用できなくなるという状況は発生しない。
【0050】
加えて、輸送用箱の種類に応じて、システムフロア11を取り付けたり外したりすればよいため、特定の輸送用箱の運送依頼の減少してもトラックを余らすことなくトラック台数全体の稼働率の低下を抑えることができる。
【0051】
加えて、トラックに限定されることなく輸送用箱を荷室に積み込めるため、運送依頼を受任できなくなるという事態の発生を抑えることができる。
【0052】
加えて、システムフロア11は4つの床板10a~10dで構成される。そのため、床板10a~10dを一枚ずつ荷台1に取り付けおよび荷台1から取り外しができる。このことにより、システムフロア11が複数の床板に分割されていない場合と比べて、容易に荷台1に取り付けおよび取り外しができる。
【0053】
加えて、システムフロア11は、4枚の床板10a~10dを有するため、例えば、4枚の床板10a~10dを積み重ねて保管すれば、保管場所の省スペース化を実現できる。
【0054】
本実施形態によれば、固定部材12により隣り合う床板10、10のつなぎ目において、一方の床板10の第1~第2ローラ溝部21,22の内面と他方の床板10の第1~第2ローラ溝部21,22の内面との位置がずれることを抑制できる。このことにより、第1~第2ローラ溝部22に沿ってパレットローダ30を移動させるとき、床板10と床板10とのつなぎ目で、パレットローダ30のリフト部30aがひっかかることを抑制できる。このことにより、迅速に輸送用箱を荷台1の長手方向に移動させることができる。
【0055】
加えて、床板10は固定部材12に締結させるだけで荷台1に固定できるため、床板10の荷台1への取り付け、および荷台1からの取り外しを容易にできる。このことにより、例えば、わざわざ専門業者に依頼してシステムフロア11の取り外しおよび取り付けを行う必要がなく、異なる複数の輸送用箱の運送に対して比較的柔軟に対応できる。また、老朽化したトラックからシステムフロア11を回収して他のトラックに付け替えることができるため、新たなシステムフロア11を製造する分のコストを抑えることができる。
【0056】
〈変形例1〉
本変形例1のシステムフロア11の構成は、上記実施形態のシステムフロア11の構成と異なる。以下では、上記実施形態のシステムフロア11と異なる構成について説明する。
【0057】
図8~
図11に示すように、本例のシステムフロア11は、収納部40を有する。収納部40には、後述するローラ装置50が配置される。収納部40は、システムフロア11の上面に形成される。収納部40は、断面が凹状に形成される。具体的に、収納部40は、1つの底面部40aと2つの側面部40bとを有する。底面部40aは、システムフロア11の幅方向の中央寄りに形成される。底面部40aは、システムフロア11の長手方向に延びる。厳密には、第1~第3床板10a~10cでは、底面部40aは、荷台長手方向の向かい合う一辺から他辺に亘って延びる。第4床板10dでは、底面部40aは、荷台長手方向の向かい合う一辺から他辺に向かって、板面の中央寄りまで延びる。2つの側面部40b,40bは、底面部40aの左右の両端に形成される。
【0058】
収納部40は、段差部40cを有する。段差部40cは、底面部40aと側面部40bとの接続部分に設けられる。段差部40cは、底面部40aの長手方向の一端から他端に亘って形成される。段差部40cの断面は、四角形に形成される。
【0059】
ローラ装置50は、荷室2内で輸送用箱を搬送する装置である。ローラ装置50は、矩形の枠部52および複数のローラ部材51,51,…,51を有する。枠部52は金属部材である。枠部52は収納部40の内部に嵌まるように形成される。具体的に、ローラ装置50が収納部40の内部に取り付けられた状態で、枠部52の外側面は、側面部40bに当接し、枠部52の下面の一部は、段差部40cの上面に当接する。また、枠部52の上面は、システムフロア11上面と面一となる。複数のローラ部材51,51,…,51は、枠部52の内側に配置される。複数のローラ部材51,51,…,51は、荷台1の長手方向に直交する向きに回転軸を有し、かつ、荷台1の長手方向に並ぶ。具体的に、複数のローラ部材51,51,…,51は、枠部52の長手方向に並んで配置される。各ローラ部材51は、枠部52の長手方向に直交する向きに回転する。各ローラ部材51の上端は、枠部52上面から突出する。そのため、ローラ装置50に輸送用箱を載置すると、輸送用箱の下面とシステムフロア11上面との間に隙間ができる。
【0060】
〈輸送用箱の搬入および搬出〉
荷室2内に輸送用箱を搬入する場合、および荷室2から輸送用箱を搬出する場合について説明する。ここでの輸送用箱は比較的小型の輸送用箱である。システムフロア11を荷台1に取り付ける方法は、上記実施例に記載した通りである。
【0061】
システムフロア11を荷台1上面に取り付けた後、ローラ装置50を、システムフロア11の収納部40に配置する。荷室2の背面扉2aを開けて、輸送用箱を、ローラ装置50上に載置する。ローラ装置50に載置された輸送用箱を荷室2の前壁2bに向かって押すと、該輸送用箱下面に接するローラ51,51,…51が回転することにより、該輸送用箱はローラ装置50上を移動する。輸送用箱の下面は、システムフロア11上面から浮いた状態であるため、システムフロア11上面を擦ることなく、輸送用箱を前壁2bへ向かって移動させることができる。
【0062】
荷室2の所定の位置まで輸送用箱を移動させた後、該輸送用箱をローラ装置50の右側または左側に移動させて、システムフロア11上に載置する。輸送用箱は、ベルト等の所定の固定器具(図示省略)により荷室2内に固定される。輸送用箱が複数ある場合であっても、上記作業を繰り返すことにより、複数の輸送用箱を荷室2内に比較的容易に搬入できる。
【0063】
輸送用箱を荷室2から搬出する場合、固定器具を輸送用箱から取り外し、ローラ装置50に載置する。輸送用箱を背面扉2aの方向へ押すことにより、輸送用箱はローラ装置50上を移動する。背面扉2a付近まで移動させた輸送用箱を荷室2から搬出する。
【0064】
本変形例のシステムフロア11では、ローラ装置50に載置できる比較的小型の輸送用箱を荷室2内で移動できる。本例のシステムフロア11においても、荷台1に比較的容易に取り付け、および取り外しができるため、例えば、比較的小型の輸送用箱を大量に運送する場合は、本例のシステムフロア11を荷台1に取り付ければよい。本例のシステムフロア11に取り付けたローラ装置50を用いれば、わざわざ荷室内を手で持ち上げて輸送用箱を運ぶより容易に輸送用箱を積み込むことができる。また、本例においてもローラ装置50を備えていない荷台1を有するトラックにも、比較的容易にローラ装置50を取り付けることができるため、比較的小型の輸送用箱の運送にも対応できる。
【0065】
〈その他の実施形態〉
上記実施形態および変形例については、以下のような構成としてもよい。
【0066】
図12に示すように、上記実施形態のシステムフロア11は、変形例の収納部40を備えていてもよい。この場合、収納部40は、第1ローラ溝部21と第2ローラ溝部22との間に設けられる。これにより、システムフロア11は、パレットローダ30での移動が必要な大型で比較的重い輸送用箱の運送にも対応できると共に、ローラ装置50に載置可能な小型の輸送用箱の運送にも対応できる。第1~第2ローラ溝部21,22を使用して輸送用箱を移動する場合は、収納部40を覆う蓋部材(図示省略)が配置される。これにより、蓋部材上にも輸送用箱を載置できる。ローラ装置50を使用して輸送用箱を移動する場合は、第1~第2ローラ溝部21,22を覆う細長の蓋部材(図示省略)が配置される。これにより、第1~第2ローラ溝部21,22の溝が埋まり、第1~第2ローラ溝部21,22にひっかかることなくシステムフロア11上を移動させることができる。
【0067】
システムフロア11の各床板10は、リング部材16,16,…16を有さなくてもよい。この場合、例えば
図13に示すように、システムフロア11は、フック部材60を有していてもよい。フック部材60は、各床板10に4つずつ設けられる。フック部材60の基端部には、ボルトBが挿通する孔が形成される。ボルトBを固定部材の締結孔17、フック部の孔、および床板の取付孔15の順に挿通し、床板を荷台1に固定する。
【0068】
図14に示すように、システムフロアセット70は、上記実施形態のシステムフロア11と上記変形例のシステムフロア11とを有する。このことにより、例えば、輸送用箱の大きさや重さによって、第1~第2ローラ溝部21,22を有するシステムフロア11とローラ装置50が取り付けられる収納部40を有するシステムフロア11とを使い分けることができる。このように、複数種類のシステムフロア11,11を有するシステムフロア70セットを有することで、トラックに限定されることなく様々な種類の輸送用箱の運送に対応できる。
【0069】
システムフロア11は、1~3枚の床板10を有していてもよいし、5枚上の床板10を有していてもよい。
【0070】
実施形態のガイド部20は、パレットローダ30用の溝でなくてもよい。例えば、輸送用箱の下面にキャスタなどの車輪が設けられている場合、該キャスタが入る溝であってもよい。このことにより、該キャスタが溝内を転動することによって輸送用箱を荷台1長手方向に移動させることができる。
【0071】
実施形態のガイド部20は、各床板10に設けられていなくてもよい、一部の床板10に設けられていてもよい。
【0072】
実施形態のガイド部20は、輸送用箱を荷台1の長手方向に移動できる部材であればよく、溝状に形成されていなくてもよい。
【0073】
変形例の収納部40は1つに限られない。システムフロア11は、収納部40を2つ以上有していてもよい。
【0074】
変形例のローラ装置50は、複数のローラ部材51に跨って設けられるベルトコンベア式の装置であってもよい。
【0075】
システムフロア11は、荷台1上面の一部にのみ設けられていてもよい。
【0076】
システムフロア11は、トラックやトレーラなどの貨物自動車Vの荷台1以外に、貨物列車に搭載されるコンテナなどに適用されてもよい。
【0077】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明は、貨物自動車の荷台上面に取り付けられるシステムフロアおよびシステムフロアセットについて有用である。
【符号の説明】
【0079】
V 貨物自動車
1 荷台
10 システムフロア
20 ガイド部
40 収納部
51 ローラ部材
70 システムフロアセット